説明

養生シートの製造方法

【課題】使用後に産業廃棄物として処分されていたストレッチフィルム、および使い残しの余ったストレッチフィルムも共に作り変えて、滑りにくい養生シートとして再利用できる養生シートの製造方法を提供することをその課題としている。
【解決手段】回収した使用済のストレッチフィルムを粉砕し、この粉砕したストレッチフィルムを200℃位の温度で加熱溶融昇圧して押出し機から紐状に押し出し、この押し出された前記ストレッチフィルムからなる紐状樹脂体を切断して粒状のペレットにし、このペレットを180℃位に設定した温度でインフレーション成形機によって吹き上げて筒体にし、この筒体の一箇所または2箇所以上を長手方向に切り割いて、1枚または片開きのシートにして巻き取ることによってストレッチフィルム製の養生シートを形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の用途で使用され回収された使用済みのストレッチフィルム、および使い残しの余ったストレッチフィルムを再利用して、増改築での公共機関や官公庁等の建物の廊下や階段、各種工場の通路に敷いたり、引越し等の際に廊下に敷いたり壁面に張ったりして覆った面を疵つけたり汚したりするのを防止するなどの用途に使用する養生シートを製造するための養生シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から物流業界等においては、各種の製品やダンボール箱に詰めた品物をパレットに積んでトラック等で輸送しているが、その際、積んだ品物等が荷崩れしたり、水に濡れたり、埃がかかったりするのを防止するために、強靭で伸びがあり粘着力にも優れたストレッチフィルムをパレットに積んだ品物全体に巻きつけて品物を固定し、荷崩れすることなく輸送している。また、前記のストレッチフィルムは、各種の機械や製品を被って中に埃や害虫が入り込まないようにするのに使用したり、仕掛品に被せて保護するのに使用したり等、あらゆる商品の保護等に使用されている。
【0003】
このようにして使用されたストレッチフィルムは、品物を目的地に輸送した後や、機械や製品等のあらゆる商品の保護等に使用された後に、品物や機械等から解かれて回収され、他のプラスチック類と同じく産業廃棄物として処分されている。
【0004】
しかしながら、地球環境の保護が叫ばれている現代において産業廃棄物として焼却等によってストレッチフィルムを処分することは、環境汚染や資源保護の観点から問題であった。
【0005】
また、現在は養生シートとして再生ポリエチレン原料が使用されているが、このポリエチレンフイルムからなる養生シートでは、滑りやすく、強度が弱く、厚みも40μ 以上でないと製造できないといった問題がある。また、ポリエチレンフイルムからなる養生シートを滑りにくくするためには、製造過程でノースリップ剤(粘着剤)を添加して製造しなければならず製造コストが高くなる。
【0006】
なお、下記の特許文献には、粘着力を落とすことなく展開力(巻き戻し力)を小さくする養生シートの製造方法が開示されているが、本発明のような使用済みのストレッチフィルムを原料とした製造方法は行われていなかった。
【特許文献1】特開平11−92724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような点に鑑みて開発され、使用後に産業廃棄物として焼却等によって処分されていたストレッチフィルム、および使い残しの余ったストレッチフィルムも共に作り変えて、滑りにくい養生シートとして再利用できる養生シートの製造方法を提供することをその課題としている。
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1記載の本発明の養生シートの製造方法は、回収した使用済のストレッチフィルムを粉砕し、この粉砕したストレッチフィルムを200℃位の温度で加熱溶融昇圧して押出し機から紐状に押し出し、この押し出された前記ストレッチフィルムからなる紐状樹脂体を切断して粒状のペレットにし、このペレットを180℃位に設定した温度でインフレーション成形機によって吹き上げて筒体にし、この筒体の一箇所または2箇所以上を長手方向に切り割いて、1枚または片開きのシートにして巻き取ることによってストレッチフィルム養生シートを形成するようにしたことを特徴とする。
【0009】
また請求項2記載の本発明の養生シートの製造方法は、請求項1記載の養生シートの製造方法において、粉砕して使用するストレッチフィルムは、回収した使用済ストレッチフィルムおよび使い残しの余った使用前ストレッチフィルムであることを特徴とする。
