香味放出材料および様々な食品におけるその使用
天然もしくは人工のキャビティーを備えた植物繊維材料を含んでなる香味放出材料が開示される。この香味放出材料は更に、少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分、例えば油または脂肪を含有する溶液を含んでいる。該溶液は、香料の制御放出を与えるキャビティーに適用される。更に、本発明は該香味放出材料を含有する食品、および該香味放出材料を製造する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味放出材料、香味放出材料を含有してなる食品、香味放出材料を製造する方法、および香味放出材料の使用に関する。
【技術的背景】
【0002】
芳香剤および香料は、望ましい香味プロファイルを生じるために食品に添加される。しかし、多くの香料は非常に揮発性なので、例えば食品の中に香料を組込むことは問題を生じる可能性がある。これは食品からそれらを容易に揮発させ、それによって保存および処理の間にその味覚を喪失させる。更に、調理および料理(例えば加熱)をするときに、香料は食品の取り扱いにより化学的に分解する可能性があり、これもまた味覚の喪失をもたらす。或いは、香料は含まれる他の成分と反応する可能性があり、これもまた味覚の喪失または変化を生じる。上記で述べた要因に起因して、香料に由来する添加された香味についての望ましい香味プロファイルおよび/または長期の棚置き寿命を備えた食品を製造するのは困難であった。保存に関して風味が如何に変化するかの一例はワインの保存であり、ここでは味覚が経時的に変化する。この場合の変化は望ましいものであるが、殆どの他の食品応用においては、風味が変化し、劣化しまたは消失するので有害であるように見える。
【0003】
今日使用される一つの方法は、結晶性原料、例えば塩もしくは糖に対する香料の適用、即ち、この結晶性原料に香料を吸収させることである。しかし、この方法を使用するときは、小量の香料だけを結晶性原料に適用でき、多量の香料を結晶性原料に添加することは不可能である。何故なら、この場合には、結晶性原料により食品に付与される香料が多くなりすぎるからである。例えば塩を使用するときは、食品が塩辛くなりすぎる。加えて、結晶性原料に適用された香料は比較的迅速な酸化のために寿命が短い。
【0004】
もう一つの方法は噴霧乾燥であり、ここでは香料が粉末状マトリックスに適用される。最も頻繁に使用される粉末乾燥媒質は、マルトデキストリンおよびアラビアガムであるが、他の媒質もまた使用される。噴霧乾燥ではエマルジョンが形成され、その中で噴霧乾燥媒質と混合された水が蒸発される。この方法は、水を蒸発させるのに費用を要するので、結晶性原料に香料を適用する方法に比較して高価である。更に、噴霧乾燥は比較的高温で実施される方法であり、これによってかなりの量の香料の喪失が生じる。水エマルジョンの中に高度に揮発性の香料が存在し、加熱されたときに水が蒸発するので、それらが香味放出材料から失われる大きなリスクが存在する。噴霧乾燥された香料を、殆どの場合に多量の水を含む食品に添加するときには、水溶性マトリックスが溶解し、特に熱処理に関連して添加された香味原料が蒸発し、食品中の他の原料との内部反応を受け易い。
【0005】
EP0490559A1は、タバコ製品に組込むのに適した香味放出材料を開示している。この香味放出材料は、香料および多糖類バインダを含んでなるコアと、アルギネート膜のコーティングとを含んでいる。また、加熱は水を蒸発させるので、このキャリア材料は加熱時に香料が大量に放出されるという欠点を提起する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一つの目的は、食品の香味安定性に関する上記問題が、加熱の際に水が蒸発して香料を消失させるような現在市場で入手可能な製品よりも遥かに効率的な方法で解決される香味放出材料を提供することである。
【0007】
この目的は天然もしくは人工のキャビティーを備えた植物繊維材料と、少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分を含有する溶液とを含んでなる香味放出材料であって、前記溶液は前記キャビティーに適用されて、香料の制御された放出を提供する香味放出材料によって達成される。
【0008】
これは、前記香料に由来する香味が、加熱の間、例えば油または脂肪である親油性成分によって前記キャビティーの中に知覚可能に維持され、更に所望の時には制御放出を得ることができることを意味する。既に述べたように、水は加熱したときに蒸発し、高度に揮発性の香料が消失するから、本発明は、前記繊維状材料の中において少なくとも一つの親油性成分により前記香料を保護することを目的とする。従って、本発明は、前記香料が水相に移行して、蒸発する水と共に消失するのを防止する。本発明の関連において、「制御放出」の概念は、植物性繊維材料がチューイング等の繊維材料の構造が崩壊する機械的作用に曝され、それによって繊維状材料のキャビティーの中での香料の保護が止むときに放出が起きることを意味する。チューイングすると、唾液の添加に起因して脂肪/水バランスが変化し、香料が水相の中に移行するに伴って、食品を消費する人間は、前記香料のより良好な味覚を得る。長時間の高温、例えば5分間の200℃を超える温度は植物性繊維材料を崩壊させる。当然ながら、チューイングのときに香料の放出を生じる方が好ましい。
【0009】
既に述べたように、熱処理は、食品が製造されるときの種々のタイプの食品処理操作において実施される。熱処理の間に水が蒸発するので、噴霧乾燥または結晶性原料上への香料の塗布により製造された香味放出材料からは香料が喪失される大きなリスクが存在する。これらの場合に、香料は本発明におけるようには保護されず、また香料は高度に揮発性の成分なので、それらは食品処理において喪失され、最終食品に関して知覚可能に維持されることはない。従って、本発明に従う香味放出材料と比較すると、これは大きな相違である。本発明に従えば、香料は繊維材料の中に保護されて維持されるから、それらは水が蒸発するときにも容易には消失しない。
【0010】
この点に関するもう一つの重要な因子は、保存の際に生じ得るエイジングおよび移行である。この場合、「移行」とは、香料がもはや香味放出材料のマトリックス中に保持されず、自由になって喪失されることを意味する。この点において、「エイジング」は、香料と、マトリックス中の例えば他の香料もしくは化学物質の間に生じる反応に関する。エイジングの一つの例はワインの保存であり、ここではこの効果は望ましいものである。本発明における香料は保護されて維持されるから、本発明による香味放出材料は遥かに安定である。即ち、それは、結晶性原料に香料が適用された香味放出材料(この場合は酸化が生じる)または噴霧乾燥によって製造された香味放出材料よりも、より長い保存安定性を有する。これは、移行およびエイジングが本発明により防止されるという事実によるものである。更に、本発明に従って香味放出材料を使用すれば、結晶性原料に香料を塗布する場合のような、食品に添加し得る香料の量に関する制限は存在しない。
【0011】
本発明のもう一つの目的は、食物処理の際に香料が知覚的に維持され、従って最終食品中にも存在することを可能にする、本発明による香味放出材料を製造する方法を提供することである。
【0012】
この目的は、香味放出材料を製造する方法であって、少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分が、天然または人工のキャビティーを備えた植物性繊維材料と混合され、該溶液が前記植物性繊維材料のキャビティーに適用される方法により、本発明に従って達成される。
【0013】
本発明による香味放出材料を製造する方法は、香味放出材料を製造する従来の方法を凌ぐ多くの利点を提供する。本発明による香味放出材料を製造する方法は水を蒸発させる必要がないので、噴霧乾燥よりも遥かに安価である。加えて、噴霧乾燥は蒸発において香料の喪失を生じる。本発明による香味放出材料を製造する方法は、香料が喪失されるような如何なるステップも含んでいない。香料を結晶性原料に適用するときの最も重要な欠点は、結果として得られる生成物自身に関連している。何故なら、このような香味放出材料は酸化に起因して短い保存安定性を有しているからであり、また結晶性原料の量に対する香料の量が制限され、水ベースの食品と混合するときの結晶性原料に添加され得る香料の全量もまた制限されるからである。本発明に関連して最後に述べた制限はまた、噴霧乾燥により製造された香味放出材料にも適用される。
【0014】
食品に本発明による香味放出材料を付与することにより、食品の処理の際に、当該食品における他の成分と、植物繊維材料のキャビティーの中に保護される香料との間の相互反応のリスクが低減される。さもなければ、これらの相互反応は、食品が消費されるときに香料に由来する添加された香味とは異なる味覚を生じさせる。香料を保護された状態で維持することによって、移行が防止され、これは水が蒸発するときに香料が消失するリスクを制限し、または食品処理の際に香料が他の成分と相互作用するのを制限する。
【0015】
更に、本発明の目的は、香味放出材料を製造する方法であって、少なくとも一つの親油性香料を、油もしくは脂肪のような少なくとも一つの親油性成分と混合して分子状溶液を得た後に、該溶液に植物性繊維材料を混合する方法によって達成される。分子状溶液とは、個々の親油性香料が、水相と混合されたときよりも親油性媒質と混合されたときに、より低い蒸気圧を有することを意味する。より低い蒸気圧はまた、香料の揮発性を小さくし、それによって食品処理中に香料が喪失されるリスクを更に低減する。
【0016】
もう一つの目的は、香料の放出が制限される食品、即ち、特定の食品および食品処理操作について決定される時間だけ前記食品が195℃以下の温度に加熱されるときに、前記少なくとも一つの親油性香料が前記植物性繊維材料のキャビティー中に知覚可能に維持される食品を提供することである。これは、食品が熱に露出され得ることを条件とする。香料の選択は、目的とする食品の種類、および製造の際にそれがどのようにして処理されるかに依存する。温度、水含量および圧力は、香料にとって重要な処理パラメータの例である。例えば、下記の実施例2に従う香料チップを製造するときに、香味放出材料中の香料は、195℃において少なくとも45秒間、次いで180℃において少なくとも3分間、添加された香料に由来する加えられた香味を何等喪失することなく、植物繊維材料の中で知覚可能に維持されなければならない。即ち、該香味放出材料は、知覚の観点においては実質的に完全なままである。従って、該香味放出材料が使用される食品の用途に応じて、前記香料および含められる前記成分の内容に関して、香味放出材料の組成を適合させることは非常に興味深い。全てのパラメータが同一である場合の比較では、温度が低いほど、香味放出材料における個々の香料放出の遅延は長いことが知られている。この温度は、主に水の蒸発および相互反応について興味深いものである。
【0017】
これら食品の目的は、本発明による香味放出材料を含んでなる食品、並びにチップ、クリスプ、スナック製品、パン製品、ビスケット、パン粥、肉製品、押し出し製品およびスパイス混合物のような食品におけるこのような香味放出材料の使用によって達成される。
