説明

飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法及飽和ガス含有ナノバブル水の製造装置

【課題】長期間にわたり連続的で、また常に安定なガス飽和ナノバブル水を得ることが可能な飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法及飽和ガス含有ナノバブル水の製造装置を提供する。
【解決手段】飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法は、純水を脱気して脱気純水を生成する脱気工程Aと、脱気純水に加圧ガスを溶解してガス飽和の飽和ガス溶解純水を生成するガス溶解工程Bと、ガス溶解工程Bを経たガス飽和溶解純水の、圧力を減圧して飽和ガス含有ナノバブル水を生成するナノバブル発生工程Dと、を含み、ガス溶解工程Bにおいて溶解ガスの圧力を制御し、ナノバブル発生工程Dの前にガス溶解純水の比抵抗を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス溶解した純水からナノバブル水を生成する飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法及飽和ガス含有ナノバブル水の製造装置に関し、より詳細には、パーテイクルフリーでメタルフリーなナノバブル水を、より安定に製造し、又、溶解ガスの圧力をコントロールすることにより、半導体、液晶をはじめとする電子産業分野に使用可能な飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法及び飽和ガス含有ナノバブル水の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子産業におけるパーテイクル除去は、従来からAPM(アンモニア、過酸化水素)が使用されていた。しかし、近年、純水に水素ガスを溶解させた水素水を使用し、それにメガソニックをかけることで洗浄が行われてきている。(例えば特許文献1)。
【0003】
しかしながら、近年パターンの線幅が狭まり、アスペクト比が大きくなるにつれ、メガソニックによるパターンだおれが発生するようになった。
【0004】
そのため、救急対応としてメガソニックの出力を小さくして対応しているのが現状である。
【0005】
また、他の方法として、2流体ジェット等を用いて洗浄することが試験的に行われているが、ガスと水の2流体が安定にジェットノズルから出力されることがなかなか難しい。
【0006】
また、洗浄効果が、従来の水素水とメガソニックに比べ、パーテイクル除去の効果がなかなか得られない状況である。
【0007】
このため、ナノバブル水を用いて洗浄することが考えられ、ナノバブル水の製造として例えば、超音波のエネルギも必要でなく、水素を含む微小気泡等が安定して分散する水を製造する技術(特許文献2)、また加圧ポンプを使用し物理的障害物を設定した配管内に水流と気体を送り、強制的に加圧混入を行うことでマイクロバブルを発生させる技術などがある(特許文献3〜6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−303149号公報
【特許文献2】特開2009−195889号公報
【特許文献3】特許第3043315号公報
【特許文献4】特開2001−300522号公報
【特許文献5】特開2004−073953号公報
【特許文献6】特開2005−245817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、前述の従来技術の問題点を解消し、長期間にわたり連続的で、また常に安定なガス飽和ナノバブル水を得ることが可能な飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法及飽和ガス含有ナノバブル水の製造装置を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決し、その目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0011】
請求項1に記載の発明は、純水を脱気して脱気純水を生成する脱気工程と、
