説明

香料組成物及びそれを含む製品

【課題】安定性に優れ、且つ、高い香気が長時間持続する有香物質及びそれを含有してなる香料組成物の提供。
【解決手段】一般式(1):


[式中、RはC〜C10炭化水素基であり、Rは水素原子またはC〜C10炭化水素基であり、nは1または2である。]で示される化合物及びそれらの互変異性体からなる群から選ばれる少なくとも一種を有効成分として含む香料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料組成物ならびに該香料組成物を含む香粧品、トイレタリー製品、洗剤、日用雑貨及び飲食品などに関する。
【背景技術】
【0002】
香粧品、トイレタリー製品、洗剤、日用雑貨及び飲食品などをはじめ様々な分野において香りは商品購入の重要な要素である。消費者のニーズや商品コンセプトに応じて香りを創り出すことが求められており、香りのバリエーションを拡大するため、特徴的な香気を有する新しい香料素材の提供が望まれている。
香料素材としては、その香気が優れていることは勿論のこと、香気を長時間持続させるため安定性が高いことが求められる。
香料素材としてジケトン類が知られている。例えば、下記の構造を有する化合物はフルーティ感を伴うウッディ様の香気を有することが知られている(特開平8−119897号公報(特許文献1))。この化合物は、シクロヘキサノン環の2位にtert−ブチル基を有することを特徴としている。
【化1】

[式中、R1 は水素原子又はメチル基を、R2 は炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。]
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−119897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況の下、特徴的な香気を有し、且つ、その特徴的な香気が長時間持続する新規な有香物質及び香料組成物の提供が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため、各種化合物を合成し、その香気特性を検討したところ、下記式(1):
【化2】

[式中、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、Rは水素原子または直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、mは1または2である。]
で示される化合物、及び、一般式(2):
【化3】

[式中、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、Rは水素原子または直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、nは1または2である。]
で示される化合物またはそれらの互変異性体が特に興味深い香気を有することを見出した。さらに、これらの化合物のアシル鎖及びアルキル鎖の炭素数を変換するとそれぞれの香気特性が様々に変化し、特徴的な芳香を与えることを見出した。
また、これらの化合物は5員環及び6員環を形成することでリジッドな構造になるため、1,3−ジケトン構造を含むのにもかかわらず、高い安定性が期待される。得られた化合物を香料素材として用いることにより、様々な香気を有する香料組成物を創り出すことができる。本発明はこのような知見の下に完成したものである。
【0006】
すなわち、本発明は、以下に示した香料組成物及びそれを含む香粧品、トイレタリー製品、洗剤、日用雑貨、飲食品ならびに新規環状1,3−ジケトン化合物等に関するものである。
[1]一般式(1):
【化4】

[式中、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、Rは水素原子または直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、mは1または2である。]
で示される化合物、一般式(2):
【化5】

[式中、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、Rは水素原子または直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、nは1または2である。]
で示される化合物及びそれらの互変異性体からなる群から選ばれる少なくとも一種を有効成分として含む香料組成物。
[2]一般式(1):
【化6】

[式中、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、mは1または2である。]
で示される化合物、
一般式(2):
【化7】

[式中、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、nは1または2である。]
で示される化合物及びそれらの互変異性体からなる群から選ばれる少なくとも一種を有効成分として含む、[1]香料組成物。
[3]前記一般式(1)において、Rが直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10アルキル基であり、且つ、Rが直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10アルキル基である、[1]または[2]記載の香料組成物。
[4]前記一般式(1)において、mが2である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の香料組成物。
[5]前記一般式(1)で示される化合物が、2−アセチル−5−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−エチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−プロピルシクロヘキサノン、2−プロピオニル−5−メチルシクロヘキサノン、2−ブチリル−5−メチルシクロヘキサノン、2−ヘキサノイル−5−メチルシクロヘキサノン、2−オクタノイル−5−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−ブチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−ペンチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5,5−ジメチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−イソプロピルシクロヘキサノン、2−ペンタノイル−5−メチルシクロヘキサノン、2−デカノイル−5−メチルシクロヘキサノン及び2−ブチリル−5−メチルシクロペンタノンからなる群から選ばれる少なくとも一種である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の香料組成物。
[6]前記香料組成物が、(4R)−4−アルキル−2−アルカノイルシクロペンタノン、(5R)−5−アルキル−2−アルカノイルシクロヘキサノン、(4S)−4−アルキル−2−アルカノイルシクロペンタノン、(5S)−5−アルキル−2−アルカノイルシクロヘキサノン及びそれらの互変異性体からなる群から選ばれる少なくとも一種を含み、且つ、その立体選択性が50%e.e.以上である、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の香料組成物。
[7]前記一般式(1)で示される化合物及びその互変異性体を、香料組成物の全重量に対して、合計で0.001〜30重量%含む、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の香料組成物。
[8]前記一般式(2)において、Rが直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10アルキル基であり、且つ、Rが直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10アルキル基である、[1]〜[7]記載の香料組成物。
[9]前記一般式(2)において、nが2である、[1]〜[8]のいずれか1項に記載の香料組成物。
[10]前記一般式(2)で示される化合物が、2−アセチル−3−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3−エチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3−プロピルシクロヘキサノン、2−プロピオニル−3−メチルシクロヘキサノン、2−ブチリル−3−メチルシクロヘキサノン、2−ヘキサノイル−3−メチルシクロヘキサノン、2−オクタノイル−3−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3−ブチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3−ペンチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3,3−ジメチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3−イソプロピルシクロヘキサノン、2−ペンタノイル−3−メチルシクロヘキサノン、2−デカノイル−3−メチルシクロヘキサノン及び2−ブチリル−3−メチルシクロペンタノンからなる群から選ばれる少なくとも一種である、[1]〜[9]のいずれか1項に記載の香料組成物。
[11]前記香料組成物が、2−アセチル−5(R)−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5(R)−エチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5(R)−プロピルシクロヘキサノン、2−プロピオニル−5(R)−メチルシクロヘキサノン、2−ブチリル−5(R)−メチルシクロヘキサノン、2−ヘキサノイル−5(R)−メチルシクロヘキサノン、2−オクタノイル−5(R)−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5(R)−ブチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5(R)−ペンチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5(R)−イソプロピルシクロヘキサノン、2−ペンタノイル−5(R)−メチルシクロヘキサノン、2−デカノイル−5(R)−メチルシクロヘキサノン及び2−ブチリル−4(R)−メチルシクロペンタノン及びその(S)対掌体ならびにそれらの互変異性体からなる群から選ばれる少なくとも一種を含み、且つ、その立体選択性が50%e.e.以上である、[1]〜[9]のいずれか1項に記載の香料組成物。
[12]前記一般式(2)で示される化合物及びその互変異性体を、香料組成物の全重量に対して、合計で0.001〜20重量%含む、[1]〜[11]のいずれか1項に記載の香料組成物。
[13]前記一般式(1)で示される化合物またはその互変異性体、及び、前記一般式(2)で示される化合物またはその互変異性体の組み合わせを有効成分として含む、[1]〜[12]のいずれか1項に記載の香料組成物。
[14]前記一般式(1)で示される化合物及びその互変異性体を、香料組成物の全重量に対して、合計で0.001〜30重量%含み、且つ、前記一般式(2)で示される化合物及びその互変異性体を、香料組成物の全重量に対して、合計で0.001〜20重量%含む、[13]記載の香料組成物。
[15]前記一般式(1)で示される化合物及びその互変異性体と、前記一般式(2)で示される化合物及びその互変異性体との含有量の比が、重量比で、95:5〜50:50である、[13]又は[14]記載の香料組成物。
[16]前記一般式(1)におけるRと前記一般式(2)におけるRとが同一の基であり、且つ、前記一般式(1)におけるRと前記一般式(2)におけるRとが同一の基である、[13]〜[15]のいずれか1項に記載の香料組成物。
[17]香料担体をさらに含む、[1]〜[16]のいずれか1項に記載の香料組成物。
[18]香料保留剤をさらに含む、[1]〜[17]のいずれか1項に記載の香料組成物。
[19]エステル類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、フェノール類、エーテル類、ラクトン類、炭化水素類、含窒素化合物、含硫化合物類及び酸類の群から選ばれる合成香料をさらに含む、[1]〜[18]のいずれか1項に記載の香料組成物。
[20][1]〜[19]のいずれか1項に記載の香料組成物を含む製品。
[21]前記一般式(1)で示される化合物及びその互変異性体を、製品の全重量に対して、合計で0.0001〜30重量%含む、[20]記載の製品。
[22]前記一般式(2)で示される化合物及びその互変異性体を、製品の全重量に対して、合計で0.0001〜20重量%含む、[20]又は[21]記載の製品。
[23]香粧品、トイレタリー製品、洗剤、日用雑貨、飲食品及び医薬品からなる群から選ばれる、[20]〜[22]のいずれか1項に記載の製品。
[24]2−アセチル−5−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−エチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−プロピルシクロヘキサノン、2−プロピオニル−5−メチルシクロヘキサノン、2−ブチリル−5−メチルシクロヘキサノン、2−ヘキサノイル−5−メチルシクロヘキサノン、2−オクタノイル−5−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−ブチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5,5−ジメチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−イソプロピルシクロヘキサノン、2−デカノイル−5−メチルシクロヘキサノン、2−ブチリル−5−メチルシクロペンタノン及びそれらの互変異性体からなる群から選ばれる化合物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の香料組成物は、安定性に優れ、且つ、高い香気を有する環状1,3−ジケトン化合物及びその組み合わせを有効成分として含むため、高い香気が長時間持続するという利点を有している。環状1,3−ジケトン化合物の末端構造を変化させることで様々な香気特性を奏することができるので、本発明の香料組成物に用いる環状1,3−ジケトン化合物を目的及び用途等に応じて適宜選択することで、香粧品、トイレタリー製品、洗剤、日用雑貨または飲食品などの各種製品に所望の香気・香味を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の香料組成物及びその用途ならびに新規な環状1,3−ジケトン化合物について具体的に説明する。
【0009】
[1]香料組成物
本発明の香料組成物は、一般式(1):
【化8】

