説明

養鶏用飼料

【課題】 多年生の海藻であるノコギリモクを養鶏用の機能性飼料原料として用いた養鶏用飼料であって、ノコギリモクの一年生部位を用いることにより、海藻粉末の製造に多くの工程が必要でなく、低コストで海藻粉末を得ることができる。養鶏用機能性飼料原料の製造コストが安くつき、さらに鶏卵の卵黄色の濃化に寄与することができる養鶏用飼料を提供する。
【解決手段】 養鶏用飼料は、多年生の海藻であるノコギリモクの一年生部位を粉砕および水分除去して、水分20重量%以下としたノコギリモクの乾燥粉末を、0.5〜5重量%の割合で、養鶏用基本飼料に配合する。ノコギリモクの乾燥粉末は、多年生の海藻であるノコギリモクの一年生部位を採集し、天日干しした後、衝撃式粉砕・乾燥方法を用いて粉砕および水分除去することにより得られるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多年生の海藻であるノコギリモクを養鶏用の機能性飼料原料として用いた養鶏用飼料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国は、長い海岸線を有し、この海岸線には多様な生態系が形成されており、中でも海藻は、重要な役割を果たしている。その反面、海藻は、時化などによって浜辺に打ち上げられて悪臭を放つとともに、景観悪化の要因となり、漂流時には、船舶の航行を阻害するなど、海岸線を有する自治体の悩みになっている。
【0003】
また、食用として加工される海藻も、変色した葉先や根などの切除部分や、養殖の段階において間引いたもの、硬化して商品とならないものは、大量に廃棄されるため、これらの有効活用が望まれている。
【0004】
大学や企業、国の研究機関等では、このように廃棄物となった海藻をバイオマス資源と位置付けて、エネルギー転換の研究開発が進められているが、コスト面や収集量の問題で早期の実用化(有効利用)は難しい状況にある。
【0005】
一方、海藻には、ミネラルや繊維質、アミノ酸といった有用な成分が含まれており、古来より健康的な食品として広く認知されている。そして、人間が食さない海藻でも家畜へ給餌している事例は多くある。
【0006】
下記の特許文献1には、養鶏用飼料として、トウモロコシなどの穀類粉、脱脂糠、魚粉、カルシウム、動・植物性油脂、ビタミン混合物、その他の添加物を配合した養鶏用基本飼料に、木酢粉と海藻粉とを1:1の割合で1〜5重量%配合した養鶏用飼料が開示されており、海藻粉としては、コンブ、ホンダワラ、ヒジキなどが挙げられている。そして、この特許文献1に記載の養鶏用飼料によれば、卵黄色も良好な高品質卵の生産ができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−192091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の養鶏用飼料の発明によれば、広葉樹の乾留で得た木酢液を蒸留して粉体化した木酢粉を、海藻粉と混ぜた後、一般的な養鶏用基本飼料に添加するものとなっており、原料調達バランスに課題があるし、コスト高となるという問題があった。また、海藻粉は塩分を除き、含有成分を壊すことなく精製して粉末状にすることから、飼料の製造に多くの工程が必要で、製造コストが高くつくという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、海藻として多年生であるノコギリモクの一年生部位を用いることにより、
海藻粉末の製造に多くの工程が必要でなく、低コストで海藻粉末を得ることができて、養鶏用機能性飼料原料の製造コストが安くつき、さらに鶏卵の卵黄色の濃化に寄与することができる養鶏用飼料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、養鶏用飼料について、海藻として多年生であるノコギリモクの一年生部位を粉砕および水分除去した乾燥粉末を、養鶏用基本飼料に配合することにより、製造コストが安く、しかも鶏卵の卵黄色の濃化に寄与することができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1の養鶏用飼料の発明は、多年生の海藻であるノコギリモクの一年生部位を粉砕および水分除去して、水分20重量%以下としたノコギリモクの乾燥粉末を、0.5〜5重量%の割合で、養鶏用基本飼料に配合したことを特徴としている。