説明

香り、匂いを発する光ディスク

【課題】 多種多様な香りを放つと共に、放香期間を長くすることのできる香り層を有する光ディスクを提供する。
【解決手段】 光ディスクのディスク本体1の記録、レーベル印刷面に香り層2を印刷形成する。
この香り層2は、香料マイクロカプセルを含む紫外線硬化性インキより成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は香り、匂いを発する光ディスクに係わり、更に詳しくはCDやDVD等の光ディスクのレーベル印刷面を手指で軽く擦ることにより香り、匂いを発することの出来る光ディスクに関し、併せてディスクが使用される環境温度の変化によって変色する図柄、模様等の層をも有する光ディスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知の通り情報技術の開発の進行に伴い、情報記録媒体もFDからCD、DVD等の光ディスクへと変遷し、益々小型化及び高記録密度化と大容量化が求められている。
しかし他方に於いてディスクの使用上、取扱い上に於いて、人に優しさを与えたり、人を楽しませたり又は人に癒しを与える技術もより一層求められている。
【0003】
この点で従来技術をみると、光ディスクではなく、フレキシブルディスクに関してではあるが、非磁性支持体上に磁性材料を塗布して磁性層を形成してなる磁気記録媒体で、前記磁性層中に相容性を有する芳香性物質を含有してなるフレキシブルディスクが提案されている。(特許文献1)
【0004】
【特許文献1】特開平5−114130
【0005】
この従来技術によれば、特定の芳香性物質を含有する限りは、フレキシブルディスクの電磁変換特性や走行性、耐久性を損うことなく芳香を漂わせることができる。
つまり情報記録媒体の使用上、取扱い上に於いて、人に優しさや楽しさを与えたり、人に癒しを与える効果がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、芳香剤の粉末を直接磁性層となる磁性粉中に含ませる為に、磁気変換特性への影響等を考慮すると特定の芳香剤に限定される。即ち、上記従来技術で開示されている芳香剤は果実の香りを出す酢酸イソアミルのみである。従って使用者に与える香り、匂いの種類に限界がある。而も常時放香しているので、放香期間を長くする点での改善にも限度がある。
【0007】
そこで本発明の目的は、光ディスクの記録、再生面と反対側の面に香料マイクロカプセル含有の紫外線硬化性インキの香り層を形成することにより、より一層多種の香りを楽しむことのできる光ディスクを提供するにある。
即ち、香り層を、香料マイクロカプセルを含む紫外線硬化性インキにより形成し、香りを放つ物質、匂い発生物質をマイクロカプセルで包んで微少固体粒子とすることにより、上記香りを放つ物質を様々なものを用いることができるようにし、より一層多様に香りを楽しめるようにするにある。
又、光ディスクの表面を手指で軽く擦ることによりマイクロカプセルの膜物質を破壊し、芯物質の香りを放香するようにすることにより、内容物である香り物質の放出をコントロールでき、長期にわたって香りを楽しめることのできる光ディスクを提供するにある。
【0008】
そして、上記香りを放つことと併せて、光ディスクの使用される周囲環境の温度変化に応じて図柄、模様等の色合いを変色できる光ディスクをも提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する為に本発明は次の技術的手段を有する。即ち本願の請求項1の発明は、香り、匂いを発する情報記録媒体に於いて、上記情報記録媒体は光ディスクであって、光ディスクのレーベル印刷面に、香料マイクロカプセルが含有せしめられた紫外線硬化性インキより成る香り層が印刷形成されていることを特徴とする香料、匂いを発する光ディスクである。
【0010】
そして本願の請求項2の発明は、上記香り層は、上記紫外線硬化性インキ100重量部当り、上記香料マイクロカプセルを10〜20重量部配合して成ることを特徴とする請求項1記載の香り、匂いを発する光ディスクである。
【0011】
更に請求項3の発明は、上記香り層の下層に、感温マイクロカプセルが含有せしめられた紫外線硬化性インキより成る変色層が印刷形成され、その上の香り層の上記紫外線硬化性インキは透明であることを特徴とする請求項1記載の香り、匂いを発する光ディスクである。
