説明

香り提供装置

【課題】切り換え提供される複数の香りを、切り換え前後で混じり合うことを抑える香り提供装置を提供する。
【解決手段】香り提供装置20は、互いに異なる複数の香りの各々を互いに異なるタイミングで放出する放出部23を備え、人体に装着される。香り提供装置20は、放出部23から放出した香りの一部を吸引により回収する吸入部24を備え、吸入部24の少なくとも一部は、当該香り提供装置20が人体に装着された状態で、放出部23の放出する香りが鼻孔2に到達する経路26に対して鼻孔を挟む位置に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周辺環境に応じて香りを提供する香り提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、映画などの動画として再生された場面に同期する種類の香料を気化して人に提供するシステムが提案されている。このシステムは、動画の場面に対応させて予め用意した複数種類の香料を対応する場面にて適宜選択して気化させ、人の鼻近近傍に供給する。
【0003】
また近年、所望する香りを複数種類の香料の配合により生成して提供する装置が知られており、そのような装置の一例として非特許文献1に記載の装置がある。
非特許文献1に記載の装置には、数十種類の香料が用意されている。これにより、香りの性質としての、互いに異なった香りを所定の比率で混合することで様々な香りを人に感じさせる事が可能である性質を利用できるようにしている。つまり同装置は、音声付の動画の場面に応じて所望の香りを提供する際、そこに用意されている1つあるいは複数の香料を同時に発生混合することで、予め用意した香料の種類よりも多くの種類の香りを提供することができる。
【0004】
ところで、このような装置に用意された多種類の香料は、一般に液体であることが多く瓶などの容器に入れて提供される。また、香料は揮発性の成分によってなり、容器のわずかな隙間から浸透浸出することで周囲に匂いを放散させる。上述した装置などによる、香料の空中への放出する方法としては、香料を加熱して蒸気にする方法、瓶に入れられた香料の液面に存在する香料蒸気を取り出す方法、あるいは、香料をインクジェット法にもとづいて微粒子化し、空中に放出気化する方法などがある。こうして空中に放出された香料は、蒸気圧の関係から自ずと気化するか、あるいは加熱されることで気化して人の鼻の位置まで流動して嗅覚に感知される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】月刊ディスプレイ 2010年9月号 Vo;16,No.9、pp.72−79(ISSN 1341−3961)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のようにして非特許文献1に記載された装置などにより発生された香りは、視聴者の嗅覚に知覚されるように、より具体的には、空気砲やヘッドセットに設けたマイク状の放出部などを有する香り提供装置を介して視聴者に提供される。
【0007】
ところで、上述の非特許文献1に記載された装置など、複数の香りを発生させる装置は、発生させる香りの切り換えが容易である。その一方、先に発生された香りは、空気中や香り提供装置内の配管などに滞留しているおそれがあり、それが切り換え後の香りに混ざることで目的としない香りを発生させることが懸念される。そのため、香りを切り換える際、切り換え前後の香りの混合を防ぐため、例えば香りを切り換える前に香りを供給しない期間を所定時間確保するなどといった対策が必要とされる。さらに近年、スライドショーや動画などにより提供される逐次変化する音声、音楽及び画像等に同期させて香りを提供することも検討されているものの、この場合、香りの切り換え時に確保できる時間の制約が無視できないものとなる。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みなされたものであり、その目的は、切り換え提供される複数の香りを、切り換え前後で混じり合うことを抑える香り提供装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、互いに異なる複数の香りの各々を互いに異なるタイミングで放出する放出部を備え、人体に装着される香り提供装置であって、前記放出部から放出した香りの一部を吸引により回収する吸入部を備え、前記吸入部の少なくとも一部は、当該香り提供装置が人体に装着された状態で、前記放出部の放出する香りが鼻孔に到達する経路に対して鼻孔を挟む位置に配置したことを要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の香り提供装置において、前記吸入部の少なくとも一部は、前記香り提供装置が人体に装着された状態で、鼻孔よりも目寄りに配置されることを要旨とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の香り提供装置において、前記吸入部は、鼻よりも広い幅を有しているとともに、少なくとも鼻孔と目との間の位置を含むように設けられていることを要旨とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の香り提供装置において、前記放出部は、頭部に装着される支持具から鼻孔方向に突出される態様で同支持具に保持さており、前記吸入部は、前記香りが鼻孔に到達する経路に対して鼻孔を挟む位置を含むように前記支持具に支持されていることを要旨とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の香り提供装置において、前記支持具は、耳及び鼻により頭部に支持されることを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の香り提供装置において、前記支持具は、眼鏡であり、前記吸入部は、前記眼鏡の表面に配置されていることを要旨とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の香り提供装置において、前記放出部及び前記吸入部は、前記放出部や前記吸入部の接続先を切り換える切換部に接続されており、前記切換部は、前記放出部を、放出する香りを輸送する第1の輸送管に接続させるとともに、前記吸入部を、回収した香りを輸送する第2の輸送管に接続させる第1の接続態様と、前記放出部の前記第1の輸送管への接続及び前記吸入部の前記第2の輸送管への接続をそれぞれ遮断するとともに、前記第1の輸送管と前記第2の輸送管とを接続させる第2の接続態様とを切り換えることができることを要旨とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の香り提供装置において、前記切換部は、第1の連絡通路と第2の連絡通路とがそれぞれ設けられるとともに2つの向きに回動可能な可動部を備え、前記可動部は、一の向きに回動されることによって、前記第1の連絡通路により前記第1の輸送管を前記放出部に接続させるとともに、前記第2の連絡通路により前記第2の輸送管を前記吸入部に接続させて前記第1の接続態様とし、他の向きに回動されることによって、前記第1の連絡通路又は前記第2の連絡通路により前記第1の輸送管を前記第2の輸送管に接続させて前記第2の接続態様とすることを要旨とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の香り提供装置において、前記第2の接続態様のとき、前記第1の輸送管及び前記第2の輸送管に洗浄液が流されることを要旨とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項7に記載の香り提供装置において、前記切換部には、前記第1の輸送管を前記放出部に第1の気液分離部を介して接続させる第1の連絡通路と、前記第2の輸送管を前記吸入部に第2の気液分離部を介して接続させる第2の連絡通路と、前記第1の連絡通路と前記第2の連絡通路とを連通する孔を閉鎖するように配置され、前記第1の連絡通路内の圧力に比べて前記第2の連絡通路内の圧力が高いとき該圧力により開放されて前記連通する孔を開放する弁体とが設けられており、前記切換部は、前記連通する孔が閉鎖されることで前記第1の接続態様となり、前記連通する孔が開放されることで前記第2の接続態様となることを要旨とする。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の香り提供装置において、前記第2の接続態様のとき、前記第2輸送管から洗浄液が供給されることを要旨とする。
請求項12に記載の発明は、請求項6に記載の香り提供装置において、前記眼鏡は、両目のそれぞれに異なる映像を投影させることにより立体視を可能にさせることを要旨とする。
【0019】
請求項13に記載の発明は、請求項6に記載の香り提供装置において、前記眼鏡は、両目のそれぞれに対応するディスプレイによって映像を提供することを要旨とする。
