説明

飽和(水素化)油と不飽和トリグリセリド油との特定のブレンドを含む身体洗浄組成物

本発明は、界面活性剤系を1から40重量%の量で、および飽和トリグリセリド油と不飽和トリグリセリド油とのブレンドを1から40重量%の量で含み、飽和トリグリセリドの量がブレンドの15重量%から35重量%であり、ならびに不飽和トリグリセリドの量がブレンドの85重量%から65重量%であるような身体洗浄組成物を提供する。ブレンドは30から60ジュール/グラムの相転移エンタルピーおよび80を上回るヨウ素価を有している。この特定配合物は、機能的に有利な効果を提供し、また、一方の塗布適性および付着と他方の優秀な起泡性維持(ブレンドの代わりに不飽和トリグリセリドが使用された同じ組成物の起泡値の少なくとも約70%)との完全なバランスを実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能的に有利な効果(たとえば湿潤化)を与えるためにトリグリセリド油が使用されている界面活性剤含有身体洗浄組成物に関する。より特定的には本発明は、トリグリセリド油を完全飽和(水素化)トリグリセリド油と不飽和液体トリグリセリド油とのブレンドとして含む組成物に関する。完全水素化トリグリセリド油と液体トリグリセリド油とが臨界比で存在するとき、トリグリセリド混合物は、(1)最適な塗布適性および付着に理想的なレオロジー(ペトロラタムのレオロジーに近いレオロジーであると定義される)、および、(2)最適な泡量を得る能力(不飽和液体トリグリセリド油の泡量の近い値であると定義される。一般的にこのような液体トリグリセリド油は固体結晶よりも消泡効果は小さいが付着に必要な最適レオロジーを有していない)との好ましいバランスを獲得する。
【0002】
身体洗浄組成物は単なる清浄化以上の付加的な皮膚有益効果を消費者に提供することを追求している。このような組成物によって提供される主な有益効果の1つが湿潤化である。多くの湿潤化有益物質のうちでも、その使用が最も普及した優れた湿潤化剤は、トリグリセリド基剤の油(たとえば植物油)および石油基剤の炭化水素油(たとえば鉱油およびペトロラタムとしても知られた石油ゼリー)のような皮膚緩和油である。これらの皮膚緩和剤はそれらが廉価であることまたは優れた吸蔵能力をもつことが理由でその使用が普及している。
【0003】
ペトロラタムおよび液体トリグリセリドのような皮膚緩和剤は皮膚に容易に塗布され擦り込まれて疎水性薄膜を形成でき、この膜は皮膚の脱水を遅らせて界面活性剤による刺激または脂質/タンパク質の損傷を軽減する。身体洗浄製品中の皮膚緩和油がこの役割を果たすことができるのはすすぎ後に十分な量の皮膚緩和油が付着して保持されているときに限られる。この意味で、粘性の半固体ゲル(たとえば石油)はそれらのレオロジーの故により付着し易くよりすすぎ落ちし難いので一般的に液体トリグリセリド油よりも有効である。他方、トリグリセリド植物油は天然の植物性材料であり、石油起源の油よりも低刺激性でありまた油脂感触が少ない。
【0004】
したがって、石油基剤の油と同様に速やかに皮膚に擦り込まれ容易に皮膚に付着できる(たとえば石油基剤の油と同様のレオロジー特性を有している)トリグリセリド植物油ブレンドを見出すことが望まれてきた。これを獲得する1つの方法は、たとえばペトロラタムと同様のレオロジー特性を有するように植物油を増粘するために固体粒子または高溶融性ワックスを使用することである。問題は、構造化油中の高結晶化度材料は一般的に、高溶融性材料含有構造化油を使用しない同様の配合物に比較して起泡値も減少させることである。
【0005】
予想外にも出願人らはここに、完全水素化植物油と非水素化植物油とを特定の比(たとえばダイズ油の場合、混合物のヨウ素価が70を上回る値、好ましくは80を上回る値になる比、好ましくはヨウ素価が81から約120になるような比)で使用するならば、ペトロラタムと同様のレオロジーを有していながら(したがってより付着し易いものでありながら)、不飽和トリグリセリド油単独の使用に比較して少なくはない起泡値を維持している(たとえば、トリグリセリドが使用されている他の点で等しい液体組成物の起泡値を測定したときに不飽和トリグリセリド植物油単独の起泡値の少なくとも70%の起泡値を有している)皮膚緩和剤を同時に製造するのが可能であることを発見した。
【0006】