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の養鶏用飼料であって、ノコギリモクの乾燥粉末は、多年生の海藻であるノコギリモクの一年生部位を採集し、天日干しした後、衝撃式粉砕・乾燥方法を用いて粉砕および水分除去することにより得られるものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の養鶏用飼料の発明は、多年生の海藻であるノコギリモクの一年生部位を粉砕および水分除去して、水分20重量%以下としたノコギリモクの乾燥粉末を、0.5〜5重量%の割合で、養鶏用基本飼料に配合したことを特徴とするもので、請求項1の発明によれば、ノコギリモクの一年生部位よりなる海藻の粉末の製造に多くの工程が必要でなく、低コストで海藻粉末を得ることができて、養鶏用機能性飼料原料の製造コストが安くつき、さらに、鶏卵の卵黄色の濃化に寄与することができるという効果を奏する。また、鶏の免疫能を高めるなど抗病性向上への寄与が見込める。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載の養鶏用飼料であって、ノコギリモクの乾燥粉末は、多年生の海藻であるノコギリモクの一年生部位を採集し、天日干しした後、衝撃式粉砕・乾燥方法を用いて粉砕および水分除去することにより得られるものであることを特徴とするもので、請求項2の発明によれば、養鶏用飼料に用いるノコギリモクの乾燥粉末は、ノコギリモクの一年生部位を採集し、天日干しした後、粉砕・乾燥するだけでよく、従来の塩分除去や成分抽出等の工程は不要であるため、製造工程が非常に簡単で、低コストで製造できる。しかも、ノコギリモクの一年生部位の粉砕および水分除去を衝撃式粉砕・乾燥方法を用いて行うことにより、加熱を必要とせずに低エネルギーで粉砕・乾燥できるため、乾燥粉末の製造コストが非常に安くつき、ひいては養鶏用飼料の製造コストが安くついて、市場に安価に提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の養鶏用飼料に用いる多年生の海藻であるノコギリモクの各部位を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
本発明は、我が国の沿岸部の藻場に多数生息し、なおかつ産業的には利用されていない多年生の海藻であるノコギリモクを養鶏用の機能性飼料原料として低コストで利用する養鶏用飼料を提供するものである。
【0018】
一般に、海藻は多種多様あるが、ワカメやヒジキ、アカモクといった柔らかく消化しやすい海藻は、人の食用として利用されている。しかしノコギリモクのような硬く風味がない海藻は、人の食用には適していない。
【0019】
褐藻網ヒバマタ目ホンダワラ科ホンダワラ属のノコギリモクは多年生の海藻で、本州の東北地方の太平洋岸を除いた地域と九州および四国に分布しており、日本海沿岸の藻場の代表的な構成種となっている。
【0020】
図1は、本発明の養鶏用飼料に用いる多年生の海藻であるノコギリモクの正面図である。
【0021】
同図において、ノコギリモクは、付着器(holdfast)から茎(stem)および主枝(main branch)が伸び、下部の葉(Lower Leaf)、中間部の葉(middle leaf)および上部の葉(upper leaf)を有するとともに、生殖器床(receptacle)と気胞(vesicle)を有している。これらのうち、下部の葉(Lower Leaf)・茎(stem)・付着器(holdfast)が多年生であり、上部の葉(upper leaf)・中間部の葉(middle leaf)・生殖器床(receptacle)・気胞(vesicle)が一年生である。生殖器床(receptacle)には、雌の生殖器床(female receptacle)と、雄の生殖器床(male receptacle)とがある。
【0022】