【定義】
【0018】
以下の用語および表現は、本発明の理解を容易にするために定義される。
【0019】
<香味放出材料>:
本発明によれば、「香味放出材料」とは、個々の香料化学物質(香料)が特定の条件、例えば所定の温度、所定のpH値または所定の水含量等の下において、前記材料のマトリックス中で放出されるように構成される香味システムを意味する。本発明による香味放出材料は更に、天然もしくは人工のキャビティーを備えた植物繊維材料と、少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分を含んでなる溶液とを含んでなり、該溶液は香料の制御放出を提供するために前記繊維材料のキャビティーに適用されるシステムに関する。
【0020】
<制御放出>:
本発明に従えば、「制御放出」とは、望ましい時点で個々の香料化学物質(香料)の放出が生じること、即ち、ここに記載した所定のパラメータに従う食品処理において、前記溶液の他の成分との化学的相互反応によって、または加熱における蒸発によって、それほど大きくではなく放出が生じることを意味する。制御放出は、香味放出材料が機械的作用、例えばチューイングに露出されるときに、本発明に従って達成される。何故なら、これは植物繊維材料が分解するに伴って、口腔において香料を脂肪相から水相(唾液)へと移行させるからである。制御放出の反対は、例えば、噴霧乾燥により香味放出材料を製造する際、このような製品または塩に適用された香料により製造される香味放出材料を保存する際、またはこのような香味放出材料を含む食品の正常な処理温度(即ち、65℃〜195℃)での熱処理の際の、香料の望ましくない喪失である。
【0021】
<香料>
本発明について、「香料」の用語は、EU標準88/388/EECに従って、またはスエーデン食品局(SLVFS19993:34)によって発行された香料に関する対応の規則および一般ガイドラインに従って分類されるものに関連する。SLVFS1993:34の第2章は、香味および香料の定義を述べている。
【0022】
従って、本発明によれば、香料は味覚および/または臭いにとって快適であり、また、例えば、食品を製造または調理するときに、形成または添加されるものである。各々の香料は、匂いおよび味覚の感覚においてその特別な特徴を有している。本発明に従って使用できる香料の例としては、例えば、ガーリック、オニオン、ペッパー、レモン、オレンジ、およびミントが挙げられる。
【0023】
この点における一つの重要な側面は、香味放出材料に含められる前記少なくとも一つの親油性成分が、これと同様に含有される少なくとも一つの親油性香料と同じ原料供給源に由来し得ることである。その一例は、以下の実施例で使用されるパプリカオレオ樹脂のようなオレオ樹脂である。オレオ樹脂は、香料並びに親油性成分を含有している。しかし、本発明に従えば、香料はまた、別の親油性成分、即ち、油または脂肪と混合することができる。以下の実施例において、パプリカオレフィンは、例えば、ロブラ油(菜種油)と混合される。従って、本発明に従えば、香料を、該香料と同じ原料源に由来しない脂肪または油と混合することも同様に可能であり、その場合、この混合された溶液は次いで繊維材料と混合される。
【0024】
<繊維上材料>
本発明の場合、「繊維状材料」は、好ましくは可溶性および不溶性の植物繊維の材料を意味する。
【0025】
<分子状溶液>
本発明によれば、「分子状溶液」の概念は、個々の成分(この場合は香料)が溶液と本質的に同じ蒸気圧を有する溶液を意味する。本発明によれば、完全に分子状の溶液は、個々の香料成分が脂溶性であるときに得られる。しかし、「分子状溶液」の概念は、少なくとも1つの親油性成分と共に該溶液中の全ての香料が完全に脂溶性である溶液と看做されるべきではない。何故なら、幾つかの香料は水溶性部分を有し、且つなお分子状溶液中に存在することができるからである。
【0026】
本発明によれば、分子状溶液は、水が蒸発するに伴って香料が消失するリスクが可能な限り最小化されるので、特に好ましい実施形態である。
【0027】
<調理媒体>
本発明に従えば、「調理媒体」は、食品の実際の調理に使用される空気、水、油、脂肪またはそれらの混合物を意味する。これらの調理媒体は、調理の間に熱を食品に移行させるために、食品の処理において使用される
これらの調理媒体は、油または脂肪であることができるが、本発明に従って香味放出材料の中に含められる少なくとも一つの親油性成分と混同されるべきではない。このことは、これらの油または脂肪が、当該香味放出材料に含められる親油性成分と同じであることができないことを意味するものではない。
【0028】
<食品>
本発明によれば、「食品」はまた、調製中の食品をも含むものである。このことは、「最終食品」と明示的に述べられないときの「食品」の表現が、調製中の製品、並びに最終食品を指称できることを意味する。
【発明の詳細な説明】
【0029】
本発明による香料は、典型的には親油性であるが、多少は親水性の部分も含むことができる。香料は、低い分子量および高い分子量を備えた、典型的には高度に揮発性の成分である。これはまた、溶液中の香料が、水の蒸発によって経時的に且つ温度に従って喪失されることを意味する。当然、これは食物処理において食品を加熱するときに問題となる。更に、香料の化学的分解は、香料の喪失を生じる。これは、例えば保存において問題であるが、加熱においても問題である。
【0030】
本発明により、香料は親油性成分によって繊維のキャビティー中に保護されるので、香料の溶液中への移行は制限される。これにより、本発明は加熱中および保存中に香料が放出される問題を解決する。
【0031】
少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分の溶液は、植物繊維材料と混合された後に、主に上記で述べたキャビティーの中に組込まれ、これにより香料を含んだ溶液が保護された状態で維持されることを保証する。
【0032】
香料と混合され、または最初から既に香料を備えた溶液は、本発明に従って、多くの異なる種類の油または脂肪から選択されることができ、或いはこれらの混合物からなることができる。何れの種類の油または脂肪が選択されるかは、本発明による香味放出材料を使用することを意図した用途のタイプに依存する。油または脂肪が液体または固体であるかどうかは、植物繊維材料のキャビティー中への組込みのためにはそれほど重要ではない。本発明は、繊維材料、香料、および親油性成分の特定の組成により限定されず、全ての比率および濃度が実行可能である。しかし、本発明によれば、全重量に基づいて好ましくは55重量%以下の、前記少なくとも一つの親油性成分および前記少なくとも一つの親油性香料が前記植物繊維材料の中に組込まれ、該香味放出材料は粉末状である。香味放出材料の粉末形態は重要であり、例えば、当該香味放出材料は振り掛けることが可能であろう。前記植物繊維材料の中に組込まれる前記少なくとも1つの親油性成分および前記少なくとも一つの親油性香料の含量は、全重量に基づいて55重量%よりも大きいことができるが、この場合、香味放出材料は粉末よりもペースト状であろう。
【0033】
本発明による植物繊維材料は、好ましくは、セルロースおよび/またはヘミセルロースを含んでよい。該植物繊維材料はまた一定量のデンプンを含むことができ、これは天然にはセルロースおよびヘミセルロース材料中の不純物として含まれる。しかし、この繊維は、デンプンの量が低くなるように処理するのが更に好ましい。これは、デンプンは香料を水システムに結合することなく吸収するのに対して、本発明による繊維材料は、少なくとも一つの親油成分の溶液中に香料を組込むからである。これにより、デンプン含量が低く維持されれば、香料はより良好に保護される。本発明の好ましい実施形態において、植物繊維材料の最大デンプン含量は、全重量に基づいて16重量%である。16重量%よりも高いデンプン含量の場合、香料の調製において更に多くの香料が失われるであろう。これらの喪失は、デンプンに対する繊維の比率が完全に異なり得る最終製品に結び付けられるべきではない。植物繊維材料の例としては、例えば、ポテト繊維、ビーツ繊維、エンドウマメ繊維およびセルロース繊維が挙げられる。
【0034】
本発明の好ましい実施形態において、植物繊維材料は中空構造を有している。この中空構造は、香料を組込むことができ且つ結合することができる大きな接触表面をもたらす。「中空構造」の表現は、例えばポテト繊維の中に見られる種類の構造をいう。従って、ポテト繊維は、本発明による植物繊維材料の好ましいタイプである。
【0035】
本発明の特に好ましい実施形態において、植物繊維材料の中空構造は、ネットワーク構造型である。ネットワーク構造は、植物繊維材料の細胞壁と親油性成分、即ち、香料を伴う油または脂肪との間の接触表面を最大にし、従って、少なくとも一つの親油性成分および少なくとも一つの親油性香料の溶液を、植物繊維材料の細胞壁に保持させる力または結合の強さを最大化して、植物繊維材料のキャビティーの中に知覚可能に維持させる。これにより、香料の更に良好な保護が達成される。このネットワーク構造の一例が下記の図1に示されている。これは、特に好ましいポテト繊維におけるものであり、該ポテト繊維はLyckeby・Culinar・AB(Kristianstad,Sweden)から得たポテト繊維であり、製品コード15077または15078(2006年4月)のものである。この文書の請求項1に定義された方法に従う該ポテト繊維の製造は、EP0413681B1(Sveriges・Starkelseproducenter,Foreningen・UPA、Karlshamn,Sweden)に開示されている。
【0036】
ネットワーク構造を備えたポテト繊維(この場合はLydkeby・Culinar・ABにより製造されたもの)が、以下の比較例1において他の植物繊維材料と比較される。
【0037】
本発明による分子状溶液は、香料が親油性成分と混合されるに伴って蒸気圧を低下させる。次いで、これにより香料が水相の中に移行するリスクが減少するので、加熱で水が蒸発するに伴って香料の放出速度が遅くなる。従って、本発明の好ましい実施形態は、少なくとも一つの親油性成分および少なくとも一つの親油性香料を含む溶液が分子状溶液の形態の香味放出材料である。
【0038】
本発明によれば、調理媒体とは、食品の調理に使用される空気、水、油、脂肪またはそれらの混合物、例えば揚げ物用の油を意味する。その例は、菜種油、オリーブ油等のような植物油、液状ならびに固形のマーガリンもしくはバターである。
【0039】
天然または人工のキャビティーを備えた植物繊維材料と、少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分を含有する溶液(該溶液は前記キャビティーに適用される)とを含んでなる香味放出材料は、前調理媒体と接触するので、前記溶液は、前記繊維のキャビティーから前記調理媒体の中に移行しないことが重要である。このことはまた、それらが水相と接触しない保護された状態に維持されなければ、高度に揮発性の香料物質が蒸発中に失われることからも重要である。従って、本発明の好ましい実施形態は、溶液で前記キャビティーに適用された少なくとも一つの親油性香料が、香味放出材料が調理媒体に接触するときに、前記植物繊維材料のキャビティー内に知覚的に維持される香味放出材料である。これに関連して「維持される」とは、この場合にはまた、添加された香料に由来する追加された香味に影響する調理媒体中への、実質的なまたは有意な香料放出が存在しないことを意味する。