[式中、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、Rは水素原子または直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、mは1または2である。]
で示される化合物、一般式(2):
【化9】

[式中、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、Rは水素原子または直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、nは1または2である。]
で示される化合物及びそれらの互変異性体からなる群から選ばれる少なくとも一種を有効成分として含む。
【0010】
一般式(1)で示される化合物及び一般式(2)で示される化合物は、1,3−ジケトン構造を分子内にもち、特徴的な香気を有している。また該化合物は、5員環及び6員環を形成し、比較的リジッドな構造を有していることから、化合物が安定であり、香料組成物に配合した際に香気を長時間持続させることができる。
【0011】
一般式(1)において、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、Rは水素原子または直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基である。
【0012】
は直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であることが好ましい。この場合、一般式(1)は、下記一般式(1’):
【化10】

[式中、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、mは1または2であり、*は不斉炭素原子を表す。]
で示される。
中でも、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10アルキル基であり、且つ、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10アルキル基であることが好ましい。
【0013】
本明細書において、「C〜C10炭化水素基」としては、C〜C10アルキル基、C〜C10アルケニル基、C〜C10アルキニル基、C〜C10アルキルジエニル基、C〜C10アリール基、C〜C10アルキルアリール基、C〜C10アリールアルキル基、C〜C10シクロアルキル基、C〜C10シクロアルケニル基などが含まれる。
【0014】
本明細書において、「C〜C10アルキル基」は、C〜Cアルキル基であることが好ましく、C〜Cアルキル基であることがより好ましい。アルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ノニル等が挙げられる。
【0015】
本明細書において、「C〜C10アルケニル基」は、C〜Cアルケニル基であることが好ましく、C〜Cアルケニル基であることがより好ましい。アルケニル基の例としては、制限するわけではないが、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチルアリル、2−ブテニル等を挙げることができる。
【0016】
本明細書において、「C〜C10アルキニル基」は、C〜Cアルキニル基であることが好ましく、C〜Cアルキニル基であることが更に好ましい。アルキニル基の例としては、制限するわけではないが、エチニル、プロピニル、ブチニル等を挙げることができる。
【0017】
本明細書において、「C〜C10アルキルジエニル基」は、C〜Cアルキルジエニル基であることが好ましく、C〜Cアルキルジエニル基であることが更に好ましい。アルキルジエニル基の例としては、制限するわけではないが、1,3−ブタジエニル等を挙げることができる。
【0018】
本明細書において、「C〜C10アリール基」の例としては、フェニル基等を挙げることができる。
【0019】
本明細書において、「C〜C10アルキルアリール基」の例としては、o−トリル、m−トリル、p−トリル、2,3−キシリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、o−クメニル、m−クメニル、p−クメニル等を挙げることができる。
【0020】
本明細書において、「C〜C10アリールアルキル基」の例としては、ベンジル、フェネチル等を挙げることができる。
【0021】
本明細書において、「C〜C10シクロアルキル基」は、C〜C__シクロアルキル基であることが好ましい。シクロアルキル基の例としては、制限するわけではないが、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることができる。
【0022】
本明細書において、「C〜C10シクロアルケニル基」は、C〜Cシクロアルケニル基であることが好ましい。シクロアルケニル基の例としては、制限するわけではないが、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等を挙げることができる。
【0023】
一般式(1)において、mは1または2であり、特に2が好ましい。前述したとおり、上記化合物が5員環(m=1)または6員環(m=2)を形成することで、化合物の安定性が高められると考えられ、香料組成物に配合した際に香気を長時間持続させることができる。特に、上記化合物が6員環を組むと化合物の安定性がより高められ、より長時間香気を持続させることができる。
【0024】
一般式(1)で示される化合物は、下記式で示されるとおりケト−エノール互変異性体を有している。
【化11】

[式中、R、R及びmはそれぞれ前記と同義である。]
【0025】
本発明の香料組成物において、一般式(1)で示される化合物は、その一部又は全部が、互変異性体の形態で存在していてもよい。
【0026】
本発明の香料組成物に用いられる上記一般式(1)で示される化合物としては、2−アセチル−5−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−エチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−プロピルシクロヘキサノン、2−プロピオニル−5−メチルシクロヘキサノン、2−ブチリル−5−メチルシクロヘキサノン、2−ヘキサノイル−5−メチルシクロヘキサノン、2−オクタノイル−5−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−ブチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−ペンチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5,5−ジメチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−イソプロピルシクロヘキサノン、2−ペンタノイル−5−メチルシクロヘキサノン、2−デカノイル−5−メチルシクロヘキサノン及び2−ブチリル−5−メチルシクロペンタノンなどが挙げられる。
【0027】
本発明の一実施態様では、上記一般式(1)で示される化合物の中でも、2−アセチル−5−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−エチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−プロピルシクロヘキサノン、2−プロピオニル−5−メチルシクロヘキサノン、2−ブチリル−5−メチルシクロヘキサノン、2−ヘキサノイル−5−メチルシクロヘキサノン、2−オクタノイル−5−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5,5−ジメチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−イソプロピルシクロヘキサノン及び2−デカノイル−5−メチルシクロヘキサノンが好ましい。
【0028】
本発明の一実施態様において、一般式(1)で示される化合物及びその互変異性体は、光学活性化合物であることが好ましい。光学活性化合物の光学純度を変化させることでさまざまな香調となり、香気特性を著しく変化させることができる。
【0029】
光学活性化合物としては、上記一般式(1)で示される化合物に対応するS体またはR体の光学活性化合物またはその互変異性体が挙げられる。
【0030】
本発明の一実施態様において、本発明の香料組成物は、(4R)−4−アルキル−2−アルカノイルシクロペンタノン、(5R)−5−アルキル−2−アルカノイルシクロヘキサノン、(4S)−4−アルキル−2−アルカノイルシクロペンタノン、(5S)−5−アルキル−2−アルカノイルシクロヘキサノンまたはそれらの互変異性体を含むことが好ましい。
【0031】
また、本発明の他の一実施態様では、本発明の香料組成物は、2−アセチル−5(R)−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5(R)−エチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5(R)−プロピルシクロヘキサノン、2−プロピオニル−5(R)−メチルシクロヘキサノン、2−ブチリル−5(R)−メチルシクロヘキサノン、2−ヘキサノイル−5(R)−メチルシクロヘキサノン、2−オクタノイル−5(R)−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5(R)−ブチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5(R)−ペンチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5(R)−イソプロピルシクロヘキサノン、2−ペンチルペンタノイル5(R)−メチルシクロヘキサノン、2−デカノイル−5(R)−メチルシクロヘキサノン及び2−ブチリル−4(R)−メチルシクロペンタノン及びその(S)対掌体ならびにそれらの互変異性体を含むことが好ましい。
中でも、2−アセチル−5(S)−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5(S)−プロピルシクロヘキサノン、2−アセチル−5(R)−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5(R)−プロピルシクロヘキサノンまたはそれらの互変異性体を含むことが好ましい。
【0032】
上記化合物を光学活性化合物として用いる場合、その立体選択性は50%e.e.以上が好ましく、80%e.e.以上がより好ましく、90%e.e.以上が更に好ましい。
【0033】
本発明の香料組成物に配合される一般式(1)で示される化合物及びその互変異性体の含有量は、香料組成物の全重量に対して、合計で、0.001〜30重量%であることが好ましく、0.01〜15重量%であることがより好ましい。
【0034】
一般式(2)において、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、Rは水素原子または直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基である。
【0035】
は直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であることが好ましい。この場合、一般式(2)は、下記一般式(2’):
【化12】

[式中、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、nは1または2であり、*は不斉炭素原子を表す。]
で示される。
中でも、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10アルキル基であり、且つ、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10アルキル基であることが好ましい。「C〜C10炭化水素基」、「C〜C10アルキル基」の具体例は、一般式(1)の説明で述べたとおりである。
【0036】
一般式(2)において、nは1または2であり、特に2が好ましい。上記化合物が5員環(n=1)または6員環(n=2)を形成することで、香料組成物に配合した際に香気を長時間持続させることができる。特に、上記化合物が6員環を組むと化合物の安定性がより高められ、より長時間香気を持続させることができる。
【0037】
本発明の好ましい態様では、一般式(2)で示される化合物は、下記式で示されるとおりケト−エノール互変異性体を有している。
【化13】

