説明

香味が増強された液体調味料

【課題】特殊な原料を使用せず、一般的な液体調味料に使用される原料のみで、乾燥タマネギを使用していながら、タマネギとニンニクの香味が十分に増強された液体調味料を得る。
【解決手段】乾燥タマネギを含む調味液を80℃以上に加熱して、タマネギの成分を調味液中に溶出させた後、70℃以下に冷却してから、ニンニク、または、100℃以下の温度で乾燥した乾燥ニンニクを添加して再度70℃以上に加熱してタマネギとニンニクの香味が増強された液体調味料を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は香味が増強された液体調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
焼肉のたれなどの液体調味料では、一般的にタマネギとニンニクが使用され(例えば、特許文献1または2参照。)タマネギとニンニクを合わせて調理したときの香味(以下、タマネギとニンニクの香味、と言う。)がこれらの液体調味料の特徴となっている。しかし、工業的な製品で生のタマネギを原料として使用すると保存中の香味が不安定なので、保存中の香味を安定させるために、乾燥タマネギを使用することがある。また、液体調味料におろしタマネギなどを大量に添加したい場合は、生のタマネギよりも乾燥タマネギを使用する方が都合が良い。しかし、乾燥タマネギを使用した液体調味料は、家庭料理や焼肉料理店などで提供される生のタマネギを使用した液体調味料に比べて香味が弱い。
【0003】
タマネギとニンニクの香味に関する従来技術として、油脂としてジアシルグリセロールを配合し、かつ加熱処理されたネギ科野菜を配合することで、ネギ科野菜の風味と旨味を増強する方法(例えば、特許文献3参照。)やジアリルサルファイドおよび一般式R-N=C=Sで表される化合物を添加して、ニンニクの辛味の消失を防ぐ方法(例えば、特許文献4参照。)が知られている。しかし、これらの方法では、液体調味料に一般的に使用される原料以外に特別な原料が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3101156号公報
【特許文献2】特開2000−166500号公報
【特許文献3】特開2009−189324号公報
【特許文献4】特開平10−66537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特殊な原料を使用せず、液体調味料に一般的に使用される原料のみで、乾燥タマネギを使用していながら、タマネギとニンニクの香味が十分に増強された液体調味料を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、乾燥タマネギを含む調味液を加熱した後、70℃以下の温度に冷却した後に、ニンニクを添加して再度加熱することにより、タマネギとニンニクの香味が増強されることを知り、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は以下に示す液体調味料およびその製造法である。
(1)乾燥タマネギを含む調味液を80℃以上に加熱し、70℃以下に冷却した後、ニンニクを添加して再度70℃以上に加熱して得られる液体調味料。
(2)ニンニクが100℃以下の温度で乾燥した乾燥ニンニクである上記(1)に記載の液体調味料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、乾燥タマネギを使用した液体調味料でありながら、タマネギとニンニクの香味が増強された液体調味料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ガスクロマトグラフのクロマトグラムの比較