請求項14に記載の発明は、請求項6に記載の香り提供装置において、前記眼鏡は、両目のそれぞれに当該眼鏡を透過させた環境光に重ねて映像を提供することを要旨とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、放出部から放出された香りの一部が吸入部に回収されるため、鼻孔周辺の空気中の残り香を減少させることができる。また、回収により空気中の残り香が減少するため、視覚や聴覚に生じる変化などのタイミングに応じて香りが切り換えられたとしても切り換え前後の香りが混ざってしまうおそれが減少する。これにより、香り提供装置は、切り換え提供される複数の香りを切り換え前後で混じり合わせないようにすることができるようになる。さらに、吸入部を放出部から鼻孔までの香りの移動の障害にならないように配置させることができるため、香りの鼻孔到達可能性を高く維持させることができる。
【0021】
通常、人体側面は体熱による上昇気流が生じている。そのため、請求項2に記載の発明によるように、例えば、香りが口側から鼻孔に到達するようにし、吸入部を鼻孔よりも目寄りに設けるようにすることで、上昇気流による放出された香りの移動経路の先に配置される吸入部により香りを回収されやすくすることができる。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、吸入部の幅が広いことから放出された香りを回収できる可能性が高くなるため、残り香を減少させることが期待されるようになる。
また、鼻孔と目の間に吸入部を配置することにより、目や髪の毛まで達する香りの量を減少させることができるようになる。これにより、目に到達した香りの成分が目に付着したり、頭部に到達した香りの成分が髪の毛に付着したりするようなおそれを防ぐことができるようになる。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、頭部に装着される支持具に放出部及び吸入部が保持されるため、香りの放出及び香りの回収を鼻孔の近傍にて行うことが可能となる。これにより、香り提供装置は、放出されたものの鼻孔に吸収されなかった香りを空気中からより多く回収することができる。
【0024】
また、放出部を鼻孔の近傍に配置することができるため、香りの鼻孔到達可能性を高く維持させ、放出する香りの量を少なくすることができる。これによっても、残り香を少なくして香りが混合する可能性が低減される。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、支持具が耳と鼻とにより支持されるため、放出部及び吸入部を鼻孔に近い位置に配置することができるようになる。これにより、より一層、回収される香りの割合を高くしたり、放出する香りの量を削減したりすることができるようになる。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、吸入部を眼鏡に配置することができるようになる。通常、眼鏡は、そのフレームが鼻の上方に配置されるため、吸入部の適切な位置への配置が容易になる。
【0027】
請求項7に記載の発明によれば、切換部によって第1の輸送管の接続先が放出部もしくは第2の輸送管に切り換えられるとともに、第2の輸送管の接続先が吸入部もしくは第1の輸送管に切り換えられる。これによって、香り提供装置は、第1の接続態様によれば、放出部から香りを放出するとともに吸入部から香りを回収することができる。一方、第2の接続態様によれば、第1の輸送管と第2の輸送管とが接続されるため、それら第1の輸送管と第2の輸送管との間に洗浄用の空気や液体などを流すことによって、洗浄用の空気や液体を放出部から放出させることなく、輸送管の残り香を清掃することができるようになる。これにより、香り提供装置は、切り換え提供される複数の香りを切り換え前後で混じり合わせないようにすることがより好適にできるようになる。
【0028】
また、切換部による切り換え時間を短くすることができれば、短時間で輸送管を洗浄することができるようになる。このように、短時間で残り香を洗浄することができるようになれば、複数の香りを切り換えるとしても、放出する香りの輸送に用いる輸送管の数を少なく維持することができるようにもなる。さらに、輸送管の数が少なくなれば、輸送管の柔軟性が維持されるので、視聴者が輸送管に感じる違和感を抑制することができる。
【0029】
請求項8に記載の発明によれば、切換部は回動により向きを変更されることにより第1の連絡通路及び第2の連絡通路の向きが変わり第1の接続態様と第2の接続態様とを切り換える。このように、第1の接続態様と第2の接続態様とが切換部による第1の連絡通路及び第2の連絡通路の向きの変化により行えるため接続態様の変更が容易になる。
【0030】
請求項9に記載の発明によれば、第1の輸送管及び第2の輸送管を洗浄液で洗浄することができるため、洗浄液による洗浄によって輸送管の残り香を好適に除去することができるようになる。
【0031】
請求項10に記載の発明によれば、切換部は弁体による連通孔の閉鎖により第1の接続態様として、第1の輸送管から供給された香りを第1の連絡通路と気液分離部を介して放出部に輸送し、吸入部から回収した気体を気液分離部と第2の連絡通路とを介して第2の輸送管に輸送する。一方、切換部は弁体による連通孔の開放による第2の接続態様として、第2の輸送管に供給された気液分離部を通過できない液体による第2の連絡通路の内圧上昇により弁体を開放させて同液体を第2の連絡通路から第1の連絡通路に流すようにする。つまり、切換部による第1及び第2の接続態様の変更が、第1の輸送管に気体を供給するか、第2の輸送管に液体を供給するかの切り替えにより行えるようになる。これにより、香りの供給及び回収と、輸送管の洗浄との切り換えを容易にすることができるようになる。
【0032】
請求項11に記載の発明によれば、第2の輸送管から第1の輸送管に向けて洗浄液が流されて、第2及び第1の輸送管が洗浄される。これにより、この切換部を用いることにより第2及び第1の輸送管の洗浄を簡単に実行することができるようになる。
【0033】
請求項12に記載の発明によれば、立体視眼鏡に香り提供装置を設けることができるため、画像や動画に対応する香りを短時間に切り換えて提供することができるようになる。このように、画像や映像に、それらに同期した香りを加えることによって、視聴者に臨場感を強く与えることができるようになる。
【0034】
請求項13に記載の発明によれば、両目のそれぞれに対応するディスプレイを備える、いわゆるヘッドマウントディスプレイは、視聴者に仮想現実を好適に体験させるものである。このようなヘッドマウントディスプレイに、画像や動画に対応して香りを切り換えるこのできる香り提供装置を設けることで視聴者に仮想現実の臨場感を強く与えることができるようになる。
【0035】
請求項14に記載の発明によれば、透過された環境光に映像が重なることで提供される風景などの周辺環境や画像、映像に対応するように香りを提供することができるようになる。このように、風景などの周辺環境や画像、映像に香りを加えることによって、ユーザに強い印象を与えることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る香り提供装置を備える香り提供システムを具体化した第1の実施形態について、その概略構成を示す模式図。
【図2】同実施形態の香り提供装置を眼鏡に設けた態様を模式的に示す模式図。
【図3】同実施形態の切換装置の断面構造を示す断面図であって、(a)は第1の接続態様を示す断面図、(b)は第2の接続態様を示す断面図。
【図4】本発明に係る香り提供装置を具体化した第2の実施形態について、その概略構成を示す模式図。
【図5】本発明に係る香り提供装置を備えた香り提供システムを具体化した第3の実施形態について、その概略構成を示す模式図。
【図6】本発明に係る香り提供装置を具体化した第4の実施形態について、その切換装置の断面構造を示す断面図であって、(a)は第1の接続態様を示す断面図、(b)は第2の接続態様を示す断面図。
【図7】本発明に係る香り提供装置を具体化した他の実施形態について、その概略構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(第1の実施形態)
以下、本発明に係る香り提供装置を備える香り提供システムの第1の実施形態について図1に従って説明する。
【0038】
香り提供システムは、音声付動画の各場面あるいは各事象に予め規定された香りを、予め規定された時刻(音声付動画の進行時刻)に提供し、香りによる臨場感や演出を可能にするように構成されたシステムである。
【0039】