[式中、R、Rおよびnはそれぞれ前記と同義である。]
【0038】
本発明の香料組成物において、一般式(2)で示される化合物は、その一部又は全部が、互変異性体の形態で存在していてもよい。
【0039】
本発明の香料組成物に用いられる上記一般式(2)で示される化合物としては、2−アセチル−3−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3−エチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3−プロピルシクロヘキサノン、2−プロピオニル−3−メチルシクロヘキサノン、2−ブチリル−3−メチルシクロヘキサノン、2−ヘキサノイル−3−メチルシクロヘキサノン、2−オクタノイル−3−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3−ブチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3−ペンチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3,3−ジメチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3−イソプロピルシクロヘキサノン、2−ペンチル−3−メチルシクロヘキサノン、2−デカノイル−3−メチルシクロヘキサノン及び2−ブチリル−3−メチルシクロペンタノンなどが挙げられる。
【0040】
本発明の一実施態様において、一般式(2)で示される化合物は、光学活性化合物であることが好ましい。光学活性化合物の光学純度を変化させることでさまざまな香調となり、香気特性を著しく変化させることができる。
【0041】
本発明の香料組成物に用いられる上記一般式(2)で示される化合物の光学活性体としては、2−アセチル−3(R)−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3(R)−エチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3(R)−プロピルシクロヘキサノン、2−プロピオニル−3(R)−メチルシクロヘキサノン、2−ブチリル−3(R)−メチルシクロヘキサノン、2−ヘキサノイル−3(R)−メチルシクロヘキサノン、2−オクタノイル−3(R)−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3(R)−ブチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3(R)−ペンチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3(R)−イソプロピルシクロヘキサノン、2−ペンチル−3(R)−メチルシクロヘキサノン、2−デカノイル−3(R)−メチルシクロヘキサノン及び2−ブチリル−3(R)−メチルシクロペンタノン及びその(S)対掌体などが挙げられる。
【0042】
中でも、2−アセチル−3(R)−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3(R)−プロピルシクロヘキサノン、2−ブチリル−3(R)−メチルシクロヘキサノン、2−ヘキサノイル−3(R)−メチルシクロヘキサノン、2−オクタノイル−3(R)−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3(R)−ブチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3(R)−ペンチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3(R)−イソプロピルシクロヘキサノン、2−ペンチル−3(R)−メチルシクロヘキサノン、2−デカノイル−3(R)−メチルシクロヘキサノン及び2−ブチリル−3(R)−メチルシクロペンタノン及びその(S)対掌体が好ましい。
【0043】
本発明の一実施態様では、一般式(2)で示される光学活性化合物は、(3R)−3−アルキル−2−アルカノイルシクロペンタノン、(3R)−3−アルキル−2−アルカノイルシクロヘキサノン、(3S)−3−アルキル−2−アルカノイルシクロペンタノン及び(3S)−3−アルキル−2−アルカノイルシクロヘキサノンであることが好ましい。
【0044】
また、上記化合物を光学活性化合物として用いる場合、その立体選択性は50%e.e.以上が好ましく、80%e.e.以上がより好ましく、90%e.e.以上が更に好ましい。
【0045】
本発明の香料組成物に配合される一般式(2)で示される化合物及びその互変異性体の含有量は、香料組成物の全重量に対して、合計で、0.001〜20重量%であることが好ましく、0.01〜10重量%であることがより好ましい。
【0046】
本発明の好ましい態様では、一般式(1)で示される化合物またはその互変異性体、及び、一般式(2)で示される化合物またはその互変異性体の組み合わせを有効成分として含むことが好ましい。この場合、一般式(1)におけるRと前記一般式(2)におけるRとが同一の基であり、且つ、前記一般式(1)におけるRと前記一般式(2)におけるRとが同一の基であることが好ましい。
【0047】
一般式(1)で示される化合物またはその互変異性体、及び、一般式(2)で示される化合物またはその互変異性体の組み合わせを有効成分として含む場合、前記一般式(1)で示される化合物及びその互変異性体を、香料組成物の全重量に対して、合計で0.001〜30重量%含み、且つ、前記一般式(2)で示される化合物及びその互変異性体を、香料組成物の全重量に対して、合計で0.001〜20重量%含むことが好ましい。
また、前記一般式(1)で示される化合物及びその互変異性体を、香料組成物の全重量に対して、合計で0.01〜15重量%含み、且つ、前記一般式(2)で示される化合物及びその互変異性体を、香料組成物の全重量に対して、合計で0.01〜10重量%含むことがより好ましい。
【0048】
また、一般式(1)で示される化合物及びその互変異性体と、一般式(2)で示される化合物及びその互変異性体との含有量の比が、重量比で、95:5〜50:50であることが好ましく、90:10〜60:40がより好ましく、80:20〜70:30が更に好ましい。
【0049】
上記一般式(1)で示される化合物及び一般式(2)で示される化合物ならびにそれらの互変異性体は、例えば、下記の反応により製造することができる。
【化14】

