説明

香味を付けたシガレット

【課題】シガレット及びシガレットの製造方法及び物品の喫煙方法を提供する。
【解決手段】濾過システム(180)及びポリ酢酸ビニルでカプセル封入された香味料(150)を含有し、香味料による吸着剤の不活性化がポリ酢酸ビニル内への香味料のカプセル封入を通して低減されるシガレットを提供する。好ましい香味料は、メントールである。カプセル封入された香味料は、少なくとも1つの香味料をポリ酢酸ビニル及びエタノールのような溶媒と混合し、カプセル封入された香味料を形成することによって調製される。シガレットの製造及び物品の喫煙方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
香味料は、望ましい感覚刺激感を得るようにタバコ製品に加えられることが多い。一般的な香味料の1つは、メントールである。メントールは、揮発性化合物であり、気化(揮発)し、保管中にタバコ製品から徐々に漏れる傾向にある。
タバコの煙の選択された成分を除去するために、様々な吸着剤がタバコ製品の添加剤として使用されている。より一般的な添加剤は、活性炭、分子篩、ゼオライト、及びこれらの混合物を含む。
【0002】
活性炭は、有用な吸着剤であり、大きな吸収容量を有する。しかし、活性炭は、ターゲットになる成分をタバコの煙から除去するのに有効である一方、活性炭には選択性がなく、メントールのような揮発性香味料がタバコ製品に存在する時にこれも吸収する。
従って、メントールのような香味料を活性炭、分子篩、及びゼオライトのような吸着剤を含有するタバコ製品に香味料を揮発、劣化、及び吸着剤による吸収から保護する一方でタバコ製品を喫煙する時に香味料を徐々に放出することができる形態で提供することは有益である。
【0003】
【特許文献1】US−A−5、301、693
【特許文献2】US−A−5、228、461
【特許文献3】US−A−5、137、036
【特許文献4】US−A−6、584、979
【特許文献5】US−A−6、772、768
【特許文献6】US−A−6、779、528
【発明の開示】
【0004】
ポリ酢酸ビニルでカプセル封入された香味料を含有するシガレットが提供され、香味料をポリ酢酸ビニルのカプセルから喫煙中に主流煙内に放出するのに熱及び/又は水分が用いられる。吸着剤の不活性化を低減した香味料を用いることによって活性炭のような吸着剤を含有するシガレットの香味特性を改善する方法も提供する。
同じく提供するのは、実質的に円筒形のタバコロッドと、ポリ酢酸ビニルによってカプセル封入された香味料を含有する実質的に円筒形のフィルタロッドと、フィルタロッドとタバコロッドを包んで接合するチッピング紙とを含むフィルタシガレット、シガレットの製造方法、及びタバコの主流煙の処理方法である。
【0005】
一実施形態では、タバコと、フィルタと、吸着剤と、メントール香味料が内部に結合されたポリ酢酸ビニルマトリックスを含むカプセル封入香味料とを含むシガレットを提供する。
更に別の実施形態は、シガレットのフィルタに吸着剤を含むシガレットの製造方法を提供し、本方法は、内部にメントール香味料が結合されたポリ酢酸ビニルマトリックスを含むカプセル封入香味料をシガレットの構成要素に組み込む段階を含む。
更に別の実施形態では、ポリ酢酸ビニルマトリックスで香味料(メントール)を保持する段階、及び主流煙を発生させながらマトリックスからメントールを放出する段階を含み、放出する段階がマトリックスへの加熱及び/又は加湿を含む、タバコの主流煙を香味付けする方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
ポリ酢酸ビニルでカプセル封入された香味料及び少なくとも1つの吸着剤を含有するフィルタシステムを含むシガレットを説明する。カプセル封入香味料の製造方法、シガレットの製造方法、及びこれらの物品からの煙の処理方法も説明する。
「喫煙物品」という用語は、シガレット、パイプ、葉巻、及びシガリロなどを含む。
「主流煙」という用語は、喫煙物品を通して喫煙物品の唇側端部に引き出されるエーロゾルを含む。
【0007】
「カプセル封入」という用語は、別の材料による1つの材料のカプセル封入及びマイクロカプセル封入を含み、ここでマイクロカプセル封入は、マイクロカプセルサイズ、すなわち、1μm未満から2000μmを超えるまでのカプセル封入を含む。例えば、本明細書で用いるように、カプセル封入は、好ましくは、1つの材料のマトリックスの形成を含み、ここで第2の材料は、第1の材料のマトリックス内にマイクロカプセル封入される。同様に「カプセル封入香味料」は、カプセル封入又はマイクロカプセル封入された香味料を意味し、好ましくは、ポリ酢酸ビニルカプセル封入マトリックス内の香味料である。
【0008】
あらゆる数の香味料が、ポリ酢酸ビニルでのカプセル封入に適している。メントールが好ましい香味料である。他の適切な香味料は、ペパーミント及びスペアミントのようなミント、バニリン、チョコレート、甘草、かんきつ類及び他の果物香味、シナモンのようなスパイス香味、メチルサルチル酸、リナロール、ベルガモット油、ゼラニウム油、レモン油、ジンジャー油、タバコ香味、及びタバコ製品の主流煙に香味及び芳香を与えるように通常用いられる他の物質を含む。カプセル封入に適する香味料はまた、本出願人に譲渡されたUS−A−5、301、693、US−A−5、228、461、及びUS−A−5、137、036に説明されており、これらは、この記述によりその全内容が引用により組み込まれる。
【0009】
一実施形態により、1つ又はそれよりも多くのカプセル封入香味料が、シガレットのフィルタに組み込まれ、ここでシガレットに使用されるフィルタは、少なくとも1つの吸着剤(吸収剤又は吸着剤)を含む。本明細書で用いる「吸着剤」という用語は、吸着剤、吸収剤、又は吸着剤及び吸収剤の両方として機能することができる物質を意味する。「収着」という用語は、活性炭、分子篩、ゼオライト及び他の同様の材料のような吸着剤の表面の相互作用も、その孔隙及びチャンネル内での相互作用も包含するように意図している。
【0010】
