説明

香料が塗布されたチューインガムの製造方法

【課題】高さが均一でないチューインガムの表面に、増粘剤及び液体香料を含有する水性液状物の均一量の塗布が安定的に可能な塗布工程を有する、表面に香料が塗布されたチューインガムの製造方法を提供する
【解決手段】高さが均一でないチューインガムの表面に、増粘剤及び液体香料を含有する水性液状物を縞模様状に塗布する工程を有する、表面に香料が塗布されたチューインガムの製造方法であって、多数の塗布ノズル孔を塗布ラインの搬送交差方向に配置して塗布ノズル孔群を形成し、塗布ノズル孔群は櫛状溝を有するシム板を一対の塗布ノズルブロック間に介装することで形成し、塗布ノズル装置のノズルブロックの底面における塗布ノズル孔群の底面開口の形状を四角形とした塗布ノズル装置を使用し、前記水性液状物を塗布ノズル装置のシム板の櫛状溝を通して押し出すことによって塗布することを特徴とする製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面に香料が塗布されたチューインガムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チューインガムの香味発現を早めるために、粉末香料をチューインガム表面に塗布することが知られている。例えば、特許文献1には、粉末香料がプルラン被膜上に付着されていることを特徴とする香味発現チューインガムが記載されている。特許文献1の実施例ではプルラン溶液をチューインガム上に噴霧した後、粉末香料を散布しているので、香料がチューインガム表面に十分均一に被覆されているとは言えない。
【0003】
チューインガム表面を香料で十分均一に被覆するためには、液体香料を含有する液体をチューインガム表面に塗布することが考えられる。そのようなチューインガム表面に液体を塗布することに使用できると考えられる塗布方法としては、スクリーン印刷方式、スプレー噴霧方式、凹版印刷方式、凸版印刷方式、ダイコーター方式等が挙げられる。
【0004】
特許文献2には、塗布ノズル孔群よりの多数の細長いファイバー状接着剤が、前後の空気ノズル孔群からのスクリーン状加圧空気流に接触させられることで、スクリーン状となって基材に塗布され、極めて薄い接着材塗布面を均一な塗布厚さで形成できることが記載されている。しかしながら、特許文献2の発明はホットメルト接着剤の使用に限定され、特許文献2の発明を一般的な塗布剤の塗布に適用すると問題が生じることが特許文献3に記載されている。
【0005】
これに対し、特許文献3ではホットメルト接着剤と異なる一般的な塗布剤の塗布を行うために、特許文献2に記載の塗布ノズル装置について空気噴出孔を溝形状とし、且つ塗布ノズル孔群の底面開口を空気噴出孔の底面開口と線接触状態で隣接させている。
【0006】
特許文献4には、インクジェットプリンタを使用した記録方式により食品等の表面に文字やカラー画像を形成するための可食性インクジェットインク組成物について記載されている。また、特許文献4には可食性インクジェットインク組成物が安定に連続吐出するためには、粘度が25℃で4 cps以下であり、且つ表面張力が20〜38 dyne/cmの範囲であるとよいことが記載されているので、増粘剤の割合が高い組成物ついてはこの可食性インクジェットインク組成物として使用できない。
【0007】
特許文献5には、導電率5000〜200000pS/mの食用油脂組成物よりなるパン類用つや出し剤を、静電塗油装置によって微粒状化してパン類の表面に塗布することを特徴とするパン類のつや出し方法について記載されている。しかしながら、この方法は静電塗油装置を用いるため水性の液体の塗布に適用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3801818号公報
【特許文献2】特許第2821832号公報
【特許文献3】特許第3661019号公報
【特許文献4】特開2006−169301号公報
【特許文献5】特開2002−186410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、チューインガム表面に香料を十分均一に被覆するために、公知技術の塗布方式を使用して、液体香料と増粘剤を含有する水性液状物をチューインガム表面に塗布することを検討したが、いずれにも以下に示す問題点があった。
【0010】
スクリーン印刷方式:表面に多数の微小開孔部を有し、内部のインクを外側に押出すためのスキージーゴムを内設するスクリーン版を使用して印刷する方法が公知の技術として知られているが、この方式ではスクリーン版上での液状物の乾燥による目詰り、スクリーンの微小開孔での液状物の目詰りが発生し、実質塗布できなかった。これを解消するために、液状物の水分値を上げる等の液状物の乾燥が遅い処方に変更した場合、チューインガムに塗布した後の乾燥に時間がかかる上に、チューインガムが吸湿し、べたついてしまうという問題が発生した。