[式中、Rは、R又はRであり、R’は、R又はRである。]
【0050】
具体的には、先ず、3−メチルシクロヘキサノンに代表される、3位に種々の置換基R’を持つシクロヘキサノンと、2級アミンとを酸触媒の存在下で反応させることにより、中間体エナミンを得る。
使用される2級アミンは特に限定されないが、例えばジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、置換基を有しても良いピペリジン類、置換基を有しても良いモルホリン類などが挙げられ、所望するジケトン体の比率(すなわち、一般式(1)で示される化合物及びその互変異性体と、一般式(2)で示される化合物及びその互変異性体との含有量の比)により、これらを単独又は混合して使用することができる。
次いで、得られた中間体エナミンを、無水酢酸に代表される酸無水物あるいは塩化アセチルに代表される酸塩化物と反応させることにより、2−アセチル−5−メチルシクロヘキサノンに代表される、種々の置換基RおよびR’を持つジケトンの混合物が得られる。
対応する光学活性化合物は、出発物質において所望の光学純度を持つ3−アルキルシクロヘキサノンを用いることで、容易に合成することができる。
このようにして得られたジケトン化合物を、例えばカラムクロマトグラフィー等の通常の分離精製技術を用いて分離精製することにより、目的物を単離することができる。
反応の詳細については、Bull. Soc. Chim. France 1968, 3395を参照することができ、反応条件等を適宜設定することにより、所望の化合物を混合物として得ることができる。
なお、合成方法の一例を実施例に示したので、反応条件等については実施例を参照されたい。
【0051】
本発明の香料組成物は、香料担体をさらに含むことができる。本明細書において、「香料担体」とは、一般式(1)で示される化合物、一般式(2)で示される化合物及びそれらの互変異性体と、その感覚刺激特性を著しく変化させることなく混合することが可能な材料を意味する。本発明に用いられる香料担体としては、液体担体でもよいし、固体担体であってもよい。
【0052】
液体担体としては、例えば、水、炭素数1〜5の低級アルコール、プロピレンカーボネート、液体ポリエチレングリコール及びそれらの混合物などが挙げられる。低級アルコールには、一価、二価(グリコール等)、三価(グリセロール等)及び多価(ポリオール)アルコールなどが包含される。
【0053】
本発明の香料組成物において通常使用される液体担体の具体例としては、水と、低分子量の有機溶媒、例えばエタノール、プロパノール、イソプロパノール又はブタノールなどの低級アルコール、プロピレンカーボネート及び/又はグリコールエーテルとの混合物などが好ましくは挙げられる。
【0054】
固体担体としては、例えば、アラビアガム、トラガントガムなどの天然ガム質類、界面活性剤(例えばグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤など)、賦形剤(ゼラチン、デキストリンなど)、包接剤(シクロデキストリンなど)が挙げられる。
【0055】
本発明の香料組成物は、天然ガム質類、界面活性剤などの固体担体に可溶化または乳化分散させて可溶化状または分散状にしてもよい。あるいは、アラビアガム等の天然ガム質類、ゼラチン、デキストリンなどの賦形剤を用いて、本発明の香料組成物を被膜形成した粉末状にしてもよいし、カプセル化剤で処理してマイクロカプセルにしてもよい。さらに、シクロデキストリンなどの包接剤に包接して、本発明の香料組成物を安定化すると共に徐放性にしてもよい。
【0056】
これらの香料担体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
本発明の香料組成物において香料担体の含有量は、香料組成物中に含まれる有効成分である一般式(1)で示される化合物、一般式(2)で示される化合物及びそれらの互変異性体の含有量によっても大きく異なるが、典型的には、香料組成物の全重量に対して、50〜95重量%が好ましい。
【0058】
本発明の香料組成物は、香料保留剤をさらに含むことができる。本明細書において、「香料保留剤」とは、香料の香気を持続させ、一般式(1)で示される化合物、一般式(2)で示される化合物及びそれらの互変異性体の芳香特性及び保留性を調整する材料を意味する。
【0059】
本発明に用いられる香料保留剤としては、ジプロピレングリコール、トリエチルシトレート、ベンジルベンゾエート、ベンジルサリシレート、ジエチルフタレートなどの通常香料組成物の香料保留剤として公知の材料が挙げられる。また、2−(メントキシ)エタン−1−オール、1−(メントキシ)プロパン−2−オール、3−(メントキシ)プロパン−1−オール、1−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、4−(メントキシ)ブタン−1−オールなどの特開2002−88391号公報に記載される香料保留剤を用いることもできる。
【0060】
これらの中でも、2−(1−メントキシ)エタン−1−オール、1−(1−メントキシ)プロパン−2−オール、3−(1−メントキシ)プロパン−1−オール、3−(1−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、2−メチル−3−(1−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、4−(1−メントキシ)ブタン−1−オールが好ましく、3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、3−(1−メントキシ)プロパン−1,2−ジオールが特に好ましい。
【0061】
これらの香料保留剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
香料保留剤の含有量は、特に制限されなく、目的及び用途に応じて適宜選択することができる。例えば、ジプロピレングリコールの場合には、香料組成物の全重量に対して、0.1〜30重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましく、5〜10重量%が更に好ましい。
【0063】
本発明の香料組成物は、本発明の目的及び効果を損なわない範囲で、各種の合成香料、天然精油、合成精油、柑橘油、動物性香料、その他の通常香料組成物を調製する際に使用される調香成分をさらに含むことができる。
【0064】
本発明の香料組成物に用いられる合成香料としては、従来から香気・香味を付与する目的で使用されているものであれば特に制限されなく、例えば、「合成香料 化学と商品知識」(印藤元一著、化学工業日報社)等に記載のエステル類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、フェノール類、エーテル類、ラクトン類、炭化水素類、含窒素化合物、含硫化合物類および酸類からなる群から選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。
【0065】
エステル類としては、例えば、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸アミル、ギ酸オクチル、ギ酸リナリル、ギ酸シトロネリル、ギ酸ゲラニル、ギ酸ネリル、ギ酸テルピニル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、酢酸シス−3−ヘキセニル、酢酸トランス−2−ヘキセニル、酢酸オクチル、酢酸ノニル、酢酸デシル、酢酸ドデシル、酢酸ジメチルウンデカジエニル、酢酸スチラリル、酢酸オシメニル、酢酸ミルセニル、酢酸ジヒドロミルセニル、酢酸リナリル、酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸ネリル、酢酸テトラヒドロムゴール、酢酸ラバンジュリル、酢酸ネロリドール、酢酸ジヒドロクミニル、酢酸テルピニル、酢酸シトリル、酢酸ノピル、酢酸ジヒドロテルピニル、酢酸2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニルメチル、酢酸ミラルディル、酢酸ベチコール、プロピオン酸デセニル、プロピオン酸リナリル、プロピオン酸ゲラニル、プロピオン酸ネリル、プロピオン酸テルピニル、プロピオン酸トリシクロデセニル、プロピオン酸スチラリル、プロピオン酸アニシル、酪酸オクチル、酪酸ネリル、酪酸シンナミル、イソ酪酸イソプロピル、イソ酪酸オクチル、イソ酪酸リナリル、イソ酪酸ネリル、イソ吉草酸リナリル、イソ吉草酸テルピニル、イソ吉草酸フェニルエチル、2−メチル吉草酸2−メチルペンチル、3−ヒドロキシヘキサン酸メチル、3−ヒドロキシヘキサン酸エチル、オクタン酸メチル、オクタン酸オクチル、オクタン酸リナリル、ノナン酸メチル、ウンデシレン酸メチル、安息香酸リナリル、ケイヒ酸メチル、アンゲリカ酸イソプレニル、ゲラン酸メチル、クエン酸トリエチル、アセト酢酸エチル、2−ヘキシルアセト酢酸エチル、ベンジルアセト酢酸エチル、2−エチル酪酸アリル、3−ヒドロキシ酪酸エチル、ノナン酸エチル、デカン酸エチル、2,4−デカジエン酸エチル、2,4−デカジエン酸プロピル、アントラニル酸メチル及びリナリル、N−メチルアントラニル酸エチル等を挙げることができる。
【0066】
アルコール類としては、例えば、3−ヘプタノール、1−ノナノール、1−ウンデカノール、2−ウンデカノール、1−ドデカノール、プレノール、10−ウンデセン−1−オール、ジヒドロリナロール、テトラヒドロムゴール、ミルセノール、ジヒドロミルセノール、テトラヒドロミルセノール、オシメノール、テルピネオール、ホートリエノール、3−ツヤノール、ベンジルアルコール、β−フェニルエチルアルコール、α−フェニルエチルアルコール、3−メチル−1−ペンタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−オクタノール、1−ノナノール、2−ノナノール、2,6−ジメチルヘプタノール、1−デカノール、トランス−2−ヘキセノール、シス−4−ヘキセノール、メチルトリメチルシクロペンテニルブテノール、シトロネロール、ジヒドロミルセノール、ロジノール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、テトラヒドロリナロール、ジメチルオクタノール、ヒドロキシシトロネロール、イソプレゴール、メントール、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、カルベオール、ジヒドロカルベオール、ペリラアルコール、4−ツヤノール、ミルテノール、α−フェンキルアルコール、ファルネソール、ネロリドール、セドレノール、アニスアルコール、ヒドロトロパアルコール、3−フェニルプロピルアルコール、シンナミックアルコール、アミルシンナミックアルコール等を挙げることができる。
【0067】
アルデヒド類としては、例えば、アセトアルデヒド、n−ヘキサナール、n−ヘプタナール、n−オクタナール、n−ノナナール、2−メチルオクタナール、3,5,5−トリメチルヘキサナール、デカナール、ウンデカナール、2−メチルデカナール、ドデカナール、トリデカナール、テトラデカナール、トランス−2−ヘキセナール、トランス−4−デセナール、シス−4−デセナール、トランス−2−デセナール、10−ウンデセナール、トランス−2−ウンデセナール、トランス−2−ドデセナール、3−ドデセナール、トランス−2−トリデセナール、2,4−ヘキサジエナール、2,4−デカジエナール、2,4−ドデカジエナール、5,9−ジメチル−4,8−デカジエナール、シトラール、ジメチルオクタナール、α−メチレンシトロネラール、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、ミルテナール、ネラール、α−あるいはβ−シネンサール、マイラックアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、オクタナールジメチルアセタール、ノナナールジメチルアセタール、デカナールジメチルアセタール、デカナールジエチルアセタール、2−メチルウンデカナールジメチルアセタール、シトラールジメチルアセタール、シトラールジエチルアセタール、シトラールプロピレングリコールアセタール、n−バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2−メチルブタナール、2−ペンテナール、トランス−2−ヘプテナール、トランス−2−ノネナール、2,6−ジメチル−5−ペプテナール、2,4−ウンデカジエナール、トリメチルデカジエナール、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、サフラナール、ベルンアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−イソプロピルフェニルアセトアルデヒド、p−メチルヒドロトロパアルデヒド、フェニルプロピオンアルデヒド、2−メチル−3−(4−メチルフェニル)プロパナール、シクラメンアルデヒド、シンナミックアルデヒド、サリチルアルデヒド、アニスアルデヒド、p−メチルフェノキシアセトアルデヒド、アセトアルデヒドジエチルアセタール、シトロネリルメチルアセタール、アセトアルデヒド 2−フェニル−2,4−ペンタンジオールアセタール、2−ヘキセナールジエチルアセタール、シス−3−ヘキセナールジエチルアセタール、ヘプタナールジエチルアセタール、2−ヘキシル−5−メチル−1,3−ジオキソラン、シトロネラールシクロモノグリコールアセタール、ヒドロキシシトロネラールジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール等を挙げることができる。
【0068】
ケトン類としては、例えば、2−ペンタノン、3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、2−ウンデカノン、メチルヘプテノン、ジメチルオクテノン、ゲラニルアセトン、ファルネシルアセトン、2,3,5−トリメチル−4−シクロヘキセニル−1−メチルケトン、ネロン、ヌートカトン、ジヒドロヌートカトン、アセトフェノン、4,7−ジヒドロ−2−イソペンチル−2−メチル−1,3−ジオキセピン、2−ペンタノン、3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2,3−ヘキサジオン、3−ノナノン、エチルイソアミルケトン、ジアセチル、アミルシクロペンテノン、2−シクロペンチルシクロペンタノン、ヘキシルシクロペンタノン、ヘプチルシクロペンタノン、シス−ジャスモン、ジヒドロジャスモン、トリメチルペンチルシクロペンタノン、2−(2−(4−メチル)−3−シクロヘキセン−1−イル)プロピルシクロペンタノン、ダマスコン、α−ダイナスコン、トリメチルシクロヘキセニルブテノン、ヨノン、β―ヨノン、メチルヨノン、アリルヨノン、プリカトン、カシュメラン、l−カルボン、メントン、カンファー、p−メチルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、ベンジリデンアセトン、ラズベリーケトン、メチルナフチルケトン、ベンゾフェノン、フルフラールアセトン、ホモフロノール、マルトール、エチルマルトール、アセト酢酸エチルエチレングリコールケタール等を挙げることができる。
【0069】
フェノール類としては、例えば、チモール、カルバクロール、β−ナフトールイソブチルエーテル、アネトール、β−ナフトールメチルエーテル、β−ナフトールエチルエーテル、クレオゾール、ベラトロール、ヒドロキノンジメチルエーテル、2,6−ジメトキシフェノール、4−エチルグアヤコール、オイゲノール、イソオイゲノール、エチルイソオイゲノール、tert−ブチルヒドロキノンジメチルエーテル等を挙げることができる。