【0040】
勿論、上記の議論はまた、前記調理媒体および香味放出材料が加熱されるときにも有効である。例えば、下記の実施例2に従ってチップを油で揚げるとき(この場合、香味放出材料は揚げる前にチップに添加される)、香料は本発明に従って植物繊維材料のキャビティーの中に維持され、従って、前記調理媒体(この場合は揚げ物油)の中に有意な程度に移行することはない。
【0041】
この関連において、「キャビティーの中に知覚的に維持される」とは、本発明による香味放出材料が、特定の食品について決定された時間だけ、調理媒体中での食品処理において195℃以下に保持され得ること、および香味放出材料からの香料の如何なる実質的な喪失も伴わずに熱に露出され得ることを意味する。香料の「実質的な喪失」とは、添加される香味、即ち、香料によって加えられる初期の香味に影響する香料の喪失を意味し、これは味覚パネルによって実証され得るであろう。個々の香料成分は定量的には同定されないが、幾つかのこのような成分からなる群において定性的に同定されるので、「実質的な喪失」の概念は定量することはできず、「添加された香味」の概念に関連付けられなければならない。
【0042】
しかし、香味放出材料が種々の食品において異なる方法で消費されるときには、香料の制御放出を得るのが望ましい。従って、本発明の好ましい実施形態は、チューイングする際に、口腔中において唾液を介して脂肪相から水相へと移行するとき、即ち、油もしくは脂肪溶液から唾液へと移行するときに、前記少なくとも一つの親油性香料が放出される香味放出材料である。この点において、機械的動作、即ちチューイングの速度もまた、この移行が如何に迅速に進行するかにとって重要である。
【0043】
香味放出材料は食品での応用を意図している。従って、本発明の一つの実施形態は、本発明による香味放出材料を含んでなる食品である。
【0044】
植物繊維材料のキャビティー内の香料は、食品処理において195℃以下の温度で熱に露出されたときにもそれほど放出されないので、本発明のもう一つの好ましい実施形態は、本発明による香料放出材料を含んでなる食品であり、該食品は、例えば揚げ物、フライ、煮沸、直火焼き、ベーキング、押し出し、マイクロ波オーブン中での加熱またはオーブン中での加熱のような熱処理への露出に適している。斯かる食品の例は、チップ、クリスプ、スナック製品、パン製品、ビスケット、押し出し製品、および肉製品である。もう一つの実施形態は、本発明による香味放出材料を含んでなるスパイス混合物またはパン粥である。本発明による香味放出材料は、食品の外側に適用することができ、または食品の成分として作用することができる。
【0045】
殆ど全ての食品適用は65℃〜195℃の温度で行われるので、これはまた、本発明による香味放出材料を含んでなる食品の熱処理のための正常な範囲でもある。
【0046】
香味放出材料および該食品放出材料を含む食品の外に、本発明はまた、上記で述べたことに従う食品における香味放出材料の使用を含むものである。
【0047】
更に、本発明は、本発明による香味放出材料の製造方法であって、少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分が植物繊維材料と混合され、該溶液は植物繊維材料のキャビティーに適用される方法に関する。
【0048】
この場合、該方法の好ましい実施形態は、セルロースおよび/またはヘミセルロースを含んでなる植物繊維を用いて当該方法を実施することである。
【0049】
また、中空構造、好ましくはネットワーク構造を有する植物繊維材料を用いて本発明を実施するのも好ましい。ポテト繊維は特に好ましい植物繊維材料であり、特に、Lyckeby・Culinar・AB(Kristianstad,Sweden)から得た製品コード15077または15078(2006年4月)のもの等である。
【0050】
当該方法の好ましい実施形態において、少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分を含んでなる、全重量に基づいて55重量%以下の前記溶液が植物繊維材料の中に組込まれる。
【0051】
加えて、デンプン含量が全重量に基づいて16重量%以下である植物繊維材料を用いて、当該方法を実施するのが好ましい。
【0052】
更に、少なくとも一つの親油性成分および少なくとも一つの親油性香料の分子状溶液を用いて、当該方法を実施するのが好ましい。
【0053】
本発明のもう一つの実施形態は、本発明による香味放出材料を含んでなる食品を製造する方法であって、該香味放出材料が、混合、タンブリング、スプリンクリング、または噴霧によって食品に添加される方法である。
【0054】
最後に、本発明のもう一つの実施形態は、スパイス混合物を製造する方法であって、基本スパイス混合物が前記香味放出材料と混合される方法である。
【実施例および図面の説明】
【0055】
図1A〜図5Aおよび図1B〜図5Bには、偏光での顕微鏡的実験の写真が示されている。これらの実験においては、異なる種類の植物繊維が、それらのデンプン含量に起因して前記香料および油の溶液をどの程度充分に組み込み、またどの程度吸収するかを見出すために、香料(パプリカオレオ樹脂)および親油性成分(この場合は菜種油)の溶液が種々の植物繊維材料に混合された。植物繊維材料に香料および油の溶液を混合して粉末またはペーストを入手した後、即ち、香料および油の溶液が繊維材料に組込まれるように混合した後、この粉末またはペーストを、下方の対物ガラスと上方のカバーガラスの間に配置した。その後、特定の繊維材料が、現実に、香料および油の溶液をどのように取り込むかが研究された。A図1A〜5Aにおける写真は、下方の対物ガラスから示されており(即ち、特定の繊維材料が見える)、またB図1B〜5Bの写真は、上方のカバーガラスから示されている。B図1B〜5Bは、如何に多くの油、または如何に多く且つ如何に大きな油滴が上方のカバーガラス上に存在するかを示しており、これらはそれ自体として特定の繊維材料が如何に多くの油を取り込むかの尺度である。カバーガラス上の油が少ないほど、繊維材料はより良好に、香料および油の溶液を取込むことができる。カバーガラス上に油が見えれば、それは保持されずに繊維マトリックスに結合されたものである。B図1B〜5Bの比較から、ポテト繊維型[この場合にはLyckeby・Culinar・AB(Kristianstad,Sweden)から得たポテト繊維であり、製品コード15077または15078(2006年4月)のもの]を使用したときには、他の繊維型に比較して遥かに少ない油がカバーガラス上に存在するように思える。このポテト繊維の製造は、EP0413681B1の請求項1に開示されている。
【実施例】
【0056】
以下の実施例は、本発明を例示することを目的とするものであり、本発明を限定するものと看做されるべきではない。
【0057】
植物繊維材料、油または脂肪および香料を用いた本発明による香味放出材料は、例えば、特定の成分の如何なる所定量にも限定されず、適用に応じて変化し得るものである。
【0058】
比較例1:他の植物繊維材料に比較した香味キャリアとしての、Lyckeby・Culinar・ABから得たポテト繊維
実施例1は、上記の図に関連して解釈されるべきである。
【0059】
次の繊維が比較された:Lyckeby・Culinar・ABから入手したポテト繊維、Vitacel・WF200およびVitacel・WF650(セルロース繊維)、竹繊維、Fibrex(砂糖ビーツの粉砕繊維)およびCentutex(エンドウ豆繊維)。
【0060】
全ての繊維に20%の油(80g繊維+20g菜種油およびオレオ樹脂)を混合した。使用されたこの混合物は、Cyclomix・5Lのタイプであり、Hosokawa・Micronによって製造されたものである。
【0061】
<粉末としての取り扱い性能>
全ての繊維は、それらのデンプン含量により20%以下の油を取り込み、ある程度は吸収したが、それらは様々に挙動した。
【0062】
ビーツ繊維およびエンドウマメ繊維はむしろ同様に挙動した。それらは取り扱い可能な粉末であったが、該粉末は保存容器のプラスチック壁に付着し、該壁は油性になった。
【0063】
Vitacel・WF繊維および竹繊維は同様に挙動した。それらは前記油を取り込んだが、小さな束を形成し、粉末としては挙動しなかった。竹繊維は、Vitacel・WFよりも均一であった。
【0064】
Lyckeby・Culinar・ABから得たポテト繊維は、最もよく機能する繊維であった。それはビーツ繊維およびエンドウマメ繊維と同じ粉末挙動を有していたが、容器の壁に付着するものは少なく、油で汚れた皮膜で覆われることはなかった。
【0065】
<顕微鏡観察>
・Lyckeby・Culinar・ABから得たポテト繊維
前記油は均一に分布するように見え、またセルの中にも存在した。顕微鏡観察において、カバーグラス上には少しの油しか見られなかった。Lyckeby・Culinar・ABから得たポテト繊維は、幾つかの部分は完全に油で覆われ且つ肉眼ではコンパクトな粒子に見えた事実にもかかわらず、その開放構造を維持した。これは、油に3%パプリカオレオ樹脂を混合したとき(図1Cに示す)に、更に良好に見える。
【0066】
・Vitacel
Vitacel・WF200およびWF650。それらは、繊維長において異なっていた。顕微鏡観察によって、Lyckeby・Culinar・ABから得たポテト繊維とは完全に異なる構造が示された。該繊維は細いセルロース繊維からなっていた。特にWF650の場合に、幾つかの油滴がカバーガラスに付着した(図2Aおよび図2B参照)。
【0067】
・竹繊維
竹繊維(Justfibre)は、Vitacelにおけるとほぼ同じ方法で挙動し、また細いセルロース繊維からなっていた。少しの油しかカバーガラスに付着しなかった(図3A参照)。
【0068】
・Fibrex
Fibrex(粉砕されたビーツ繊維)は、カバーガラス上で油を放出した粗い小片からなっており、これは該油の殆どが繊維の表面にあったことを示した(図4Aおよび図4B)。
【0069】
・Centutex
Centutex(エンドウマメ繊維)もまた硬い小片からなっており、これは表面に油を有し且つ油を放出した。この油はカバーグラス上に見られた(図5Aおよび図5B参照)。
【0070】
<結論>
全ての異なる種類の植物繊維材料が使用に適合したが、該繊維材料の中空構造は、少なくとも一つの油または脂肪(親油性成分)および少なくとも一つの親油性香料を備えた溶液を取り込み、且つより効率的に保護することを可能にする。換言すれば、ポテト繊維は好ましい繊維型であり、Lyckeby・Culinar・ABから得たポテト繊維のネットワーク構造は、本発明のために特に好ましいものである。
【0071】
上記構造の研究は、Lyckeby・Culinar・ABから得たポテト繊維が独特の構造を有し、これは空隙セルの特別に効率的なシステムによって、高度に効率的な方法で香味を保護し、それによって香料の遅延放出を可能にできることを示している。上記の図は、Lyckeby・Culinar・ABから得たポテト繊維が最もよく油を取り込むことを示したが、このことは、この繊維型を使用したときに上方のカバーガラス上に存在する油が最も少ないことによって示された。
