説明

香味油

【課題】 長ネギを香味材として利用した香味油において、食感と香味を楽しむことができるものを提供すること。
【解決手段】 香味のベースとなる長ネギは、長さ3mm〜10mm、幅2mm〜5mm程度の大きさに細断加工する。また、香味付けは、室温下に置いた菜種油1000mlを加熱するのと同時に長ネギの細断片を加え、80℃〜120℃の温度範囲になるまで加熱する、つまり対象物を揚げずに油通しすることによって行う。食感のベースとなる玉ネギの加工品は、適度な食感を持たせるために長さ5mm〜15mm、幅5mm〜15mm程度の大きさに細断加工したものを、90℃〜120℃の温度範囲にある植物性油脂で油通し処理したものを用いる。このように加工することによって、玉ネギの加工品にサクサクとした歯触りが残って食感が良くなる上に玉ネギの甘みが唐辛子等の香味料の風味を減殺することを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長ネギを香味材として利用した香味油に関し、特に食感と香味を楽しむことができる香味油に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、香味油、特に中国四川省由来の辣油やこれに類する香味油は、唐辛子、長ネギ、山椒、生姜、ニンニクなどの香味材を140℃から180℃程度の比較的高温となるように加熱した油脂に加えて、香味材の香味を付加しているものが一般的である。このような香味油においては、従来からの用途である餃子やラーメンに加えて、肉料理や魚料理、サラダ、米飯などに対しても利用されるようになっている。利用範囲が広がってくると、味の良さに加えて香味の良さや高さが製品の課題となってくる。
【0003】
例えば、特開平11−206336公報で開示された食品では、ネギ(長ネギ)の成分を含む食品において、ネギの成分と共に、ベンズアルデハイド、胡椒、カルダモン、ジンジャー、酢酸からなる群から選ばれた1以上を加えることによって、ネギの香りを強化する技術が開示されている。また、特開2007−6851公報で開示された香味油の製造方法では、油糧種子と香辛料を同時に圧搾することによって、香辛料に含まれている成分を植物油中に移行させることができ、それぞれの原料が持つ特有の香味をそのまま生かせるようにした技術が開示されている。
【0004】
ところで、最近では、油脂を主体とした従来の香味油のほかに、油脂に添加した各種の香味材自体の食感、つまり具材のような歯ごたえも楽しむことができる香味油が求められている。しかし、上述の2つの技術は、香味材の食感を楽しむことに対応したものではない。また、特開平11−206336公報で開示された食品の製造方法によれば、食品中に香味を抽出した長ネギが残ることになる。ところが、加熱して香味を抽出した長ネギは紙のように薄くなるので、食感がほとんどない上に、その食感自体もあまり好ましいとは言えない。また、この公報で開示されている香味を抽出したジンジャーなどは、長ネギと相当に異なる香味があるので、仮にこのようなものを食感向上のために意図的に残留させると、長ネギの繊細な香味を減殺するという副次的な問題を生じることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−206336公報
【特許文献2】特開2007−6851公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、長ネギを香味材として利用した香味油において、食感と香味を楽しむことができるものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、唐辛子の加工品及び玉ネギの加工品と、植物性油脂を含み、長ネギの香味がある香味油であって、前記玉ネギの加工品は、玉ネギを細断した後に、油通し処理、熱風乾燥処理、マイクロ波乾燥処理のうちいずれかの処理をしたものであり、前記植物性油脂は、細断した長ネギを加えた後、所定温度で加熱処理をすることによって前記長ネギの香味を付加したものであることを特徴とする香味油である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記植物性油脂は、室温又はその近傍の温度にある前記植物性油脂に細断した前記長ネギを加え、その後、80℃から120℃の温度範囲になるまで前記植物性油脂を加熱することによって加熱処理をしたものであることを特徴とする香味油である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