説明

飾り具

【課題】鏡餅を模した容器のくびれ部に、紐によって取り付けられる水引などの飾りが脱落するのを抑制する
【解決手段】餅を上下方向に重ねてなる鏡餅を模した鏡餅容器と、前記鏡餅容器の上面に載置される象形体と、前記象形体を囲う第1の部分と前記鏡餅容器の上段の餅の部分と嵌合される第2の部分を有する容器カバーと、前記鏡餅容器の上下の餅の間に形成されているくびれの部分に周方向に掛け回された環状の紐と、この環状の紐に連結された飾りと、を備える鏡餅を模した飾り具であって、前記容器カバーは、下面側の開口縁端部が前記くびれの部分に位置しており、さらに開口縁端部から外方側に延出する係止爪を有している構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば正月に飾られる鏡餅を模した飾り具に関する。
【背景技術】
【0002】
鏡餅は、代々継承されている日本の伝統として、正月に家庭や店舗などで飾られている。近年においては、鏡餅の形状を模した容器に餅を包装した商品が販売等されており、消費者は、この商品を正月に鏡餅として飾った後、容器から餅を取り出して食することができる。このような商品は、容器の上面に橙や干支動物などの象形体を載置したり、容器の中段に水引を取り付けたりなどの装飾が施されている(例えば、特許文献1−3参照)。
【0003】
前述のような鏡餅を模した商品は、商品の流通や販売過程において象形体が脱落するのを防止する工夫がなされている。例えば特許文献1−3に開示されているように、容器の上面に載置される象形体は、透明の容器カバーによって保持されている。しかしながら、水引は、容器のくびれ部に掛け回される伸縮性の紐によって保持されているだけである。
【0004】
従って、容器の中段に配置される水引の保持力は、紐の伸縮力に依存されており、その保持力は比較的弱い。そのため、商品の流通過程や店舗での販売過程において、作業者や消費者が商品を手に取ったはずみで紐が上の方に滑って外れてしまうことが多かった。特に、水引を手で掴んだときに紐が外れ易い。紐が外れた場合、消費者等によっては元に戻してくれる者もいるが、そのまま放置されることもある。
【0005】
従って、紐が容器から外れてしまうことを抑制するために、例えば商品ラベルを兼ねた粘着シールを用いて、紐を容器の表面に固定するなどの対応策が行われている。しかしながら、粘着シール等の資材や人件費が多くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−341959号公報
【特許文献2】実用新案登録第3144294号公報
【特許文献3】特許第4077814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、鏡餅を模した容器のくびれ部に紐によって取り付けられる水引などの飾りが脱落するのを抑制できる飾り具を提供することにある。
【0008】
さらに、本発明の他の目的は、新たな資材が追加されること及び人件費が嵩むことを抑え、簡単な構造によって飾りが脱落するのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の飾り具は、餅を上下方向に重ねてなる鏡餅を模した鏡餅容器と、前記鏡餅容器の上面に載置される象形体と、前記象形体を囲う第1の部分と前記鏡餅容器の上段の餅の部分と嵌合される第2の部分を有する容器カバーと、前記鏡餅容器の上下の餅の間に形成されているくびれの部分に周方向に掛け回された環状の紐と、この環状の紐に連結された飾りと、を備える鏡餅を模した飾り具であって、前記容器カバーは、下面側の開口縁端部が前記くびれの部分に位置しており、さらに開口縁端部から外方側に延出する係止爪を有していることを特徴とする。
【0010】
前記容器カバーは、例えば前記開口縁端部の水平面の形状が円形に形成されている。この場合、前記係止爪は、円の中心から外縁までの最短距離(L1)と最長距離(L2)との差(=L2−L1)が前記環状の紐の太さの半分以上となるように形成することが好ましい。
【0011】
前記係止爪は、一つに限られず、例えば前記開口縁端部に沿って周方向に複数形成することができる。この場合、円の中心とのなす角が鋭角になるように配置される2つの係止爪を少なくとも含み、前記なす角を形成する2つの係止爪の間に前記飾りが位置されていることが好ましい。但し、飾り具は、必ずしも2つの係止爪の間に位置していなくともよく、係止爪の上部に位置していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の飾り具によれば、象形体を保持するために鏡餅容器に嵌合される容器カバーの下面側の開口縁端部に、外方側に延出する係止爪を設けたことにより、水引などの飾りを鏡餅容器に取り付ける紐が上方に滑って外れるのを抑制することができる。さらに、水引などの飾りを手で掴んだとしても、係止爪によって形成される開口縁端部の凹凸に紐が引っ掛かり、紐が鏡餅容器から外れるのを抑制することができる。
