説明

香料組成物

【課題】加熱調理油臭の印象を好ましいニオイに改質する変調用香料組成物、及びこれを用いた消臭剤組成物の提供。
【解決手段】ヘキサノール、シス-3-ヘキセノール、リナロール、テトラヒドロリナロール、エチルリナロール、トリプラール、リモネン及びエチル 2-tert-ブチルシクロヘキシルカーボネートから選ばれるから選ばれる1種以上の香料を含有する2,4-デカジエナール臭又は加熱調理油臭の変調用香料組成物、並びに当該香料組成物及び消臭基剤を含有する臭消剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2,4-デカジエナール臭又は加熱調理油臭の変調用香料組成物、及びこれを用いた消臭剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
消臭方法は、感覚的方法、化学的方法、生物的方法、物理的方法に大別され、感覚的消臭には、(1)マスキング作用を利用する方法、(2)中和作用を利用する方法、(3)変調作用を利用する方法がある。マスキング作用は、悪臭より強い香りで悪臭を覆い隠す作用であり、中和作用は、マスキングより少量の香料を用い臭気の感覚強度を低下させる作用であり、変調作用は、香りを用いて悪臭の質の印象を変える作用である(非特許文献1)。
【0003】
近年、消費者のニオイに対する感覚が鋭敏になっており、室内に漂うニオイに対する消費者の要望は従来とは変化してきている。従来、室内の気になるニオイといえば、排水口、生ゴミ、脱衣の汗のニオイなどであったが、清潔意識の向上、洗濯頻度の増加によってそれぞれのニオイのレベルはむしろ低下してきている。一方、壁に付着した加熱調理後の付着油のニオイは、弱いニオイであり、従来あまり気にされなかったが、換気を行っても2,3日は付着した油からわずかずつニオイを発生するため、室内の気になるニオイとしてクローズアップされてきている。また家庭の献立をニオイで他人に知られたくないという心理的要因からも、加熱調理油臭に対する消臭の要望が一層高まっている。そこで、家庭内に存在する加熱調理油臭の消臭に用いられる消臭剤の効果に対し、弱い加熱調理油臭を完全に消臭するか、あるいは完全に消臭できない場合、消臭剤使用後のニオイ全体の強さを使用前と同等以下にして、好ましいニオイに改質することが求められている。
【0004】
前述の香料によるマスキング技術としては、主に、(1)悪臭より過剰に香料を用いる方法、及び(2)悪臭とは異なる特徴の強い香料を用いる方法があるが、加熱調理油臭に特定したマスキング技術は知られていない。ただし、油を含む食品に香辛料としてタイムやローズマリーのハーブが、酸化防止、防腐、風味賦与の目的で経験的に用いられている(非特許文献2)。しかしながら、タイムやローズマリーの主要香気成分であるチモールやシネオールを前述の低い悪臭レベルに適用した場合、香料の香りが強すぎたり、香りはごくわずかであっても、特徴のある香りと悪臭とを別々に感じ違和感を生じたりするという問題があった。
【0005】
従って、前述のような、加熱調理油臭の消臭に対する消費者の要望に応えるためには、マスキング以外の技術、特に変調作用を利用した消臭技術の開発が望まれていた。
【0006】
【非特許文献1】川崎通昭, 堀内哲嗣郎共著「嗅覚とにおい物質」(社)臭気対策研究協会, p.80-81,p.85-86, 1998
【非特許文献2】福場博保、小林彰夫共著「調味料・香辛料の事典」朝倉書店 p.418-430
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、加熱調理油臭の印象を好ましいニオイに改質する変調用香料組成物、及びこれを用いた消臭剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここで加熱調理油臭とは、一般家庭で調理の際に用いる温度約150〜250℃の範囲で加熱されたナタネ油、綿実油、大豆油、トウモロコシ油などの調理油から発するニオイを指すが、加熱調理油特有のニオイは、キッチンや壁に付着した加熱調理油の粒子からも室温で徐々に発生するため、加熱調理後の油から発するニオイも含める。
【0009】
加熱調理油臭は、様々なニオイから構成されるが、本発明者は、調理油に一般的に含まれるリノール酸やリノレン酸などの不飽和脂肪酸や、そのグリセリドの酸化で発生するジエナール類、特に2,4-デカジエナールが、閾値の低さ(0.07ppb)やニオイの質(不快な揚げ物様のニオイ)の点から対策が重要であると考えた。そして、本発明者は、特定の香料が、加熱調理油臭、特に2,4-デカジエナールのニオイ(以下「デカジエナール臭」という)に対する変調作用を有することを見出した。
【0010】
