説明

飲食物の風味増強方法

【課題】 唐辛子に代表される香辛料および/またはグルタミン酸塩やイノシン酸塩に代表される旨味成分を含有する飲食物において、辛味やスパイシー感および/または旨味を増強した飲食物を提供する。
【解決手段】 甘味の立ちおよびキレが速い甘味質を有する糖アルコールであるソルビトールおよび/または高糖化還元水飴を添加することで、香辛料の風味を増強した飲食物を提供する。また、甘味のキレが遅く後引きがある甘味質を有する糖アルコールである低糖化還元水飴を添加することにより、旨味を増強した飲食物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖アルコールの添加により辛味やスパイシー感および/または旨味を増強することを特徴とする飲食物の風味増強方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食品の風味に対する関心が高まり、風味の良いの食品を求める消費者が増えてきている。また、辛味や旨味を有する食品について、世界的に需要が高まってきている(エスニック料理の世界的な流行や旨味調味料の世界的な需要増加など)。それに伴い、食品メーカーでは風味の良い香辛料含有飲食物や旨味成分含有飲食物を提供するために様々な対策をとっている。例として特許文献1〜6のように香辛料の風味を損なわずに提供したり、特許文献7〜10のようにアミノ酸化合物や茶抽出物などを添加して旨味を増強したりする方法が挙げられる。また、食塩を添加して旨味を増強する方法もある。
【0003】
【特許文献1】特開2005−130817号公報
【特許文献2】特開2004−283056号公報
【特許文献3】特開2003−274891号公報
【特許文献4】特開平11−215965号公報
【特許文献5】特開平10−127250号公報
【特許文献6】特開平6−54654号公報
【特許文献7】特開2002−255994号公報
【特許文献8】特開平8−70813号公報
【特許文献9】特開平10−113146号公報
【特許文献10】特開平2005−137286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1〜6の方法はどれも香辛料の風味を損なわずに提供する方法であり、香辛料の風味をさらに向上させることは出来ないという問題点があった。また、既に風味が低下した香辛料を使用した場合には、風味の良い香辛料含有食品を提供できないという問題点があった。特許文献7〜9の方法はペプチドやポリリジン、ベタイン等のアミノ酸化合物を添加しているが、いずれの素材も調製にコストが掛かり、コストが高くなるという問題点があった。また、アミノ酸化合物は熱に弱く、加熱調理をした場合には分解や他の成分との反応(メイラード反応等)を起こし、着色等の原因になるという欠点があった。茶抽出物は未精製のものは苦味を有し、食品の種類によっては添加すると苦味が出て風味が落ちると言う欠点があり、精製したものは精製する際に有機溶媒を使用する場合があるため、安全性に問題がある場合が出てくる。食塩を添加して旨味を増強する方法もあるが、高血圧などの生活習慣病が増加傾向である現在においては減塩志向が強く、食塩を減らしつつ旨味を増強したいというニーズが世界的に強くなってきている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、唐辛子に代表される香辛料および/またはグルタミン酸塩やイノシン酸塩に代表される旨味成分を含有する飲食物において、糖アルコールを添加することにより、辛味やスパイシー感および/または旨味を増強することを特徴とする、飲食物の風味増強方法に関する。甘味の立ちおよびキレが速い甘味質を有する糖アルコールであるソルビトールおよび/または高糖化還元水飴を添加することで、香辛料の風味を損なわないようにするのではなく香辛料の風味を増強することを特徴とする飲食物の風味増強方法に関する。特に、固形分あたりの糖組成として単糖類が30〜70重量%、二糖類が30〜70重量%、三糖類以上が25重量%以下であるソルビトールおよび/または高糖化還元水飴を、香辛料1重量部に対し0.025〜3重量部添加することにより、香辛料の風味を増強することを特徴とする飲食物の風味増強方法に関する。また、甘味のキレが遅く後引きがある甘味質を有する糖アルコールである低糖化還元水飴を添加することにより、旨味を増強することを特徴とする、飲食物の風味増強方法に関する。特に固形分当たりの糖組成について、5糖類以上が50重量%以上且つ7糖類以上が25重量%以下である低糖化還元水飴を、旨味成分および/または旨味成分含有調味料1重量部に対し、固形分換算で0.1〜20重量部添加し、旨味を増強させることを特徴とする飲食物の風味増強方法に関する。