説明

香料組成物

本発明は、ポリジメチルシロキサンの混合物を含む生理学的に許容できる担体中の芳香性物質の混合物を含む香料組成物であって、ポリジメチルシロキサンの前記混合物が、ヘキサメチルジシロキサンおよびオクタメチルトリシロキサンからなり、その重量比が30:70と70:30の間にあることを特徴とする香料組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリジメチルシロキサンの混合物を含む生理学的に許容できる担体中の芳香性物質の混合物を含む新規な香料組成物であって、ポリジメチルシロキサンの前記混合物が、ヘキサメチルジシロキサンとオクタメチルトリシロキサンとからなり、ヘキサメチルジシロキサン対オクタメチルトリシロキサンの重量比が30:70から70:30の範囲であることを特徴とする香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
香料組成物は、通常25℃における蒸気圧が大気圧より低い芳香性物質の混合物を含み、かつ通常は25℃で液体であるが、ときには固体のこともあり、エタノールと場合によって水とをベースとする生理学的に許容できる媒質中にある。
【0003】
エタノールは香料成分の優れた溶解剤となり、それに加えて安価でしかも透明な組成物を形成できるという利点を有する。他方、エタノールは香料成分の嗅覚的特性に悪影響を及ぼすという欠点を有していて、その理由はその強い匂いだけでなく、水の存在下に香料成分と反応することにより香料成分の匂いおよび/または色を変える可能性である。それに加えて、エタノールは大気中の窒素酸化物と化学的に反応してオゾンを生成し得るが、オゾンについていえば、それは大気汚染の一因で、それをさけるべく努力がなされているものである。最後に、エタノールは刺激性のもので、敏感な、または傷ついた皮膚に適用すると、特に髭剃りの後で、ひりひりする原因になりうる。
【0004】
そのため、香料組成物中のエタノールを上記の欠点をもたない他の溶媒で置き換える試みが幾つかなされた。
【0005】
最初の方法は、ポリエトキシ化して水素化したヒマシ油のような親水性溶解剤を含む水性組成物でエタノールを置き換えるものである。得られた組成物は、刺激性、発泡性及び皮膚に粘着する可能性のある溶解剤を高いパーセンテージで含んでいる。もう一つの方法は、ミクロエマルションおよびナノエマルションの形で香料組成物を配合するものである。しかしながら、香料成分を含む、これらのエマルションの油相は、エマルションを不安定化させない量が限られていて、そのことがこれらの組成物の芳香を放つ効果を減ずる。その上、大量の水の存在が、経時的に香料成分の分解を引き起こす能力があり、その結果製品の嗅覚的特性に悪影響を及ぼし得る。
【0006】
さらに、もう一つの解決手段は、エタノールを少なくとも部分的に1種または2種以上の揮発性シリコーン(直鎖状すなわちポリジメチルシロキサン型または環状)で置き換えた香料組成物を提供するものであった。編織布または不織布に含浸させることを意図した香料組成物を開示した国際公開第99/01106号の文書中の事例はそのようなものである。米国特許第6432912号の文書も、担体の蒸発速度を調節する目的で場合によって混合物の形態で使用され、また、場合によってジエステルと組み合わせたエステルのような共溶媒と組み合わされるこれらの揮発性シリコーンを含む香料組成物を開示している。
【特許文献1】国際公開第99/01106号
【特許文献2】米国特許第6432912号
【非特許文献1】S. Arctander、「Perfume and Flavor Chemicals」 (Montclair、N.J.、1969年)
【非特許文献2】S. Arctander、「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin (Elizabeth、N.J.、1960)
【非特許文献3】「Flavor and Fragrance Materials-1991」、Allured Publishing Co. Wheaton、Ill.USA
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
しかし出願人は、驚くべきことに、シリコーン化合物の、先行技術には記載されていない特別の組み合わせを選択することによって、蒸発速度がエタノールに近く、0℃かまたはそれより高い、好ましくは10℃かそれより高い引火点を有する香料組成物を得ることが可能であることを今や見出した。
【0008】
したがって、本発明の主題は、ポリジメチルシロキサンの混合物を含む生理学的に許容できる担体中の芳香性物質の混合物を含む香料組成物であって、ポリジメチルシロキサンの前記混合物が、ヘキサメチルジシロキサンとオクタメチルトリシロキサンとからなり、ヘキサメチルジシロキサン対オクタメチルトリシロキサンの重量比が30:70から70:30の範囲であることを特徴とする香料組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ヘキサメチルジシロキサン対オクタメチルトリシロキサンの重量比は30:70から40:60の範囲であることが有利である。ポリジメチルシロキサンの混合物が30重量%のヘキサメチルジシロキサンおよび70重量%のオクタメチルトリシロキサンを含むことがさらに好ましい。
【0010】
