説明

香粧品用香料組成物

【課題】より天然のバラの香気に近い、瑞々しさと芳醇な香りを兼ね備えた香粧品用香料組成物を提供する。
【解決手段】2,4,5−トリメチルオキサゾールおよび/または2−メチルチアゾールを添加してなる香粧品用香料組成物。好ましくは、2,4,5−トリメチルオキサゾールを0.001ppm〜1質量%、および/または、2−メチルチアゾールを0.001ppm〜1質量%添加してなることを特徴とする香粧品用香料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は香粧品用の香料組成物、特にバラ様の優れた香りを有する香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
バラの香りは「花の中の花」と讃えられるほどに優れた香りであり、数千年もの昔から様々な形で使用されてきた。そして、その香り成分についてはゲラニオール、シトロネロール、ネロール、ローズオキサイド始め、これまでに数百もの香気成分が知られている。
【0003】
なお、2,4,5−トリメチルオキサゾールは、ほうじ茶に含有されていることが知られている(非特許文献1)。また、コーヒーには、2,4,5−トリメチルオキサゾールおよび2−メチルチアゾールが含有されていることが知られている(非特許文献2および3)。また、これら化合物は食品用香料成分として、主に食肉様の香料組成物に使用されることが知られているが、これら化合物自体の香気特性から、香粧品用の香料としての有用性は知られていなかった。
【非特許文献1】「茶業技術研究」第65号、59ページ,1983年
【非特許文献2】「ジャーナル オブ フードサイエンス」第39号、1974年、P1210(J.Food Sci. 39(1974)1210,Vitzthum et al.)
【非特許文献3】「ツァイトシュリフト フューア レーベンスミッテル ウンターズフング ウント フォルシュング」 第156号、1974年、P300(Z.Lebensm.Unters.Forsch.156(1974)300,Vitzthum et al.)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来バラの花香として知られていた成分を組み合わせても、バラの持つ瑞々しく、芳醇な香りは再現できず、同定されていない香り成分の存在が示唆されていた。特に、バラ精油の香りの軽い部分の再現が困難であり、それを実現する方法が求められていた。
【0005】
本発明は前記従来技術の課題を鑑みなされたものであり、バラ精油中の未同定で解明されていなかった成分を添加することを特徴とする、香粧品用の香料組成物、特にバラ様香料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明者らは、バラ精油を精密蒸留、分画処理を駆使し、官能評価を繰り返すことにより鋭意検討した結果、2,4,5−トリメチルオキサゾールと2−メチルチアゾールがバラの香りの重要香気成分であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の香粧品用香料組成物は、2,4,5−トリメチルオキサゾールと2−メチルチアゾールを添加することを特徴とする。
【0008】
さらに本発明の好ましい態様としては、前記の香粧品用香料組成物において、2,4,5−トリメチルオキサゾールの含有量が0.001ppm〜1質量%であること、および2−メチルチアゾールの含有量が0.001ppm〜1質量%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の香料組成物は、ローズダマセナタイプのバラ様調合香料、セントフォリアタイプのバラ様調合香料など各種のバラ様調合香料に配合することにより、瑞々しさと芳醇な香りをさらにひき出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の香料組成物は、2,4,5−トリメチルオキサゾールと2−メチルチアゾールを少なくとも一つ以上含有することで、優れたバラ様の香りを醸し出すことができる。
【0011】
本発明の2,4,5−トリメチルオキサゾールと2−メチルチアゾールは、公知の化合物であり、公知の方法で製造することができる。またこれら化合物は市販されている化合物であり、極めて容易に入手することができる。
【0012】
配合量としては、2,4,5−トリメチルオキサゾールの有効量が0.001ppm〜1質量%であること、2−メチルチアゾールの有効量が0.001ppm〜1質量%であることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の香料組成物は、ローズダマセナタイプのバラ様調合香料、セントフォリアタイプのバラ様調合香料など各種のバラ様調合香料に配合することにより、瑞々しさと芳醇な香りをさらにひき出すことができるばかりではなく、ジャスミン様調合香料、スズラン様調合香料、ライラック様調合香料、ユリ様調合香料はじめその他のフローラル調の調合香料、アップルやストロベリー、ピーチなどの調合香料に配合することにより、元の調合香料の瑞々しさと芳醇さを一層かもし出す効果をもっている。
【0014】
本発明の香粧品用香料組成物は、2,4,5−トリメチルオキサゾール、および2−メチルチアゾールを通常の香料処方中に加えて香気を調整するだけでよく、特に通常の香料調合工程と異なる操作を必要としない。
【0015】
なお、本発明にかかる香料組成物には香りを損なわない程度に、ジプロピレングリコール、ジエチルフタレート、プロピレングリコール、トリエチルシトレート、ベンジールベンゾエート、トリアセチンなどの溶剤、また必要に応じ可溶化剤、安定化剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、着色剤など、公知の香料調整物が配合可能である。
【0016】
また、本発明にかかる香料組成物としては、香水、オーデコロン、ローション、ミルク、クリーム、ファンデーションなどの化粧品、エアゾール、室内芳香剤、石鹸、ボディーソープなどの身体洗浄剤、シャンプー、リンス、トリートメント、染毛剤などの毛髪用化粧品などの香粧品に応用可能である。
【0017】
