説明

首及び背部冷却又は加温用具

【課題】炎天下でのスポーツ,労働等による日射病を防ぐため、首部,肩部,背等を冷やす冷却手段を有する冷却用具であって、それを身体に装着したときに、身体の動きを束縛することなく取り付け得る。
【解決手段】U字形又は倒コ字形に屈曲した平面形状をなした偏平柔軟な基体の、前記屈曲部分に拡大部を構成し、該拡大部に冷却材,加熱材倒を収容するための収納袋を構成し、カットした微細発泡させたネオプレンゴムシートを、そのカット面が使用時に使用者側に出るよう、前記基体の裏面に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温時におけるスポーツ,労働等を行った際において首部,背部等の発熱を取り去り冷却する用途、又は、首の後部から肩甲骨の間にかけて集中している褐色脂肪細胞を刺激することで脂肪細胞が活発に消費され体脂肪率を減少させ得る用途等に使用することが出来、スポーツ運動時或いは日常生活時における使用時に身体の動きを全く阻害することなく肌着と一体となった状態で着用することが出来る冷却又は加温用具に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、夏期のスポーツなどにおいて晴天時屋外でプレーをした場合、プレーをする者の首筋,肩部,背部等に強い日差しを受け体温の上昇等により所謂日射病となる心配があった。
【0003】
そのため、体温の上昇を防ぐために帽子の着用は勿論、首廻りに冷却効果を発揮する、例えば濡れたタオルを巻くなどするが、時間の経過と共に水分は蒸発し長時間の効果は期待できず、また、その固定手段に満足するものはなく、その取扱いにわずらわしさを有していた。
【0004】
そこで、胸部から背部を被うことの出来るジャケット状の上衣の背部に袋部を構成し、該袋部内に保冷材を封入して、ジャケットを着用することで背部の冷却を行う衣料(特許文献1)が開発されたが、ジャケットを着用すると胸部背部は完全にジャケットに被われて衣料を更に重ね着したと同様になり、自由な身体の動きを阻害するばかりでなく、保冷材のない部分では暑さが加わることにもなった。
【0005】
また、背部を冷却し或いは加温するために、冷却材或いは発熱材等を入れる袋体を有する本体に、延長部としてバンド状部分を設け、着用時には本体の袋体を背中に背負いバンド状部分を胸側に廻してその先端同志を固定する襟足冷却具(暖房も可)(特許文献2)も知られているが、該冷却具の本体左右のバンド状部分は先端で環状に接続され、いわば首に廻して掛けるような状態である。従って、スポーツなどの激しい運動時には安定性に欠ける嫌いがある。
更に身体に衣料を着用した際に、ずれを生する事が無いようにテーブ状生地の表面に弾性糸が浮き上がって突出するような組織とし、該突出した弾性糸が摩擦抵抗を生じ衣料のずれを防止する滑り止めテープ(特許文献3)が知られているが、柔軟性,摩擦抵抗の点で更なる効果が望まれる。
【特許文献1】特開2002−88531号公報
【特許文献2】特開2000−328318号公報
【特許文献3】特開2002−249911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点に鑑みて、炎天下でのスポーツ,労働等による日射病を防ぐため、首部,肩部,背等を冷やす冷却手段を有する冷却用具、或いは、体脂肪を減少させる為に首の後部から肩甲骨の間に掛けて集中している褐色脂肪細胞を刺激する為の冷却・加温用具であって、それを身体に装着したときに、身体の動きを束縛することなく取り付け得ることの出来る首及び背部冷却又は加温用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
U字形又は倒コ字形に屈曲した平面形状をなした偏平柔軟な基体の、前記屈曲部分に拡大部を構成し、該拡大部に冷却材,加熱材等を収容するための収納袋を構成し、カットした微細発泡させたゴムシートを、そのカット面が使用時に使用者側に出るよう、前記基体の裏面に設けた。また、ゴムシートは、ネオプレンゴム,ブタジェンゴム,イソプレンゴム,天然ゴムなどの軟質ゴムよりなり、直径20μm乃至200μmの微細な気孔を有し、その気孔隔壁の厚さが1μm乃至5μmである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の首及び背冷却又は加温用具は、U字形又は倒コ字形に屈曲した平面形状をなした偏平柔軟な基体の、前記屈曲部分に拡大部を構成し、該拡大部に収納袋を設け、微細発泡させてなるネオプレン等のゴムシートをそのカット面が使用時に使用者側に出るよう前記基体の裏面に設けたために、収納袋内に冷却材又は加温材等を封入し、身体を冷却又は加温することが出来るが、その着用時基体に設けられたネオプレン等のゴムシートのカット面が使用者と接することになり、使用者の着用した衣料とネオプレン等のゴムシートのカット面との間で大きな摩擦が生じ、接触する両者は互いに移動することはなく、ネオプレン等のゴムシートは柔軟性良く密接状態で使用者が着用している衣料面に接し互いにずれの生ずる事はない。