好ましい吸着剤は、様々な形態の活性炭、ゼオライトのような分子篩、及びこれらの混合物を含む。活性型の炭素は、強力な物理吸着力及び高容積の吸着孔隙率を有する。活性炭は、あらゆる適切な技術によって製造することができる。1つの技術は、例えば、やし殻、石炭、木材、ピッチ、セルロース繊維、又はポリマー繊維の炭化である。炭化は、好ましくは、高温、すなわち、200℃から800℃の不活性雰囲気で実行され、その後に酸化状況下での活性化が続く。シガレットに用いられる活性炭は、モノリシック形、顆粒、ビーズ、粉末、又は繊維の形態とすることができる。必要に応じて、活性炭は、紙のような別の材料に組み込むことができる。
【0011】
活性炭は、ミクロ孔隙、メソ孔隙、マクロ孔隙の分布を含むことができる。「ミクロ孔隙」という用語は、一般的に、約20Å又はそれ未満の孔隙サイズを有するような材料を意味する一方、「メソ孔隙」という用語は、一般的に、約20Åから500Åの孔隙サイズを備えるような材料を意味する。「マクロ孔隙」という用語は、500Åを超えるサイズの孔隙を意味する。ミクロ孔隙、メソ孔隙、及びマクロ孔隙の相対量は、ターゲットにされて除去されるタバコの主流煙から選択された成分に対して予め選択することができる。従って、孔隙サイズ及び孔隙分布は、ある一定の用途に必要とされるものに従って調節することができる。
【0012】
シガレットのフィルタシステムに吸着剤として用いることができる別の材料は、分子篩ゼオライトである。本明細書で用いる「分子篩」という用語は、無機ケイ酸塩材料から成る多孔質構造を意味する。ゼオライトは、一定の分子サイズ寸法のチャンネル又は孔隙を有する。異なるサイズ及び形態のチャンネル又は孔隙を有する多くの公知の独特のゼオライト構造がある。チャンネル又は孔隙のサイズ及び形態は、吸着及び分離特性に関してこれらの材料の特性に重大な影響を及ぼす可能性がある。ゼオライトを使用して、チャンネル又は孔隙で及び/又は収着強度の差によって分子を分離することができる。主流煙の選択された成分よりも大きなチャンネル又は孔隙を有する1つ又はそれよりも多くのゼオライトを用いることによって、分子篩材料の孔隙を通過するほど小さな選択された分子のみが空洞に入り、ゼオライトによって吸着されるようにすることができる。
【0013】
ミクロ孔隙、メソ孔隙、及び/又はマクロ孔分子篩を吸着剤として用いることができる。これらは、主流煙から除去される特定の成分に基づいてフィルタシステムで用いるために選択される。シガレットに有用であるゼオライト型分子篩は、結晶性アルミノケイ酸塩、シリコアルミノリン酸塩(AIPO/SAPO)、及びMCM−41、MCM−48、及びSBA−−15のようなメソ孔隙分子篩を含む。これらは、好ましくは粒状材料である。この材料群は、一定のサイズのチャンネル及び調節可能な内部活性部位の規則的配列を含み、あるサイズよりも小さい分子を内部空間内に収容し、これが、この材料群を選択性が望ましい触媒及び吸収剤として有用にする。
【0014】
吸着剤は、シガレットの1つ又はそれよりも多くの位置に組み込むことができる。例えば、吸着剤は、管状自由流フィルタ構成要素のチャンネルに、フィルタ構成要素の材料に、及び/又はフィルタの中空空間に配置することができる。吸着剤は、付加的に又は代替的に、タバコ材料に又はシガレットの包装紙に組み込むことができる。
フィルタは、配向又は非配向繊維内の吸着剤及び繊維を包む紙のようなスリーブを含むことができる。吸着剤は、例えば、活性炭、ゼオライト、及び繊維形態で配置される他の分子篩の1つ又はそれよりも多くとすることができる。吸着剤混合物は、ターゲットになる濾過される主流煙組成を得るように異なる濾過特性を提供することができる。
【0015】
代替的に、吸着剤は、ニュージャージー州モリスタウン所在の「ハネウェル・インターナショナル」から入手可能であるTRIAD(登録商標)微小空洞繊維のような微小空洞繊維に含浸した炭素、シリカ、及びゼオライトなどのような1つ又はそれよりも多くの吸着剤で構成することができる。繊維は、1つ又はそれよりも多くの吸着剤の粒子が含浸した微小空洞繊維の形態とすることができる。この記述によりその全内容が引用により組み込まれる本出願人に譲渡されたUS−A−6、584、979、US−A−6、772、768、及びUS−A−6、779、528を参照されたい。
【0016】
別の実施形態では、繊維は、不連続繊維の束とすることができ、これは、好ましくは、フィルタ内でシガレットを通る主流煙の流れの方向に沿って配向されている。
吸着剤含有フィルタロッドは、例えば、好ましくは、制御された全デニール及び繊維ごとのデニールを有する皺のない吸着繊維材料の束をフィルタ製造工程中に予備形成又は原位置形成されたスリーブを通して延伸させることによって形成することができる。形成されたフィルタロッドは、望ましい長さに切断することによって、フィルタプラグに分割することができる。例えば、フィルタプラグは、約5mmから約30mmの長さを有することができる。
【0017】
吸着剤は、1つ又はそれよりも多くの望ましい配置でシガレットフィルタに組み込むことができる。好ましい実施形態では、吸着剤セグメントは、自由流フィルタと結合される。吸着剤は、自由流フィルタと接触し(すなわち、当接し)、自由流フィルタと吸口フィルタプラグの間に位置決めされるか、又は吸口フィルタプラグに接触する(すなわち、当接する)ことができる。吸着剤セグメントは、好ましくは、濾過工程中に煙の通過を最小にするために自由流フィルタの外径に実質的に等しい直径を有する。
【0018】
繊維状吸着剤含有フィルタセグメントは、好ましくは、平行経路が繊維間に生成されるように適切な充填密度及び繊維長を備えた高いロフトを有する。このような構造は、ホルムアルデヒド及び/又はアクロレインのような選択された気相成分を実質的に除去することができる一方、好ましくは、煙から最低限の粒状物質のみを除去し、それによって選択された気相成分の重大な低減を達成する一方、タバコの煙の総粒状物質(TPM)にはあまり影響を及ぼさない。低い充填密度及び短い繊維長は、このような濾過性能を達成するのに好ましい。
シガレットの好ましい実施形態に用いられる吸着剤の量は、タバコの煙の気相成分のタイプ及びタバコの煙から除去されることが望ましい成分のタイプに依存する。
【0019】
吸着剤及び香味料がシガレットに用いられると、香味料が吸着剤によって吸収される時に、香味料は、吸着剤を不活性化する場合がある。従って、吸着剤の不活性化レベルを低減するために、香味料は、好ましくは、カプセル封入によって吸着剤による収着から保護される。カプセル封入を通して、吸着剤と香味料の間の相互作用も、得られる香味料の収着も、それによって低減することができる。