【0011】
スプレー噴霧方式:インクをノズルより、加圧エアーとともに噴霧する方法が公知の技術として知られているが、この方式では放射状に噴霧するので、塗布円の中心部と外側部で塗布量が均一にならない問題があった。
【0012】
凹版印刷方式:金属等でできた版の凹部分にインクを満たし、加圧して直接印刷物に転移させる方法が公知の技術として知られているが、チューインガムに加圧してしまうと、チューインガムが変形してしまうという問題が生じる。
【0013】
凸版印刷方式:金属又は樹脂等でできた版の凸部にインクを盛り、加圧して直接印刷物に転移させる印刷方法が公知の技術として知られているが、板ガムに加圧してしまうとチューインガムが変形してしまうという問題が生じる。また、チューインガムの厚みが変動するとチューインガムが印刷機に噛み込んだり、液状物が印刷されない又は印刷面が乱れた状態のものが発生し、均一な印刷とならなかった。
【0014】
ダイコーター方式:スロットオリフィス(ダイ)に塗工液を供給しスロットオリフィス内で塗工液を加圧し、被印刷物に直接塗工する方法が公知の技術として知られている。この方式では、被塗工物とダイ先端との距離を50μm以下にする必要があり、チューインガムの厚みが変動し厚くなった時、チューインガムが印刷機に噛み込んだり、液状物がはじいた状態のものが発生し、均一な印刷とならなかった。
【0015】
特許文献3の方式:この方式に液体香料と増粘剤を含有する水性液状物を用いた場合、引き伸ばされることなく、ちぎれて霧状になるため、直にスプレー塗布先端部に液状物が付着し、目詰りを起こし、塗布パターンが乱れ、塗布量が不均一となった。
【0016】
その他:特許文献4には可食性インクジェットインク組成物が安定に連続吐出するためには、粘度が25℃で4 cps以下であり、且つ表面張力が20〜38 dyne/cmの範囲であるとよいことが記載されているので、この方法で使用するためには水性液状物の増粘剤の割合を大きく減らす必要があり、その場合、速やかな香気の発現及びその香りの長期間の安定という本発明の目的を達成することができない。また、特許文献5の方法では静電塗油装置を用いるため本発明で用いる水性液状物の塗布に適用することはできない。
【0017】
従って、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、高さが均一でないチューインガムの表面に、増粘剤及び液体香料を含有する水性液状物の均一量の塗布が安定的に可能な塗布工程を有する、表面に香料が塗布されたチューインガムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記特許文献3の塗布ノズル装置を使用し、空気の吐出を止め、液状物へ空気を接触させず、塗布ノズル孔をチューインガムに接近させて液状物を塗布することにより、高さが均一でないチューインガムの表面に、増粘剤及び液体香料を含有する水性液状物の均一量の塗布が安定的に可能になるという知見を得た。本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の表面に香料が塗布されたチューインガムの製造方法を提供するものである。
【0019】
項1.高さが均一でないチューインガムの表面に、増粘剤及び液体香料を含有する水性液状物を縞模様状に塗布する工程を有する、表面に香料が塗布されたチューインガムの製造方法であって、
多数の塗布ノズル孔を塗布ラインの搬送交差方向に配置して塗布ノズル孔群を形成し、塗布ノズル孔群は櫛状溝を有するシム板を一対の塗布ノズルブロック間に介装することで形成し、塗布ノズル装置のノズルブロックの底面における塗布ノズル孔群の底面開口の形状を四角形とした塗布ノズル装置を使用し、
前記水性液状物を塗布ノズル装置のシム板の櫛状溝を通して押し出すことによって塗布することを特徴とする製造方法。
【0020】
項2.前記塗布ノズル装置によりガムの上50〜1000μmから前記水性液状物を塗布する、項1に記載の製造方法。
【0021】
項3.前記水性液状物の増粘剤の含有量が10〜50重量%である、項1又は2に記載の製造方法。
【0022】
項4.前記水性液状物の水の含有量が20〜80重量%である、項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【0023】
