説明

香料組成物

【課題】シトラス系香料またはフルーティー系香料をアルコールに溶解した香料組成物でありながら、アルコール臭を低減し、香りの持続性に優れ、さらに塗布しやすい粘度を有する香料組成物を提供するとともに、この香料組成物を塗布するに適した塗布用具を提供する。
【解決手段】(A)シトラス系香料またはフルーティー系香料と、(B)低級アルコール60〜80質量%と、(C)水と、(D)特定の増粘用モノマー組成物を重合してなるカチオン性増粘剤0.05〜0.2質量%と、(E)セルロース系増粘剤0.2〜1.0質量%を含有し、30℃における粘度が200〜1000mPa・sであることを特徴とする香料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シトラス系香料またはフルーティー系香料をアルコールに溶解する香料組成物でありながら、アルコール臭を低減するとともに、香りの持続性に優れ、塗布しやすい粘度を有する香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレグランス製品の中でもっとも一般的に使用される香水は、香料をアルコールなどの溶剤に溶かして作られ、製品中のアルコールの配合量は約80〜90%と極めて高いために、香水を塗布した直後には、アルコールの匂いが気になるものがある。
【0003】
また、皮膚に香水を塗布した後は、長時間に亘り塗布直後の香りの強さが維持され、香りの質が変化しないフレグランス製品が望まれるが、特に、シトラス系あるいはフルーティー系香料を配合した香水では、経時による香りの変化が著しく感じられるものがある。
【0004】
さらに、フレグランス製品は、通常ディスペンサー容器を使用して香水を噴霧して皮膚に塗布するか、あるいは瓶から指にとり皮膚に塗布して使用するものであるが、これらの使用方法では、目的としない部位に香水が付着したり、注意をしないと香水がこぼれてしまうなどの欠点があった。
【0005】
【特許文献1】特開平8−325591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、シトラス系香料またはフルーティー系香料をアルコールに溶解した香料組成物でありながら、アルコール臭を低減するとともに、香りの持続性に優れ、さらに塗布しやすい粘度を有する香料組成物を提供すること、および、この香料組成物を塗布するのに適した塗布用具を備えたフレグランス製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明者らが検討を行った結果、シトラス系香料またはフルーティー系香料をアルコールに溶解した香料組成物において、水と2種類の増粘剤を配合することにより、アルコール臭を低減するとともに、経時での香りの持続性に優れ、塗布しやすい粘度の香料組成物を見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(A) シトラス系香料またはフルーティー系香料と、(B)低級アルコールを60〜80質量%と、(C)水と、(D)下記に示す(a)〜(d)成分を含有する増粘剤用モノマー混合物を重合反応させて得られるカチオン性増粘剤0.05〜0.2質量%と、(E)セルロース系増粘剤0.2〜1.0質量%を含有し、30℃における粘度が200〜1000mPa・sであることを特徴とする香料組成物である。
(a)一般式(I):
【化7】

(式中、Rは水素原子またはメチル基、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基またはt−ブチル基、Aは酸素原子または−NH−基、Bは直鎖状または側鎖を有する炭素数1〜4のアルキレン基を示す。)で表されるアミン含有(メタ)アクリル系モノマー 15.0〜85.0質量%、
(b)一般式(II):
【化8】