より特定的には、起泡性界面活性剤によって発生した実質的な泡量を依然として維持しながら吸蔵油の付着効果を強化するために、正規植物油(不飽和トリグリセリド油)は、該正規トリグリセリド油を対応するそれらの完全水素化油と最適重量比でブレンドするだけで実際に増粘される。本発明の最適ブレンドを使用して十分な泡を維持しながら構造化または増粘できる部分飽和トリグリセリド油の非限定例は、ヒマワリ油、ヒマシ油、ココヤシ油、綿実油、メンハーデン油、パーム核油、パーム油、ピーナツ油、ダイズ油、菜種油、亜麻油、米ヌカ油、松根油、ゴマ油、米ヌカ油、対応するそれらのすべての水素化相当物およびそれらの混合物を含む。
【背景技術】
【0007】
EP1,479,365は結晶質材料で構造化された有益物質材料を開示している。U.S.公開2004/023569A1は、結晶質ワックス構造化有益物質を含む非バー組成物を開示している。U.S.2004/0234467A1は親水性有益物質付着用の構造化有益物質を含む組成物を開示している。EP1,479,378は結晶質ワックス構造化デリバリービヒクルを含むバーに関する。
【0008】
U.S.2004/0234468、U.S.2004/0234469およびU.S.2004/0234558は疎水性物質のデリバリーを増進する構造化プレミックスを開示している。
【0009】
WO2004/017745は食品組成物用の脂肪相中に液体油または固体粒子を分散させるために非水素化油と水素化油とを混合することを開示している。
【0010】
これらの参考文献はいずれも、(たとえば付着に)最適なレオロジーとなるように特定的に定義された比の範囲内の完全飽和トリグリセリドと不飽和トリグリセリドとの特定のブレンドを開示していない。
【0011】
CapのU.S.2005/0281851は、植物油ブレンドと付加脂肪酸とを含み、ブレンドが20から80の範囲のヨウ素価を有しており、適用可能な粘度範囲が特定されていない化粧品を開示している。本発明の臨界比に関する開示は全く見られない。さらに、本発明の少なくとも1つの皮膚緩和剤においては(たとえば、ダイズ油ブレンドの場合)、組成物が(付着に)望ましい油粘度を与えるようなより高いヨウ素価、具体的には81から120のヨウ素価をもつトリグリセリド油のブレンドを含む。このようなブレンドは、Cap文献中の20から80というヨウ素価範囲をもつ植物油ブレンドに比較して、付着に好適な粘度を有しかつ十分な泡を維持していた。また、指摘したように、Capにはブレンドの臨界比が示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1,479,365号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/023569号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0234467号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1,479,378号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/0234468号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2004/0234469号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2004/0234558号明細書
【特許文献8】国際公開第2004/017745号
【特許文献9】米国特許出願公開第2005/0281851号明細書
【発明の概要】
【0013】
第一の態様において本発明は、
(1)1から40重量%、好ましくは5から40重量%、より好ましくは10から30重量%の、アニオン性、非イオン性、カチオン性、両性/双イオン性界面活性剤およびそれらの混合物から成る群から選択された界面活性剤系
(2)0.1から40重量%、好ましくは30重量%以下、好ましくは約5から30重量%の、不飽和(部分水素化または非水素化)トリグリセリド油と飽和(水素化)トリグリセリド油とのブレンドであって、飽和トリグリセリドの量がブレンドの15%から35%、好ましくは20から30%であり、不飽和液体トリグリセリド油がブレンドの85から65、好ましくは80から70%を構成するブレンド、
を含み、
−20℃から100℃の範囲にわたって測定したときに、ジュール/グラムで測定されたブレンドの相転移エンタルピーによって規定されるブレンドの結晶化度が30から60であり、好ましくは55を超過しないこと、