項5.前記チューインガムが平面部を有するものである、項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明の製造方法によれば、速やかな香気の発現及びその香りが長期間安定することを兼ね備えた増粘剤及び液体香料を含有する水性液状物を、チューインガムの表面に均一な量を安定的に縞模様状に塗布することが可能となった。
【0025】
また、本発明の製造方法によれば、塗布ノズル装置の塗布ノズル孔(水性液状物が出る先端)とチューインガムが一定の距離を取って非接触の状態で塗布ができるため、チューインガムの高さが均一でないことにより、塗布ノズル孔とチューインガムが接触することによる変形や不均一な塗布が生じず、安定的に塗布が可能となった。
【0026】
本発明の製造方法により製造されるチューインガムは、液体香料を含む水性液状物を均一に塗布されることにより表面にガムフィルム状の膜を形成しているので、口中に入れることにより、噛み込む前から香りが立ち、更には口に入れた瞬間に速やかに香気を発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に使用する塗布ノズル装置を示す断面図である。
【図2】本発明に使用する塗布ノズル装置のノズルユニットの底面図である。
【図3】本発明に使用する塗布ノズル装置の塗布ノズル孔群を形成するためのシム板の斜視図である。
【図4】本発明の製造方法により作成される水性液状物が縞模様状に塗布された板ガムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のチューインガムの製造方法について詳細に説明する。
【0029】
本発明の表面に香料が塗布されたチューインガムの製造方法は、高さが均一でないチューインガムの表面に、増粘剤及び液体香料を含有する水性液状物を縞模様状に塗布する工程を有し、多数の塗布ノズル孔を塗布ラインの搬送交差方向に配置して塗布ノズル孔群を形成し、塗布ノズル孔群は櫛状溝を有するシム板を一対の塗布ノズルブロック間に介装することで形成し、塗布ノズル装置のノズルブロックの底面における塗布ノズル孔群の底面開口の形状を四角形とした塗布ノズル装置を使用し、前記水性液状物を塗布ノズル装置のシム板の櫛状溝を通して押し出すことによって塗布することを特徴とする製造方法である。
【0030】
チューインガム本体
本発明において、水性液状物を塗布する対象は、高さが均一でないチューインガムである。チューインガムは、一般的には高さが均一でないため公知技術では上記水性液状物を安定的に塗布できないが、本発明の塗布方法では安定的な塗布が可能である。
【0031】
本発明に用いるチューインガムは、通常用いられるものであればよく、組成についても特に限定されず、用途に応じて適宜選択して使用できるが、成分としては例えば、ガムベース、甘味成分、水飴、還元水飴、グリセリン、酸味料、色素、乳化剤、安定剤、香料などが挙げられる。甘味成分としては、糖類(砂糖、ブドウ糖など)、糖アルコール(キシリトール、マルチトール、還元パラチノースなど)、高甘味度甘味料(アスパルテーム、アセスルファムK,スクラロースなど)などが挙げられる。当該チューインガムは、常法により調製することができる。
【0032】
本明細書において、「高さが均一でない」とは50〜100μm程度、特に100μm程度の高さのブレがあることも含む意味である。ここで、「Xμm程度の高さのブレがある」とは、最も高い位置と最も低い位置の差がXμm程度あることを意味する。
【0033】
チューインガムの形状は、平面部を有する形状のものであり、例えば、板ガム、ブロックガム等が挙げられる。
【0034】
水性液状物
本発明において使用する水性液状物は、増粘剤及び液体香料を含有するものである。
【0035】
増粘剤としては、例えば、澱粉、加工澱粉、デキストリン、アルギン酸、メチルセルロース、アラビアガム、プルラン、トラガントガム、カラギーナン、トラガカントガム、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、キサンタンガム、グアーガム、セルロース、ガディガム等が挙げられ、これらを複数種類用いてもよい。水性液状物中の増粘剤の含有量は、速やかな香気の発現及びその香りが長期間安定する範囲であればよく、一般的には好ましくは10〜50重量%、より好ましくは20〜40重量%である。また、水性液状物中の増粘剤の含有量は、増粘剤の種類毎に適宜選択され、例えばアラビアガムでは20〜30重量%、デキストリンでは20〜30重量%、カルボキシメチルセルロースでは10〜20重量%であれば好ましい。
【0036】