【0010】
また請求項3記載の本発明の養生シートの製造方法は、請求項1または2記載の養生シートの製造方法において、前記ストレッチフィルムのペレットをインフレーション成形機の回転速度は、一般用ポリエチレンのペレットを原料とした通常の回転速度に比べて30%位低速にしたことを特徴とする。
【0011】
さらに請求項4記載の本発明の養生シートの製造方法は、請求項1、2または3記載の養生シートの製造方法において、前記のペレットと共に所望の色の顔料を溶融混練して、所望の色の養生シートを形成するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の養生シートの製造方法によれば、従来は焼却等によって処分するしかなかった使用済のストレッチフィルムの特性を生かし養生シートに作り変えて再利用することができ、地球環境や資源の保護に大きく寄与することができる。そしてこの製造方法で製造された養生シートは、製造過程で滑りにくくする効果を出すためにノースリップ剤(粘着剤)を添加して製造することもなく、ストレッチフィルムの粘着性のある特性を生かして、また、従来のポリエチレンフイルムからなる養生シートよりも強い養生シートを薄く製造することができ、従来の養生シートに比べて製造コストを大幅に低減することができ、かつ従来の養生シートに比べて滑りにくく安全に使用することができる。
【0013】
また、本発明の養生シートの製造方法によれば、回収した使用済ストレッチフィルムと共に使い残しの余った使用前ストレッチフィルムも養生シートの原材料として使用するので、従来廃棄処分にしていた使い残しの余った使用前ストレッチフィルムを有効に活用することができ、地球環境や資源の保護に大きく寄与することができる。
【0014】
また、本発明の養生シートの製造方法によれば、インフレーション成形機の回転速度を、一般用ポリエチレンのペレットを原料とした通常の回転速度に比べ30%位低速にしたことにより、不具合が生じることなくストレッチフィルム製の養生シートを巻き取ることができる。
【0015】
さらに、本発明の養生シートの製造方法によれば、製造過程でストレッチフィルムによって形成するペレットに所望の色の顔料を溶融混練して養生シートを形成することにより、各種の色の養生シートを形成することができ、用途に応じて所望の色の養生シートを使い分けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について説明する。
先ずダンボール箱等に詰めた複数の品物をパレットに積んだ後に、この複数の品物の周囲をまとめてストレッチフィルムで巻いて荷崩れしないように固定し、パレットと共に品物をトラックに積んで目的場所まで輸送する。目的場所に着いたならばトラックからフォークリフトで各パレットと共に品物を降ろし、各パレット上の複数の品物の周囲をまとめて巻いているストレッチフィルムを解き外し、外した各ストレッチフィルムを回収ケージ等に投入してまとめておく。この使用済みのストレッチフィルムを回収ケージと共に回収してストレッチフィルムのリサイクル工場である養生シート製造工場に運び込む。この際、紙管に巻かれている使い残しの余った未使用のストレッチフィルムも回収して養生シート製造工場に運び込む。
【0017】
上記のように養生シート製造工場に持ち込まれた(回収された)使用済みストレッチフィルムおよび未使用のストレッチフィルム(以下、使用済ストレッチフィルム等という。)は、次の工程からなる養生シートの製造方法によって処理され、回収使用済ストレッチフィルム等を原料として養生シートが製造される。
【0018】
すなわち、回収された使用済ストレッチフィルム等は、紙管や樹脂テープ等が除去された後に、コンベヤで搬送されて粉砕機に投入されて細かく粉砕され、排出されてホッパーに一時貯留される。そしてこのホッパーから排出され粉砕された使用済ストレッチフィルム等は、200℃位でスクリュー押出し機によって加熱溶融昇圧させて紐状に押し出され、冷却水の中を通って、粒状にする切断装置内に移送される。この切断装置内に供給された紐状樹脂(使用済ストレッチフィルム等)体は、切断装置で細かくペレットに切断されて、袋に詰めたり貯留ホッパーに貯留される。
【0019】
次に前記ペレット(原料)を180℃位に設定し、ペレット(原料)をインフレーション成形機に供給する。
【0020】