【0070】
エーテル類としては、例えば、デシルビニルエーテル、α−テルピニルメチルエーテル、イソプロキセン、2,2−ジメチル−5−(1−メチル−1−プロペニル)−テトラヒドロフラン、ローズフラン、1,4−シネオール、ネロールオキサイド、2,2,6−トリメチル−6−ビニルテトラヒドロピラン、メチルヘキシルエーテル、オシメンエポキシド、リモネンオキサイド、ルボフィクス、カリオフィレンオキサイド、リナロールオキサイド、5−イソプロペニル−2−メチル−2−ビニルテトラヒドロフラン、ネロールオキサイド、ローズオキサイド等を挙げることができる。
【0071】
ラクトン類としては、例えば、γ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、γ−ヘキサラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、γ−ドデカラクトン、ジャスンミラクトン、メチルγ−デカラクトン、7−デセノラクトン、ジャスモラクトン、プロピリデンフタリド、δ−ヘキサラクトン、δ−2−デセノラクトン、ε−ドデカラクトン、ジヒドロクマリン、クマリン等を挙げることができる。
【0072】
炭化水素類としては、例えば、オシメン、リモネン、α−フェランドレン、テルピネン、3−カレン、ビサボレン、バレンセン、アロオシメン、ミルセン、ファルネセン、α−ピネン、β−ピネン、カンフェン、テルピノーレン、p−サイメン、セドレン、β−カリオフィレン、カジネン等を挙げることができる。
【0073】
含窒素化合物又は含硫化合物類としては、例えば、アントラニル酸メチル、アントラニル酸エチル、N−メチルアントラニル酸メチル、N−2’−メチルペンチリデンアントラニル酸メチル、リガントラール、ドデカンニトリル、2−トリデセンニトリル、ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリル、3,7−ジメチル−2,6−ノナジエノニトリル、インドール、5−メチル−3−ヘプタノンオキシム、リモネンチオール、1−P−メンテン−8−チオール、アントラニル酸ブチル、アントラニル酸シス−3−ヘキセニル、アントラニル酸フェニルエチル、アントラニル酸シンナミル、ジメチルスルフィド、8−メルカプトメントン等を挙げることができる。
【0074】
酸類としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、2−デセン酸、ゲラン酸、2−メチル酪酸、2−エチル酪酸、フェニル酢酸、ケイ皮酸、イソ酪酸、イソ吉草酸、3−メチル吉草酸、2−ヘキセン酸、2−メチル−2−ペンテン酸、2−メチルヘプタン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、乳酸、ピルビン酸、シクロヘキサンカルボン酸等を挙げることができる。
【0075】
天然香料としては、例えば、スイートオレンジ、ビターオレンジ、ネロリ、マンダリン、オレンジ、プチグレン、ベルガモット、タンゼリン、温州ミカン、ダイダイ、ハッサク、イヨカン、レモン、ライム、グレープフルーツ、ユズ、スダチ、カボス、スウィーティー等を例示することができる。
【0076】
また、上記の天然香料以外に、例えば、シトロネラ、エレミ、オリバナム、マジョラム、アンゲリカルート、スターアニス、バジル、ヘイ、カラマス、キャラウェイ、カルダモン、ペッパー、カスカリラ、ジンジャー、セージ、クラリセージ、クローブ、コリアンダー、ユーカリ、フェンネル、ピメント、ジュニパー、フェネグリーク、ローレル、メース、スギ、センキュウ、アーモンド、アップルミント、アニス、アルテミシア、アルファルファ、アンズ、アンブレット、イグサ、イチゴ、イチジク、イランイラン、ウインターグリーン、ウメ、エルダー、エンジュ、オークモス、オールスパイス、オリス、カーラント、カッシー、カモミル、ガランガ、カリン、ガンビア、グァバ、グーズベリー、クスノキ、クチナシ、クベバ、クミン、クランベリー、コーラ、サンショウ、サンダラック、サンダルウッド、サンダルレッド、シソ、シベット、ジャスミン、ショウガ、ジンセン、シンナモン、スターフルーツ、スチラックス、スペアミント、ゼラニウム、タイム、タバナ、タンジー、タンジェリン、チャンパカ、チュベローズ、ツバキ、ディタニー、トルーバルサム、トンカ、ナッツ、ナツメ、ナツメグ、ナンテン、ニアウリ、ニンジン、バイオレット、パイナップル、ハイビスカス、ハチミツ、ハッカ、パッションフルーツ、バニラ、バラ、ヒソップ、ヒノキ、フーゼル油、ブチュ、ペパーミント、ペピーノ、ベルベナ、ボアドローズ、ポポー、ボルドー、ボロニア、マツ、マンゴー、ミツロウ、ミモザ、ミルフォイル、ムスク、メープル、メリッサ、メロン、モモ、ヤラヤラ、ラベンダー、リキュール、リツェア、リンデン、ルー、レンブ、ローズマリー、ロベージ等を本発明の香気・香味付与又は改良剤として使用することもできる。
【0077】
これらの調香成分の含有量は、特に制限されなく、香料組成物の目的及び用途に応じて適宜選択することができる。
例えば、オレンジオイルの場合、香料組成物の全重量に対して、0.1〜20重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましく、1〜5重量%が更に好ましい。
γ−ウンデカラクトンの場合、香料組成物の全重量に対して、0.1〜20重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましく、1〜5重量%が更に好ましい。
β−ヨノンの場合、香料組成物の全重量に対して、0.1〜20重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましく、5〜10重量%が更に好ましい。
【0078】
本発明の香料組成物は、さらに目的及び用途に応じて他の香料組成物と配合することができる。具体的には、オレンジフレーバー、レモンフレーバー、ライムフレーバー、グレープフルーツフレーバー、ユズフレーバー、スダチフレーバーなどのシトラス系香料;ストロベリーフレーバー、ラズベリーフレーバー、ブルーベリーフレーバーなどのベリー類系香料;マンゴーフレーバー、パパイヤフレーバー、グァバフレーバー、パッションフルーツフレーバー、ライチフレーバーなどのトロピカルフルーツ系香料;アップルフレーバー、グレープフレーバー、パイナップルフレーバー、バナナフレーバー、ピーチフレーバー、メロンフレーバー、アンズフレーバー、ウメフレーバー、チェリー(サクランボ)フレーバーなどのフルーツ系香料;緑茶フレーバー、ウーロン茶フレーバー、紅茶フレーバー、コーヒーフレーバーなどの茶、コーヒー系香料;ビーフフレーバー、ポークフレーバー、チキンフレーバーなどのミート系香料;アサフェチダフレーバー、アジョワンフレーバー、アニスフレーバー、アンゼリカフレーバー、ウイキョウフレーバー、オールスパイスフレーバー、シナモンフレーバー、カッシャフレーバー、カモミールフレーバー、カラシナフレーバー、カルダモンフレーバー、キャラウェイフレーバー、クミンフレーバー、クローブフレーバー、コショウフレーバー、コリアンダーフレーバー、サッサフラスフレーバー、セイボリーフレーバー、サンショウフレーバー、シソフレーバー、ジュニパーベリーフレーバー、ジンジャーフレーバー、スターアニスフレーバー、セイヨウワサビフレーバー、セージフレーバー、タイムフレーバー、タラゴンフレーバー、ディルフレーバー、トウガラシフレーバー、ナツメフレーバー、ナツメグフレーバー、バジルフレーバー、パセリフレーバー、マジョラムフレーバー、ローズマリーフレーバー、ローレルフレーバー、ワサビフレーバーなどのハーブ、スパイス系香料;オニオンフレーバー、ガーリックフレーバー、ネギフレーバー、キャベツフレーバー、キャロットフレーバー、セロリーフレーバー、シイタケフレーバー、松茸フレーバー、トマトフレーバー、ゴボウフレーバー、ミツバフレーバーなどの野菜系香料;ペパーミントフレーバー、スペアミントフレーバー、和種ハッカフレーバーなどのミント系香料;バニラ系香料;アーモンドフレーバー、カシューナッツフレーバー、ピーナッツフレーバー、ヘーゼルナッツフレーバー、ウォルナッツフレーバー、チェスナッツフレーバー、マカデミアナッツフレーバー、ペカンナッツフレーバー、ピスタチオフレーバー、ブラジルナッツフレーバー、ココナッツフレーバーなどのナッツ系香料;ワインフレーバー、ウイスキーフレーバー、ブランデーフレーバー、ラムフレーバー、ジンフレーバー、リキュールフレーバーなどの洋酒系香料;コーンフレーバー、ポテトフレーバー、スイートポテトフレーバー、米飯フレーバー、ブレッドフレーバーなどの穀物系香料;ハネーフレーバー、メープルシロップフレーバー、シュガーフレーバー、黒糖フレーバー、モラセスフレーバーなどのシュガー系香料などが挙げられる。
【0079】
上記合成香料は、市場で容易に入手可能であり、必要により容易に合成することもできる。上記天然香料に関しても、市販品を用いることもできるし、通常用いられる方法で容易に抽出精製することができる。
【0080】
[2]香料組成物を用いた製品
本発明の香料組成物は、例えば、香粧品、トイレタリー製品、洗剤、日用雑貨、飲食品及び医薬品等の製品に配合して、各種製品の香気・香味付けに用いることができる。
【0081】
本発明の香料組成物によって香気・香味付けすることのできる香粧品としては、例えば、フレグランス製品(香水、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロンなど)、基礎化粧品(洗顔クリーム、バニシングクリーム、クレンジングクリーム、コールドクリーム、マッサージクリーム、乳液、化粧水、美容液、パック、メイク落としなど)、仕上げ化粧品(ファンデーション、粉おしろい、固形おしろい、タルカムパウダー、口紅、リップクリーム、頬紅、アイライナー、マスカラ、アイシャドウ、眉墨、アイパック、ネイルエナメル、エナメルリムバーなど)、頭髪化粧品(ポマード、ブリランチン、セットローション、ヘアーステック、ヘアーソリッド、ヘアーオイル、ヘアートリートメント、ヘアークリーム、ヘアートニック、ヘアーリキッド、ヘアースプレー、バンドリン、養毛剤、染毛剤など)、日焼け化粧品(サンタン製品、サンスクリーン製品など)、薬用化粧品(制汗剤、アフターシェービングローション及びジェル、パーマネントウェーブ剤、薬用石鹸、薬用シャンプー、薬用皮膚化粧料など)が挙げられる。
【0082】
本発明の香料組成物によって香気・香味付けすることのできるトイレタリー製品としては、例えば、石鹸(化粧石鹸、浴用石鹸、香水石鹸、透明石鹸、合成石鹸など)、ボディケア製品(ボディソープ、ボディシャンプー、ハンドソープなど)、ヘアケア製品(シャンプー、リンス、リンスインシャンプー、コンディショナー、トリートメント、ヘアパックなど)、スキンケア製品(リップクリーム、ハンドクリームなど)、シェービング製品(シェービングフォームなど)、浴用剤(入浴剤(バスソルト、バスタブレット、バスリキッド等)、フォームバス(バブルバス等)、バスオイル(バスパフューム、バスカプセル等)、ミルクバス、バスジェリー、バスキューブなど)、口腔用品(歯磨き粉、口腔洗浄料、マウスウオッシュ、トローチ、チューインガム類など)などを挙げることができる。
【0083】
本発明の香料組成物によって香気・香味付けすることのできる洗剤としては、例えば、洗剤(衣料用重質洗剤、衣料用軽質洗剤、液体洗剤、洗濯石鹸、コンパクト洗剤、粉石鹸など)、柔軟仕上げ剤(ソフナー、ファーニチャーケアなど)、洗浄剤(クレンザー、ハウスクリーナー、トイレ洗浄剤、浴室用洗浄剤、ガラスクリーナー、カビ取り剤、排水管用洗浄剤など)、台所用洗剤(台所用石鹸、台所用合成石鹸、食器用洗剤など)、漂白剤(酸化型漂白剤(塩素系漂白剤、酸素系漂白剤等)、還元型漂白剤(硫黄系漂白剤等)、光学的漂白剤など)などを挙げることができる。
【0084】
本発明の香料組成物によって香気・香味付けすることのできる日用雑貨としては、例えば、消臭・芳香剤(固形状タイプ、ゲル状タイプ、リキッドタイプなど)、ティッシュペーパー、トイレットペーパーなどを挙げることができる。
【0085】
本発明の香料組成物によって香気・香味付けすることのできる飲食品としては、例えば、果汁飲料類、果実酒類、乳飲料類、炭酸飲料、清涼飲料、ドリンク剤類の如き飲料類;アイスクリーム類、シャーベット類、アイスキャンディー類の如き冷菓類;ゼリー、プリンなどのデザート類;ケーキ、クッキー、チョコレート、チューインガムなどの洋菓子類;饅頭、羊羹、ウイロウなどの和菓子類;ジャム類;キャンディー類;パン類;緑茶、ウーロン茶、紅茶、柿の葉茶、カミツレ茶、クマザサ茶、桑茶、ドクダミ茶、プアール茶、マテ茶、ルイボス茶、ギムネマ茶、グアバ茶、コーヒー、ココアなどの茶飲料または嗜好飲料類;和風スープ、洋風スープ、中華スープなどのスープ類;風味調味料;各種インスタント飲料または食品類;各種スナック食品類などを挙げることができる。
【0086】
本発明の香料組成物によって香気・香味付けすることのできる医薬品としては、例えば、ハップ剤、軟膏剤などの皮膚外用剤、内服剤などを挙げることができる。
【0087】
本発明の香料組成物を用いて、各種製品を香気・香味付けする方法は、香気・香味付けする製品の種類や製品の最終形態(例えば液体状、固体状、粉末状、ゲル状、ミスト状、エアゾール状などの製品形態)に応じて適宜選択すればよい。
【0088】
本発明の香料組成物を用いて各種製品に香気・香味付けを行う場合の本発明の香料組成物の使用量は、各種製品の種類または形態、製品に求められる香気・香味付け効果または作用などに応じて調整することができる。一般的には、本発明の香料組成物中の一般式(1)で示される化合物及びその互変異性体を含む香料組成物は、製品の全重量に対して、好ましくは0.001〜10重量%、より好ましくは0.01〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜2重量%含有するように調整する。また、一般式(2)で示される化合物及びその互変異性体を含む香料組成物は、製品の全重量に対して、0.001〜10重量%、より好ましくは0.01〜5重量%、さらに好ましくは0.05〜1.5重量%含有するように調整する。
【0089】
[3]環状β−ジケトン化合物
本発明の環状β−ジケトン化合物としては、2−アセチル−5−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−エチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−プロピルシクロヘキサノン、2−プロピオニル−5−メチルシクロヘキサノン、2−ブチリル−5−メチルシクロヘキサノン、2−ヘキサノイル−5−メチルシクロヘキサノン、2−オクタノイル−5−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−ブチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5,5−ジメチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−イソプロピルシクロヘキサノン、2−デカノイル−5−メチルシクロヘキサノン、2−ブチリル−5−メチルシクロペンタノン及びそれらの互変異性体からなる群から選ばれる化合物が挙げられる。
また、本発明の環状β−ジケトン化合物の好ましい光学活性化合物としては、2−アセチル−5(S)−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5(S)−プロピルシクロヘキサノン、2−アセチル−5(R)−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5(R)−プロピルシクロヘキサノン及びそれらの互変異性体からなる群から選ばれる化合物が挙げられる。