【0013】
さらに本発明の飾り具によれば、容器カバーの下面側の開口縁端部に設けた係止爪によって紐の脱落を抑制しているので、粘着シートなどの資材を新たに増やす必要がなく、また組み立て作業の工程が新たに増えることはない。このように、本発明によれば、簡単な構造によって飾りが脱落するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に従う飾り具である。
【図2】上記飾り具が備える容器カバーである。
【図3】上記飾り具の組み立て手順を示す図である。
【図4】上記飾り具の作用を示す図である。
【図5】上記容器カバーの変形例を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に従う飾り具である。
【図7】上記容器カバーの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態に従う飾り具について、添付図面を参照しながら詳しく説明する。但し、以下に説明する実施形態によって本発明の技術的範囲は何ら限定解釈されることはない。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に従う飾り具1の外観斜視図である。図2は、飾り具1が備える容器カバー102の外観斜視図と平面図である。
【0017】
図1に示すように、飾り具1は、鏡餅容器100、例えば橙を模した象形体101、象形体101を保持するための容器カバー102、容器のくびれの部分に周方向に掛け回された伸縮性を有する環状の紐103、紐103によって容器に取り付けられる飾りとしての水引111を備えている。
【0018】
鏡餅容器100は、底面が開口する中空の容器であって、その外形が大小の餅を2段に重ねてなる鏡餅を模した形状になっている。この中空の鏡餅容器100は、底面の開口部から餅を充填することができ、その後で開口部を例えば透明のラップで封止している。ラップは、例えば鏡餅容器100の底面に周方向に形成されているフランジ部100aに接着することができる。なお、鏡餅を模した形状とは、図1に示すような2段重ね構造に限られず、例えば3段や4段などの複数段に重ねた構造であってもよい。
【0019】
鏡餅容器100の上面に載置される象形体101は、橙を模した形状である。象形体101は、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂による成形品である。熱可塑性樹脂に代えて陶器や発泡材によって製作するようにしてもよい。さらに、象形体101は、橙に限定されることはなく、後述するような干支動物を模したマスコットであってもよい。
【0020】
鏡餅容器100は、上段の餅と下段の餅との境界にくびれた部分を有しており、このくびれた部分に環状の紐103が掛け回されている。水引111は、環状の紐103に連結されている。水引111と紐103は、例えば水引111に紐103を通すことによって連結させることができる。但し、水引111と紐103とが一体的になっていればよく、連結方法が限定されることはない。環状の紐103は、例えばゴムの外面を糸や布で被覆したものであり、伸縮性を有している。さらに環状の紐103は、その環状の大きさ(内径)が鏡餅容器100の上段の餅の直径よりも小さくなるように形成されている。従って、環状の紐103は、その縮もうとする作用によって容器のくびれた部分に保持されることとなる。
【0021】
なお、図1には飾りの一例として水引111を示しているが、正月にちなんだものであればよく、水引111に限定されることはない。水引111以外の飾りとしては、例えば絵馬,御幣、裏白、昆布、海老、譲葉、又は熨斗などの鏡餅特有の飾りが一例として挙げられる。
【0022】
容器カバー102は、象形体101が外部から視認可能なように、透明の材料によって肉薄(例えば、0.2〜0.5mm程度)に形成されている。その形状についてより詳しくは、図2に示すように、象形体101を囲うドーム状の第1の部分(湾曲突出部)113と、鏡餅容器100の上段の餅の部分に嵌合させる第2の部分(被覆部)114を有する。湾曲突出部113の上部には、例えば橙を模した象形体101のへたの部分を保持する円柱状や多角形状の突出部113aが形成されている。但し、必ずしも突出部113aを設ける必要はない。
【0023】
被覆部114の内面は、上段の餅の部分の外周面に対応する形状となっており、象形体101を載置した鏡餅容器100に対して上方から嵌め込むことによって装着される。被覆部114の下面側の開口縁端部115は、容器のくびれた部分に位置しており、その水平面の形状が円形になっている。この場合、鏡餅容器100への嵌め込み作業の利便性を考慮し、開口縁端部115が全周に渡って外方側に僅かに湾曲した形状になっていてもよい。
