説明

香料素材

【課題】アニマル様の香気を強く有するとともに、汎用性の高い香料素材の提供。
【解決手段】一般式(1)で表され、炭素数6〜8である不飽和脂肪酸又はその塩からなる香料素材、当該香料素材を0.00001〜10質量%含有する香料組成物、並びに当該香料組成物を含有する家庭用製品、香粧品製品及び環境衛生製品。


〔R1は水素原子、メチル基又はメチレン基を示し、R2、R3及びR4はそれぞれ水素原子又はメチル基を示し、破線は二重結合であってもよいことを示し、そのうち少なくとも1箇所は二重結合である。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニマル系の香気を有する香料素材及びこれを含有する香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アニマル系の香気を付与する香料素材としては、シベット、カストリウム、ムスク等の動物から採取される物質が用いられてきた。しかしながら、近年上記物質は、それらの動物の減少や、動物保護の立場から入手が困難になってきている。そのため、アニマルノートを付与する代替品が求められているが、その中でも動物を経由せず化学的に容易に合成可能で、天然感と嗜好性を兼ね備えた物質の開発が望まれている。
【0003】
特許文献1には、3-ヒドロキシ-3-メチルヘキサン酸等の特定のβ−ヒドロキシカルボン酸又はその塩をアニマル系香料素材として用いることが記載されている。特許文献2には、3-メルカプト-3-メチルヘキサン-1-オールを含有し、人肌様の匂いを付与できる香料組成物が記載されている。特許文献3には、3-メチル-2-ヘキセン酸をアニマル様香料素材として用いる技術が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10-25265号公報
【特許文献2】特開2005-105250号公報
【特許文献3】特開平3-294400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、動物を経由せず化学的に容易に合成可能で、天然感と嗜好性を兼ね備えた物質を検討したが、3-メチル-2-ヘキセン酸の香調は、アニマリックであるがカンファラス様のハーバル香調が強く、次いでウッディー、フルーティーなトーンも有していた。このように、特にカンファラスなトーンを有するため、アニマル様香料としての汎用性は低いものであった。
【0006】
本発明の課題は、アニマル様の香気を強く有するとともに、汎用性の高い香料素材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、夏場に洗濯後の衣類を乾燥が不完全な状態で放置した場合や、締め切った部屋の高湿度下に長時間放置した場合に、衣類から発生する独特の生乾き/部屋干しの匂いについて研究を重ねた結果、今まで住環境の匂いとしては報告されていない不飽和分岐脂肪酸を検出した。そして、この不飽和分岐脂肪酸は特に閾値が低く、特有のアニマル様の香気を持つ化合物であることを見出した。
【0008】
更に本発明者らは、その発見された不飽和分岐脂肪酸の類似構造を持つ脂肪酸を合成しその香気を検討した結果、それらもユニークなアニマル様の香気を有していることを見出した。そして、これらはカンファラスなトーンを有しておらず、他の各種アニマル系香料と調和しやすいため汎用性も高く、暖かみのあるシベット香のようなアニマル系香気素材として有用であるという知見を得た。
【0009】
本発明は、下記一般式(1)で表され、炭素数6〜8である不飽和脂肪酸又はその塩からなる香料素材を提供するものである。
【0010】
【化1】