記玉ネギの加工品は、室温又はその近傍の温度にある油脂に細断した玉ネギを加え、その後、90℃から120℃の温度範囲になるまで前記油脂を加熱することによって油通し処理をしたものであることを特徴とする香味油である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の発明において、前記唐辛子の加工品は、細断して乾燥処理した唐辛子に対して、前記植物性油脂が前記加熱処理をされた後で90℃から120℃の温度範囲になったときに前記植物性油脂の一部を絡め、その後、前記植物性油脂の残りを加熱して150℃から250℃の温度範囲になったときに再度前記植物性油脂の前記残りを絡めたものであることを特徴とする香味油である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記植物性油脂は、所定温度で加熱処理をした後、細断した前記長ネギを除去したものであることを特徴とする香味油である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、食感を楽しむための素材として、長ネギと同じネギ科ネギ属であり、硫化アリルなどの風味を持っている点で共通する玉ネギを利用しているので、長ネギの香味に対する違和感なしに香味油の香味と食感との両方を楽しむことができる。また、玉ネギは、油通し処理、熱風乾燥処理、マイクロ波乾燥処理のうちいずれかの処理をしているので、玉ネギ独特の辛み又は苦みを低減でき、長ネギの香味に調和した風味になる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、植物性油脂の温度が室温又はその近傍度から80℃から120℃の温度範囲に至るまでの間において加熱するので、長ネギが焦げつくことに起因する苦みを低減することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、玉ネギの加工品は、室温又はその近傍の温度にある油脂に細断した玉ネギを加え、その後、90℃から120℃の温度範囲になるまで油脂を加熱することによって油通し処理をしたものであるので、玉ネギを焦げ付かせることなく玉ネギの水分を飛ばすことができる。したがって、玉ネギを焦げ付かせることなく玉ネギ独特の辛み又は苦みを低減できる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、細断して乾燥処理した唐辛子に90℃から120℃の温度範囲の植物性油脂を絡め、その後、150℃から250℃の温度範囲の植物性油脂を絡めるので、150℃から250℃の植物性油脂を絡めたときに、細断して乾燥処理した唐辛子と比較的高温の植物性油脂とが直接接することがなく、細断して乾燥処理した唐辛子が焦げ付くことを低減することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、香味を抽出した長ネギを除去することによって、香味油の食感を味わうときに焦げ臭みや、紙を食べているような好ましくない歯ごたえを感じることを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態に係る香味油について説明する。本発明に係る香味油は、長ネギの香味があり、唐辛子の加工品と共に、歯触りなどの食感を持たせるために玉ネギの加工品を加えたものである。したがって、本発明に係る香味油は、従来の辣油と同様に、ラーメンや、チャーハン、麻婆豆腐、担担麺、焼餃子、青椒肉絲、回鍋肉などの各種中華料理に利用できることに加えて、ステーキ、焼き肉、シシカバブーなどの肉料理、ムニエル、竜田揚げなどの魚料理、山海鍋などの鍋料理、チャンプルー、スパゲッティ、ピザ、カレー、ソムタム、トムヤムクン、フォー、タコス、ブリート、ハンバーガー、サンドウィッチ、肉団子、春巻き、サラダ、おかゆ、リゾット、ピラフ、おにぎり、ビーフンなどにも利用できる。すなわち、従来の辣油の用途を超えて、いわゆる調味油やドッレッシングのように、料理の味及び香りを引き立て、同時に香味油自体の味及び香りを楽しむことができるものである。
【0018】
本発明に係る香味油は、植物性油脂に長ネギの香味を加え、さらに唐辛子の加工品による辛みと、玉ネギの加工品による食感を持たせ、さらに玉ネギの香りもある程度残るようにしたものであり、素材として、植物性油脂、長ネギ、唐辛子及び玉ネギは必須のものである。しかし、後述するように、用途に合わせて、ニンニクや、ごまなどの香味材をさらに加える、あるいは、オリーブ油などを混合して用いてもよい。