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で使用する乾燥タマネギは、加熱乾燥など一般的な乾燥方法で乾燥したもので良い。また、形状としては、液体調味料に通常使用される形状であれば良く、1〜5mm程度の大きさにみじん切りにしたものや、さらに細かくすりおろしたものでも良い。
一方、ローストやフライなどの高温で加熱処理したニンニクでは本発明の効果が得られないので、使用するニンニクは、加熱していない生のニンニク、または、乾燥ニンニクの場合は100℃以下の温度で乾燥した乾燥ニンニクであることが必要である。特に乾燥ニンニクを製造するときの乾燥温度は重要で、100℃を超える温度で加熱乾燥するとタマネギとニンニクの香味増強効果が得られないので、乾燥ニンニクを製造するときの乾燥温度は、100℃以下、好ましくは90℃以下である必要がある。また、形状は、液体調味料に通常使用される形状であれば良く、1〜5mm程度の大きさにみじん切りにしたものや、さらに細かくすりおろしたものでも良い。
【0011】
本発明を実施するには、まず、乾燥タマネギを含む調味液を80℃以上に加熱して、タマネギの成分を調味液中に溶出させる。80℃未満では、タマネギの成分が調味液中に溶出しにくいので好ましくない。次に80℃以上に加熱した調味液を70℃以下に冷却した後に、ニンニクを添加する。このときの温度は重要で、ニンニクを添加する前に調味液を70℃以下、好ましくは55℃以下に冷却しなければ、タマネギとニンニクの香味の増強効果が得られない。また、ニンニク添加後に再度加熱することも重要で、タマネギとニンニクの香味の増強効果を得るためには、70℃10分以上、好ましくは90℃5分以上の加熱が必要である。
【0012】
本発明の液体調味料には、砂糖や醤油、塩、香辛料、味噌類、酒類調味料、食用油、化学調味料、野菜原料、エキス類など一般的に使用させる原料を添加してもよい。また、必要に応じて、澱粉や増粘多糖類などの増粘剤で粘度をつけても良い。
【0013】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明する。
【実施例1】
【0014】
(乾燥ニンニクの乾燥温度の影響)
本発明で使用する乾燥ニンニクは、ニンニクを乾燥させたものであるが、その乾燥時の温度と本発明の効果である香味増強効果の関係を調べた。
ニンニクの乾燥温度をそれぞれ、90℃(本発明1)、100℃(本発明2)、110℃(比較例1)として得られた乾燥ニンニクを使用して、下記液体調味料の調製にしたがって液体調味料を調製した。液体調味料のタマネギとニンニクの香味について、下記対照の液体調味料と比較して官能検査をおこなった。結果を表1に示した。
【0015】
(液体調味料の調製)
水500mlに乾燥タマネギ30g、醸造酢10g、食塩40g、およびキサンタンガム1gを添加し、混合しながら90℃になるまで加熱して、90℃で5分間保温したのち、50℃まで冷却した。次に、乾燥ニンニク10g、レモン果汁40g、砂糖40g、グルタミン酸ナトリウム10g、および胡椒3gを添加し、1,000mlになるように加水した。その後再び加熱し、90℃で5分間保温した後冷却して液体調味料を調製した。
【0016】
(対照の液体調味料の調製)
水500mlに乾燥タマネギ30g、醸造酢10g、食塩40g、キサンタンガム1g、乾燥ニンニク10g、レモン果汁40g、砂糖40g、グルタミン酸ナトリウム10g、および胡椒3gを添加し、1、000mlになるように加水した。混合しながら90℃になるまで加熱して、90℃で5分間保温したのち、50℃まで冷却した。その後再び加熱し、90℃で5分間保温した後冷却して対照の液体調味料を調製した。なお、この対照の液体調味料には、乾燥温度80℃で乾燥した乾燥ニンニクを使用した。
【0017】
【表1】