【0072】
実施例2:本発明による香味放出材料で香料を付与したチップ
適切な温度で処理された後に分割または切断され、乾燥されたポテトを、本発明による香味放出材料と共にパン粥を含んでなるパン粥混合物の中に浸漬させた。
【0073】
本発明による香味放出材料を含むパン粥中に浸漬して得た上記ポテト小片を、続いて195℃で45秒間だけ油で揚げ、次いで冷却させた。その後、それらは小片の形態で凍結させた。
【0074】
得られた食品(この場合はチップ)が消費されるべきときには、それを175〜180℃で約3分間だけ適切に油で揚げる。本発明による香味放出材料を使用することにより、当初に意図された香料プロファイルは、油で揚げた後、チップを消費するときにも維持される。
【0075】
当該香味放出材料中の添加された香料に由来する付加された香味は、該チップを食べるときに明瞭に知覚される。冷凍機中で2週間保存した後に評価を行ったが、この場合にも香料は明瞭に知覚可能であった。幾つかの場合、チップの消費者は、保存の後には香味が同じではなく向上したと看做した。何れにしても、香味は減少しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1a】図1aは、20%の油と混合した後の、Lyckeby・Culinar・ABから入手したポテト繊維型のネットワーク構造を示している。
【図1b】図1bは、Lyckeby・Culinar・ABから入手したポテト繊維を用いて行った実験において、カバーガラス上に現れる油滴を示している。
【図1c】図1cは、67%のポテト繊維、30%の油、および3%のパプリカオレオ樹脂と混合した後の、Lyckeby・Culinar・ABから入手したポテト繊維を示している。図1cは、この繊維型が香料と共に油を如何に十分に取り込むかを、更に明瞭に示している。赤色を添加することによって、香料と共に油が繊維を通して直接吸収されることが明瞭に見られ、これは繊維のネットワーク構造が、キャビティー中の油および香料と共に、放出または崩壊を伴うことなく維持されることを意味する。
【図2a】図2aは、20%油と混合された後の、Vitacel・200WF型(製造元:J・Rettenmailer・&・Sohne,Food・Division,Germany)セルロースの個々の繊維を示している。
【図2b】図2bは、Vitacel・200WF(製造元:J・Rettenmailer・&・Sohne,Food・Division,Germany)を用いた実験において、カバーガラス上に現れる油滴を示している。この場合、Lyckeby・Culinar・ABから得たポテト繊維を用いた実験におけるよりも、遥かに多くの油がカバーガラス上に存在した。
【図3a】図3aは、20%の油と混合した後の、竹繊維型(Justfibre)(Internatinal・Fitre・Europe・N.V.,Belgiumにより改良された)の個々の繊維を示している。
【図4a】図4aは、20%の油と混合した後の、Fibrex型(砂糖ビーツ)(製造元:Danisco,Sweeden)の繊維材料を示している。
【図4b】図4bは、Fibrexを用いて行われた実験において、カバーガラス上に現れた油滴を示している。この場合、Lyckeby・Culinar・ABから得たポテト繊維を用いた実験におけるよりも、遥かに多くの油がカバーガラス上に存在した。
【図5a】図5aは、20%の油と混合した後の、Centutex型(エンドウマメ繊維)(製造元:Parrheim・Foods,Canada)の繊維材料を示している。
【図5b】図5bは、Centutexを用いて行われた実験において、カバーガラス上に現れた油滴を示している。この場合、Lyckeby・Culinar・ABから得たポテト繊維を用いた実験におけるよりも、遥かに多くの油がカバーガラス上に存在した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味放出材料、香味放出材料を含有してなる食品、香味放出材料を製造する方法、および香味放出材料の使用に関する。
【技術的背景】
【0002】
芳香剤および香料は、望ましい香味プロファイルを生じるために食品に添加される。しかし、多くの香料は非常に揮発性なので、例えば食品の中に香料を組込むことは問題を生じる可能性がある。これは食品からそれらを容易に揮発させ、それによって保存および処理の間にその味覚を喪失させる。更に、調理および料理(例えば加熱)をするときに、香料は食品の取り扱いにより化学的に分解する可能性があり、これもまた味覚の喪失をもたらす。或いは、香料は含まれる他の成分と反応する可能性があり、これもまた味覚の喪失または変化を生じる。上記で述べた要因に起因して、香料に由来する添加された香味についての望ましい香味プロファイルおよび/または長期の棚置き寿命を備えた食品を製造するのは困難であった。保存に関して風味が如何に変化するかの一例はワインの保存であり、ここでは味覚が経時的に変化する。この場合の変化は望ましいものであるが、殆どの他の食品応用においては、風味が変化し、劣化しまたは消失するので有害であるように見える。
【0003】
今日使用される一つの方法は、結晶性原料、例えば塩もしくは糖に対する香料の適用、即ち、この結晶性原料に香料を吸収させることである。しかし、この方法を使用するときは、小量の香料だけを結晶性原料に適用でき、多量の香料を結晶性原料に添加することは不可能である。何故なら、この場合には、結晶性原料により食品に付与される香料が多くなりすぎるからである。例えば塩を使用するときは、食品が塩辛くなりすぎる。加えて、結晶性原料に適用された香料は比較的迅速な酸化のために寿命が短い。
【0004】
もう一つの方法は噴霧乾燥であり、ここでは香料が粉末状マトリックスに適用される。最も頻繁に使用される粉末乾燥媒質は、マルトデキストリンおよびアラビアガムであるが、他の媒質もまた使用される。噴霧乾燥ではエマルジョンが形成され、その中で噴霧乾燥媒質と混合された水が蒸発される。この方法は、水を蒸発させるのに費用を要するので、結晶性原料に香料を適用する方法に比較して高価である。更に、噴霧乾燥は比較的高温で実施される方法であり、これによってかなりの量の香料の喪失が生じる。水エマルジョンの中に高度に揮発性の香料が存在し、加熱されたときに水が蒸発するので、それらが香味放出材料から失われる大きなリスクが存在する。噴霧乾燥された香料を、殆どの場合に多量の水を含む食品に添加するときには、水溶性マトリックスが溶解し、特に熱処理に関連して添加された香味原料が蒸発し、食品中の他の原料との内部反応を受け易い。
【0005】
EP0490559A1は、タバコ製品に組込むのに適した香味放出材料を開示している。この香味放出材料は、香料および多糖類バインダを含んでなるコアと、アルギネート膜のコーティングとを含んでいる。また、加熱は水を蒸発させるので、このキャリア材料は加熱時に香料が大量に放出されるという欠点を提起する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一つの目的は、食品の香味安定性に関する上記問題が、加熱の際に水が蒸発して香料を消失させるような現在市場で入手可能な製品よりも遥かに効率的な方法で解決される香味放出材料を提供することである。
【0007】
この目的は天然もしくは人工のキャビティーを備えた植物繊維材料と、少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分を含有する溶液とを含んでなる香味放出材料であって、前記溶液は前記キャビティーに適用されて、香料の制御された放出を提供する香味放出材料によって達成される。
【0008】
これは、前記香料に由来する香味が、加熱の間、例えば油または脂肪である親油性成分によって前記キャビティーの中に知覚可能に維持され、更に所望の時には制御放出を得ることができることを意味する。既に述べたように、水は加熱したときに蒸発し、高度に揮発性の香料が消失するから、本発明は、前記繊維状材料の中において少なくとも一つの親油性成分により前記香料を保護することを目的とする。従って、本発明は、前記香料が水相に移行して、蒸発する水と共に消失するのを防止する。本発明の関連において、「制御放出」の概念は、植物性繊維材料がチューイング等の繊維材料の構造が崩壊する機械的作用に曝され、それによって繊維状材料のキャビティーの中での香料の保護が止むときに放出が起きることを意味する。チューイングすると、唾液の添加に起因して脂肪/水バランスが変化し、香料が水相の中に移行するに伴って、食品を消費する人間は、前記香料のより良好な味覚を得る。長時間の高温、例えば5分間の200℃を超える温度は植物性繊維材料を崩壊させる。当然ながら、チューイングのときに香料の放出を生じる方が好ましい。
【0009】
既に述べたように、熱処理は、食品が製造されるときの種々のタイプの食品処理操作において実施される。熱処理の間に水が蒸発するので、噴霧乾燥または結晶性原料上への香料の塗布により製造された香味放出材料からは香料が喪失される大きなリスクが存在する。これらの場合に、香料は本発明におけるようには保護されず、また香料は高度に揮発性の成分なので、それらは食品処理において喪失され、最終食品に関して知覚可能に維持されることはない。従って、本発明に従う香味放出材料と比較すると、これは大きな相違である。本発明に従えば、香料は繊維材料の中に保護されて維持されるから、それらは水が蒸発するときにも容易には消失しない。
【0010】
この点に関するもう一つの重要な因子は、保存の際に生じ得るエイジングおよび移行である。この場合、「移行」とは、香料がもはや香味放出材料のマトリックス中に保持されず、自由になって喪失されることを意味する。この点において、「エイジング」は、香料と、マトリックス中の例えば他の香料もしくは化学物質の間に生じる反応に関する。エイジングの一つの例はワインの保存であり、ここではこの効果は望ましいものである。本発明における香料は保護されて維持されるから、本発明による香味放出材料は遥かに安定である。即ち、それは、結晶性原料に香料が適用された香味放出材料(この場合は酸化が生じる)または噴霧乾燥によって製造された香味放出材料よりも、より長い保存安定性を有する。これは、移行およびエイジングが本発明により防止されるという事実によるものである。更に、本発明に従って香味放出材料を使用すれば、結晶性原料に香料を塗布する場合のような、食品に添加し得る香料の量に関する制限は存在しない。
【0011】
本発明のもう一つの目的は、食物処理の際に香料が知覚的に維持され、従って最終食品中にも存在することを可能にする、本発明による香味放出材料を製造する方法を提供することである。
【0012】
この目的は、香味放出材料を製造する方法であって、少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分が、天然または人工のキャビティーを備えた植物性繊維材料と混合され、該溶液が前記植物性繊維材料のキャビティーに適用される方法により、本発明に従って達成される。
【0013】