【0019】
香味油のベースとなる植物性油脂は、菜種油、綿実油、大豆油、ごま油、紅花油、ひまわり油、とうもろこし油、米糠油及びピーナッツ油のうちから選ばれる少なくとも1種以上の油を用いる。さらに、香味付けの対象となる料理によっては、オリーブ油、椿油、アボカド油などを加えてもよい。
【0020】
香味のベースとなる長ネギは、長さ3mm〜10mm、幅2mm〜5mm程度の大きさに細断加工する。加工には、フードカッターや、フードプロセッサー、カッターミキサーなどを用いる。また、香味付けは、例えば室温下に置いた菜種油1000mlを加熱するのと同時に長ネギの細断片を加え、80℃から120℃の温度範囲、さらに好ましくは90℃から110℃の温度範囲になるまで加熱する、つまり対象物を揚げずに油通しすることによって行う。なお、加熱処理後の長ネギの細断片は、すでに香味成分が抽出されており、またこの細断片の量が相対的に多いと紙を食べているような好ましくない歯ごたえがあるので、濾過などの方法で除去してもよい。
【0021】
唐辛子の加工品としては、唐辛子を天日干しなどで乾燥させたものを長さ3mm〜5mm、幅1mm〜3mm程度の大きさに細断加工したものを用いる。なお、辛みを押さえたい場合には、これより大きくなるように細断加工する。また、辛み又は食感の調整のために、唐辛子の種をすべて除去せず加工品の一部として残してもよい。従来の辣油に即した用途においては、種を一部残すことが好ましいが、すべての種を除去してもよい。さらに、すべての種を残してもよい。
【0022】
なお、唐辛子の加工品に植物性油脂を加える際には、唐辛子の細かい粒子が焦げ付かないようにするために、以下の手順に従うことが好ましい。すなわち、植物性油脂に対して後述する長ネギの香味を付加するための加熱処理を行った後、この植物性油脂が唐辛子の細かい粒子が焦げ付かない温度である90℃から120℃の温度範囲になったときに唐辛子の加工品に植物性油脂の一部を絡める。その後、植物性油脂の残りを再度加熱して150℃から250℃の温度範囲になったときに植物性油脂の残りを絡めながら徐々に浸してゆく。このようにすると、唐辛子の細かい粒子が焦げ付かない温度範囲にある植物性油脂に唐辛子の加工品の表面が覆われた状態になるので、150℃から250℃の温度範囲にある植物性油脂を絡めたときに、唐辛子の加工品がこの相対的に高温の植物性油脂と直接接することがなく、唐辛子の細かい粒子の焦げ付きを防ぐことができる。さらに、150℃から250℃の温度範囲にある植物性油脂を直接絡めたときよりも、唐辛子の鮮やかな赤い色が比較的良く保たれるという利点もある。
【0023】
食感のベースとなる玉ネギの加工品は、適度な食感を持たせるために長さ5mm〜15mm、幅5mm〜15mm程度の大きさに細断加工したものを、油通し処理、熱風乾燥処理、マイクロ波乾燥処理のうちいずれかの処理によって水分がない又は非常に少ない状態にしたものを用いる。このように加工することによって、玉ネギの加工品にサクサクとした歯触りが残って食感が良くなる上に、玉ネギの甘みが唐辛子等の香味料の味を減殺することを防ぐことができる。つまり、食感を楽しむために玉ネギの加工品を加えるのであるが、玉ネギの強い甘みや、やや刺激の強い香りで長ネギの香味や唐辛子の辛みを損なうという副次的な問題を生じないようにするために、水分がない又は非常に少ない状態にしたものを用いるのである。くわえて、玉ネギの香りも残すことができる。なお、熱風乾燥処理及びマイクロ波乾燥処理では、玉ネギの水分、特に小さい細断片の水分を過剰に奪う傾向があるので、後述するように、最高温度を90℃から120℃の範囲とした植物性油脂で油通し処理を行う方が望ましい。
【0024】
さらに、香味材又は食感材として、ニンニク、ごま、山椒、茴香、香菜、生姜、干しぶどう、サンザシ、イチジク、ピーナッツ、松の実、桂皮、陳皮、セロリ、カルダモン、パプリカ、ウコン、アーモンド、ピスタチオ、カシューナッツ、マカダミアナッツ、ナツメ、クルミ、搾菜、エビ、シラス又はチリメンジャコの加工品のうちから選ばれる少なくとも1種以上のものを加えてよい。特に、山椒は、舌にピリピリとした刺激があると同時に、唐辛子と調和する香味を持っているので、本発明に係る香味油を中国・四川料理に加える場合には特に好適と言える。
【0025】
[実施例1]
