説明

香料組成物

【課題】 香り立ちがやわらかく、適度な賦香持続性を有する香料組成物を提供する。
【解決手段】 (a)リナリルアセテート、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−6,6,6,7,8,8−ヘキサメチルシクロペンタ−γ−2−ベンゾピラン、7−アセチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,6,7−テトラメチルナフタレン、p−t−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド、エチレンブラシレートからなる群より選ばれる一種または二種以上の成分と、
(b)4−メチル−2−(2−メチルプロピル)テトラヒドロ−2H−4−ピラノール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアセテート、フェニルアセトアルデヒドグリセリルアセタール、2−メチル−3−(3,4−メチレンジオキシ−フェニル)−プロパナール、メチルジヒドロジャスモネート、3,7−ジメチル−7−メトキシ−2−オクタノール、メントール、シトロネロール、3−メチル−5−フェニルペンタノール、ジメチルフェニルエチルカルビノール、ベルガモット油、4−アセトキシ−3−ペンチルテトラヒドロピラン、シトロネリルアセテート、エチルリナロール、ターピネオール、シスジャスモン、イラン油、ヒドロキシシトロネロール、オイゲノール、アリルカプロエート、ヘリオトロピン、フェニルアセトアルデヒド、シクラメンアルデヒドからなる群より選ばれる一種または二種以上の成分を含み、
水/エタノール(配合割合1:1)溶液中に1.0質量%溶解し得ることを特徴とする香料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は香料組成物、特に香り立ちがやわらかく、賦香持続性を有する香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、香料を含有する賦香した製品としては、香水、オーデコロン等が知られている。通常、これらの製品への香料の配合には、香料用溶媒として多量のエタノールを主成分として配合するか、香料の可溶化剤として界面活性剤または多価アルコールを配合する方法が用いられてきた。
一方、近年では、ライフスタイルの変化に伴い、日常的にフレグランスの使用する場面が増えている。このため、これらの賦香した製品に対し、香気の持続性、ライトな使用感触等の様々な付加価値のニーズが高まっている。
香気の持続性を有する香料組成物を作成する場合、従来は分子量が大きく、揮発性の低い成分を用いている。例えば、ミント様の香気を持続させるためにシトラス・グリーン調香気を有する香料素材、スパイシー・ハーバル調香気を有する香料素材、フローラル・フルーティ調香気を有する香料素材を含有する香料組成物が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−297355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記香気の持続性を有する香料組成物は、香り立ちが強く、最初に嗅いだ際の第一印象がきつくなってしまう傾向がある。
一方、フレグランス等に使用される製品の香りには、賦香持続性とともに、香り立ちのやわらかさも求められている。
本発明は上記従来技術に鑑み行われたものであり、その解決すべき課題は、従来得られなかった賦香持続性を有し、香り立ちのやわらかな香料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明者らが鋭意研究を行った結果、特定の香料成分を組み合わせることにより、賦香持続性を有し、やわらかな香り立ちの香料組成物の製造が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の香料組成物は、(a)リナリルアセテート、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−6,6,6,7,8,8−ヘキサメチルシクロペンタ−γ−2−ベンゾピラン、7−アセチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,6,7−テトラメチルナフタレン、p−t−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド、エチレンブラシレートからなる群より選ばれる一種または二種以上の成分と、