図1に示すように、香り提供システムには、音声付動画メディアを再生する再生システム10と、再生システム10から提供される香りを放出する香り提供装置20とが設けられている。再生システム10には、再生装置11が設けられており、再生装置11には、DVDなどの音声付動画メディア12Aに記録された動画を再生するとともに、再生された動画に含まれる音声情報と画像情報とを外部に出力するメディア再生部12が設けられている。メディア再生部12には、テレビジョン装置やスピーカ付きモニタなどの視聴者に音声や画像を提供する表示装置11Aが接続されている。表示装置11Aは、メディア再生部12の出力した音声情報や画像情報が入力されるとともに、当該入力された音声情報や画像情報をそれぞれ音声や画像に変換して視聴者へ提供する。
【0040】
なお、本実施形態のDVDなどの音声付動画メディア12Aには、音声付き動画に対応する香りに関する情報である「香り特定情報」が、該音声付き動画に同期可能な態様で含まれている。そしてメディア再生部12は、音声付動画メディア12Aから上述の音声付き動画に同期する「香り特定情報」を再生することができる。
【0041】
また、本実施形態の再生システム10には、「香り特定情報」に基づいて香りを発生させるための制御信号を生成する香り情報処理部13と、香り情報処理部13から出力された制御信号に基づいて所望の香りを発生させる香り発生部14と、空気中から回収した香りを洗浄する洗浄部15とが設けられている。
【0042】
香り情報処理部13は、メディア再生部12により再生された「香り特定情報」に基づいて香り発生部14などを制御するため再生装置11に設けられているものであって、メディア再生部12から、再生された動画の進行時刻や「香り特定情報」を取得する。香り情報処理部13は、取得した「香り特定情報」に基づいて、動画に対応するタイミングで当該「香り特定情報」に対応する香りを視聴者に提供できるように演算した制御信号を香り発生部14に出力する。つまり、香り情報処理部13は、音声付動画の進行に合わせて定義された進行に従って同動画に対して規定された所望の香りが香り提供装置20を通じて視聴者に提供されるように制御信号を出力する。
【0043】
また、香り情報処理部13は、香りの視聴者への提供を動画の進行時刻に対応して終了させたとき、香り提供装置20などに残留している残り香を洗浄するための制御信号を演算して、香り発生部14や香り提供装置20に出力する。
【0044】
香り情報処理部13が、残り香を洗浄するタイミングは、「動画の進行時刻」、あるいは香りの提供時刻から定義される「香りを提供しない時刻」によって定められる。つまり、残り香の洗浄は、特に、残り香が残りやすい種類の香りの提供後や、残り香の他の香料と混濁を特に回避したいときに実施される。また望ましくは、香りを提供しない時刻を解析して、香りが提供されない時間内に実行する。なお、洗浄は、人の呼吸間隔である3秒以内に行われることが望ましい。3秒以内に実施することで、香りの提供スケジュールに影響されない最適な時刻に洗浄を完了させることのできる可能性が増大し、連続的に複数の香りを変化させながら提供することができるようになる。
【0045】
香り発生部14は、複数の香料から所望の香りを生成する装置であって、香り情報処理部13から入力された制御信号に基づいて所望の香りを発生させるとともに、発生させた香りを香り提供装置20に供給する。香り発生部14には、液状の香料を収納する複数の香料容器C1,C2,C3と、各香料容器C1,C2,C3からの香料の供給量をそれぞれ調整する流量調整弁V1,V2,V3とが設けられている。また、香り発生部14には、各香料容器C1,C2,C3から供給される香料を気化して混合させる、もしくは混合して気化させるとともに、空気で所定の倍率に希釈した気化香料を生成するとともに、生成した気化香料を香り提供装置20に供給する気化器16が設けられている。
【0046】
各香料容器C1,C2,C3は、香り発生部14への着脱可能なカートリッジ式の容器であるとともに、それら香料容器C1,C2,C3内には、それぞれ異なる香りを生じる液状の香料、つまり種類の異なる香料が収容されている。各香料容器C1,C2,C3内の各香料の種類が異なることから、それら香料が混ぜ合わされることで新たな香りを発生させることができる。具体的には、各流量調整弁V1,V2,V3が、香り情報処理部13から受けた制御信号に基づいてそれぞれの弁の開度を調節することで、それらの対応する香料容器C1,C2,C3から気化器16に供給される香料の流量を調整することで新たな香りを発生させる。
【0047】
気化器16は、各流量調整弁V1,V2,V3を通じて供給された香料を気化させる装置であり、気化した香料を混合させて新たな香りを生成する。すなわち、予め用意された香料から新たな香りが生成されるように量の調整された複数の香料が気化器16にて気化して混合される、もしくは混合して気化されることで新たな香りが生成される。なお、香料を気化させる方法には、超音波霧化器を用いる方法が用いられるが、その他の方法として、香料を加熱して蒸気にする方法や、超音波霧化器を用いる方法や、香料をインクジェット方法にもとづいて微粒子化して、空中に放出する方法や、香料の液面に存在する香料蒸気を取り出す方法などが用いられてもよい。
【0048】
気化器16からは、気化混合された香りを提供装置20に輸送するための第1の輸送管としての供給チューブT1が提供装置20まで延出されている。供給チューブT1は、気化香料を輸送することができる直径1mmから数ミリの通路が内部に形成されている樹脂配管である。また、供給チューブT1は、香料成分が付着しづらいように例えばフッ素樹脂で作られている、いわゆるテフロン(登録商標)チューブであると好ましいが、各種の樹脂製のチューブを用いることができる。
【0049】
つまり気化器16は、香り情報処理部13からの制御信号に基づいて生成した気化香料を、同じく香り情報処理部13からの制御信号である希釈率に従って空気にて希釈するとともに、同じく制御信号に基づき定められる流速で香り提供装置20に供給する。なお、このように、気化器16から供給される香りは、香り提供装置20を介して鼻孔2に到達するとき、音声付動画の進行に同期するように香り提供装置20に供給される。すなわち、香り情報処理部13は、視聴者に提供される気化香料が音声付動画の進行に同期するように香り発生部14に対して制御信号を出力する。
【0050】
洗浄部15は、提供装置20を介して吸入した空気からその空気に含まれる香りの成分を除去するものであって、提供装置20を介して空気を回収するために提供装置20まで延出された第2の輸送管としての回収チューブT2が接続されている。回収チューブT2は、回収した空気を輸送することができる直径1mmから数ミリの通路が内部に形成されている樹脂配管である。また回収チューブT2は、香料成分が付着しづらいように例えばフッ素樹脂で作られている、いわゆるテフロン(登録商標)チューブであると好ましいが、各種の樹脂製のチューブを用いることができる。このように、再生システム10と香り提供装置20との間に設けられるチューブの数を供給チューブT1と回収チューブT2との2本にすることより、これらのチューブの柔軟性を高く維持してチューブが視聴者に与える違和感を抑制することができる。
【0051】
また洗浄部15には、接続された回収チューブT2を介して回収した空気から香りの成分を除去(脱臭)する脱臭器17と、脱臭器17に負圧を供給する排気ポンプ18とが設けられている。
【0052】
これにより脱臭器17は、排気ポンプ18からの負圧を回収チューブT2に供給することで同回収チューブT2を介して空気を吸入するとともに、吸入した空気に含まれている香りを同空気から除去する。そして脱臭器17は、脱臭した空気を排気ポンプ18から排出させる。ところで、気化香料に含まれる香料成分は主に揮発性の成分であるため、空気を洗浄用流体として流すことで供給チューブT1や回収チューブT2の各管内部の付着した香料成分を取り除くことが可能である。
【0053】
次に、図2を参照して、香り提供装置20について説明する。
香り提供装置20は、香り発生部14から供給された香りを視聴者の鼻孔2に到達するように放出するとともに、洗浄部15から供給される負圧に基づいて放出された香りの一部を回収する装置であって、支持具としての眼鏡5に取り付けられている。なお、眼鏡5は、顔面側面後方に延びる各フレームの先が耳に支持され、両目の間が鼻に支持されており、透過型のレンズ(あるいはフィルム)を備えている。
【0054】
香り提供装置20は、眼鏡5の左側(図2において右側)にあって顔面とは反対側の表面側に保持(配置)されている。香り提供装置20には、視聴者の鼻孔2に向けて香りを放出部23を介して放出する放出管21と、鼻孔2に吸入されなかった香りの一部を吸入部24を介して回収する回収管22とが設けられている。すなわち眼鏡5は、放出管21や放出部23、及び、回収管22や吸入部24を鼻孔2に対して所定の位置に保持させるようになっている。なお、香り提供装置20は、眼鏡5の右側や下部などそれが保持される眼鏡5の部分は特に限定されない。
