説明

香料の香り立ち及び持続性の強化方法及び強化剤

【課題】香料の香り立ち及び持続性を高める方法及びそのための強化剤の提供。
【解決手段】香料組成物に、あるいは製品に下記一般式(1)で表される化合物を配合する。香料組成物への配合量は0.01〜90重量%、また製品への配合量は、製品中に配合される香料組成物に対して、0.0001〜2.0倍量(重量比)が好ましい。


(式中、AはH又はOH基を、BはH又はメチル基を、nは0〜2の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料の香り立ち及び持続性を高める方法、有香成分及び/又は調合香料の香り立ち及び持続性強化剤、香り立ち及び持続性に優れた香料組成物及びこれらを用いて得られる香り立ち及び残香性に優れた香粧品、トイレタリー製品、入浴剤、飲食品及び医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有香物質を調香し優れた香料組成物を調製する際、或いは各種製品に香料組成物を配合する際、香料組成物及び各種製品に所望の香気を持続させ、また有香物質の芳香特性及び保留性を調整するために各種保留剤が用いられている。これら保留剤として、ジプロピレングリコール、トリエチルシトレート、ベンジルベンゾエート、ベンジルサリシレート、ジエチルフタレートなど種々のものが知られており、従来から香料組成物或いは各種製品に配合されている。しかし、これらの保留剤だけでは有香成分、香料組成物などの揮発性や残香性を調整するには十分でなく、また保留剤の中には安全上の問題があるものもあるため、香り立ち及び残香性に優れ、更には安全上の問題もない保留剤を得るべく研究が進められてきた。そして、このような特性を有する保留剤として、近年、p−メンタン−3,8−ジオール(特許文献1参照)、2−ヒドロキシメチル−シクロアルカノール誘導体(特許文献2参照)、特定のビフェニル化合物(特許文献3参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3045562号公報
【特許文献2】特開平5−295388号公報
【特許文献3】特開平7−62383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら先行技術文献には、香料組成物の保留効果について、匂い紙上での官能評価による保留効果が記載されているものの、上記化合物を保留剤として含む香料組成物を賦香してなる製品類(例えば、香粧品、トイレタリー製品、入浴剤、飲食品、医薬品等)での保留効果については触れられていない。そして、香料組成物に対する保留効果の一層の改善又は香料組成物における保留剤のバリエーションの拡大のため、更には各種香料組成物を配合した製品形態における香り立ち、残香性を更に改善すべく、新たな保留剤の開発、提供が望まれている。
本発明の目的は、従来の公知或いは周知保留剤により得られる香料の香り立ち及び持続性より更に改善された特性を付与することができるとともに、安全性にも問題なく香料の香り立ち及び持続性を高めることができる方法、この方法に用いられる有香成分及び/又は調合香料の香り立ち及び持続性強化剤、該強化剤が配合された香り立ち及び持続性に優れた香料組成物及びこれらを用いた香り立ち及び残香性に優れた香粧品、トイレタリー製品、入浴剤、飲食品、医薬品などの製品類を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記従来の要求を解決すべく鋭意検討を行った結果、後記一般式(1)で表される化合物を香料組成物中に配合する、或いはこの一般式(1)で表される化合物を配合された香料組成物を各種製品中に配合する、或いは各種製品を調製する際に、一般式(1)で表される化合物を香料組成物と共に製品に配合することにより、香り立ち及び持続性が著しく高められた香料組成物、或いは香り立ち及び残香性に優れた各種製品を得ることができ、またこれにより調製された製品は安全性に問題がないとの知見を得て本発明をなしたものである。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の各発明を包含する。
〔1〕下記一般式(1)で表される化合物を用いることを特徴とする香料の香り立ち及び持続性を高める方法。
【0007】
【化3】

(式中、AはH又はOH基を、BはH又はメチル基を、nは0〜2の整数を表す。)
【0008】
〔2〕上記一般式(1)で表される化合物からなる、有香成分及び/又は調合香料の香り立ち及び持続性強化剤。
〔3〕上記〔1〕に記載の方法により有香成分及び/又は調合香料の香り立ち及び残香性が高められた香粧品、トイレタリー製品、入浴剤、飲食品又は医薬品。
【0009】
〔4〕上記〔2〕に記載される有香成分及び/又は調合香料の香り立ち及び持続性強化剤を含むフローラル、シトラス、フルーティー、グリーン、ミント、ハーブ又はマリン調香粧品、トイレタリー製品、入浴剤、飲食品又は医薬品。
〔5〕上記一般式(1)で表わされる化合物を0.01〜90重量%含有することを特徴とする香り立ち及び持続性が高められた香料組成物。
【0010】
〔6〕上記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする上記〔5〕記載の香料の香り立ち及び持続性が高められた香料組成物。
【0011】
【化4】