(式中、Rは前記と同じ意味、Rは一般式:
【化9】

(式中、pは3または4を示す。)で表される基または式:
【化10】

で表される基を示す。)で表されるビニルモノマー 0〜80.0質量%、
(c)一般式(III):
【化11】

(式中、RおよびAは前記と同じ意味、Rは直鎖状または側鎖を有する炭素数1〜17のアルキレン基または一般式(IV):
【化12】

(式中、nは1〜4の整数、qは1〜25の整数を示す。)で表される基、Rは水素原子またはメチル基を示す。)で表される(メタ)アクリロイル基含有モノマー 1.0〜60.0質量%、
(d)架橋性ビニルモノマー 0.1〜20.0質量%
【0009】
さらに、本発明は、前記香料組成物に配合する(E)セルロース系増粘剤がヒドロキシプロピルセルロース、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロースおよびメチルセルロースから選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする香料組成物である。
【0010】
さらに、本発明は、前記香料組成物に配合する(B)低級アルコールがエタノールであることを特徴とする香料組成物である。
【0011】
また、本発明は、前記香料組成物をスパチュラを使用して塗布することを特徴とするフレグランス製品である。
【0012】
さらに、本発明は、前記スパチュラの材質がポリプロピレンであることを特徴とするフレグランス製品である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シトラス系香料またはフルーティー系香料をアルコールに溶解した香料組成物において、アルコール臭を低減するとともに、香りの持続性に優れ、塗布しやすい粘度を有する香料組成物を提供することができる。
【0014】
また、この香料組成物を塗布するのに適した塗布具を備えたフレグランス製品を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】テスト品5とテスト品1の塗布直後のアルコール臭を評価した結果を示すグラフ
【図2】テスト品6とテスト品2の塗布直後のアルコール臭を評価した結果を示すグラフ
【図3】テスト品5とテスト品1の経時での香りの強さを評価した結果を示すグラフ
【図4】テスト品6とテスト品2の経時での香りの強さを評価した結果を示すグラフ
【図5】テスト品5とテスト品1の経時での香りのフレッシュ感を評価した結果を示すグラフ
【図6】テスト品6とテスト品2の経時での香りのフレッシュ感を評価した結果を示すグラフ
【図7】スパチュラを備えた容器の側面図(一部断面図)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の構成について説明する。
【0017】
(A)シトラス系香料またはフルーティー系香料
シトラス系香料とは、柑橘類に含まれる香気成分であるモノテルペン炭化水素やその他のテルペン炭化水素等を含有し、オレンジ、ダイダイ、スイートオレンジ、ビターオレンジ、レモン、ベルガモット、グレープフルーツ等のミカン属である柑橘類(シトラス)の香りを発する香料を指す。具体的な成分としては、d−リモネン、シトラール、リナロール、リナリルアセテート、デカナール、オクタナール、ヌートカトン等を含有する。
また、フルーティー系香料とは、果物類に含まれる香気成分であるアルコール類、アルデヒド類、エステル類、ラクトン類など含有し、りんご、もも、マンゴなどの果物類(フルーツ)の香りを発する香料を指す。具体的な成分としては、アミルアセテート、アミルブチレート、エチルアセテート、α-イオノン、エチルブチレート等を含有する。
【0018】
香料の配合量はフレグランス製品として充分な香りが得られる配合量であれば、特に限定されるものではないが、好ましくは1.0〜15.0質量%である。
【0019】
(B)低級アルコール
本発明の香料組成物に配合する低級アルコールは、エタノール、メタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール等が挙げられるが、安全性や実用性等の面からエタノールを用いることが好適である。市販品としては一般アルコール95度合成(日本アルコール販売株式会社)等が挙げられる。本組成物におけるエタノール等の低級アルコールの配合量は、組成物全体の60〜80質量%である。60質量%未満では、香料が完全に溶解せず、香料成分の一部が析出し、沈殿が生じる傾向がある。また、80質量%を上限としたのは、本発明の必須成分である増粘剤成分等の他の成分を配合するためである。
【0020】
(C)水
本発明の香料組成物に配合する水は特に限定されず、具体的に示すとすれば精製水、イオン交換水、水道水等が挙げられる。
【0021】
また、水の配合量は、特に限定されるものではないが、香料組成物を調製する際に用いられる(D)カチオン性増粘剤および(E)セルロース系増粘剤の種類や配合量に応じて、香料組成物が粘度200〜1000mPa・sの液状乃至ゲル状の均一相が形成されるように、配合量を適宜調整するものであり、組成物中の配合量としては、10〜30質量%が好ましい。
【0022】
(D)カチオン性増粘剤
本発明の香料組成物に配合するカチオン性増粘剤は、前記した(a)〜(d)を含有する増粘剤用モノマー組成物を重合して得られるものである。以下、このカチオン性増粘剤を構成する各成分について詳述する。
【0023】
前記一般式(I)で表されるアミン含有(メタ)アクリル系モノマーは、増粘剤用モノマー組成物を共重合することによって得られた共重合体を適当な酸で中和したときに、該共重合体にカチオンイオンの性質を与える役割を有する成分である。
【0024】