本発明は、ヘキサノール、シス-3-ヘキセノール、リナロール、テトラヒドロリナロール、エチルリナロール、トリプラール、リモネン及びエチル 2-tert-ブチルシクロヘキシルカーボネート(花王社商品名:フロラマット)から選ばれる1種以上の香料を含有するデカジエナール臭又は加熱調理油臭の変調用香料組成物を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、上記変調用香料組成物を加熱調理油臭に適用する加熱調理油臭の変調方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、上記変調用香料組成物及び消臭基剤を含有する消臭剤組成物を提供するものである。
【0013】
更に、本発明は、上記消臭剤組成物を衣類表面、室内空間又は室内表面に適用する加熱調理油臭の消臭方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の香料組成物及び消臭剤組成物は、加熱調理油臭、特にデカジエナール臭に対し極めて優れた変調効果を示し、香りを強く感じさせることなく自然な消臭効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明において、香料組成物とは、香料が使用されているが、消臭基剤が組み合わされておらず、水や溶媒等の希釈剤を含まないものを意味し、消臭剤組成物とは、香料と消臭基剤を含有し、更に水や溶媒を含有することできるものを意味する。
【0016】
本発明において、「デカジエナール臭又は加熱調理油臭の変調用香料組成物」とは、次の官能評価を行ったとき、デカジエナール臭の揚げ物様のニオイを嗅ぎ分けることができず、かつ、その香料自体とも異なるニオイと評価される香料組成物をいう。
【0017】
〔官能評価〕
2,4-デカジエナールの0.1mol/Lエタノール溶液と香料の1mol/Lエタノール溶液を用意する。におい紙(6×150mm)の先端に、2,4-デカジエナール溶液0.2μLと香料溶液とを、香料/2,4-デカジエナールのモル比が0、5、15、30、50、100、150(香料溶液の添加量として各0、0.1、0.3、0.6、1、2、3μL)となるように、2,4-デカジエナールと香料とが接触しないように3mm離して縦列に添加する。
【0018】
各ニオイ紙サンプル上の2液(2,4-デカジエナールと香料)を一つのニオイとして嗅ぐ。ニオイ紙と鼻との距離は10mm程度とする。香料の量が無い場合、あるいは量が少ない場合には、デカジエナール臭のみ感じるか、又は嗅ぎ分けることができるが、香料を一定量添加した場合、デカジエナールの悪臭とは異なるニオイとなる。そのまま更に香料の量を増やし、香料が大過剰になった場合、香料のニオイのみ感じるマスキングの状態となる。全てのサンプルを並べ、デカジエナール臭とは異なるニオイについて、以下の確認を行う。デカジエナール臭とは異なるニオイであって、香料そのものとも異なるニオイの場合、その香料は、デカジエナール臭又は加熱調理油臭に対して変調効果を有するという。通常、3名以上の専門パネラーが評価を行う。
【0019】
〔加熱調理油臭に対して変調効果を有する香料〕
本発明の香料組成物には、デカジエナール臭又は加熱調理油臭に対して変調効果を有する香料として、前記の8種の香料から選ばれる1種以上が使用されるが、中でも変調効果の観点より、ヘキサノール、シス-3-ヘキセノール、リナロール、テトラヒドロリナロール、エチルリナロール、リモネン及びエチル 2-tert-ブチルシクロヘキシルカーボネートが好ましい。これらの香料は単独で使用してもよいが、2種以上を併用してもよい。
【0020】
〔加熱調理油臭に対して変調効果を有する香料以外の香料〕
本発明の香料組成物には、上記のデカジエナール臭又は加熱調理油臭に対して変調効果を有する8種の化合物以外にも、その他の合成香料、天然香料、調合香料のいずれも使用が可能であるが、本発明の変調作用の効果を最大に引き出すためには、ニオイの弱い香料、例えばベンジルアルコール、ジヒドロジャスモン酸メチル等が望ましい。
【0021】
〔加熱調理油臭の変調用香料組成物〕
前記の8種から選ばれる香料は、本発明の変調用香料組成物中、デカジエナール臭又は加熱調理油臭に対して変調効果を発揮する濃度で含有される。この観点より、これらの香料の含有量は、本発明の変調用香料組成物中、合計量で0.1〜100質量%、特に30〜80質量%が好ましい。
【0022】
本発明の変調用香料組成物は、水や溶剤等の希釈剤、カチオン性、アニオン性、ノニオン性、両性の界面活性剤、LPG(液化石油ガス)、ペンタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等の噴射剤等を加えて使用することもできる。溶剤としては、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、クエン酸トリエチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、アセトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、流動パラフィン等が挙げられる。散布後に早く揮発する点から、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、LPG等が好ましく、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、アルカリ剤等を加え、加熱調理油臭に対する変調効果を有するキッチン、レンジ廻り、床面、壁面用の洗浄剤とすることもできる。