また、旨味成分および/または旨味成分含有調味料1重量部に対し、0.1〜1重量部の低糖化還元水飴を添加することで、旨味成分および/または旨味成分含有調味料1重量部に対し食塩を0.5〜1重量部減塩しても同等以上の旨味をもつことを特徴とする飲食物の風味増強方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、唐辛子に代表される香辛料および/またはグルタミン酸塩やイノシン酸塩に代表される旨味成分を含有する飲食物に、糖アルコール、中でもソルビトールおよび/または高糖化還元水飴や低糖化還元水飴が添加されていることを特徴とし、これによって、高い香辛料風味増強効果や旨味増強効果を示し、良好な風味を持った飲食物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
ソルビトールおよび還元水飴は糖アルコールの一種で、デンプンを酸や酵素等を用いて加水分解して得られたブドウ糖や水飴を水素添加して製造するのが一般的である。デンプンをDE80以上のブドウ糖まで分解し水素添加したものをソルビトール、DE55〜80程度の高糖化水飴に分解し水素添加したものを高糖化還元水飴、DE40以下の低糖化水飴に分解し水素添加したものを低糖化還元水飴と呼ぶことが多い。
【0008】
ソルビトールおよび高糖化還元水飴は甘味の立ち(甘味料を口の中に入れてから甘味がピークに達するまでの速さ)とキレ(甘味がピークに達してから甘味が消えるまでの速さ)が速く、この特有の甘味質により香辛料の風味を増強できる。特に、高糖化還元水飴は甘味の立ちとキレが速い上に、低分子糖アルコール特有の収斂味(エグ味)が無いため、高い香辛料風味向上効果を持つ。甘味の立ちの速さが香辛料の風味立ちを速め、強い風味を一気に感じた後、甘味が速く切れ香辛料の風味のみが残るため、香辛料の強い風味が長時間持続する。甘味の立ちが遅いと香辛料の風味立ちが緩やかになり、甘味のキレが遅いと甘味の後味が香辛料の風味を隠してしまうため、香辛料風味増強効果は小さくなる。
【0009】
低糖化還元水飴は甘味度(甘味の強さ)が低く(砂糖の1〜3割程度)、甘味のキレが遅く後引きがあるが、この特有の甘味質により旨味を増強できる。旨味に弱い甘味が重なると旨味が増強され、甘味が後を引くほどその増強時間が長くなり、旨味にふくらみを持たせる。甘味のキレが速くなるほど増強時間が短いため、旨味増強効果が小さくなる。また、甘味の後引きが長くなりすぎると糊っぽさのような雑味が出てくるため、旨味増強効果が小さくなる。
【0010】
本発明における還元水飴は、前記の一般的な製造方法以外にどのような方法で調製しても良い。例として、別に調製した2種類以上の水飴や糖類を混合した混合物を水素添加したものでも良く、また、別に調製した2種類以上の糖アルコールや還元水飴を混合したものでも良い。さらには、調製した水飴をクロマト分離等で分画したものを水素添加したものでも良く、また、調製した還元水飴を、クロマト分離等で分画したものでも良い。また、本発明に使用する高糖化還元水飴は液状でも粉末でも良い。粉末還元水飴としては、還元水飴を粉末化したものであればどのようなものでも良く、還元水飴を乾燥して得られたガラス状(アモルファス)粉末でも良く、結晶化した結晶(共晶)粉末でも良い。還元水飴の粉末化についてはどのような方法を用いても良い。
【0011】
ソルビトールは、前記の通りブドウ糖を水素添加して製造するのが一般的であるが、本発明におけるソルビトールは、どのような方法で調製しても良い。また、果実などの天然物中に含まれるソルビトールであっても良い。本発明におけるソルビトールは、液状品でも粉末品でも良い。
【0012】
本発明においてソルビトールおよび/または高糖化還元水飴とは、原料糖のDEが55以上の糖アルコールであればどのようなものでも良いが、中でも固形分当たりの糖組成が、単糖類が30〜70重量%、二糖類が30〜70重量%、三糖類以上が25重量%以下であるものが、特に香辛料風味増強効果が高い。固形分あたりの単糖類が70重量%を越えると、低分子糖アルコール特有の収斂味が感じられるため、香辛料の風味増強効果が低減してしまう。また、固形分あたりの二糖類が70重量%以上、または三糖類以上が25重量%以上の場合には、甘味の立ちが遅く甘味の後引きが感じられるため、香辛料の風味増強効果が小さくなってしまう。そのため、固形分当たりの糖組成が、単糖類が30〜70重量%、二糖類が30〜70重量%、三糖類以上が25重量%以下であるものが好ましい。
【0013】