前記アミン含有(メタ)アクリル系モノマーの代表例としては、たとえばN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられるが、本発明はかかる例示のみに限定されるものではない。なお、本発明においては、前記アミン含有(メタ)アクリル系モノマーは、単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
【0025】
前記増粘剤用モノマー組成物におけるアミン含有(メタ)アクリル系モノマーの割合は、15.0〜85.0質量%、好ましくは25.0〜75.0質量%、さらに好ましくは35.0〜65.0質量%となるように調製される。かかるアミン含有(メタ)アクリル系モノマーの割合が前記範囲未満である場合には、得られる共重合体において該アミン含有(メタ)アクリル系モノマーの部分が酸によって中和される量が少なくなりすぎて充分なゲル粘度を有するものが得られにくくなり、また前記範囲をこえる場合には、得られるカチオン性増粘剤が乾燥した後に形成されるフィルムの柔軟性が失われるようになる。
【0026】
前記一般式(II)で表されるビニルモノマーは、カチオン性増粘剤が乾燥した後に形成されるフィルムに柔軟性、光沢およびなめらかさを付与する成分である。
【0027】
前記ビニルモノマーの代表例としては、たとえばN−ビニルピロリドン、N−ビニルピぺリドン、アクリルアミド、メタアクリルアミドなどが挙げられるが、本発明はかかる例示のみに限定されるものではない。なお、本発明においては、前記ビニルモノマーは単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
【0028】
前記増粘剤用モノマー組成物におけるビニルモノマーの割合は80.0質量%以下、好ましくは75.0質量%以下、さらに好ましくは60.0質量%以下となるように調製される。かかるビニルモノマーの割合が前記上限値をこえる場合には、得られるカチオン性増粘剤のゲル粘度が著しく低下する。なお、前記ビニルモノマーを配合することによって奏される効果、すなわちカチオン性増粘剤が乾燥した後に形成されるフィルムに柔軟性、光沢およびなめらかさを充分に付与するためには、前記増粘剤用モノマー組成物における前記ビニルモノマーの割合は3.0質量%以上、好ましくは5.0質量%以上、さらに好ましくは20.0質量%以上であることが望ましい。
【0029】
前記一般式(III)で表される(メタ)アクリロイル基含有モノマーは、カチオン性増粘剤が乾燥した後に形成されるフィルムの光沢の向上、ゲル粘度の向上および種々のセッティング用ポリマーとの相溶性の向上を図るための成分である。
【0030】
前記(メタ)アクリロイル基含有モノマーの具体例としては、たとえばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、 イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(一般式(IV)中、nが2、qが2〜9の整数)(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(一般式(IV)中、nが3、qが2〜23の整数)(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明はかかる例示のみに限定されるものではない。なお、本発明においては、前記(メタ)アクリロイル基含有モノマーは、単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
【0031】
前記増粘剤用モノマー組成物における(メタ)アクリロイル基含有モノマーの割合は1.0〜60.0質量%、好ましくは1.0〜55.0質量%、さらに好ましくは2.0〜30.0質量%となるよう調製される。かかる(メタ)アクリロイル基含有モノマーの割合が前記範囲をこえる場合には、得られる共重合体中の疎水性基の割合が大きくなり、中和後であっても水に対する溶解性が小さくなり、なめらかなジェルが得られにくくなり、前記範囲未満では、ゲル粘度が低下するため、カチオン性増粘剤の使用量を増す必要があり、種々のセット用樹脂の配合可能な量が低下すると同時に、カチオン性増粘剤が乾燥した後に形成されるフィルムの光沢が低下する。
【0032】
前記架橋性ビニルモノマーは、1分子中に2以上の炭素−炭素不飽和二重結合を有する化合物であり、他の単量体と架橋する性質を有するものである。
【0033】
前記架橋性ビニルモノマーの代表例としては、たとえばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの1分子中に2以上の炭素−炭素不飽和二重結合を有する(メタ)アクリル系モノマー;メチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,2−ビス(メタ)アクリルアミドエタン、1,5−ビス(メタ)アクリルアミドペンタンなどの1分子中に2以上の炭素−炭素不飽和二重結合を有する(メタ)アクリルアミド系モノマー;ジビニルベンゼンなどの1分子中に2以上の炭素−炭素不飽和二重結合を有するビニルモノマーなどが挙げられるが、本発明はかかる例示のみに限定されるものではない。なお、本発明においては、前記架橋性ビニルモノマーは、1種または2種以上を混合して用いられる。
【0034】
前記増粘剤用モノマー組成物における架橋性ビニルモノマーの割合は、0.1〜20.0質量%、好ましくは1.0〜10.0質量%、さらに好ましくは2.0〜8.0質量%となるように調製される。かかる架橋性ビニルモノマーの割合は、前記範囲未満である場合には、得られるカチオン性増粘剤の架橋密度が小さくなりすぎるため、カチオン性増粘剤の粘度を高くすることができなくなり、また前記範囲をこえる場合には、カチオン性増粘剤の粘度が高くなるが、ゲル中に細かい凝集物が生じ、均一なジェルが得られにくくなる。