前記脱気純水に加圧ガスを溶解してガス飽和の飽和ガス溶解純水を生成するガス溶解工程と、前記ガス溶解工程を経た前記ガス飽和溶解純水の、圧力を減圧して飽和ガス含有ナノバブル水を生成するナノバブル発生工程と、を含み、前記ガス溶解工程において溶解ガスの圧力を制御し、前記ナノバブル発生工程の前に前記ガス溶解純水の比抵抗を減少させることを特徴とする飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記脱気工程は、膜を介することにより一方に純水を、他方に脱気状態にすることにより、純水中の気体成分を純水より除去し、膜を介して、脱気状態の空間に導きだすことを特徴とする請求項1に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法である。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記ガス溶解工程は、膜を介することにより一方に脱気純水を、他方に溶解目的のガスを導入して膜を介して溶解目的ガスが脱気純水に溶け込み、脱気純水を飽和ガス溶解純水にすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法である。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記脱気純水に溶解させる溶解目的のガスの圧力は、加圧されたガスであり、かつ前記脱気純水の水圧、及び/又は前記飽和純水の水圧よりも低い圧力にすることを特徴とする請求項3に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法である。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記脱気純水に溶解させる溶解目的のガスの圧力を、一度、前記脱気純水の水圧、及び/又は前記飽和純水の水圧までの間に上昇させた後に、下げることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法である。
【0016】
請求項6に記載の発明は、前記ナノバブル発生工程は、1ミクロン以下の空孔を経由して、減圧されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法である。
【0017】
請求項7に記載の発明は、前記ガス溶解純水の比抵抗の減少は、酸、及び/又はアルカリを注入することにより比抵抗を低減し、および比抵抗の低減の程度をコントロールすることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法である。
【0018】
請求項8に記載の発明は、前記ガス溶解工程と前記ナノバブル発生工程との間に、1ミクロン以下の空孔を経由してガス飽和純水を整流する整流工程を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法である。
【0019】
請求項9に記載の発明は、純水を脱気して脱気純水を生成する脱気工程と、前記脱気純水に加圧ガスを溶解してガス飽和の溶解純水を生成するガス溶解工程と、前記ガス溶解工程を経た前記ガス飽和溶解純水の、圧力を減圧して飽和ガス含有ナノバブル水を生成するナノバブル発生工程と、を含み、前記ガス溶解工程において溶解ガスの圧力を制御する圧力制御機構を有し、かつ前記ナノバブル発生工程の前に前記ガス溶解純水の比抵抗を減少させる比抵抗減少機構を有することを特徴とする飽和ガス含有ナノバブル水の製造装置である。
【0020】
請求項10に記載の発明は、前記脱気工程は、膜を介することにより一方に純水を、他方に脱気状態にすることにより、純水中の気体成分を純水より除去し、膜を介して、脱気状態の空間に導きだす構造を有することを特徴とする請求項9に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造装置である。
【0021】
請求項11に記載の発明は、前記ガス溶解工程は、膜を介することにより一方に脱気純水を、他方に溶解目的のガスを導入して膜を介して溶解目的ガスが脱気純水に溶け込み、脱気純水を飽和ガス溶解純水にする構造を有することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造装置である。
【0022】
請求項12に記載の発明は、前記脱気純水に溶解させる溶解目的のガスの圧力は、加圧されたガスであり、前記脱気純水の水圧、及び/又は前記飽和純水の水圧よりも低い圧力にすることを特徴とする請求項11に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造装置である。
【0023】
請求項13に記載の発明は、前記脱気純水に溶解させる溶解目的のガスの圧力を、一度、前記脱気純水の水圧、及び/又は前記飽和純水の水圧までの間に上昇させた後に、下げることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造装置である。
【0024】
請求項14に記載の発明は、前記ナノバブル発生工程における減圧は、1ミクロン以下の空孔を経由して、減圧されることを特徴とする請求項9乃至請求項13のいずれか1項に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造装置である。
【0025】
請求項15に記載の発明は、前記比抵抗低減機構は、酸、及び/又はアルカリを注入することにより比抵抗を低減し、および比抵抗の低減の程度をコントロールすることを特徴とする請求項9乃至請求項14のいずれか1項に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造装置である。