これらの化合物は、実施例に示したように特徴的な香気特性を有しており、各種製品の香気・香味付けに利用することができる。これらの化合物の合成方法の詳細は実施例に示したとおりである。
【実施例】
【0090】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。なお、以下の実施例において物性等の測定に用いた装置は次のとおりである。
1)化学純度及び質量スペクトル
ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS):Shimadzu GC−2010,GCMS−QP2010(島津製作所社製)
カラム:シリコン Rtx−1(0.25mm×30m)(Restek社製)、イオン化電圧70eV(EI)
2)核磁気共鳴スペクトル
Bruker BioSpin NMR AVANCE III 500 SYSTEM (ブルッカー社製)
内部標準物質:テトラメチルシラン
1H測定周波数 500MHz
13C測定周波数 125MHz(主生成物のケミカルシフトを示す。)
3)赤外吸収スペクトル(IR)
Nicolet Avatar360 FT−IR(ニコレジャパン株式会社製)
【0091】
[合成例1]
2−アセチル−5(S)−メチルシクロヘキサノンの製造(一般式(1)においてR=Me,R=Me,m=2の化合物(S体))
(1)中間体エナミンの合成
窒素気流下温度計と水抜き還流冷却管を付した容量300mlの反応フラスコに、光学純度80%e.e.の3(S)−メチルシクロヘキサノン(23.1g:0.2mol)とトルエン(70ml)およびモルホリン(36.0ml:0.4mol)を仕込み、油浴温130℃で加熱還流を行った。7時間反応後に転化率95%がガスクロマトグラフで認められた。減圧下で溶媒を留去し、減圧蒸留で精製することにより目的とする中間体エナミン(沸点78〜80℃:13Pa)、32.6g(収率87.4%)が無色透明油状物質として得られた。
【0092】
(2)2−アセチル−5(S)−メチルシクロヘキサノンの合成
窒素気流下温度計と還流冷却管を付した容量300mlの反応フラスコに、(1)で得たエナミン(32.3g:0.18mol)とトルエン(100ml)および無水酢酸(20.0g:0.196mol)を仕込み、油浴温130℃で加熱還流を行った。6時間反応後にガスクロマトグラフ分析して転化率93.5%で中間体のアセチル付加物が認められた。反応溶液に水(50ml)を加え、さらに2時間加熱還流を続けた。ガスクロマトグラフにより中間体のアセチル付加物の消失が認められた。反応溶液を室温まで冷却しトルエンで抽出した後、水洗2回、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、減圧下で溶媒を留去し、減圧蒸留で精製することにより(沸点40〜42℃:13Pa)、89%の2−アセチル−5(S)−メチルシクロヘキサノンおよび11%の2−アセチル−3(S)−メチルシクロヘキサノンを含む混合物16.7g(収率60.7%)を無色透明油状物質として得た。光学純度80%e.e.
IR(neat):2953,2927,2871,1704,1610 cm-1
Mass(m/e,%):154(M+,63),139(100),112(20),111(40),84(20),69(31)
13C-NMR(CDCl3,δin ppm) 198.83(q), 181.61(q), 106.45(q), 39.18(d), 30.86(d), 28.00(t), 26.09(s), 23.80(d), 21.21(s).
【0093】
[合成例2]
2−アセチル−5−エチルシクロヘキサノンの製造(一般式(1)においてR=Me,R=Et,m=2の化合物)
合成例1の(1)で用いた3(S)−メチルシクロヘキサノンに代えて、参考例3で得た3−エチルシクロヘキサノンを用い、他は合成例1と同様に行って、93%の2−アセチル−5−エチルシクロヘキサノンおよび7%の2−アセチル−3−エチルシクロヘキサノンを含む混合物(沸点62〜65℃:13Pa)を得た(収率34.5%)。
Mass(m/e,%):168(M+,80),153(100),139(27),125(40),111(18),97(40)
【0094】
[合成例3]
2−アセチル−5(S)−プロピルシクロヘキサノンの製造((一般式(1)においてR=Me,R=n−Pr,m=2の化合物(S体)))
合成例1の(1)で用いた3(S)−メチルシクロヘキサノンに代えて、参考例2で得た光学純度99%e.e.の3(S)−プロピルシクロヘキサノンを用い、他は合成例1と同様に行って、94%の2−アセチル−5(S)−プロピルシクロヘキサノンおよび6%の2−アセチル−3(S)−プロピルシクロヘキサノンの混合物(沸点63〜65℃:13Pa)を得た(収率56.7%)。光学純度99%e.e.
Mass(m/e,%):182(M+,57),167(65),139(100),111(24),97(82)
13C-NMR(CDCl3,δin ppm) 198.78(q), 181.73(q), 106.74(q), 38.07(d), 37.52(d), 32.71(t), 28.97(d), 25.00(s), 23.80(d), 19.81(d), 14.14(s).
【0095】
[合成例4]
2−プロピオニル−5−メチルシクロヘキサノンの製造(一般式(1)においてR=Et,R=Me,m=2の化合物)
合成例1の(2)で用いた無水酢酸に代えて、プロピオン酸無水物を用い、他は合成例1と同様に行って、78%の2−プロピオニル−5−メチルシクロヘキサノンおよび22%の2−プロピオニル−5−メチルシクロヘキサノンを含む混合物(沸点63〜65℃:13Pa)を得た(収率43.2%)。
IR(neat):2927,2873,1705,1620,1593 cm-1
Mass(m/e,%):168(M+,28),139(100),111(10),97(11)
【0096】
[合成例5]
2−ブチリル−5−メチルシクロヘキサノンの製造(一般式(1)においてR=n−Pr,R=Me,m=2の化合物)
合成例1の(2)で用いた無水酢酸に代えて、無水酪酸を用い、他は合成例1と同様に行って、75%の2−ブチリル−5−メチルシクロヘキサノンおよび25%の2−ブチリル−3−メチルシクロヘキサノンを含む混合物(沸点67〜68℃:13Pa)を得た(収率15.2%)。
IR(neat):2959,2928,2873,1701,1615 cm-1
Mass(m/e,%):182(M+,19),139(100),111(6),97(9)
1H-NMR(CDCl3,δ in ppm) 16.47(0.15H,s), 15.99(0.85H,s), 3.67(2H,bt,5Hz), 3.62(1H,bt,5Hz), 3.47(1H,bt,5Hz), 3.15(0.11H,bdd,1,10Hz), 2.8-2.7(0.2H,m), 2.55-2.46(0.4H,m), 2.45-2.25(7.2H,m), 2.00(1.4H,bdd,8,13Hz), 1.84-1.74(2.4H,m), 1.73-1.60(4.3H,m), 1.28-1.20(1H,m), 1.10(0.7H,bd,7Hz), 0.99-0.88(8.9H,m).
13C-NMR(CDCl3,δin ppm) 201.32(q), 181.20(q), 106.13(q), 39.18(d), 38.94(d), 30.87(d), 27.96(t), 23.26(d), 21.21(s), 17.64(d), 13.86(s).
【0097】
[合成例6]
2−ヘキサノイル−5−メチルシクロヘキサノンの製造(一般式(1)においてR=n−Pentyl,R=Me,m=2の化合物)
合成例1の(2)で用いた無水酢酸に代えて、ヘキサン酸無水物を用い、他は合成例1と同様に行って、72%の2−ヘキサノイル−5−メチルシクロヘキサノンおよび28%の2−ヘキサノイル−3−メチルシクロヘキサノンを含む混合物(沸点92〜94℃:25Pa)を得た(収率56.5%)。
IR(neat):2953,2928,2871,1705,1618 cm-1
Mass(m/e,%):210(M+,14),154(29),139(100),112(26),111(17),97(9)
13C-NMR(CDCl3,δin ppm) 201.56(q), 181.18(q), 106.09(q), 39.19(d), 37.02(d), 31.54(d), 30.88(d), 27.97(t), 23.94(d), 23.28(d), 22.46(d), 21.22(s), 13.89(s).
【0098】
[合成例7]
2−オクタノイル−5−メチルシクロヘキサノンの製造(一般式(1)においてR=n−Heptyl,R=Me,m=2の化合物)
合成例1の(2)で用いた無水酢酸に代えて、オクタン酸塩化物を用い、他は合成例1と同様に行って、89%の2−オクタノイル−5−メチルシクロヘキサノンおよび11%の2−オクタノイル−3−メチルシクロヘキサノンを含む混合物(沸点108〜109℃:13Pa)を得た(収率20.6%)。
IR(neat):2954,2920,2870,1703,1621 cm-1
Mass(m/e,%):238(M+,11),220(10),154(43),139(100),112(34),111(20),97(10)
【0099】
[合成例8] 合成例1のラセミ体
2−アセチル−5−メチルシクロヘキサノンの製造(一般式(1)においてR=Me,R=Me,m=2の化合物)
合成例1の(1)で用いた3(S)−メチルシクロヘキサノンに代えて、市販品の3−メチルシクロヘキサノン(東京化成工業株式会社製)を用い、他は合成例1と同様に行って、89%の2−アセチル−5−メチルシクロヘキサノンおよび11%の2−アセチル−3−メチルシクロヘキサノンを含む混合物(沸点99〜100℃:266Pa)を得た(収率72.3%)。
【0100】
[合成例9] 合成例3のラセミ体
2−アセチル−5−プロピルシクロヘキサノンの製造(一般式(1)においてR=Me,R=n−Pr,m=2の化合物)
参考例3で用いた臭化エチルマグネシウムに代えて臭化プロピルマグネシウムを用い、他は参考例3と同様に行なって製造した3−プロピルシクロヘキサノンを、合成例3の3(S)−プロピルシクロヘキサノンに代えて用い、他は合成例3と同様に行って、94%の2−アセチル−5−プロピルシクロヘキサノンおよび6%の2−アセチル−3−プロピルシクロヘキサノンを含む混合物(沸点63〜65℃:13Pa)を得た(収率42.2%)。
【0101】
[合成例10]
2−アセチル−5−ブチルシクロヘキサノンの製造(一般式(1)においてR=Me,R=Bu,m=2の化合物)
合成例1の(1)で用いた3(S)−メチルシクロヘキサノンに代えて、参考例4で得た3−ブチルシクロヘキサノンを用い、他は合成例1と同様に行って、92%の2−アセチル−5−ブチルシクロヘキサノンおよび8%の2−アセチル−3−ブチルシクロヘキサノンを含む混合物(沸点73〜75℃:13Pa)を得た(収率38.4%)。
Mass(m/e,%):196(M+,46),181(49),139(100),111(26),97(57)
【0102】
[合成例11]
2−アセチル−5,5−ジメチルシクロヘキサノンの製造(一般式(1)においてR=Me,R=di−Me,m=2の化合物)
参考例3で用いた臭化エチルマグネシウムに代えて臭化メチルマグネシウムを、また2−シクロヘキセノンに代えて3−メチル−2−シクロヘキセノンを用い、他は参考例3と同様に行なって製造した3,3−ジメチルシクロヘキサノンを、合成例3の3(S)−プロピルシクロヘキサノンに代えて用い、他は合成例3と同様に行って、89%の2−アセチル−5,5−ジメチルシクロヘキサノンおよび11%の2−アセチル−3,3−ジメチルシクロヘキサノンを含む混合物(沸点49〜51℃:13Pa)を得た(収率24.9%)。
Mass(m/e,%):168(M+,81),153(100),125(68),111(24),97(86)
【0103】
[合成例12]
2−アセチル−5−イソプロピルシクロヘキサノンの製造(一般式(1)においてR=Me,R=iso−Pr,m=2の化合物)
合成例1の(1)で用いた3(S)−メチルシクロヘキサノンに代えて、参考例5で得た3−イソプロピルシクロヘキサノンを用い、他は合成例1と同様に行って、92%の2−アセチル−5−イソプロピルシクロヘキサノンおよび8%の2−アセチル−3−イソプロピルシクロヘキサノンを含む混合物(沸点74〜75℃:13Pa)を得た(収率27.0%)。
Mass(m/e,%):182(M+,62),167(37),139(37),100(82),97(43),82(100)
【0104】
[合成例13]
2−イソブチリル−5−メチルシクロヘキサノンの製造(一般式(1)においてR=iso−Pr,R=Me,m=2の化合物)
合成例1の(2)で用いた無水酢酸に代えて、塩化イソブチリルを用い、他は合成例1と同様に行って、79%の2−イソブチリル−5−メチルシクロヘキサノンおよび21%の2−イソブチリル−5−メチルシクロヘキサノンを含む混合物(沸点65〜66℃:13Pa)を得た(収率17.2%)。
Mass(m/e,%): 182(M+,23),139(100),111(4),97(12)
【0105】
[合成例14]
2−デカノイル−5−メチルシクロヘキサノンの製造(一般式(1)においてR=Nonyl,R=Me,m=2の化合物)
合成例1の(2)で用いた無水酢酸に代えて、デカン酸塩化物を用い、他は合成例1と同様に行って、86%の2−デカノイル−5−メチルシクロヘキサノンおよび14%の2−デカノイル−3−メチルシクロヘキサノンを含む混合物(沸点126〜129℃:11Pa)を得た(収率16.7%)。
Mass(m/e,%):266(M+,6),248(11),154(57),139(100),112(40),111(21),97(9)
【0106】
[合成例15]
2−アセチル−4−メチルシクロペンタノンの製造(一般式(1)においてR=Me,R=Me,m=1の化合物)
合成例1の(1)で用いた3(S)−メチルシクロヘキサノンに代えて、市販品の3−メチルシクロペンタノン(Aldrich社製)を用い、他は合成例1と同様に行って、76%の2−アセチル−4−メチルシクロペンタノンおよび24%の2−アセチル−3−メチルシクロペンタノンを含む混合物(沸点73〜74℃:133Pa)を得た(収率24.4%)。
Mass(m/e,%):140(M+,54),125(100),97(20)
【0107】
[参考例1]
3(S)−メチルシクロヘキサノンの製造
窒素気流下温度計と還流冷却管を付した容量1000mlの反応フラスコに、トリフルオロメタンスルホン酸銅(1.81g:5mmol)と下記式で示される(Sa,R,R)−配位子(5.40g:10mmol)及びトルエン(300ml)を仕込み、室温下1時間反応させた。その後反応溶液を−60℃に冷却し、ジメチル亜鉛の2mol/Lシクロペンチルメチルエーテル溶液(300ml:0.6mol)を滴下して加えた。続いて2−シクロヘキセノン(48.07g:0.5mol)のトルエン(50ml)溶液を滴下して加え、反応温度を自然に−30℃まで上昇させながら3時間反応させた。ガスクロマトグラフにより原料である2−シクロヘキセノンの消失が認められた。反応溶液を希硫酸中に注ぎ、トルエンで抽出した後、水洗2回、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、減圧下で溶媒を留去し、減圧蒸留で精製することにより目的とする3(S)−メチルシクロヘキサノン(沸点43〜44℃:1300Pa)、25.6g(収率55.5%)が無色透明油状物質として得られた。光学純度80%e.e.
なお、対掌体の関係にある(Ra,S,S)―配位子を用いることにより、3(R)−メチルシクロヘキサノンを得ることができる。
【化15】

