説明

飼料添加物

【課題】家畜の体重、旨み、食感等の品質を向上させ、付加価値を向上させる。
【解決手段】水酸化カルシウムにMg,Zn,Fe,MnおよびCuが固溶した固溶体を家畜に給与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜の体重、肉質(旨み、食感等)、低脂肪等の品質改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロイラー、採卵鶏、養豚、肉用牛、乳用牛等の家畜は、飼料の殆どを輸入に依存している。輸入飼料は、食用以外にバイオエタノール等の新しい用途が出現した関係で、今後一層価格上昇が進むと考えられている。家畜の原価に占める飼料費の比率は高く、生産者にとっては今後益々利益率が低下する傾向にある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この事態を打開し、且つ停滞している市場を拡大するには、家畜の品質、例えば肉や卵、牛乳の旨みや食感、低脂肪等の品質を向上させて付加価値を上げていく必要がある。その様な家畜物の品質向上は、従来難しいとされた輸出にも道を拓くものと期待される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は下記式(1)
【0005】
【化1】

(但し、式中、M2+はZn,Fe,MnおよびCuの少なくとも1種以上、好ましくは全てを含む2価金属を示し、xおよびyは次の範囲にある。0≦x<0.5,好ましくは0.01<x<0.4,特に好ましくは0.1≦x<0.4,0<y<0.4,好ましくは0.01<y<0.3,特に好ましくは0.05≦y≦0.2,0<x+y<0.5,好ましくは0.1<x+y<0.4)で表わされる水酸化カルシウム系固溶体を有効成分とする家畜の体重とか肉質(旨み、食感、低脂肪等)の品質改良剤を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の剤を家畜に与えることにより、家畜が精神的に安定化し、喧騒性が減少し、飼育しやすくなり、糞の匂いが少なくなる。肉は色に鮮やかさが増し、弾力性が良くなり、旨味が向上し、飽和脂肪酸が減少(低脂肪)し、有用な不飽和脂肪酸が増加する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明式(1)の家畜の品質改良剤の最も好ましい組成としては、下記式(2)
【0008】
【化2】

(但し、式中、xおよびyは次の範囲にある。0<x<0.4,好ましくは0.01<x<0.4,0<y<0.4,好ましくは0.01<y<0.2,0<x+y<0.5,好ましくは0.1<x+y<0.4)で表わされる水酸化カルシウム系固溶体である。すなわち、Ca,Mg,Zn,Fe,MnおよびCu全ての金属を含有する場合である。
【0009】
式(1)および式(2)において、酸化されやすい2価のFeおよびMnは、3価のFeおよびMnを含んでいても良い。また、M2+としてCo,Cr,Niの1種以上をさらに含有しても良い。さらに、OHの一部がP,SeおよびMoの酸素酸イオン、例えばHPO,HPO2−,PO3−,SeO2−,SeO2−,HMoO,HMoO244−,HMo145−等で置換されていても良い。
【0010】
本発明の家畜品質改良剤の使用方法は、例えば、飼料に0.001〜5%,好ましくは0.01〜1%添加混合するとか、微粒子化して水によく分散させ、これを飲料水に混合して使う。
【0011】
本発明の剤がバランスのとれた活発な生命活動を生ぜしめる多様な酵素を活性化させることにより、本発明の効果が得られたものと推察される。
【0012】
本発明の、家畜の品質改良剤の製造は、Ca,MgおよびM2+の水溶性塩、例えば硫酸塩、塩化物、硝酸塩等を水に溶解し、この水溶液とほぼ当量以上のアルカリ、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、の水溶液と共沈させることにより実施できる。共沈反応の好ましいpHと温度はそれぞれ、pH12〜14,温度20〜50℃である。共沈反応後、ろ過、水洗、乾燥、粉砕する。乾燥雰囲気は大気雰囲気でもよいが、好ましくは非酸化雰囲気であり、それでFeとかMnの酸化を減少できる。
【0013】
上記方法以外に、アルカリとして、また、Caの供給源としての両機能を持つ水酸化カルシウムとMgおよびM2+の混合水溶液とを反応させる方法も用いることができる。
【0014】
2+がCo,CrおよびNiの少なくとも1種以上を含有する場合の製造は、上記2方法の何れにおいても、M2+にCo,CrおよびNiの少なくとも1種以上の水溶性塩を追加して加え溶解した混合水溶液を用いることにより実施できる。
【0015】
さらに、式(1)のOHの−部の代わりにP,SeおよびMoの酸素酸イオンを追加する製造は、前述の製造方法で得られた水酸化カルシウム系固溶体スラリーに、P,SeおよびMoの酸素酸またはそのアルカリ金属塩の水溶液を攪拌下に添加することにより実施できる。
【0016】
本発明品を家畜に摂取させる量は、本発明品粉末または水分散微粒子スラリーをそれぞれ飼料または飲料水と混合し、畜産物の体重1kg当たり0.01〜1g、好ましくは0.02〜0.2g摂取させると良い。
【0017】
本発明品の微粒子スラリーは、5〜20重量%の水スラリーをビーズミル粉砕する方法により製造することができる。ZrO等のビーズ径は0.05〜2mm、好ましくは0.1〜0.4mm、好ましい処理時間は0.5時間〜2時間である。
【0018】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。