(b)4−メチル−2−(2−メチルプロピル)テトラヒドロ−2H−4−ピラノール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアセテート、フェニルアセトアルデヒドグリセリルアセタール、2−メチル−3−(3,4−メチレンジオキシ−フェニル)−プロパナール、メチルジヒドロジャスモネート、3,7−ジメチル−7−メトキシ−2−オクタノール、メントール、シトロネロール、3−メチル−5−フェニルペンタノール、ジメチルフェニルエチルカルビノール、ベルガモット油、4−アセトキシ−3−ペンチルテトラヒドロピラン、シトロネリルアセテート、エチルリナロール、ターピネオール、シスジャスモン、イラン油、ヒドロキシシトロネロール、オイゲノール、アリルカプロエート、ヘリオトロピン、フェニルアセトアルデヒド、シクラメンアルデヒドからなる群より選ばれる一種または二種以上の成分を含み、
水/エタノール(配合割合1:1)溶液中に1.0質量%溶解し得ることを特徴とする。
前記香料組成物において、一種または二種以上の(a)成分と、一種または二種以上の(b)成分を含み、水/エタノール(配合割合1:1)溶液中に2.2質量%溶解し得ることが好適である。
前記香料組成物において、(a)成分と(b)成分の配合質量比が1:5〜30であることが好適である。
前記香料組成物が化粧料に使用されることが好適である。
前記化粧料において、香料組成物が実分として1〜15質量%含むことが好適である。
前記化粧料において、水が42.5〜49.5質量%、アルコールが42.5〜49.5質量%含むことが好適である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、香料組成物が前記(a)成分、(b)成分から選ばれ、水/エタノール(配合割合1:1)溶液中に1.0質量%溶解するものを選択することで、香り立ちがやわらかで、賦香持続性を有する香料組成物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明にかかる香料組成物処方1を配合したフレグランスと市販のフレグランスにおける香りの強さの時間変化を示した図。
【図2】本発明にかかる香料組成物処方1を配合した、水高配合(表7処方)のフレグランスと従来(表8処方)のフレグランスにおけるアルコール臭の感じ方の時間変化を示した図。
【図3】本発明にかかる香料組成物処方1を配合した、水高配合(表7処方)のフレグランスと従来(表8処方)のフレグランスにおける嗜好性の時間変化を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0010】
本発明にかかる香料組成物は、下記(a)からなる群より選ばれる一種または二種以上の成分と、下記(b)からなる群より選ばれる一種または二種以上の成分を含むものである。
【0011】
(a)成分
(a)成分には、リナリルアセテート、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−6,6,6,7,8,8−ヘキサメチルシクロペンタ−γ−2−ベンゾピラン、7−アセチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,6,7−テトラメチルナフタレン、p−t−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド、エチレンブラシレートが挙げられる。(a)成分の中でも、特にα−ヘキシルシンナミックアルデヒド、7−アセチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,6,7−テトラメチルナフタレン、エチレンブラシレートを好適に用いることができる。
上記した1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−6,6,6,7,8,8−ヘキサメチルシクロペンタ−γ−2−ベンゾピランは、ガラクソリド50TEC(IFF社商品名)、7−アセチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,6,7−テトラメチルナフタレンは、イソイースーパー(IFF社商品名)、p−t−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒドは、リリアール(BASF社商品名)、エチレンブラシレートは、ムスクT(高砂香料工業社商品名)として手に入れることができる。
【0012】
(b)成分