【0024】
本実施形態による容器カバー102は、さらに開口縁端部115から外方側に延出される係止爪110を有している。係止爪110は、好ましい一例として、開口縁端部115の周方向に沿って等間隔(例えば、90°間隔)となる位置に4個配置されている。係止爪110の各々は、例えば平面形状が横端部110aを有する概ね台形に形成されている。より詳しくは、図2に示されるように、開口縁端部115の水平面の中心から外縁までの最短距離(L1)と最長距離(L2)の差(ΔL=L2−L1)が、環状の紐103の太さ(D)の半分以上となるように形成されている。すなわち、数式:L2−L1≧D/2を満たすように形成されている。一例として、ΔLは2mmである。このような係止爪110は、金型を用いて容器カバー102と共に一体成形してもよく、先に容器カバー102を成形した後でその下面を加工することによって形成してもよい。
【0025】
続いて、上記した構成を有する飾り具1を組み立てる手順について、図3を参照しながら説明する。まず、予め餅が充填されてラップされている鏡餅容器100、橙を模した象形体101、容器カバー102、予め水引111と連結された環状の紐103を準備する。本実施形態では、図3に示される手順Aと手順Bのどちらで組み立ててもよい。すなわち、本実施形態の飾り具1は、組み立て手順の自由度が高い。
【0026】
手順Aでは、鏡餅容器100のくびれた部分に紐103を掛け回すことによって水引111を取り付けた後、鏡餅容器100の上面に象形体101を載せ、容器カバー102を装着する。
【0027】
一方、手順Bでは、鏡餅容器100の上面に象形体101を載せ、容器カバー102を装着した後で、鏡餅容器100のくびれた部分に環状の紐103を掛け回すことによって水引111を取り付ける。このとき、環状の紐103は、係止爪110を乗り越えて下方に位置するようにする。
【0028】
上述のように構成された飾り具1によれば、容器カバー102の開口縁端部115に係止爪110を設けたことにより、環状の紐103が上方に滑って外れるのを抑制することができる。さらに、例えば消費者が商品を手に取った際に水引111を手で掴んだとしても、図4に概念的に示されるように、係止爪110によって形成される開口縁端部115の段差(すなわち、横端部110a)に紐103が引っ掛かり、紐103が鏡餅容器100から外れるのを抑制することができる。L2−L1≧D/2を満たすようにすれば、より確実に紐103の脱落を抑制することが可能となる。
【0029】
従来の構造においても、手順Aで組み立てるようにし、その際に鏡餅容器100の外面と容器カバー102の内面とで紐103を挟持させるように組み立てれば、紐103が外れるのを抑制できると考えられていた。しかし現実には、水引111が上方又は斜め方向に引っ張られると、紐103が鏡餅容器100と容器カバー102との隙間から滑り出てきて、遂には鏡餅容器100から外れてしまっていた。前述したように、鏡餅容器100への嵌め込み作業の利便性を考えて、開口縁端部115を全周に渡って外方側に僅かに湾曲させた形状であっても、開口縁端部115に引っ掛かるところのないため、水引111が上方又は斜め方向に引っ張られると紐103が外れてしまっていた。そのため、本発明者らは、紐103が伸びることと、開口縁端部115に引っ掛かるところがないことが主たる要因と考え、係止爪110によって開口縁端部115に段差を形成し、紐103が外れるのを抑制したのである。
【0030】
従って、本実施形態の飾り具1は、組み立て順序が手順Aに制限されることはなく、手順Bで組み立てたとしても、紐103が外れるのを抑制することができる。手順Aで組み立てる場合、容器カバー101を装着するときに水引111の先端部を押し潰さないように注意が必要である。その分、作業者の負担が大きくなることも懸念される。しかし、本実施形態の飾り具1は、係止爪110によって紐103が外れるのを抑制できるので、手順Bで組み立てるようにして水引111が変形するのを防止できると共に、作業員の負担を少なくすることができる。なお、特許文献2,3は、手順Bで組み立て、容器カバー101の上に紐103を掛け回している構成が開示されているが、この場合、簡単に紐103が外れてしまう。
【0031】
さらに上述の飾り具1によれば、容器カバー102の開口縁端部115に設けた係止爪110によって紐103の脱落を抑制するので、粘着シートなどの資材を新たに増やす必要がなく、また組み立て作業の工程が新たに増えることはない。すなわち、簡単な構造によって、紐103が鏡餅容器100から外れるのを抑制可能にしている。
【0032】