〔式中、R1は水素原子、メチル基又はメチレン基を示し、R2、R3及びR4はそれぞれ水素原子又はメチル基を示し、破線は二重結合であってもよいことを示し、そのうち少なくとも1箇所は二重結合である。〕
【0011】
更に本発明は、上記の香料素材を0.00001〜10質量%含有する香料組成物を提供するものである。
【0012】
更に本発明は、上記の香料組成物を含有する家庭用製品、香粧品製品及び環境衛生製品を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の香料素材は、アニマル様の香気を強く有するとともに、他の各種アニマル系香料と調和しやすいため汎用性も高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明で用いる一般式(1)で表される不飽和脂肪酸(以下、不飽和脂肪酸(1)という)としては、以下のものが挙げられる。
炭素数6の不飽和脂肪酸(1)としては、例えばヘキセン酸、すなわち、2-ヘキセン酸、3-ヘキセン酸、4-ヘキセン酸、5-ヘキセン酸を挙げることができ、炭素数7の不飽和脂肪酸(1)としては、例えばメチルヘキセン酸、すなわち、4-メチル-ヘキセン酸、5-メチル-ヘキセン酸、及びヘプテン酸、すなわち、2-ヘプテン酸、3-ヘプテン酸、4-ヘプテン酸、5-ヘプテン酸、6-ヘプテン酸を挙げることができ、炭素数8の不飽和脂肪酸(1)としては、例えばメチルヘプテン酸、すなわち、4-メチル-ヘプテン酸、5-メチル-ヘプテン酸、6-メチル-ヘプテン酸を挙げることができる。
より具体的には、メチルヘキセン酸としては、4-メチル-2-ヘキセン酸、4-メチル-3-ヘキセン酸、4-メチル-4-ヘキセン酸、4-メチル-5-ヘキセン酸、5-メチル-2-ヘキセン酸、5-メチル-3-ヘキセン酸、5-メチル-4-ヘキセン酸、5-メチル-5-ヘキセン酸;メチルヘプテン酸としては、4-メチル-2-ヘプテン酸、4-メチル-3-ヘプテン酸、4-メチル-4-ヘプテン酸、4-メチル-5-ヘプテン酸、4-メチル-6-ヘプテン酸、5-メチル-2-ヘプテン酸、5-メチル-3-ヘプテン酸、5-メチル-4-ヘプテン酸、5-メチル-5-ヘプテン酸、5-メチル-6-ヘプテン酸、6-メチル-2-ヘプテン酸、6-メチル-3-ヘプテン酸、6-メチル-4-ヘプテン酸、6-メチル-5-ヘプテン酸、6-メチル-6-ヘプテン酸が挙げられる。
これらのうち、4-メチル-ヘキセン酸、5-メチル-ヘキセン酸、6-ヘプテン酸、4-メチル-ヘプテン酸、5-メチル-ヘプテン酸、及び6-メチル-ヘプテン酸が好ましい。また、4-メチル-ヘキセン酸、5-メチル-ヘキセン酸がより好ましく、4-メチル-3-ヘキセン酸、5-メチル-2-ヘキセン酸、及び5-メチル-4-ヘキセン酸が特に好ましい。
【0015】
また、上記不飽和脂肪酸(1)の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩、塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。
【0016】
不飽和脂肪酸(1)は、入手容易な原料から、短工程にて合成することができる。例えば、下記反応式A、B、C、Dに従って合成することができる。
【0017】
例えば、不飽和脂肪酸(1)のうち、5-メチル-2-ヘキセン酸に代表される2-エン型化合物は、下記反応式A(R1、R2、R3及びR4は前記に同じ)に示すようにHorner-Wadsworth-Emmons反応により合成することができる〔D. J. Schauer, P, Helquist; Synthesis, 21, 3654-3660, (2006)〕。
【0018】
【化2】

【0019】
また、不飽和脂肪酸(1)のうち、5-メチル-3-ヘキセン酸に代表される3-エン型化合物は、反応式B(R1、R2、R3及びR4は前記に同じ)に示すように塩基存在下、マロン酸と対応するアルデヒドとの反応により合成することができる〔WO2006/083030 A1〕。
【0020】
【化3】

【0021】
また、不飽和脂肪酸(1)のうち、5-メチル-4-ヘキセン酸に代表される4-エン型化合物は、反応式C(R1、R2、R3及びR4は前記に同じ)に示すようにジョンソン−クライゼン転位により合成することができる〔S. Menon, D. Sinha-Mahapatra, and J. W. Herndon; Tetrahedron, 63, 8788-8793 (2007)〕。
【0022】
【化4】

【0023】
また、不飽和脂肪酸(1)のうち、5-メチル-5-ヘキセン酸に代表される5-エン型化合物は、反応式D(R1、R2、R3及びR4は前記に同じ)に示すようにマロン酸メチルエステル体と対応するアルケニルトシレートとの反応の後、塩基性条件下の加水分解により合成することができる〔K. Tanabe et al, Bull. Chem. Soc. Jpn, 2007, 80, 8,1597-1604〕。
【0024】
【化5】