(b)成分には、4−メチル−2−(2−メチルプロピル)テトラヒドロ−2H−4−ピラノール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアセテート、フェニルアセトアルデヒドグリセリルアセタール、2−メチル−3−(3,4−メチレンジオキシ−フェニル)−プロパナール、メチルジヒドロジャスモネート、3,7−ジメチル−7−メトキシ−2−オクタノール、メントール、シトロネロール、3−メチル−5−フェニルペンタノール、ジメチルフェニルエチルカルビノール、ベルガモット油、4−アセトキシ−3−ペンチルテトラヒドロピラン、シトロネリルアセテート、エチルリナロール、ターピネオール、シスジャスモン、イラン油、ヒドロキシシトロネロール、オイゲノール、アリルカプロエート、ヘリオトロピン、フェニルアセトアルデヒド、シクラメンアルデヒドが挙げられる。(b)成分の中でも、特にフェニルアセトアルデヒドグリセリルアセタール、アリルカプロエート、イラン油、エチルリナロール、オイゲノール、3,7−ジメチル−7−メトキシ−2−オクタノールを好適に用いることができる。
上記した4−メチル−2−(2−メチルプロピル)テトラヒドロ−2H−4−ピラノールは、フロローサ(ジボダン社商品名)、フェニルアセトアルデヒドグリセリルアセタールは、アセタールCD(ジボダン社商品名)、2−メチル−3−(3,4−メチレンジオキシ−フェニル)−プロパナールは、ヘリオナール(IFF社商品名)、メチルジヒドロジャスモネートは、ヘディオン(Firmenich社商品名)、3,7−ジメチル−7−メトキシ−2−オクタノールは、オシロール(INNOSPEC LIMITED社商品名)、3−メチル−5−フェニルペンタノールは、フェノキサノール(IFF社商品名)、4−アセトキシ−3−ペンチルテトラヒドロピランは、ジャスマール(IFF社商品名)として手に入れることができる。
【0013】
本発明にかかる香料組成物において、(a)成分と(b)成分の配合質量比が1:5以上であることが好適であり、特に1:5〜30であることが好適である。(a)成分と(b)成分の配合質量比が1:5より少ないと、やわらかな香り立ちに劣る場合がある。また、(a)成分と(b)成分の配合質量比が1:30を超えると、賦香持続性に劣る場合がある。
【0014】
また、本発明にかかる香料組成物には上記必須成分に加え、本発明の効果を損ねない範囲において通常用いられる他の成分を配合することができる。
例えば、本発明の香料組成物には(a)成分と(b)成分以外の香料成分を配合することも可能であるが、その配合量は本発明の組成物に対して30質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは10質量%以下である。さらに、本発明においては、実質的に(a)成分と(b)成分以外の香料成分を含有しないことが最も好ましい。(a)成分と(b)成分以外の香料成分の配合量が30質量%を超えると、やわらかな香り立ちや、賦香持続性に劣る場合がある。
【0015】
本発明にかかる香料組成物は、水/エタノール(配合割合1:1)溶液中に1.0質量%、さらに好ましくは2.2質量%溶解し得るものである。水/エタノール(配合割合1:1)溶液中に1.0質量%未満しか溶解しない場合、香り立ちのやわらかさや、賦香持続性に劣ってしまう。
また、本発明において、溶解しているかどうかは、濁度および外観により判断した。すなわち、本発明では、黒板法で濁度を測定し、濁度が30以下であり、かつ、外観が澄明である(白濁していない)ものを溶解していると判断した。
【0016】
また、本発明にかかる香料組成物は、香料成分が気化し、吸入し得る形態のものであればどのようなものでもよく、特にその剤型等の形態によって限定されるものではないが、本発明にかかる香料組成物は、化粧料に配合されることが好適である。
【0017】
本発明にかかる香料組成物を配合される化粧料は、上記した成分の他、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、水等、通常化粧料や医薬部外品に用いられる成分を配合することができ、常法により製造される。
本発明にかかる化粧料の形態は、いずれのものでもよく、フェイシャル化粧料、メーキャップ化粧料、ボディー化粧料、芳香化粧料、毛髪化粧料等が挙げられるが、フレグランス等の芳香化粧料に使用することが特に好適である。
【0018】
本発明にかかる香料組成物を化粧料に配合する場合、香料組成物が実分として1〜15質量%含むことが好適である。化粧料中の香料組成物が実分として1質量%未満では、十分な香り強度を発揮することが難しい場合があり、また、実分として15質量%を超えると、香りが強すぎて嗜好性が悪くなる場合がある。
【0019】
また、本発明にかかる香料組成物を化粧料に配合する場合、上記香料成分以外に水とアルコールを同量ほど配合することが好適である。特に水が42.5〜49.5質量%、アルコールが42.5〜49.5質量%含むことが好適である。本発明にかかる香料組成物の配合により、芳香化粧料等の香料を高配合する化粧料において、香料を溶解させるために多量に配合されてきたアルコールや活性剤等を低減することができるために、アルコール臭を抑え、嗜好性を高めることができるとともに、低刺激性の化粧料を製造することが可能となる。
