説明

養生方法

【課題】 養生材として被養生物の表面に形成する被膜が、風雨や紫外線に晒される屋外においても長期間耐久性があり、万が一破損した場合でも補修が容易で、足場上などの狭い場所でも作業が容易で、養生撤去後にも被養生物に跡が残らず、且つ、セメント系建材からなるか又はセメント系建材で覆われた部分を有する被養生物にも適用でき、養生を撤去するときに、剥がしている途中で被膜が破れたりせず連続して容易に剥がせる養生方法を提供すること。
【解決手段】 被養生物を傷や汚れから保護するための養生方法において、被養生物の表面に常温で硬化して造膜する液状の可剥離性被覆組成物を塗布又は噴霧し、この可剥離性被覆組成物を乾燥させて被養生物に被膜を形成し、養生が不要となったときに被膜の一端からめくって剥がす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建設現場において被養生物を傷や汚れから保護するための養生方法に関し、特に、セメント系建材からなるか又はセメント系建材で覆われた被養生物の表面を養生するのに適した養生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建設現場において被養生物の表面を傷や汚れから保護するための養生方法としては、養生シート(紙や合成繊維を樹脂フィルムで挟み込んだ樹脂シート、例えば、ポリエチレンシート(ブルーシート)などが挙げられる)などの養生材で被養生物を被覆し、養生材の縁をクラフトテープ(ガムテープ)、樹脂フィルム(例えば、ポリエチレンフィルム)をテープ基体とするクラフトテープより粘着力の弱い養生テープ、和紙をテープ基体とする比較的粘着力の弱いマスキングテープなどの粘着テープで止め付けて、養生が必要なくなるとその粘着テープを剥がして撤去するなどの方法が行われていた。また、養生テープと樹脂フィルムとが予め貼着されたフィルム付き養生テープなるものも提案され、この養生テープで被養生物の表面を保護する養生方法も行われていた。しかし、これらの養生方法では、以下のような問題点があった。
(1)降雨や強風などにより粘着テープが剥がれたり、養生シート自体が破れたりして養生材の機能を果たさなくなってしまう。
(2)粘着テープが剥がれたり、養生シート自体が破れたりして破損すると、破損箇所を補修するのが困難である。
(3)足場上では、狭くて身動きが取り難いうえに被養生物である構造物と足場とを繋ぐ足場控え(支持具)が所定間隔ごとに設けられており、養生シートや粘着テープを貼ったり剥がしたりする作業が困難である。
(4)剥がれ難くするために粘着力を強くすると、養生を撤去した後に粘着テープの跡が残ってしまい除去するのに手間が掛かる。
(5)養生を屋外に長期間存置すると、養生シートや粘着テープが紫外線等により経時劣化してしまう。
【0003】
また、自動車業界においては、自動車等の表面を傷や汚れから保護するための養生方法として様々な方法が提案されており、例えば、特許文献1〜4には、液状の養生材(可剥離性被覆組成物)を被養生物に塗布又は噴霧して養生する方法が記載されている。しかしながら、特許文献1〜4に記載の養生方法は、被養生物が自動車等に限定されるものであり、即ち、被養生物が金属やガラス、又はせいぜい合成樹脂までに限定されるものであり、建設現場における被養生物として代表的な、セメント系建材からなるか又はセメント系建材で覆われた被養生物(以下、特定被養生物という。)には適用できないものであった。そのため、特許文献1〜4に記載の養生方法は、窓ガラスなど部分的に用いることができたとしても建設現場において実用されるには至っていなかった。また、これらの養生方法では、耐水性や耐候性、現場が置かれる様々な環境において造膜が可能であるかどうか、長期間に亘って被養生物との剥離が容易であることなどにおいて不安があり、つまり、強い紫外線があたり、天候等により温度や湿度が激しく変化する屋外においても長期間耐え得るもので、且つ、前記特定養生物にも適用できる養生方法でなければならないという建設現場における養生方法の特殊性を満足するものではなかった。
【0004】
以上述べたように特定被養生物に対して液体の養生材を塗布又は噴霧して被膜層を形成することにより養生する方法が適用できないのは、特定被養生物は、表面が粗く不規則な天然由来の複合物から構成されているため、置かれる環境や表面の部位などによって著しく表面の吸水率が相違し、連続した均一の被膜層を形成することが困難であり、紫外線劣化も加わって所望の剥離性(風雨などの外力や紫外線に対して耐久力があり、且つ、養生が不要となったときには、剥がしている途中で破れたりせず連続して容易に剥がせること)が長期間に亘って得られないからである。
【0005】