【0025】
不飽和脂肪酸(1)はいずれも、アニマル様の香気を強く有するものであるが、カンファラスなトーンを有していない点において、3-メチル-2-ヘキセン酸とは香気上の特徴を顕著に異にする。そのため、この一般式(1)で表される不飽和脂肪酸は、他の各種アニマル系香料と調和しやすく、アニマルノート用香料素材として汎用性の高い化合物群である。
【0026】
不飽和脂肪酸(1)又はその塩は、他の香料成分と組み合わせることにより、アニマル系香気の賦香成分として好適に使用することができる。例えば、不飽和脂肪酸(1)又はその塩を他の香料と組み合わせることにより、アニマル系香気を有する調合香料を得ることができる。また、不飽和脂肪酸(1)又はその塩を他の香調を有する調合香料と組み合わせることにより、調合香料に艶っぽさや甘さといった、アニマル系香料の有する特徴が付与された香料組成物を得ることができる。この場合の不飽和脂肪酸(1)又はその塩の香料組成物への配合量は、併用する調合香料の種類、目的とする香気の種類及び強さ等によって異なり、また目的とする香気を賦与できる量であれば特に限定されないが、一般的には0.00001〜10質量%の範囲で使用し、0.0001〜1質量%の範囲で使用するのがより好ましい。
【0027】
不飽和脂肪酸(1)又はその塩と組み合わせる他の香料成分としては特に限定されず、合成香料及び天然香料のいずれも用いることができる。天然香料としては、例えば、イランイラン油、ラベンダー油、ローズ油、ジャスミン油、クラリーセージ油、サンダルウッド油、エレミ油、パチョウリ油、ペルーバルサム油、トルーバルサム油等が挙げられる。また合成香料としては、cis-3-ヘキセノール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、シンナミックアルコール、バニリン、クマリン、リモネン、γ-ウンデカラクトン、6-アセチル-1,1,3,4,4,6-ヘキサメチル-テトラヒドロナフタレン、5-アセチル-1,1,2,3,3,6-ヘキサメチルインダン、シクロペンタデカノン、フェニルエチルアルコール、アミンシンナミックアルデヒド、ローズオキサイド、ヘリオトロピン等が挙げられる。これらの香料は、それぞれ単独で又は2種以上を混合した調合香料として、不飽和脂肪酸(1)又はその塩と組み合わせて用いることができる。
【0028】
本発明の香料組成物は、様々な形態の芳香性製品に配合又は適用することができる。その利用分野としては、例えば、家庭用製品、香粧品製品、環境衛生製品等が挙げられる。
【0029】
「家庭用製品」とは、家庭生活に必要な住居や家庭製品等の様々な物品の機能又は清潔性を維持するための製品であり、具体的には衣料用洗剤、衣料用柔軟剤、衣料用糊剤、住居用洗剤、風呂用洗剤、食器用洗剤、漂白剤、カビ取り剤、床用ワックス等が挙げられる。
【0030】
「香粧品製品」とは、人の身なりを清潔に又は美しくするための製品であり、具体的には石鹸、身体洗浄剤、頭髪洗浄剤、頭髪化粧料、化粧品(例えば、皮膚化粧料、仕上げ化粧料など)、香水、コロン、制汗剤、デオドラント剤、浴用剤等が挙げられる。
【0031】
また、「環境衛生製品」とは、環境を所定の状態又は雰囲気に調節するための製品であり、特に香料組成物を適用して環境に漂う香りを調節することが可能な製品として、具体的には、芳香剤、消臭剤、薫香、線香、ろうそく等が挙げられる。
【実施例】
【0032】
製造例1 5-メチル-2-ヘキセン酸の合成
D. J. Schauer, Paul Helquist; Synthesis, 21, 3654-3660, (2006)に記載された方法に準じ、5-メチル-2-ヘキセン酸を合成した。
窒素雰囲気下、3口フラスコにトリフルオロメタンスルホン酸亜鉛(和光純薬工業)2.4g、(ジエトキシホスフィノイル)酢酸(和光純薬工業)0.48mL、N,N,N',N'―テトラメチルエチレンジアミン(和光純薬工業)0.5mL、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)(和光純薬工業)1.79mL及び無水THF(和光純薬)25mLを加えた。その後、イソバレルアルデヒド(東京化成工業)0.35mLを滴下しながら加え、20時間攪拌した。その後1N塩酸で反応を終了させ、ジクロロメタン50mL×2で抽出し、水50mL×2で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶剤を留去し、5-メチル-2-ヘキセン酸0.42g(収率99%)を得た。
得られた化合物はアニマリックかつハニーの香調を有し、わずかにシトラス様のトーンが感じられた。
【0033】
製造例2 5-メチル-3-ヘキセン酸の合成
WO2006/083030 A1に記載された方法に準じ、5-メチル-3-ヘキセン酸を合成した。