【0026】
請求項16に記載の発明は、前記ガス溶解工程と前記ナノバブル発生工程との間に、1ミクロン以下の空孔を経由してガス飽和純水を整流する整流工程を有することを特徴とする請求項9乃至請求項15のいずれか1項に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造装置である。
【発明の効果】
【0027】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0028】
請求項1及び請求項9に記載の発明では、純水を脱気して脱気純水を生成し、脱気純水に溶解目的のガスを加圧し溶解してガス飽和の溶解純水を生成し、溶解目的のガスの圧力を制御し、さらにナノバブル発生工程の前にガス溶解純水の比抵抗を減少させて飽和ガス含有ナノバブル水を生成することで、例えばアルカリ等を注入して、純水の比抵抗を落とす(pHを上げる)ことにより、長期間にわたり連続的で、また常に安定なガス飽和ナノバブル水を得ることが可能である。
【0029】
請求項2及び請求項10に記載の発明では、膜を介することにより一方に純水を、他方に脱気状態にすることにより、純水中の気体成分を純水より除去し、膜を介して、簡単な構造でかつ確実に脱気状態の空間に導きだすことができる。
【0030】
請求項3及び請求項11に記載の発明では、膜を介することにより一方に脱気純水を、他方に溶解ガスを導入して膜を介して溶解目的のガスが脱気純水に溶け込み、簡単な構造でかつ確実に脱気純水を飽和ガスの溶解純水にすることができる。
【0031】
請求項4及び請求項12に記載の発明では、溶解目的のガスの圧力は、加圧されたガスではあるが、脱気純水の水圧、及び/又は飽和ガスの溶解純水の水圧よりも低い圧力にすることで、確実に脱気純水を飽和ガスの溶解純水にすることができる。
【0032】
請求項5及び請求項13に記載の発明では、脱気純水に溶解させる溶解目的のガスの圧力を、一度、脱気純水の水圧、及び/又は飽和純水の水圧までの間に上昇させた後に、下げることで、例えば、ガス圧力を一度上げた後に、下げることにより、飽和ガス含有ナノバブル水がかえって増加し、常に安定になる。
【0033】
請求項6及び請求項14に記載の発明では、1ミクロン以下の空孔を経由することで、ガス飽和の溶解純水の圧力が減圧され、飽和ガス含有ナノバブル水が発生する。
【0034】
請求項7及び請求項15に記載の発明では、ガス溶解純水の比抵抗の減少は、
酸、及び/又はアルカリを注入することにより比抵抗を低減し、および比抵抗の低減の程度をコントロールすることで、飽和ガス含有ナノバブル水を増加し、常に安定させることができる。
【0035】
請求項8及び請求項16に記載の発明では、ガス溶解とナノバブル発生との間で、1ミクロン以下の空孔を経由して、飽和ガスの溶解純水を整流することで、簡単かつ確実に飽和ガス含有ナノバブル水の製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の実施の形態に係わる飽和ガス含有ナノバブル水製造装置で比抵抗減少機構を経由した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、この発明の飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法及飽和ガス含有ナノバブル水の製造装置の実施の形態を図面に基づいて説明するが、この発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0038】
この実施の形態では、脱気工程A、ガス溶解工程B、圧力制御機構C、整流工程E、比抵抗減少機構F、ナノバブル発生工程Dを有し、長期間にわたり連続的で、また常に安定なガス飽和ナノバブル水を得ることが可能であり、半導体、液晶をはじめとする電子産業分野に使用可能な飽和ガス含有ナノバブル水を製造する。
【0039】
すなわち、純水は脱気工程Aを経由して脱気され脱気純水となり、脱気純水はガス溶解工程Bにてガスが溶解され、ガス飽和の溶解純水となる。このガス溶解工程Bにおいては、溶解目的のガスが供給され、供給された溶解目的のガスには圧力制御工程Cにてガスの圧力は制御されている。また、圧力制御工程Cは脱気純水の水圧、及び/又は飽和純水の水圧よりも低い圧力であることが条件となっている。
【0040】
さらに安定な飽和ガス含有ナノバブル水を生成するために、ガス飽和の溶解純水を整流工程Eに導き、整流して整流純水を生成した後、比抵抗減少機構Fによりガス溶解純水の比抵抗を減少させ、この比抵抗減少純水はナノバブル発生工程Dにて減圧され、過飽和ガスがナノバブルとなった飽和ガス含有ナノバブル水として生成される。
【0041】
(脱気工程A)