このような特定被養生物に適用できる養生方法としては、例えば、特許文献5及び6に記載の方法が既に提案されている。この特許文献5に記載の養生方法は、水性エマルションと保水性物質とを含有する養生材に水を添加した水性塗料を吹き付けて塗膜を形成する工程と、該塗膜を剥離する工程とを有することを特徴とし、複雑な形状をしており養生シートを貼り付け難いコンクリート構造物にも、簡単にコンクリートの強度発現までの保温保湿養生をすることができるという作用効果を奏するものである。しかし、この特許文献5に記載の養生方法は、文言上同じ「養生方法」であるが被養生物の表面を傷や汚れから保護するための養生方法ではなく、コンクリートの強度発現までの保温保湿をするための養生方法であり、そのため、被養生物が、打設から間もない(特許文献5の明細書段落0014では1〜3日後)コンクリート構造物に限定されるものであった。また、所望の剥離性も、特許文献5の明細書段落0014に『予めコンクリートの表面10上にテープ14を貼着し、一定面積毎に区画しておくと、後の剥離作業が容易になる。』とあるように、水性塗料からなる塗膜は、剥がしている途中で破れたりせず連続して容易に剥がせるものではなく、養生撤去時の剥離容易性に問題があった。
【0006】
また、特許文献6に記載の養生方法(可剥離性被膜形成用組成物の使用方法)は、乳酸系ポリマーの水分散体と25℃における粘度が25mPa・s以上である可塑剤とを含有する被膜形成用組成物を被養生物の表面に塗布し、被膜を形成した後、該被膜上になされた汚れを被膜と共に除去することを特徴とし、被膜の表面になされた汚れを容易に除去できるという作用効果を奏するものである。しかし、この特許文献6に記載の可剥離性被膜形成用組成物の使用方法は、形成される被膜が生分解性を有することを主な課題としているため、被膜形成用組成物は乳酸系ポリマーを主成分としており、形成される被膜が、耐候性、耐久性に乏しく、屋外において長期間存置しておくのに耐えられず、特に、長期間屋外に存置した場合、養生を撤去するときに、剥がしている途中で被膜が破れたりして、連続して容易に剥がせるものではないという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開平11−310750号公報
【特許文献2】特開2000−129171号公報
【特許文献3】特開2000−226539号公報
【特許文献4】特開2001−89697号公報
【特許文献5】特開2001−349060号公報
【特許文献6】特開2006−160867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこでこの発明は、前記従来の問題点を解決し、養生材として被養生物の表面に形成する被膜が、風雨や紫外線に晒される屋外においても長期間耐久性があり、万が一破損した場合でも補修が容易で、足場上などの狭い場所でも作業が容易で、養生撤去後にも被養生物に跡が残らず、且つ、セメント系建材からなるか又はセメント系建材で覆われた部分を有する被養生物にも適用でき、養生を撤去するときに、剥がしている途中で被膜が破れたりせず連続して容易に剥がせる養生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の養生方法の発明は、建設現場においてセメント系建材からなるか又はセメント系建材で覆われている部分を有する被養生物を傷や汚れから保護するための養生方法であって、前記被養生物の表面に常温で硬化して造膜する液状の可剥離性被覆組成物を塗布又は噴霧する工程と、該可剥離性被覆組成物を乾燥させて被養生物に被膜を形成する工程と、養生が不要となったときに前記被膜の一端からめくって剥がす工程とを有することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の養生方法の発明は、建設現場において被養生物を傷や汚れから保護するための養生方法であって、被養生物の表面に不織布を貼って覆い仮止めする工程と、この不織布の上から被養生物に常温で硬化して造膜する液状の可剥離性被覆組成物を塗布又は噴霧する工程と、該可剥離性被覆組成物を乾燥させて被膜を形成する工程と、養生が不要となったときに前記不織布と一体化した被膜を前記不織布ごとめくって剥がす工程とを有することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、可剥離性被覆組成物は、造膜したときの被膜の引張強度が20MPa以上で、破断時の伸びが200%以上を示すことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の発明において、可剥離性被覆組成物は、水と水性エマルション樹脂を含有し、最低造膜温度(MFT)が5℃以下であることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、水性エマルション樹脂は、一液型であることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の発明において、水性エマルション樹脂は、ウレタン樹脂であることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、ウレタン樹脂は、脂肪族であることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は7に記載の発明において、ウレタン樹脂は、親水性基又は親水性セグメントを有した自己乳化型であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明は前記のようであって、請求項1に記載の養生方法の発明によれば、被養生物の表面に常温で硬化して造膜する液状の可剥離性被覆組成物を塗布又は噴霧する工程と、該可剥離性被覆組成物を乾燥させて被養生物に被膜を形成する工程と、養生が不要となったときに前記被膜の一端からめくって剥がす工程とを有しているので、つまり、液状の可剥離性被覆組成物を塗布又は噴霧し、乾燥させて被養生物に被膜を形成するだけで、被養生物を養生することができるので、養生範囲が広範囲に亘ったとしても養生作業の作業時間が格段に短くなり、足場上などの狭い場所でも作業が容易である。