ナスフラスコに冷却管を取り付け、イソバレルアルデヒド(東京化成工業)2.68mL、マロン酸(和光純薬工業)2.86g、トリエチルアミン(和光純薬工業)3.84mLを加え、90℃で7時間加熱撹拌した。反応終了後、1N硫酸を適量加えジクロロメタンにて抽出した。抽出された有機層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮にて粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的物である5-メチル-3-ヘキセン酸を2.9g(収率91%)得た。
得られた化合物はアニマリックかつレモンを想起させるシトラスの香調を有しており、またウッディのトーンも感じられた。
【0034】
製造例3 5-メチル-4-ヘキセン酸の合成
S. Menon et al, Tetrahedron, 63, 8788-8793, (2007)に記載された方法に準じ、5-メチル-4-ヘキセン酸を合成した。
ナスフラスコに冷却管を取り付け、そこに2-メチル-3-ブテン-2-オール(和光純薬工業)1.82mL、トリエチルオルト酢酸(Aldrich)29.8mL及び2-ニトロフェノール(東京化成工業)0.16gを加え、36時間加熱還流した。室温に戻した後、メタノール:水=1:1の混合液25mLを加え、5N塩酸で酸性にした。その後ジエチルエーテル100mLで抽出し、水100mLで洗浄後、有機層溶液を減圧濃縮した。
次に、濃縮した有機層を、冷却管を取り付けたナスフラスコに移し、水酸化ナトリウム1.25g、エタノール30mL及び水5.5mLを加え、24時間加熱還流した。得られた溶液を室温に戻し、5N塩酸で酸性にした後、ジエチルエーテル100mLで抽出し、水100mLで洗浄した後、硫酸マグネシウムにて乾燥を行った。溶液を減圧留去し、5-メチル-4-ヘキセン酸を1.67g(収率67%)得た。
得られた化合物はアニマリックな香調で、蜂蜜を想起させるハニー調、フルーティー調のトーンも感じられた。
【0035】
製造例4 5-メチル-5-ヘキセン酸の合成
Bull. Chem. Doc. Jpn, 80(8), 1597-1604, (2007) に記載された方法に準じ、5-メチル-5-ヘキセン酸を合成した。
窒素雰囲気下、2口フラスコに冷却管を装備したものに、水素化ナトリウム(関東化学)0.312g、テトラヒドロフラン30mLを加え0℃に冷却した。そこにマロン酸ジメチル(東京化成工業)1.71mLを加え10分攪拌した後、3-メチル-3-ブテニルトシレート2.4gとテトラヒドロフラン5mLの混合溶液を滴下した。反応温度を室温に戻した後、20時間還流を行い、その後適当量の飽和アンモニウム水溶液を加え反応を終了させた。反応物をジエチルエーテル50mLにて抽出し、有機層を水で洗浄した後、硫酸マグネシウムによって乾燥、減圧留去し、粗生成物3gを回収した。
この反応物をそのまま冷却管を備えたナスフラスコに入れ、ジメチルホルムアミド20mL、塩化ナトリウム1gを加え24時間加熱還流し、脱炭酸を行った。反応終了後、水30mL、ジエチルエーテル30mLを加え、有機層を抽出し、硫酸マグネシウムにより乾燥、減圧留去し、5-メチル-5-ヘキサン酸メチルエステル体の粗生成物1.9gを得た。
この粗生成物を5%水酸化ナトリウム水溶液10mLとエタノール10mLとともに5時間加熱還流した後、カラムクロマトグラフィーにて精製したところ5-メチル-5-ヘキセン酸を1.2g(63%)得た。
得られた化合物はアニマリックかつハニーを強く感じさせる香調で、わずかにフルーティーなトーンも感じられた。
【0036】
製造例5 4-メチル-3-ヘキセン酸の合成
50mLナスフラスコに2-メチルブチルアルデヒド(東京化成工業)2.68mL、マロン酸(和光純薬工業)2.86g、トリエチルアミン(和光純薬工業)3.84mLを加え、90℃で7時間加熱撹拌した。反応終了後、1N硫酸を適量加えジクロロメタンにて抽出した。抽出された有機層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮にて粗生成物を2.3g得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的物である4-メチル-3-ヘキセン酸を1.5g(収率47%)得た。得られた4-メチル-3-ヘキセン酸の幾何異性体比はE:Z=2:1であった。
得られた化合物はアニマリックかつ強いグリーン感のある香調で、さらにフルーティー、シトラスのトーンも感じられた。
【0037】
実施例1
合成例1〜5で合成した化合物、及びこれらと同様の方法により合成したその他の化合物のニオイについて、香りを評価した。
各化合物を0.1質量%エタノール溶液に希釈し、ろ紙製のニオイ試験紙(長さ12cm×幅5mm)の下端1cmを浸して、専門の調香師3名が香りを評価した。評価は、下記の評価軸に従って行い、結果を表1に示した。
比較例として3-メチル-2-ヘキセン酸についても評価を行い、併せて表1に示した。
【0038】
◎:非常に強く香調が感じられる
○:強く香調が感じられる
△:香調が感じられる
【0039】
【表1】