本発明による香味放出材料を製造する方法は、香味放出材料を製造する従来の方法を凌ぐ多くの利点を提供する。本発明による香味放出材料を製造する方法は水を蒸発させる必要がないので、噴霧乾燥よりも遥かに安価である。加えて、噴霧乾燥は蒸発において香料の喪失を生じる。本発明による香味放出材料を製造する方法は、香料が喪失されるような如何なるステップも含んでいない。香料を結晶性原料に適用するときの最も重要な欠点は、結果として得られる生成物自身に関連している。何故なら、このような香味放出材料は酸化に起因して短い保存安定性を有しているからであり、また結晶性原料の量に対する香料の量が制限され、水ベースの食品と混合するときの結晶性原料に添加され得る香料の全量もまた制限されるからである。本発明に関連して最後に述べた制限はまた、噴霧乾燥により製造された香味放出材料にも適用される。
【0014】
食品に本発明による香味放出材料を付与することにより、食品の処理の際に、当該食品における他の成分と、植物繊維材料のキャビティーの中に保護される香料との間の相互反応のリスクが低減される。さもなければ、これらの相互反応は、食品が消費されるときに香料に由来する添加された香味とは異なる味覚を生じさせる。香料を保護された状態で維持することによって、移行が防止され、これは水が蒸発するときに香料が消失するリスクを制限し、または食品処理の際に香料が他の成分と相互作用するのを制限する。
【0015】
更に、本発明の目的は、香味放出材料を製造する方法であって、少なくとも一つの親油性香料を、油もしくは脂肪のような少なくとも一つの親油性成分と混合して分子状溶液を得た後に、該溶液に植物性繊維材料を混合する方法によって達成される。分子状溶液とは、個々の親油性香料が、水相と混合されたときよりも親油性媒質と混合されたときに、より低い蒸気圧を有することを意味する。より低い蒸気圧はまた、香料の揮発性を小さくし、それによって食品処理中に香料が喪失されるリスクを更に低減する。
【0016】
もう一つの目的は、香料の放出が制限される食品、即ち、特定の食品および食品処理操作について決定される時間だけ前記食品が195℃以下の温度に加熱されるときに、前記少なくとも一つの親油性香料が前記植物性繊維材料のキャビティー中に知覚可能に維持される食品を提供することである。これは、食品が熱に露出され得ることを条件とする。香料の選択は、目的とする食品の種類、および製造の際にそれがどのようにして処理されるかに依存する。温度、水含量および圧力は、香料にとって重要な処理パラメータの例である。例えば、下記の実施例2に従う香料チップを製造するときに、香味放出材料中の香料は、195℃において少なくとも45秒間、次いで180℃において少なくとも3分間、添加された香料に由来する加えられた香味を何等喪失することなく、植物繊維材料の中で知覚可能に維持されなければならない。即ち、該香味放出材料は、知覚の観点においては実質的に完全なままである。従って、該香味放出材料が使用される食品の用途に応じて、前記香料および含められる前記成分の内容に関して、香味放出材料の組成を適合させることは非常に興味深い。全てのパラメータが同一である場合の比較では、温度が低いほど、香味放出材料における個々の香料放出の遅延は長いことが知られている。この温度は、主に水の蒸発および相互反応について興味深いものである。
【0017】
これら食品の目的は、本発明による香味放出材料を含んでなる食品、並びにチップ、クリスプ、スナック製品、パン製品、ビスケット、パン粥、肉製品、押し出し製品およびスパイス混合物のような食品におけるこのような香味放出材料の使用によって達成される。
【定義】
【0018】
以下の用語および表現は、本発明の理解を容易にするために定義される。
【0019】
<香味放出材料>:
本発明によれば、「香味放出材料」とは、個々の香料化学物質(香料)が特定の条件、例えば所定の温度、所定のpH値または所定の水含量等の下において、前記材料のマトリックス中で放出されるように構成される香味システムを意味する。本発明による香味放出材料は更に、天然もしくは人工のキャビティーを備えた植物繊維材料と、少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分を含んでなる溶液とを含んでなり、該溶液は香料の制御放出を提供するために前記繊維材料のキャビティーに適用されるシステムに関する。
【0020】
<制御放出>:
本発明に従えば、「制御放出」とは、望ましい時点で個々の香料化学物質(香料)の放出が生じること、即ち、ここに記載した所定のパラメータに従う食品処理において、前記溶液の他の成分との化学的相互反応によって、または加熱における蒸発によって、それほど大きくではなく放出が生じることを意味する。制御放出は、香味放出材料が機械的作用、例えばチューイングに露出されるときに、本発明に従って達成される。何故なら、これは植物繊維材料が分解するに伴って、口腔において香料を脂肪相から水相(唾液)へと移行させるからである。制御放出の反対は、例えば、噴霧乾燥により香味放出材料を製造する際、このような製品または塩に適用された香料により製造される香味放出材料を保存する際、またはこのような香味放出材料を含む食品の正常な処理温度(即ち、65℃〜195℃)での熱処理の際の、香料の望ましくない喪失である。
【0021】
<香料>
本発明について、「香料」の用語は、EU標準88/388/EECに従って、またはスエーデン食品局(SLVFS19993:34)によって発行された香料に関する対応の規則および一般ガイドラインに従って分類されるものに関連する。SLVFS1993:34の第2章は、香味および香料の定義を述べている。
【0022】
従って、本発明によれば、香料は味覚および/または臭いにとって快適であり、また、例えば、食品を製造または調理するときに、形成または添加されるものである。各々の香料は、匂いおよび味覚の感覚においてその特別な特徴を有している。本発明に従って使用できる香料の例としては、例えば、ガーリック、オニオン、ペッパー、レモン、オレンジ、およびミントが挙げられる。
【0023】
この点における一つの重要な側面は、香味放出材料に含められる前記少なくとも一つの親油性成分が、これと同様に含有される少なくとも一つの親油性香料と同じ原料供給源に由来し得ることである。その一例は、以下の実施例で使用されるパプリカオレオ樹脂のようなオレオ樹脂である。オレオ樹脂は、香料並びに親油性成分を含有している。しかし、本発明に従えば、香料はまた、別の親油性成分、即ち、油または脂肪と混合することができる。以下の実施例において、パプリカオレフィンは、例えば、ロブラ油(菜種油)と混合される。従って、本発明に従えば、香料を、該香料と同じ原料源に由来しない脂肪または油と混合することも同様に可能であり、その場合、この混合された溶液は次いで繊維材料と混合される。
【0024】
<繊維上材料>
本発明の場合、「繊維状材料」は、好ましくは可溶性および不溶性の植物繊維の材料を意味する。
【0025】
<分子状溶液>
本発明によれば、「分子状溶液」の概念は、個々の成分(この場合は香料)が溶液と本質的に同じ蒸気圧を有する溶液を意味する。本発明によれば、完全に分子状の溶液は、個々の香料成分が脂溶性であるときに得られる。しかし、「分子状溶液」の概念は、少なくとも1つの親油性成分と共に該溶液中の全ての香料が完全に脂溶性である溶液と看做されるべきではない。何故なら、幾つかの香料は水溶性部分を有し、且つなお分子状溶液中に存在することができるからである。
【0026】
本発明によれば、分子状溶液は、水が蒸発するに伴って香料が消失するリスクが可能な限り最小化されるので、特に好ましい実施形態である。
【0027】
<調理媒体>
本発明に従えば、「調理媒体」は、食品の実際の調理に使用される空気、水、油、脂肪またはそれらの混合物を意味する。これらの調理媒体は、調理の間に熱を食品に移行させるために、食品の処理において使用される
これらの調理媒体は、油または脂肪であることができるが、本発明に従って香味放出材料の中に含められる少なくとも一つの親油性成分と混同されるべきではない。このことは、これらの油または脂肪が、当該香味放出材料に含められる親油性成分と同じであることができないことを意味するものではない。
【0028】
<食品>
本発明によれば、「食品」はまた、調製中の食品をも含むものである。このことは、「最終食品」と明示的に述べられないときの「食品」の表現が、調製中の製品、並びに最終食品を指称できることを意味する。
【発明の詳細な説明】
【0029】
本発明による香料は、典型的には親油性であるが、多少は親水性の部分も含むことができる。香料は、低い分子量および高い分子量を備えた、典型的には高度に揮発性の成分である。これはまた、溶液中の香料が、水の蒸発によって経時的に且つ温度に従って喪失されることを意味する。当然、これは食物処理において食品を加熱するときに問題となる。更に、香料の化学的分解は、香料の喪失を生じる。これは、例えば保存において問題であるが、加熱においても問題である。
【0030】
本発明により、香料は親油性成分によって繊維のキャビティー中に保護されるので、香料の溶液中への移行は制限される。これにより、本発明は加熱中および保存中に香料が放出される問題を解決する。
【0031】
少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分の溶液は、植物繊維材料と混合された後に、主に上記で述べたキャビティーの中に組込まれ、これにより香料を含んだ溶液が保護された状態で維持されることを保証する。
【0032】
香料と混合され、または最初から既に香料を備えた溶液は、本発明に従って、多くの異なる種類の油または脂肪から選択されることができ、或いはこれらの混合物からなることができる。何れの種類の油または脂肪が選択されるかは、本発明による香味放出材料を使用することを意図した用途のタイプに依存する。油または脂肪が液体または固体であるかどうかは、植物繊維材料のキャビティー中への組込みのためにはそれほど重要ではない。本発明は、繊維材料、香料、および親油性成分の特定の組成により限定されず、全ての比率および濃度が実行可能である。しかし、本発明によれば、全重量に基づいて好ましくは55重量%以下の、前記少なくとも一つの親油性成分および前記少なくとも一つの親油性香料が前記植物繊維材料の中に組込まれ、該香味放出材料は粉末状である。香味放出材料の粉末形態は重要であり、例えば、当該香味放出材料は振り掛けることが可能であろう。前記植物繊維材料の中に組込まれる前記少なくとも1つの親油性成分および前記少なくとも一つの親油性香料の含量は、全重量に基づいて55重量%よりも大きいことができるが、この場合、香味放出材料は粉末よりもペースト状であろう。
【0033】
本発明による植物繊維材料は、好ましくは、セルロースおよび/またはヘミセルロースを含んでよい。該植物繊維材料はまた一定量のデンプンを含むことができ、これは天然にはセルロースおよびヘミセルロース材料中の不純物として含まれる。しかし、この繊維は、デンプンの量が低くなるように処理するのが更に好ましい。これは、デンプンは香料を水システムに結合することなく吸収するのに対して、本発明による繊維材料は、少なくとも一つの親油成分の溶液中に香料を組込むからである。これにより、デンプン含量が低く維持されれば、香料はより良好に保護される。本発明の好ましい実施形態において、植物繊維材料の最大デンプン含量は、全重量に基づいて16重量%である。16重量%よりも高いデンプン含量の場合、香料の調製において更に多くの香料が失われるであろう。これらの喪失は、デンプンに対する繊維の比率が完全に異なり得る最終製品に結び付けられるべきではない。植物繊維材料の例としては、例えば、ポテト繊維、ビーツ繊維、エンドウマメ繊維およびセルロース繊維が挙げられる。