【実施例1】
【0019】
塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硝酸第1鉄、硝酸マンガンおよび硝酸第2銅の混合水溶液(Ca2+=0.695,Mg=0.2M/L,Zn=0.04M/L,Fe2+=0.04M/L,Mn2+=0.02M/L,Cu2+=0.005M/L)と4M/Lの水酸化ナトリウム水溶液を、計量ポンプを用いてそれぞれ、100ml/分、約50ml/分の流速で、容量2.5リットルのオーバーフロー付き反応槽に、ケミスターラーで攪拌しつつ、反応槽のpHを約13、温度を約40℃に保って約30分間連続的に共沈反応を行った。オーバーフローして得られたスラリーを減圧濾過、水洗後、真空乾燥機に入れ、約100℃で6時間乾燥した。約40℃まで冷えた後、乾燥機から取り出しアトマイザーで粉砕した。得られた粉末のX線回析パターンを測定した結果、ほぼ水酸化カルシウムのみの回析パターンであった。この粉末の化学組成は、IPCで分析した結果次の通りであった。Ca0.695Mg0.20Zn0.04Fe0.04Mn0.02Cu0.005(OH)
【0020】
この水酸化カルシウム系固溶体を、配合飼料[とうもろこし(44.1%)、大豆粕(21.3%)、菜種粕(2.6%)、ふすま(0.1%)、フィード(0.1%)、魚粉(0.9%)、 普粉(3.1%)、飼料油脂(4.4%)、その他(23.5%)]に0.1重量%添加混合して、ブロイラーの生後45日の雛4羽(雄2羽、雌2羽)に45日与えた。比較対照として、同じ生後45日のブロイラー4羽(雄2羽、雌2羽)に、水酸化カルシウム系固溶体を添加しない同じ組成の配合飼料を同じ日数与えた。飼育は地べたで行い、十分な運動が出来るスペース(16m)、環境で行った。飼育終了後、屠殺し、腿と胸を採り、それを水炊きした場合と、フライパンに入れガス加熱した場合について、食味、食感を10人で評価した。その結果を表1に示す。10人全員が本発明品を摂取した地どりが対照肉に比べ旨いと感じた。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
腹腔内脂肪中のリノール酸とパルミチン酸の分析を行った結果を表2に示す。対照品と比較し、飽和脂肪酸は減少(低脂肪化)し、体に良いとされている不飽和脂肪酸は増加した。
【0024】
市場は肥満体重の人が多いため低脂肪品を求めているので、以上の結果は好ましい。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(但し、式中、M2+はZn,Fe,MnおよびCuの少なくとも1種以上の2下金属を示し、xおよびyは次の範囲にある。0<x<0.5,0<y<0.4,0<x+y<0.5)で表わされる水酸化カルシウム系固溶体を有効成分として含有する家畜の品質改良剤。
【請求項2】
請求項1の式(1)の固溶体が下記式(2)
【化2】

(但し、式中、xおよびyは次の範囲にある。0<x<0.4,0<y<0.3,0.1<x+y<0.4)で表わされる特定組成および範囲である請求項1記載の家畜の品質改良剤。
【請求項3】
請求項1の固溶体が下記式(3)
【化3】

(但し、式中、xとyはそれぞれ次の範囲にある。0.01<x<0.4,0.01<y<0.2)で表わされる特定の組成である請求項1記載の家畜の品質改良剤。
【請求項4】
請求項1の水酸基OHの一部がMo,PおよびSeの酸素酸イオンの少なくとも1種以上で置換されている請求項1および2記載の家畜の品質改良剤。
【請求項5】
請求項1の固溶体が下記式(4)
【化4】

(但し、式中、M2+はZn,Fe,MnおよびCuの少なくとも1種以上、M3+はFe,Mn,CoおよびCrの少なくとも1種以上、An−はn価のアニオン[nは整数]を示し、x,yおよびzはそれぞれ次の範囲にある。0≦x<0.5,0<y<0.4,0<z<0.3)で表わされる3価の原素を含有する請求項1記載の家畜の品質改良剤。