ノコギリモクは、初期の成長が緩慢で、群落の形成には数年を要するものの、磯焼けが日本各地で進行する傾向にある中で、形態上の理由でウニ類の食害を受けにくく、さらに近年の水温上昇に伴って増加傾向にある。また植食性の魚類(アイゴなど)の嗜好性が低いなどの特徴から、比較的大規模な群落が維持されており、資源的には、安定しているものと思われる。
【0023】
ノコギリモクの一年生部位は、毎年、夏〜秋に掛けて枯死・脱落して、冬〜春に掛けて生長する。多年生ノコギリモクの一年生部位が漂流・漂着するのは、初春から夏の間であり、この間、漂流・漂着するノコギリモクの一年生部位を捕集し、あるいはまた海中や海面まで繁茂するノコギリモクの一年生部位を刈り取るなどして、採集して、粉砕・水分除去(乾燥)することで、人工採苗によることなく、自生する(天然)海藻、あるいは着生基盤(着生ブロック等)で増殖した海藻を持続的に養鶏用機能性飼料原料として利用できる。
【0024】
なお、ノコギリモクは多年生の海藻であるため、一年生部位のみを利用すれば、種苗の生産工程、人工採苗工程が不要であり、また、日本国沿岸部の藻場の主要な構成種であるので、まとまって多量に賦存しており、なおかつ、現在、産業上の価値がないことから、持続的に低コストで多量に原料を調達できる。
【0025】
本発明による養鶏用飼料は、上記のように採取したノコギリモクの一年生部位を粉砕および水分除去して、水分20重量%以下としたノコギリモクの乾燥粉末を、0.5〜5重量%の割合で、養鶏用基本飼料に配合したことを特徴とするものである。
【0026】
ノコギリモクの一年生部位を飼料原料として商品化するためには、長期間保存できることが必須条件となる。そのためには、カビの繁殖や腐敗が起こらないように水分を、20重量%以下、好ましくは15重量%以下まで乾燥させる必要がある。
【0027】
採集したノコギリモクの一年生部位を、天日干しして、水分を60重量%以下に粗乾燥した後、熱風乾燥機や脱水機、粉砕機などの機械を使って、水分20重量%以下、好ましくは15重量%以下のノコギリモク乾燥粉末とすることで、効率的に機能性飼料原料として利用できるようになる。
【0028】
ここで、一般的には、乾燥機は、熱風等の熱源を利用して直接または間接的に対象物を熱に晒すことによって水分を気化(蒸発)させる方式を採用しているが、ノコギリモクは、衝撃式粉砕・乾燥装置を用いて粉砕および水分除去することが好ましい。
【0029】
衝撃式粉砕・乾燥装置は、高速回転する羽根(回転バー)と対象物を衝突させることによって対象物中の水分を物理的に飛散させて乾燥(脱水)する。対象物中の水分を蒸発させることなくミストとして気層へ移行させるため、気化熱を必要とせず、低エネルギーで乾燥することができ、例えば加熱+粉砕方式に比べて省エネルギーである。さらに、対象物であるノコギリモクは、回転バーとの衝突時に対象物自体が粉砕されるため、乾燥と粉砕が同時に行える。
【0030】
本発明者らの研究によれば、湿潤状態で粘性を有するノコギリモクの一年生部位の粉砕・乾燥に、衝撃式粉砕・乾燥装置が対応可能であり、またその前処理としては、天日干しして、水分を60重量%以下に粗乾燥したノコギリモクの一年生部位を、例えば簡易な農機具(稲藁裁断機等)によって150〜200mm程度に長さを揃えるだけでよく、この裁断した多年生ノコギリモクの一年生部位を、衝撃式粉砕・乾燥装置に投入して、粉砕・乾燥を行うものである。
【0031】
そしてこの場合、ノコギリモクの一年生部位について、従来の塩分除去や成分抽出等の工程は不要であり、低コストで製造できる。また、ノコギリモクの乾燥粉末は、他の海藻粉末の飼料利用法に見られるような木酢粉や明日葉乾燥物、椿乾燥物などの他の材料と混合することなく、一般的な養鶏用飼料(基本飼料)に0.5〜5重量%添加することで効果を発揮できる。
【0032】
ここで、一般的な養鶏用基本飼料としては、例えば市販の「マル中印成鶏飼育用配合飼料 レイヤー17」(中部飼料株式会社製)(下記の実施例1参照)を使用することができる。なお、ノコギリモクの一年生部位の乾燥粉末は、養鶏用基本飼料に添加して利用することで、相対的な効果を発揮するが、養鶏用基本飼料としては、上記の市販配合飼料レイヤー17に限定されるものではない。本発明による養鶏用飼料は、養鶏農家が穀類をベースに独自に調製する自家飼料にも適用できる。