【0035】
前記アミン含有(メタ)アクリル系モノマー、ビニルモノマー、(メタ)アクリロイル基含有モノマーおよび架橋性ビニルモノマーを含有した増粘剤用モノマー組成物の重合反応は、一般的な溶液重合法や塊重合法によって行うことができるが、たとえば粉体を得るための重合法である析出重合法によって行うこともでき、通常チッ素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で非水系溶媒中で加温しながら行われる。このように、不活性ガス雰囲気下で非水系溶媒中で重合反応が行われるのは、単量体または形成された共重合体中に存在するエステル基が加水分解することを防止するためである。
【0036】
本発明においては、前記非水系溶媒としては、良溶媒単独または良溶媒と貧溶媒の混合溶媒が用いられる。
【0037】
本発明において良溶媒が用いられるのは、各単量体の反応性の差異による単独重合体の生成を抑制し、均一な共重合体を得るためである。なお、本明細書において、前記良溶媒とは、25℃において該良溶媒100mLに対して分子量が10000以上の共重合体が20g以上の範囲で溶解し、濁りが認められないような溶媒をいう。前記良溶媒の具体例としては、たとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらの良溶媒のなかでは、エタノール、イソプロパノールおよびベンゼンは、比較的高分子量の共重合体を得ることができるものであるので特に好ましい。なお、ベンゼンなどには為害性があるため、エタノールおよびイソプロパノールがもっとも好ましい。
【0038】
また、本発明において貧溶媒が用いられるのは、生成した共重合体を重合溶液から容易に析出させるためである。前記貧溶媒とは、25℃において該貧溶媒100mLに対して分子量が10000以上の共重合体を5g以下の範囲で溶解する溶媒をいう。前記貧溶媒の具体例としては、たとえばn−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭素数が15以下の直鎖、分岐鎖または環状の脂肪族炭化水素などが挙げられる。これらの貧溶媒のなかでは、比較的沸点が高い炭素数7以下の直鎖、分岐鎖または環状の脂肪族炭化水素が好ましい。なかでも、炭素数が6または7の直鎖、分岐鎖または環状の脂肪族炭化水素は、沸点が高いので特に好ましい。また、安価であり、工業的に取扱い性が良好であるという点から、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどが好ましい。
【0039】
得られるカチオン性増粘剤の特性を損なうことなくカチオン性増粘剤を合成するためには、前記良溶媒および貧溶媒を適切な割合で配合することが好ましい。前記貧溶媒の割合が大きすぎる場合には、重合がすみやかに進行し、短時間のうちに粉体が析出して所望の物性を有するカチオン性増粘剤が得られがたくなる傾向があるため、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒に対して貧溶媒の割合は、98質量%以下、好ましくは97質量%以下、また良溶媒の割合は2質量%以上、好ましくは3質量%以上とすることが望ましい。
【0040】
反応溶液からカチオン性増粘剤を効率よく得るためには、重合時の撹拌を良好にするための反応装置を用いることが好ましい。かかる反応装置として一般に用いられている溶液重合用攪拌機を用いる場合には、前記増粘剤用モノマー組成物の濃度が30質量%以下となるように前記溶媒で希釈することが好ましい。なお、反応に際しては、反応溶液が滞ることがないようにするために、攪拌機などを用いて充分に撹拌することが好ましい。前記重合反応は、50〜100℃の加温下にて行うことが好ましく、一般には、反応に用いられる溶媒の還流温度で行われる。重合反応に要する時間は、通常10時間以上である。なお、重合反応は、残存している単量体量が10質量%以下になった時点で、任意に終了することができる。なお、残存している単量体の量は、たとえばPSDB法などの公知の方法によってシュウ素を二重結合に付加し、二重結合含量を測定することによって決定することができる。
【0041】
かくしてカチオン性増粘剤の沈殿物を含有した反応溶液が得られるが、混合溶媒の除去は、たとえば得られたカチオン性増粘剤の沈殿物を濾取したのち、真空乾燥を施したり、常圧または減圧下で留去することによって行うことができる。
【0042】
重合反応に際しては、重合触媒を用いてもよい。かかる重合触媒としては、たとえば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレートなどのアゾ系化合物や過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルなどのジアシルパーオキサイドや、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステルで代表される過酸化物があるが、これらの触媒は1種または2種以上を混合して用いられる。また、本発明はかかる例示のみに限定されるものではない。なお、増粘剤用モノマー組成物中にアミン系モノマーが多く使用されている場合、過酸化物触媒を多用すると酸化反応などの好ましくない副反応が併発し、重合を阻害するおそれがあるので、使用するときには注意を要する。一般には、アゾ系触媒を主に使用することが好ましいが、用いる溶媒の沸点によっても異なり、たとえばエタノールやベンゼンを用いる場合には、2,2′−アゾビスイソブチロニトリルが取扱い性がよいのでもっとも好ましい。前記重合触媒の使用量は、増粘剤用モノマー組成物の単量体全質量に対して0.05〜3.0質量%、なかんづく0.1〜1.0質量%であることが好ましい。