【0055】
放出管21は、その基端に接続された供給チューブT1を介して香り発生部14により発生された香りが供給されるとともに、その先端に設けられたノズル状の放出部23を介して供給された香りを鼻孔2に向けて噴出する。放出部23は、それが配置されている眼鏡5の左側付近から香りを鼻孔2に向けて放出するためのものである。つまり放出部23は、目よりも鼻寄りである眼鏡5の下部であって、鼻孔2よりも上方(頭頂寄り)に配置されているものの、気化香料を噴出することにより気化香料の移動経路に鼻孔2が含まれるように気化香料の流れる経路26を形成する。なお、人体近傍では上昇気流が生じていることから、放出後の気化香料はいずれ顔面に沿う上昇気流に従って上昇移動するようになる。例えば、放出部23は、経路26Aに示すような経路で、放出した気化香料を鼻孔2に到達させることができるようになっている。一方、経路26B,26Cなどに示される経路で、鼻孔2に到達しなかったり、吸入されなかった気化香料は、鼻孔2の近傍を通過した後、上方(目3の方向)に移動するようになる。当然のことながら、放出部23は延長されて、鼻孔2よりも口寄りに配置されてもよい。その場合、香りを鼻孔2に向けて放出することで体温による上昇気流を利用しなくても香りを鼻孔2に到達させることができるようにもなる。
【0056】
回収管22は、その基端に回収チューブT2が接続されているとともに、その先端に空気を吸い込む孔を多数有する管状の吸入部24を接続されている。つまり、吸入部24は、空気とともに香りを回収するものであり、目よりも鼻寄りである眼鏡5の下部に配置されている。吸入部24は、眼鏡5の下側のフレームに沿って配置されることから、鼻1と目3との間において、両目3に略平行に配置される。これにより回収管22は、回収チューブT2から供給された負圧に基づいて、吸入部24の空気を吸い込む多数の孔からその周辺の空気を回収することができるようになっている。
【0057】
すなわち、吸入部24は、鼻孔2の上方で空気を吸引することにより、鼻孔2の上方に到達した気化香料の一部を、該気化香料が目3に到達する以前に空気とともに吸入する。吸入部24は、鼻1の横幅よりも広い長さを有しており、例えば、本実施形態では、両目3の間隔よりも長い長さを有している。これにより、吸入部24は、鼻孔2を横方向に行き過ぎてから上昇する経路26Bを通ったため鼻孔2に吸入されない気化香料や、鼻孔2に到達する前に上昇する経路26Cを通ったため鼻孔2に吸入されない気化香料をそれぞれ一部であれ回収することができる。
【0058】
また、吸入部24を鼻1の上方でありながら、鼻孔2に近い位置である眼鏡5の下部に設けていることにより、気化香料を空気中への拡散が少ない段階で回収することができるため、回収できる気化香料の量が多くなる。さらに、吸入部24が両目3よりも鼻孔2側にあるため、目3や髪の位置まで上昇して目3や髪に接触する気化香料の量を減少させることができるようにもなる。これにより、気化香料は目3に到達する前に眼鏡5の下部で排出除去されるため気化香料が目3に作用するおそれが軽減される。さらに、頭部毛髪への香料の付着や、長時間の気化香料の放出による居住空間などへの香料の残存が視聴などに影響を与えるおそれも軽減される。このように、気化香料の放出管21や放出部23、及び、回収管22や吸入部24を眼鏡5に支持固定する構成は、これら放出部23と吸入部24を視聴者の鼻孔2に安定的に設置できるとともに、放出したあとの気化香料を除去するに最も適した位置に吸入部24を設置することが容易な形態を提供する。
【0059】
また香り提供装置20には、放出管21及び回収管22をそれぞれ、供給チューブT1又は回収チューブT2に接続させることができる切換部としての切換装置30が設けられている。
【0060】
そこで、図3を参照して、切換装置30について説明する。
図3(a)に示すように、切換装置30には、所定の厚みを有する板状の本体部31と、本体部31に形成された上面円形状の孔31Aに回動可能に嵌め込まれた円盤状の可動部33とが設けられている。本体部31の孔31Aは、本体部31の厚み方向に凹み形成されているとともに、可動部33は、嵌め込まれた孔31Aにおいて、同孔31Aの円中心を軸として円盤が回転するようになっている。なお、本体部31には、可動部33を回転させる小型モータが設けられており、当該小型モータの回転角度が制御されることにより可動部33の回転角度が調整される。なお、当該小型モータは、図示しない配線により香り情報処理部13に電気的に接続されており、香り情報処理部13による駆動制御によって可動部33を所定の角度にする。
【0061】
本体部31には、4つの接続部32a〜32dが設けられており、接続部32aには供給チューブT1の端部が、接続部32bには香り放出管21の端部(基端)が、接続部32cには回収管22の端部(基端)が、接続部32dには回収チューブT2の端部がそれぞれ接続されている。各接続部32a〜32dは、本体部31の厚み内に通路が形成されており、それら形成された各通路は外側の開口部を各接続部32a〜32dの端部に開口するとともに、内側の開口を本体部31の孔31Aの側面に開口させている。すなわち、各通路は対応する接続部32a〜32dの端部を本体部31の孔31Aの側面に連通させている。なお、本体部31の孔31Aに開口される各通路の出口は、本体部31の孔31Aにおいてその円形状に対して略等角度間隔、すなわち略90°間隔に配置されている。
【0062】
可動部33には、第1の連絡通路P1と、第2の連絡通路P2とが設けられている。第1及び第2の連絡通路P1,P2は、その通路の両端の開口が可動部33の側面に、つまり円盤の厚み内に形成されているため、可動部33が本体部31の孔31Aに嵌め込まれると、同孔31Aの側面に形成された各接続部32a〜32dの内側の開口と対向できるようになっている。また、可動部33の円の中心に対して、第1の連絡通路P1は、それらの両端の開口が略90°間隔となるように設けており、第2の連絡通路P2は、それらの両端の開口が略90°間隔となるとともに、隣接する第1の連絡通路P1の開口に対しても略90°間隔となる位置に設けられている。すなわち、可動部33には、90°毎に、第1の連絡通路P1の一方の開口、第1の連絡通路P1の他方の開口、第2の連絡通路P2の一方の開口、第2の連絡通路P2の他方の開口が配置される。
【0063】
そこで、図3の(a)に示すように、切換装置30は、可動部33を本体部31に対して所定の角度に配置されると、接続部32aの通路の孔31A側面の開口に第1の連絡通路P1の一方の開口を対向させて、接続部32aの通路と第1の連絡通路P1とを連通させる。このとき、90°ずれて配置されている第1の連絡通路P1の他方の開口が接続部32bの通路の孔31A側面の開口に対向して、接続部32bの通路と第1の連絡通路P1が連通する。同様に、さらに90°ずれて配置されている第2の連絡通路P2の一方の開口が接続部32cの通路の孔31A側面の開口に対向して、接続部32cの通路と第2の連絡通路P2とが連通する。また同様に、さらに90°ずれて配置されている第2の連絡通路P2の他方の開口が接続部32dの通路の孔31A側面の開口に対向して、接続部32dの通路と第2の連絡通路P2とが連通するようになっている。
【0064】
つまり、供給チューブT1は、可動部33の第1の連絡通路P1を経由して放出管21に連通され、回収チューブT2は、可動部33の第2の連絡通路P2を経由して回収管22に連通されるようになる。これにより、切換装置30は、供給チューブT1を放出管21に接続させるとともに、回収チューブT2を回収管22に接続させる、いわゆる第1の接続態様を実施する。
【0065】
また、可動部33は、本体部31に対して90°回転することができる。例えば、可動部33は、図3(a)に示される状態から、時計回りに90°回転されると図3(b)に示す状態になる。つまり、90°回転された可動部33は、第1の連絡通路P1の一方の開口を接続部32dの通路の孔31A側面の開口に対向させることで、接続部32dの通路を第1の連絡通路P1に連通させる。また、90°ずれて配置されている第1の連絡通路P1の他方の開口を接続部32aの通路の孔31A側面の開口に対向させることで、接続部32aの通路と第1の連絡通路P1を連通させる。同様に、さらに90°ずれて配置されている第2の連絡通路P2の一方の開口を接続部32bの通路の孔31A側面の開口に対向させることで、接続部32bの通路に第2の連絡通路P2を連通させる。また、さらに90°ずれて配置されている第2の連絡通路P2の他方の開口を接続部32cの通路の孔31A側面の開口に対向させることで、接続部32cの通路に第2の連絡通路P2を連通させる。
【0066】