【0018】
表1の結果から、乾燥ニンニクの乾燥温度が110℃では、タマネギとニンニクの香味の増強効果が見られず、乾燥ニンニク製造時の乾燥温度は、100℃以下である必要があることがわかる。以下の実施例では、乾燥温度80℃で乾燥させた乾燥ニンニクを使用した。
【実施例2】
【0019】
(乾燥ニンニク添加時の温度の影響)
本発明では、乾燥タマネギを含む調味液を加熱し冷却した後、ニンニクを添加する。ニンニクを添加するときの温度と本発明の効果である香味増強効果の関係を調べた。
実施例1の液体調味料の調製で、乾燥ニンニクを添加するときの調味液の温度をそれぞれ、30℃(本発明3)、55℃(本発明4)、70℃(本発明5)、90℃(比較例2)とした以外は同様にして、液体調味料を調製した。これらの液体調味料について、実施例1と同様に官能検査を行い、タマネギとニンニクの香味の増強効果について比較した。結果を表2に示した。
【0020】
【表2】

【0021】
表2の結果から、タマネギとニンニクの香味の増強効果を得るためには、乾燥ニンニクを添加するときの調味液の温度を70℃以下に冷却しておく必要があることがわかる。
【実施例3】
【0022】
(再加熱の温度の影響)
本発明では、乾燥タマネギを含む調味液を加熱し冷却した後、ニンニクを添加して再度加熱して液体調味料を得る。再度加熱するときの加熱条件と本発明の効果である香味増強効果の関係を調べた。
実施例1の液体調味料の調製で、再度加熱するときの加熱条件をそれぞれ、加熱せず(比較例3)、70℃10分(本発明6)、90℃5分(本発明7)とした以外は同様にして、液体調味料を調製した。これらの液体調味料について、実施例1と同様に官能検査を行い、タマネギとニンニクの香味の増強効果について比較した。結果を表3に示した。
【0023】
【表3】

【0024】
表3の結果から、乾燥ニンニクを添加後再加熱するときの温度と時間は70℃10分以上の加熱が必要であることがわかる。
【実施例4】
【0025】
(生ニンニクを使用した液体調味料)
本発明では、乾燥ニンニクの代わりに生ニンニクを使用しても液体調味料のタマネギとニンニクの香味の増強効果が得られる。すなわち、実施例1の液体調味料の調製、および対照の液体調味料の調製において、それぞれ乾燥ニンニクに代えて、おろした生ニンニクとした以外は同様にして、本発明8の生ニンニクを使用した液体調味料と対照の生ニンニクを使用した液体調味料を得た。対照の生ニンニクを使用した液体調味料に対する本発明8の生ニンニクを使用した液体調味料のタマネギとニンニクの香味の強さを19名のパネルにより一対比較法にて官能検査したところ、タマネギとニンニクの香味が危険率5%で有意に強くなっていることが分かった。
【実施例5】
【0026】
(本発明で増強される香味成分のガスクロマトグラフによる分析)
(本発明の液体調味料の調製)
水580mlに乾燥タマネギ30g、醸造酢10g、およびキサンタンガム1gを添加し、混合しながら90℃になるまで加熱して、90℃で5分間保温したのち、50℃以下に冷却した。次に、乾燥ニンニク10g、および、みじん切りにしたネギ50gを添加し、その後再び加熱し、90℃で5分間保温した後冷却して本発明の液体調味料を調製した。
【0027】
(対照の液体調味料の調製)
水580mlに乾燥タマネギ30g、醸造酢10g、キサンタンガム1g、乾燥ニンニク10g、および、みじん切りにしたネギ50gを添加し、混合しながら90℃になるまで加熱して、90℃で5分間保温したのち、50℃以下に冷却した。次に、その後再び加熱し、90℃で5分間保温した後冷却して対照の液体調味料を調製した。
【0028】
上記調製した液体調味料をそれぞれ下記の分析装置を使用してガスクロマトグラフにより分析を行った。
内部標準として、液体調味料に1−pentanolを10ppmになるように添加し、約12gをバイアルにとり、ミキシングしながら70℃で10分間加熱し、そのヘッドスペースの成分を下記の装置を使用して分析した。ガスクロマトグラフィーのカラムオーブン温度を40℃として3分間保持したのち、1分あたり3℃の割合で220℃まで昇温させ、その後220℃で12分間保持した。
【0029】
(分析装置)
カラム:DB−Wax(J&W scientific社製)
ヘッドスペースオートサンプラー:G1888(Agilent technologies社製)
ガスクロマトグラフ:HP6890Series GC System(HEWLETT PACKARD社製)
質量検出器:HP5973 Mass Selective Detector(HEWLETT PACKARD社製)
【0030】
結果のクロマトグラムを図1に示した。本発明の液体調味料は、対照の液体調味料に比べて、クロマトグラム上に多数のピークが出現していることがわかる。なお、本発明の液体調味料にのみ出現したピークを質量検出器で解析した結果、その多くは含硫化合物である可能性が高かった。本発明の液体調味料がタマネギとニンニクの香味が強くなるのは、タマネギとニンニク由来の香気成分が増加していることに起因することが示唆された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥タマネギを含む調味液を80℃以上に加熱し、70℃以下に冷却した後、ニンニクを添加して再度70℃以上に加熱して得られる液体調味料。
【請求項2】
ニンニクが100℃以下の温度で乾燥した乾燥ニンニクである請求項1に記載の液体調味料。

【図1】
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