場合により、ブレンドを含む組成物の起泡値が油不使用のまたは上記ブレンドの代わりに液体トリグリセリド油を単独使用した同じ組成物の起泡値の少なくとも70%である身体用組成物に関する。
【0014】
1つの皮膚緩和剤において(トリグリセリド油がダイズ油である場合)、水素化ダイズ油(HSBO)と不飽和トリグリセリド油(SBO)とのブレンドのヨウ素価は、70を上回る値、好ましくは80を上回る値、好ましくは81から120、より好ましくは91から105である。ダイズ油の場合にこのようなヨウ素価は記載した臨界比に対応する(すなわち、付着性能と起泡性能とのバランスを強化するための臨界比に対応する)。
【0015】
液体界面活性剤を含有する身体用組成物中にこのようなブレンドを使用することで、ペトロラタムと同様のレオロジーを有しており(したがって付着が強化されており)同時に良好な起泡値を維持しているトリグリセリドの使用が可能になる。
【0016】
これらのおよびその他の態様、特徴および利点は以下の詳細な記載および特許請求の範囲を読了した平均的な当業者に明らかになるであろう。本発明の1つの態様のいかなる特徴も本発明のいずれかの別の態様に利用できることは明白であろう。以下の記載に与えた実施例は本発明を明確にするものであり本発明を実施例自体に限定するものではないことに留意されたい。実験実施例または他の指示がある場合以外には、この文中に使用した成分の量または反応条件を表すすべての数値はどの場合にも“約”という語によって修飾されていると理解されたい。同様に、他の指示がなければすべてのパーセンテージは全組成物の重量/重量パーセンテージである。“xからyまで”という型式で表された数値範囲はxおよびyを含むと理解されたい。特定の特徴について“xからyまで”という型式で複数の好ましい範囲が記載されているとき、異なる端点を結ぶすべての範囲もさらに考察されていると理解されたい。
【0017】
明細書または特許請求の範囲に“含む”という語が使用されている場合、これは具体的に記述されない用語、段階または特徴を排除するものではない。他に明記されていなければすべての温度は摂氏(℃)で表されている。他に明記されていなければすべての測定値はSI単位で表されている。引用したすべての文献は参照によってこの文中に−適切な箇所で−組込まれるものとする。
【0018】
次に添付図面を参照しながら単なる例証として本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、25重量%の飽和(水素化)ダイズ油と75重量%の不飽和(液体)ダイズ油とを含む油混合物のDSC(示差走査熱量測定)図を完全水素化油に比較して示す。混合物は著しく下がった位置に幅広の相転移を有しており、低温領域にシフトしていたのでペトロラタムにいっそう類似していた(図2参照)。
【図2】図2は、図1のブレンドのDSC測定相転移サイクル(加熱および冷却)をペトロラタムに比較して示す。両者のDSC相転移は同等の熱流幅およびオーバーラップ温度範囲を有している。このような理由で出願人らはこれらの特定ブレンドがペトロラタムに類似のレオロジーおよび液滴表面形態を有していると考える。
【図3】図3は、ペトロラタムに類似の熱特性を有している不飽和相当物に対する完全水素化ダイズ油の適用可能な比を同定するために使用した様々な組成の部分水素化ダイズ油ブレンドの結晶化エンタルピーである。
【図4】図4は、ペトロラタムに比較した本発明のブレンドの剪断粘度プロフィルのプロットである。ここでもまたプロフィルがペトロラタムと同様であることが示される。
【図5】図5は、ブレンド(たとえばダイズ油)中の水素化油の含量に対する油ブレンドのヨウ素価(IV)の線形相関のプロットである。原則的に、他のトリグリセリド基剤油もまた特有の勾配および切片をもつこの直線性を有している。本発明の好ましいブレンド(ブレンドの15から35重量%の完全飽和HSBOを含む)が85から110のIV価を有していることが看取される。この範囲外の(本発明の比の範囲外の比に対応する)IV価は本発明のブレンドのレオロジーおよび起泡性の要件を同時に満たすことはできないであろう。