ソルビトールおよび/または高糖化還元水飴の固形分添加量が、香辛料1重量部に対し0.025重量部未満の場合、香辛料の風味増強効果が少ないため、ソルビトールおよび/または高糖化還元水飴の固形分添加量は、香辛料1重量部に対し0.025重量部以上が好ましい。但し、ソルビトールおよび/または高糖化還元水飴の固形分添加量が、香辛料1重量部に対し3重量部を越えると、味に対するソルビトールおよび/または高糖化還元水飴の甘味の影響が大きくなり、香辛料の風味増強効果が少なくなるため、ソルビトールおよび/または高糖化還元水飴の固形分添加量は、香辛料1重量部に対し3重量部以下が好ましい。
【0014】
本発明において香辛料含有飲食物とは、香辛料を含む飲食物であればどのようなものでも良い。本発明において香辛料とは、辛味やスパイシー感を有する食品素材であればどのようなものでも良く、唐辛子、コショウ、ニンニク、ショウガ、わさび、和がらし、洋がらし、サンショウなどを例示できる。また、これらの乾燥物や粉砕物、抽出物などであっても良い。本発明における香辛料含有調味料とは、香辛料を含有し辛味やスパイシー感を有する調味料であればどのようなものでも良く、コチジャン、豆板醤、タバスコ、ラー油、かんずり、カレー粉などを例示できる。本発明におけるソルビトールおよび/または高糖化還元水飴の香辛料風味向上効果は、特に唐辛子の辛味やスパイシー感向上に効果があるので、香辛料として唐辛子を配合したり、香辛料含有調味料に唐辛子が添加されていることが好ましい。また、本発明の香辛料含有飲食物には、香辛料および/または香辛料含有調味料とソルビトールおよび/または高糖化還元水飴以外に、水や各種食品素材、食品添加物などを添加することが出来る。
【0015】
本発明において低糖化還元水飴とは、5糖類以上の糖アルコールが固形分あたり40重量%以上含有されていればどのようなものでも良い。中でも5糖類以上の糖アルコールが多いほど甘味の後引きがあるため旨味向上効果が高く、また7糖類以上の糖アルコールが少ないほど高分子糖アルコール特有の糊っぽい後味が少なく、旨味増強効果がを妨げないため、5糖類以上が50重量%以上且つ7糖類以上の糖アルコールが25重量%以下であるものが好ましい。
【0016】
本発明において旨味を含む飲食物とは、旨味成分を含む飲食物であればどのようなものでも良い。本発明において旨味成分としては、旨味を呈するものであればどのようなものでも良く、グルタミン酸などのアミノ酸およびその塩、イノシン酸やグアニル酸などの核酸およびその塩、ペプチド、ポリペプチド、ポリ核酸などを例示できる。本発明において旨味成分含有調味料とは、前記の旨味成分を含む調味料であればどのようなものでも良く、エキス類や抽出物などであっても良い。また、本発明の飲食物には、旨味を呈する成分と糖アルコール以外に、水や各種食品素材、食品添加物などを添加することが出来る。
【0017】
糖アルコールの添加量が、旨味成分および/または旨味成分含有調味料1重量部に対し固形分換算で0.1重量部未満の場合、旨味の増強効果が少ないため、糖アルコールの添加量は、旨味成分および/または旨味成分含有調味料1重量部に対し、固形分換算で0.1重量部以上が好ましい。但し、糖アルコールの添加量が旨味成分および/または旨味成分含有調味料1重量部に対し固形分換算で20重量部を越えると、旨味増強効果が少なくなるため、糖アルコールの添加量は、旨味成分および/または旨味成分含有調味料1重量部に対し、固形分換算で20重量部以下が好ましい。従って、本発明における糖アルコールの添加量は、旨味成分および/または旨味成分含有調味料1重量部に対し、固形分換算で0.1〜20重量部が好ましい。
【0018】
旨味成分は食塩との共存でその旨味が増強するが、健康志向の現在においては高血圧等の生活習慣病の一因とされている食塩を減らし、なおかつ旨味は減塩前と比較して同等以上の食品が求められる。旨味成分および/または旨味成分含有調味料1重量部に対し、低糖化還元水飴を固形分換算で0.1重量部以上添加することにより、旨味成分および/または旨味成分含有調味料1重量部に対し食塩を0.5重量部以上減塩しても、減塩前と同等以上の旨味増強効果を得ることが出来る。
【0019】
以下、本発明の実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
表1の配合にてキムチ鍋スープを調製した。香辛料として赤唐辛子、ガーリックパウダー、香辛料含有調味料として豆板醤、コチジャンを使用した。高糖化還元水飴としてエスイー600(日研化成社製)を用いた。ソルビトールとして、ソルビトールF(日研化成社製)を用いた。調製後、パネラー10人で官能検査を行った。香辛料の風味(辛味およびスパイシー感)について、1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点とする評点法にて官能検査を行ったところ、高糖化還元水飴を配合したものが最も評価が高く、次ぎにソルビトールを配合したものの評価が高かった。
【0021】
【表1】

