説明

香粧品用起泡抑制剤

【課題】界面活性剤を含有する水性組成物の起泡性を抑制させることができる起泡抑制剤を提供する。
【解決手段】ベンジルアセテート、リナロール、シス−3−ヘキセノール、フェニルエチルアルコール(Rose P)、シネオール、シス−3−ヘキセニルアセテートからなる群より選択される成分を含有することを特徴とする起泡抑制剤。好ましくは、界面活性剤量に対し0.0001〜50質量%配合することを特徴とする起泡抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤を含有する水性組成物の起泡性を抑制させることができる起泡抑制剤に関し、更にベンジルアセテート、リナロール、シス−3−ヘキセノール、フェニルエチルアルコール(Rose P)、シネオール、シス−3−ヘキセニルアセテートからなる群より選択される成分を含有することを特徴とする起泡抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚及び毛髪、食器などのガラス類、住居用の各種洗浄剤は洗浄時に泡による容積の増大、流下性低下、視認の容易性、感触の柔らかさなどの性質が有効に利用されている。また、一般的な香粧品の製剤化においても、整髪料、髭剃り処理剤などに見られるように、使用時の感触や利便性を向上させるために、泡が使用されている。一方で、使用中に泡を形成するが、その泡を素早く減少させることが望まれる場合もある。
【0003】
例えば、洗浄操作中、洗剤組成物を撹拌している時に生成する泡の量は洗剤組成物の洗浄効果に悪影響を及ぼすほど非常に過剰であることがある。この改善を図った例(特許文献1)では、洗浄組成物中に特定のジカルボン酸とシリコーン消泡剤を含有する起泡抑制剤が提案されている。また、洗剤工業分野では洗浄剤のコンパクト化の傾向にあり、これらの製品は多量の界面活性剤を含有している高起泡性製品である場合が多く、洗浄後の濯ぎの過程で、特に長時間残る多量の泡が過剰の界面活性剤を残していると消費者に感じさせたり、濯ぎ工程で多量の水を必要とする等の問題がある。この改善を図った例(特許文献2)では、シリコーン起泡抑制剤と脂肪酸起泡抑制剤を含有する起泡抑制剤が提案されている。これらは、洗浄剤組成物の起泡を抑制するものである。しかし、洗浄剤以外にも、使用中あるいは偶然にも泡が形成されてしまったが、その泡を素早く減少させることが望まれる場合もある。例えば、化粧水や液体芳香剤等の水溶性の製品では、有効成分や薬効成分を製品に均一に溶解、分散させるために、一般に界面活性剤を用いているので、製品を誤って落としたり、振ったりした際に泡を生じ、消費者に不快な印象を与える場合等である。このような問題を解決すべく、洗浄剤以外の様々な形態の製品に用いることができる起泡抑制剤が望まれていた。
【0004】
一般に使用されている起泡抑制剤として、シリコーン起泡抑制剤やエタノール等が挙げられるが、シリコーン起泡抑制剤は水へ溶解しにくいので水溶性の製品に使用する際には、別の新たな界面活性剤の添加が必要となることや、コストの増大を招く可能性がある。また、エタノールは起泡抑制効果を得るためには多量に配合する必要があり、製品自身の特性に影響を与える恐れがある。
【0005】
一方、ベンジルアセテート、リナロール、シス−3−ヘキセノール、フェニルエチルアルコール(Rose P)、シネオール、シス−3−ヘキセニルアセテートは、一般に香料として使用されている化合物である。これら香料化合物は、香粧品原料のマスキング剤として、また芳香を付与することにより、使用時の心地良さの付加や商品の差別化のために添加されている。しかし、洗浄剤組成物を始めとする香粧品に、起泡抑制剤として用いるという概念はない。さらには、起泡性を抑制する目的で使用すること、および起泡性抑制を達成するための使用方法などは全く検討されておらず、香料組成物として製造したときに成分の組合せや比率によっては、かえって起泡性や泡持ちに、望まれていたものと逆の影響を及ぼすこともあった。
【特許文献1】特開2000−87080号公報
【特許文献2】特表2004−522817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