また、被養生物を養生する養生材が、被養生物の表面に形成された一連の均等な被膜なので、被養生物と隙間無く完全に密着させることができ、風雨などが養生材と被養生物との間に入り込むことが少なく、そのため、風雨などの外力に対しても長期間に亘って耐久性がある。そのうえ、液状の可剥離性被覆組成物を塗布又は噴霧するだけなので、万が一破損した場合でも補修が容易である。
【0018】
請求項2に記載の養生方法の発明によれば、被養生物の表面に不織布を貼って覆い仮止めする工程と、この不織布の上から被養生物に常温で硬化して造膜する液状の可剥離性被覆組成物を塗布又は噴霧する工程と、該可剥離性被覆組成物を乾燥させて被膜を形成する工程と、養生が不要となったときに前記不織布と一体化した被膜を前記不織布ごとめくって剥がす工程とを有しているので、つまり、不織布を貼ってその上から液状の可剥離性被覆組成物を塗布又は噴霧し、乾燥させて被養生物に被膜を形成するだけで、被養生物を養生することができるので、養生範囲が広範囲に亘ったとしても養生作業の作業時間が格段に短くなり、足場上などの狭い場所でも作業が容易である。また、被養生物を養生する養生材が、被養生物の表面に形成された一連の均等な被膜と不織布からなるので、被養生物と隙間無く完全に密着させることができ、風雨などが養生材と被養生物との間に入り込むことが少なく、そのため、風雨などの外力に対しても長期間に亘って耐久性がある。そのうえ、万が一破損した場合でも液状の可剥離性被覆組成物を塗布又は噴霧するだけなので、補修が容易である。
更に、被養生物の表面に不織布を貼って、その不織布の上から液状の可剥離性被覆組成物を塗布又は噴霧して被膜を形成しているので、養生が不要となったときに不織布と一体化した被膜を不織布ごとめくって剥がすだけで容易に養生材を撤去することができ、養生を撤去するときにも、剥がしている途中で被膜が破れたりせず連続して容易に剥がせ、養生撤去後にも被養生物に跡が残らない。また、不織布という均一な素材を被養生物と液状の可剥離性被覆組成物との間に介在させているので、被養生物の表面にセメント系建材等の表面が粗く不均一な素材があったとしても、シーラーなどの目止め剤を塗布するなどの手間を掛けることなく、均一した一連の被膜を形成することができ、そのため、セメント系建材からなるか又はセメント系建材で覆われた部分を有する被養生物にも適用することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、可剥離性被覆組成物は、造膜したときの被膜の引張強度が20MPa以上で、破断時の伸びが200%以上を示すので、つまり、被膜が、適度な引張強度と破断時の伸びを有しているので、前記効果に加え、所望の剥離性が向上し、剥がしている途中で被膜が破れたりせず連続して容易に剥がすことができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、可剥離性被覆組成物は、水と水性エマルション樹脂を含有するので、つまり、可燃物である樹脂などを溶かすため溶剤が不要であり、前記効果に加え、建設現場における火災に対する安全性が向上する。また、最低造膜温度(MFT)が5℃以下であるので、造膜するときの温度が5℃以上あれば、均一で連続した被膜を形成することができ、殆どの建設現場で季節を問わず使用することが可能となる。
【0021】
請求項5に記載の発明よれば、水性エマルション樹脂は、一液型であるので、前記効果に加え、硬化剤などを混入したり、攪拌したりする手間が省け、更に、作業時間を短縮し、作業効率を向上することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、水性エマルション樹脂は、ウレタン樹脂であるので、前記効果に加え、形成される被膜の耐候性、耐久性が更に向上し、風雨や紫外線に晒される屋外においても長期間耐えることができると共に、長期間経過した後でも所望の剥離性を有し、剥がしている途中で被膜が破れたりせず連続して容易に剥がすことができる。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、ウレタン樹脂は脂肪族であるので、前記効果に加え、紫外線に対する耐久性が更に向上し、変色したり退色したりする虞が少なくなる。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、ウレタン樹脂は親水性基又は親水性セグメントを有した自己乳化型であるので、前記効果に加え、界面活性剤を添加する作業の手間が省けるだけでなく、造膜した際に残存界面活性剤の影響で降雨により被膜が解けたりする虞が少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(可剥離性被覆組成物)