カプセル封入香味料は、シガレットの様々な部分に配置されてシガレットに香味を提供し、吸着剤の不活性化を低減することができる。一実施形態では、カプセル封入香味料は、タバコフィルタ内に配置されるビーズの形態とすることができる。ビーズを用いることによって、パフサイクル中のシガレットの香味料の制御された放出を達成することができる。ビーズは、好ましくは、少なくとも1つの香味料をカプセル封入するポリ酢酸ビニルを含み、ここでシガレットの喫煙中にカプセル封入香味料に供給される熱及び/又は水分が香味料をカプセル封入から放出する。充填剤のようなカプセル封入材料の特性を改善するか又はその安定性を強化する他の材料を任意的に加えることができる。
【0020】
例示的な実施形態では、カプセル封入添加剤のビーズを設けることができ、これは、香味料がビーズ全体に実質的に均一に分布される実質的に均質な組成を有する。このような構造によって、喫煙中に一定の方法で香味料をビーズから放出することができる。
また、香味料をカプセル封入することによって、カプセル封入香味料は、大気(すなわち、包装内の外気)及びシガレットのようなシガレットの吸着剤への露出から保護される。従って、香味料の放出及び/又は移動は、カプセル封入香味料が水分又は熱の上昇に露出されるまでは最小限である。理論に結合されたくないが、水分の増加も温度の上昇も香味料をカプセル封入したポリ酢酸ビニルマトリックスの膨張を引き起こし、従って、ポリ酢酸ビニルマトリックスから外に経路を生成し、香味料が漏れることを可能にすると考えられる。
【0021】
例えば、香味料がカプセル封入されたポリ酢酸ビニルマトリックスをシガレットのフィルタに付加することができ、ここでユーザの口との接触からの水分及び熱が香味料を放出させることができる。別の実施例として、50℃から900℃の間、又は100℃から800℃の間の温度(例えば、25℃よりも高く、50℃、100℃、200℃、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃)がカプセル封入香味料に適用されて、カプセル封入ポリ酢酸ビニルマトリックスを膨張させることができ、これは、次に、カプセル封入ポリ酢酸ビニルマトリックスからの香味料の放出を引き起こすことができる。
【0022】
その結果、香味料の偶発的な放出又は香味料と吸着剤の間の相互作用は、香味料をカプセル封入することによって低減することができる。また、香味料の偶発的な放出も、湿度上昇又は温度上昇を通して達成することができ、これらは、シガレットの喫煙で利用可能である。従って、ポリ酢酸ビニルマトリックス内に香味料をカプセル封入することによって、特に、吸着剤含有シガレットで温度及び/又は湿度上昇中の香味料の送出の改善が可能である。
【0023】
カプセル封入香味料は、円形、正方形、矩形、楕円形、他の多角形、円筒形、繊維状などを含む規則的又は不規則な形状を含むあらゆる望ましい形状を有することができる。ビーズは、様々なサイズを有することができる。好ましくは、ビーズは、約25μmより小さく、より好ましくは、約1μmより小さい最大粒子サイズを有するミクロビーズである。ビーズのサイズの低減は、ビーズの表面積増大を提供することによって、より均質で制御された香味料の放出をもたらすことができる。
【0024】
カプセル封入生成物は、望ましい構造、組成、及びサイズを有する物品を製造するあらゆる適切な処理法によって製造することができる。例えば、カプセル封入生成物は、押出し、噴霧乾燥、コーティング、又は他の適切な処理によって製造することができる。好ましい実施形態では、カプセル封入生成物は、ポリ酢酸ビニル、香味料、及び任意的な香味料を含有する溶液、分散剤、又は乳液を形成し、成形カプセル封入物を得るように乾燥することによって調製される。
理論によって結合されたくないが、ポリ酢酸ビニルによる香味料のカプセル封入は、表面識別の原理に基づくと考えられる。ポリ酢酸ビニルは、カプセル封入物に対するポリ酢酸ビニルの割合が内側部分よりも高いカプセル封入香味料の表面部分を有するマトリックスを形成し、ここでポリ酢酸ビニルが表面に向って分離され、香味料が表面から離れて分離されると考えられる。
【0025】
カプセル封入香味料は、好ましくは、粉末又は液体状の1つ又はそれよりも多くの香味料、揮発性溶媒、及びポリ酢酸ビニルを混合し、次に、溶媒を除去してポリ酢酸ビニルによって形成されたマトリックス内に香味料を結合するために準備された溶液を乾燥することによって調製される。回収された生成物は、香味料を保持してマトリックス内に香味料を結合するためにポリ酢酸ビニルマトリックスによってカプセル封入された香味料である。カプセル封入生成物は、繊維、フィルム、モノリス、ビーズ、粉末、又は顆粒形態とすることができる。
好ましい溶媒は、メタノール又はエタノールを含む。溶媒は、好ましくは、生成物内で完全に除去されてポリ酢酸ビニル及び香味量のみが残るほど十分に揮発性である。しかし、溶媒は、必要であれば残っていてもよい。
【0026】
成分の比率は、広範に変えることができる。メントールのような香味料の量は、ポリ酢酸ビニルの重量パーセントに基づいて約1から90重量%、約2から70重量%、又は約10から50重量%とすることができる。溶媒の量は、好ましくは、香味料及びポリ酢酸ビニルを可溶化するのに十分なものである。
好ましくは、香味料及びポリ酢酸ビニルの合成物は、香味料及びポリ酢酸ビニルの溶媒中での結合、調合、及び/又は溶解によって形成される。好ましくは、加熱及び機械的せん断が、香味料及びポリ酢酸ビニルの混合に用いられる。
【0027】
また、好ましくは、1つ又はそれよりも多くの香味料が、ポリ酢酸ビニルの連続マトリックスの分離相として溶解及び/又はカプセル封入される。従って、合成物は、マトリックス内に香味料を有するポリ酢酸ビニルのマトリックスである。従って、熱及び/又は水分への露出の際に、ポリ酢酸ビニルの遮断性は、温度及び/又は湿度の上昇によって引き起こされるポリ酢酸ビニルマトリックスの緩みによって低減することができ、従って、香味料をマトリックスから放出することが可能になる。
【0028】