【0009】
従って、本発明冷却又は加温用具を着用する際は、着用者に冷却又は加温用具を取り付けるための例えばバンド等の固定部材は全く必要なく、単に基体の自由端部分を使用者の体に添って肌着等の上から押し当て、両者が接している状態とするのみで両者は固定されるので、着用時に全く手間を要しない。
【0010】
また、基体は偏平柔軟なシート体であるので身体のカーブに良く馴染み身体の屈曲の動きに良く添って動き窮屈感なく着用出来る。
U字状基体の延びている自由端部分は単に身体の前面に垂れ下がっている状態で他部と結び合はされるようなことは無く衣料面に密接している為に特に柔軟性を損なうことが無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態を図面と共に次に説明する。
本発明の冷却又は加温用具1は、図1に示す如く、U字形又は倒コ字形に屈曲した平面形状をなした偏平柔軟な基体2を有し、基体2は、1枚のシートよりなるものでも、或るいは芯材となる不織布の両面を、適宜密な組織で織り上げた生地で被ったものでも、更に必要に応じ中芯を入れるなどしたものでも任意とする。そしてそれらの複数枚を重ね大きくキルト2aをしても良い。
【0012】
U字形又は倒コ字形の屈曲部分は拡大部3とし、拡大部3の両側に延びる延長部4よりもその幅を大きくし、拡大部3には更に適宜シートを重ね収納袋5を形成する。延長部4と収納袋5とは別途作成し一体に縫着したものでも良い。収納袋5は、冷却部材等を収納するためのものであるため、冷却材による結露の発生に対処し得る構造のものとしなければならない。即ち、吸水性と断熱性を兼ね備えた吸水不織布の袋とする、或いは、更にそれを非透水性のシートで被う等の構造とするのが好ましい。収納袋5の開口部6は、基体1の屈曲部分の内縁側に設ける。これは後述する如く、本発明冷却又は加温用具を使用した際に収納袋5が背に当り延長部4,4を身体の前側に引き出すようにして身体に装着したとき、収納袋5の開口部6が収納袋5の上位に位置して内容物が、そこから飛び出さないように確保するためである。
【0013】
本発明、冷却又は加温用具の基体2の裏面には、微細発泡させたゴムシートのカット体7をカット面が外面、即ち、使用時身体に接するように接着等適宜手段で取り付ける。取り付け位置は、両延長部4,4か、又は必要に応じそれに加えて拡大部3にも設けるものとする。
【0014】
微細発泡ゴムシートはネオプレンゴム,ブタジェンゴム,イソプレンゴム,天然ゴムなどの軟質ゴムよりなり、直径が20μm〜200μm程度の微細な気孔を有したものが好ましく、この気孔部分をカットすると気孔隔壁の厚さが1μm〜5μmと非常に薄く、気孔部分が切断された場合(断面を図4に示す)、気孔自体は椀状に構成されるが、その隔壁部分が柔軟性とフリクション性を発揮することになる。
微細発泡ゴムはカット面は上記のようなフリクション性を発揮するが、カットしない面は比較的滑らかな面であり、フリクション性を発揮出来ない。
【0015】
上記微細発泡ゴムのカット面とカットしていない滑らかな面との滑り止め効果について6種類の対象物品につき行なった実験例を表1に示す。数値は所定重量を載置した試料を対象布上に置いて試料を引き、移動を開始したときの牽引力をグラムで表示した。
【0016】
【表1】

【0017】
上記の実験手段を図5に示す。10は調査対象布であって、その面が平面となるようガラス11に貼り付ける。その上面に滑り止め試料12を10cm角に切り、その上に均等に加重されるよう全面に当たるように80gの紙製シート13をのせる。滑り止め試料12の端部に屈曲が自在となるように、3mmを試料に接着させてアクリル粘着テープ14を取り付け、この部分を目玉クリップではさみ、目玉の穴にバネ秤のフックを引掛けて、静かに引く事により面摩擦抵抗を調べた。
また、各種生地(対象布)に対してゴムの種類によって摩擦抵抗がどのように変化するかを調べたのが表2である。