長ネギの香味を付加した植物性油脂を以下の5つの条件で作って比較した。すなわち、予め、フードプロセッサーで長ネギを細断し、長さ3mm〜10mm、幅2mm〜5mmの大きさにした細断片を200gずつ5つ作っておく。また、長時間室温(約25℃)下に置いた菜種油を1000mlずつ5つ準備しておく。そして、a.長時間室温(約25度)下に置いた菜種油1000mlを鍋に入れてガスコンロで加熱するのと同時に、長ネギの細断片を鍋に入れ、90℃になるまで加熱し、90℃になったらこの温度のまま1分加熱して油通しを行う、b.長時間室温(約25度)下に置いた菜種油1000mlを鍋に入れてガスコンロで加熱するのと同時に、長ネギの細断片を鍋に入れ、100℃になるまで加熱し、100℃になったらこの温度のまま1分加熱して油通しを行う、c.長時間室温(約25度)下に置いた菜種油1000mlを鍋に入れてガスコンロで加熱するのと同時に、長ネギの細断片を鍋に入れ、110℃になるまで加熱し、110℃になったらこの温度のまま1分加熱して油通しを行う、d.長時間室温(約25度)下に置いた菜種油1000mlを鍋に入れてガスコンロで加熱するのと同時に、長ネギの細断片を鍋に入れ、120℃になるまで加熱し、120℃になったらこの温度のまま1分加熱して油通しを行う、e.長時間室温(約25度)下に置いた菜種油1000mlを鍋に入れてガスコンロで加熱し、120℃になったら長ネギの細断片を鍋に入れ、150℃になったらこの温度のまま0.5分加熱を続けて揚げる、の5つを実施例として、冷めた後の外観、香味を比較した。なお、a、b、c、d及びeの全加熱時間は、それぞれ5分、5分、5.5分、6分及び2分である。
【0026】
【表1】

【0027】
表1に示すように、a、b及びcについては、長ネギの焦げ付きはなく、長ネギの香味が植物性油脂に対して十分に付いていた。また、dは焦げ付きがやや多く、焦げ臭みを多少感じた。さらに、長ネギの香味が植物性油脂に対して十分に付いていた。これに対して、eは、すべてが焦げ付いた色を呈していた。また、加熱後の植物性油脂を口に含んだところ、長ネギの焦げ付きによると思われる焦げ臭さを強く感じた。eの最高温度である150℃は、揚げ物を行う際の油温としては必ずしも高くないが、この温度でも細断した長ネギには不適当であることが分かった。
【0028】
さらに、表1の他に、長ネギの細断片を鍋に入れてから植物性油脂の温度が室温から80℃になるまで加熱し、80℃での加熱を1分続けることも実施した。この実施例では、植物性油脂への香味付けは可能であったが、相対的に大きな細断片に多少生っぽさが残った。くわえて、長ネギの細断片を鍋に入れてから植物性油脂の温度が室温から130℃になるまで加熱し、130℃での加熱を0.5分続けることも実施したが、相対的に小さな細断片はほとんどが焦げ付いたように見えた。100℃の植物性油脂に長ネギの細断片を入れてから植物性油脂の温度が120℃になるまで加熱し、120℃での加熱を1分続けることも実施したが、加熱時間が短かったためか、香味付けが十分にできなかった。くわえて、40℃の植物性油脂に長ネギの細断片を入れてから植物性油脂の温度が120℃になるまで加熱し、120℃での加熱を1分続けることも実施したが、これについては満足できる香味付けができた。以上の結果について総合的に考察したところ、植物性油脂がまだ室温又はその近傍の温度であるときに長ネギの細断片を鍋に入れ、直ちに植物性油脂を最高温度90℃から110℃の範囲内になるまで加熱し、この最高温度での加熱を1分続けることによって望ましい香味油が得られることが分かった。くわえて、最高温度を80℃から120℃の範囲としても、大きな細断片に多少生っぽさが残る、あるいは細断片が一部焦げ付くことがあるが、実用的であることが分かった。
【0029】
[実施例2]
さらに、玉ネギについても同様の処理条件で比較した。すなわち、予め、フードプロセッサーで玉ネギを細断し、長さ5mm〜15mm、幅5mm〜15mmの大きさにした細断片を200gずつ5つ作っておく。また、長時間室温(約25℃)下に置いた菜種油を1000mlずつ5つ準備しておく。そして、a.長時間室温(約25度)下に置いた菜種油1000mlを鍋に入れてガスコンロで加熱するのと同時に、玉ネギの細断片を鍋に入れ、90℃になるまで加熱し、90℃になったらこの温度のまま1分加熱して油通しを行う、b.長時間室温(約25度)下に置いた菜種油1000mlを鍋に入れてガスコンロで加熱するのと同時に、玉ネギの細断片を鍋に入れ、100℃になるまで加熱し、100℃になったらこの温度のまま1分加熱して油通しを行う、c.長時間室温(約25度)下に置いた菜種油1000mlを鍋に入れてガスコンロで加熱するのと同時に、玉ネギの細断片を鍋に入れ、110℃になるまで加熱し、110℃になったらこの温度のまま1分加熱して油通しを行う、d.長時間室温(約25度)下に置いた菜種油1000mlを鍋に入れてガスコンロで加熱するのと同時に、玉ネギの細断片を鍋に入れ、120℃になるまで加熱し、120℃になったらこの温度のまま1分加熱して油通しを行う、e.長時間室温(約25度)下に置いた菜種油1000mlを鍋に入れてガスコンロで加熱し、120℃になったら玉ネギの細断片を鍋に入れ、150℃になったらこの温度のまま1分加熱を続けて揚げる、の5つを実施例として、冷えた後の外観、香味を比較した。なお、a、b、c、d及びeの全加熱時間は、それぞれ7分、7分、7.5分、8分及び3分である。