つまり、供給チューブT1は、可動部33内の第1の連絡通路P1を経由して回収チューブT2に接続、つまり連通され、放出管21は、可動部33内の第2の連絡通路P2を経由して回収管22に接続、つまり連通されるようになる。これにより、切換装置30は、供給チューブT1を回収チューブT2に接続させる第2の接続態様を実施する。
【0067】
なお、本実施形態では、香り情報処理部13は、気化香料を供給する際、切換装置30を第1の接続態様にするように小型モータを駆動制御し、香りを洗浄する際、切換装置30を第2の接続態様様にするように小型モータを駆動制御する。すなわち、香りを洗浄する際、放出管21と供給チューブT1との接続が断たれる第2の接続態様にするため、供給チューブT1に流される洗浄用流体の匂いが放出管21を介して放出部23から視聴者に供給されるようなことが生じない。つまり、切換装置30を第2の接続態様にして流路の洗浄を行うことで、洗浄用の空気や、洗浄により蒸気した香料などに視聴者が触れるおそれが低減され、洗浄により発生する匂いを視聴者に感じさせることが抑制されるようになる。
【0068】
(作用)
この香り供給システムは、切換装置30を第1の接続態様にすることで、香り発生部14により発生された気化香料が放出管21に供給されて放出部23から鼻孔2に向けて噴出される。また、排気ポンプ18を稼働させておくことにより、負圧の供給された回収管22は、吸入部24から気化香料を含む空気を回収する。これにより、鼻孔2近傍の気化香料などからなる残り香を減少させることができる。
【0069】
一方、香り供給システムは、香り発生部14による気化香料の発生を中止するとともに、切換装置30を第2の接続態様にすることで、負圧が供給されている回収チューブT2を供給チューブT1に直接接続させて、供給チューブT1に滞留していた気化香料や付着していた残り香を回収する。これにより、供給チューブT1が洗浄されて、供給チューブT1などに残される残り香が減少する。
【0070】
つまり、揮発成分を含む気化香料は、動画の進行に合わせて香料を提供しない時間帯に香り情報処理部13が切換装置30の接続態様を第2の接続態様に切り換えて、香り発生部14のから空気を洗浄用流体として流すことで供給チューブT1及び回収チューブT2の各管内部に付着した香料成分を取り除くことが可能である。また、洗浄用流体(空気)を供給チューブT1の一方向に流すだけにしているであるため、例えば洗浄用流体を往復移動させるような場合に比べて、洗浄が短時間でできるようになるとともに、洗浄用流体を回収する構成を有しない香り発生部14側の構成を簡単にすることができるようになる。
【0071】
以上説明したように、本実施形態の香り供給装置によれば、以下に列記するような効果が得られるようになる。
(1)放出部23から放出された香りの一部が吸入部24に回収されるため、鼻孔2周辺の空気中の残り香を減少させることができる。なお通常、人体側面は体熱による上昇気流が生じている。そのため、例えば、香りが口側から鼻孔2に到達するようにし、吸入部24を鼻孔2よりも目3寄りに設けるようにすることで、上昇気流による放出された香りの移動経路26の先に吸入部24が配置されるようになり、香りを吸入部24に回収されやすくすることができるようにもなる。
【0072】
また、回収により空気中の残り香が減少するため、動画により視覚や聴覚に生じる変化などのタイミングに応じて香りが切り換えられたとしても切り換え前後の香りが混ざってしまうおそれが減少する。これにより、香り提供装置は、切り換え提供される複数の香りを切り換え前後で混じり合わせないようにすることができるようになる。
【0073】
さらに、吸入部24を放出部23から鼻孔2までの香りの移動の障害にならないように配置させることができるため、香りの鼻孔到達可能性を高く維持させることができる。
(2)吸入部24の幅が広いことから放出された香りを回収できる可能性が高くなるため、残り香を減少させることが期待されるようになる。
【0074】
また、鼻孔2と目3の間に吸入部24を配置することにより、目3や髪の毛まで達する香りの量を減少させることができるようになる。これにより、目3に到達した香りの成分が目3に付着したり、頭部に到達した香りの成分が髪の毛に付着したりするようなおそれを防ぐことができるようになる。
【0075】
(3)頭部に装着される眼鏡5に放出部23及び吸入部24が保持されるため、香りの放出及び香りの回収を鼻1の近傍にて行うことが可能となる。これにより、香り提供装置は、放出されたものの鼻孔に吸収されなかった香りを空気中からより多く回収することができる。
【0076】
また、放出部23を鼻1の近傍に配置することができるため、香りの鼻孔到達可能性が高く維持され、放出する香りの量を少なくすることができる。これによっても、残り香を少なくして香りが混合する可能性が低減される。
【0077】
(4)眼鏡5は耳と鼻1とにより支持されるため、放出部23及び吸入部24を鼻孔2に近い位置に配置することができるようになる。これにより、より一層、回収される香りの割合を高くしたり、放出する香りの量を削減したりすることができるようになる。
【0078】
(5)吸入部24を眼鏡5に配置することができるようになる。通常、眼鏡5は、そのフレームが鼻1の上方に配置されるため、吸入部24の適切な位置への配置が容易になる。
【0079】
(6)切換装置30によって供給チューブT1の接続先が放出管21を介して放出部23もしくは回収チューブT2に切り換えられるとともに、回収チューブT2の接続先が回収管22を介して吸入部24もしくは供給チューブT1に切り換えられる。これによって、香り提供装置20は、第1の接続態様によれば、放出部23から香りを放出するとともに吸入部24から香りを回収することができる。一方、香り提供装置20は、第2の接続態様によれば、供給チューブT1と回収チューブT2とが接続されるため、それら供給チューブT1と回収チューブT2との間に洗浄用の空気を流すことによって、洗浄用の空気を放出部23から放出させることなく、供給チューブT1の残り香を清掃することができるようになる。これにより、香り提供装置は、切り換え提供される複数の香りを切り換え前後で混じり合わせないようにすることがより好適にできるようになる。
【0080】
また、小型モータで駆動される可動部33は、切換装置30による切り換え時間を短くすることができるため、短時間で供給チューブT1を洗浄させることができるようになる。このように、短時間で残り香を洗浄することができるようになれば、複数の香りを切り換えるとしても、放出する香りの輸送に用いる供給チューブT1の数を1本に維持することができるようにもなる。さらに、チューブの数を最少の2本としていることで、チューブの柔軟性が維持されるので、視聴者が供給チューブT1及び回収チューブT2に感じる違和感を抑制することができる。
【0081】
(7)切換装置30は回動により向きを変更することにより第1の連絡通路P1及び第2の連絡通路P2の向きが変わり第1の接続態様と第2の接続態様とを切り換える。このように、第1の接続態様と第2の接続態様とが切換装置30による第1の連絡通路P1及び第2の連絡通路P2の向きの変化により行えるため接続態様の変更が容易である。
【0082】
(8)眼鏡5を透過した画像や映像(環境光)に対応する香りを提供することができる。このように、眼鏡5を透過した画像や映像に香りを加えることによって、ユーザに強い印象を与えることができるようになる。これは、眼鏡5を透過した環境光が、風景などであっても同様である。
【0083】
(第2の実施形態)
以下、本発明に係る香り供給装置の第2の実施形態について図4に従って説明する。
なお、本実施形態は、眼鏡がヘッドマウントディスプレイ6である点と、眼鏡の外周に沿う環状の吸入部25が設けられている点とが第1の実施形態との相違点であるものの、その他の構成については同様であることから、以下では主に相違点について説明し、説明の便宜上、同様の構成については同じ番号を付しその説明を割愛する。
【0084】
支持具としてのヘッドマウントディスプレイ6は、大型のメガネ形状をしており、視聴者の頭部にベルトによって固定して使用されるディスプレイであるとともに、人の目の至近距離に画像を表示する小型ディスプレイを、左右の目のそれぞれに対応させて有している。これにより、ヘッドマウントディスプレイ6は、人の動作の干渉することのない使用状態で、視聴者に対して仮想現実の空間にいるがごとく感じさせる事ができるディスプレイである。また、ヘッドマウントディスプレイ6は、左右それぞれの小型ディスプレイに、それぞれ異なる画像を表示させて、立体視をさせる事も可能である。
【0085】
このような構造であるため、視聴者はヘッドマウントディスプレイ6の先を透過してみることはできない。しかしながら、本実施形態では、ヘッドマウント型ディスプレイも、人体の両目に映像を提供することから眼鏡として定義しているとともに、両目に対してそれぞれ異なる映像を提供する目的で人体両眼部を覆う光学システムであれば、立体視用眼鏡と定義するようにもしている。
【0086】