【0012】
そして請求項4の発明は、上記香り層の下層に、感温液晶マイクロカプセルが含有せしめられた水性インキより成る感温液晶層が印刷形成され、その上の香り層の上記紫外線硬化性インキは透明であることを特徴とする請求項1記載の香り、匂いを発する光ディスクである。
【0013】
上記に於いて、香料マイクロカプセル中の芯物質である香料成分としては、従来公知の種々のものを用いることができ、例えば、p−メチルアセトフェノン、a−ダマスコン、メントン、ムスコン、ジャスミン、シンナムアルデヒド、酢酸ゲラニル、酢酸イソボルニル、安息香酸イソアミル、a−ピネン、リモネン、ゲラニオール、シトロネロール、P−メチルアニソール、ローズオキサイド、ムスクケトン、P−tert−プチルシクロヘキシル、ヘキシルシンナミックアルデヒド、メチルB−ナフチルケトン、ハノオイゲール、L−ノントール、ケイ皮酸、ゲラニオール、プロムスチロール、フェニルエチルアルコール、リナロール、a−リモネン、ペンジルアルデヒド、オイゲノール、ボルニルアルデヒド、シトロネラール、コロラール、テルピネオール等が使用される。
【0014】
そして香りの種類も
花、例えば(アイリスフラワー、アザミ、アマリリス、アヤメ、梅、オリーブの花、カトレア、かすみ草、ガーベラ、カーネーション、菊、キンモクセイ、くちなし、グラジオラス、コスモス、桜、さざんか、サルビア、シクラメン、ジャスミン、ジンチョウゲ、スイセン、スズラン、すみれ(バイオレット)、ダリア、チューリップ、椿、菜の花、ネロリ(みかんの花)、ハス、バラ、ハマナス、ヒヤシンス、藤、ブーケ、フリージア、プリムラ(さくら草)、プルメリア、ライラック、ラベンダー、りんどう、ユリ)や、
ハーブ、例えば、(カモミール、シナモン、セイジ、ペパーミント、マヨラナ、タイム、オールスパイス、バジル、ナツメグ、オレガノ、ルー、ローズマリー)や、
果物、例えば(オレンジ、グリーンアップル、グレープ、レモン、すいか、ストロベリー、チェリー(さくらんぼ)、パイナップル、バナナ、ピーチ、ブルーベリー、メロン、ゆず、ライム、グレープフルーツ、リンゴ)や、
その他、例えば
(エゾ松、杉、松葉、ヒノキ、モミの木、カレー、ガーリック、ココア、ココナッツ、コーラ、コーヒー、森林浴、ソープ、チョコレート、松茸、バニラ(ケーキ、アイスクリーム)、ピーナッツ、びゃくだん)を用いることができる。
【0015】
更に上記のマイクロカプセル膜のカプセル化については、例えば、コアセルベーション法、界面重合法、in situ(インサイチュ)重合法、液中硬化被覆法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等を挙げることができるが、これらのものに限定されることはなく、また2種以上の異なる方法を組み合わせて採用することもできる。
そして、その膜物質は、例えば、多価アミンとカルボニル化合物、多塩基酸クロライドと多価アミン、多価イソシアネートとポリヒドロキシ化合物、エポキシ化合物と多価アミン、メラミン・ホルマリンプレポリマー、尿素、ホルマリンプレポリマー、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、塩化ビニリデン等の各種モノマー類、その他、ゼラチン、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができる。
又、紫外線硬化性インキについては、例えばベースポリマーとして、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(エーテル)(メタ)アクリレート、オリゴエステルアクリレート、不飽和ポリエステル、ブタジエン系(メタ)アクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のオリゴマー類、プレポリマー類、ポリマー類及びそれらのエチレンオキサイド付加体等の各種変性体が挙げられる。