【0043】
なお、前記単量体の重合過程においては、さまざまな様相が呈される。たとえば、前記良溶媒のみを用いた場合には、重合反応の初期の段階で一般の溶液重合を行った場合と同様の様相を呈するが、反応の進行に伴って架橋反応が進行し、ゲル状を呈するようになり、さらに反応が進行するにしたがって沈殿物のないグリース状の生成物が得られる。
【0044】
また、前記良溶媒と貧溶媒との混合溶液を用いた場合には、重合の初期の段階では一般の溶液重合法を採用した場合と同様の様相が呈されるが、反応の進行に伴って架橋反応が進行し、ゲル状を呈するようになり、さらに反応が進行するにしたがって、得られた重合体はもはや混合溶媒に溶け込めなくなり、不溶化して沈殿物として析出する。
【0045】
かくしてカチオン性増粘剤が得られるが、該カチオン性増粘剤は、たとえば特開平5−140531号公報、特願平5−298659号に記載されている。カチオン性増粘剤は、それ自身、べたつかず、ゲル形成能を有するもので、全組成中に0.05〜0.2質量%、好ましくは0.05〜0.1質量%配合される。0.05質量%未満では増粘効果が得られず、0.2質量%をこえると、皮膚へ塗布したときに塗り広げにくくなり好ましくない。
【0046】
(E)セルロース系増粘剤
本発明の香料組成物に配合するセルロース系増粘剤は、たとえば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等があり、なかでも、アルコール配合量が高い領域でも充分に増粘し、また、(D)カチオン性増粘剤のみを配合して増粘した場合に生じる粘度低下を軽減させる働きがあることから、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびメチルセルロースから選ばれる1種または2種以上を配合することが好ましく、特にヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。
【0047】
セルロース系増粘剤は、全組成中に0.2〜1.0質量%、好ましくは0.3〜0.8質量%配合される。0.2質量%未満では経時により粘度が低下する可能性があり、一方1.0質量%をこえると、粘度が高くなりすぎ、使用性が劣るためである。
【0048】
本発明の香料組成物の30℃での粘度は、200〜1000mPa・sである。上記(A)乃至(E)の成分を配合し、香料組成物を200〜1000mPa・sとすることにより、本発明の効果であるアルコール臭の低減と、香りの持続性と、良好な使用性を奏することが可能となる。なお、粘度の測定は30℃におけるビスメトロン粘度計(ローターNo.2、回転数12rpm)を使用して行う。
【0049】
本発明の香料組成物は、塗布するための用具としてスパチュラ(1)を使用する。香料組成物の粘度(30℃)は、200〜1000mPa・sであり、通常の香水に比べて粘度が高いため、垂れ落ちることがなく、スパチュラ(1)を使用して目的とする部位に確実に塗布することができる(図7)。
【0050】
また、スパチュラの材質はポリプロピレンであることが好ましい。スパチュラを備えた容器としては、通常、図7に示すような塗布具付き容器が採用されるが、この場合、スパチュラ(1)と内キャップ(3)とは射出成型により一体成型されるため、同じプラスチック素材となる。スパチュラは、その先端部で香料組成物を残すことなくすくい取るために、先端を容器の底部分に近づけるために寸法精度が必要となることから(スパチュラ先端と容器底面との間隔は5mmとする)、中味による膨潤が少ない素材を選定する必要がある。一方、内キャップは、容器に圧着したときに気密性が確保するため、ある程度変形し得る比較的柔らかい素材である必要がある。したがって、図7に示す塗布具付き容器のスパチュラ(内キャップ)の素材は、スパチュラと内キャップのいずれの機能も発揮し得る素材を選定する必要があることから、比較的柔らかく、かつ中味による膨潤が少ないプラスチック素材としてポリプロピレンを用いることが好ましい。
【0051】
(任意成分)
本発明の香料組成物には、前記必須成分のほか、品質を損なわない範囲で他の任意成分を配合することができる。かかる任意成分としては、たとえば次のようなものがある。
【0052】
粘度やゲル強度を調整するための乳酸、リン酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸等の酸類が挙げられる。
【0053】
液体油脂としては、アボガド油、ツバキ油、月見草油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等が、固体油脂としては、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等、ロウ類としては、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等、炭化水素油としては、流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の油分が挙げられる。
【0054】
高級脂肪酸としては、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン(ベヘニン)酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。
【0055】
高級アルコールとしては、たとえば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2−デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の分岐鎖アルコール等が挙げられる。
【0056】