【0108】
[参考例2]
3(S)−プロピルシクロヘキサノンの製造
窒素気流下温度計と還流冷却管を付した容量500mlの反応フラスコに、トリフルオロメタンスルホン酸銅(0.37g:1mmol)と(Sa,R,R)−配位子(1.09g:2mmol)およびトルエン(50ml)を仕込み、室温下1時間反応させた。その後反応溶液を−60℃に冷却し、ジプロピル亜鉛の1.2mol/Lシクロペンチルメチルエーテル溶液(100ml:0.12mol)を滴下して加えた。続いて2−シクロヘキセノン(9.77g:0.1mol)のトルエン(20ml)溶液を滴下して加え、反応温度を自然に−30℃まで上昇させながら3時間反応させた。ガスクロマトグラフにより原料である2−シクロヘキセノンの消失が認められた。反応溶液を希硫酸中に注ぎ、トルエンで抽出した後、水洗2回、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、減圧下で溶媒を留去し、減圧蒸留で精製することにより目的とする3(S)−メチルシクロヘキサノン(沸点90〜91℃:1000Pa)、11.6g(収率81.6%)が無色透明油状物質として得られた。光学純度99%e.e.
なお、対掌体の関係にある(Ra,S,S)―配位子を用いることにより、3(R)−プロピルシクロヘキサノンを得ることができる。
【0109】
[参考例3]
3−エチルシクロヘキサノンの製造
窒素気流下温度計と還流冷却管を付した容量500mlの反応フラスコに、臭化銅(I)ジメチルスルフィド錯体(1.40g:6.79mmol)とテトラヒドロフラン(50ml)を仕込み、−60℃に冷却した。ここにヘキサメチルリン酸トリアミド(58.37g:0.33mol)および0.95mol/Lの臭化エチルマグネシウム(200ml:0.19mol)を滴下して加えた。続いて2−シクロヘキセノン(13.05g:0.136mol)および塩化トリメチルシリル(29.5g:0.27mol)のテトラヒドロフラン(50ml)溶液を、温度が上昇しない様1時間かけて滴下して加え、滴下後−50℃で2時間反応させた。ガスクロマトグラフにより原料である2−シクロヘキセノンの消失が認められた。反応溶液にトリエチルアミン(27.5g:0.27mol)を滴下して加えて反応を止め、続いてメタノール(200ml)を加えて40℃で1時間攪拌した。反応溶液を希硫酸中に注ぎ、トルエンで抽出した後、水洗2回、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、減圧下で溶媒を留去し、減圧蒸留で精製することにより目的とする3−エチルシクロヘキサノン(沸点79〜80℃:1000Pa)、12.86g(収率75.1%)が無色透明油状物質として得られた。
【0110】
[参考例4]
3−ブチルシクロヘキサノンの製造
参考例3で用いた臭化エチルマグネシウムに代えて、塩化ブチルマグネシウムを用い、他は参考例3と同様に行って、目的とする3−ブチルシクロヘキサノン(沸点102〜104℃:650Pa)を得た(収率91.6%)。
【0111】
[参考例5]
3−イソプロピルシクロヘキサノンの製造
参考例3で用いた臭化エチルマグネシウムに代えて、臭化イソプロピルマグネシウムを用い、他は参考例3と同様に行って、目的とする3−イソプロピルシクロヘキサノン(沸点83〜84℃:500Pa)を得た(収率77.2%)。
【0112】
合成例1〜15で得られた化合物について、5人の専門パネラーにより香気評価を行った。その結果を表1に示す。
【表1】