先ず、この発明の実施の形態に係る養生方法に用いる可剥離性被覆組成物を説明する。この可剥離性被覆組成物は、常温で硬化して造膜する液状のものであればよいが、造膜したときの被膜の引張強度が20MPa以上で、破断時の伸びが200%以上を示すように調整されていると、養生撤去時に被膜が途中で破けたりせずに一気に剥がし易いため好ましい。更に、被膜の引張強度が25〜70MPaで、破断時の伸びが400〜700%を示すものであればなおよい。
【0026】
また、可剥離性被覆組成物は、水と水性エマルション樹脂を主成分とするものであれば、溶剤などの引火の虞がある成分を殆ど含まないので、建設現場における安全管理がし易く好ましい。そのうえ、可剥離性被覆組成物の最低造膜温度(MFT)が5℃以下であれば、建設現場等の使用環境における気温が5℃以上となっていれば造膜可能であるため、日本においては使用される環境の場所や季節などにあまり左右されずに使用できるのでなお好ましい。そして、この水性エマルション樹脂が、一液型、即ち、硬化剤や可塑剤などを添加しなくても常温で硬化して被膜を形成するものであれば、使用する前に硬化剤や可塑剤などを混合して攪拌する手間が省けるので更に好ましい。
【0027】
本実施の形態の養生方法に用いる可剥離性被覆組成物の水性エマルション樹脂は、親水性基又は親水性セグメントを有した自己乳化型の脂肪族のウレタン樹脂(ウレタン結合の骨格を持つ高分子化合物)からなっている。親水性基としては、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、水酸基、硫酸エステル基、リン酸基、アンモニウム基、シアン基、チオ基、酸化エチレン基などが挙げられ、脂肪族のウレタン樹脂としては、例えば、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIという)、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIという)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等のようなジイソイアネート類や、イソシアヌレート結合HDI等のような特殊ポリイソシアネート類などが挙げられる。
【0028】
このように、水性エマルション樹脂が親水性基又は親水性セグメントを有した自己乳化型であれば、水性エマルション樹脂を水に分散させる際に界面活性剤を添加する量を少なく又は無くすことができるので、乾燥して被膜が形成された後も被膜の所々に界面活性剤が残存して、降雨などでその界面活性剤の周りの被膜が溶け出すような虞が少なくなり、被膜の耐水性を向上させることができる。
【0029】
また、水性エマルション樹脂が脂肪族のウレタン樹脂からなっていれば、原料の配合により様々な粘度や諸性能(被膜の引張強度や破断時の伸び)のものを比較的調整して作り易く、弾性、耐磨耗性、耐候性、耐溶剤性、耐薬品性にも優れ、形成した被膜が途中で破れることなく一度にきれいに剥がれ易くなると共に、紫外線などで劣化して変色したり退色したりする虞も少なくなる。
【0030】
そして、この可剥離性被覆組成物には、必要に応じて、可塑剤、紫外線吸収剤、剥離性向上剤、消泡剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤、造膜助剤、凍結防止剤、乾燥促進剤等の添加物を添加するとよい。可塑剤を例示すると、フタル酸エステル類、脂肪酸エステル類等が挙げられ、紫外線吸収剤を例示すると、ベンゾトリアゾール類、ベンゾフェノン類等が挙げられ、剥離性向上剤を例示すると、シリコーンエマルション、アルキルリン酸エステル類等が挙げられる。また、消泡剤を例示すると、鉱油類(アルカン類)、シリコーン類等が挙げられ、増粘剤を例示すると、カルボキシルメチルセルロース(CMC)水溶液、ヒドロキシルエチルセルロース水溶液、デンプン、ポリビニルアルコール、親水性基含有合成樹脂エマルション等が挙げられ、pH調整剤を例示すると、有機アルカリ類、エタノールアミン類等が挙げられ、防腐剤を例示すると、ベンゾイソチアゾリン類、トリアジン類等が挙げられ、造膜助剤を例示すると、プロピレングリコールアルキルエーテル類等が挙げられ、凍結防止剤を例示すると、多価アルコール類等が挙げられ、乾燥促進剤を例示すると、エタノールなどの低級アルコール類等が挙げられる。
【0031】
次に、この発明の実施の形態に係る養生方法について図面を参照して説明する。図1は、この発明の第1の実施の形態に係る養生方法の工程を、垂直断面図を用いて模式的に示した説明図、図2は、第2の実施の形態に係る養生方法の工程を、垂直断面図を用いて模式的に示した説明図である。図1に示すように、第1の実施の形態に係る養生方法は、少なくとも(1)塗布又は噴霧工程、(2)乾燥工程、(3)養生撤去工程の3つの工程を有し、図2に示すように、第2の実施の形態に係る養生方法は、少なくとも(1)不織布設置工程、(2)塗布又は噴霧工程、(3)乾燥工程、(4)養生撤去工程の4つの工程を有する。このように、以下に本発明の実施の形態を、第1の実施の形態と第2の実施の形態の2つの実施の形態を例に挙げて説明するが、先ず、これら2つの実施の形態に共通な事項について説明する。