(式中、AはH又はOH基を、BはH又はメチル基を、nは0〜2の整数を表す。)
【0012】
〔7〕上記一般式(1)で表される化合物が、3−(メントキシ)−1,2−プロパンジオールであることを特徴とする上記〔6〕記載の香り立ち及び持続性が高められた香料組成物。
〔8〕一般式(2)で表される化合物が、3−(l−メントキシ)−1,2−プロパンジオールであることを特徴とする上記〔6〕記載の香り立ち及び持続性が高められた香料組成物。
〔9〕上記〔5〕〜〔8〕のいずれかに記載の香り立ち及び持続性が高められた香料組成物が0.01〜50重量%配合されてなることを特徴とする、香粧品、トイレタリー製品、入浴剤、飲食品又は医薬品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前記一般式(1)で表される化合物を0.1〜90重量%香料組成物に配合することにより、通常の香料の香り立ち、及び持続性を安全上の問題なく顕著に高めことができるという効果を有すると共に、この香り立ち及び持続性が高められた香料組成物を香粧品、トイレタリー製品、入浴剤、飲食品、医薬品などの製品に配合することにより、香り立ち及び残香性が顕著に高められた各種製品を調製することができる。また、一般式(1)で表わされる化合物を各種製品の調製時に香料組成物と共に直接配合することによっても、香り立ち及び残香性の優れた製品を調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記のごとく、本発明の香料の香り立ち及び持続性を高める方法、有香成分及び/又は調合香料の香り立ち及び持続性強化剤、香り立ち及び持続性に優れた香料組成物及びこれらを用いて得られる香り立ち及び残香性に優れた香粧品、トイレタリー製品、入浴剤、飲食品及び医薬品には、上記一般式(1)で表される化合物が用いられるが、上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、2−(メントキシ)エタン−1−オール、1−(メントキシ)プロパン−2−オール、3−(メントキシ)プロパン−1−オール、3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、4−(メントキシ)ブタン−1−オールが挙げられる。
【0015】
また、本発明の香料の香り立ち及び持続性を高める方法、有香成分及び/又は調合香料の香り立ち及び持続性強化剤、香り立ち及び持続性に優れた香料組成物及びこれらを用いて得られる香り立ち及び残香性に優れた香粧品、トイレタリー製品、入浴剤、飲食品及び医薬品において用いられる一般式(1)で表わされる化合物としては、上記一般式(2)で表わされる化合物が好ましく用いられる。上記一般式(2)で表される化合物としては、例えば、2−(l−メントキシ)エタン−1−オール、1−(l−メントキシ)プロパン−2−オール、3−(l−メントキシ)プロパン−1−オール、3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、2−メチル−3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、4−(l−メントキシ)ブタン−1−オールなどが挙げられる。
【0016】
これらの化合物は、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの化合物は無色、ほぼ無臭の油状物質であり、通常の香料組成物との相溶性は極めて高い。
【0017】
これらの化合物の中では、特に3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオールが、香粧品、トイレタリー製品、入浴剤、飲食品、医薬品などの製品類に使用されたときの保留効果の面から好ましい。なお、一般式(2)で表されるl−メントキシエーテル誘導体、特に3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオールが冷感効果を有することは、すでに特公昭61−48813号公報、特開昭47−16647号公報などにより知られているが、上記一般式(1)で表される化合物がこのような冷感効果を有する化合物である場合、特に一般式(1)で表される化合物を香料組成物と共に製品調製時に配合して用いる場合には、香料組成物を賦香した製品類に冷感効果が付与される量より少ない量配合することによっても、香料の香り立ち及び残香効果の改善が見られる。また、3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオールが、冷感作用により喉、鼻の炎症を抑える組成物に応用されること(WO9408550、WO9847483、WO9847482)、一般式(2)で表される化合物を他の化合物とともに、又は単独で飲食品、香粧品、医薬品などに配合し、冷感効果、可塑剤としての効果を得ること(特開平10−313819号公報、特開昭60−25908号公報、特開平10−109945号公報など)も知られているが、一般式(2)で表される化合物を含め一般式(1)で表される化合物が、香料組成物の香り立ち、持続性或いは各種製品の香り立ち、残香性を著しく高める効果を有することを示唆する報告はない。