【0033】
本発明による養鶏用飼料は、ノコギリモクの一年生部位を粉砕および水分除去して、水分20重量%以下としたノコギリモクの乾燥粉末を、0.5〜5重量%の割合で、養鶏用基本飼料に配合する。ここで、養鶏用基本飼料に対するノコギリモクの一年生部位の乾燥粉末の配合量が、0.5重量%未満であれば、鶏卵の卵黄色の濃化への寄与が相対的に少ない。養鶏用基本飼料に対するノコギリモクの一年生部位の乾燥粉末の配合量が、5重量%を超えると、産卵成績(卵重、飼料要求率、産卵数)が落ちる傾向にあるので、好ましくない。
【0034】
ノコギリモクは、繊維分やアミノ酸、ミネラルを含み、また一般に、卵黄色の濃い卵の方が消費者ニーズは高く、ノコギリモクの一年生部位の乾燥粉末を採卵鶏の基本飼料に0.5〜5重量%添加することで、生産される鶏卵の卵黄色を濃化することができる。また、採卵鶏の免疫能を高めて、抗病性を高めることが見込める。
【0035】
本発明による養鶏用飼料は、我が国の沿岸部の藻場に多数生息し、なおかつ産業的には利用されていない多年生の海藻であるノコギリモクを養鶏用の機能性飼料原料として利用するものであるが、原料を漂流・漂着海藻だけに依存した場合、収穫量が不安定になることから、計画的な生産は難しい。安定した生産を行うには、漂流・漂着海藻に加えて、生息中の海藻採取も必要になる。
【0036】
ノコギリモクを、その一年生部位のみを採取することによって、ノコギリモクの一年生部位を継続的に採取できることが確認された。
【0037】
また、ノコギリモクの場合、波浪や漂砂などの物理的撹乱の影響が少ない安定した基質に生育する傾向にあり、例えば沿岸域で着生基盤(着生ブロック等)を用いて増殖することにより、ノコギリモクの養殖が比較的容易に行えるものと判断できる。
【実施例】
【0038】
つぎに、本発明の実施例を比較例と共に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
実施例1〜2
まず、西日本の日本海沿岸において、サザエ漁に使用する船外機船を利用し、海面に漂流しているノコギリモクの一年生部位を捕集した。このノコギリモクの一年生部位を、天日干しにより粗乾燥して、20〜23重量%の水分量とした。
【0040】
つぎに、粗乾燥したノコギリモクの一年生部位を、簡易な農機具(稲藁裁断機)によって150〜200mm程度に長さを揃える前処理を行い、この裁断したノコギリモクの一年生部位を、衝撃式粉砕・乾燥装置(KDS Micronex、スチールプランテック社製)に、30kg/hの処理量で投入して、粉砕・乾燥を行った。
【0041】
衝撃式粉砕・乾燥装置から排出されたノコギリモクの粉末の平均水分は、約10重量%であり、平均粒径は、約100μmであった。
【0042】
つぎに、上記のように粉砕・乾燥したノコギリモクの粉末を、下記表1に示す養鶏用基本飼料(市販の「マル中印成鶏飼育用配合飼料 レイヤー17」、中部飼料株式会社製)に、3重量%(実施例1)、および5重量%(実施例2)の割合で配合し、本発明による2種類の養鶏用飼料を調製した。
【表1】

【0043】
多年生の海藻であるノコギリモクの一年生部位の乾燥粉末の成分を分析したところ、下記表2に示す通りであった。なお、表2には、飼料原料として市販されているフィリピン産の海藻粉末・ホンダワラの成分の分析結果、およびノコギリモクの一年生部位の乾燥粉末(N)とフィリピン産の海藻粉末・ホンダワラ(H)との成分比(%)をあわせて示した。
【表2】

【0044】
つぎに本発明の養鶏用飼料の養鶏への給餌効果を確認するために、下記の評価試験を行なった。
【0045】
生後130日の採卵鶏(レイヤー)の24羽に、養鶏用基本飼料にノコギリモクの一年生部位の粉末を3重量%(実施例1)、および5重量%(実施例2)の割合で配合した養鶏用飼料を、1羽に対し、1日100〜150gの割合で、60日間与え続けた。
【0046】
そして、60日目以降に生んだ卵を、生卵、ゆで卵に分けて、それらの卵黄の表面色をCIE(国際照明委員会)のL表色系に基づく分光測色計によりで測定し、卵黄色の濃化を評価した。得られた結果を下記の表3に示した。
【0047】