【実施例】
【0020】
次に実施例をあげて本発明を具体的に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。なお、以下の例において、配合量の記載は特に断りがない限り、質量%を意味する。はじめに各試験例で用いた評価方法について説明する。
【0021】
評価(1):香り立ち
試料の香り立ちについて専門パネラー10名により実使用試験を実施した。評価基準は以下の通りである。
◎:10名中8名以上が香り立ちがやわらかいと認めた。
○:10名中6名以上8名未満が香り立ちがやわらかいと認めた。
△:10名中4名以上6名未満が香り立ちがやわらかいと認めた。
×:10名中4名未満が香り立ちがやわらかいと認めた。
【0022】
評価(2):賦香持続性
試料を肌に塗布120分後の香りの持続効果の有無を専門パネラー10名により実使用試験を実施した。評価基準は以下の通りである。
◎:10名中8名以上が、十分な香りを有していると認めた。
○:10名中6名以上8名未満が、十分な香りを有していると認めた。
△:10名中4名以上6名未満が、十分な香りを有していると認めた。
×:10名中4名未満が、十分な香りを有していると認めた。
【0023】
下記表1に記載した配合組成なる試料について、上記評価方法により実使用試験を実施した。各試料について、香り立ちおよび賦香持続性を上記評価(1)、(2)の基準にて専門パネラー10名により試験した。結果を表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
リナリルアセテートおよび4−メチル−2−(2−メチルプロピル)テトラヒドロ−2H−4−ピラノールを配合した試験例1−1において、試料は香り立ちがやわらかく、さらに賦香持続性を有するものであった。
一方、リナリルアセテート、4−メチル−2−(2−メチルプロピル)テトラヒドロ−2H−4−ピラノール、フェニルエチルアルコール、リモネン、チモール、セドロールを選択的に配合した試験例1−2〜1−10では、香り立ちのやわらかさに劣り、賦香持続性に劣るものもあった。
【0026】
本発明者らがさらに詳細に検討を行った結果、(b)4−メチル−2−(2−メチルプロピル)テトラヒドロ−2H−4−ピラノール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアセテート、フェニルアセトアルデヒドグリセリルアセタール、2−メチル−3−(3,4−メチレンジオキシ−フェニル)−プロパナール、メチルジヒドロジャスモネート、3,7−ジメチル−7−メトキシ−2−オクタノール、メントール、シトロネロール、3−メチル−5−フェニルペンタノール、ジメチルフェニルエチルカルビノール、ベルガモット油、4−アセトキシ−3−ペンチルテトラヒドロピラン、シトロネリルアセテート、エチルリナロール、ターピネオール、シスジャスモン、イラン油、ヒドロキシシトロネロール、オイゲノール、アリルカプロエート、ヘリオトロピン、フェニルアセトアルデヒド、シクラメンアルデヒドといった単独、もしくはこれらを組み合わせても残香はないが香り立ちがやわらかな香料成分に対して、(a)リナリルアセテート、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−6,6,6,7,8,8−ヘキサメチルシクロペンタ−γ−2−ベンゾピラン、7−アセチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,6,7−テトラメチルナフタレン、p−t−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド、エチレンブラシレートのいずれか、もしくは二種以上の香料成分を組み合わせて用いることによって、香り立ちがやわらかいだけではなく、賦香持続性を有する香料組成物が得られることが確認された。
【0027】
また、上記した香料成分には、揮発性が全く異なっているものも多く存在していた(例えば、(a)成分の7−アセチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,6,7−テトラメチルナフタレンは揮発性が低いのに比べ、リナリルアセテートは揮発性が高く、また、(b)成分のシスジャスモンは揮発性が低いのに比べ、メントールは揮発性が高い)。また、香調についてもさまざまであった。このことから、香り立ちがやわらかく賦香持続性を有する香料成分は、単純に揮発性や分子量、香調等との関係で決定されるものでないことも明らかとなった。
【0028】