【図6】図6は、界面活性剤組成物(直接エステル化脂肪アシルイセチオネートを界面活性剤として含む組成物)中の様々なトリグリセリドブレンドの泡量の測定値である。10mlの標準泡量を与える対照として界面活性剤基剤(皮膚緩和油非含有)を使用した。油ブレンド中に完全飽和油が過剰に存在する場合(たとえば>30重量%)、起泡値が低下することが看取される。しかしながら完全飽和油が十分に存在しない場合、油ブレンドはペトロラタムのレオロジーを有することができないのでペテロラタムと同様の付着を期待することができない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、完全飽和(水素化)トリグリセリド油と不完全飽和(非水素化または部分水素化)トリグリセリド油との特定ブレンドを含む界面活性剤含有液体身体洗浄組成物(>30%、好ましくは少なくとも35%の水を含有している水基剤組成物が好ましい)に関する。より特定的には、飽和油の量が限定した範囲内にありかつ不飽和油の量が限定した範囲内にある(上記双方の範囲はまたブレンドの固有ヨウ素価に対応する範囲である)ようにブレンドが特定的に配合されているとき、ブレンドはまさしく、不飽和トリグリセリドよりも多量でペトロラタムと同等の付着量で付着するために必要な最適剪断粘度および塗布適性を獲得する好都合な特性値を有するであろう(たとえば、不飽和トリグリセリド油の粘度を向上させこれによってペトロラタムと同等に付着するために十分な水素化トリグリセリド、すなわち約20から30%を含有するであろう。図4参照)。それでもなおブレンドは、トリグリセリド油が使用されていない同じ組成物の起泡値の少なくとも70%に達しない点まで起泡値を低下させるほどに多い量の水素化トリグリセリドを含有しない(上限レベルは広い温度範囲にわたり平坦な熱相転移ピークを有する約35%好ましくは30%以下)。すなわち、ブレンドの約15から35%、好ましくは20から30%の完全水素化油を含有するブレンドだけが本発明の組成物に使用されたときに必要なレオロジー特性および望ましい起泡特性を与えるであろう。
【0021】
より特定的には本発明の組成物は、
(1)アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性/双イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤およびそれらの混合物から成る群から選択された界面活性剤系を1重量%から40重量%、好ましくは5から40重量%、より好ましくは10から35重量%の量で含み、
(2)飽和(すなわち水素化)トリグリセリド油と液体(不飽和)トリグリセリド油とのブレンドを1から40重量%、好ましくは30重量%を下回る量、好ましくは約5から30重量%の量で含み、
上記ブレンドがブレンドの15から35重量%、好ましくは20から30重量%の完全飽和油と、85から65重量%、好ましくは80から70重量%の不飽和油(たとえば、部分飽和油を形成するための天然不飽和油と完全水素化油とのミックス)とを含む。
【0022】
ブレンドはさらに、(1)特定の油の固有ヨウ素価に対応するヨウ素価、(2)ブレンドが使用されている組成物の相転移エンタルピー(たとえばペトロラタムに対するレオロジーしたがって付着能力の相関)、および理想的には、(3)ブレンドが使用されている組成物の起泡値を有することを特徴とする。本発明をより詳細に以下に説明する。
【0023】
本発明のブレンドが使用されている組成物は1重量%から40重量%、好ましくは5から40重量%、より好ましくは10から35重量%の界面活性剤を含む。界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、両性/双イオン性、カチオン性またはそれらの混合物でよい。使用し得る多くの界面活性剤の例はたとえばTsaurの米国特許番号6,395,690に提示されている。
【0024】
アニオン性界面活性剤は脂肪族スルホネート(たとえばC−C22のアルカンもしくはアルケンスルホネートまたは芳香族スルホネート)、アルキルスルフェート(アルキルおよびアルキルエーテルスルフェートを含む)、スルホスクシネート、タウレート、サルコシネート、スルホアセテート、アルキルホスフェートでよい。
【0025】
アニオン性界面活性剤はまた、カルボキシレートおよびエーテルカルボキシレートでもよい。別の好ましいクラスはCからC22のアシルイセチオネートである。これらのエステルは、アルカリ金属イセチオネートを混合脂肪族脂肪酸と反応させることによって製造される。好ましい実施形態において、イセチオネート界面活性剤は組成物の5から25重量%、好ましくは8から20重量%を構成する。
【0026】
適当な双イオン性界面活性剤は、脂肪族第四級アンモニウム、ホスホニウムおよびスルホニウム化合物から広く誘導体され、該化合物中の脂肪族ラジカルが直鎖または分枝鎖であり、脂肪族置換基の1つが8から18個の炭素を含有し、1つがアニオン性の基、たとえばカルボキシ、スルホネート、スルフェート、ホスフェートまたはホスホネートを含有する。