この脱気工程Aでは、脱気手段10によって純水を脱気して脱気純水を生成する。脱気手段10は、脱気ケース11内に膜12が配置され、さらに迷路13を形成する堰板14が配置されている。脱気ケース11には、入口15と出口16が形成され、純水が入口15から迷路13を流れ、出口16から脱気純水が排出される。脱気手段10は、膜12を介することにより一方に純水を、他方に脱気状態にすることにより、純水中の気体成分を純水より除去し、膜12を介して、脱気状態の空間17に導きだす構成であり、純水を脱気して脱気純水を生成する。
【0042】
溶解させる目的のガス(例えば水素ガス、窒素ガス、酸素ガス、オゾンガス)があるときには、純水中にすでに溶解されているガスを一度除去することが必要であり、そのため脱気し、膜12を介することにより一方に純水を、他方に脱気状態にすることにより、純水中の気体成分を純水より除去し、膜12を介して、簡単な構造でかつ確実に脱気状態の空間17に導きだすことができる。
【0043】
(ガス溶解工程B)
このガス溶解工程Bでは、ガス溶解手段20によって脱気純水に溶解目的のガスを加圧し溶解してガス飽和の溶解純水を生成する。ガス溶解手段20は、ガス溶解ケース21内に膜22が配置され、さらに迷路23を形成する堰板24が配置されている。ガス溶解ケース21には、入口25と出口26が形成され、脱気純水が入口25から迷路23を流れ、出口26から溶解純水が排出される。また、ガス溶解ケース21には、溶解ガス入口27と溶解ガス圧力制御口28が形成されている。ガス溶解手段20は、膜22を介することにより一方に脱気純水を、他方に溶解目的のガスを溶解ガス入口27から導入して膜22を介して溶解目的のガスが脱気純水に溶け込み、脱気純水を飽和ガスの溶解純水にする構成であり、脱気純水に溶解目的のガスをガス制御口28から制御して溶解してガス飽和の溶解純水を生成する。すなわち、溶解させる目的のガスの溶解であり、その際、膜22を使用し、ガス圧より水圧を大きくすると、ガスが完全に純水に溶解し、この実施の形態では、一度ガスを純水に完全溶解させ、その後、細かい(1マイクロ以下)空孔を通して減圧することによりナノバブル水を生成する。
【0044】
この脱気純水に溶解させる溶解目的のガスの圧力は、一度、脱気純水の水圧、及び/又は飽和純水の水圧までの間に上昇させた後に、再度大気圧の間までに減少させる。言えば、ガス圧力を一度上げた後に、下げることにより、飽和ガス含有ナノバブル水がかえって増加し、常に安定になる。すなわち、溶解ガス圧力を上げた後に下げる。例えば60kPaにした後に1kPaにする。このように、加圧した分だけ(加圧されたガス量だけ)、純水を減圧したときにガスとして生成されるが、ガス圧が高いままだと、ナノバブル生成工程で圧力変動が大きいとスムーズなナノバブルにならないことから、その後ガス圧力を下げることによって、スムーズにナノバブルが生成される。
【0045】
(圧力制御機構C)
この圧力制御機構Cでは、ガス溶解工程Bにおいて溶解ガスの圧力を制御する。圧力制御手段30を構成する第1の圧力センサ31は溶解ガス制御口28に接続され、第2の圧力センサ32は出口26に接続され、第1の圧力センサ31と第2の圧力センサ32とによって溶解ガスの圧力は、加圧されたガスではあるが、脱気純水の水圧、及び/又は飽和ガスの溶解純水の水圧よりも低い圧力になるように制御する。
【0046】
このように、溶解目的のガスを加圧するのは、基本的には、加圧した分だけ(加圧されたガス量だけ)、純水を減圧したときにガスとして生成される。その量を制御するには加圧したガス圧力を制御すればよい。減圧してバブル生成されるが、通常の場合は、大きなバブル、小さくてもマイクロバブルであり、バブルを安定なナノバブルとして生成させるには細かい空孔を通すことが必要である。
【0047】
ガス圧力を、脱気純水及び/またはガス飽和溶解純水よりも低くするのは、水にガスを完全に溶解させるためであり、ガスが水に溶解するとは、水分子(H2O)の分子と分子の間の空間に、ガスとして存在することを言い、どの程度溶解するかは、温度にも依存するが、大きくはガス圧力に依存し、例えばガス圧力が倍になると倍溶解する。
【0048】
(整流工程E)
この整流工程Eは、ガス溶解工程Bとナノバブル発生工程Dとの間であり、整流手段50によって1ミクロン以下の空孔を経由して、飽和ガスの溶解純水を整流する。純水が加圧されている状態では、溶解されたガスはバブルとはなっていないため、ナノバブル発生工程で均一にナノバブルを発生させるためには、その前で整流することで、容易にかつ確実に均一なナノバブルが生成できるようになる。
【0049】
(比抵抗減少機構F)