さらに詳しく調べるために、(a)成分としてp−t−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド、エチレンブラシレート、(b)成分としてフェニルエチルアルコール、ターピネオールを用い、下記表2に記載した配合組成なる試料について、各評価方法により実使用試験を実施した。各試料について、香り立ちおよび賦香持続性を上記評価(1)、(2)の基準にて専門パネラー10名により試験を行った。また、水/エタノール(配合割合1:1)溶液への溶解性を確認するために、濁度を下記評価方法(3)にて測定し、外観を下記評価基準(4)にて評価した。結果を表2に示す。
【0029】
評価(3):溶解度
香料成分の水/エタノール(配合割合1:1)溶液への濁度を黒板法により測定した。測定機器は、積分球式濁度計TR-35 TURBIDI METER(三菱化成社製)を用いた。
【0030】
評価(4):外観
評価(3)において評価された試料の外観を観察した。評価基準は以下の通りである。
◎:澄明である。
○:ほぼ澄明である。
△:やや白濁している。
×:白濁している。
【0031】
【表2】

【0032】
p−t−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒドとフェニルエチルアルコールとを配合した試験例2−1は、香り立ちのやわらかさと、賦香持続性にやや劣っていた。また、水/エタノール(配合割合1:1)溶液への濁度は高く、外観はやや白濁していた。
p−t−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒドとターピネオールとを配合した試験例2−2は、香り立ちのやわらかさと、賦香持続性にやや劣っていた。また、水/エタノール(配合割合1:1)溶液への濁度は高く、外観はやや白濁していた。
一方、エチレンブラシレートとフェニルエチルアルコールとを配合した試験例2−3は、香り立ちがやわらかさ、賦香持続性に非常に優れていた。また、水/エタノール(配合割合1:1)溶液への濁度は低く、外観はほぼ澄明だった。
エチレンブラシレートとターピネオールとを配合した試験例2−4は、香り立ちがやわらかさ、賦香持続性に非常に優れていた。また、水/エタノール(配合割合1:1)溶液への濁度は低く、外観は澄明だった。
したがって、本発明にかかる香料組成物において、前記香料成分が水/エタノール(配合割合1:1)溶液中で濁度が低く、外観が澄明に近い場合、すなわち、水/エタノール(配合割合1:1)溶液への溶解性が高い場合に、特に香り立ちがやわらかく、賦香持続性のある組成物が得られることが示唆された。
【0033】
次に、前記香料成分の水/エタノール(配合割合1:1)溶液への溶解性が香りへ与える影響をさらに調べるために、下記表3に記載した配合組成なる試料について、各評価方法により実使用試験を実施した。各試料について、香り立ちおよび賦香持続性を上記評価(1)、(2)の基準にて専門パネラー10名により試験を行い、溶解性(濁度および外観)を上記評価方法(3)、(4)にて評価した。結果を表3に示す。
【0034】
【表3】

【0035】
本発明に特徴的な(a)成分および(b)成分を適宜配合し、水/エタノール(配合割合1:1)溶液に2.2質量%溶解し得る試験例3−3〜3−8は、香り立ちのやわらかさ、賦香持続性に非常に優れていた。また、本発明に特徴的な(a)成分および(b)成分を適宜配合し、水/エタノール(配合割合1:1)溶液に1.0質量%溶解し得る試験例3−9においても、香り立ちのやわらかさ、賦香持続性に非常に優れていた。
しかし、本発明に特徴的な(a)成分および(b)成分を適宜配合したものの、水/エタノール(配合割合1:1)溶液に2.2質量%溶解し得ない試験例3−1〜3−2は、香り立ちのやわらかさと、賦香持続性にやや劣っていた。また、試験例3−1(2)より、(a)成分および(b)成分を配合しているが、水/エタノール(配合割合1:1)溶液に1.0質量%し得ない場合も、香り立ちにはやや優れているものの、賦香持続性にやや劣ることがわかる。
したがって、本発明にかかる香料組成物において、前記香料成分が水/エタノール(配合割合1:1)溶液に1.0質量%、さらに好ましくは2.2質量%溶解し得る場合に、特に香り立ちがやわらかく、賦香持続性のある組成物が得られることが確認された。
【0036】
次に、本発明にかかる香料組成物において、(a)成分と(b)成分を配合する好適な割合を検討するために、(a)成分としてp−t−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド、(b)成分としてフェニルエチルアルコールを用い、下記表4に記載した配合組成なる試料について、各評価方法により実使用試験を実施した。各試料について、香り立ちおよび賦香持続性を上記評価(1)、(2)の基準にて専門パネラー10名により試験を行い、濁度および外観を上記評価方法(3)、(4)にて評価した。結果を表4に示す。