【0018】
【表2】

【0019】
以上の結果により、発泡クロロプレンゴムのカット面での滑り止め効果は、他の滑り止め材の2倍ぐらい優れている。発泡クロロプレンゴムであっても、単に発泡させただけの外面の、滑らかな面の場合には、滑り止め効果は他の材料とほとんど変わらないか、むしろ低めの値なので、カットした時に現れてくる気泡を構成する隔壁部分が、変形しながら滑りに抵抗していることが、優れた摩擦効果を生んでいるものと推定される。
【0020】
本発明冷却具を冷却用として使用するときは、収納袋5内に冷却した保冷材を入れた冷却を収納袋5が首の後即ち背に位置し、拡大部3から両側に延びている延長部4,4を肩に掛け更に延長部4,4を胸前にまで引き下げておく。そして、その上に適宜上衣を羽織る。この装着によって微細発泡ゴムシートは、使用者の着用している肌着等の生地と対面することになり、更には上から上衣等の重みによって微細発泡ゴムシートは対面している肌着等の生地に適宜の圧接力が加えられることになる。
【0021】
先にも述べた如く、気泡を構成していた隔壁はその厚さが1μm〜5μmと極めて薄く、該部が上記圧力によってへたり込んだ状態に屈折することでゴムシートとそれが対面する生地との間に摩擦抵抗が一層増大し両者間に位置ずれが生ずることなく位置を保っていることになる。
【0022】
この際に延長部4,4は単に前身頃の位置に垂れ下がっているだけで、特に係止部材で互いに固定したりすることもなく、また、ゴムシート自体も延長部4自体も柔軟性のもので全く着用感がなく使用できる。
尚、本発明冷却又は加温用具を使用する際に肌着等を全く着用していないときは、微細発泡ゴムのカット体が肌に接し、カット体と肌との間に摩擦抵抗を生じさせる事が困難になり、使用者に対する用具の固定け手段がなくなるので、延長部4,4の先端に面ファスナー2b等の係止具を設けそれらを互に結合することで脱落防止に対処している。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明にあっては、微細発泡ゴムシートのカット面に生ず極めて薄い気泡の隔壁の柔軟な屈曲によって摩擦抵抗を生じさせ、かつ、微細発泡ゴムシートの軽く柔らかい感触を利用して、着用感を生じない冷却具を得たもので、本発明と同様に着用感を生ずるのを好まず、すべりの生ずるのを阻止する例えばアパレル関係のインナーベルトなどに用いて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明冷却又は加温用具の平面図。
【図2】本発明冷却又は加温用具の裏面図。
【図3】A,Bは、本発明冷却又は加温用具を着用した状態の正面及び背面図。
【図4】クロロプレンゴムのカット面を示す顕微鏡写真。
【図5】面摩擦抵抗の実験装置の概略図。
【符号の説明】
【0025】
1 冷却又は加温用具
2 基体
3 拡大部
4 延長部
5 収納袋
6 開口部
7 微細発泡ゴムのカット体
10 調査対象布
11 ガラス
12 滑り止め試料
13 紙製シート
14 アクリル粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
U字形又は倒コ字形に屈曲した平面形状をなした偏平柔軟な基体の、前記屈曲部分に拡大部を構成し、該拡大部に冷却材,加熱材倒を収容するための収納袋を構成し、微細発泡させたゴムシートを、そのカット面が使用時に使用者側に出るよう、前記基体の裏面に設けたことを特徴とする首及び背部冷却又は加温用具。
【請求項2】
ゴムシートは、ネオプレンゴム,ブタジェンゴム,イソプレンゴム,天然ゴムなどの軟質ゴムよりなることを特徴とする請求項1記載の首及び背部冷却又は加温用具。
【請求項3】
ゴムシートは、直径20μm乃至200μmの微細な気孔を有し、その気孔隔壁の厚さが1μm乃至5μmであることを特徴とする請求項1記載の首及び背部冷却又は加温用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−57189(P2006−57189A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237285(P2004−237285)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(390030351)クレトイシ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】