前記香粧品に対する本発明の添加量は、特に限定されないが、各香粧品類の通常の香料添加量と同等でよい。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の好適な実施例を説明する。なお、本発明はこれにより限定されるものではない。また配合量は質量(g)で示す。
【0019】
(実施例1)
以下の処方に従いバラ様の香料組成物を調製した。
───────────────────────────────
ゲラニオール 350
シトロネロール 250
フェニルエチルアルコール 135
リナロール 70
ロジノール 50
ゲラニルアセテート 30
シトロネリルアセテート 25
オイゲノール 25
β−ダマスコンの1%ジプロピレングリコール溶液 18
α−ヨノン 15
ベンジルアセテート 12
ベンジルアルコール 10
フェニルアセトアルデヒド 10
ローズオイルの10%ジプロピレングリコール溶液 8
ゲラニアール 8
ネラール 7
フェニルエチルアセテート 7
β−カリオフィレン 5
メチルフェニルアセテート 3
シトロネラール 2
────────────────────────────────
合計量 1000
【0020】
上記組成物995gに2,4,5−トリメチルオキサゾールを5g添加したものと、ジプロピレングリコールを5g添加したものとの香気の比較を専門パネラー10名の比較により行った。その結果、該当物質を加えた調合香料組成物は天然のバラの瑞々しさと芳醇な香りを強調するものとなった。
【0021】
上記組成物995gに2−メチルチアゾールを5g添加したものと、ジプロピレングリコールを5g添加したものとの香気の比較を専門パネラー10名の比較により行った。その結果、該当物質を加えた調合香料組成物は天然のバラの瑞々しさと芳醇な香りを強調するものとなった。
【0022】
(実施例2)
以下の処方に従いジャスミン様の香料組成物を調製した。
───────────────────────────────
ベンジルアセテート 300
ヒドロキシシトロネラール 250
リナロール 100
アミルシンナミックアルデヒド 80
フェニルエチルアルコール 70
ベンジルアルコール 60
ゲラニルアセテート 40
リナリルアセテート 25
イランイラン油 20
シンナミックアルコール 15
ベンジルサリシレート 15
シスジャスモンの10%ジプロピレングリコール溶液 8
インドールの10%ジプロピレングリコール溶液 7
ターピネオール 5
オイゲノール 5
───────────────────────────────
合計量 1000
【0023】
上記組成物995gに2,4,5−トリメチルオキサゾールを5g添加したものと、ジプロピレングリコールを5g添加したものとの香気の比較を専門パネラー10名の比較により行った。その結果、該当物質を加えた調合香料組成物は天然のジャスミン様の瑞々しさと芳醇な香りを強調するものとなった。
【0024】
(実施例3)
以下の処方に従いピーチ様の香料組成物を調製した。
────────────────────────────────
γ−ウンデカラクトン 180
γ−デカラクトン 150
酢酸エチル 130
リナロール 120
酪酸エチル 100
γ−ヘキサラクトン 80
プロピオン酸エチル 70
バニリン 50
ヘキサノール 40
吉草酸イソアミル 25
フェニルエチルアセテート 20
ヘキサノール 10
α−ダマスコンの1%ジプロピレングリコール溶液 8
α−ヨノンの10%ジプロピレングリコール溶液 7
トランス−2−ヘキセノール 5
オイゲノール 5
────────────────────────────────
合計量 1000
【0025】
上記組成物995gに2−メチルチアゾールを5g添加したものと、ジプロピレングリコールを5g添加したものとの香気の比較を専門パネラー10名の比較により行った。その結果、該当物質を加えた調合香料組成物は天然のピーチ様の瑞々しさと芳醇な香りを強調するものとなった。
【0026】
(実施例4)
実施例1〜3のそれぞれの調合香料を5%の濃度で95%エチルアルコールに溶解し、0℃と40℃で1ヵ月経時のものを比較し、香り安定性を調べた。その結果、2,4,5−トリメチルオキサゾールも2−メチルチアゾールもともに良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の香粧品用香料組成物は、香水、化粧品、身体洗浄剤、毛髪用化粧料、口腔用組成物、室内芳香剤などの香粧品全般に使用することができ、嗜好性を向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,4,5−トリメチルオキサゾールおよび/または2−メチルチアゾールを添加してなる香粧品用香料組成物。
【請求項2】
2,4,5−トリメチルオキサゾールおよび/または2−メチルチアゾールを添加してなる花香様またはフルーツ様の香調である請求項1に記載の香粧品用香料組成物。
【請求項3】
2,4,5−トリメチルオキサゾールおよび/または2−メチルチアゾールを添加してなるバラ様の香調である請求項1に記載の香粧品用香料組成物。
【請求項4】
2,4,5−トリメチルオキサゾールの添加量が0.001ppm〜1質量%であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の香粧品用香料組成物。
【請求項5】
2−メチルチアゾールの添加量が0.001ppm〜1質量%であることを特徴とする、請求項1乃至3いずれかに記載の香粧品用香料組成物。
【請求項6】
2,4,5−トリメチルオキサゾールを0.001ppm〜1質量%、および2−メチルチアゾールを0.001ppm〜1質量%添加してなることを特徴とする、請求項1乃至3いずれかに記載の香粧品用香料組成物。

【公開番号】特開2006−219413(P2006−219413A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33849(P2005−33849)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000201733)曽田香料株式会社 (56)
【出願人】(504180206)株式会社カネボウ化粧品 (125)