本発明のポリジメチルシロキサンは、特にDOW CORNING社からDow Corning Fluid 200 0.65 cstおよび1 cstという商品名で、RHODIA社からSilbione Huile 70041 0.65 Dという商品名で、WACKER社からBelsil DM 0.65という商品名で、GE BAYER SILICONES社からhexamethyldisiloxanという商品名で入手できる。
【0011】
本発明の香料組成物に含まれる芳香性物質は、香料製造業者によって常習的に使用されている化合物であって、それらは特に、S. Arctander、「Perfume and Flavor Chemicals」 (Montclair、N.J.、1969年)に、S. Arctander、「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin (Elizabeth、N.J.、1960)に、および「Flavor and Fragrance Materials-1991」、Allured Publishing Co. Wheaton、Ill.USAに記載されている。
【0012】
それらの芳香性物質は、天然産物(精油、アブソリュート、レジノイド、樹脂、花から抽出される芳香性蝋成分)および/または合成製品(炭化水素、アルコール、アルデヒド、ケトン、エーテル、酸、エステル、アセタール、ケタール、ニトリル、飽和または不飽和、脂肪族または環状)であってよい。
【0013】
精油の例は、レモン、オレンジ、アニス、ベルガモット、バラ、ゼラニウム、生姜、ネロリ、バジル、ローズマリー、カルダモン、ショウノウ、シーダー、カモミール、ビャクダン、セージの精油、およびそれらの混合物を含むが、このリストは限定するものではない。
【0014】
その他の芳香性化合物の例を特に挙げれば、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、ファルネソール、ボルネオール、酢酸ボルニル、リナロール、酢酸リナリル、プロピオン酸リナリル、酪酸リナリル、テトラヒドロリナロール、シトロネロール、酢酸シトロネリル、ギ酸シトロネリル、プロピオン酸シトロネリル、ジヒドロミルセノール、酢酸ジヒドロミルセニル、テトラヒドロミルセノール、テルピネオール、酢酸テルピニル、ノポール、酢酸ノピル、ネロール、酢酸ネリル、2-フェニルエタノール、酢酸2-フェニルエチル、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、サリチル酸ベンジル、酢酸スチラリル、安息香酸ベンジル、サリチル酸アミル、ジメチルベンジルカルビノール、酢酸トリクロロメチルフェニルカルビニル、酢酸p-tert-ブチルシクロヘキシル、酢酸イソノニル、酢酸ベチベリル、べチベロール、アルファ-ヘキシル桂皮アルデヒド、2-メチル-3-(p-tert-ブチルフェニル)-プロパナール、2-メチル-3-(p-イソプロピルフェニル)プロパナール、3-(p-tert-ブチルフェニル)プロパナール、2,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エニルカルボキシアルデヒド、酢酸トリシクロデセニル、プロピオン酸トリシクロデセニル、4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセンカルボキシアルデヒド、4-(4-メチル-3-ペンテニル)-3-シクロヘキセンカルボキシアルデヒド、4-アセトキシ-3-ペンチルテトラヒドロピラン、3-カルボキシメチル-2-ペンチルシクロペンタン、2-n-ヘプチルシクロペンタノン、3-メチル-2-ペンチル-2-シクロペンテノン、メントン、カルボン、タゲトン、ゲラニルアセトン、n-デカナール、n-ドデカナール、9-デセン-1-オール、イソ酪酸フェノキシエチル、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドジエチルアセタール、ゲラノニトリル、シトロネロニトリル、酢酸セドリル、3-イソカンフィルシクロヘキサノール、セドリルメチルエーテル、イソロンジフォラノン、オーベピンニトリル、オーベピン、ヘリオトロピン、クマリン、オイゲノール、バニリン、ジフェニルオキシド、シトラール、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、ダマスコン、イオノン類、メチルイオノン類、イソメチルイオノン類、ソラノン、イロン類、cis-3-ヘキセノールおよびそのエステル類、インダン麝香類、テトラリン麝香類、イソクロマン麝香類、大環状ケトン類、マクロラクトン麝香類、ブラシル酸エチレン、およびそれらの混合物である。
【0015】
本発明の組成物は、通例、2から60重量%、そして好ましくは5から40重量%の芳香性物質を含む。それに加えて本発明の組成物は、芳香性物質を安定化するために、十分な量のポリジメチルシロキサンを含み、好ましくは組成物全重量に対して20から99重量%のポリジメチルシロキサンを含む。
【0016】
本発明の香料組成物は、通常、所望の嗅覚的効果に悪影響を及ぼさない、香料分野で普通に使用されている溶媒、アジュバントまたは添加剤をも含む。しかしながら、この組成物はC4〜C10の酸とC4〜C15のアルコールとのエステルを含まないことが好ましい。
【0017】
この香料組成物はオーデコロン、オードトワレ、香料またはアフターシェイブローションの構成要素にすることができる。
【0018】