【0030】
【表2】

【0031】
表2に示すように、a、b及びcについては、玉ネギの焦げ付きはなかった。また、dは焦げ付きがやや多く、焦げ臭みを多少感じた。これに対して、eは、すべての細断片の周辺部が焦げ付いた色を呈しており、加熱後の玉ネギの細断片を口に含んだところ焦げ臭さを強く感じた。なお、表2に示した他に、最高温度80℃でも実施したが、この温度では、大きな細断片の一部に生の玉ネギの味が残っていた。これは、玉ネギが長ネギより身が厚いことによると思われる。また、最高温度150℃では、細断片の端部が完全に焦げていた。したがって、玉ネギの加工品については、植物性油脂の最高温度を90℃から120℃の範囲にすることが望ましいと言える。
【0032】
以上のように、本発明の実施の形態に係る香味油は、長ネギの細断片を香味材として利用した香味油において、硫化アリルなどの風味を持っている点で共通する玉ネギの細断片を加えることによって食感と香味を楽しむことができる。また、室温又はその近傍の温度にある植物性油脂に長ネギ及び玉ネギの細断片を入れ、長ネギの細断片については80℃から120℃の温度範囲、玉ネギの細断片については90℃から120℃の温度範囲で加熱することによって、長ネギ及び玉ネギの細断片の焦げ付きを防止することができ、玉ネギの食感と長ネギの香味との両方を楽しめる香味油を作ることができた。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、例えば、植物性油脂に鶏ガラスープ又は白湯スープなどのスープを加える、さらには、ユズ、スダチ、レモン又はシトロンなどの果汁を加えるなど、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
唐辛子の加工品及び玉ネギの加工品と、植物性油脂を含み、長ネギの香味がある香味油であって、
前記玉ネギの加工品は、玉ネギを細断した後に、油通し処理、熱風乾燥処理、マイクロ波乾燥処理のうちいずれかの処理をしたものであり、
前記植物性油脂は、細断した長ネギを加えた後、所定温度で加熱処理をすることによって前記長ネギの香味を付加したものであることを特徴とする香味油。
【請求項2】
前記植物性油脂は、室温又はその近傍の温度にある前記植物性油脂に細断した前記長ネギを加え、その後、80℃から120℃の温度範囲になるまで前記植物性油脂を加熱することによって加熱処理をしたものであることを特徴とする請求項1に記載の香味油。
【請求項3】
前記玉ネギの加工品は、室温又はその近傍の温度にある油脂に細断した玉ネギを加え、その後、90℃から120℃の温度範囲になるまで前記油脂を加熱することによって油通し処理をしたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の香味油。
【請求項4】
前記唐辛子の加工品は、細断して乾燥処理した唐辛子に対して、前記植物性油脂が前記加熱処理をされた後で90℃から120℃の温度範囲になったときに前記植物性油脂の一部を絡め、その後、前記植物性油脂の残りを加熱して150℃から250℃の温度範囲になったときに再度前記植物性油脂の前記残りを絡めたものであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の香味油。
【請求項5】
前記植物性油脂は、所定温度で加熱処理をした後、細断した前記長ネギを除去したものであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の香味油。

【公開番号】特開2012−39902(P2012−39902A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182145(P2010−182145)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(310017677)株式会社 香味堂 (2)
【Fターム(参考)】