【実施例2】
【0022】
表2の配合にてシーズニングを調製した。香辛料としてジンジャーパウダー、ガーリックパウダー、オニオンパウダー、コショウ、赤唐辛子を使用した。高糖化還元水飴として、粉末高糖化還元水飴スイートP EM(日研化成社製)を用いた。ソルビトールとしてソルビトールFP(日研化成社製)を用いた。調製後、パネラー10人で官能検査を行った。香辛料の風味(辛味及びスパイシー感)について、1位を4点、2位を3点、3位を2点、4位を1点とする評点法にて官能検査を行ったところ、高糖化還元水飴を配合したものが最も評価が高く、次ぎにソルビトールを配合したものの評価が高かった。
【0023】
【表2】

【実施例3】
【0024】
表3の配合にて辛味噌を調製した。高糖化還元水飴として、粉末高糖化還元水飴スイートP EM(日研化成社製)を用いた。調製後、パネラー10人で官能検査を行った。香辛料の風味(辛味、スパイシー感)について、無添加を0点として、評点法(−3:非常に弱い、−2:弱い、−1:やや弱い、+1:やや強い、+2:強い、+3:非常に強い)にて官能検査を行ったところ、高糖化還元水飴の固形分添加量が香辛料(青唐辛子粉)1重量部あたり0.025〜3重量部の範囲において、高い香辛料風味増強効果が得られた。高糖化還元水飴の固形分添加量が香辛料(青唐辛子粉)1重量部あたり0.025重量部より少ないと、無添加とほとんど差が見られなかった。また、高糖化還元水飴の固形分添加量が、香辛料1重量部あたり3重量部より多いと、甘味が強くなりすぎるため、香辛料の風味増強効果が低下した。
【0025】
【表3】

【実施例4】
【0026】
表4の配合にてイノシン酸ナトリウムとかつおエキスを含有するかつおエキス調味料を旨味成分としただし汁を調製した。低糖化還元水飴としてスイートNT(日研化成社製)を用いた。中糖化還元水飴として、エスイー57(日研化成社製)、低糖化水飴として、ニポデックス(ニッシ社製)を用いた。調製後、パネラー10人で官能検査を行った。旨味について、1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点とする評点法にて官能検査を行ったところ、低糖化還元水飴を配合したものが最も評価が高かった。
【0027】
【表4】

【実施例5】
【0028】
表5の配合にてグルタミン酸ナトリウムを旨味成分としただし汁を調製した。低糖化還元水飴としてスイートNT(日研化成社製)を用いた。調製後、パネラー10人で官能検査を行った。旨味について、低糖化還元水飴無添加のものを0点として、評点法(−3:非常に弱い、−2:弱い、−1:やや弱い、+1:やや強い、+2:強い、+3:非常に強い)にて官能検査を行ったところ、高糖化還元水飴の固形分添加量が旨味成分(グルタミン酸ナトリウム)1重量部あたり0.1〜20重量部の範囲において、高い旨味増強効果が得られた。旨味成分1重量部に対し、低糖化還元水飴の配合量が固形分換算で0.1重量部未満の場合、旨味は低糖化還元水飴無添加のものと同等程度であった。また、旨味成分および/または旨味成分含有調味料1重量部に対し、低糖化還元水飴の配合量が固形分換算で20重量部よりも多くなると、旨味増強効果が減少した。
【0029】
【表5】