例えば、メントール/ポリ酢酸ビニル合成物を調製する工程は、例えば、エタノールなどのアルコールのような溶媒及びポリ酢酸ビニルを混合して溶液を形成する段階を含むことができる。次に、メントール香味料をエタノール及びポリ酢酸ビニル溶液に加えて香味をもたらすことができる。次に、エタノール溶媒含有量を低減して、溶液内のメントール及びポリ酢酸ビニルの濃度レベルを増加させることができる。メントールは、揮発性であって蒸発する場合があるが、この実施例におけるポリ酢酸ビニルとのメントールの混合物は、ポリ酢酸ビニル内に分布されたメントールのためにメントールの蒸発を低減し、ここで、この分布がメントールの蒸発率を低減することに注意されたい。次に、混合物は、繊維、フィルム、モノリス、ビーズ、粉末、及び顆粒のような望ましい形態に形成することができ、ここで、溶媒は、気化されてポリ酢酸ビニルのマトリックス内にカプセル封入されるメントールを有する最終合成材料を形成することができる。溶媒含有量の低減は、任意的であり、最終合成材料の香味料含有量の増加をもたらすことができる。
【0029】
ポリ酢酸ビニル中のメントールの相対量が、最終的な香味料レベルの変化を提供することにも注意されたい。例えば、約37%のメントールが提供されると、約35%のメントールが使用の際に放出されると予測することができる。一方、混合物内のメントールのレベルは、カプセル封入のこれらの例示的な方法では基礎カプセル封入レベルを超える可能性があり、別のカプセル封入技術を用いることができる。
【0030】
カプセル封入のこれらの例示的な方法での基礎カプセル封入レベルを超えるメントールレベルの例は、混合物内のメントールの初期量が、例えば約70%よりも高い場合である。約23%のメントールのみがこの例ではカプセル封入されることが見出されたので、このレベルではカプセル封入のためのメントールの量は、基礎カプセル封入レベルを超えると考えられる。理論に結合されたくないが、メントールは、この例示的な方法での70%のような高レベルで塊になると考えられ、メントールは、ある一定のメントールレベル、この例では70%程度のレベルを超えてポリ酢酸ビニルマトリックスに分散しないように見え、従って、メントールカプセル封入レベルを低減する。
【0031】
しかし、より高いメントールレベルをカプセル封入するために、別の例示的な方法を用いることができることに注意されたい。例えば、上述のような70%の高いメントール初期レベルである混合物を長期間にわたって溶液内でメントール及びポリ酢酸ビニルを保持することによってエージングさせると、香味料カプセル封入及び使用時の最終的な放出の改善を見ることができる。例えば、70%のメントール、溶媒、及びポリ酢酸ビニルの混合物が約3ヶ月間エージングされると、エージングされた溶液から形成される合成材料は、喫煙中の最終的放出レベルが最高で70%のメントールであるメントール保持力及びカプセル封入の改善を示すことができる。従って、高濃度のメントール/ポリ酢酸ビニル混合物をエージングすることによって、最高で70%のメントールレベルの放出を達成することができる。
【0032】
エージングではなく、代替的に、高レベルのメントールをカプセル封入するための同様の結果は、メントール、溶媒、及びポリ酢酸ビニルの溶液の溶媒含有量を低減することによっても得ることができることに注意されたい。例えば、溶液中の溶媒は、蒸発させて溶媒含有量を低減することができる。溶媒含有量を低減することによって、同様に高いレベルでカプセル封入されたメントールは、エージングを受けたメントールと同様のカプセル封入レベルであるように見える。例えば、低い溶媒含有量及び55%のメントールのような高レベルのメントールを有する溶液は、ポリ酢酸ビニルによってカプセル封入することができ、約55%のメントールレベルのカプセル封入をもたらすことができる。
香味料は、安定化され、従って、揮発、劣化、及び/又は活性炭、ゼオライト、又はシガレットに存在する他の吸着剤による収着を通して損失を受けない様々な物理的形態でカプセル封入して提供することができることを見ることができる。好ましくは、カプセル封入香味料は、香味料、ポリ酢酸ビニル、及び任意的な香味料を含み、他の材料は存在しない。
【0033】
シガレットは、好ましくは、シガレットに所望量の香味を提供する量のカプセル封入香味料を含有する。好ましい実施形態では、シガレットは、シガレットのタバコの総重量に基づいて、最高で約20%、より好ましくは、約10%から約15%のカプセル封入香味料を含有する。例えば、100mgのタバコを含むシガレットは、好ましくは、最高で約20mgのカプセル封入香味料を含有する。
好ましい実施形態では、カプセル封入香味料は、シガレットの少なくとも1つの位置に配置され、これは、喫煙中にポリ酢酸ビニルカプセル封入から香味が放出される少なくとも最低温度に達する位置である。例えば、カプセル封入香味料は、タバコの中又は燃焼のための包装紙に配置することができ、ここで熱及び水分の組合せを用いて、ポリ酢酸ビニルカプセル封入から香味料を放出することができる。
【0034】
別の好ましい実施形態では、カプセル封入香味料は、シガレットの少なくとも1つの位置に配置され、これは、喫煙中に水分の上昇を受ける位置であり、ここで主流煙又は喫煙者の口からの水分は、香味料の放出機構として用いることができる。例えば、カプセル封入香味料は、フィルタ内の吸着剤から下流の空洞又は自由流フィルタの別の表面に配置することができ、ここで主流煙からの水分は、香味料をカプセル封入から放出することができる。
【0035】
別の好ましい実施形態では、カプセル封入香味料は、液体状のカプセル封入香味料をタバコロッド内に注入することによってタバコロッドに配置される。例えば、カプセル封入香味料は、高温融液又は溶媒ベースの液体のような注入のためのカプセル封入香味料の液体として形成することができる。好ましくは、液体注入が、シガレットのタバコロッドの中心に適用され、タバコロッド内にカプセル封入香味料を備えるようにタバコを湿らすか又はタバコロッドの中心部分を満たすことができる。しかし、注入は、タバコロッド内のあらゆる位置とすることができる。例えば、図1(a)を参照すると、これは、フィルタ180から上流のタバコロッド100の中心部分にカプセル封入香味料150が液体状で注入されたタバコロッド100の好ましい実施形態を示している。
【0036】