又、モノマー成分として、メチル、エチル、ブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、ステアリル等のアルキルアクリレート、テトラヒドロフルフリル、イソボロニル、シクロヘキシル等の環状アクリレート;芳香族アクリレート;水酸基含有アクリレート;カルボキシル基含有アクリレート;アミノ基含有アクリレート;リン酸基含有アクリレート;N−ビニルピロリドン;アクリルアミド;N−メチロールアクリルアミド;アクリロイルモルホリン等の各種単官能モノマー類、及びブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ノナンジオール等のジアクリレート類;トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等のトリアクリレート類;ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン等のテトラアクリレート類;ジペンタエリスリトールのペタン及びヘキサアクリレート類;グリシジルメタクリレート−アクリル酸付加物;メチレンビスアクリルアミド等の各種多官能モノマー類を挙げることができる。
添加剤成分としてアセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ベンゾインエーテル系、チオキサントン系、アシルホスフィンオキサイド系、a−アシルオキシムエステル系等の光重合開始剤;N−メチルジエタノールアミン、ミヒラーケトン、4−ジエチルアミノエチルベンゾエート、4−ジメチルアミノイソアミルベンゾエート等の増感剤;ハイドロキノン、メトキノン等の重合禁止剤、その他の安定剤等を挙げることができる。
更に、ディスクへの印刷法もスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等により行なわれる。
【0016】
更に、感温変色性の物質は温度の変化に応じて変色するものであり、変色は可逆的なものであっても不可逆的なものであってもよく、トリフェニルメタンフタリド系、フルオラン系、フェノチアジン系、インドリルフタリド系、ロイコオーラミン系、スピロピラン系、スピロオキサジン系、ローダミンラクタム系、トリフェニルメタン系、ジアリールフタリド系、トリアゼン系、スピロフタラン系、キサンテン系、ナフトラクタム系、アゾメチン系等の感圧・感熱複写紙用色素として知られるロイコ色素と、ベンゾトリアゾール系、フェノール系、芳香族カルボン酸系、脂肪族カルボン酸系、チオ尿素系、リン酸系、あるいはこれらの各種エステル類や金属塩等の感圧・感熱複写紙用顕色剤として知られる有機顕色剤とからなる2成分系組成物、あるいは該2成分系組成物に、エステル系、エーテル系、アルコール系、ケトン系、カルボン酸系、アゾメチン系、芳香族系等の有機媒体を更に添加してなる3成分系組成物を挙げることができる。
【0017】
加えて、上記に於ける感温液晶マイクロカプセルの芯物質としては、公知のものを用いることができ、例えば、塩化コレステリル、臭化コレステリル、酢酸コレステリル、2−エチルヘキサン酸コレステリル、n−ノナン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、リノール酸コレステリル、デカノン酸コレステリル、ラウリン酸コレステリル、イソブチル酸コレステリル、ミリスチン酸コレステリル、炭酸オレインコレステリル、炭酸ノニルコレステリル、炭酸メチルコレステリル、炭酸エチルコレステリル、炭酸ブチルコレステリル、炭酸イソプロピルコレステリルなどの単独又は混合されたものからなるコレステリック系の液晶を用いることができる。
またこれらコレステリック系の液晶に他のものを混合させた液晶でもよい。例えばコレステリック系の液晶を溶解する溶媒としては、シッフ系ネマチック液晶、シアノビフェニル系ネマチック液晶(アルキル基の炭素数2〜7、アルコキシル基の炭素数3,5)、ターフェニル系ネマチック液晶(アルキル基の炭素数5)などのネマチック系の液晶の他、通常のインキビヒクル等に混合させて使用できる。また、溶媒が無色の場合は中間染料、染料、顔料などの色素材料を添加したものを使用してもよい。また、酸化防止剤や防腐剤などの添加剤を添加して使用してもよい。
【0018】
上記請求項1、2記載の発明の場合、指先で香り層の面をこすると、マイクロカプセルが破壊され、中の香料が外部に放香される。
又上記請求項3、4記載の発明の場合、ディスクの使用される環境の温度変化によって変色層の感温マイクロカプセル中の感温物質又は感温液晶マイクロカプセルの感温液晶の呈する色合いが変化する。