【0027】
適当な両性界面活性剤は、少なくとも1つの酸基(たとえばカルボン酸基またはスルホン酸基)を含む。それらは第四級窒素を含み、第四級アミノ酸である。それらは典型的にはCからC18のアルキルまたはアルケニル基を含む。それらの例は、ベタイン、アミドベタイン、スルホベタインを含む。
【0028】
界面活性剤系はまた場合により非イオン性界面活性剤を含み得る。
【0029】
使用し得る非イオン性界面活性剤は特に、疎水性基と反応性水素原子とを有している化合物たとえば脂肪族アルコール、酸、アミドまたはアルキルフェノールとアルキレンオキシド、特に単独のまたはプロピレンオキシドと共存するエチレンオキシドとの反応生成物を含む。具体的な非イオン性洗剤化合物はアルキル(C−C22)フエノール−エチレンオキシド縮合物、脂肪族(C−C18)第一級または第二級の直鎖状または分枝状アルコールとエチレンオキシドとの縮合生成物、プロピレンオキシドとエチレンジアミンとの反応生成物とエチレンオキシドとの縮合によって製造された生成物である。他のいわゆる非イオン性洗剤化合物は長鎖第三級アミンオキシド、長鎖第三級ホスフィンオキシドおよびジアルキルスルホキシドを含む。
【0030】
非イオン性界面活性剤はまた、多糖アミドのような糖アミドでもよい。具体的には、該界面活性剤は、参照によってここに組込まれるAuらの米国特許番号5,389,279に記載されたラクトビオンアミドの一種でもよく、または、参照によってここで主題出願に組込まれるKelkenbergの特許番号5,009,814に記載の糖アミドの一種でもよい。
【0031】
使用し得る他の界面活性剤はParran Jr.の米国特許番号3,723,325に記載されており、また、Llenadoの米国特許番号4,565,427に開示されているようなアルキル多糖非イオン性界面活性剤である。双方の特許もまた参照によって主題出願に組込まれる。好ましいアルキル多糖はアルキルポリグリコシドである。
【0032】
適当なカチオン性界面活性剤は、アルキルトリモニウムクロリドおよびメトスルフェート、ジアルキルジモニウムクロリドおよびメチルスルフェート、アルキルアルコニウムクロリドおよびメチルスルフェート、ならびに、それらの混合物から成る群から選択される。これらの界面活性剤はアルキル鎖あたりC12からC24の炭素原子を含有する。最も好ましいカチオン性界面活性剤は、ステアリルアルコニウムクロリド、ステアリルトリモニウムクロリド、ジ−ステアリル−ジモニウムクロリド、および、それらの混合物から成る群から選択される。
【0033】
本発明のトリグリセリドブレンドを使用し得る特に好ましい組成物は、5から20重量%、好ましくは8から15重量%のDEFI(直接エステル化脂肪酸イセチオネート)と5から15重量%の両性界面活性剤特にベタインとを含む。
【0034】
本発明の第二の成分は、飽和(水素化)トリグリセリドと不飽和(非水素化または部分水素化)トリグリセリドとのブレンドである。ブレンドは一般的に、ブレンドが使用されている組成物の1から40%、好ましくは20から30%を構成する。
【0035】
本発明によれば、飽和(完全水素化)トリグリセリドはブレンドの15から35%、好ましくは20から30%を構成し、不飽和トリグリセリドはブレンドの85から65%、好ましくは80から70%を構成するべきである。ブレンドが限定した範囲よりも多い量または少ない量を含有してはならない。飽和トリグリセリドが過多量で使用されるならば不飽和油だけを含有するブレンドに比べて起泡値が低下することを出願人らは知見した。他方、飽和トリグリセリドが過少量で使用されるならば組成物は油が付着できるために必要なレオロジー(塗布適性)を獲得できないであろう。
【0036】
飽和および不飽和のトリグリセリドの臨界量はまた、臨界範囲を限定するブレンドのヨウ素価によって規定される。たとえばダイズ油という具体的な場合には、飽和油対不飽和油が所要範囲(15から35%の飽和および85から65%の不飽和)にあるブレンドは81から120のヨウ素価(IV)を有している。このIVは不飽和結合の平均測定値であると定義される。
【0037】
さらに本発明の組成物は相転移エンタルピーによって定義され得る。(すなわち、使用温度範囲で同様に定義された熱特性をもつ化合物またはブレンドは同等のレオロジーおよび抑泡効果を有している)。したがって、たとえば本発明のブレンドの相転移エンタルピーの上限および下限の範囲がペトロラタムのものとほぼ同じである場合、ブレンドとペトロラタムとの(それらの付着予測に関係のある)レオロジーはほぼ同じであろう。