【0018】
本発明において用いられる上記一般式(1)又は(2)で表される化合物は既知化合物であり、特公昭61−48813号公報、英国公報1315626号公報、特開平9−217083号公報などに記載されている方法で合成することができる。
【0019】
本発明においては、一般式(1)又は(2)で表わされる化合物の香料組成物或いは製品中への配合量、或いは適用方法は、それが配合される香料組成物或いは製品の種類、使用目的などにより、適宜最適の量及び方法とされる。本発明の有香成分及び/又は調合香料の香り立ち及び持続性強化剤が適用される香料組成物の特に好ましい香調としては、フローラル、シトラス、フルーティー、グリーン、ミント、ハーブ、マリン調が挙げられ、更にフローラル調の中では、ローズ、ミューゲ、ラベンダー、ライラック、カーネーション、フリージア調が特に好ましいものである。
【0020】
一般式(1)又は(2)で表される化合物の有香成分及び/又は調合香料の香り立ち及び持続性強化剤としての配合量は、香料組成物中に配合される場合には、香料組成物全量に対して0.01〜90重量%が好ましく、更に好ましくは1〜50重量%である。また、該強化剤の配合により香り立ち及び持続性が高められた香料組成物の製品中への配合量は、通常、製品の全組成に対して0.01〜50重量%、特に0.1〜30重量%の濃度で用いるのが好ましい。
【0021】
一方、一般式(1)又は(2)で表される化合物が各種製品に直接配合される場合の配合量は、製品形態、使用目的に応じて任意に配合可能であるが、製品中に配合される有香成分及び/又は香料組成物に対して、0.0001〜2.0倍量(重量比)が好ましく、更に好ましくは0.0005〜1.5倍量である。なお、一般式(2)で表される化合物の多くは冷感効果を有するが、冷感効果を感じない濃度でも本発明の効果は十分発揮可能であり、皮膚、頭髪等に外用される製品形態では全組成中0.001%未満でも有効である。
【0022】
適用対象となる製品、例えば、香粧品、トイレタリー製品、入浴剤、飲食品、医薬品には、本発明の香り立ち及び持続性が高められた香料組成物或いは本発明の有香成分及び/又は調合香料の香り立ち及び持続性強化剤の他に、それぞれの使用目的に応じ任意の成分が適宜配合される。
【0023】
また、本発明の香り立ち及び持続性を高める方法或いは有香成分及び/又は調合香料の香り立ち及び持続性強化剤により香り立ち及び持続性が高められた香料組成物は、一般式(1)で表される化合物を必須成分として含むが、他にケトン類、アルデヒド類、エステル類、アルコール類、エーテル類、テルペン類、天然精油、合成ムスク、或いはその他通常香料組成物を調製する際に使用される材料が必要に応じ共に配合される。一般式(1)で表される化合物を有香成分及び/又は調合香料の香り立ち及び持続性強化剤として予め香料組成物に配合しておくことにより、香料組成物の香り立ち及び持続性、すなわち、香料組成物の芳香特性、及び保留性が著しく高められると共に、これにより得られた香り立ち及び持続性が高められた香料組成物を製品製造時に配合することにより、一般式(1)で表わされる化合物を製品に直接配合する場合に比べ、香り立ち及び残香性がより改善された製品を得ることが可能となる。
【0024】
なお、本発明でいう香粧品、トイレタリー製品、入浴剤、飲食品、医薬品の例としては、例えば、化粧水、全身用ローション、アフターシェーブローション、育毛ローション等の各種ローション、乳液、クリーム等の皮膚化粧料、パップ剤、貼付剤、シャンプー、リンス、コンディショナー類、ヘアートニック、ヘアークリーム類等の頭髪化粧料、香水、コロン類、入浴剤、石鹸、シェービングフォーム及びジェル、洗剤、ソフナー類、室内芳香剤、歯磨、口腔洗浄料、軟膏、清涼飲料、ガム、キャンディー、アイスクリーム、シャーベット、ゼリー、清涼飲料水等が挙げられる。
【実施例】
【0025】
以下に実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明がこれら実施例に記載されたものに限定されるものではない。
【0026】
実施例1及び比較例1〜3(香料組成物の香り立ち及び持続性の効果試験)
下記表1の処方に従って、常法により実施例1及び比較例1〜3の香料組成物を調製し、以下の方法により、その香り立ち及び持続性の評価を行った。なお、持続性の評価は、残香性試験によった。
【0027】
(香料組成物の香り立ち及び残香性の試験方法)
直径40mm高さ50mmの広口瓶底に敷いた濾紙上に、調製された香料組成物約10.0mgを量り込み、蓋を締めて30分放置し評価サンプルとした。蓋を開けた直後の香り立ち、及び開放系で約5時間経過時点での残香性を官能テストにより評価した。評価は5年以上経験した調香専門パネル11人で3回繰り返して判定し(合計33人)、比較例3に対する強度を評価した。
【0028】
【表1】