さらに上述の飾り具1によれば、隣り合う左右の係止爪110の間に水引111が配置されていることにより、水引111が容器のくびれ部に沿って周方向にずれるのを抑制することができる。より確実に水引111の横ずれを抑制するためには、隣り合う左右の係止爪110の間隔が狭い方がよい。また、水引111が係止爪110に被さるように配置しても、水引111の横ずれを抑制することができる。
【0033】
なお、図2には4個の係止爪110を90°間隔に配置した構成を示したが、係止爪110の個数及び配置する位置が限定されることはない。他の配置の一例として、例えば図5(a)に示すように2個の係止爪110を180°間隔で配置する構成、例えば図5(b)に示すように3個の係止爪110を120°間隔で配置する構成を挙げることができる。さらには、複数の係止爪110を設ける場合に必ずしも等間隔に配置しなくともよい。
【0034】
さらに係止爪110の形状も、開口縁端部115の円周上に段差が形成されていればよく、図2に示したような台形に限定されることはない。他の形状の一例として、図5(c)に示すように長さを延ばした台形にすることが挙げられる。さらには、必ずしも台形にする必要はなく、三角、矩形又は鉤状などの多様な形状にすることもできる。
【0035】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、上述した第1実施形態の変形例であり、象形体101を橙に代えてマスコットにしたことを除けば第1実施形態と同様の構成を有する。従って、各構成要素の詳しい説明は省略する。
【0036】
第2実施形態に従う飾り具1は、図5に示すように、干支動物の一つである寅(トラ)を模したマスコットを象形体101としている。勿論、象形体101は、他の干支動物であってもよく、達磨,七福人,熊手などの縁起物であってもよい。このような構成であっても、上述の第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0037】
マスコットのように前後左右を有する象形体101の場合、例えば搬送中に容器カバー102内でマスコットが横方向に回転してしまうと、マスコットと水引111の向きが異なって商品の見栄えが悪くなることが懸念される。その対策として、湾曲突出部113の水平断面の形状を、図6に示すように、多角形状にすることが好ましい。このように構成すれば、マスコットの一部が湾曲突出部113の内周面の角のどこかに引っ掛かるので、マスコットの向きが変わるのを抑制することが可能となる。
【0038】
本発明は、その趣旨または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0039】
1:飾り具
100:鏡餅容器
101:象形体
102:容器カバー
103:紐
110:係止爪
110a:横端部
111:水引
113:湾曲突出部
114:被覆部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
餅を上下方向に重ねてなる鏡餅を模した鏡餅容器と、前記鏡餅容器の上面に載置される象形体と、前記象形体を囲う第1の部分と前記鏡餅容器の上段の餅の部分と嵌合される第2の部分を有する容器カバーと、前記鏡餅容器の上下の餅の間に形成されているくびれの部分に周方向に掛け回された環状の紐と、この環状の紐に連結された飾りと、を備える鏡餅を模した飾り具であって、
前記容器カバーは、下面側の開口縁端部が前記くびれの部分に位置しており、さらに開口縁端部から外方側に延出する係止爪を有していることを特徴とする飾り具。
【請求項2】
前記容器カバーは、前記開口縁端部の水平面の形状が円形に形成されており、
前記係止爪は、円の中心から外縁までの最短距離(L1)と最長距離(L2)との差(=L2−L1)が前記環状の紐の太さの半分以上となるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の飾り具。
【請求項3】
前記係止爪は、前記開口縁端部に沿って周方向に複数形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の飾り具。
【請求項4】
前記容器カバーは、円の中心とのなす角が鋭角になるように配置される2つの係止爪を含み、前記なす角を形成する2つの係止爪の間に前記飾りが位置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の飾り具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−194133(P2011−194133A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66340(P2010−66340)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(592221920)株式会社きむら食品 (6)
【Fターム(参考)】