この比抵抗減少機構Fは、脱気工程Aとナノバブル発生工程Dとの間であればよいが、多くはナノバブル発生工程Dの前に配置され、整流工程Eより得たガス溶解純水の比抵抗を減少させる。この実施の形態の比抵抗低減機構Fは、比抵抗低減手段60と、比抵抗減少純水の比抵抗61とを備え、比抵抗低減手段60により酸、及び/又はアルカリを注入し、比抵抗減少純水の比抵抗61により比抵抗を低減し、および比抵抗の低減の程度をコントロールする。すなわち、比抵抗が高い状態だと、ナノバブル生成工程Dで生成されたナノバブルがすぐに一緒になって大きなバブルに成りやすくなるが、比抵抗が下がることで、ナノバブル生成工程Dにおいて、生成されたナノバブルが各々そのままの状態で存在するため、酸、及び/又はアルカリを注入することにより比抵抗を低減し、および比抵抗の低減の程度をコントロールし、例えば1MΩcm以下にする。
【0050】
(ナノバブル発生工程D)
このナノバブル発生工程Dでは、ナノバブル発生手段40によって比抵抗減少機構Fによって整流工程Eより得た比抵抗を減少させた比抵抗純水の圧力を減圧して飽和ガス含有ナノバブル水を生成する。ナノバブル発生手段40は、フィルタ41を有し、このフィルタ41の1ミクロン以下の空孔を経由して、ガス飽和の溶解純水の圧力を減圧し、ガス溶解工程Bを経たガス飽和の溶解純水の圧力を減圧して飽和ガス含有ナノバブル水を生成する。このナノバブル発生手段40の減圧構造は、フィルタ41の1ミクロン以下の空孔を経由して、減圧されることを特徴とし、できれば0.5ミクロン以下の空孔を経由して減圧される。
【0051】
このように、ナノバブル発生工程の前にガス溶解純水の比抵抗を減少させて飽和ガス含有ナノバブル水を生成することで、例えばアルカリ等を注入して、純水の比抵抗を落とす(pHを上げる)ことにより、長期間にわたり連続的で、また常に安定なガス飽和ナノバブル水を得ることが可能である。
(飽和ガス含有ナノバブル水)
製造された飽和ガス含有ナノバブル水は、半導体、液晶をはじめとする電子産業分野に使用することができる。この飽和ガス含有ナノバブル水は、直径が1μm(1マイクロメートル:100万分の1メートル)以下の超微細な気泡を含有した水であり、従って、直径1μm以上のマイクロバブルの気泡も含有している。
【0052】
飽和ガス含有ナノバブル水は、同体積を有する単一の気泡に比べて大きな比表面積を有し、また水中への気体の溶解や液中の不純物の吸着、科学的な触媒効果が大きく、また浮力が殆ど効かないため液中に滞在する時間が長いなどの特徴を有している。
【0053】
また、ナノバブルは、直径100nm程度の気泡は気液界面の表面張力により、気泡内部の圧力が30気圧程度まで増加しており、また気泡表面は活性が高く、汚れ成分を界面に吸着させる。また、100nm程度の気泡は数mm程度の気泡と比べ、同じ体積に比べ表面積が数万倍大きい、さらに分子動力学の解析結果より、数nmの気泡では気液界面の極性が揃うなどの特徴を有している。
【0054】
したがって、飽和ガス含有ナノバブル水は、ナノバブルが物体に接触する際に破壊すると数十気圧のジェットが生じし、浄化速度が大きく、物体表面の洗浄効果があり、さらに静電気による殺菌効果を有する。
【0055】
このように、飽和ガス含有ナノバブル水の生成方法は、水圧、ガス圧を制御して溶解させた後、変圧して生成し、生成したガス溶解水を整流手段(フィルタ)を経由して均一なガス溶解ナノバブル水のみ取り出す。
【0056】
そして、特に半導体の洗浄に用いる飽和ガス含有ナノバブル水に必要な条件、例えばパーテイクルフリーであること、メタルフリーであること、溶解目的のガスが既知のガスであり、ガス量が制御できること、ノズルから連続的に供給できること、常に一定のパーテイクル除去性能があることなどを有する。
【0057】
したがって、飽和ガス含有ナノバブル水は、洗浄においては、主として破壊時の数十気圧といわれるジェットによるため、ナノバブルが被洗浄物上において、均一に供給され、破壊することができる。
【実施例】
【0058】
次に、この発明に係わる飽和ガス含有ナノバブル水製造装置の実施例を記載する。
(実施例1)
水圧250kPaで飽和ガス含有ナノバブル水の生成を行った。
溶解目的ガスを水素ガスとし、60kPaの圧力で制御をおこない、ナノバブル発生工程での空孔は0.05ミクロンのフィルタを用いた。また、比抵抗は0.3MΩcmになるようにNH4OHで調整した。
生成したナノバブル水の発生バブルを測定したところ、0.1〜0.15ミクロンの粒径で46443個測定された。
(比較例1)
水圧250kPaで飽和ガス含有ナノバブル水の生成を行った。
溶解目的ガスを水素ガスとし、60kPaで圧力を制御し、ナノバブル発生工程での空孔は0.05ミクロンのフィルタを用い、実施例1と同じ条件とした。比抵抗は調整を行わず18MΩcmであった。
【0059】
生成したナノバブル水の粒径は、0.1〜0.15ミクロンの粒径で547個測定された。実施例1はナノバブルが生成されていたにもかかわらず、比較例1では粒径の小さいナノバブルの数が非常に少なかった。
(実施例2)
溶解目的ガスを水素ガスとし、25kPaの圧力で制御をおこない、ナノバブル発生工程での空孔は0.05ミクロンのフィルタを用いた。また、比抵抗は0.3MΩcmになるように炭酸で調整した。