液体香料としては、オレンジオイル、レモンオイル、グレープフルーツオイル、ライムオイル等の柑橘精油類、セージ、ローズマリー、ハッカ、シソ、バジル、ショウガ、わさび等のスパイスオイル又はこれらを溶媒抽出して得られるオレオレジン類、コーヒーオイル、ローストナッツオイル類、ゴマオイル等の芳香性植物油、メントール、バニリン、マルトール、リナロール、ゲラニオール、シトラール、リモネン等の天然又は合成香料化合物;及び上記の如き柑橘精油類、スパイスオイル又はオレオレジン類、芳香性植物油、天然又は合成香料化合物等を適宜混合して得られる調合香料組成物を挙げることができる。
【0037】
水性液状物にはその他、水が含まれていればよい。水性液状物中の水の含有量は、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜60重量%である。水の含有量がこの範囲であれば、水性液状物の塗布後の乾燥に時間がかからず、被塗布物が吸湿し、べたついてしまうという問題が発生する可能性がない。
【0038】
水性液状物には配合成分の溶解性を向上させるために乳化剤が含まれていることが望ましい。水性液状物中の乳化剤の含有量は、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウム、カゼインナトリウム、レシチン等が挙げられる。
【0039】
水性液状物は上記の成分以外にも、充填剤、色素、酸味料、糖質、高甘味度甘味料、エタノール等の成分を必要に応じて含んでいてもよい。
【0040】
塗布ノズル装置
本発明に使用する装置は、多数の塗布ノズル孔を塗布ラインの搬送交差方向に配置して塗布ノズル孔群を形成し、塗布ノズル孔群は櫛状溝を有するシム板を一対の塗布ノズルブロック間に介装することで形成し、塗布ノズル装置のノズルブロックの底面における塗布ノズル孔群の底面開口の形状を四角形とした塗布ノズル装置である。
【0041】
このような装置として、特許文献3(特許第3661019号公報)に記載されている塗布ノズル装置が挙げられるが、当該塗布ノズル装置の空気噴出孔から空気を吐出する機能については使用しない。特許文献3に記載の装置について、空気の吐出を止め、液状物へ空気を接触させない点、及び塗布ノズル孔を被塗布物に接近させて液状物を塗布する点を変更して使用することで、高さが均一でないチューインガムの表面に増粘剤及び液体香料を含有する水性液状物の均一量の塗布が安定的に可能になる。
【0042】
本発明に使用する装置として、例えば株式会社サンツール社製のストライプコーターユニット(型番:15004-211350)等が挙げられる。
【0043】
以下、本発明で使用する塗布ノズル装置の実施態様について図面を参照して説明する。図1において、塗布ラインAにより搬送方向Bで搬送されている被塗布物Cの上面に対向させて、塗布ノズル装置Dを配置する。接着剤塗布ノズル装置Dは、塗布ラインAの上方に配置したノズルユニット1と、ノズルユニット1と一体の塗布剤供給制御弁2とにより構成し、ノズルユニット1には、多数の塗布ノズル孔11aにより構成される塗布ノズル孔群11を設け、その塗布ノズル孔群11を被塗布物Cの搬送方向Bと交差する方向に位置させる。塗布ノズル孔群11は塗布剤供給源(塗布剤タンクおよび圧送ポンプ)3に接続されている。
【0044】
塗布ノズル孔群11は、図2に示す櫛状溝eを有するシム板10により形成する。図1においては、シム板10は塗布ノズルブロック1Fと塗布ノズルブロック1Rとの間に介装する。図1において、シム板10の櫛状片10Aの間に形成される間隙eで塗布ノズル孔11aを形成し、間隙eをシム板10の断面視で四角形とすることで、図3に示すようにノズルブロック1の底面における塗布ノズル孔群の底面開口(f)の形状を四角形とする。
【0045】
本発明で使用するシム板としては、好ましくは0.01〜10 mm巾の櫛状溝が0.01〜10 mm間隔なるシム板であり、より好ましくは0.1〜5 mm巾の櫛状溝が0.1〜5 mm 間隔なるシム板である。また、シム板の幅は、好ましくは5〜200 cm、より好ましくは10〜100 cmであり、シム板の厚みは、好ましくは0.01〜5 mm、より好ましくは0.05〜2.5 mmである。
【0046】
塗布工程
本発明の製造方法の塗布工程では、上記塗布ノズル装置を使用し、上記水性液状物を塗布ノズル装置のシム板の櫛状溝を通して押し出すことによってチューインガムの表面に塗布することを特徴とする。
【0047】
塗布工程では、図1に示されているように、塗布ラインAの上面に被塗布物(チューインガム)Cを載置し一方方向(B方向)に搬送し、塗布ラインAの上方に装備した塗布ノズル装置Eより塗布剤を、塗布ラインAの上面の搬送中の被塗布物Cに向け押し出して、塗布剤Gを被塗布物Cの所定箇所に塗布する。
