説明

養毛料

【課題】本発明の課題は、有効性の高いサラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物に関して有効に活用する方法を見つけることにある。また一方で、薄毛や抜け毛といった頭髪上の悩みを予防・改善する有効な養毛料の開発が望まれている。
【解決手段】サラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物がこれまで確認されていなかった機能、すなわち5α−レダクターゼ活性阻害作用を有することが分かり、薄毛や抜け毛といった悩みに対して有効であることが分かった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明品は、サラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物が、5α−レダクターゼ活性を優位に阻害することで、抜け毛や薄毛と言った悩みを予防・改善する養毛料に関する。
【背景技術】
【0002】
サラシア属の植物は、紀元前5000年以上前に端を発するのアーユルベェーダ医学の医書の中にも記載がある植物で、傷害、痛み、高血圧、心臓疾患、泌尿器疾患についても効果があるとされる歴史の古い植物である。近年日本でもサラシア属の植物の研究が盛んに行われ、特に糖尿病やダイエット高脂血症などに効果があることが分かっている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。また、それに関する特許も多数出願されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。皮膚に外用することを訴求したものはわずか2件に限られる(特許文献4、特許文献5)。これら先に出願されたサラシア属植物の抽出物に5α−レダクターぜ活性を阻害する効果を見出し、その用途として薄毛や抜け毛の予防・改善を訴求したものは現在のところ認められない。
【0003】
男性ホルモンの代表的なものとしてテストステロンが知られ、男性では精巣で女性では副腎で合成され血中に分泌される。テストステロンが作用する標的臓器として例えば頭皮や前立腺があり、それら標的臓器の細胞内で5α−レダクターゼの還元作用を受け5α−ジヒドロテストステロン(DHT)に変換後アンドロゲンの受容体と結合して、遺伝子の活性化を示す。加齢や生活ストレスによってDHTのバランスが崩れると、頭皮においては抜け毛や薄毛を引き起こす。よって5α−レダクターゼ活性を阻害することは抜け毛や薄毛の予防、改善には有効である。
【0004】
【非特許文献1】Life Sci.2004 Aug20;75(14):1735−46
【非特許文献2】Toxicol Appl Pharmacol.2006 Jan 1;210(1−2):78−85.Epub 2005 Aug 29.
【非特許文献3】Toxicol Appl Phrmacol.2006 Feb 1;210(3):225−35.Epub 2005 Jun 21.
【特許文献1】 特開2002−020308号
【特許文献2】 特開2003−171295号
【特許文献3】 特開2005−295991号
【特許文献4】 特開2005−008572号
【特許文献5】 特開2006−188463号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、今まで養毛料としての効果については知れらていないサラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物が5α−レダクターゼ活性を阻害することを見出し、抜け毛や薄毛の予防・改善を成すため、さらにはこれを有効に活用するために種々検討した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明者らは鋭意検討した結果、サラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物に5α−レクターゼ活性阻害作用があることを見出し、これにより抜け毛や薄毛を予防・改善することが分かった。
【0007】
なお本明細書における「抽出物」とは、抽出処理によって得られる抽出液、抽出液の希釈液もしくは濃縮液、抽出液を乾燥して得られる乾燥物、またはこれらの粗精製物もしくは濃縮液のいずれをも含むものとする。
【0008】
本発明のサラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物の5α−レダクターゼ活性阻害剤の調製法としては、特に限定されるものではなく、前記した天然植物から所望の方法により抽出物(または濃縮抽出エキス)を製造すれば良い。例えば抽出エキスは、生薬の粉末1Kgに対して3〜5Lの溶媒(水あるいはメタノールやエタノールなどのアルコールやこれらの混合など)を加え、加温または冷温下で抽出して製造すればよい。なお加温の場合は加温の場合は80〜90℃で数時間、冷温の場合は室温で3日間浸漬後いずれもろ過すれば良く、さらにろ液を例えば45℃以下で減圧濃縮し、溶媒を留去して乾燥エキスとすれば良い。
【0009】
上記したサラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物は、皮膚に適応した場合の使用感と安全性に優れているため、養毛料に配合するのに好適である。本発明の養毛皮膚外用剤は、上記サラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物を含有し、5α−レダクターゼ活性阻害作用を有する。もちろん、製剤化した本発明の5α−レダクターゼ活性阻害剤を含有するものも本発明の養毛料の範囲に含まれる。
【0010】
養毛料の種類としては、例えば軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック等が挙げられ、その養毛料におけるサラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物の好適な配合率は、約0.0001%〜20重量%である。
【0011】
本発明の養毛料において、サラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物とともに構成成分として利用可能なものは例えば、保湿剤・紫外線吸収剤・複合脂質・活性酸素消去作用を有する物質・抗炎症剤・ビタミンおよびその誘導体・油性成分・界面活性剤・防腐剤・酸化防止剤・コレステロール類・植物ステロール類・リポプロテイン類・微生物由来成分・藻類抽出物・血行促進剤・抗脂漏剤・増粘剤・着色料などが挙げられる。
【実施例】
【0012】
次に実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれになんら制約されるものではない。また使用した薬剤のエキス粉末についての抽出方法においても何ら限定されるものではない。
【0013】
(試験例1)5α−レダクターゼ活性阻害試験
基質溶液としてエタノールに溶解したテストステロンプロピレングリコール(PG )溶液を用い、水で1%に希釈したサラシア抽出液あるいは水と混合した。混合液中にラット肝細胞由来の5α−レダクターゼを加え37℃で反応させた。反応後、セライトカラム(φ3.0×15cm)に反応液担持させ、50mLのジクロロメタンにて溶出させたのち、溶媒留去後の残存しているテストステロンの量を、ガスクロマトグラフィーによって検出した。阻害率は検出されたテストステロンのピーク面積を用いて以下の計算方法により算出した。
[(生薬−反応)/(未反応−反応)]×100(%)
生薬(サラシア抽出物);1%溶液
反応;生薬ぬき(生薬の変わりに水)
未反応;テストステロンPG溶液+エタノール
【0014】
【表1】