生成したナノバブル水の発生バブルを測定したところ、0.1〜0.15ミクロンの粒径で43585個測定された。
(比較例2)
水圧250kPaで飽和ガス含有ナノバブル水の生成を行った。
溶解目的ガスを水素ガスとし、25kPaで圧力を制御し、ナノバブル発生工程での空孔は0.05ミクロンのフィルタを用い、実施例2と同じ条件とした。比抵抗は調整を行わず18MΩcmであった。
【0060】
生成したナノバブル水の粒径は、0.1〜0.15ミクロンの粒径で376個測定された。実施例2はナノバブルが生成されていたにもかかわらず、比較例2では粒径の小さいナノバブルの数が非常に少なかった。
(実施例3)
水圧250kPaで飽和ガス含有ナノバブル水の生成を行った。
溶解目的ガスを水素ガスとし、圧力を60kPaとした後、0kPaの圧力に制御をおこない、ナノバブル発生工程での空孔は0.05ミクロンのフィルタを用いた。また、比抵抗は0.3MΩcmになるようにNH4OHで調整した。
生成したナノバブル水の発生バブルを測定したところ、0.1〜0.15ミクロンの粒径で61440個測定された。
(比較例3)
水圧250kPaで飽和ガス含有ナノバブル水の生成を行った。
溶解目的ガスの圧力を60kPaとしたこと以外は、実施例3と同じ条件とした。
【0061】
生成したナノバブル水の発生バブルを測定したところ、0.1〜0.15ミクロンの粒径で46443個測定された。ナノバブル数は非常に大きいが、実施例3に比べ減少した。
(実施例4)
水圧250kPaで飽和ガス含有ナノバブル水の生成を行った。
溶解目的ガスを水素ガスとし、圧力を60kPaとした後、0kPaの圧力に制御をおこない、ナノバブル発生工程での空孔は0.05ミクロンのフィルタを用い、比抵抗は0.3MΩcmになるように炭酸で調整した。
生成したナノバブル水の発生バブルを測定したところ、0.1〜0.15ミクロンの粒径で60312個測定された。
(比較例4)
水圧250kPaで飽和ガス含有ナノバブル水の生成を行った。
溶解目的ガスを水素ガスとし、ナノバブル発生工程での空孔は0.05ミクロンのフィルタを用い、比抵抗は0.3MΩcmになるように炭酸で調整し実施例4と同じ条件とした。溶解目的ガスの圧力を60kPaとした。
生成したナノバブル水の発生バブルを測定したところ、0.1〜0.15ミクロンの粒径で31697個測定された。実施例4に比べ減少したことより、ガス圧力を一度上昇させた後、減少させることの優位性が推測された。
【産業上の利用可能性】
【0062】
この発明は、パーテイクルフリーでメタルフリーなナノバブル水を、より安定に製造し、又、溶解ガスの圧力をコントロールすることにより、半導体、液晶をはじめとする電子産業分野に使用可能な飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法及び飽和ガス含有ナノバブル水の製造装置に適用可能であり、長期間にわたり連続的で、また常に安定なガス飽和ナノバブル水を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0063】
A 脱気工程
B ガス溶解工程
C 圧力制御機構
D ナノバブル発生工程
E 整流工程
F 比抵抗減少機構
10 脱気手段
11 脱気ケース
12 膜
13 迷路
14 堰板
15 入口
16 出口
20 ガス溶解手段
21 ガス溶解ケース
22 膜
23 迷路
24 堰板
25 入口
26 出口
27 溶解ガス入口
28 溶解ガス圧力制御口
30 圧力制御手段
31 第1の圧力センサ
32 第2の圧力センサ
40 ナノバブル発生手段
41 フィルタ
50 整流手段
60 比抵抗減少手段
61 比抵抗減少純水の比抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純水を脱気して脱気純水を生成する脱気工程と、
前記脱気純水に加圧ガスを溶解してガス飽和の飽和ガス溶解純水を生成するガス溶解工程と、
前記ガス溶解工程を経た前記ガス飽和溶解純水の、圧力を減圧して飽和ガス含有ナノバブル水を生成するナノバブル発生工程と、を含み、
前記ガス溶解工程において溶解ガスの圧力を制御し、
前記ナノバブル発生工程の前に前記ガス溶解純水の比抵抗を減少させることを特徴とする飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法。
【請求項2】
前記脱気工程は、
膜を介することにより一方に純水を、他方に脱気状態にすることにより、純水中の気体成分を純水より除去し、膜を介して、脱気状態の空間に導きだすことを特徴とする請求項1に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法。
【請求項3】
前記ガス溶解工程は、
膜を介することにより一方に脱気純水を、他方に溶解目的のガスを導入して膜を介して溶解目的ガスが脱気純水に溶け込み、脱気純水を飽和ガス溶解純水にすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法。