ここで一般に、物質の色を定量的に表現するための手法として、色を座標軸で表す方法が農業や工業など各種産業において取り入れられている。その中でも、1976年に国際照明委員会(CIE)にて規格化され、日本でもJIS(JIS Z 8729)で採用されているのが、L表色系である。
【0048】
表色系では、L軸、a軸、b軸の座標軸で表現する。それぞれ、L軸は物質の明度合い、a軸は赤方向、b軸は黄方向を表している。
【0049】
比較例1
比較のために、採卵鶏(レイヤー)の12羽に、ノコギリモクの一年生部位の粉末の配合量を0重量%とした養鶏用基本飼料のみよりなる養鶏用飼料(比較例1)を、上記実施例1の場合と同様に、60日間与え続け、60日目以降に生んだ卵を、生卵、ゆで卵に分けて、それらの卵黄の表面色を同様に分光測色計により測定し、卵黄色の濃化を評価した。得られた結果を下記の表3にあわせて示した。
【表3】

【0050】
上記表3の結果から分かるように、本発明による実施例1および2のノコギリモクの一年生部位の粉末を配合した養鶏用飼料によれば、卵黄色の濃化(赤っぽくなる)が確認された。特に、生卵の卵黄色は、ゆで卵の卵黄色よりも濃化具合が高かった。これは、褐藻類であるノコギリモクに含まれるカロテノイド(ゼアキサンチン、フコキサンチン、β−カロテン、ルテイン)の色素(黄色〜赤色の色素)が鶏卵へ移行したことが影響しているものと思われる。
【0051】
鶏卵が市販される場合、卵黄の色が濃い(赤っぽい)方が高値で販売される傾向にある。本来、卵黄色の黄色は、飼料中に含まれるトウモロコシの色素に大きく影響されるが、トウモロコシの価格の高騰が養鶏業者の悩みとなっている。
【0052】
本発明によれば、ノコギリモクの一年生部位の粉末を養鶏用飼料の一部に添加することにより、鶏卵の価値が向上する可能性が見出された。
【0053】
これに対し、ノコギリモクの一年生部位の粉末を配合していない養鶏用基本飼料のみよりなる養鶏用飼料を用いた比較例1では、本発明による実施例1および2のノコギリモクの一年生部位の粉末を配合した養鶏用飼料の場合よりも、卵黄の色相が、生卵、ゆで卵のいずれの場合にも淡いものであった。
【0054】
ところで、ノコギリモクの一年生部位の乾燥粉末の成分は、上記の表2に示す通りのものであるが、飼料原料として市販されているフィリピン産の海藻粉末(ホンダワラ)と比較したところ、ノコギリモクの一年生部位の乾燥粉末の方が、ヨウ素が多く含まれており、ヨウ素強化卵を生産できることが見込めることが分かった。また、鶏肉、鶏卵のアミノ酸組成や脂肪酸組成の変化が見込めるものである。
【0055】
なお、採卵鶏に、ノコギリモクの一年生部位の乾燥粉末を養鶏用基本飼料に3重量%添加した本発明の養鶏用飼料(実施例1)を給餌しても、産卵成績(卵重、飼料要求率、産卵数)、卵殻強度、卵厚、およびハウユニット(卵の質量と卵白の盛り上がりの高さから算出される鶏卵の鮮度を表す指標)には悪影響を及ぼさなかった。また、ノコギリモクの一年生部位の乾燥粉末の配合量が5重量%を超えると、産卵成績が落ちる傾向にあるので、配合量は5重量%までが適当であることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多年生の海藻であるノコギリモクの一年生部位を粉砕および水分除去して、水分20重量%以下としたノコギリモクの乾燥粉末を、0.5〜5重量%の割合で、養鶏用基本飼料に配合したことを特徴とする、養鶏用飼料。
【請求項2】
ノコギリモクの乾燥粉末は、多年生の海藻であるノコギリモクの一年生部位を採集し、天日干しした後、衝撃式粉砕・乾燥方法を用いて粉砕および水分除去することにより得られるものであることを特徴とする、請求項1に記載の養鶏用飼料。

【図1】
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【公開番号】特開2013−102727(P2013−102727A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248478(P2011−248478)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】