【0032】
(被養生物)
この発明の実施の形態に係る養生方法において、養生を行う被養生物としては、鉄骨、アルミサッシなどの金属類をはじめ、ガラス、石材など建設現場にある殆どの物を対象とすることができ、特に、従来の技術で説明した特定被養生物に好適に適用できる。この特定被養生物とは、前述したが、セメント系建材からなるか又はセメント系建材で覆われた被養生物のことを指し、具体的には、既設(硬化後)のコンクリート構造物、埋設型枠(コンクリートの強度発現後も撤去しない型枠)、モルタル被覆物、スレート板(人工の無石綿スレート)やL字側溝などの2次製品(工場等で大量に製造される工業製品)などのセメント系建材が少なくとも養生する表面に含まれている養生物のことである。
【0033】
(事前準備)
先ず、養生を行う前の事前準備について説明する。事前準備には、前述した液状の可剥離性被覆組成物を用意すると共に、例えば高圧洗浄機等で洗浄するなど、養生を行う被養生物の表面を汚れの無い状態にして被膜形成の障害となるものを除去するなど必要な処置を施す。可剥離性被覆組成物が二液型の場合は、このとき、可使用時間等を確認・考慮して二液の混合攪拌を行う。しかし、可剥離性被覆組成物が水と水性エマルション樹脂からなる一液型のものであれば、溶剤などの引火の虞がある成分を含まないので、建設現場における安全管理がし易く好ましい。また、剥離性被覆組成物が一液型の水性エマルション樹脂の場合であっても、塗布するか又は噴霧するかで剥離性被覆組成物を組成する水の割合を変えるなどして、剥離性被覆組成物の粘性などを好適なものとしておくと後述の塗布又は噴霧工程での作業の効率性が向上し好ましい。
【0034】
[実施の形態1]
次に、この発明の第1の実施の形態に係る養生方法を詳細に説明する。
(1)塗布又は噴霧工程
図1に示すように、先ず、被養生物であるコンクリート構造物の表面に満遍なく液状の可剥離性被覆組成物を塗布又は噴霧する。塗布する場合は、刷毛やスポンジローラなどの塗布器具で塗布し、噴霧する場合は、手動の噴霧器や原動機付きのエアコンプレッサーなどの噴霧装置で噴霧・吹付けを行う。
【0035】
(2)乾燥工程
次に、オープンタイムを置いて前工程で被養生物の表面に塗布又は噴霧した可剥離性被覆組成物を乾燥させて被養生物に養生材として被膜を形成する。本実施の形態では、自然乾燥で被膜を形成するが、冬季や現場の環境に応じて電熱器やジェットヒータ等の加熱手段を用いて強制的に乾燥させてもよい。また、可剥離性被覆組成物の最低造膜温度(MFT)が5℃以下であれば、自然乾燥する際に気温が5℃以上となっていれば造膜可能であるため、日本において想定される殆どの環境で場所や季節などに左右されずに使用できるため好ましい。
【0036】
(3)養生撤去工程
そして、養生が不要となったときに被膜の一端をめくって剥がす。このとき、前述のように、可剥離性被膜組成物を造膜したときの被膜の引張強度が20MPa以上で、破断時の伸びが200%以上を示すように調整しておくと、めくって剥がす時に被膜が途中で破けたりせずに一気に剥がし易いため好ましい。特に、被膜の引張強度が25〜70MPaで、破断時の伸びが400〜700%を示すように調整しておくとなおよい。
【0037】
このように、第1の実施の形態に係る養生方法によれば、従来の養生材を設置する作業が、液体を塗布するか又は噴霧して乾燥させる作業((1)塗布又は噴霧工程+(2)乾燥工程)を行うだけでできるので、養生範囲が広範囲に亘ったとしても養生作業の作業時間が格段に短くなり、足場上などの狭い場所でも作業が容易である。また、被養生物を養生する養生材が、被養生物の表面に形成された一連の均等な被膜なので、被養生物と隙間無く完全に密着させることができ、風雨などが養生材と被養生物との間に入り込むことが少なく、そのため、風雨などの外力に対しても長期間に亘って耐久性がある。そのうえ、万が一、部分的に被膜が破損した場合でも補修が容易である。そして、可剥離性被覆組成物を親水性基又は親水性セグメントを有した自己乳化型の脂肪族のウレタン樹脂から組成すると、自己乳化型なので、乾燥して被膜が形成された後も被膜の所々に界面活性剤が残存して、降雨などでその界面活性剤の周りの被膜が溶け出すような虞が少なくなり、被膜の耐水性を向上させることができるだけでなく、脂肪族のウレタン樹脂からなるので、原料の配合やモノマーの重合のさせ方により、前記のような引張強度粘度や破断時の伸びを示すものや適度な粘度のものが比較的調整し易い。そのため、養生撤去時に被膜が途中で破けたりせずに一気に剥がし易く、長期間に亘って養生した後も所望の剥離容易性が得られる。
【0038】
[実施の形態2]
次に、この発明の第2の実施の形態に係る養生方法を詳細に説明する。
(1)不織布設置工程
図2に示すように、先ず、被養生物の表面をその養生範囲に応じた所定の大きさの不織布で覆い、その縁の要所(例えば、4隅)を粘着テープや接着剤、ピン、釘などでの仮止め手段により仮止めして設置する。この不織布は、前述の可剥離性被膜組成物が浸透し易く、被膜形成を阻害しないものであれば特に材質についての限定はない。例えば、親水剤を練り込んだポリプロピレン樹脂からなる不織布(製品名:スプリトップ 日本不織布株式会社製)であれば、被膜形成にも、所望の剥離性にも問題がなく適用でき、特に、目付け量17g/m2、厚さ120μm(品番:SP−1017E)であれば可剥離性被膜組成物を何回も塗り直したりせずに被膜を形成でき、剥離性も良好で、剥がした後に跡が残らずなおよい。