【請求項4】
前記脱気純水に溶解させる溶解目的のガスの圧力は、
加圧されたガスであり、
かつ前記脱気純水の水圧、及び/又は前記飽和純水の水圧よりも低い圧力にすることを特徴とする請求項3に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法。
【請求項5】
前記脱気純水に溶解させる溶解目的のガスの圧力を、
一度、前記脱気純水の水圧、及び/又は前記飽和純水の水圧までの間に上昇させた後に、下げることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法。
【請求項6】
前記ナノバブル発生工程は、
1ミクロン以下の空孔を経由して、減圧されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法。
【請求項7】
前記ガス溶解純水の比抵抗の減少は、
酸、及び/又はアルカリを注入することにより比抵抗を低減し、
および比抵抗の低減の程度をコントロールすることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法。
【請求項8】
前記ガス溶解工程と前記ナノバブル発生工程との間に、1ミクロン以下の空孔を経由してガス飽和純水を整流する整流工程を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造方法。
【請求項9】
純水を脱気して脱気純水を生成する脱気工程と、
前記脱気純水に加圧ガスを溶解してガス飽和の溶解純水を生成するガス溶解工程と、
前記ガス溶解工程を経た前記ガス飽和溶解純水の、圧力を減圧して飽和ガス含有ナノバブル水を生成するナノバブル発生工程と、を含み、
前記ガス溶解工程において溶解ガスの圧力を制御する圧力制御機構を有し、かつ前記ナノバブル発生工程の前に前記ガス溶解純水の比抵抗を減少させる比抵抗減少機構を有することを特徴とする飽和ガス含有ナノバブル水の製造装置。
【請求項10】
前記脱気工程は、
膜を介することにより一方に純水を、他方に脱気状態にすることにより、純水中の気体成分を純水より除去し、膜を介して、脱気状態の空間に導きだす構造を有することを特徴とする請求項9に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造装置。
【請求項11】
前記ガス溶解工程は、
膜を介することにより一方に脱気純水を、他方に溶解目的のガスを導入して膜を介して溶解目的ガスが脱気純水に溶け込み、脱気純水を飽和ガス溶解純水にする構造を有することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造装置。
【請求項12】
前記脱気純水に溶解させる溶解目的のガスの圧力は、
加圧されたガスであり、
前記脱気純水の水圧、及び/又は前記飽和純水の水圧よりも低い圧力にすることを特徴とする請求項11に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造装置。
【請求項13】
前記脱気純水に溶解させる溶解目的のガスの圧力を、
一度、前記脱気純水の水圧、及び/又は前記飽和純水の水圧までの間に上昇させた後に、下げることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造装置。
【請求項14】
前記ナノバブル発生工程における減圧は、
1ミクロン以下の空孔を経由して、減圧されることを特徴とする請求項9乃至請求項13のいずれか1項に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造装置。
【請求項15】
前記比抵抗低減機構は、
酸、及び/又はアルカリを注入することにより比抵抗を低減し、および比抵抗の低減の程度をコントロールすることを特徴とする請求項9乃至請求項14のいずれか1項に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造装置。
【請求項16】
前記ガス溶解工程と前記ナノバブル発生工程との間に、
1ミクロン以下の空孔を経由してガス飽和純水を整流する整流工程を有することを特徴とする請求項9乃至請求項15のいずれか1項に記載の飽和ガス含有ナノバブル水の製造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−245408(P2011−245408A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120179(P2010−120179)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(598066215)株式会社コアテクノロジー (9)
【Fターム(参考)】