【0029】
(1)香り立ち試験結果
比較例3に対して、最も香り立ちが高いと感じた人数の結果を、下記表2に示す。
【表2】

【0030】
(2)残香性試験結果
比較例3に対して、最も残香性が強いと感じた人数の結果を、下記表3に示す。
【表3】

【0031】
上記表2及び表3から明らかなように、本発明化合物は上記調合香料に対して香り立ち、残香性共に公知保留剤に比べ優れた結果を示した。
【0032】
実施例2及び比較例4(入浴剤での効果試験)
実施例1及び比較例1の調合香料を1.0%賦香した、実施例2及び比較例4の入浴剤を下記表4の処方に従って、それぞれ100g調製した。各入浴剤20gを40〜42℃のさら湯180リットルに溶解し、溶解直後の香気強度及び30分後の香気強度を、専門パネラーにより比較評価した。評価は5年以上経験した調香専門パネル11人で3回繰り返して判定し(合計33人)、比較例4に対する強度を評価した。
【0033】
【表4】

【0034】
(1)香り立ち試験結果
実施例2と比較例4の入浴剤の比較で、実施例2の入浴剤の香り立ちが高いと感じた人数、比較例4の入浴剤の香り立ちが高いと感じた人数、両者差を感じなかった人数を、下記表5に示す。
【表5】

【0035】
(2)残香性試験結果
実施例2と比較例4の各入浴剤の比較で、実施例2の入浴剤の残香性が強いと感じた人数、比較例4の入浴剤の残香性が強いと感じた人数、両者差を感じなかった人数の結果を、下記表6に示す。
【表6】

【0036】
表5及び表6から明らかなように、本発明の調合香料を含有する入浴剤はジプロピレングリコールを含有する入浴剤よりも香り立ち、残香性、共に優れた結果を示した。
【0037】
実施例3及び比較例5(入浴剤での効果試験2)
下記表7の処方に従い、実施例3及び比較例5の入浴剤それぞれ100gを調製し、20gを40〜42℃のさら湯180リットルに溶解し、溶解直後の香気強度を実施例2と同様の方法で専門パネラーにより比較評価した。
【0038】
【表7】

【0039】
(1)香り立ち試験結果
香り立ちが高いと感じた人数の結果を表8に示す。
【表8】

【0040】
(2)残香性試験結果
残香性が強いと感じた人数の結果を表9に示す。
【表9】

【0041】
表8及び表9から明らかなように、本発明の調合香料を含有する入浴剤は、3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオールを含有しない調合香料を用いた入浴剤よりも香り立ち、残香性、共に優れた結果を示した。
【0042】
実施例4及び比較例6(香料組成物の調製)
下記表10の処方に従い、実施例4及び比較例6の香料組成物を調製した。
【表10】

【0043】
実施例5及び比較例7(オーデコロンでの効果試験)
上記実施例4及び比較例6の香料組成物を5%賦香したオーデコロン(95%エタノール溶液)を100gずつ調製し、それぞれ適量を左右前腕部内側にアトマイザー噴霧して、直後の香り立ち及び約4時間経過時点での残香性を評価した。評価は5年以上経験した調香専門パネル13人で判定し評価した。
【0044】
(1)香り立ち試験結果
実施例5と比較例7の各オーデコロンの比較で、実施例5のオーデコロンの香り立ちが高いと感じた人数、比較例7のオーデコロンの香り立ちが高いと感じた人数、両者差を感じなかった人数を、表11に示す。
【表11】

【0045】
(2)残香性試験結果
実施例5と比較例7との比較で、実施例5のオーデコロンの残香性が強いと感じた人数、比較例7のオーデコロンの残香性が強いと感じた人数、両者差を感じなかった人数を、表12に示す。
【表12】