【0034】
本発明の好ましい実施形態において、植物繊維材料は中空構造を有している。この中空構造は、香料を組込むことができ且つ結合することができる大きな接触表面をもたらす。「中空構造」の表現は、例えばポテト繊維の中に見られる種類の構造をいう。従って、ポテト繊維は、本発明による植物繊維材料の好ましいタイプである。
【0035】
本発明の特に好ましい実施形態において、植物繊維材料の中空構造は、ネットワーク構造型である。ネットワーク構造は、植物繊維材料の細胞壁と親油性成分、即ち、香料を伴う油または脂肪との間の接触表面を最大にし、従って、少なくとも一つの親油性成分および少なくとも一つの親油性香料の溶液を、植物繊維材料の細胞壁に保持させる力または結合の強さを最大化して、植物繊維材料のキャビティーの中に知覚可能に維持させる。これにより、香料の更に良好な保護が達成される。このネットワーク構造の一例が下記の図1に示されている。これは、特に好ましいポテト繊維におけるものであり、該ポテト繊維はLyckeby・Culinar・AB(Kristianstad,Sweden)から得たポテト繊維であり、製品コード15077または15078(2006年4月)のものである。この文書の請求項1に定義された方法に従う該ポテト繊維の製造は、EP0413681B1(Sveriges・Starkelseproducenter,Foreningen・UPA、Karlshamn,Sweden)に開示されている。
【0036】
ネットワーク構造を備えたポテト繊維(この場合はLydkeby・Culinar・ABにより製造されたもの)が、以下の比較例1において他の植物繊維材料と比較される。
【0037】
本発明による分子状溶液は、香料が親油性成分と混合されるに伴って蒸気圧を低下させる。次いで、これにより香料が水相の中に移行するリスクが減少するので、加熱で水が蒸発するに伴って香料の放出速度が遅くなる。従って、本発明の好ましい実施形態は、少なくとも一つの親油性成分および少なくとも一つの親油性香料を含む溶液が分子状溶液の形態の香味放出材料である。
【0038】
本発明によれば、調理媒体とは、食品の調理に使用される空気、水、油、脂肪またはそれらの混合物、例えば揚げ物用の油を意味する。その例は、菜種油、オリーブ油等のような植物油、液状ならびに固形のマーガリンもしくはバターである。
【0039】
天然または人工のキャビティーを備えた植物繊維材料と、少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分を含有する溶液(該溶液は前記キャビティーに適用される)とを含んでなる香味放出材料は、前調理媒体と接触するので、前記溶液は、前記繊維のキャビティーから前記調理媒体の中に移行しないことが重要である。このことはまた、それらが水相と接触しない保護された状態に維持されなければ、高度に揮発性の香料物質が蒸発中に失われることからも重要である。従って、本発明の好ましい実施形態は、溶液で前記キャビティーに適用された少なくとも一つの親油性香料が、香味放出材料が調理媒体に接触するときに、前記植物繊維材料のキャビティー内に知覚的に維持される香味放出材料である。これに関連して「維持される」とは、この場合にはまた、添加された香料に由来する追加された香味に影響する調理媒体中への、実質的なまたは有意な香料放出が存在しないことを意味する。
【0040】
勿論、上記の議論はまた、前記調理媒体および香味放出材料が加熱されるときにも有効である。例えば、下記の実施例2に従ってチップを油で揚げるとき(この場合、香味放出材料は揚げる前にチップに添加される)、香料は本発明に従って植物繊維材料のキャビティーの中に維持され、従って、前記調理媒体(この場合は揚げ物油)の中に有意な程度に移行することはない。
【0041】
この関連において、「キャビティーの中に知覚的に維持される」とは、本発明による香味放出材料が、特定の食品について決定された時間だけ、調理媒体中での食品処理において195℃以下に保持され得ること、および香味放出材料からの香料の如何なる実質的な喪失も伴わずに熱に露出され得ることを意味する。香料の「実質的な喪失」とは、添加される香味、即ち、香料によって加えられる初期の香味に影響する香料の喪失を意味し、これは味覚パネルによって実証され得るであろう。個々の香料成分は定量的には同定されないが、幾つかのこのような成分からなる群において定性的に同定されるので、「実質的な喪失」の概念は定量することはできず、「添加された香味」の概念に関連付けられなければならない。
【0042】
しかし、香味放出材料が種々の食品において異なる方法で消費されるときには、香料の制御放出を得るのが望ましい。従って、本発明の好ましい実施形態は、チューイングする際に、口腔中において唾液を介して脂肪相から水相へと移行するとき、即ち、油もしくは脂肪溶液から唾液へと移行するときに、前記少なくとも一つの親油性香料が放出される香味放出材料である。この点において、機械的動作、即ちチューイングの速度もまた、この移行が如何に迅速に進行するかにとって重要である。
【0043】
香味放出材料は食品での応用を意図している。従って、本発明の一つの実施形態は、本発明による香味放出材料を含んでなる食品である。
【0044】
植物繊維材料のキャビティー内の香料は、食品処理において195℃以下の温度で熱に露出されたときにもそれほど放出されないので、本発明のもう一つの好ましい実施形態は、本発明による香料放出材料を含んでなる食品であり、該食品は、例えば揚げ物、フライ、煮沸、直火焼き、ベーキング、押し出し、マイクロ波オーブン中での加熱またはオーブン中での加熱のような熱処理への露出に適している。斯かる食品の例は、チップ、クリスプ、スナック製品、パン製品、ビスケット、押し出し製品、および肉製品である。もう一つの実施形態は、本発明による香味放出材料を含んでなるスパイス混合物またはパン粥である。本発明による香味放出材料は、食品の外側に適用することができ、または食品の成分として作用することができる。
【0045】
殆ど全ての食品適用は65℃〜195℃の温度で行われるので、これはまた、本発明による香味放出材料を含んでなる食品の熱処理のための正常な範囲でもある。
【0046】
香味放出材料および該食品放出材料を含む食品の外に、本発明はまた、上記で述べたことに従う食品における香味放出材料の使用を含むものである。
【0047】
更に、本発明は、本発明による香味放出材料の製造方法であって、少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分が植物繊維材料と混合され、該溶液は植物繊維材料のキャビティーに適用される方法に関する。
【0048】
この場合、該方法の好ましい実施形態は、セルロースおよび/またはヘミセルロースを含んでなる植物繊維を用いて当該方法を実施することである。
【0049】
また、中空構造、好ましくはネットワーク構造を有する植物繊維材料を用いて本発明を実施するのも好ましい。ポテト繊維は特に好ましい植物繊維材料であり、特に、Lyckeby・Culinar・AB(Kristianstad,Sweden)から得た製品コード15077または15078(2006年4月)のもの等である。
【0050】
当該方法の好ましい実施形態において、少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分を含んでなる、全重量に基づいて55重量%以下の前記溶液が植物繊維材料の中に組込まれる。
【0051】
加えて、デンプン含量が全重量に基づいて16重量%以下である植物繊維材料を用いて、当該方法を実施するのが好ましい。
【0052】
更に、少なくとも一つの親油性成分および少なくとも一つの親油性香料の分子状溶液を用いて、当該方法を実施するのが好ましい。
【0053】
本発明のもう一つの実施形態は、本発明による香味放出材料を含んでなる食品を製造する方法であって、該香味放出材料が、混合、タンブリング、スプリンクリング、または噴霧によって食品に添加される方法である。
【0054】
最後に、本発明のもう一つの実施形態は、スパイス混合物を製造する方法であって、基本スパイス混合物が前記香味放出材料と混合される方法である。
【実施例および図面の説明】
【0055】
図1A〜図5Aおよび図1B〜図5Bには、偏光での顕微鏡的実験の写真が示されている。これらの実験においては、異なる種類の植物繊維が、それらのデンプン含量に起因して前記香料および油の溶液をどの程度充分に組み込み、またどの程度吸収するかを見出すために、香料(パプリカオレオ樹脂)および親油性成分(この場合は菜種油)の溶液が種々の植物繊維材料に混合された。植物繊維材料に香料および油の溶液を混合して粉末またはペーストを入手した後、即ち、香料および油の溶液が繊維材料に組込まれるように混合した後、この粉末またはペーストを、下方の対物ガラスと上方のカバーガラスの間に配置した。その後、特定の繊維材料が、現実に、香料および油の溶液をどのように取り込むかが研究された。A図1A〜5Aにおける写真は、下方の対物ガラスから示されており(即ち、特定の繊維材料が見える)、またB図1B〜5Bの写真は、上方のカバーガラスから示されている。B図1B〜5Bは、如何に多くの油、または如何に多く且つ如何に大きな油滴が上方のカバーガラス上に存在するかを示しており、これらはそれ自体として特定の繊維材料が如何に多くの油を取り込むかの尺度である。カバーガラス上の油が少ないほど、繊維材料はより良好に、香料および油の溶液を取込むことができる。カバーガラス上に油が見えれば、それは保持されずに繊維マトリックスに結合されたものである。B図1B〜5Bの比較から、ポテト繊維型[この場合にはLyckeby・Culinar・AB(Kristianstad,Sweden)から得たポテト繊維であり、製品コード15077または15078(2006年4月)のもの]を使用したときには、他の繊維型に比較して遥かに少ない油がカバーガラス上に存在するように思える。このポテト繊維の製造は、EP0413681B1の請求項1に開示されている。
【実施例】
【0056】
以下の実施例は、本発明を例示することを目的とするものであり、本発明を限定するものと看做されるべきではない。
【0057】
植物繊維材料、油または脂肪および香料を用いた本発明による香味放出材料は、例えば、特定の成分の如何なる所定量にも限定されず、適用に応じて変化し得るものである。
【0058】
比較例1:他の植物繊維材料に比較した香味キャリアとしての、Lyckeby・Culinar・ABから得たポテト繊維
実施例1は、上記の図に関連して解釈されるべきである。
【0059】
次の繊維が比較された:Lyckeby・Culinar・ABから入手したポテト繊維、Vitacel・WF200およびVitacel・WF650(セルロース繊維)、竹繊維、Fibrex(砂糖ビーツの粉砕繊維)およびCentutex(エンドウ豆繊維)。
【0060】