【0048】
塗布工程においては、前記塗布ノズル装置によりチューインガム表面の好ましくは50〜1000μm、より好ましくは100〜750μm、更に好ましくは100〜500μm上から前記水性液状物を塗布する。本発明において高さが均一でないチューインガムを使用するため、チューインガム表面の位置により高さが異なってくるが、ここでのチューインガム表面はいずれの位置を基準としても良い。塗布スピード(被塗布物Cの移動速度)は、2.5〜75 cm/sが好ましく、5〜50 cm/sがより好ましい。塗布工程における水性液状物の温度は、10〜35℃が好ましく、15〜30℃がより好ましい。塗布スピード、水性液状物の温度がこの範囲であれば水性液状物のより均一で安定的な塗布が可能となる。塗布工程は、チューインガムが断片に切断される前又は後のどちらに行っても良い。
【0049】
塗布工程では、上記水性液状物を塗布ノズル装置のシム板の櫛状溝を通して押し出すので、水性液状物が縞模様状に塗布される。ここで、縞模様状とは、チューインガムの塗布面に対して水性液状物が均一に塗布されているものを意味し、塗布された水性液状物の巾は好ましくは0.01〜10 mm、より好ましくは0.1〜5 mmであり、縞の間隔は好ましくは0.01〜10 mm、より好ましくは0.1〜5 mmである。水性液状物の塗布量は、好ましくは5〜60 g/m2、より好ましくは10〜50 g/m2である。本発明の塗布工程によれば、被塗布物10 cm2当たりの塗布量を10箇所測定した場合の最大値及び最小値が、理論値の±10%、好ましくは±5%以内とすることが可能となる。理論値とは完全に均一な塗布が行われた場合の塗布量である。
【0050】
この塗布工程によって、例えば図4に示すように板ガム上に水性液状物を縞模様状に塗布することができる。
【0051】
水性液状物を塗布した後には、必要に応じて塗布した水性液状物を乾燥する工程を有していてもよい。乾燥工程は、水性液状物を手で触っても手に着かない程度に乾燥すれば良い。このような工程としては、例えば、温風乾燥機を使用して乾燥することが挙げられる。温風乾燥機を使用した場合の乾燥温度は、好ましくは30〜70℃、より好ましくは30〜50℃である。
【0052】
本発明の塗布工程によれば、チューインガムの表面に水性液状物の均一な量を安定的に塗布することが可能となる。また、本発明の塗布工程によれば、塗布ノズル装置の塗布ノズル孔(水性液状物が出る先端)と被塗付物が一定の距離を取って非接触の状態で塗布ができるため、被塗布物の高さが均一でないことにより、塗布ノズル孔と被塗布物が接触することによる変形や不均一な塗布が生じず、安定的に塗布が可能となる。本発明の塗布工程によって、チューインガムの表面に上記水性液状物を均一に塗布されることによりチューインガム上にフィルム状の膜が形成されるので、口中に入れることにより、噛み込む前から香りが立ち、更には口に入れた瞬間に速やかに香気を発現することができる。
【0053】
製造方法
本発明のチューインガムの製造方法では、塗布工程以外にチューインガムの一般的な製造方法の工程が含まれる。例えば、チューインガム生地の製造、塗布、乾燥、熟成及び包装の各工程を有する製造方法が挙げられる。[各工程の説明]チューインガム生地の製造工程:従来の製法により原料の混合から成型を行う工程である、塗布工程及び乾燥工程:前述する工程である、熟成工程:シート状にカットした後、チューインガムを安定化する工程である、包装工程:アルミ包装を行う工程である。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実験例になんら限定されるものではない。なお、例中の「部」は、特に断らない限り、「重量部」を示す。
【0055】
<実施例1>
攪拌機に、水50部を投入後、ゆっくりとアラビアガム25部を投入し、溶解後、炭酸カルシウム15部、ミント香料8部、色素2部を順次添加、混合し、水性液状物を得た。この水性液状物を0.3 mm巾の櫛状溝が0.3 mm間隔なるシム板を介装したストライプコーターユニット(型番:15004-211350、サンツール社製)を用い(但し、空気噴出孔から空気を吐出する機能については使用しない)、板ガムの上300μmから、30 g/m2となるような塗布スピードで塗布を行った。その後、温風乾燥機にて40℃の風を送り、水性液状物を乾燥させた。
【0056】
<実施例2>
0.3 mm巾の櫛状溝が0.3 mm間隔なるシム板に代えて3 mm巾の櫛状溝が3 mm間隔なるシム板を使用した以外は、実施例1と同様にして塗布、乾燥を行った。
【0057】