【0046】
上記表11及び12から明らかなように、本発明の調合香料を含有するオーデコロンは、p−メンタン−3,8−ジオールを含有するオーデコロンよりも特に残香性に優れた結果を示した。
【0047】
実施例6及び比較例8(香料の調製)
下記表13の処方に従い、実施例6及び比較例8の香料組成物を調製した。
【表13】

【0048】
実施例7及び比較例9(シャンプーでの効果試験)
実施例6及び比較例8の香料組成物を0.5%賦香した、実施例7及び比較例9のシャンプー100gずつを、下記表14の処方に従い製造した。得られた各シャンプーの香り立ち及び残香性を以下の方法で評価した。
【0049】
(評価方法)
かもじ(人毛)5gをシャンプー2.5g、及び温水(40℃)5mlにて1分間処理後、温水(40℃)1000mlにてすすぎ、タオルドライしたものをアルミホイル上に固定放置し評価サンプルとし、固定直後の香り立ち、及び室温で約5時間経過時点での残香性を評価した。評価は5年以上経験した調香専門パネル10人で3回繰り返して判定した(合計30人)。
【0050】
【表14】

【0051】
(1)シャンプーの香り立ち試験結果
実施例7のシャンプーと比較例9のシャンプーの比較で、実施例7のシャンプーの香り立ちが高いと感じた人数、比較例9のシャンプーの香り立ちが高いと感じた人数、両者差を感じない人数を、下記表15に示す。
【表15】

【0052】
(2)シャンプーの残香性試験結果
実施例7のシャンプーと比較例9のシャンプーの比較で、実施例7のシャンプーの残香性が強いと感じた人数、比較例9のシャンプーの残香性が強いと感じた人数、両者差を感じない人数を、下記表16に示す。
【表16】

【0053】
上記表15及び表16から明らかなように、本発明の調合香料を含有するシャンプーは香り立ち、残香性共に優れた結果を示し、特に残香性に顕著な効果を与えた。
【0054】
実施例8及び比較例10(コンディショナーでの効果試験)
実施例6、比較例8の香料組成物を0.5%賦香した、実施例8及び比較例10のコンディショナー100gずつを、下記表17の処方に従い製造した。得られた各コンディショナーを以下の方法で評価した。
【0055】
(評価方法)
かもじ5gに対してコンディショナー5.0g及び温水(40℃)5mlにて1分間処理後、温水(40℃)1000mlにてすすぎ、タオルドライしたものをアルミホイル上に固定放置して評価サンプルとし、シャンプーと同様の方法にて香り立ち及び残香性を評価した。
【0056】
【表17】

【0057】
(1)コンディショナーの香り立ち試験結果
実施例8と比較例10の比較において、実施例8のコンディショナーの香り立ちが高いと感じた人数、比較例10のコンディショナーの香り立ちが高いと感じた人数、両者差を感じなかった人数を、下記表18に示す。
【表18】

【0058】
(2)コンディショナーの残香性試験結果
実施例8と比較例10の比較において、実施例8のコンディショナーの残香性が強いと感じた人数、比較例10のコンディショナーの残香性が強いと感じた人数、両者差を感じなかった人数を、下記表19に示す。
【表19】

【0059】
上記表18、19から明らかなように、本発明の調合香料を配合したコンディショナーは香り立ち、残香性共に顕著な効果を与えた。
【0060】
実施例9、実施例10及び比較例11(シャンプーでの効果試験2)
フローラル・フルーティー・グリーンタイプの香料組成物:TSP−3055(高砂香料工業(株)製)を賦香率0.3%にて添加した、実施例9、実施例10及び比較例11のシャンプー100gずつを、下記表20記載の処方に従い常法により製造した。
【表20】

【0061】
上記各シャンプーについて、実施例7と同様の評価方法により、香り立ち及び残香性を評価した。
(1)シャンプーの香り立ち試験結果
実施例9、実施例10及び比較例11のシャンプーのなかで、香り立ちが最も高いと感じた各人数の結果を、下記表21に示す。
【表21】

【0062】
(2)シャンプーの残香性試験結果
実施例9、実施例10及び比較例11のシャンプーのなかで、残香性が最も強いと感じた各人数の結果を、下記表22に示す。
【表22】