【0037】
【表4】

【0038】
p−t−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒドおよびフェニルエチルアルコールを適宜含んだ試験例4−4〜4−5において、試料は水/エタノール(配合割合1:1)溶液への溶解性が高く、香り立ちがやわらかく、適度な賦香持続性を有していた。しかし、p−t−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒドの割合が小さい試験例4−6において、試料は香り立ちのやわらかさに優れていて、賦香持続性にもやや優れていた。また、p−t−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒドの割合が大きい試験例4−1〜4−3において、試料は水/エタノール(配合割合1:1)溶液への溶解性が低く、香り立ちのやわらかさに劣っていた。
なお、試験例4−4〜4−6の割合でそれぞれの成分を配合したところ、試料は水/エタノール(配合割合1:1)溶液に2.2質量%溶解するものであった。
したがって、本発明にかかる香料組成物において、より優れた賦香持続性を得るためには、(a)成分と(b)成分の配合質量比が1:5以上であることが好適であり、特に1:5〜30であることが好適である。
【0039】
次に、本発明にかかる香料組成物を化粧料に配合する際の好適な配合量を検討するために、化粧料(フレグランス)の試料を製造した。(a)成分としてp−t−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド、(b)成分としてフェニルエチルアルコールを用い、(a)成分と(b)成分の配合質量比を1:10とした香料組成物を含む、下記表5に記載した配合組成なるフレグランスを製造し、実使用試験を実施した。各化粧料について、香りの強さの嗜好性を下記評価(5)の基準にて専門パネラー10名により評価した。結果を表5に示す。
【0040】
評価(5):香りの強さの嗜好性
化粧料を使用時の香りの強さを専門パネラー10名により実使用試験を実施した。評価基準は以下の通りである。
◎:10名中8名以上が、香りの強さが好きと認めた。
○:10名中6名以上8名未満が、香りの強さが好きと認めた。
△:10名中4名以上6名未満が、香りの強さが好きと認めた。
×:10名中4名未満が、香りの強さが好きと認めた。
【0041】
【表5】

【0042】
本発明にかかる香料組成物((a)成分:p−t−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド、(b)成分:フェニルエチルアルコール)を適宜含んだ試験例5−3〜5−5において、化粧料は適度な香りの強さを有しており、嗜好性が高かった。しかし、本発明にかかる香料組成物の量が少ない試験例5−1〜5−2において、化粧料は香りが弱すぎて香りを適度な強さで感じることはできなかった。また、本発明にかかる香料組成物の量が多い試験例5−6において、化粧料は香りが強すぎて香りを適度な強さで感じることはできなかった。
したがって、本発明にかかる香料組成物は、化粧料中1〜15質量%含むことが好適である。
【0043】
つづいて、本発明者らは、実際に下記表6に示す香料組成物処方1を調製し、該香料組成物を配合した化粧料(フレグランス)を調製し、化粧料の香りの性質について評価を行った。香料組成物処方1は、水/エタノール(配合割合1:1)溶液中に2.2質量%溶解し得るものであった。該香料組成物を配合した化粧料の処方を下記表7に示す。対照としては、市販のフレグランスを使用した。専門パネラー2名に、使用直後、5分後、30分後、2時間後の香りの強さについて、1(弱い)〜5(強い)の5段階で評価してもらった。結果を図1に示す。
【0044】
【表6】

【0045】
(表7)
(質量%)
香料組成物処方1 4
イオン交換水 48
エタノール 48
【0046】
図1から明らかなように、市販のフレグランスは、香り立ちがきつく、時間が経つにつれ香りが落ちていることがわかる。これに対して、本発明にかかる香料組成物を配合したフレグランスは、市販のフレグランスとさほど変わらない賦香持続性を有しているのにかかわらず、香り立ちがやわらかいことがわかる。
【0047】
本発明者らは、上記表6に示す香料組成物処方1を用いて、さらなる化粧料(フレグランス)の実使用試験を行った。香料組成物処方1を配合した表7の処方のフレグランスと、香料組成物処方1を配合した従来のタイプである表8の処方のフレグランスを製造した。これらのフレグランスを、専門パネラー60名に、瓶口、使用直後、30分後、2時間後のアルコール臭について、1(感じない)〜5(感じる)、嗜好について1(嫌い)〜5(好き)の5段階で評価してもらった。それぞれの結果を図2および図3に示す。