<実施例3>
アラビアガム25部に代えてデキストリン25部を使用した以外は、実施例1と同様にして塗布、乾燥を行った。
【0058】
<比較例1>
ストライプコーターユニットの空気噴出孔から空気を吐出する機能を使用した以外は、実施例1と同様にして行った。
【0059】
<比較例2>
0.3 mm巾の櫛状溝が0.3 mm間隔なるシム板に代えて、櫛状ではなく、全面塗布ができる形状を有するシム板を使用した以外は、実施例1と同様にして行った。
【0060】
<比較例3>
実施例1と同様の方法で、水性液状物を得た。この水性液状物を目開き70μmの開孔部を有し、また30 g/m2となる開孔数を有するロータリー式スクリーン版を用い、板ガム表面に、15m/分の印刷スピードで印刷を行った。その後、温風乾燥機にて40℃の風を送り、水性液状物を乾燥させた。
【0061】
<比較例4>
実施例1と同様の方法で、水性液状物を得た。この水溶性液状物を2流体ノズル機(いけうち社製BIMJ2004)を用い、30 g/m2となるような液流量で、噴霧を行った。その後、温風乾燥機にて40℃の風を送り、水性液状物を乾燥させた。
【0062】
<比較例5>
実施例1と同様の方法で、水性液状物を得た。この水性液状物を凹版印刷機を用い、板ガム表面に、15m/分の印刷スピードで印刷を行った。その後、温風乾燥機にて40℃の風を送り、水性液状物を乾燥させた。
【0063】
<比較例6>
実施例1と同様の方法で、水性液状物を得た。この水性液状物を凸版印刷機を用い、板ガム表面に、15m/分の印刷スピードで印刷を行った。その後、温風乾燥機にて40℃の風を送り、水性液状物を乾燥させた。
【0064】
<比較例7>
ストライプコーターユニットの空気噴出孔から空気を吐出する機能を使用し、かつ板ガムの上15cmから塗布した以外は、実施例1と同様にして行った。
【0065】
実施例1−3及び比較例1−7で得られた香料が塗布されたチューインガムについて、以下の評価を行い、得られた結果を表1に示した。
【0066】
(塗布均一性)
10 cm2当りの塗布量(理論値0.03g)を10箇所測定し、塗布量の最大値及び最小値が理論値の±10%以内を○とし、どちらか一方でも±10%を超える場合を×とした。
【0067】
【表1】

【0068】
表1からは、チューインガムの表面に、空気を接触させずに水性液状物を塗布ノズル装置の櫛状溝を有するシム板の櫛状溝を通して押し出すことにより、水性液状物をガムの表面に均一な量を安定的に縞模様状に塗布することが可能であることが分かる。
【0069】
また、表1から、ダイコーター方式(比較例2)、スクリーン印刷方式(比較例3)、スプレー噴霧方式(比較例4)、凹版印刷方式(比較例5)、凸版印刷方式(比較例6)、特許文献3の方式(比較例7)では、水性液状物の均一な塗布ができないことが分かる。
【符号の説明】
【0070】
A 塗布ライン
D 塗布ノズル装置
1 ノズルユニット
10 シム板
11 塗布ノズル孔群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さが均一でないチューインガムの表面に、増粘剤及び液体香料を含有する水性液状物を縞模様状に塗布する工程を有する、表面に香料が塗布されたチューインガムの製造方法であって、
多数の塗布ノズル孔を塗布ラインの搬送交差方向に配置して塗布ノズル孔群を形成し、塗布ノズル孔群は櫛状溝を有するシム板を一対の塗布ノズルブロック間に介装することで形成し、塗布ノズル装置のノズルブロックの底面における塗布ノズル孔群の底面開口の形状を四角形とした塗布ノズル装置を使用し、
前記水性液状物を塗布ノズル装置のシム板の櫛状溝を通して押し出すことによって塗布することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記塗布ノズル装置によりガムの上50〜1000μmから前記水性液状物を塗布する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記水性液状物の増粘剤の含有量が10〜50重量%である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記水性液状物の水の含有量が20〜80重量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記チューインガムが平面部を有するものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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