インフレーション成形機に供給されたペレット(原料)は、シリンダー内で溶融混練し円形金型(ダイス)の隙間から押し出されて筒状のストレッチフィルムにし、さらに筒状のストレッチフィルム膜の内部に空気を吹き込んで膨張させ、冷却空気を吹き込んで冷却させストレッチフィルム筒体を形成すると共に、引っ張りながらストレッチフィルム筒体の一箇所または2箇所以上を長手方向に切り割いて、1枚または片開きのシートにし巻き取ることによって養生シートを得る。この場合、ストレッチフィルム筒体は、一箇所を長手方向に切り割くことによって1枚の養生シートにすることができ、また、均等な幅寸法となるように2箇所を長手方向に切り割くことによって同一幅の2枚の養生シートにすることができ、さらに、均等な幅寸法となるように3箇所以上を長手方向に切り割くことによって同一幅の3枚以上の養生シートにすることができる。勿論、ストレッチフィルム筒体は、不均等な幅寸法となるように2箇所以上を長手方向に切り割いて複数枚の幅の異なる養生シートを形成してもよい。
【0021】
また、使用済ストレッチフィルムから成るペレットをインフレーション成形機に供給し前記インフレーション成形機の回転速度は、一般用ポリエチレンのペレットを原料とした通常の回転速度に比べて30%位低速にする。
【0022】
なお、前記のペレット(原料)に青色、緑色、赤色等の顔料を溶融混練し、所望の色の養生シートを形成するも自由であり、用途に応じて所望の色の養生シートを使い分けることができる。
【0023】
このように回収した使用済みのストレッチフィルム等を原料として加工し、養生シートを製造することにより、養生シートとしてリサイクルすることができ、地球環境や資源の保護、資源の有効利用に大きく寄与することができる。また、従来は産業廃棄物として処分されていた使用済みストレッチフィルムを、製造過程でノースリップ剤を添加しなくともストレッチフィルム等の元来の特性である滑りにくさを生かして滑りにくい養生シートにすることができ、強度も強く、従来の養生シートと変わらぬ強度でありながら厚みを30μ位の薄さにでき、製造コストをポリエチレンシートからなる養生シートに比べ大幅に低減することができる。
【0024】
なお、前記した温度が200℃位、180℃位とは、200℃、180℃に限定されるものではなく、使用済みのストレッチフィルム等を原料として適正な養生シートを製造できることができる200℃、180℃のそれぞれの前後の適宜温度も含む。また、前記した回転速度に比べて30%位低速における30%位とは、30%に限定されるものではなく、形成される養生シートを不具合なく円滑に巻き取ることができる30%前後の適宜速度も含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収した使用済のストレッチフィルムを粉砕し、この粉砕したストレッチフィルムを200℃位の温度で加熱溶融昇圧して押出し機から紐状に押し出し、この押し出された前記ストレッチフィルムからなる紐状樹脂体を切断して粒状のペレットにし、このペレットを180℃位に設定した温度でインフレーション成形機によって吹き上げて筒体にし、この筒体の一箇所または2箇所以上を長手方向に切り割いて、1枚または片開きのシートにして巻き取ることによってストレッチフィルム養生シートを形成するようにしたことを特徴とする養生シートの製造方法。
【請求項2】
粉砕して使用するストレッチフィルムは、回収した使用済ストレッチフィルムおよび使い残しの余った使用前ストレッチフィルムであることを特徴とする請求項1記載の養生シートの製造方法。
【請求項3】
前記ストレッチフィルムのペレットをインフレーション成形機の回転速度は、一般用ポリエチレンのペレットを原料とした通常の回転速度に比べて30%位低速にしたことを特徴とする請求項1または2記載の養生シートの製造方法。
【請求項4】
前記のペレットと共に所望の色の顔料を溶融混練して、所望の色の養生シートを形成するようにしたことを特徴とする請求項1、2または3記載の養生シートの製造方法。

【公開番号】特開2008−213395(P2008−213395A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56836(P2007−56836)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(503354011)野添産業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】