【実施例6】
【0030】
表6の配合にてグルタミン酸ナトリウムを旨味成分としただし汁を調製した。低糖化還元水飴として、固形分あたりの5糖類以上の含量が50重量%且つ7糖類以上の含量が18重量%のもの(低糖化還元水飴A)、固形分あたりの5糖類以上の含量が55重量%且つ7糖類以上の含量が25重量%のもの(低糖化還元水飴B)、固形分あたりの5糖類以上の含量が60重量%且つ7糖類以上の含量が35重量%のもの(低糖化還元水飴C)、固形分あたりの5糖類以上の含量が80重量%且つ7糖類以上の含量が55重量%のもの(低糖化還元水飴D)を用いた。調製後、パネラー10人で官能検査を行った。旨味について、低糖化還元水飴無添加のものを0点として、評点法(−3:非常に弱い、−2:弱い、−1:やや弱い、+1:やや強い、+2:強い、+3:非常に強い)にて官能検査を行ったところ、低糖化還元水飴Aを配合したもの、および低糖化還元水飴Bを配合したものが特に旨味増強効果が高かった。
【0031】
【表6】

【実施例7】
【0032】
表7の配合にてグルタミン酸ナトリウムを旨味成分としただし汁を調製した。低糖化還元水飴として、スイートNT(日研化成社製)を用いた。調製後、パネラー10人で官能検査を行った。旨味について、食塩及び低糖化還元水飴無添加のものを0点として、評点法(−3:非常に弱い、−2:弱い、−1:やや弱い、+1:やや強い、+2:強い、+3:非常に強い)にて官能検査を行ったところ、食塩1重量部添加区と食塩0.5重量部+低糖化還元水飴0.1重量部添加区の旨味増強効果は同等であった。また、食塩1重量部添加区よりも低糖化還元水飴1重量部添加区の方が旨味増強効果が高かった。旨味成分および/または旨味成分含有調味料1重量部に対し、0.1〜1重量部の低糖化還元水飴を添加することで、旨味成分および/または旨味成分含有調味料1重量部に対し食塩を0.5〜1重量部減塩しても同等以上の旨味増強効果を得ることが出来た。
【0033】
【表7】

【実施例8】
【0034】
表8の配合にて麺つゆを調製した。低糖化還元水飴としてスイートNT(日研化成社製)を用いた。核酸調味料として、イノシン酸ナトリウムとグアニル酸ナトリウムが主成分の核酸調味料を用いた。調製後、パネラー10人で配合1(砂糖のみの配合)と配合2(砂糖+低糖化還元水飴配合)のどちらが旨味が強いかを官能検査にて比較したところ、パネラー全員から配合2の方が旨味が強いという評価が得られた。
【0035】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0036】
香辛料含有飲食物や旨味成分含有飲食物に、糖アルコール、中でもソルビトールおよび/または高糖化還元水飴や低糖化還元水飴を添加することにより、高い香辛料風味増強効果や旨味増強効果を示し、良好な風味を持った飲食物を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
香辛料を含有する飲食物において、固形分当たりの糖組成が、単糖類が30〜70重量%、二糖類が30〜70重量%、三糖類以上が25重量%以下である高糖化還元水飴を添加することで、甘味の立ちおよびキレの速さにより辛味およびスパイシー感の少なくともいずれかを増強させる方法。
【請求項2】
固形分当たりの糖組成が、単糖類が30〜70重量%、二糖類が30〜70重量%、三糖類以上が25重量%以下である高糖化還元水飴を、香辛料1重量部に対し、固形分換算で0.025〜3重量部添加することで、甘味の立ちおよびキレの速さにより辛味およびスパイシー感の少なくともいずれかを増強させる請求項1記載の方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法を用いて辛味およびスパイシー感の少なくともいずれかが増強された、香辛料を含有する飲食物。

【公開番号】特開2012−45011(P2012−45011A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−270538(P2011−270538)
【出願日】平成23年12月9日(2011.12.9)
【分割の表示】特願2006−215613(P2006−215613)の分割
【原出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(000226415)物産フードサイエンス株式会社 (30)
【Fターム(参考)】