【0023】
また、本発明の変調用香料組成物は、シリカ、シリカゲル、セラミックなどの無機粉体、紙、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、活性炭、木粉等の有機粉体に含浸させたり、粉状、粒状に成型させたりして使用することもできる。
【0024】
〔消臭剤組成物〕
本発明の消臭剤組成物は、以上で述べたデカジエナール臭又は加熱調理油臭の変調香料組成物と消臭基剤とを含有する。消臭基剤を含有させることによって、より少ない香料組成物で変調効果を発揮することができ、発明の目的である消臭剤使用後の消臭効果をより高めることができる。本発明の消臭剤組成物中における前記変調用香料組成物の含有量は、加熱調理油臭に対し十分な変調効果を発揮する観点より、前記の8種から選ばれる香料の合計量として、0.0001〜5質量%、特に0.001〜0.1質量%が好ましい。
【0025】
本発明の消臭剤組成物に含有させる消臭基剤としては、一般的な化学消臭基剤や物理消臭基剤(例えば非特許文献1の第85頁記載の消臭基剤)であれば特に限定されないが、加熱調理油臭に対しての効果の点から、(a)分子中に1つ以上の陽イオン性基と1つの炭素数8〜22のアルキル基又はアルケニル基を有する化合物(以下、(a)成分という)、(b)ツバキ科植物の抽出物(以下、(b)成分という)、(c)シクロデキストリン(以下、(c)成分という)、及び(d)モノ-又はポリアルキレングリコール(以下、(d)成分という)から選ばれる1種以上が好ましい。
【0026】
<(a)成分>
本発明の消臭剤組成物において使用され得る(a)成分は、一般式(I)で表される4級アンモニウム塩、及び一般式(II)又は(III)で表されるアミンオキシドから選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0027】
【化1】

【0028】
〔式中、R1は炭素数8〜22のアルキル基又はアルケニル基を示し、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、R5はメチレン基又は炭素数2〜5のアルキレン基を示し、Yは-CONR6-、-NR6CO-、-COO-又は-OCO-(ここで、R6は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す)を示し、X-は陰イオンを示す。〕
【0029】
一般式(I)〜(III)において、R1としては、炭素数8〜18のアルキル基及びアルケニル基が好ましい。R2、R3及びR4としては、メチル基及びエチル基が好ましい。R5としては、メチレン基及び炭素数2〜3のアルキレン基が好ましい。Yとしては、-CONH-及び-COO-が好ましい。X-としては、ハロゲン化物イオン、炭素数1〜14の脂肪酸イオン及び炭素数1〜3のアルキル硫酸イオンが好ましい。
【0030】
(a)成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の消臭剤組成物中の(a)成分の含有量は、消臭持続性の観点から、0.1〜2質量%が好ましく、0.2〜1.5質量%が更に好ましい。
【0031】
<(b)成分>
本発明の消臭剤組成物において使用され得る(b)成分は、ツバキ科植物の抽出物であり、ツバキ科植物としては、例えば、茶、山茶花、椿、サカキ、ヒサカキ、モッコク等が挙げられ、抽出には、これらの生葉、その乾燥物、その加熱処理物等を用いることができる。これらの中では茶の生葉又はその乾燥物、あるいは蒸気、焙煎等により加熱処理されたものが好ましく、特に茶の生葉又はその乾燥物が、入手の容易性、安全性等の観点から好ましい。
【0032】
ツバキ科植物の抽出に用いる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、グリセリン等のアルコール系有機溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶媒、水及びそれらの混合溶媒等が挙げられ、エタノール、イソプロパノール、あるいはこれらと水との混合溶媒が、有効成分の抽出率が高く、かつその有効成分の消臭効果が強いので好ましい。
【0033】
本発明の消臭剤組成物中の(b)成分の含有量は、消臭性能の観点から、0.01〜2質量%が好ましく、0.05〜1質量%が更に好ましい。
【0034】
<(c)成分>
本発明の消臭剤組成物において使用され得る(c)成分は、シクロデキストリンであるが、具体的には、α-,β-,γ-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン、マルトシル-β-シクロデキストリン等が挙げられる。中でも、メチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン、マルトシル-β-シクロデキストリンが好ましく用いられる。