【0048】
(表8)
(質量%)
香料組成物処方1 4
イオン交換水 11
エタノール 80
ジプロピレングリコール 5
【0049】
図2より、同じ香料組成物を配合しても、エタノールの量によって感じ方が異なり、特に瓶口で嗅いだ場合およびフレグランス使用直後に、アルコール臭の感じ方が顕著に異なることがわかった。さらに、図3から、同じ香料組成物を配合しても、香料組成物以外の他成分の量により嗜好性が異なり、時間経過にかかわらず表7のアルコールが少ない処方のフレグランスの方が嗜好性が高いことがわかる。このことから、香料組成物の香調等にかかわらず、化粧料中の香料組成物以外の他成分であるアルコールの量に起因するアルコール臭の感じ方と嗜好性がかかわっていることがわかる。
【0050】
以上のことから、本発明にかかる香料組成物を化粧料に配合する場合、他の成分としてアルコールの量を低減し、アルコールの量と同量ほど水を配合した方がよいことがわかる。本発明者らがさらに詳細に検討を行った結果、本発明にかかる香料組成物を化粧料に配合する場合、他の成分として水42.5〜49.5質量%、アルコール42.5〜49.5質量%を含むことが好適であることが確認された。
【0051】
以上の知見に基づいて、本発明者らが実際に調製した香料組成物の他の処方例を以下に示す。
【0052】
【表9】


香料組成物処方2は、水/エタノール(配合割合1:1)溶液中に2.2質量%溶解し得るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)リナリルアセテート、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−6,6,6,7,8,8−ヘキサメチルシクロペンタ−γ−2−ベンゾピラン、7−アセチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,6,7−テトラメチルナフタレン、p−t−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド、エチレンブラシレートからなる群より選ばれる一種または二種以上の成分と、
(b)4−メチル−2−(2−メチルプロピル)テトラヒドロ−2H−4−ピラノール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアセテート、フェニルアセトアルデヒドグリセリルアセタール、2−メチル−3−(3,4−メチレンジオキシ−フェニル)−プロパナール、メチルジヒドロジャスモネート、3,7−ジメチル−7−メトキシ−2−オクタノール、メントール、シトロネロール、3−メチル−5−フェニルペンタノール、ジメチルフェニルエチルカルビノール、ベルガモット油、4−アセトキシ−3−ペンチルテトラヒドロピラン、シトロネリルアセテート、エチルリナロール、ターピネオール、シスジャスモン、イラン油、ヒドロキシシトロネロール、オイゲノール、アリルカプロエート、ヘリオトロピン、フェニルアセトアルデヒド、シクラメンアルデヒドからなる群より選ばれる一種または二種以上の成分を含み、
水/エタノール(配合割合1:1)溶液中に1.0質量%溶解し得ることを特徴とする香料組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の香料組成物において、一種または二種以上の(a)成分と、一種または二種以上の(b)成分を含み、水/エタノール(配合割合1:1)溶液中に2.2質量%溶解し得ることを特徴とする香料組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の香料組成物において、(a)成分と(b)成分の配合質量比が1:5〜30であることを特徴とする香料組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の香料組成物を含むことを特徴とする化粧料。
【請求項5】
請求項4に記載の化粧料において、香料組成物が実分として1〜15質量%含むことを特徴とする化粧料。
【請求項6】
請求項4または5に記載の化粧料において、水が42.5〜49.5質量%、アルコールが42.5〜49.5質量%含むことを特徴とする化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−84618(P2011−84618A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237272(P2009−237272)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】