【0038】
“ヨウ素価”(IV)は、不飽和化合物またはブレンドが任意条件下で所与の時間内に吸収するであろうヨウ素のグラム数を表す。低いヨウ素価は高レベルの飽和(水素化)度を意味し、またその逆も真である。ヨウ素価はAmerican Oil Chemists Society(AOCS Cd 1−25)のWUJS法によって測定できる。
【0039】
上記に記載したように、植物油がダイズ油であるとき、ブレンドのIV価は70を上回る値、好ましくは80を上回る値、好ましくは81から120、より好ましくは90から110でなければならない。これらの数値は、ブレンドが約15から35重量%の飽和SBOと85から65重量%の不飽和SBOとを含有することを表す。
【0040】
本発明のブレンドを本発明の組成物中に使用し、相転移エンタルピー(融解/冷却)が限定した臨界範囲内にあると測定されたとき、組成物のレオロジーは最適付着が得られるような値であろう。具体的には、ブレンドを含む組成物は、−20から100℃の温度範囲で測定したときに、ジュール/グラム(J/g)で測定して20から65、好ましくは30から55の相転移エンタルピーを有するであろう。これらのエンタルピー値はピークの平坦化を表しており、付着に理想的なレオロジーを有する組成物を示唆する。
【0041】
本発明の組成物は好ましくは水基剤の液体クレンザー組成物であり、たとえば、少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%の水を含有する。プロトコルの項に記載したプロトコル3を使用して測定すると、組成物は典型的には0.1秒−1で測定して10から1000ポアズ、好ましくは100から500ポアズの粘度を有しているであろう。
【0042】
1つの実施形態において、(特許請求の範囲に記載の飽和/不飽和比を有している)本発明の油ブレンドを含む身体洗浄組成物はペトロラタムを最小量で含むかまたは実質的に含まない。組成物は良好な起泡特性を維持しながらも優秀な油付着効率を有している。
【0043】
第二の実施形態において本発明は、トリグリセリドブレンドを含む液体組成物であり、組成物が同じ組成物から付着できるペトロラタムの量と同等の量でトリグリセリドを付着させ、また同時に、組成物が不飽和(非水素化または部分水素化)トリグリセリドを含んでいる組成物の少なくとも70%好ましくは少なくとも75%という高い起泡値を有している液体組成物の配合方法を提供する。
【0044】
この方法は、ブレンドの15から35%が飽和(水素化)トリグリセリドから成りブレンドの85から65%が不飽和トリグリセリドから成るトリグリセリドブレンドを、約1から40%、好ましくは30%以下の量で選択する段階と、このようなブレンドをブレンド含有液体組成物として配合する段階とを含む。好ましい組成物は5から25%のDEFIと5から15%の両性界面活性剤(たとえばベタイン)とを含む組成物である。
【0045】
プロトコル
1.熱分析
本発明の油ブレンドの相転移プロフィルはTA instruments Q−1000を使用する示差走査熱量測定(DSC)によって規定された。典型的には、5から10mgの油ブレンドを室温から100℃まで加熱し、3℃/分の勾配速度で室温以下まで冷却した。ソフトウェアUniversal Analysis 2000を使用して発熱曲線および吸熱曲線を積分することによって相転移エネルギーを計算し平均した。
【0046】
2.泡立ち評価
身体洗浄サンプルの泡立ち性能と含有油ブレンドの抑泡効果はシリンダー振盪法によって評価した。該方法では、キャップの付いた25.0ml容のメスシリンダーに5倍に希釈した身体洗浄サンプル5.0mlを導入した。同じ振盪速度および振幅で手動振盪を10回行うことによって泡を発生させた。一斉に発生した泡が安定する振盪20秒後に泡量の高さを読取った。油ブレンド含有および非含有の身体洗浄配合物の比較を使用して油ブレンドの抑泡効果を示す。
【0047】
3.剪断粘度測定