別の好ましい実施形態では、液体カプセル封入香味料が、液体状のカプセル封入香味料をタバコ充填剤の上に噴射又は被覆することによってタバコ充填剤に配置される。例えば、カプセル封入香味料は、上述のようにカプセル封入香味料の高温融液又は溶媒ベースの溶液(例えば、エタノール、ポリ酢酸ビニル及びメントール)として形成することができるが、この実施形態では、液体カプセル封入香味料は、タバコ充填剤に噴射又は被覆される。好ましくは、シガレットでは、噴射又は被覆されたカプセル封入香味料は、図1(b)に示すように、タバコロッド100全体にカプセル封入香味料160を提供するために、タバコロッド100を形成する前にタバコ充填剤に均一に付加される。
【0037】
別の好ましい実施形態では、固体カプセル封入香味料をタバコ充填剤内に混合することによって固体カプセル封入香味料がタバコ充填剤に配置される。好ましくは、固体カプセル封入香味料の混和性を増大させるように、混合される固体カプセル封入香味料は、刻まれたフィルム、すり潰された粉末、又は他の小型サイズの粒子に刻まれ、すり潰され、又は他の方法で機械的に処理されて、カプセル封入香味料の充填剤内への混和性を増大させる。好ましくは、カプセル封入香味料170は、ロッド製作工程の前又は工程中にタバコ充填剤と混合され、従って、図1(c)に示すようにカプセル封入香味料170をタバコロッド100全体に分布することができる。
【0038】
別の実施形態では、カプセル封入香味料は、フィルムとして存在することができる。フィルムは、その中に香味料を有するフィルム形成材料を付加及び乾燥することによって提供することができ、ここで香味料は、フィルム形成材料内に混合される事前カプセル封入香味料又は非カプセル封入香味料として提供することができる。好ましくは、フィルム形成材料は、ポリ酢酸ビニルフィルムを含む。また、好ましくは、香味料はメントールである。
例えば、ポリ酢酸ビニルに事前カプセル封入されたメントールのビーズをポリ酢酸ビニルフィルム形成材料内に混合することができ、次に、混合物は、フィルムとしてシガレットに付加することができる。代替的に、非カプセル封入液体メントールをポリ酢酸ビニルフィルム形成材料と混合することができ、次に、混合物は、フィルムとしてシガレットに付加することができる。
【0039】
事前カプセル封入メントールは、事前カプセル封入メントールをフィルム形成材料と混合する前に、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリ(エチレン)グリコール、ポリグリコール酸、ペクチン、ポリサッカリド、ポリ乳酸、ポリエステル、ポリエチレン酸化物、又はポリエポキシドなどのような他の接着剤、香味料保持ポリマー材料によって事前カプセル封入することができることに注意されたい。
【0040】
好ましい実施形態では、ポリ酢酸ビニルフィルムは、20重量%まで、より好ましくは、約10重量%から約15重量%のカプセル封入又は非カプセル封入メントールのような香味料を含み、シガレットの構成要素上に付加することができる。例えば、フィルムは、フィルタの表面に付加し、非従来型シガレットのタバコマットに被覆するか又はシガレットの包装紙上に被覆することができる。好ましい実施形態では、フィルムは、メントール及び任意的にミントもカプセル封入する。
【0041】
好ましくは、上述のように、フィルム型カプセル封入香味料は、カプセル封入ポリ酢酸ビニルフィルム形成材料及び少なくとも1つの香味料を含有する。しかし、他の追加材料が任意的に加えられて、カプセル封入ポリ酢酸ビニルフィルム形成材料のフィルム形成特性を改善するか又はポリ酢酸ビニルフィルム形成材料の安定性を強化することができる。例示的な実施形態では、フィルムは、香味料が実質的に均一に分布された実質的に均質な組成を有する。フィルムカプセル封入材料は、香味の放出に対して障壁を提供し、ここで有効量の香味が必要に応じて放出される。例えば、少なくとも0.01ミリグラム/パフの放出が例示的な従来型シガレットから所望され、又はシガレットのタバコロッドの総重量の約2重量%のメントールの総重量が喫煙前に所望されて喫煙の際に放出することができる。
【0042】
フィルムは、フィルタ周囲の包装紙の外面又はシガレットの外側包装紙のようなシガレットの1つ又はそれよりも多くの構成要素に液体コーティングとして付加することができ、これが乾燥してフィルムになる。乾燥フィルムの寸法は、制限されない。好ましくは、乾燥フィルムは、約50μmから約150μm、より好ましくは、約75μmまでの最大厚みを有する。フィルムは、望ましい構造、組成、及び寸法を有するフィルムを生成するあらゆる適切な工程によって製造することができる。例えば、フィムルは、吹付け塗装、浸漬法、静電沈着、プリントホイル塗装、グラビア印刷、及びインクジェット塗装などのようなコーティング処理によって付加することができる。ポリ酢酸ビニル及び香味料を含有する乳剤、懸濁液、又はスラリと、任意的な添加剤とが調製され、次に、シガレットの1つ又はそれよりも多くの選択された構成要素の1つ又はそれよりも多くの選択された表面にコーティングとして付加される。コーティングは、好ましくは、水及び/又は他の溶媒を除去して望ましい寸法を有する固形フィルムを形成するために乾燥させる。凝固させて選択された表面へのフィルムの接着性を強化するために、蒸発及びフィルムの温度低下によって乾燥をもたらすことができる。
【0043】
一実施形態では、ポリ酢酸ビニルマトリックスカプセル封入フィルムは、プラグ包装の上又はあらゆる吸着剤から下流のプラグ内のようなシガレットフィルタの周囲の包装紙の外面に形成される。この配置にフィルムを提供することによって、フィルムは、喫煙中に喫煙者の口からも主流煙からも高い熱及び水分に露出される。上述のように、熱及び水分によって、カプセル封入フィルムは、ポリ酢酸ビニルマトリックスから香味料の少なくとも一部を放出することができる。従って、使用中に高い湿度及び/又は温度レベルを備える配置にフィルムを提供することによって、香味料は、保管中はポリ酢酸ビニルマトリックス内のカプセル封入によって保持され、使用際にはポリ酢酸ビニルマトリックスから放出することができる。
【0044】