合成エステル油としては、たとえば、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ペンタンエリスリトール、トリ−2−エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0057】
シリコーンとしては、たとえば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサン等の環状ポリシロキサン、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0058】
ビタミン類としては、ビタミン油、レチノール、酢酸レチノール等のビタミンA類、リボフラビン、酪酸リボフラビン、フラビンアデニンヌクレオチド等のビタミンB2類、ピリドキシン塩酸塩、ピリドキシンジオクタノエート等のビタミンB6類、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−硫酸ナトリウム、L−アスコルビン酸リン酸エステル、DL−α−トコフェロール−L−アスコルビン酸リン酸ジエステルジカリウム等のビタミンC類、パントテン酸カルシウム、D−パントテニルアルコール、パントテニルエチルエーテル、アセチルパントテニルエチルエーテル等のパントテン酸類、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等のビタミンD類、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等のニコチン酸類、α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸DL−α−トコフェロール、コハク酸DL−α−トコフェロール等のビタミンE類、ビタミンP、ビオチン等が挙げられる。
【0059】
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸(以下PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N−ジエトキシPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAブチルエステル等の安息香酸系紫外線吸収剤、ホモメンチル−N−アセチルアントラニレート等のアントラニル酸系紫外線吸収剤、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p−イソプロパノールフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤、オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチル−p−メトキシシンナメート(2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート)、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル−ジパラメトキシシンナメート、3,4,5−トリメトキシ桂皮酸3−メチル−4−[メチルビス(トリメチルシロキシ)シリル]ブチル等の桂皮酸系紫外線吸収剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、4−フェニルベンゾフェノン、2−エチルヘキシル−4’−フェニル−ベンゾフェノン−2−カルボキシレート、ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−3−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、3−(4’−メチルベンジリデン)−d,l−カンファー、3−ベンジリデン−d,l−カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル) ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニルベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン、5−(3,3−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン等が挙げられる。
【0060】
保湿剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル−12−ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl−ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物等が挙げられる。
【0061】
その他、植物抽出液、薬剤、安定化剤、高分子化合物等が挙げられる。
【実施例】
【0062】
次に実施例を挙げ、本発明をさらに説明する。なお、配合量は質量%である。実施例に先立ち、本実施例で用いられるカチオン性増粘剤の製造方法について説明する。
【0063】
「カチオン性増粘剤の製造方法」
温度計、還流管およびチッ素導入管を備えた三つ口フラスコに、モノマーとしてN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート50g、N−ビニルピロリドン47.5g、ステアリルアクリレート2.5gおよびトリプロピレングリコールジアクリレート1.9gと、エタノール23.1gおよびシクロヘキサン554.3gの混合溶媒(混合比(質量比)4:96)とを添加し、80℃にて還流を行いながらチッ素気流下で2時間撹拌して脱気した。
【0064】