油ブレンドの剪断粘度は、Rheometric Scientific ARES(SR−5,Rheometric Scientific,Piscataway,NJ)製のひずみコントロールドレオメーターによって測定した。直径25mmの平行プレートの上部プレートと下部プレートとの間に典型的には0.5から1.0mmのギャップを設けてレオメーターを設置した。試験温度は23℃であった。剪断速度が0.1から100秒−1まで対数的に変化するプログラム化定常剪断速度掃引を実行し、10単位毎に(すなわち、剪断速度が10倍になる毎に)5つの点を記録した。出力に粘度が剪断速度の関数として得られる。
【実施例】
【0048】
(実施例1)
ブレンドの熱転移
たとえば25%の完全飽和(完全水素化)ダイズ油と75%の不飽和ダイズ油との混合物を含む本発明の系と完全水素化油との間の相転移に有意差があることを示すために、出願人らは双方の示差走査熱量測定試験を行った(図1)。図1から看取されるように、完全水素化ダイズ油(HSBO)は、たとえば約2.6ワット/グラムの最大熱流量に急峻な相転移ピーク(結晶化、熱流中で測定)を有しており、分布幅(ハーフピーク温度ΔT)はたとえば約3℃と狭い。対照的に、25%完全水素化油と75%不飽和油との混合物は有意に下がった位置に(熱流量は0.5w/g未満)幅広の(ΔTは約12℃)相転移ピークを生じる。
【0049】
意外にも、上記ブレンドの相転移温度は約48℃から30℃という低温にシフトしていた。この結晶転移温度よりも高温である体温(37℃)で上記ブレンドは全く予期しなかったことに液体身体洗浄配合物中のペトロラタムと同様に挙動する。指摘したように、これは当業界にとっても驚くべき予想外のメカニズムである。
【0050】
このように下がった位置の幅広の低温にシフトした相転移ピークの有意性をさらに証明するために、出願人らはまた、記録した25%/75%ブレンドの加熱/冷却サイクルをペトロラタムの熱流データに比較した。この比較を図2に示す。看取されるように、双方の熱流ピークは0.2から0.4ワット/グラムに測定され、両者は同等の範囲内に存在する。より正確には、本発明の加熱および冷却サイクルに由来するエンタルピーによって示される相転移エネルギーは図3から看取されるようにペトロラタムと同等である。出願人らは、本発明の特定ブレンドがペトロラタムに実質的に同様のレオロジーおよび付着を有する理由はこれらの値によって説明されると考える。すなわち、ブレンドはいまやペトロラタムのように挙動し、しかも、この“構造化”は記載したように限定した比の油を混合するだけなので、消泡が付随することはない。
【0051】
(実施例2)
ブレンドのレオロジー
ペトロラタムと本発明の特定ブレンド(たとえば、ブレンドの約15から35%、好ましくは20から30%が完全飽和されているブレンド)とのレオロジーが同様であることを証明する別の方法は剪断プロフィルを比較することである。この比較は、図4に示すように、粘度(パスカル.秒で測定)に対して剪断速度(秒の逆数で測定)をプロットすることによって行う。
【0052】
またもや図4は、本発明の特定ブレンド(すなわち特定比の飽和対不飽和トリグリセリド油)の粘度がペトロラタムと同様のプロフィルを有していることを示す。このこともまた液体クレンジング用途において適切な要件を満たすブレンドを使用するために重要であろう。
【0053】
(実施例3)
ブレンドの調製
ブレンドの約15から35%が完全水素化されているブレンドを得るためには、(水素化を制御することが難しい)トリグリセリド油を出発材料とする制御水素化方法を使用するのでなく、望ましいレオロジー特性および熱特性を生み出すために必要な割合で植物油と完全水素化植物脂肪とを(双方の成分の融点を上回る温度で)簡単に混合することが可能である。
【0054】
この混合は、ヨウ素価(脂質飽和の尺度)と部分水素化油混合物中の完全水素化油の配合比との間で出願人らが測定した強力な線形相関に注目することによって制御できる。測定を行って図5に示すようにプロットした。
【0055】
具体的には、30%を上回る完全水素化油を含むブレンドのレベルでヨウ素価が91を下回ることが図5から看取される。したがって、81を上回る、好ましくは91を上回るヨウ素価をもつブレンドを選択することによって、望ましいレオロジーおよび必要な熱流値を有するブレンドを正しく選択することが可能である。
【0056】
(実施例4)
指摘したように、本発明のブレンドは、付着を強化できるレオロジーを有するだけでなく、不飽和トリグリセリド油(たとえばダイズ油)を含む組成物の泡量の好ましくは少なくとも約70%の泡量を維持するように選択される。起泡臨界が何処にあるかを示すために、出願人らは以下の処理を行った。
【0057】