【0113】
[実施例1]
下記処方に従い、シャンプーを調製した。2−ブチリル−5−メチルシクロヘキサノン(合成例5で得られた化合物)を加えることにより、皮革を起想させるレザー調の香気を与えることができ、より嗜好性の高いウッディ感を再現できた。
【0114】
【表2】

【0115】
[実施例2]
下記処方に従い、コンディショナーを調製した。2−アセチル−5−プロピルシクロヘキサノン(合成例9の化合物)を加えることにより、より甘い果実感を付与することができた。
【0116】
【表3】

【0117】
[実施例3]
常法に従い、下記処方に示す香料組成物0.8%を含有する洗濯柔軟剤を調製した。2−ヘキサノイル−5−メチルシクロヘキサノン(合成例6の化合物)を加えることにより、草や木の葉の特徴的な青い爽やかな香気を起想させるグリーン感を際立たせることができた。
【0118】
【表4】

【0119】
[実施例4]
下記処方に従い、チューインガム用ピーチフレーバーを調製した。2−アセチル−5−プロピルシクロヘキサノン(合成例9の化合物)を加えることにより、新たにソフトな甘さを付与することができ、よりピーチのマイルド感を再現できた。
【0120】
【表5】

【0121】
[実施例5]
下記処方に従い、飲料用緑茶フレーバーを調製した。2−ヘキサノイル−5−メチルシクロヘキサノン(合成例6の化合物)を加えることにより、新たに柔らかな熟成感を付与することができ、緑茶のより緑茶らしい奥行き感を再現できた。
【0122】
【表6】

【0123】
実施例1〜5から明らかなように、本発明の香料組成物を用いることで、単体での評価及び各種処方における評価ともに非常に良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の香料組成物を用いることにより、香粧品、トイレタリー製品、洗剤、日用雑貨、飲食品などの各種製品に応じて様々な香気・香味を付与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化16】

[式中、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、Rは水素原子または直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、mは1または2である。]
で示される化合物、
一般式(2):
【化17】

[式中、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、Rは水素原子または直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、nは1または2である。]
で示される化合物及びそれらの互変異性体からなる群から選ばれる少なくとも一種を有効成分として含む香料組成物。
【請求項2】
一般式(1):
【化18】

[式中、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、mは1または2である。]
で示される化合物、
一般式(2):
【化19】

[式中、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、Rは直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10炭化水素基であり、nは1または2である。]
で示される化合物及びそれらの互変異性体からなる群から選ばれる少なくとも一種を有効成分として含む、請求項1記載の香料組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)において、Rが直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10アルキル基であり、且つ、Rが直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10アルキル基であり、
前記一般式(2)において、Rが直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10アルキル基であり、且つ、Rが直鎖もしくは分岐鎖のC〜C10アルキル基である、請求項1または2記載の香料組成物。
【請求項4】
前記一般式(1)で示される化合物またはその互変異性体、及び、前記一般式(2)で示される化合物またはその互変異性体の組み合わせを有効成分として含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の香料組成物。
【請求項5】
前記一般式(1)で示される化合物及びその互変異性体を、香料組成物の全重量に対して、合計で0.001〜30重量%含み、且つ、前記一般式(2)で示される化合物及びその互変異性体を、香料組成物の全重量に対して、合計で0.001〜20重量%含む、請求項4記載の香料組成物。
【請求項6】
前記一般式(1)で示される化合物及びその互変異性体と、前記一般式(2)で示される化合物及びその互変異性体との含有量の比が、重量比で、95:5〜50:50である、請求項4または5記載の香料組成物。
【請求項7】
香料担体をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の香料組成物。
【請求項8】
香料保留剤をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の香料組成物。
【請求項9】
エステル類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、フェノール類、エーテル類、ラクトン類、炭化水素類、含窒素化合物、含硫化合物類及び酸類の群から選ばれる合成香料をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の香料組成物。
【請求項10】
2−アセチル−5−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−エチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−プロピルシクロヘキサノン、2−プロピオニル−5−メチルシクロヘキサノン、2−ブチリル−5−メチルシクロヘキサノン、2−ヘキサノイル−5−メチルシクロヘキサノン、2−オクタノイル−5−メチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−ブチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5,5−ジメチルシクロヘキサノン、2−アセチル−5−イソプロピルシクロヘキサノン、2−デカノイル−5−メチルシクロヘキサノン、2−ブチリル−5−メチルシクロペンタノン及びそれらの互変異性体からなる群から選ばれる化合物。

【公開番号】特開2012−111817(P2012−111817A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260336(P2010−260336)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】