【0035】
本発明の消臭剤組成物中の(c)成分の含有量は、消臭効果の持続性の観点から、0.1〜1質量%が好ましく、0.2〜0.5質量%が更に好ましい。
【0036】
<(d)成分>
本発明の消臭剤組成物において使用され得る(d)成分は、モノ-又はポリアルキレングリコールであるが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらのうち、平均分子量100〜500のポリアルキレングリコール、特にジプロピレングリコールが好ましい。
【0037】
本発明の消臭剤組成物中の(d)成分の含有量は、消臭性能の観点から、0.01〜2質量%が好ましく、0.05〜1質量%が更に好ましい。
【0038】
更に、本発明の消臭剤組成物は、前述した、水や溶剤等の希釈剤、カチオン性、アニオン性、ノニオン性、両性の界面活性剤、LPG(液化石油ガス)、ペンタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等の噴射剤等を含有することができる。溶剤としては、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、クエン酸トリエチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、アセトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、流動パラフィン等が挙げられる。散布後に早く揮発する点から、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、LPG等が好ましく、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0039】
本発明の消臭剤組成物は、更に酸化防止剤、防腐剤、色素等を含有してもよい。
【0040】
本発明の消臭剤組成物は、水溶液、油剤、乳剤、分散液、エアゾール剤、蒸散(揮散)剤、燻蒸剤、粉剤等の剤型に製造される。容器は、トリガー式スプレー容器、ポンプスプレー容器、スクイズボトル式容器、エアゾール容器、機械式噴霧器等を使用することができる。
【0041】
本発明の消臭剤組成物は、加熱調理油から発するニオイが問題となる場所、例えば衣類表面、室内空間、室内表面等の消臭に効果的に使用することができる。具体的には、硬質表面(木製家具、タイル等)、繊維表面(衣類、寝具、カーペット、ソファー、カーテン等)、皮革表面(皮革製衣類、皮革製家具等)等の消臭に使用される。
【0042】
本発明の消臭剤組成物を衣類表面、室内表面等に適用する際は、その量は、香料組成物として0.05〜20mg/m2、更には0.1〜10mg/m2、特に0.4〜7mg/m2が好ましい。
【実施例】
【0043】
試験例1
前記の〔官能評価〕の項で述べた方法で官能評価を行った。専門パネラーは3名とし、以下の基準に基づき、合議により評価を行った。
なお、比較香料として、チモールについても評価を行った。チモールは人工的なハーブ様のニオイを有する香料であり、油含有食品の添加物として用いられるタイムの主要香気成分である。
この結果を表1に示す。
【0044】
<基準>
×:加熱調理油臭(揚げ物様のニオイ)のみ感じる
△:香料の香りと同じニオイがする(マスキング効果)
○:香料の香りと異なるニオイがする(変調効果)
【0045】
【表1】

【0046】
実施例1〜9、比較例1
〔布に付着したデカジエナール臭に対する香料組成物による変調効果〕
【0047】
<香料組成物の溶液(消臭液)の調製>
表2に示す香料組成物を、0.005質量%となるようにエタノール15質量%と水85質量%の混合液に溶解し、消臭液を調製した。
【0048】
<デカジエナール臭試験布の調製、及び変調による消臭評価>
0.004 質量%の2,4-デカジエナール含有エタノール溶液を、30×30cmの木綿布の全面に均一に、市販の手動式スプレー容器(マルエムスプレーバイアルno.6)を使って18回スプレー(1.1g)した後、10分乾燥し、試験布とした。
実施例1〜9及び比較例1の消臭液を、市販の手動式スプレー容器(マルエムスプレーバイアルno.6)に20mL充填し、試験布に下記回数噴霧(0.08g/回)を行った。その後、3名の専門パネラーの合議により、下記基準に従ってデカジエナール臭の変調による消臭性能を評価した。この結果を表2に示す。
【0049】
<基準>
×:デカジエナール臭(揚げ物様のニオイ)のみ感じる
△:消臭液の香りと同じニオイがする(マスキング効果)
○:消臭液の香りと異なるニオイがする(変調効果)
【0050】
【表2】

【0051】
(注1)調合香料A
シス-3-ヘキセノール 4(質量%)
リナロール 25
トリプラール 1
リモネン 10