【0039】
(2)塗布又は噴霧工程
次に、設置した不織布の上から液状の可剥離性被覆組成物を塗布又は噴霧する。このとき、第1の実施の形態に係る養生方法と同様に、塗布する場合は、刷毛などの塗布器具で塗布し、噴霧する場合は、手動の噴霧器や、原動機付きのエアコンプレッサーなどの噴霧装置で噴霧・吹付けを行う。
【0040】
(3)乾燥工程
そして、オープンタイムを置いて前工程で被養生物の表面を覆った不織布に塗布又は噴霧した可剥離性被覆組成物を自然乾燥させる。すると養生材として被養生物の表面に不織布と一体となった被膜が形成される。このとき、第1の実施の形態で述べたように、強制乾燥させてもよいし、可剥離性被覆組成物の最低造膜温度(MFT)が5℃以下であれば好ましい。
【0041】
(4)養生撤去工程
最後に、養生が不要となったときに不織布と一体化した被膜を不織布ごとめくって剥がす。このとき、第1の実施の形態と同様に、可剥離性被膜組成物を造膜したときの被膜の引張強度が20MPa以上で、破断時の伸びが200%以上を示すように調整しておくと、めくって剥がす時に被膜が途中で破けたりせずに一気に剥がし易いため好ましい。特に、被膜の引張強度が25〜70MPaで、破断時の伸びが400〜700%を示すように調整しておくとなおよい。
【0042】
このように、第2の実施の形態に係る養生方法によれば、第1の実施の形態に係る養生方法の作用効果に加え、被膜と被養生物との間に不織布を挟んで、不織布ごと剥がすので、より一層、剥がしている途中で被膜が破れたりせず連続して容易に剥がせ、養生撤去後にも被養生物に跡が残らない。また、不織布という均一な素材を被養生物と液状の可剥離性被覆組成物との間に介在させているので、石材やセメント系建材のような表面が粗く不均一な素材があったとしても、シーラーなどの目止め剤を塗布するなどの手間を掛けることなく、均一した一連の被膜を形成することができ、そのため、従来では、液体の養生材を塗布したり噴霧したりするだけで養生することが難しかった特定被養生物にも好適に適用することができる。
【実施例】
【0043】
次に、本発明の実施の形態に係る養生方法の効果を確認するために行った種々の試験結果について表を参照しつつ説明する。
【0044】
(実施例及び比較例の組成)
先ず、本発明の養生方法に用いる可剥離性被膜組成物の実施例及び比較例の組成について説明する。
表1は、原料の主な成分と、その製品名、メーカー名、及びその基本的な性能等を示す表であり、表2は、実施例の組成を示す表であり、表3は、比較例の組成を示す表である。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
本発明の実施の形態に係る養生方法に用いる可剥離性被膜組成物の4つの実施例を表1に示す主剤原料1〜4に添加物1〜4の添加物を添加して表2に示す組成で作成し、実施例との効果を比較するため4つの比較例を表1に示す主剤原料5〜8に添加物1〜4の添加物を添加して表3に示す組成で作成した。この添加物1は、製品名がフタージェント250(メーカー名:ネオス社(日本))であるフッ素系の界面活性剤であり、添加物2は、製品名がRM−12W(メーカー名:ローム&ハース社(米国))である会合型増粘剤であり、添加物3は、製品名がKF351(メーカー名:信越化学工業社(日本))であるシリコーンエマルションからなる剥離性向上剤であり、添加物4は、製品名がSNデフォーマー777(メーカー名:サンノブコ(日本))である疎水性シリカからなる消泡剤である。
なお、表1の引張強度、破断時の伸び、最低造膜温度はいずれも主剤原料単体の被膜の最大の引張強度、破断時の伸び、最低造膜温度を示すものである。
【0049】
(試験体の作成)
前述した組成の実施例1〜4及び比較例1〜4をコンクリート板とPICフォーム上にスポンジローラなどの塗布器具でそれぞれ塗布し、常温下で30分のオープンタイムを置いて乾燥させることにより被膜を形成し、被養生物が、2種類で、可剥離性被膜組成物が、8種類の計16個の試験体を作成した。また、従来例1として、和紙をテープ基材としてその裏面に比較的粘着力が弱い接着剤が塗られた粘着テープ(シーリング用マスキングテープ カモイ社製 品番:No.3303K)を、従来例2として、ポリエチレンシートをテープ基材としてその裏面に比較的粘着力が弱い接着剤が塗られた粘着テープ(養生テープ オカモト社製 品番:No.415)をそれぞれコンクリート板とPICフォーム上に貼着した試験体を計4個作成した(全部で試験体は20個)。
【0050】
なお、PIC(Polymer Impregnated Concrete)とは、硬化コンクリート(モルタル)の微細な空隙に、樹脂のモノマーを含浸・重合させてポリマー化し、緻密にしたコンクリートのことであり、PICフォームとは、板厚が25mm〜40mm程度の鋼繊維補強コンクリート板をPIC化した埋設型枠のことである。
【0051】
(乾燥直後の剥離試験)