ヘッドマウントディスプレイ6は、再生システム10の再生装置11に画像情報を取得可能に接続されており、視聴者の目に再生装置11で再生した映像を提供するようにしている。つまり、ヘッドマウントディスプレイ6は再生装置11に配線により接続されているが、画像情報が取得可能であれば有線接続に限らず無線接続であってもよい。
【0087】
また、ヘッドマウントディスプレイ6は、ジャイロなどのセンサを搭載し、視聴者の向いた方位を含む動作を検知したジャイロなどから出力されたセンサ信号にしたがって装着している視聴者の両目に提供する映像を変更させるような機能を有していてもよい。つまり例えば、ヘッドマウントディスプレイ6は、向いた方向の画像を表示するようにしてもよい。
【0088】
ヘッドマウントディスプレイ6の表面であって、顔面(目)に対向しない側の外表面6Aには、外表面6Aの周形状に沿うかたちに吸入部25が設けられている。吸入部25は、第1の実施形態の吸入部24と同様の構造をしており、回収チューブT2から回収管22を介して付与される負圧に基づいて吸入部25近傍の空気を吸入する。
【0089】
(作用)
放出部23から鼻孔2に向けて気化香料が噴出されると、経路26のような経路で気化香料が鼻孔2の下方に到達し、上昇気流に沿う経路26Aのような経路で鼻孔2に吸入される。一方、経路26Cの経路に示すように、鼻孔2の下方に到達しなかったり、経路26Bに示すように、鼻孔2の下方を行き過ぎてしまったりした気化香料は、その後、上方(目3の方向)に移動する。そして、気化香料は、その一部がヘッドマウントディスプレイ6の下部に配置されている吸入部25に吸収される。しかしながら、該下部の吸入部25に吸収されなかった気化香料は、経路26Dや経路26Eに示すように、ヘッドマウントディスプレイ6の上部方向に移動するようになる。この場合、ヘッドマウントディスプレイ6の上部にも吸入部25が配置されているため、その上部の吸入部25によって経路26Dや経路26Eに示すように移動してきた気化香料であれその一部を回収することができる。
【0090】
以上説明したように、本実施形態の香り供給装置によれば、先の第1の実施形態で記載した効果(1)〜(8)に加え、以下に列記するような効果が得られるようになる。
(9)ヘッドマウントディスプレイ6に香り提供装置20を設けることができるため、画像や動画に対応する香りを短時間に切り換えて提供することができるようになる。このように、画像や映像に同期した香りを加えることによって、視聴者に臨場感を強く与えることができるようになる。
【0091】
(10)特に、両目のそれぞれに対応する小型ディスプレイを備える、いわゆるヘッドマウントディスプレイ6は、視聴者に仮想現実を好適に体験させるものである。このようなヘッドマウントディスプレイ6に、画像や動画に対応して香りを切り換えるこのできる香り提供装置20を設けることで視聴者に仮想現実の臨場感を強く与えることができるようになる。
【0092】
(第3の実施形態)
以下、本発明に係る香り供給装置の第3の実施形態について図5に従って説明する。
なお、本実施形態は、供給チューブT1の洗浄に洗浄液が用いられる点が第1の実施形態との相違点であるものの、その他の構成については同様であることから、以下では主に相違点について説明し、説明の便宜上、同様の構成については同じ番号を付しその説明を割愛する。
【0093】
再生システム10には、供給チューブT1に洗浄液を流入させる洗浄液供給部38と、回収チューブT2から洗浄液を回収する洗浄液回収部39とが設けられている。なお、洗浄の際、切換装置30は第2の接続態様に切り換えられているものとする。
【0094】
洗浄液供給部38は、気化器16から切換装置30に延出されている供給チューブT1に合流部を介して接続されている。洗浄液供給部38は、香り情報処理部13からの信号を受信可能になっており、香り情報処理部13から出力される洗浄開始の信号を受けて、洗浄液を供給チューブT1に流し込むように吐出する。洗浄液は、たとえば水、あるいはオゾン水、あるいはアルコール等を含み構成されており、それが流れる経路において、チューブなどの配管内に付着した香料成分を溶解して除去することができる。
【0095】
洗浄液回収部39は、いわゆる気液分離装置であって、供給チューブT1から切換装置30を経由して回収チューブT2を流れて洗浄液を一旦吸入し、そこで液体を分離して気体のみを洗浄部15に出力するものである。つまり洗浄液回収部39は、上部の入口より回収された洗浄液を下部に滞留させる一方、洗浄液に含まれていた気体や香り供給時に回収した空気を上部の出口より洗浄部15に排出させる。
【0096】
本実施形態でも、切換装置30を第2の接続態様にしてから流路の洗浄を行うことで、放出管21が供給チューブT1から切り離されるため、洗浄により蒸気した香料や洗浄液の蒸気などに視聴者が触れるおそれが低減され、洗浄により発生する匂いを視聴者に感じさせることが抑制されるようになる。
【0097】
(作用)
動画の進行に合わせて香料を提供しない時間帯に切換装置30の接続態様を、香り情報処理部13により第2の接続態様に切り換えて、洗浄液供給部38から洗浄液を流すことで供給チューブT1及び回収チューブT2の各管内に付着した香料成分を取り除くことが可能である。また、洗浄液を供給チューブT1の一方向にだけ流すようにしているため、例えば洗浄液を往復移動させるような場合に比べて、洗浄に要する時間を短くすることができるとともに、洗浄液を回収しない香り発生部14側の構成を簡単にすることができるようになる。
【0098】
以上説明したように、本実施形態の香り供給装置によれば、先の第1の実施形態で記載した効果(1)〜(8)に加え、以下に列記するような効果が得られるようになる。
(11)供給チューブT1の洗浄に洗浄液を用いることで、供給チューブT1内に付着した香料成分をより確実に洗浄することができるようになる。これにより、残り香が好適に除去され、香りが混合してしまうおそれが防止される。
【0099】
(12)洗浄液を供給チューブT1の一方向に流すことから、洗浄液を供給チューブT1に供給している時間を短時間にすることができるため、つまり回収のための時間を要しないため、洗浄時間を短時間にすることができる。これにより、香りの切り替えをより短時間で行うことができるようなる。
【0100】
(第4の実施形態)
以下、本発明に係る香り供給装置の第4の実施形態について図6に従って説明する。
なお、本実施形態は、切換装置40が第1の実施形態の切換装置30と異なる点が第1の実施形態との相違点であるものの、その他の構成については同様であることから、以下では主に相違点について説明し、説明の便宜上、同様の構成については同じ番号を付しその説明を割愛する。また、本実施形態では、第3の実施形態では供給チューブT1に接続されていた洗浄液供給部38が、回収チューブT2に接続されているものとし、同第3の実施形態では回収チューブT2に接続されていた洗浄液回収部39が、供給チューブT1に接続されているものとする。そして、同第3の実施形態と同様に、洗浄液供給部38が香り情報処理部13から出力される洗浄開始の信号を受けて、洗浄液を吐出するものとする。
【0101】
図6(a)に示すように、切換装置40には、所定の厚みを有する板状の本体部41が設けられている。本体部41には、4つの接続部42a〜42dが設けられており、接続部42aには供給チューブT1の端部が、接続部42bには放出管21の端部(基端)が、接続部42cには回収管22の端部(基端)が、接続部42dには回収チューブT2の端部がそれぞれ接続されている。切換装置40には、接続部42aと接続部42bとを連通させる第1の連絡通路としての供給用の連絡通路P11と、接続部42cと接続部42dとを連通させる第2の連絡通路としての回収用の連絡通路P12とが設けられている。また、供給用の連絡通路P11の接続部42b側と、回収用の連絡通路P12の接続部42c側とにはそれぞれ、気体を通過させる一方、液体の通過を阻止することのできる第1及び第2の気液分離部としての気液分離膜43が通路を封鎖するような配置で設置されている。
【0102】
気液分離膜43は、例えば多孔質PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなる撥水性を有する厚み80μm〜200μmの薄膜であって、同膜には孔径0.1〜0.2μmの孔が多数形成されている。つまり、気液分離膜43は、気体を通過させることができるようになっていることから、供給チューブT1から供給される気化香料を透過させることができるとともに、回収管22(吸入部24)から回収された空気を透過させることができる。これにより、供給チューブT1から供給される気化香料は放出管21に供給され、回収管22から回収された空気は回収チューブT2に回収されるようになっている。
【0103】