【発明の効果】
【0019】
本願の請求項1,2の発明によると、光ディスクの香り層は香料マイクロカプセルを含む紫外線硬化性インキより成るので、多種多様な香りを放つ光ディスクを提供できる。
即ち香料をマイクロカプセル膜で包むので、液体、粉末状の香り成分を用いることができ、使用できる香りの種類が広がる。この結果、多様に香りを楽しむことのできる光ディスクを楽しむことができる。又香料をマイクロカプセル化しているので、手指で軽く擦った時のみ放香できるから、即ち放香タイミングをコントロールできるので長持ちする。
【0020】
更に請求項3の発明によると上記香りを楽しむことができるのみならず、光ディスクを用いる周囲環境の温度変化に基く変色層の色合いの変化を出すことができる。
従って表面の図柄、模様の呈色の変化を楽しむことのできる光ディスクとすることができる。
【0021】
加えて請求項4の発明によると、光ディスク表面の液晶の色合い変化を楽しむことも出来る光ディスクとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に添付図面に従い本発明の実施形態を説明する。
先ず図1、図2、図3によって第一の実施形態を説明する。これらの図に於いてDはCDやDVDの光ディスク(以下単にディスクと記載する。)であり、ディスク本体1の記録、再生面の反対側(裏面側)の表面Sには、下から上へ順に変色層2と香り層3が印刷により形成されている。即ち香り層3が変色層2の上に印刷法で形成されている。
【0023】
上記に於ける変色層2は、感温マイクロカプセルAを含む紫外線硬化性インキLの層より成り、このディスクDが置かれ、又は使用される環境温度や人の手、指等の熱(温熱、冷熱)を受熱することにより呈色を変えていくものであり、他方上層の香り層3は香料マイクロカプセルBを含有する紫外線硬化性インキHの層より成る。この香り層3は、手指で軽く擦ることによって、香りが放香されるものである。
【0024】
先ず上記の変色層2は、上述したように感温マイクロカプセルAを含有する紫外線硬化性のインキLより成るもので、紫外線硬化性のインキLに対して重量比で5%−15%の範囲で感温マイクロカプセルAが配合されたものより成り、且つ上記感温マイクロカプセルAは感温変色性の芯物質をカプセル膜で封入、包んだものより成る。これらは従来公知のものと使用でき、且つ上記マイクロカプセル化についてや、この感温マイクロカプセルAを含有する紫外線硬化性のインキLの成分、又はそのディスクDへの印刷法も従来公知のものを利用できる。
例えば、感温変色性の物質は、温度の変化に応じて変色するものであり、変色は可逆的なものであっても不可逆的なものであってもよく、トリフェニルメタンフタリド系、フルオラン系、フェノチアジン系、インドリルフタリド系、ロイコオーラミン系、スピロピラン系、スピロオキサジン系、ローダミンラクタム系、トリフェニルメタン系、ジアリールフタリド系、トリアゼン系、スピロフタラン系、キサンテン系、ナフトラクタム系、アゾメチン系等の感圧・感熱複写紙用色素として知られるロイコ色素と、ベンゾトリアゾール系、フェノール系、芳香族カルボン酸系、脂肪族カルボン酸系、チオ尿素系、リン酸系、あるいはこれらの各種エステル類や金属塩等の感圧・感熱複写紙用顕色剤として知られる有機顕色剤とからなる2成分系組成物、あるいは該2成分系組成物に、エステル系、エーテル系、アルコール系、ケトン系、カルボン酸系、アゾメチン系、芳香族系等の有機媒体を更に添加してなる3成分系組成物を挙げることができる。
そしてマイクロカプセル膜のカプセル化については、例えば、コアセルベーション法、界面重合法、in situ(インサイチュ)重合法、液中硬化被覆法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等を挙げることができるが、これらのものに限定されることはなく、また2種以上の異なる方法を組み合わせて採用することもできる。
そしてその膜物質は、例えば、多価アミンとカルボニル化合物、多塩基酸クロライドと多価アミン、多価イソシアネートとポリヒドロキシ化合物、エポキシ化合物と多価アミン、メラミン・ホルマリンプレポリマー、尿素、ホルマリンプレポリマー、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、塩化ビニリデン等の各種モノマー類、その他、ゼラチン、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができる。