【0040】
実施例2
本発明のアニマルノート用香料素材と他の香料成分を表2に示す組成で配合し、アニマル系調合香料を得た。
【0041】
【表2】

【0042】
表2の香料組成物を1質量%エタノール溶液に希釈し、ろ紙製のニオイ試験紙(長さ12cm×幅5mm)の下端1cmを浸して、専門の調香師3名が香りを評価した。ナチュラル感、ボリューム感、及びフレッシュ感について、以下の評価軸に従い評価した。総合評価は各得点を合計し、15点満点の評価とした。結果を表3に示す。
【0043】
5:非常に強く感じる
4:強く感じる
3:やや感じる
2:わずかに感じる
1:特に感じない
【0044】
【表3】

【0045】
実施例3
表4に示すローズ様の調合香料(比較例)の処方中、ジエチレングリコールの1質量部に代えて本発明の香料素材を配合し、香料組成物を得た。
【0046】
【表4】

【0047】
表4の香料組成物を1質量%エタノール溶液に希釈し、ろ紙製のニオイ試験紙(長さ12cm×幅5mm)の下端1cmを浸して、専門の調香師3名が香りを評価した。
本発明の香料素材を添加した場合(実施例3)、添加をしなかった場合(比較例)と比較して以下の点で香調が改善された。
5-メチル-2-ヘキセン酸: 艶っぽいボリューム感が加わった。
5-メチル-4-ヘキセン酸: まろやかな甘さが付与された。
4-メチル-3-ヘキセン酸: フレッシュなナチュラル感と甘さが付与された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表され、炭素数6〜8である不飽和脂肪酸又はその塩からなる香料素材。
【化1】

〔式中、R1は水素原子、メチル基又はメチレン基を示し、R2、R3及びR4はそれぞれ水素原子又はメチル基を示し、破線は二重結合であってもよいことを示し、そのうち少なくとも1箇所は二重結合である。〕
【請求項2】
不飽和脂肪酸が、4-メチル-ヘキセン酸、5-メチル-ヘキセン酸、6-ヘプテン酸、4-メチル-ヘプテン酸、5-メチル-ヘプテン酸及び6-メチル-ヘプテン酸から選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載の香料素材。
【請求項3】
アニマルノート用である請求項1又は2記載の香料素材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の香料素材を0.00001〜10質量%含有する香料組成物。
【請求項5】
請求項4記載の香料組成物を含有する家庭用製品。
【請求項6】
請求項4記載の香料組成物を含有する香粧品製品。
【請求項7】
請求項4記載の香料組成物を含有する環境衛生製品。

【公開番号】特開2010−144119(P2010−144119A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325302(P2008−325302)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】