供給用の連絡通路P11と回収用の連絡通路P12との間であって、気液分離膜43よりも接続部42a及び接続部42d寄りには、連通孔44が形成されており、当該連通孔44の供給用の連絡通路P11側には、当該連通孔44の連通/非連通を切り換える弁体45が接続部42b側を固定点として設けられている。弁体45は、樹脂材料やゴム材料からなる弁であり、押圧を受けると固定点を支点として弾性変形するようになっているものの、大きさが連通孔44の開口を覆う大きさに形成されているために供給用の連絡通路P11側から受けた押圧によっては弾性変形しない。つまり、供給用の連絡通路P11と回収用の連絡通路P12の非連通が維持される。一方、弁体45は、回収用の連絡通路P12側から押圧を受けると固定点を支点として供給用の連絡通路P11を構成する空間内へ移動して回収用の連絡通路P12を供給用の連絡通路P11に連通させる。
【0104】
このため、回収チューブT2から、洗浄液を供給すると、当該洗浄液が気液分離膜43により透過を阻止されて回収用の連絡通路P12内の圧力が高くなり、弁体45が押圧解放されて連通孔44が供給用の連絡通路P11に連通させる短絡通路P13を形成する。そして、回収用の連絡通路P12から供給用の連絡通路P11に向けて洗浄液が短絡通路P13を流通するようになる。このとき、供給チューブT1を負圧にしておけば、回収用の連絡通路P12から供給用の連絡通路P11に洗浄液を移動させやすくなる。なお、洗浄液は気液分離膜43から回収管22や放出管21に移動しないため、洗浄液が回収管22を介して吸入部24や放出管21を介して放出部23から放出されて視聴者に違和感を感じさせるようなことは生じない。
【0105】
つまり、切換装置40は、その弁体45が回収用の連絡通路P12内や供給用の連絡通路P11内の圧力に応じて受動的に作動することで連通孔44を連通される。そして、回収用の連絡通路P12から供給されて供給用の連絡通路P11に流れる洗浄液が、供給用の連絡通路P11に接続されている供給チューブT1を流れてその供給チューブT1内の残り香を清掃するようになっている。
【0106】
本実施形態では、供給チューブT1から気化香料を供給することで、切換装置40は、供給チューブT1を放出管21に接続させるとともに、回収チューブT2を回収管22に接続させる、いわゆる第1の接続態様を実施するようになる。その一方、回収チューブT2に洗浄液を供給することで、切換装置40は、供給チューブT1を回収チューブT2に接続させる第2の接続態様を実施するようになる。
【0107】
以上説明したように、本実施形態の香り供給装置によれば、先の第1の実施形態で記載した効果(1)〜(8)に加え、以下に列記するような効果が得られるようになる。
(13)切換装置40は弁体45による連通孔44の閉鎖により第1の接続態様として、供給チューブT1から供給された香り(気化香料)を供給用の連絡通路P11と気液分離膜43を介して放出管21に輸送し、回収管22から回収した気体を気液分離膜43と回収用の連絡通路P12とを介して回収チューブT2に輸送する。一方、切換装置40は弁体45による連通孔44の開放による第2の接続態様として、回収チューブT2に供給された気液分離膜43を通過できない洗浄液(液体)による回収用の連絡通路P12の内圧上昇により弁体45を開放させて同洗浄液を回収用の連絡通路P12から供給用の連絡通路P11に流すようにする。つまり、切換装置40による第1及び第2の接続態様の変更が、供給チューブT1に気化香料(気体)を供給するか、回収チューブT2に洗浄液(液体)を供給するかの切り替えにより行う。これにより、香りの供給及び回収と、チューブの洗浄との切り換えを容易に行うことができるようになる。
【0108】
(14)回収チューブT2から供給チューブT1に向けて洗浄液を流して、それら回収チューブT2や供給チューブT1を洗浄する。これにより、この切換装置40を用いることにより回収チューブT2や供給チューブT1の洗浄をより簡単に実行することができるようになる。
【0109】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、例えば以下のような態様にて実施することもできる。
・上記第1の実施形態は、眼鏡5は透過型、上記第2の実施形態は、眼鏡がヘッドマウントディスプレイ6である場合について説明した。しかしこれに限らず、眼鏡は、偏光機能やシャッター機能を有していてもよい。例えば図7に示すように、支持具としての眼鏡7に右目側及び左目側にそれぞれレンズ7A,7B(あるいはフィルム)を各別に備えるようにすることで、左右のレンズ(フィルム)を左右が互いに偏光面が直交した透過型偏光板で構成したり、右目側及び左目側にそれぞれ液晶などによって構成されたシャッター機能を備えたりさせることができる。
【0110】
例えば、左右のレンズ(あるいはフィルム)を偏光板で構成した場合、右目と左目に対して互いに異なる映像を透過させることができる。すなわち、画像を表示する画像表示装置は左右の両眼のそれぞれに対して提示する画像を互いに直交した偏光を使って表示するものとすることで、上記眼鏡との組み合わせで左右の目に互いに視角の違う映像を表示して立体視(3D)映像を提供することができる。
【0111】
また、右目側と左目側に各別に設けられたシャッター機能は、テレビのタイミングに合わせていずれか一方のシャッターのみを開けるように開閉を切り替えることで左右の目に異なる映像を提供することができるため、立体視映像を提供することができる。この場合、再生システム10がシャッター制御可能に眼鏡7を接続すればよい。
【0112】
これら、偏光機能やシャッター機能を利用して立体視させる光透過型眼鏡は、両眼に対してそれぞれ異なる映像を提供する目的であれば、特に立体視用眼鏡と定義することができる。つまり、香り提供装置を立体視用眼鏡に適用することで、視聴者に、香りについても臨場感を与えることができるようになる。
【0113】
・また、眼鏡としてはレンズ等の透過光にハーフミラーなどを介して画像を重ね合わせるものであってもよい。つまり、風景などの周辺環境や画像、映像など透過された環境光に画像を重ねて提供するような眼鏡に対して香りを提供するようにしてもよい。このように、風景などの周辺環境や画像、映像に香りを加えることによって、ユーザに強い印象を与えることができるようになる。
【0114】
・上記第3の実施形態では、洗浄液供給部38と洗浄液回収部39とは独立している場合について例示したが、これに限らず、洗浄液供給部は洗浄液回収部で回収された使用済みの洗浄液を洗浄液供給部に戻して繰り返して使用するようにしてもよい。洗浄により洗浄液に取り込まれる香料成分は極わずかであることから複数回同一の洗浄液を使用しても洗浄液の洗浄能力が大きく低下することはない。これにより、香り提供システムの設計自由度や採用可能性が向上するようになる。
【0115】
・上記第3の実施形態では、洗浄液を使用する場合について例示したが、これに限らず、香料成分は揮発性の成分であることから、香り発生部14の空気取り込み口から取り込んだ空気を洗浄用流体として流すようにしてもよい。これによっても供給チューブや回収チューブの各管内部に付着した香料成分を取り除くことが可能である。これにより、香り提供システムの設計自由度が向上するようになる。
【0116】
・上記第3の実施形態では、洗浄液がオゾン水やアルコールである場合について例示した。しかしこれに限らず、洗浄液は通常の水でも良いし、界面活性剤を含んでいても良い。また、洗浄液を、香料を溶解している無臭の溶媒とすると洗浄効果が高く、視聴者に洗浄液の香りを感じさせるおそれを低減されせることもできる。これにより、香り提供システムの設計自由度が向上するようになる。
【0117】
・上記第3の実施形態では、洗浄液で洗浄する場合について例示した。このとき、洗浄液には、泡を混入させてもよい。泡を混入させることによって、供給チューブの管内表面においては、洗浄液と泡の境界の領域で洗浄効果が高することができるとともに、泡を含んでいることで、相対的に使用する洗浄液の量を少量にすることができる。また、洗浄液が少量であれば、その質量が小さくなるため、供給チューブや回収チューブ内を洗浄液を移動させる際に必要な圧力が低くて済むようになり、洗浄液のチューブ内の移動を容易かつ高速にさせることができるようになる。これにより、香り供給装置は複数の香りを混合させない能力がより向上するようになる。
【0118】
例えば、樹脂配管で形成されている供給チューブや回収チューブは、チューブの中間部が鉛直方向に対して最も低い位置になるように屈曲する傾向にあるため、こうした最も低い位置に到達した洗浄液がその重力の作用でそれより高い位置への移動がチューブ内に供給される圧力では容易ではなくなる場合がある。この際に、泡を含み構成されため軽量化された洗浄液はチューブ内の移動が容易になり、移動が容易ではなくなるような不都合を回避することもできるようになる。
【0119】
これにより、香り供給システムとしての利便性が向上されるようになる。