そして感温マイクロカプセルAの粒子径も0.1μm〜30μm以下の範囲のものを要求に応じて適宜用いることができ、この感温マイクロカプセルAが練り込まれる紫外線硬化性インキについては、例えばベースポリマーとして、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(エーテル)(メタ)アクリレート、オリゴエステルアクリレート、不飽和ポリエステル、ブタジエン系(メタ)アクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のオリゴマー類、プレポリマー類、ポリマー類及びそれらのエチレンオキサイド付加体等の各種変性体が挙げられる。
又、モノマー成分として、メチル、エチル、ブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、ステアリル等のアルキルアクリレート、テトラヒドロフルフリル、イソボロニル、シクロヘキシル等の環状アクリレート;芳香族アクリレート;水酸基含有アクリレート;カルボキシル基含有アクリレート;アミノ基含有アクリレート;リン酸基含有アクリレート;N−ビニルピロリドン;アクリルアミド;N−メチロールアクリルアミド;アクリロイルモルホリン等の各種単官能モノマー類、及びブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ノナンジオール等のジアクリレート類;トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等のトリアクリレート類;ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン等のテトラアクリレート類;ジペンタエリスリトールのペタン及びヘキサアクリレート類;グリシジルメタクリレート−アクリル酸付加物;メチレンビスアクリルアミド等の各種多官能モノマー類を挙げることができる。
添加剤成分としてアセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ベンゾインエーテル系、チオキサントン系、アシルホスフィンオキサイド系、a−アシルオキシムエステル系等の光重合開始剤;N−メチルジエタノールアミン、ミヒラーケトン、4−ジエチルアミノエチルベンゾエート、4−ジメチルアミノイソアミルベンゾエート等の増感剤;ハイドロキノン、メトキノン等の重合禁止剤、その他の安定剤等を挙げることができる。
更に、ディスクへの印刷法もスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等により行なわれない。
【0025】
次いで上層の香り層3は、香料マイクロカプセルBを含有する紫外線硬化性インキH、而も下層の感温変色層2の色彩、模様、図柄、文字、記号等を上方から透かして見ることのできる透明インキHより成るもので、同じく紫外線硬化性インキHに対して重量比で10%〜20%の範囲で(望ましくは20%程度の範囲)で香料マイクロカプセルBが配合されたものより成り、上記香料マイクロカプセルBは、香りを放つ芯物質をカプセル膜で封入、包んだものより成る。上記に於ける紫外線硬化性インキHは前記したものと同様の公知のものを利用できる。そして、香料マイクロカプセルBの香りを放つ芯物質即ち、香料も種々のものを用いることができる。例えば、p−メチルアセトフェノン、a−ダマスコン、メントン、ムスコン、ジャスミン、シンナムアルデヒド、酢酸ゲラニル、酢酸イソボルニル、安息香酸イソアミル、a−ピネン、リモネン、ゲラニオール、シトロネロール、P−メチルアニソール、ローズオキサイド、ムスクケトン、P−tert−プチルシクロヘキシル、ヘキシルシンナミックアルデヒド、メチルB−ナフチルケトン、ハノオイゲール、L−ノントール、ケイ皮酸、ゲラニオール、プロムスチロール、フェニルエチルアルコール、リナロール、a−リモネン、ペンジルアルデヒド、オイゲノール、ボルニルアルデヒド、シトロネラール、コロラール、テルピネオール等が使用される。