香料は、多種多様であり、様々な構造を持つため、求められている香りを調香できたとしても、香料の種類によっては、香粧品の基剤自体が持つ本来の泡立ちや泡持ちを向上させてしまう場合があった。そこで、香粧品基剤自体の泡立ちや泡持ちを向上させることなく、特に泡の持続性を抑制させる起泡抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、界面活性剤を含有する水性組成物の起泡抑制剤として有効な香料組成物の探索を開発テーマとし、鋭意研究を行った結果、ベンジルアセテート、リナロール、シス−3−ヘキセノール、フェニルエチルアルコール(Rose P)、シネオール、シス−3−ヘキセニルアセテートからなる群より選択される成分を含有することを特徴とする起泡抑制剤が、泡の持続性を抑制する効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。以下、本発明について詳述する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のベンジルアセテート、リナロール、シス−3−ヘキセノール、フェニルエチルアルコール(Rose P)、シネオール、シス−3−ヘキセニルアセテートからなる群より選択される成分を含有することを特徴とする起泡抑制剤は、界面活性剤を含有する水性組成物の起泡性、及び/又は泡の持続性を抑制することができる。さらには、大量生産の方法が確立されており、入手が容易であり、また不快な臭気を有さないため広範囲に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における起泡抑制剤とは、主界面活性剤により生じる泡の泡立ち、及び/又は泡の持続性を抑制するものであり、特に泡の持続性を抑制するものである。
【0010】
本発明の起泡抑制剤は、ベンジルアセテート、リナロール、シス−3−ヘキセノール、フェニルエチルアルコール(Rose P)、シネオール、シス−3−ヘキセニルアセテートから選ばれる少なくとも1種を含有していればよく、また2種以上を併用してもよい。
【0011】
本発明の起泡抑制剤として用いられるベンジルアセテート、リナロール、シス−3−ヘキセノール、フェニルエチルアルコール(Rose P)、シネオール、シス−3−ヘキセニルアセテートは、公知の方法で合成することができ、また一般に市販されているため、容易に入手することができる。さらには、これら化合物は、植物精油などに含有されていることが知られており、それら精油の分画物などを使用することもできる。
【0012】
本発明の起泡抑制剤は、界面活性剤を含有してなる組成物に、界面活性剤による起泡、及び/又は泡の持続を抑制する目的で用いられる。本発明における界面活性剤とは、同一分子内に親水性を示す部分(親水基)と親油性を示す部分(親油基)を併せ持ち、界面にある配向を持って吸着する性質を持つものであって、起泡性を有するものをいい、2種以上を混合してもよい。具体的には、アニオン界面活性剤(カルボン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、N−アシルアラニン塩)、カチオン界面活性剤(テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩)、両性界面活性剤(カルボン酸型両性界面活性剤(アミノ型、ベタイン型)、硫酸エステル型両性界面活性剤、スルホン酸型両性界面活性剤、リン酸エステル型両性界面活性剤)、非イオン界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのエーテル型非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコールカルボン酸エステルなどのエステル型非イオン界面活性剤、エーテルエステル型非イオン界面活性剤、ブロックポリマー型非イオン界面活性剤、含窒素型非イオン界面活性剤)、その他の界面活性剤(天然型界面活性剤、タンパク質加水分解物の誘導体、高分子界面活性剤、チタン・ケイ素を含む界面活性剤、フッ素炭素系界面活性剤)などが挙げられる。
【0013】
本発明の起泡抑制剤は、界面活性剤量に対し0.0001〜50質量%配合することが好ましい。起泡抑制剤の量が0.0001質量%未満の場合は、通常充分な効果が得られない。また、50質量%以上では効果は特に変わらないため、本発明の起泡抑制剤を界面活性剤に対して50質量%を越える量を配合する必要はない。
【0014】
本発明の起泡抑制剤として用いられるベンジルアセテート、リナロール、シス−3−ヘキセノール、フェニルエチルアルコール(Rose P)、シネオール、シス−3−ヘキセニルアセテートの配合量は、香粧品に対して、0.0001〜10質量%、より好ましくは、0.0001〜3質量%である。香粧品に対して10質量%より多く配合すると、香粧品が相分離を起こしてしまって外観の悪化を招いたり、あるいは香りが強すぎて香粧品の使用時に不快感を与えてしまう場合がある。一方、香粧品に対して0.0001質量%未満の場合には、起泡抑制剤としての効果を充分に得られない。既に香粧品に香料を配合している場合には、その香調を妨げることがないように適宜配合量を調整することが好ましい。
【0015】
一般に使用されている起泡抑制剤、例えばジメチルシリコーン等のシリコーン起泡抑制剤、オクチルアルコール、シクロヘキサノール等の高級アルコール、エタノール、エチレングリコール等と適宜併用することができる。