・上記各実施形態では、3つの香料容器C1,C2,C3が設けられる場合について例示したが、これに限らず、香料容器は3つより多く設けられてもよいし、3つより少なくてもよい。これにより、発生させる匂いの種類などを変更させることができるようになり、香り提供システムとしての設計自由度が高められる。
【0120】
・上記各実施形態では、1つの香料容器C1,C2,C3にそれぞれ一種類の香料が格納される場合について例示したが、これに限らず、1つの容器に複数の香料が各別に格納されていてもよい。これにより、香り提供システムの設計自由度が高められる。
【0121】
・上記各実施形態では、香料容器に液状の香料が収納されている場合について例示したが、これに限らず、香料は、気体や個体であってもよい。このとき、気体であれば気化させる機能を省くことができ、個体であれば、各個体に各別に気化装置を設けるようにすることで気化した香りは上記各実施形態と同様の方法により供給することができる。
【0122】
・上記第1〜3の実施形態では、第2の接続態様では第1の連絡通路P1が供給チューブT1と回収チューブT2とを接続させる場合について例示した。しかしこれに限らず、供給チューブT1と回収チューブT2とを接続させることができるのであれば、同接続が第2の連絡通路P2によりなされてもよい。これにより、香り提供装置の設計自由度が高められる。
【0123】
・上記各実施形態では、洗浄を人の呼吸間隔である3秒以内に行うことが望ましい場合について例示したが、これに限らず、香りの提供スケジュールに影響を与えないのであれば、洗浄に3秒より長い時間を要してもよい。これにより、香り供給システムとしての利便性の向上や設計自由度の向上を図ることができる。
【0124】
・上記各実施形態では、供給チューブT1や回収チューブT2はフッ素樹脂で作られているチューブである場合について例示した。しかしこれに限らず、供給チューブや回収チューブは、その他の樹脂チューブであってもよい。これにより、香り供給装置としての構成自由度が高められるようになる。
【0125】
・上記各実施形態では、吸入部24,25を眼鏡の表面に設ける場合について例示したがこれに限らず、吸入部を、眼鏡のフレームに埋め込んだり、フレームに形成してもよい。眼鏡のフレームは、金属や樹脂製であることから、空気を吸入する孔を形成させた管状の吸入部を形成することが可能である。これにより、吸入部の突出部などを減らして外形形状を簡単にしたり、空気を吸入する孔の向きを所望の方向、例えば顔面側、外方側、下方側に設けることが容易にもなる。よって、香り供給装置としての利便性が向上するようになる。
【0126】
・上記各実施形態では、吸入部24,25は空気を吸入する孔を有する場合について例示したが、これに限らず、吸入部は、空気を吸入することができるのであれば、メッシュ状の表面を有している管でもよいとともに、孔やメッシュなどが混在していてもよい。これにより、吸入部に所望の吸入機能を持たせることができるようになるため、香り供給装置としての設計自由度が向上するようになる。
【0127】
・上記各実施形態では、香り提供装置20には、切換装置30,40が設けられている場合について例示した。しかしこれに限らず、香り提供装置には、切換装置が設けられていなくてもよい。必ずしも洗浄が必要のない場合もあるし、供給チューブT1を洗浄液を往復移動させることなどにより洗浄することもできる。これにより、香り提供装置としての構造を簡単にし、その利用範囲を拡大させることができるようにもなる。
【符号の説明】
【0128】
1…鼻、2…鼻孔、3…目、5…眼鏡、6…ヘッドマウントディスプレイ、6A…外表面、7…眼鏡、7A,7B…レンズ、10…再生システム、11…再生装置、11A…表示装置、12…メディア再生部、12A…音声付動画メディア、13…情報処理部、14…発生部、15…洗浄部、16…気化器、17…脱臭器、18…排気ポンプ、20…提供装置、21…放出管、22…回収管、23…放出部、24,25…吸入部、26,26A,26B,26C,26D,26E…経路、30…切換装置、31…本体部、31A…孔、32a,32b,32c,32d…接続部、33…可動部、38…洗浄液供給部、39…洗浄液回収部、40…切換装置、41…本体部、42a,42b,42c,42d…接続部、43…気液分離膜、44…連通孔、45…弁体、C1,C2,C3…香料容器、P1…第1の連絡通路、P2…第2の連絡通路、T1…供給チューブ、T2…回収チューブ、V1,V2,V3…流量調整弁、P11,P12…連絡通路、P13…短絡通路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる複数の香りの各々を互いに異なるタイミングで放出する放出部を備え、人体に装着される香り提供装置であって、
前記放出部から放出した香りの一部を吸引により回収する吸入部を備え、
前記吸入部の少なくとも一部は、当該香り提供装置が人体に装着された状態で、前記放出部の放出する香りが鼻孔に到達する経路に対して鼻孔を挟む位置に配置した
ことを特徴とする香り提供装置。
【請求項2】
前記吸入部の少なくとも一部は、前記香り提供装置が人体に装着された状態で、鼻孔よりも目寄りに配置される
請求項1に記載の香り提供装置。
【請求項3】
前記吸入部は、鼻よりも広い幅を有しているとともに、少なくとも鼻孔と目との間の位置を含むように設けられている
請求項1又は2に記載の香り提供装置。
【請求項4】
前記放出部は、頭部に装着される支持具から鼻孔方向に突出される態様で同支持具に保持さており、前記吸入部は、前記香りが鼻孔に到達する経路に対して鼻孔を挟む位置を含むように前記支持具に支持されている
請求項1〜3のいずれか一項に記載の香り提供装置。
【請求項5】
前記支持具は、耳及び鼻により頭部に支持される
請求項4に記載の香り提供装置。
【請求項6】
前記支持具は、眼鏡であり、
前記吸入部は、前記眼鏡の表面に配置されている
請求項4又は5に記載の香り提供装置。
【請求項7】
前記放出部及び前記吸入部は、前記放出部や前記吸入部の接続先を切り換える切換部に接続されており、
前記切換部は、前記放出部を、放出する香りを輸送する第1の輸送管に接続させるとともに、前記吸入部を、回収した香りを輸送する第2の輸送管に接続させる第1の接続態様と、前記放出部の前記第1の輸送管への接続及び前記吸入部の前記第2の輸送管への接続をそれぞれ遮断するとともに、前記第1の輸送管と前記第2の輸送管とを接続させる第2の接続態様とを切り換えることができる
請求項1〜6のいずれか一項に記載の香り提供装置。
【請求項8】
前記切換部は、第1の連絡通路と第2の連絡通路とがそれぞれ設けられるとともに2つの向きに回動可能な可動部を備え、
前記可動部は、一の向きに回動されることによって、前記第1の連絡通路により前記第1の輸送管を前記放出部に接続させるとともに、前記第2の連絡通路により前記第2の輸送管を前記吸入部に接続させて前記第1の接続態様とし、他の向きに回動されることによって、前記第1の連絡通路又は前記第2の連絡通路により前記第1の輸送管を前記第2の輸送管に接続させて前記第2の接続態様とする
請求項7に記載の香り提供装置。
【請求項9】
前記第2の接続態様のとき、前記第1の輸送管及び前記第2の輸送管に洗浄液が流される
請求項8に記載の香り提供装置。
【請求項10】
前記切換部には、前記第1の輸送管を前記放出部に第1の気液分離部を介して接続させる第1の連絡通路と、前記第2の輸送管を前記吸入部に第2の気液分離部を介して接続させる第2の連絡通路と、前記第1の連絡通路と前記第2の連絡通路とを連通する孔を閉鎖するように配置され、前記第1の連絡通路内の圧力に比べて前記第2の連絡通路内の圧力が高いとき該圧力により開放されて前記連通する孔を開放する弁体とが設けられており、
前記切換部は、前記連通する孔が閉鎖されることで前記第1の接続態様となり、前記連通する孔が開放されることで前記第2の接続態様となる
請求項7に記載の香り提供装置。
【請求項11】
前記第2の接続態様のとき、前記第2輸送管から洗浄液が供給される
請求項10に記載の香り提供装置。
【請求項12】
前記眼鏡は、両目のそれぞれに異なる映像を投影させることにより立体視を可能にさせる
請求項6に記載の香り提供装置。
【請求項13】
前記眼鏡は、両目のそれぞれに対応するディスプレイによって映像を提供する
請求項6に記載の香り提供装置。
【請求項14】
前記眼鏡は、両目のそれぞれに当該眼鏡を透過させた環境光に重ねて映像を提供する
請求項6に記載の香り提供装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−74476(P2013−74476A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212166(P2011−212166)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)