前記のように作成した各試験体に対して、乾燥直後(30分のオープンタイム経過後直ぐに)に形成された被膜(従来例の場合は粘着テープ)を手で引き剥がして剥離性(容易に剥がれるか否か)を調べる試験を行った。その結果を下記の表4に示す。
【0052】
【表4】

【0053】
表4から分かるように、比較例1〜4は、コンクリート板、PICフォーム共に、被膜を剥がしている途中で切れてしまい、連続して一気に剥がすことができなかった。そのため、剥がすのに手間取り作業時間が大幅に掛かってしまった。これに対して、実施例1〜4は、被膜を剥がしている途中で切れることなく、連続して容易に剥がすことができた。また、従来例1及び従来例2の粘着テープも容易に剥がすことができた。
このように、可剥離性被膜組成物が実施例1〜4の場合、オープンタイムを置いて被膜を形成した直後では、被養生物の表面がコンクリート、PICであっても良好な剥離性を示すことが確認できた。
【0054】
(屋外暴露)
続いて、前記乾燥直後の剥離試験により良好な結果が得られなかった比較例1〜4を除いた、実施例1〜4と従来例1、2について、前記試験体の作成方法と同様に被養生物をコンクリート板とPICフォームとする各試験体を作成し、屋外に2ヶ月間放置して、風雨や日光等に暴露させ、後述の被膜状況確認試験、付着物に対する耐久試験、屋外暴露後の剥離試験、被養生物保護性能確認試験のそれぞれの試験を行った。
【0055】
(被膜状況確認試験)
先ず、屋外暴露させた各試験体の耐久性、耐候性、耐紫外線性等を調べるため、実施例1〜4の試験体については、被膜の状況を、従来例1、2については、粘着テープの状況を目視して確認した。その結果を下記の表5に示す。
【0056】
【表5】

【0057】
表5から分かるように、従来例1及び従来例2は、コンクリート板、PICフォームのいずれにおいても粘着テープの端部が剥がれると共に、中央部寄りに浮きを生じてしまっていた。このため、強風等が吹いた場合には剥離が更に進行し、養生材としての機能を果たさなくなると推測される。これに対して、実施例1〜4は、コンクリート板、PICフォームのいずれにおいても被膜が全面に亘って密着状態を維持しており、風雨や紫外線等に晒される屋外においても長期間耐久性があり、所望の耐候性、耐紫外線性を有していることが確認できた。
【0058】
(付着物に対する耐久試験)
次に、前記屋外暴露後の各試験体の被膜又は粘着テープの表面に、付着物の一例としてモルタルを付着させて、そのモルタルを乾燥固化後に取り除き、被膜又は粘着テープの表面の状況を目視することにより、付着物に対する耐久性を確認した。その結果を下記の表6に示す。
【0059】
【表6】

【0060】
表6から分かるように、従来例1は、モルタルの除去に伴って、モルタルが付着していた部分の表面(テープ基材である和紙)が剥がれてしまった。これに対して、実施例1〜4及び従来例2は、モルタルの除去の前後で特に変化は生じなかった。つまり、実施例1〜4及び従来例2は、付着物を引き剥がすことに対して耐久性があることが確認できた。
【0061】
(屋外暴露後の剥離試験)
次に、前記の乾燥直後の剥離試験と同様に、屋外暴露後の各試験体について、被膜(従来例の場合は粘着テープ)を手で引き剥がして剥離性を調べる試験を行った。その結果を下記の表7に示す。
【0062】
【表7】

【0063】
表7から分かるように、従来例1は、コンクリート板、PICフォーム共に、粘着テープを剥がしている途中にテープが切れてしまい、連続して一気に剥がすことができなかった。これに対して、実施例1〜4及び従来例2は、被膜(粘着テープ)を剥がしている途中で切れることなく、連続して容易に剥がすことができた。
このように、可剥離性被膜組成物が実施例1〜4の場合と従来例2のポリエチレンシートをテープ基材とする粘着テープの場合、屋外暴露後、即ち、養生期間が長期間に亘っても所望の剥離性を保ち、且つ、被養生物の表面がコンクリート、PICのいずれであっても良好な剥離性を示すことが確認できた。
【0064】
(被養生物保護性能確認試験)
前記屋外暴露後の剥離試験をした後、被膜(粘着テープ)を剥がした部分のコンクリート板及びPICフォームを目視で観察し、養生前と比べて、表面に汚れが付着していないか、被膜や粘着テープの跡が残っていないか、被養生物の表面が剥がれていないかなどの変化を確認した。その結果を下記の表8に示す。
【0065】
【表8】

【0066】
表8から分かるように、従来例1及び従来例2は、コンクリート板、PICフォームのいずれにおいてもその表面に汚れや跡があり、被養生物の表面に養生前とは異なる変化が生じていた。つまり、被養生物を傷や汚れから保護するという養生材の本来の機能を果たせていない。これに対して、実施例1〜4は、コンクリート板、PICフォームのいずれにおいても被膜が全面に亘って綺麗に剥がれ、且つ、汚れ,跡,被養生物の剥離等の変化を生じていなかった。つまり、実施例1〜4は、2ヶ月の屋外暴露後も被養生物の保護性能が良好で、被養生物の表面がコンクリートやPICであっても長期間に亘り確実に保護することができていた。
【0067】
(まとめ)