次に、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル0.41gを三つ口フラスコに添加し、80℃で重合を開始した。重合開始45分間経過後にトリプロピレングリコールジアクリレート1.9gを添加し、さらに45分間経過後にトリプロピレングリコールジアクリレート1.9gを添加した。チッ素気流下で撹拌しながら約10時間重合反応を行ったのち、得られたポリマースラリー溶液を減圧下で濾過し、固型分を減圧下で乾燥した。得られた乾燥ポリマーを粉砕機で粉砕し、白色粉末状のカチオン性増粘剤を得た。
【0065】
「香料組成物の製造」
表1に記載した処方にしたがい、香料組成物(テスト品1〜10)を製造した。製造は、イオン交換水、エタノールに他の成分を加え、撹拌・溶解して行った。 なお、香料組成物に配合したシトラス系香料とフルーティー系香料の処方をそれぞれ表2、3に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
粘度の測定は30℃におけるビスメトロン粘度計による。具体的には、デジタルビスメトロン粘度計VDA2(芝浦システム株式会社製)を用いて、測定容器に入れた試験サンプルを30℃の恒温水槽に1時間浸した後に、ローターNo.2、回転数12rpmの条件のもとに測定した値である。
【0068】
「アルコール臭の官能評価」
テスト品1〜10を皮膚に塗布し、塗布直後のアルコール臭について官能評価を行った結果、テスト品4〜9は、アルコール臭が低減しており良好な結果を得ることができた。
【0069】
また、テスト品4〜8は、適度な粘度があるため皮膚に塗布する場合に垂れ落ちることがなく、塗布する際の使用性に優れるものであった。また、テスト品4〜8は、スパチュラ(図7)を使用することにより、手を汚すことなく好みの部位に確実に塗布することができた。
【0070】
なお、テスト10は、エタノールの配合量が少ないため香料成分が可溶化せず、均一な香料組成物を得ることができなかった。
【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【0073】
「パネラーによるアルコール臭の低減効果試験」
本発明の香料組成物のアルコール臭を低減する効果を確認するためのパネラー試験を行った。
【0074】
<試験条件>
本発明の実施品であるテスト品5および6(実施例2および3)と比較品であるテスト品1および2(比較例1および2)について、10〜30代の女性8名の各パネラーの左右の手首部分にテスト品を塗布し、アンケート調査を行った(テスト品5と6、テスト品1と2は香料による賦香が異なる)。なお、テスト1日目は、テスト品5とテスト品1を左右の手首に塗布して調査を行い、テスト2日目は、テスト品6とテスト品2の調査を行った。
【0075】
アンケート調査は、「非常に感じる」を2点、「やや感じる」を1点、「どちらでもない」を0点、「あまり感じない」を−1点、「まったく感じない」を−2点として、8名のパネラーによる合計点を各香料の評価の基準とした。
【0076】
各テスト品について塗布した直後のアルコール臭を評価した結果を図1および図2に示す。図1はシトラス系香料を配合して賦香したテスト品5(実施例2)とテスト品1(比較例1)の結果を示すものであり、図2はフルーティー系香料を配合して賦香したテスト品6(実施例3)とテスト品2(比較例2)の結果を示すものであるが、いずれの図においても本発明の実施品であるテスト品5および6は、テスト品1および2に対してアルコール臭が低減することを確認することができた。
【0077】
「パネラーによる香りの持続性試験」
香りの持続性に関する試験として、経時での香りの強さの変化とフレッシュ感の変化を評価した。香りの強さとは、香り対するヒトが感じる量的感覚を意味するものであり、香りのフレッシュ感とは、塗布直後の香りに対してヒトが感じる質的感覚(イメージ)が変化しないことを意味する。なお、パネラー試験は上記と同様の方法で、女性8名を対象にアンケート調査を行った。
【0078】
各テスト品について香りの強さを評価した結果を図3および図4に示す。図3はシトラス系香料を配合して賦香したテスト品5(実施例2)とテスト品1(比較例1)の結果を示すものであり、図4はフルーティー系香料を配合して賦香したテスト品6(実施例3)とテスト品2(比較例2)の結果を示すものであるが、いずれの図においても本発明の実施品であるテスト品5および6は、テスト品1および2に対して経時による香りの強さの低下が抑えられていることを確認することができた。
【0079】
各テスト品について香りのフレッシュ感を評価した結果を図5および図6に示す。図5はシトラス系香料を配合して賦香したテスト品5(実施例2)とテスト品1(比較例1)の結果を示すものであり、図6はフルーティー系香料を配合して賦香したテスト品6(実施例3)とテスト品2(比較例2)の結果を示すものであるが、いずれの図においても本発明の実施品であるテスト品5および6は、テスト品1および2に対して経時による香りのフレッシュ感の低下が抑えられていることを確認することができた。
【0080】
「スパチュラの材質選定試験」
図7に示す容器においては、スパチュラの先端を容器底部分に近づけるため、スパチュラの材質は、香料組成物による膨潤が少ないこと、また、スパチュラは内キャップと一体成型されるため、容器に圧着して気密性を維持する内キャップの機能を奏するようにある程度変形し得る比較的柔らかい素材である必要がある。そこで、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)について浸漬試験を行った。
【0081】
試験は、各種プラスチックの切片(縦2cm×横2cm、厚さ2mm)を香料組成物中に浸漬し、各温度条件(室温、37℃、50℃)における切片の質量変化を測定した。
【0082】
【表4】