エチル 2-tert-ブチルシクロヘキシルカ-ボネート 40
ベンジルアルコール 20
100
【0052】
実施例10〜15、比較例2
〔布に付着した加熱調理油臭に対する香料組成物又は消臭剤組成物による変調効果〕
【0053】
<香料組成物の溶液又は消臭剤組成物(消臭液)の調製>
表3に示す配合にて消臭液を調製した。
【0054】
<加熱調理油臭試験布の調製、及び変調による消臭評価>
加熱調理油臭物質として0.5質量%の変性ナタネ油(190℃×12時間)含有エタノール溶液を、30×30cmの木綿布の全面に均一に、市販の手動式スプレー容器(マルエムスプレーバイアルno.6)を使って18回スプレー(1.1g)した後、10分乾燥し、試験布とした。
表3に示した消臭液を、市販の手動式スプレー容器(マルエムスプレーバイアルno.6)に20mL充填し、試験布に下記回数噴霧(0.08g/回)を行った。その後、3名の専門パネラーの合議により、下記基準に従って酸化調理油臭の変調による消臭性能を評価した。この結果を表3に示す。
【0055】
<基準>
×:加熱調理油臭(揚げ物様のニオイ)のみ感じる
△:消臭液の香りと同じニオイがする(マスキング効果)
○:消臭液の香りと異なるニオイがする(変調効果)
【0056】
<結果>
評価結果を表4に示す。実施例10〜15では試験布のニオイは消臭液とは異なる香りに変調され、加熱調理油臭も低減された自然な印象の香りとなった。なお、香料組成物の散布量が0.4〜6.4mg/m2の範囲の散布量が特に効果的であった。
一方、比較例2では消臭液と同じ香りが布から発せられ違和感のある香りとなった。
また、更に実施例13〜15については、香料組成物の量を0.005質量%から0.004質量%に減らした消臭液を調製し、表4と同様の散布量で実験を行った。その結果、表4と同様に加熱調理油臭に対して優れた変調効果が得られることを確認した。
【0057】
【表3】

【0058】
【表4】

【0059】
実施例16〜20、比較例3
〔空間のデカジエナール臭に対する香料組成物又は消臭剤組成物による変調効果〕
【0060】
<香料組成物の溶液又は消臭剤組成物(消臭液)を用いたエアゾール型消臭剤の調製>
表5に示す処方に従い消臭液を調製し液化石油ガス以外の成分を混合、攪拌して均一とし、所定の量をエアゾール容器に入れてバルブを取り付けた後、液化石油ガスを注入してエアゾール型消臭剤を得た。
【0061】
<デカジエナール臭空間>
2,4-デカジエナール1質量%エタノール溶液20μLを円形ろ紙につけ5分放置し、酸化調理油臭に満ちた空間(1.2×1.2×高さ2.4m)を調製した。
【0062】
<変調による消臭評価>
前述の空間に均一に消臭液を12gスプレーした。専門パネラー3名に空間の臭いを嗅いでもらい、合議にて下記基準の評価を行った。
【0063】
<基準>
×:デカジエナール臭(揚げ物様のニオイ)のみ感じる
△:消臭液の香りと同じニオイがする(マスキング効果)
○:消臭液とは異なるニオイがする(変調効果)
【0064】
<結果>
その結果、実施例16〜20ではいずれも空間のデカジエナール臭が、消臭液とは異なる香りに変調され、デカジエナール臭も低減された自然な印象の香りとなった。一方、比較例3では消臭液と同じ香りが部屋中に充満し違和感のある香りとなった。
また、更に実施例20については、香料組成物の量を0.005質量%から0.004質量%に減らした消臭液を調製し、表5と同様の散布量で実験を行った。その結果、表5と同様にデカジエナール臭に対して優れた変調効果が得られることを確認した。
【0065】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキサノール、シス-3-ヘキセノール、リナロール、テトラヒドロリナロール、エチルリナロール、トリプラール、リモネン及びエチル 2-tert-ブチルシクロヘキシルカーボネートから選ばれる1種以上の香料を含有する2,4-デカジエナール臭又は加熱調理油臭の変調用香料組成物。
【請求項2】
請求項1記載の変調用香料組成物を加熱調理油臭に適用する加熱調理油臭の変調方法。
【請求項3】
請求項1記載の変調用香料組成物及び消臭基剤を含有する加熱調理油用臭消臭剤組成物。
【請求項4】
消臭基剤が、(a)分子中に1つ以上の陽イオン性基と1つの炭素数8〜22のアルキル基又はアルケニル基を有する化合物、(b)ツバキ科植物の抽出物、(c)シクロデキストリン、及び(d)モノ-又はポリアルキレングリコールから選ばれる1種以上である請求項3記載の加熱調理油臭消臭剤組成物。
【請求項5】
請求項3又は4記載の消臭剤組成物を衣類表面、室内空間又は室内表面に適用する加熱調理油臭の消臭方法。

【公開番号】特開2007−99857(P2007−99857A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290022(P2005−290022)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】