そして、カプセル膜については、上述したものを利用することができるし、印刷法もスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等により行なわれる。
【0026】
上記構成によると、ディスクDの使用される環境の温度変化又は使用者の手の熱が伝わること等により変色層2の呈する色彩が変化する。
つまり感温マイクロカプセルA中の芯物質の変化によって色彩が変化する。従って図柄、模様、色彩、文字、記号等の帯びる色合いが変化することになるから、ディスクDの使用者はその呈色の変化を楽しむことができる。図1、図2に於ける符号Mは変色層2の色彩、模様を示し、図1から図2へ変化した態様を模式的に示したものである。
而も、この上層に於ける香り層3は透明な層なので外部から下層の変色層3の色の変化を十分認めることができる。
そして、上層の香り層3の面を指先でこすることによって香り層3中の香料マイクロカプセルBが圧され、中の香料が外部に放香され、ディスクDの使用者は香りを楽しむことができる。この場合、香り層3は上層なので放香が阻害されない。
このようにディスクDの表面Sに於ける色彩の変化と香りの放香の双方が可能にされるので、図柄、模様等と放香される香りの種類、成分を相関させて色合いと香りのコンビネーションを楽しむことができる。
尚、ディスクDをコンピュータにセットして起動させると、コンピュータ周辺に香りが漂うことが確認された。
【0027】
上記の例では香り層3と変色層2の双方をディスクに印刷形成した例を示したが、香り層3のみを印刷形成する場合には、香り層3のみを直接ディスク本体1の面に形成する。
【0028】
ところで、変色層2と香り層3を形成するインク層は共々ディスクDに形成されるが、実質的に変色する模様、図柄の変色域Mと香り発散域KはディスクDの表面Sの全領域でもよく、部分領域でもよい。図1〜図3の例では変色層2上の香り層3の全領域を香り発散域Kとする例を示した。
ところが図4、図5、図6に示すように、変色層2の実質的な変色域Mと香り層3の実質的な香り発散域Kを部分的に形成してもよい。この場合、図4に示すように変色層2のある部分に感温マイクロカプセルAを含有させ、その上層の香り層3の真上には香料マイクロカプセルBを含有させず、逆に香り層3のある部分には香料マイクロカプセルBを含有させ、その下層の変色層3の真下には感温マイクロカプセルAを含有させずに全体を形成する。
この様に上下の香り層3と変色層2のバリエーションを様々にしてもよい。
【0029】
次に図7、図8に基き変色層2として感温液晶層2AをディスクDの表面に印刷形成する例を示す。
即ち、ディスク本体1の裏面の表面に先ずマット層4を印刷形成する。このマット層4は形成され、その表面が微少に凹凸となっていて、その上に印刷形成される感温液晶層2Aがなじみ易くなり、その結果印刷され易くする為のものである。
この後に感温液晶層2Aを印刷する。これは感温液晶マイクロカプセルEを含有する水性インキL1の層である。この水性インキL1を用いるのは感温液晶マイクロカプセルEの感温による変化(示温)の安定性を保つ為であり、逆に水性インキL1であるとディスク表面への印刷適性、なじみに若干欠ける嫌いがあるので、上述したマット層4を形成し、そのマット層4上に感温液晶層(示温層)を形成するものである。
ディスクDの全面にこの感温液晶層2Aを形成するが、実質的に感温液晶域とするところのみに部分的に感温マイクロカプセルEを含ませる。この場合、感温マイクロカプセルEを含まない他の領域は紫外線硬化性インキL2を用いてもよい。
【0030】
上記に於ける感温液晶マイクロカプセルの芯物質としては、公知のものを用いることができ、例えば、塩化コレステリル、臭化コレステリル、酢酸コレステリル、2−エチルヘキサン酸コレステリル、n−ノナン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、リノール酸コレステリル、デカノン酸コレステリル、ラウリン酸コレステリル、イソブチル酸コレステリル、ミリスチン酸コレステリル、炭酸オレインコレステリル、炭酸ノニルコレステリル、炭酸メチルコレステリル、炭酸エチルコレステリル、炭酸ブチルコレステリル、炭酸イソプロピルコレステリルなどの単独又は混合されたものからなるコレステリック系の液晶を用いることができる。