【0083】
表4に示すように、各種プラスチック切片の質量変化では、室温の3年後の推定増加率が直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)では67.49%、低密度ポリエチレン(LDPE)では52.51%であるのに対し、ポリプロピレン(PP)は5.71%と極めて小さく良好な結果を示した。この結果から、本発明の香料組成物を塗布するスパチュラの材質は、ポリプロピレンが好ましい。
【符号の説明】
【0084】
1 スパチュラ
2 容器
3 内キャップ
4 外キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シトラス系香料またはフルーティー系香料と、(B)低級アルコール60〜80質量%と、(C)水と、(D)下記に示す(a)〜(d)成分を含有する増粘剤用モノマー混合物を重合反応させて得られるカチオン性増粘剤0.05〜0.2質量%と、(E)セルロース系増粘剤0.2〜1.0質量%を含有し、30℃における粘度が200〜1000mPa・sであることを特徴とする香料組成物。
(a)一般式(I):
【化1】

(式中、Rは水素原子またはメチル基、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基またはt−ブチル基、Aは酸素原子または−NH−基、Bは直鎖状または側鎖を有する炭素数1〜4のアルキレン基を示す。)で表されるアミン含有(メタ)アクリル系モノマー 15.0〜85.0質量%、
(b)一般式(II):
【化2】

(式中、Rは前記と同じ意味、Rは一般式:
【化3】

(式中、pは3または4を示す。)で表される基または式:
【化4】

で表される基を示す。)で表されるビニルモノマー 0〜80.0質量%、
(c)一般式(III):
【化5】

(式中、RおよびAは前記と同じ意味、Rは直鎖状または側鎖を有する炭素数1〜17のアルキレン基または一般式(IV):
【化6】

(式中、nは1〜4の整数、qは1〜25の整数を示す。)で表される基、Rは水素原子またはメチル基を示す。)で表される(メタ)アクリロイル基含有モノマー 1.0〜60.0質量%、
(d)架橋性ビニルモノマー 0.1〜20.0質量%
【請求項2】
(E)セルロース系増粘剤がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびメチルセルロースから選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする請求項1記載の香料組成物。
【請求項3】
(B)低級アルコールがエタノールであることを特徴とする請求項1または2記載の香料組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の香料組成物をスパチュラを使用して塗布することを特徴とするフレグランス製品。
【請求項5】
スパチュラの材質がポリプロピレンであることを特徴とする請求項4記載のフレグランス製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−46703(P2012−46703A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192657(P2010−192657)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】