全ての繊維に20%の油(80g繊維+20g菜種油およびオレオ樹脂)を混合した。使用されたこの混合物は、Cyclomix・5Lのタイプであり、Hosokawa・Micronによって製造されたものである。
【0061】
<粉末としての取り扱い性能>
全ての繊維は、それらのデンプン含量により20%以下の油を取り込み、ある程度は吸収したが、それらは様々に挙動した。
【0062】
ビーツ繊維およびエンドウマメ繊維はむしろ同様に挙動した。それらは取り扱い可能な粉末であったが、該粉末は保存容器のプラスチック壁に付着し、該壁は油性になった。
【0063】
Vitacel・WF繊維および竹繊維は同様に挙動した。それらは前記油を取り込んだが、小さな束を形成し、粉末としては挙動しなかった。竹繊維は、Vitacel・WFよりも均一であった。
【0064】
Lyckeby・Culinar・ABから得たポテト繊維は、最もよく機能する繊維であった。それはビーツ繊維およびエンドウマメ繊維と同じ粉末挙動を有していたが、容器の壁に付着するものは少なく、油で汚れた皮膜で覆われることはなかった。
【0065】
<顕微鏡観察>
・Lyckeby・Culinar・ABから得たポテト繊維
前記油は均一に分布するように見え、またセルの中にも存在した。顕微鏡観察において、カバーグラス上には少しの油しか見られなかった。Lyckeby・Culinar・ABから得たポテト繊維は、幾つかの部分は完全に油で覆われ且つ肉眼ではコンパクトな粒子に見えた事実にもかかわらず、その開放構造を維持した。これは、油に3%パプリカオレオ樹脂を混合したとき(図1Cに示す)に、更に良好に見える。
【0066】
・Vitacel
Vitacel・WF200およびWF650。それらは、繊維長において異なっていた。顕微鏡観察によって、Lyckeby・Culinar・ABから得たポテト繊維とは完全に異なる構造が示された。該繊維は細いセルロース繊維からなっていた。特にWF650の場合に、幾つかの油滴がカバーガラスに付着した(図2Aおよび図2B参照)。
【0067】
・竹繊維
竹繊維(Justfibre)は、Vitacelにおけるとほぼ同じ方法で挙動し、また細いセルロース繊維からなっていた。少しの油しかカバーガラスに付着しなかった(図3A参照)。
【0068】
・Fibrex
Fibrex(粉砕されたビーツ繊維)は、カバーガラス上で油を放出した粗い小片からなっており、これは該油の殆どが繊維の表面にあったことを示した(図4Aおよび図4B)。
【0069】
・Centutex
Centutex(エンドウマメ繊維)もまた硬い小片からなっており、これは表面に油を有し且つ油を放出した。この油はカバーグラス上に見られた(図5Aおよび図5B参照)。
【0070】
<結論>
全ての異なる種類の植物繊維材料が使用に適合したが、該繊維材料の中空構造は、少なくとも一つの油または脂肪(親油性成分)および少なくとも一つの親油性香料を備えた溶液を取り込み、且つより効率的に保護することを可能にする。換言すれば、ポテト繊維は好ましい繊維型であり、Lyckeby・Culinar・ABから得たポテト繊維のネットワーク構造は、本発明のために特に好ましいものである。
【0071】
上記構造の研究は、Lyckeby・Culinar・ABから得たポテト繊維が独特の構造を有し、これは空隙セルの特別に効率的なシステムによって、高度に効率的な方法で香味を保護し、それによって香料の遅延放出を可能にできることを示している。上記の図は、Lyckeby・Culinar・ABから得たポテト繊維が最もよく油を取り込むことを示したが、このことは、この繊維型を使用したときに上方のカバーガラス上に存在する油が最も少ないことによって示された。
【0072】
実施例2:本発明による香味放出材料で香料を付与したチップ
適切な温度で処理された後に分割または切断され、乾燥されたポテトを、本発明による香味放出材料と共にパン粥を含んでなるパン粥混合物の中に浸漬させた。
【0073】
本発明による香味放出材料を含むパン粥中に浸漬して得た上記ポテト小片を、続いて195℃で45秒間だけ油で揚げ、次いで冷却させた。その後、それらは小片の形態で凍結させた。
【0074】
得られた食品(この場合はチップ)が消費されるべきときには、それを175〜180℃で約3分間だけ適切に油で揚げる。本発明による香味放出材料を使用することにより、当初に意図された香料プロファイルは、油で揚げた後、チップを消費するときにも維持される。
【0075】
当該香味放出材料中の添加された香料に由来する付加された香味は、該チップを食べるときに明瞭に知覚される。冷凍機中で2週間保存した後に評価を行ったが、この場合にも香料は明瞭に知覚可能であった。幾つかの場合、チップの消費者は、保存の後には香味が同じではなく向上したと看做した。何れにしても、香味は減少しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1a】図1aは、20%の油と混合した後の、Lyckeby・Culinar・ABから入手したポテト繊維型のネットワーク構造を示している。
【図1b】図1bは、Lyckeby・Culinar・ABから入手したポテト繊維を用いて行った実験において、カバーガラス上に現れる油滴を示している。
【図1c】図1cは、67%のポテト繊維、30%の油、および3%のパプリカオレオ樹脂と混合した後の、Lyckeby・Culinar・ABから入手したポテト繊維を示している。図1cは、この繊維型が香料と共に油を如何に十分に取り込むかを、更に明瞭に示している。赤色を添加することによって、香料と共に油が繊維を通して直接吸収されることが明瞭に見られ、これは繊維のネットワーク構造が、キャビティー中の油および香料と共に、放出または崩壊を伴うことなく維持されることを意味する。
【図2a】図2aは、20%油と混合された後の、Vitacel・200WF型(製造元:J・Rettenmailer・&・Sohne,Food・Division,Germany)セルロースの個々の繊維を示している。
【図2b】図2bは、Vitacel・200WF(製造元:J・Rettenmailer・&・Sohne,Food・Division,Germany)を用いた実験において、カバーガラス上に現れる油滴を示している。この場合、Lyckeby・Culinar・ABから得たポテト繊維を用いた実験におけるよりも、遥かに多くの油がカバーガラス上に存在した。
【図3a】図3aは、20%の油と混合した後の、竹繊維型(Justfibre)(Internatinal・Fitre・Europe・N.V.,Belgiumにより改良された)の個々の繊維を示している。
【図4a】図4aは、20%の油と混合した後の、Fibrex型(砂糖ビーツ)(製造元:Danisco,Sweeden)の繊維材料を示している。
【図4b】図4bは、Fibrexを用いて行われた実験において、カバーガラス上に現れた油滴を示している。この場合、Lyckeby・Culinar・ABから得たポテト繊維を用いた実験におけるよりも、遥かに多くの油がカバーガラス上に存在した。
【図5a】図5aは、20%の油と混合した後の、Centutex型(エンドウマメ繊維)(製造元:Parrheim・Foods,Canada)の繊維材料を示している。
【図5b】図5bは、Centutexを用いて行われた実験において、カバーガラス上に現れた油滴を示している。この場合、Lyckeby・Culinar・ABから得たポテト繊維を用いた実験におけるよりも、遥かに多くの油がカバーガラス上に存在した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然もしくは人工のキャビティーを備えた植物繊維材料と、少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分を含有する溶液とを含んでなり、該溶液は前記キャビティーに適用されて香料の制御放出を提供することを特徴とする香味放出材料。
【請求項2】
請求項1に記載の香味放出材料であって、前記植物繊維材料が、セルロースおよび/またはヘミセルロースを含んでなる繊維材料である香味放出材料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の香味放出材料であって、前記植物繊維材料が中空構造を有する香味放出材料。
【請求項4】
請求項3に記載の香味放出材料であって、前記中空構造がネットワーク構造である香味放出材料。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の香味放出材料であって、前記植物繊維材料がポテト繊維である香味放出材料。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の香味放出材料であって、全重量に基づいて55重量%以下の、前記少なくとも一つの親油性成分および前記少なくとも一つの親油性香料が前記植物繊維材料の中に組込まれ、該香味放出材料が粉末状である香味放出材料。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の香味放出材料であって、前記植物繊維材料のデンプン含量が、全重量に基づいて16重量%以下である香味放出材料。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の香味放出材料であって、前記溶液が分子状溶液の形態である香味放出材料。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載の香味放出材料であって、溶液で前記キャビティーに適用された前記少なくとも一つの親油性香料が、前記香味放出材料が調理媒体に接触するときに、前記調理媒体への如何なる有意な移行も伴わずに前記植物繊維材料のキャビティー内に知覚的に維持される香味放出材料。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載の香味放出材料であって、前記少なくとも一つの親油性香料は、チューイングするときに唾液を介して、口腔中において脂肪相から水相へと移行することにより放出される香味放出材料。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載の香味放出材料を含んでなる食品。
【請求項12】
請求項11に記載の食品であって、熱に露出されることができる特定の食品について決定される時間だけ、前記食品が195℃以下の温度で加熱されるときに、前記少なくとも一つの親油性香料が前記植物性繊維材料のキャビティーの中に維持される食品。
【請求項13】
請求項12に記載の食品であって、前記熱への露出は、揚げ物、フライ、煮沸、直火焼き、ベーキング、押し出し、マイクロ波オーブン中での加熱またはオーブン中での加熱からなる群から選択される食品。
【請求項14】
請求項11〜13の何れか1項に記載の食品であって、前記食品はチップ、クリスプ、スナック製品、パン製品、ビスケット、押し出し製品、および肉製品からなる群から選択される食品。
【請求項15】
請求項1〜10の何れか1項に記載の香味放出材料を含んでなるスパイス混合物またはパン粥。
【請求項16】
195℃以下の温度で熱処理されるように適合される食品と共に、または該食品における、請求項1〜10の何れか1項に記載の香味放出材料の使用。