別の実施形態では、フィルムは、外側包装紙の香味帯として形成することができ、ここで香味帯は、外側包装紙の内側又は外側に被覆することができる。好ましくは、香味帯の数、幅、位置は、静的燃焼中に燃焼を持続するためにタバコロッド内に空気が拡散するが、香味料を同じく主流煙に提供することができるような方法で配列される。例えば、図2(a)に示すように、香味帯210は、タバコロッド220の燃焼方向に平行に形成することができ、従って、シガレット200を喫煙すると香味を送り出すことになる。図2(b)及び図2(c)に示すように、香味帯210は、シガレット包装紙230の内側又は外側に配置することができる。香味帯210はまた、図3に示すように吸着剤240と共に用いることができる。
【0045】
香味帯は、タバコロッドの形成前、形成中、及び/又は形成後に、タバコロッドを包む紙上へのフィルムの被覆、印刷、塗装、拡散、押出し、滴下、又は一体成型によって形成することができる。香味帯の使用を通して、香味及びあらゆる吸着剤は相互作用を低減し、従って、各々の特性を維持する。例えば、香味帯がシガレットに配置されると、活性炭を有するシガレットの喫煙中にメントールの高い送出をもたらすことができる。更に、香味帯を活性炭を含むシガレットに用いると、活性炭も香味帯も、長期間互いに近くにある関係の後であっても、望ましいレベルの特性を保持することができる。
【0046】
炭素は、メントール香味帯と相互作用しないように見える。図4から図6に示すように、炭素も含むシガレットB及びCに帯状に存在するメントール香味料は、メントール非含有かつ炭素含有の対照シガレット(対照)に比べて、同様のベンゼン、アクロレイン、及び1、3−ブタジエン収着を有し、対照は、パフごとの比較において、炭素非含有シガレット2R4Fよりもベンゼン、アクロレイン、及び1、3−ブタジエンをよく吸収する。図4から図6に示すように、対照シガレット及び香味帯シガレットは、両方とも、ベンゼン、アクロレイン、及び1、3−ブタジエンを同様のレベルで低減する。従って、メントールが香味帯によって提供されると、少なくともベンゼン、アクロレイン、及び1、3−ブタジエンの低減に関して、メントールは、シガレットの吸着剤をあまり不活性化しない。
【0047】
好ましくは、シガレットの香味帯のメントールは、シガレットの吸着剤への悪影響を最小限とし、また、高レベルのメントールを喫煙中に放出することを可能にする。例えば、表1に示すように、0.18mg/cig、0.51mg/cig、及び1.36mg/cigのようなメントールレベルを、炭素吸着剤をフィルタに有する例示的なシガレットの香味帯に配置することができる。その結果、0.021ミリグラム/パフ、0.058ミリグラム/パフ、及び0.145ミリグラム/パフのメントールを喫煙中に送出することができ、香味帯のないシガレット(対照)に比べて香味帯を有するシガレット(実施例A、B、C)の4回のパフで、アクロレイン、1、3−ブタジエン、アセトアルデヒド、又はベンゼンレベルにおいて殆ど変化がない。しかし、好ましくは、香味帯は、少なくとも約0.01ミリグラム/パフのメントール香味を提供し、ここでパフごとのメントール香味のレベルは、ポリ酢酸ビニルフィルム形成材料内のメントールの濃度にも、提供されるメントールの量、すなわち、提供される香味帯のサイズ及び数にもよることに注意されたい。
【0048】
(表1)

【0049】
更に、香味帯は、包装紙に用いられる継ぎ目接着剤の代替物又は添加剤として用いることができる。例えば、フィルムは、シガレット包装紙の継ぎ目に配置されて、継ぎ目の接着もシガレット内の香味料も提供することができる。
上述の実施形態では、カプセル封入香味料は、少なくともシガレットのフィルタ部分に配置することができる。一部の実施形態では、カプセル封入香味料は、シガレットのフィルタに配置する場合がある。例えば、吸着剤及びカプセル封入香味料は、シガレットのフィルタ部分に配置することができ、ここで香味料は、吸着剤から下流にある。
【0050】
様々なフィルタ構成を用いてシガレットを調製することができる。シガレットに用いることができる例示的なフィルタ構造は、以下に限定されるものではないが、モノフィルタ、二重フィルタ、三重フィルタ、単一又は多空洞フィルタ、凹型フィルタ、又は自由流フィルタを含む。モノフィルタは、典型的には、酢酸セルローストウ又はフィルタ紙材料を含有する。二重フィルタは、典型的に、酢酸セルロース口側及び酢酸セルロースプラグセグメントを含む。このような二重フィルタにおいて、吸着剤及びカプセル封入香味料は、好ましくは、シガレットの喫煙材料又はタバコ側の近くに配置される。二重フィルタの2つのセグメントの長さ及び圧力低下は、最適な吸着を提供するために調節することができる一方、シガレットの許容範囲の吸引抵抗を保持する。
【0051】
シガレット三重フィルタは、口側及び喫煙材料又はタバコ側セグメント、及びフィルタ材料又は紙を含む中央セグメントを含むことができる。吸着剤及びカプセル封入香味料は、中央セグメントに備えることができる。空洞フィルタは、典型的に、例えば、空洞によって分離されたアセテート−アセテート、アセテート−紙、又は紙−紙のような2つのセグメントを含む。吸着剤は、好ましくは、空洞に設けられる。凹部フィルタは、口側に開放空洞を含み、プラグ材料内に吸着剤を組み込むことができる。フィルタはまた、任意的に通気させることができ、及び/又は追加吸着剤、触媒、香味料、又はシガレットフィルタ技術で従来用いられる他の添加剤を含むことができる。
【実施例1】
【0052】
実施例
ポリ酢酸ビニルによってカプセル封入される例示的な香味料は、高い香味料放出性能のためにポリ酢酸ビニルに対する香味料の所定の比率で形成することができる。好ましくは、香味料及びポリ酢酸ビニルの安定合成物が高レベルの香味料で形成され、効率的な香味放出剤を提供する。香味料及びポリ酢酸ビニルの合成物の以下の実施例は、香味料の濃度に応じたポリ酢酸ビニル内での香味料の安定性に関するデータを提供する。
【0053】
例示的な合成物(すなわち、カプセル封入香味料)の調製において、メントールが香味料に用いられ、ポリ酢酸ビニルがメントールをカプセル封入するために用いられる。カプセル封入香味料を調製する工程は、1)75.5gのエタノール(95%)を12.5gのポリ酢酸ビニルビーズ(MW−500、000)に加える段階、2)混合物を室温で約2時間攪拌して澄明な溶液を形成する段階、3)7.5g、15.1g、30.1g、又は15.1gのメントール固体を加えて溶液A、B、C、及びDをそれぞれ形成する段階、4)溶液A、B、C、及びDを約6から12時間攪拌して澄明な溶液を形成する段階、5)溶液Dのエタノール含有量を75gから62.5gに低減する段階、及び6)溶媒の気化後に一体成型、成形、押出し、研削、切断、及び/又はスピン工程によってフィルム、ビーズ、バー、及び繊維を形成する段階を含む。