以上の試験結果から、可剥離性被膜組成物として実施例1〜4を本発明に係る養生方法に適用した場合、良好な結果が得られることが確認できた。即ち、養生材として被養生物の表面に形成する被膜が、風雨や紫外線に晒される屋外においても長期間耐久性があり、養生撤去後にも被養生物に跡が残らず、且つ、セメント系建材からなるか又はセメント系建材で覆われた部分を有する被養生物にも適用でき、養生を撤去するときに、剥がしている途中で被膜が破れたりせず連続して容易に剥がせることが確認できた。
【0068】
これらの結果を基に、本発明者らは、前述した所望の剥離性と可剥離性被膜組成物の被膜の引張強度と破断時の伸び等に相関関係があることを見出した。つまり、表1から分かるように、比較例3及び4は、そもそも原料7及び8の最低造膜温度が高すぎて、常温下で30分のオープンタイムを置いて乾燥させるだけでは、可剥離性被膜組成物から上手く被膜を形成することができなかったため、乾燥直後の剥離試験(表4参照)の結果が悪かったものと考察される。また、比較例1は、原料5の被膜の引張強度(19.02MPa)が弱すぎて、直ぐに引き千切れてしまったものと考えられ、比較例2は、原料6の被膜の破断時の伸びが10%と少なすぎたため上手く剥がせなかったものと考えられる。即ち、水性エマルション樹脂の被膜の引張強度は20MPa以上が望ましく、破断時の伸びは200%以上が望ましい。そして、実施例1〜4が含まれている範囲である水性エマルション樹脂の被膜の引張強度が25MPa〜70MPa、破断時の伸びが400〜700%の範囲が最適であると云える。
【0069】
なお、前記実験とは別に、前述の実施の形態2で説明したように、前記PICフォームに不織布(品番:SP−1017E 製品名:スプリトップ 日本不織布株式会社製)を設置し、その上から、自己乳化型の脂肪族系1液型ウレタン樹脂水性エマルションからなる可剥離性被膜組成物(品番:CT−3250 リンレイ社製 本願発明者らが開発したもので出願時点では市販していない)を塗布手段で1回塗りし、及び同様に2回塗りして試験体を2つ作成し、1ヶ月間の屋外暴露後に前記と同様に剥離試験を行ったが、所望の剥離性及び被養生物保護性能とも良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の養生方法は、建設業において好適に利用でき、特定被養生物(セメント系建材からなるか又はセメント系建材で覆われた被養生物)にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】この発明の第1の実施の形態に係る養生方法の工程を、垂直断面図を用いて模式的に示した説明図である。
【図2】この発明の第2の実施の形態に係る養生方法の工程を、垂直断面図を用いて模式的に示した説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場においてセメント系建材からなるか又はセメント系建材で覆われている部分を有する被養生物を傷や汚れから保護するための養生方法であって、
前記被養生物の表面に常温で硬化して造膜する液状の可剥離性被覆組成物を塗布又は噴霧する工程と、該可剥離性被覆組成物を乾燥させて被養生物に被膜を形成する工程と、養生が不要となったときに前記被膜の一端からめくって剥がす工程とを有することを特徴とする養生方法。
【請求項2】
建設現場において被養生物を傷や汚れから保護するための養生方法であって、
被養生物の表面に不織布を貼って覆い仮止めする工程と、この不織布の上から被養生物に常温で硬化して造膜する液状の可剥離性被覆組成物を塗布又は噴霧する工程と、該可剥離性被覆組成物を乾燥させて被膜を形成する工程と、養生が不要となったときに前記不織布と一体化した被膜を前記不織布ごとめくって剥がす工程とを有することを特徴とする養生方法。
【請求項3】
前記可剥離性被覆組成物は、造膜したときの前記被膜の引張強度が20MPa以上で、破断時の伸びが200%以上を示すことを特徴とする請求項1又は2に記載の養生方法。
【請求項4】
前記可剥離性被覆組成物は、水と水性エマルション樹脂を含有し、最低造膜温度(MFT)が5℃以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の養生方法。
【請求項5】
前記水性エマルション樹脂は、一液型であることを特徴とする請求項4に記載の養生方法。
【請求項6】
前記水性エマルション樹脂は、ウレタン樹脂であることを特徴とする請求項4又は5に記載の養生方法。
【請求項7】
前記ウレタン樹脂は、脂肪族であることを特徴とする請求項6に記載の養生方法。
【請求項8】
前記ウレタン樹脂は、親水性基又は親水性セグメントを有した自己乳化型であることを特徴とする請求項6又は7に記載の養生方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−179496(P2009−179496A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18410(P2008−18410)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000216025)鉄建建設株式会社 (109)
【出願人】(303004716)マテラス青梅工業株式会社 (15)
【出願人】(390039712)株式会社リンレイ (18)
【Fターム(参考)】