【0063】
上記表21及び表22から明らかなように、予め3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオールを含有する本発明の調合香料を配合したシャンプー及びシャンプー調製時に3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオールを香料組成物と共に添加したものは、3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオールを添加しないものに比べ、香り立ち、残香性共に優れた結果を示し、特に予め3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオールを含有する本発明の調合香料を配合したシャンプーは、残香性において顕著な効果がみられる。
【0064】
実施例11、実施例12及び比較例12(コンディショナーでの効果試験2)
フローラル・フルーティー・グリーンタイプの香料組成物:TSP−3055(高砂香料工業(株)製)を賦香率0.3%にて添加した、実施例11、実施例12及び比較例12のコンディショナー100gずつを、下記表23記載の処方に従い常法により製造した。
【表23】

【0065】
上記各コンディショナーについて、実施例8と同様の評価方法により残香性を評価した。
(1)コンディショナーの残香性試験結果
実施例11、実施例12及び比較例12のコンディショナーのなかで、残香性が最も強いと感じた各人数の結果を、下記表24に示す。
【表24】

【0066】
上記表24から明らかなように、予め3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオールを含有する本発明の調合香料を配合したコンディショナー及びコンディショナー調製時に3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオールを香料組成物と共に添加したものは、3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオールを添加しないものに比べ残香性が優れており、特に予め3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオールを含有する本発明の調合香料を配合したコンディショナーは、効果が顕著である。
【0067】
実施例13(エモリエントクリームの調製)
常法に従い下記表25記載の処方のエモリエントクリーム100gを製造した。
【表25】

【0068】
実施例14(エモリエントミルクの調製)
常法に従い下記表26記載の処方のエモリエントミルク100gを製造した。
【表26】

【0069】
実施例15(ヘアーリンスの調製)
常法に従い、下記表27記載の処方のヘアーリンス100gを製造した。
【表27】

【0070】
実施例16(ヘアートニックの調製)
常法に従い、下記表28記載の処方のヘアートニック100gを製造した。
【表28】

【0071】
実施例17(デオドラントパウダースプレーの調製)
常法に従い、下記表29記載の処方のデオドラントパウダースプレー100gを製造した。
【表29】

【0072】
実施例18(液体入浴剤の調製)
常法に従い、下記表30記載の処方の液体入浴剤100gを製造した。
【表30】

【0073】
実施例19(ガムの調製)
定法に従い、下記表31記載の処方のガム100gを製造した。
【表31】

【0074】
実施例20及び比較例13(歯磨剤の調製及び効果試験)
実施例20及び比較例13の歯磨剤100gを、下記表32記載の処方で定法に従って製造した。
【表32】

【0075】
(評価方法)
5年以上経験した調香専門パネル8人により、歯磨剤1.0gで2分間歯を磨き、30mlの水で口をすすいで吐き出した。この時を0分とし、香気強度の径時変化を下記5段階尺度で評価した。評価結果はパネル8人の平均をとり、評価価とした。
評価点5:非常に強く感じる
4:強く感じる
3:中程度に感じる
2:弱く感じる
1:僅かに感じる
0:感じない
【0076】
結果を下記表33に示す。
【表33】

上記表33から明らかなように、本発明の調合香料を含有する歯磨剤は、香り立ち、残香性に優れた効果を与えた。
【0077】
実施例21(炭酸飲料の調製)
常法に従い、下記表34記載の処方の炭酸飲料100gを製造した。
【表34】

【0078】
実施例22(口腔洗浄料の調製)
常法に従い、下記表35記載の処方の口腔洗浄料100gを製造した。
【表35】

【0079】
上記実施例13〜22に記載のエモリエントクリーム、エモリエントミルク、ヘアーリンス、ヘアートニック、デオドラントパウダースプレー、液体入浴剤、ガム、歯磨剤、炭酸飲料、口腔洗浄料は、いずれも製品の香り立ち並びに残香性は良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を用いることを特徴とする香料の香り立ち及び持続性を高める方法。
【化1】

(式中、AはH又はOH基を、BはH又はメチル基を、nは0〜2の整数を表す。)
【請求項2】
請求項1の一般式(1)で表される化合物からなる、有香成分及び/又は調合香料の香り立ち及び持続性強化剤。

【公開番号】特開2011−105941(P2011−105941A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266195(P2010−266195)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【分割の表示】特願2000−275928(P2000−275928)の分割
【原出願日】平成12年9月12日(2000.9.12)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】