(注1)サラシア属植物(Salacia oblanga)のEtOH抽出物はサラシア10gにエタノール300mLを加えて24時間静置した後、ろ過し、溶媒留去したエキス粉末を用いた。
(注2)サラシア属植物(Salacia oblanga)の50%EtOH/50%H2O抽出物はサラシア10gに精製水150mLとエタノール150mLの混合液を加えて24時間静置した後、ろ過し、溶媒留去したエキス粉末を用いた。
【0015】
(試験例2)養毛料の効果
実施例および比較例の処方を表2に示す。作成方法は常法により行った。なお表2の配合量は重量部で示す。
【表2】

(注1)サラシア属植物(Salacia oblanga)のEtOH抽出物はサラシア10gにエタノール300mLを加えて24時間静置した後、ろ過し、溶媒留去したエキス粉末を用いた。
(注2)サラシア属植物(Salacia oblanga)の50%EtOH/50%H2O抽出物はサラシア10gに精製水150mLとエタノール150mLの混合液を加えて24時間静置した後、ろ過し、溶媒留去したエキス粉末を用いた。
【0016】
表2記載の実施例1〜2、比較例1の養毛効果試験を実施した。試験方法は35〜65歳の男性30名をパネルとし、毎日朝と夜の2回、24週間に渡って被験外用剤の適量を頭皮に塗布した。頭皮による養毛効果の結果を表3に示す。
【0017】
【表3】

【0018】
サラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物は5α−レダクターゼ活性阻害作用を有することが確認され、抜け毛や薄毛の予防、改善効果があることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物を含有する養毛料。
【請求項2】
サラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物が5α−レダクターゼ活性阻害剤である請求項1に記載の養毛料。

【公開番号】特開2008−133249(P2008−133249A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345025(P2006−345025)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(598092270)有限会社 坂本薬草園 (11)
【出願人】(599000212)香栄興業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】