この組成物はその引火点に依存して、噴霧器にあるいはおそらくエアロゾルデバイスに充填できる。後者の場合、本発明の組成物は、さらに、ジメチルエーテル、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、クロロペンタフルオロエタン、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、およびそれらの混合物のような噴射ガスをも含む。ジメチルエーテル、イソブタンおよび1,1,1,2-テトラフルオロエタンが好ましく用いられ、さらにイソブタンが好ましい。
【0019】
ここで本発明を以下の実施例で説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。これらの実施例において、量は重量による百分率で示す。
【0020】
(実施例)
(実施例1)シリコーンの各種混合物の性質の比較検討
シリコーンの各種混合物を香料と配合して含む組成物の、一方では蒸発速度を、他方では引火点を評価する目的で、これらの混合物を試験した。
【0021】
a)プロトコル
[引火点]
試験組成物を標準サイズの密閉カップ中で、予想引火点より約3℃低い温度で60秒間加熱する。次に、標準サイズの炎をスライド式開口部を通してカップ内の蒸気中に導入する。この試験を1℃刻みで繰り返す。燃焼が起こった最低温度を引火点であるとして記録する。
【0022】
この試験はISO3679標準にしたがって、SETAFLASH装置で実施する。
【0023】
[蒸発速度]
試験すべき溶媒の15gを、温度(25℃)および湿度(相対湿度50%)を調節した約0.3m3のチャンバーに入れた天秤上に置いた結晶皿(直径7cm)に入れる。
【0024】
溶媒は撹拌せずに自由に蒸発するに任せ、その間溶媒を入れた蒸発皿の真上に設置したベンチレーター(PAPST-MOTOREN、商品番号8550N、2700回転/分で回転)により換気するが、ベンチレーターの羽根は結晶皿の底に対して20cmの距離で結晶皿の方へ向けておく。
【0025】
蒸発を始めて最初の30分間、結晶皿に残っている溶媒の質量を、一定の時間間隔で測定する。蒸発速度は単位表面積(cm2)当りおよび単位時間(分)当りに蒸発した溶媒のmgで表す。
【0026】
b)結果
下表に、揮発性シリコーンの各種配合に対して重量比を変えて得た結果をまとめてある。
【0027】
【表1】

【0028】
比較のために同条件で測定したエタノールの蒸発速度は5.13mg/cm2/分である。エタノール中に12重量%の香料エキスを含む組成物の引火点は16℃である。ヘキサメチルジシロキサン中に12重量%の香料エキスを含む組成物の引火点は-5℃である。
【0029】
この表から明らかなように、シリコーンL2をシリコーンL4およびL5から選んだ他のシリコーンと重量比70:30から30:70の範囲で配合したものからなるシリコーン混合物では、本発明のシリコーン混合物と違って、0℃を超える引火点および少なくとも4mg/cm2/分に等しい揮発度を有する組成物を得ることが必ずしも可能ではない。
【0030】
(実施例2)香料組成物
下記の組成物を当業者に通常の方法で調製した。
[組成物A]
香料エキス「Noa」 12%
ヘキサメチルジシロキサン 48.4%
オクタメチルトリシロキサン 39.6%
[組成物B]
香料エキス「Emporio White」 17.7%
ヘキサメチルジシロキサン 24.7%
オクタメチルトリシロキサン 57.6%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリジメチルシロキサンの混合物を含む生理学的に許容できる担体中の芳香性物質の混合物を含む香料組成物であって、ポリジメチルシロキサンの前記混合物が、ヘキサメチルジシロキサンおよびオクタメチルトリシロキサンからなり、ヘキサメチルジシロキサン対オクタメチルトリシロキサンの重量比が30:70から70:30の範囲であることを特徴とする香料組成物。
【請求項2】
ヘキサメチルジシロキサン対オクタメチルトリシロキサンの前記重量比が30:70から40:60の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリジメチルシロキサンの前記混合物が、30重量%のヘキサメチルジシロキサンおよび70重量%のオクタメチルトリシロキサンを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
5重量%から40重量%までの芳香性物質を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
20重量%から99重量%までのポリジメチルシロキサンの混合物を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
C4〜C10の酸とC4〜C15のアルコールとのエステルを含まないことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
エアロゾルデバイスに充填されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。

【公表番号】特表2009−513732(P2009−513732A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518037(P2006−518037)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006902
【国際公開番号】WO2005/004828
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】