【請求項17】
請求項16に記載の香味放出材料の使用であって、65℃〜195℃以下の温度で熱処理されるように適合される食品と共に、または該食品における使用。
【請求項18】
請求項16または17に記載の香味放出材料の使用であって、前記食品は、チップ、クリスプ、スナック製品、パン製品、ビスケット、押し出し製品、および肉製品からなる群から選択される使用。
【請求項19】
請求項16または17に記載の香味放出材料の使用であって、スパイス混合物またはパン粥における使用。
【請求項20】
請求項16〜19の何れか1項に記載の香味放出材料の使用であって、前記食品または前記スパイス混合物もしくはパン粥は、揚げ物、フライ、煮沸、直火焼き、ベーキング、押し出し、マイクロ波オーブン中での加熱またはオーブン中での加熱によって熱処理されるように適合される使用。
【請求項21】
香味放出材料を製造する方法であって、少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分を含有する溶液が、天然または人工のキャビティーを備えた植物性繊維材料と混合され、前記溶液は前記植物性繊維材料のキャビティーに適用される方法。
【請求項22】
請求項21に記載の香味放出材料を製造する方法であって、前記植物繊維材料が、セルロースおよび/またはヘミセルロースを含んでなる方法。
【請求項23】
請求項21または22に記載の香味放出材料を製造する方法であって、前記植物繊維材料が中空構造を有する方法。
【請求項24】
請求項23に記載の香味放出材料を製造する方法であって、前記中空構造がネットワーク構造である方法。
【請求項25】
請求項21〜24の何れか1項に記載の香味放出材料を製造する方法であって、前記植物繊維材料がポテト繊維である方法。
【請求項26】
請求項21〜25の何れか1項に記載の香味放出材料を製造する方法であって、全重量に基づいて55重量%以下の、前記少なくとも一つの親油性成分および前記少なくとも一つの親油性香料を含んでなる前記溶液が前記植物繊維材料の中に組込まれ、該香味放出材料が粉末状である方法。
【請求項27】
請求項21〜26の何れか1項に記載の香味放出材料を製造する方法であって、前記植物繊維材料のデンプン含量が、全重量に基づいて16重量%以下である方法。
【請求項28】
請求項21〜27の何れか1項に記載の香味放出材料を製造する方法であって、前記溶液が分子状溶液の形態である方法。
【請求項29】
請求項11〜14の何れか1項に記載の食品を製造する方法であって、前記香味放出材料が混合、タンブリング、スプリンクリング、または噴霧によって前記食品に添加されることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項15に記載のスパイス混合物またはパン粥を製造する方法であって、基本スパイス混合物に前記香味放出材料が混合される方法
【請求項1】
天然もしくは人工のキャビティーを備えた植物繊維材料と、少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分を含有する溶液とを含んでなり、該溶液は前記キャビティーに適用されて香料の制御放出を提供することを特徴とする香味放出材料。
【請求項2】
請求項1に記載の香味放出材料であって、前記植物繊維材料が、セルロースおよび/またはヘミセルロースを含んでなる繊維材料である香味放出材料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の香味放出材料であって、前記植物繊維材料が中空構造を有する香味放出材料。
【請求項4】
請求項3に記載の香味放出材料であって、前記中空構造がネットワーク構造である香味放出材料。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の香味放出材料であって、前記植物繊維材料がポテト繊維である香味放出材料。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の香味放出材料であって、全重量に基づいて55重量%以下の、前記少なくとも一つの親油性成分および前記少なくとも一つの親油性香料が前記植物繊維材料の中に組込まれ、該香味放出材料が粉末状である香味放出材料。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の香味放出材料であって、前記植物繊維材料のデンプン含量が、全重量に基づいて16重量%以下である香味放出材料。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の香味放出材料であって、前記溶液が分子状溶液の形態である香味放出材料。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載の香味放出材料であって、溶液で前記キャビティーに適用された前記少なくとも一つの親油性香料が、前記香味放出材料が調理媒体に接触するときに、前記調理媒体への如何なる有意な移行も伴わずに前記植物繊維材料のキャビティー内に知覚的に維持される香味放出材料。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載の香味放出材料であって、前記少なくとも一つの親油性香料は、チューイングするときに唾液を介して、口腔中において脂肪相から水相へと移行することにより放出される香味放出材料。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載の香味放出材料を含んでなる食品。
【請求項12】
請求項11に記載の食品であって、熱に露出されることができる特定の食品について決定される時間だけ、前記食品が195℃以下の温度で加熱されるときに、前記少なくとも一つの親油性香料が前記植物性繊維材料のキャビティーの中に維持される食品。
【請求項13】
請求項12に記載の食品であって、前記熱への露出は、揚げ物、フライ、煮沸、直火焼き、ベーキング、押し出し、マイクロ波オーブン中での加熱またはオーブン中での加熱からなる群から選択される食品。
【請求項14】
請求項11〜13の何れか1項に記載の食品であって、前記食品はチップ、クリスプ、スナック製品、パン製品、ビスケット、押し出し製品、および肉製品からなる群から選択される食品。
【請求項15】
請求項1〜10の何れか1項に記載の香味放出材料を含んでなるスパイス混合物またはパン粥。
【請求項16】
195℃以下の温度で熱処理されるように適合される食品と共に、または該食品における、請求項1〜10の何れか1項に記載の香味放出材料の使用。
【請求項17】
請求項16に記載の香味放出材料の使用であって、65℃〜195℃以下の温度で熱処理されるように適合される食品と共に、または該食品における使用。
【請求項18】
請求項16または17に記載の香味放出材料の使用であって、前記食品は、チップ、クリスプ、スナック製品、パン製品、ビスケット、押し出し製品、および肉製品からなる群から選択される使用。
【請求項19】
請求項16または17に記載の香味放出材料の使用であって、スパイス混合物またはパン粥における使用。
【請求項20】
請求項16〜19の何れか1項に記載の香味放出材料の使用であって、前記食品または前記スパイス混合物もしくはパン粥は、揚げ物、フライ、煮沸、直火焼き、ベーキング、押し出し、マイクロ波オーブン中での加熱またはオーブン中での加熱によって熱処理されるように適合される使用。
【請求項21】
香味放出材料を製造する方法であって、少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分を含有する溶液が、天然または人工のキャビティーを備えた植物性繊維材料と混合され、前記溶液は前記植物性繊維材料のキャビティーに適用される方法。
【請求項22】
請求項21に記載の香味放出材料を製造する方法であって、前記植物繊維材料が、セルロースおよび/またはヘミセルロースを含んでなる方法。
【請求項23】
請求項21または22に記載の香味放出材料を製造する方法であって、前記植物繊維材料が中空構造を有する方法。
【請求項24】
請求項23に記載の香味放出材料を製造する方法であって、前記中空構造がネットワーク構造である方法。
【請求項25】
請求項21〜24の何れか1項に記載の香味放出材料を製造する方法であって、前記植物繊維材料がポテト繊維である方法。
【請求項26】
請求項21〜25の何れか1項に記載の香味放出材料を製造する方法であって、全重量に基づいて55重量%以下の、前記少なくとも一つの親油性成分および前記少なくとも一つの親油性香料を含んでなる前記溶液が前記植物繊維材料の中に組込まれ、該香味放出材料が粉末状である方法。
【請求項27】
請求項21〜26の何れか1項に記載の香味放出材料を製造する方法であって、前記植物繊維材料のデンプン含量が、全重量に基づいて16重量%以下である方法。
【請求項28】
請求項21〜27の何れか1項に記載の香味放出材料を製造する方法であって、前記溶液が分子状溶液の形態である方法。
【請求項29】
請求項11〜14の何れか1項に記載の食品を製造する方法であって、前記香味放出材料が混合、タンブリング、スプリンクリング、または噴霧によって前記食品に添加されることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項15に記載のスパイス混合物またはパン粥を製造する方法であって、基本スパイス混合物に前記香味放出材料が混合される方法
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図1b】
【図1c】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【公表番号】特表2009−534050(P2009−534050A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507624(P2009−507624)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000390
【国際公開番号】WO2007/123466
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(508318834)リケビー・クリナル・エービー (1)
【氏名又は名称原語表記】Lyckeby Culinar AB
【住所又は居所原語表記】Box 45, S−290 34 Fjaelkinge, Sweden
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000390
【国際公開番号】WO2007/123466
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(508318834)リケビー・クリナル・エービー (1)
【氏名又は名称原語表記】Lyckeby Culinar AB
【住所又は居所原語表記】Box 45, S−290 34 Fjaelkinge, Sweden
【Fターム(参考)】
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