【0016】
本発明の起泡抑制剤を含む香粧品は、上記の必須成分の他に本発明の目的を達成する範囲で他の成分を適宜配合することができる。たとえば、各種油脂類、鉱物油、ロウ類、脂肪酸類、アルコール類、多価アルコール類、エステル類、ガム質・糖類・水溶性高分子類、各種ビタミン類、各種アミノ酸類、香料、着色剤、酸化防止剤、防腐剤、その他の薬剤などが挙げられる。
【0017】
本発明の起泡抑制剤、またはそれを含有する起泡抑制剤組成物は、たとえば、香粧品の形態および製造方法に応じて、油剤、乳液、粉末、顆粒など、任意の形態とすることができる。これらの形態の調整法は、公知の方法を適用することができる。
【0018】
本発明の起泡抑制剤は、泡の形成、及び/又は泡の持続性の抑制、特に泡の持続性の抑制を必要とする香粧品全般に使用することができる。具体的には、たとえば、カプセル、丸剤、錠剤、粉末、顆粒、その他固形製品、エマルジョン、その他液体製品、アンプル、ゲル、シート、スプレー剤など、利用上の適当な形態の香粧品に配合することができる。
【0019】
本発明の香粧品としては、たとえば、化粧水、乳液、パックなどの基礎化粧料、マッサージ用剤、クレンジング用剤、フレグランス類、整髪料、ヘアトニック剤、育毛・養毛剤などの頭髪化粧品などの化粧品類、リンス、ヘアートリートメント、パーマネント液、入浴剤などのトイレタリー製品、衣類用洗剤、食器用洗剤、トイレ用洗浄剤、風呂釜洗浄剤など各種住居用洗剤、カビとり剤、芳香・消臭剤などのハウスホールド製品などが挙げられ、特に、衣類用、食器用等の洗浄剤として好ましく利用される。
【実施例】
【0020】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、単に%と記載するものは質量%を表す。
【0021】
(起泡性、泡の持続性の評価)
本発明の起泡抑制剤を含んだ場合の界面活性剤水性組成物の起泡性、及び泡の持続性を確認するため、以下の試験を行った。
【0022】
0.3%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液に本発明の起泡抑制剤を0.05%添加し、試料とした。100mlメスシリンダーの上部にガラス製ロート(直径3mm)をセットし、試料50mlをロートを通して100mlメスシリンダーに落とし入れ、入れた直後の泡の高さ(H1)、及び30分後の泡の高さ(H2)を測定した。起泡性は、入れた直後の泡の高さ(H1)で評価し、泡の持続性は次式により計算した。
泡の持続性(%)=[H2]/[H1]×100
【0023】
(比較例)
香粧品分野において、起泡抑制剤として使用されるエタノール、ジメチルシリコーン(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、商品名:SH200C−10cs)を用いて同様に起泡性、及び泡の持続性の評価を行った。
【0024】
【表1】

【0025】
表1の通り、ベンジルアセテート、リナロール、シス−3−ヘキセノール、フェニルエチルアルコール(Rose P)、シネオール、シス−3−ヘキセニルアセテートを添加したSDS水溶液は、これらを添加していないSDS水溶液と比較して、起泡性は同程度であるが、泡の持続性は低下している。また、泡の持続性に関しては、エタノールよりも低下し、ジメチルシリコーンと同程度であり、従来香粧品分野で使用されている起泡抑制剤と同様、泡の持続性を抑制させることから、起泡抑制剤として使用できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、泡持ちを抑制させることができ、泡を形成するが、その形成された泡の持続性を低下させ、泡状の状態を抑制させたい製品一般に応用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンジルアセテート、リナロール、シス−3−ヘキセノール、フェニルエチルアルコール、シネオール、シス−3−ヘキセニルアセテートからなる群より選択される化合物の、少なくとも1つを有効成分として含有することを特徴とする起泡抑制剤。
【請求項2】
界面活性剤量に対し0.0001〜50質量%配合することを特徴とする請求項1の起泡抑制剤。
【請求項3】
請求項1記載の起泡抑制剤を含有することを特徴とする香粧品。

【公開番号】特開2006−116426(P2006−116426A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306894(P2004−306894)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000201733)曽田香料株式会社 (56)
【Fターム(参考)】