またこれらコレステリック系の液晶に他のものを混合させた液晶でもよい。例えばコレステリック系の液晶を溶解する溶媒としては、シッフ系ネマチック液晶、シアノビフェニル系ネマチック液晶(アルキル基の炭素数2〜7、アルコキシル基の炭素数3,5)、ターフェニル系ネマチック液晶(アルキル基の炭素数5)などのネマチック系の液晶の他、通常のインキビヒクル等に混合させて使用できる。また、溶媒が無色の場合は中間染料、染料、顔料などの色素材料を添加したものを使用してもよい。また、酸化防止剤や防腐剤などの添加剤を添加して使用してもよい。
加えて、これらの芯物質をマイクロカプセル化する膜物質や、マイクロカプセル化技法も上述した如き従来公知のものを援用できる。
【0031】
このように変色層2として感温液晶層2Aを印刷形成すれば図7のM1、M2、M3の矢示のように、ディスクDの置かれる周囲環境の温度によって呈色が異なり示温計となる。
そして、この感温液晶層2Aの上層に上述した実施例と同様に透明の紫外線硬化性インキH中に香料マイクロカプセルBを含くむ香り層3を形成する。
【0032】
このディスク本体1上に感温液晶層2Aと香り層3を有するディスクDによれば、ディスクDの置かれる、又は使用される環境の温度変化によって、液晶の変色による示温その他の呈色、模様の変化を楽しめると共に、香り層3を指でこすることによって香りを楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ディスクの一例の表面を示し、変色層の変色前の状態を模式的に示した図。
【図2】図1の状態から感温することによって変色層が変色した状態を模式的に示したディスクの表面図。
【図3】図1の3−3線に沿って示した一部断面図であり、部分拡大断面を含む図。
【図4】図3と同様の図であって、他の実施態様を示す図。
【図5】ディスク表面の変色層と、香り層の他の例を示したディスクの平面図。
【図6】ディスク表面の変色層と、香り層のもう1つの他の例を示したディスクの平面図。
【図7】ディスクの一例の表面を示し、感温液晶のパターンを模式的に示した図。
【図8】図7の8−8線に沿う一部断面図。
【符号の説明】
【0034】
D ディスク
S ディスクの表面(ディスク本体の裏面)
M 変色層の図柄、模様等の変色域
K 香り層中の香り発散域
M1、M2、M3 感温液晶層2A中の液晶表示域
1 ディスク本体
2 変色層
3 香り層
A 感温マイクロカプセル
L 紫外線硬化性インキ
B 香料マイクロカプセル
H、L2、L3 紫外線硬化性インキ
4 マット層
L1 水性インキ
2A 感温液晶層
E 感温液晶マイクロカプセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
香り、匂いを発する情報記録媒体に於いて、上記情報記録媒体は光ディスクであって、光ディスクの記録、レーベル印刷面に、香料マイクロカプセルが含有せしめられた紫外線硬化性インキより成る香り層が印刷形成されていることを特徴とする香料、匂いを発する光ディスク。
【請求項2】
上記香り層は、上記紫外線硬化性インキ100重量部当り、上記香料マイクロカプセルを10〜20重量部配合して成ることを特徴とする請求項1記載の香り、匂いを発する光ディスク。
【請求項3】
上記香り層の下層に、感温マイクロカプセルが含有せしめられた紫外線硬化性インキより成る変色層が印刷形成され、その上の香り層の上記紫外線硬化性インキは透明であることを特徴とする請求項1記載の香り、匂いを発する光ディスク。
【請求項4】
上記香り層の下層に、感温液晶マイクロカプセルが含有せしめられた水性インキより成る感温液晶層が印刷形成され、その上の香り層の上記紫外線硬化性インキは透明であることを特徴とする請求項1記載の香り、匂いを発する光ディスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−4941(P2007−4941A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186834(P2005−186834)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(501003180)株式会社ホロン (2)
【Fターム(参考)】