形成された合成物のメントール放出性能の安定性を検査することができ、ここで安定性は、周囲状況下の開放された容器で時間と共に香味損失が最小であり、かつその重量の殆どを保持する合成物によって表される。一方、不安定性は、重量及びメントール香の損失によって表される。
【0054】
A、B、及びC合成物の表2に示すように、Cは、最も高いメントール初期濃度を有し、Bは第2に高く、最も低い初期メントール濃度であるAが続く。しかし、A、B、及びC合成物が作られると、Bは、C又はAよりも高いメントール保持率を有する。表2の初期メントールレベル及び最終メントール保持レベルは、ポリ酢酸ビニルによるメントール保持に対する影響を例示するために初期サンプル重量に関して比較されることに注意されたい。初期サンプル重量に対する最終メントール保持率を計算することによって、合成物AからDは、互いに対しても、純メントールの対照サンプルとも、メントール保持率で比較することができる。従って、表2は、対照純メントールと比較した合成物AからDにおけるメントールの様々な高レベル保持率を伴う純メントールのメントール損失レベルを示している。
【0055】
(表2)

【0056】
これは、合成物A、B、及びCについても、純メントール(対照)についても、経時的なメントール保持率を比較する図7で更に示しており、ここでA及びBは、20日後に同様のメントール保持率を有し、C及び純メントールは、低いメントール保持率を有する。図7のメントール保持率の結果は、恐らくその高い初期メントールレベルによってCがポリ酢酸ビニル内で安定せず、合成物Cは、経時的な保持率レベルで純メントールと同様に作用することを示しているように見える。
図8に示すように、BからDへのエタノールレベルの低減は、経時的なメントール保持率における上昇を可能にするように見える。逆に、対照サンプル(ポリ酢酸ビニルなしの純メントール)は、これも図7に示すように、B又はDのいずれよりも非常に少ない経時的なメントール保持率を有する。
【0057】
カプセル封入香味料の特性を判断するために、メントール放出性能も経時的な重量%で測定することができる。図9に示すように、カプセル封入メントール(合成物B)が純メントール(カプセル封入されてない)と比較され、ここでこれらは、各々経時的な温度上昇を受ける(右軸に温度を備える図9の左下から右上への温度線によって示すように)。図9に示すように、「熱重量分析(TGA)」を用いて、合成物B及び非カプセル封入純メントールは、約50℃よりも低い温度では、同様のメントール保持率を保持するために見えるが(図9の左上部分に示すように)、約50℃を超える温度では、合成物Bは、純メントールよりもより良くその重量を維持する。また、図9に示すように、純メントールは、100℃よりも低温で約0重量%である一方、合成物Bは、約600℃までは0重量%を超えたままである。また、合成物Bは、300℃を超える温度で50重量%を超える低減を有し、ここで合成物Bは、約100℃から約500℃で重量において約80重量%の低減(90重量%から10重量%へ)を有し、約50℃から約200℃の範囲の温度でメントールの緩やかな放出(重量%における安定低減)を示している。すなわち、合成物Bにメントールをカプセル封入することによって、より広くかつ高い温度範囲にわたる放出を達成することができる。
【0058】
更に別の実施例においては、合成物Cのサンプルが約3ヶ月間エージングされ、エージングが引き起こす可能性がある安定性におけるあらゆる変化を判断することができる。以下に示し、かつ図10に示すように、エージング合成物Cは、「未処理」の合成物Cに比べて、特に4日を超える保持率では改善されたメントール保持率を有する。
従って、メントールは、高レベルでポリ酢酸ビニルと混合させることができ、エージングが用いられ、及び/又はメントール及びポリ酢酸ビニルの合成物内で溶媒が低減されると、これらの高いメントールレベルを維持することができる。
以上の内容の変更及び修正は、当業者には明らかであろう。このような変更及び修正は、本明細書に添付する特許請求の範囲の視野及び範囲内にあるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1a】タバコロッドにカプセル封入された生成物の例示的な実施形態を示す図である。
【図1b】タバコロッドにカプセル封入された生成物の例示的な実施形態を示す図である。
【図1c】タバコロッドにカプセル封入された生成物の例示的な実施形態を示す図である。
【図2a】例示的な実施形態による香味帯を示す図である。
【図2b】例示的な実施形態による香味帯を示す図である。
【図2c】例示的な実施形態による香味帯を示す図である。
【図3】別の例示的な実施形態による香味帯を示す図である。
【図4】例示的な実施形態のベンゼンのパフごとの送出を示す図である。
【図5】例示的な実施形態のアクロレインのパフごとの送出を示す図である。
【図6】例示的な実施形態の1、3−ブタジエンのパフごとの送出を示す図である。
【図7】メントールのポリ酢酸ビニルに対する比率が変化する時の例示的な実施形態のメントールの保持を示す図である。
【図8】溶媒容積が変化する時の例示的な実施形態のメントールの保持を示す図である。
【図9】フィルムの重量損失と比較したメントールの保持を示す純メントールと比較したポリ酢酸ビニル−メントールフィルムの「熱重量分析器(TGA)」試験からの結果を示す図である。
【図10】溶液のエージングに基づくメントール保持を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
150 香味料
180 濾過システム
【図1(a)】

【図1(b)】

【図1(c)】

【図2(a)】

【図2(b)】

【図2(c)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タバコと、
フィルタと、
吸着剤と、