様々な量の飽和油対不飽和油を含む植物油をDEFI液体基剤(直接エステル化脂肪アシルイセチオネートを含む組成物)中で20重量%から30重量%となるように配合し、シリンダー手動振盪法によって室温で泡立ち性能を評価した。構造化油の起泡性および抑泡効果は図6に示すように泡量から比較できた。20重量%または30重量%の部分水素化ダイズ油を含有するDEFI液体組成物は明らかに、完全水素化油がブレンドの>30%を構成するようになるまで(すなわち、少なくともダイズ油のIVが91よりも低い値になるときまで)は泡量を劇的に減少させないであろう。すなわち、IVは81を上回る値でなければならないが、好ましくは105を下回り、明らかな抑泡効果が現れる91までである。
【0058】
液体組成物中の油含量がもっと低いとき(<20%)、記載のように抑泡効果が比例的に減少するので適用可能なIV価の下限値は91を下回り、81までであった。
【0059】
(実施例5)
以下の配合物は、本発明のトリグリセリドブレンドが使用され得る典型的な配合物である。
【0060】
DEFI液体基剤の配合物
【0061】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1から40重量%の、アニオン性、非イオン性、カチオン性、両性/双イオン性の界面活性剤およびそれらの混合物から選択された界面活性剤系
(2)1から40重量%の、飽和トリグリセリド油と不飽和トリグリセリド油とのブレンドであって、飽和トリグリセリドの量がブレンドの15重量%から35重量%であり、ならびに不飽和トリグリセリドの量がブレンドの85重量%から65重量%である、ブレンド
を含み、
−20℃から100℃の範囲で測定したときに、ジュール/グラム(J/g)で測定したブレンドの相転移エンタルピーが30から60であり、ならびに
ブレンドを含む組成物の起泡値がブレンドの代わりに不飽和トリグリセリドが使用されている同じ組成物の起泡値の少なくとも70%である
身体用液体組成物。
【請求項2】
ブレンドが組成物の15から35重量%を構成する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
水素化トリグリセリドの量がブレンドの20から30重量%であり、ならびに不飽和トリグリセリドの量がブレンドの80から70重量%である請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
示差走査熱量測定によって測定した結晶相転移エンタルピーが30から60ジュール/グラムである請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ブレンドに使用された油がダイズ油を含み、ブレンドのヨウ素価が80を上回る請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ブレンドが組成物の1重量%から40重量%を構成し、ならびに組成物がペトロラタムを実質的に含まない請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
ブレンドのヨウ素価が81から120である請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
トリグリセリドブレンド含有組成物の配合方法であって、組成物が同じ組成物から付着するペトロラタムの量と同等の量のトリグリセリドを付着させ、ならびに同時に組成物が不飽和(非水素化または部分水素化)トリグリセリドを含有するときの少なくとも70%という高い起泡値を有しており、
方法が、(a)ブレンドの15から35重量%が飽和(水素化)トリグリセリドから成りブレンドの65から85重量%が液体トリグリセリドから成るトリグリセリドブレンドを選択する段階および(b)このようなブレンドをブレンド含有液体組成物として配合する段階を含むトリグリセリドブレンド含有組成物の配合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−517973(P2012−517973A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549551(P2011−549551)
【出願日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051685
【国際公開番号】WO2010/092102
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】