香味料を内部に結合させたポリ酢酸ビニルマトリックスを含むカプセル封入された香味料と、
を含むことを特徴とするシガレット。
【請求項2】
前記カプセル封入香味料は、シガレットの前記フィルタの外面上に位置し、前記吸着剤は、該フィルタの空洞に位置していることを特徴とする請求項1に記載のシガレット。
【請求項3】
前記カプセル封入香味料は、シガレットのタバコロッドの中心領域に位置しているか、又はシガレットのタバコロッドを通して分布されていることを特徴とする請求項1に記載のシガレット。
【請求項4】
前記カプセル封入香味料は、シガレットのタバコロッドを取り囲む包装紙上に位置する香味帯を含むことを特徴とする請求項1に記載のシガレット。
【請求項5】
前記香味帯は、前記包装紙の内面又は外面上にあることを特徴とする請求項4に記載のシガレット。
【請求項6】
前記カプセル封入香味料は、前記包装紙の継ぎ目上に位置し、該継ぎ目の接着を提供することを特徴とする請求項4に記載のシガレット。
【請求項7】
前記カプセル封入香味料は、温度に敏感であり、
100℃よりも高い温度は、香味料をシガレット内に放出し、
100℃よりも低いか又は300℃よりも低い温度では、前記カプセル封入香味料の大部分は、カプセル封入されたままである、
ことを特徴とする請求項1に記載のシガレット。
【請求項8】
メントール香味料の一部分が、シガレットの一部分が300℃から800℃の間の温度の時に前記ポリ酢酸ビニルマトリックスから放出されることを特徴とする請求項12に記載のシガレット。
【請求項9】
メントール香味料が、前記ポリ酢酸ビニルの100重量部分に基づいて約1から90重量%、2から70重量%、又は10から50重量%の量で存在することを特徴とする請求項1に記載のシガレット。
【請求項10】
シガレットのフィルタに吸着剤を含むシガレットを製造する方法であって、
香味料を内部に結合させたポリ酢酸ビニルマトリックスを含むカプセル封入された香味料をシガレットの構成要素に組み込む段階、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記カプセル封入された香味料は、
アルコール及びポリ酢酸ビニルを混合し、
前記シガレットの喫煙中に生成されるタバコの煙に少なくとも10マイクログラム/パフのメントール香味をもたらすのに有効な量でメントールをアルコール−ポリ酢酸ビニル混合物内に混合し、
前記メントール−アルコール−ポリ酢酸ビニル混合物のアルコール含有量を低減するか、又は該メントール−アルコール−ポリ酢酸ビニル混合物をエージングし、かつ
前記メントール−アルコール−ポリ酢酸ビニル混合物からメントール−ポリ酢酸ビニル繊維、フィルム、モノリス、ビーズ、粉末、又は顆粒を形成する、
ことによって形成される、
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記カプセル封入された香味料は、メントール香味料及びポリ酢酸ビニルを溶液中で加熱して機械的にせん断することによって形成されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記カプセル封入された香味料は、メントール香味料及びポリ酢酸ビニルをエタノール、メタノール、又はその組合せに溶解することによって形成されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記カプセル封入された香味料は、ポリ酢酸ビニルの連続マトリックス中にメントール分離相を形成することによって形成されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記カプセル封入された香味料を前記シガレットの構成要素に組み込む前記段階は、液体のカプセル封入された香味料の混合物を該シガレットのタバコ部分内に注入する段階、該液体カプセル封入香味料を該シガレットのタバコ部分の中心部分内に注入する段階、液体カプセル封入香味料をタバコ充填剤上に噴射又は被覆して、該噴射又は被覆されたタバコ充填剤から該シガレットのためのタバコロッドを形成する段階、液体又は固体カプセル封入香味料を該シガレットのタバコロッドを通して分布する段階、固体カプセル封入香味料をタバコ充填剤内に組込み、該カプセル封入香味料と混合された該タバコ充填剤から該シガレットのためのタバコロッドを形成する段階、又は繊維、モノリス、ビーズ、粉末、又は顆粒でカプセル封入された香味料を該シガレットのフィルタ部分の空洞に又は該シガレットのタバコ充填剤に配置する段階を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項16】
メントール香味料を内部に結合させた前記ポリ酢酸ビニルマトリックスは、ポリ酢酸ビニルを前記カプセル封入された香味料の表面領域に向って、かつメントールを該カプセル封入された香味料の該表面領域から離して表面識別することにより形成されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項17】
タバコ主流煙を香味付けする方法であって、
ポリ酢酸ビニルマトリックスで香味料を保持する段階と、
前記マトリックスへの加熱及び/又は加湿を含む、タバコ主流煙を発生する間に該マトリックスから前記香味料を放出する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
ポリ酢酸ビニルマトリックス内のメントール、
を含むことを特徴とする喫煙物品。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−509524(P2009−509524A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532905(P2008−532905)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【国際出願番号】PCT/IB2006/003857
【国際公開番号】WO2007/036814
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(596060424)フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム (222)
【Fターム(参考)】