説明

香辛料抽出物を配合した口腔用組成物

【課題】ミント感の増強、持続作用を有する、香味の持続性が改良された口腔用組成物の提供。
【解決手段】少なくともオランダセンニチ、唐辛子、サンショウ、シナモン、ブラックペッパー、ミョウガ、シソ、ガーリック、マスタード、オールスパイス、オニオン、カルダモン、ターメリック、およびナツメグからなる群から選択される香辛料抽出物を含有する口腔用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香辛料抽出物を配合した口腔用組成物としての食品、特にチューインガムにおけるミント感の増強、持続に関し、チューインガムの香味の持続性を高めた製品を提供する。すなわち、本発明は、食品、特にチューインガムなどの口中滞留時間の長い嗜好物を賞味した際に、香気、香味についての初発性が高く、しかもこれが長く持続するようなものを得ようとするものであり、これにより有益性を高めるものである。本発明はチューインガム以外のほかの製品へも応用可能な、香味持続に関する配合技術であり、食品としてのキャンディのみならず歯磨剤、歯用ゲル、口内洗浄剤、口内スプレー、口腔用ムース、義歯ケア製品、トローチ剤、チュアブル錠、及び歯に直接付着させるストリップの形態の口腔用組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
チューインガムは、食品分野において味や香り(香味)の発現の速さと持続性が要求される商品の一つであるが、その実現は難しく、噛み始めは強い味や香りを発現するものの噛んでいるうちに速やかに消失してしまうのが一般である。従って、噛むと速やかに香味が発現し、しかも噛んでいる間中できるだけ長く香味が持続するチューインガムが従来から検討されている。その一つとして、特許文献1には微生物の菌体内に香料を封入したものを風味剤として用いてガムを調製する方法が提案されており、これによって少ない香料で強く、持続性のある風味を示すチューインガムが得られることが記載されている。しかしながら、香味の持続性については未だ十分ではなく、さらなる改良が必要である。
さらに、植物抽出物に注目した香味増強剤を開示する文献として特許文献2がある。特許文献2は、スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油からなる飲食品の香味増強剤を飲食品に添加することにより、飲食品の好ましい香味を増強することができる発明に関する。特許文献2の香味増強剤はごく少量の添加で効果を奏するので、香味増強剤の味や刺激が飲食品に影響することがなく、飲食品全般に広く使用することができる。しかしながら、特許文献2は、飲食品の香味を増強させているが、香味の持続性に関しては全く検討していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−192085号公報
【特許文献2】特開2006−296356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常の口腔用組成物においてはミント感、すなわち香味を長時間持続させることは困難であり、ミントの味感、爽やかさをいかに持続させるかは大きな技術的課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討した結果、少なくとも一種類の香辛料抽出物を口腔用組成物に配合させることにより、ミントの味感、爽やかさを長時間持続させることができるということを見いだし、本発明を完成させた。すなわち本発明は、香辛料抽出物を含有する口腔用組成物であり、詳しくは、前記香辛料抽出物が、少なくともオランダセンニチ、唐辛子、サンショウ、シナモン、ブラックペッパー、ミョウガ、シソ、ガーリック、マスタード、オールスパイス、オニオン、カルダモン、ターメリック、およびナツメグからなる群から選択されることを特徴とする前記口腔用組成物であり、更に詳しくは、前記香辛料抽出物が0.01%〜2.0%の割合で配合されることを特徴とする前記口腔用組成物であり、また更に、ミント香料が0.05%〜2.0%、メントールが0.1%〜5%、クーリングエンハンサーが0.05%〜3.0%の割合で配合されることを特徴とする前記口腔用組成物であり、また、前記香辛料抽出物を含有する口腔用組成物を含有することを特徴とする飲食物であり、また、歯磨剤、歯用ゲル、口内洗浄剤、口内スプレー、ムース、義歯ケア製品、トローチ剤、チュアブル錠、チューインガム、及び歯に直接付着させるストリップから選択される形態であることを特徴とする前記香辛料抽出物を含有する口腔用組成物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の香辛料抽出物含有口腔用組成物は、顕著な香味持続作用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
チューインガム或いはこれに類する口中滞留時間の長い食品における香気、香料の持続性については、以前からその重要性と必要性が問題とされていたため、持続性を高める手段としては、前記したような手段が過去に種々試みられ、これによる効果が検討されてきた。チューインガムは口中で咀嚼し、その風味、甘味、食感を味わう菓子であるが、噛み始めてしばらくすると甘味の殆どが溶出してしまい、官能的に甘く感じられなくなるだけでなく、全体的な風味も感知できなくなる欠点がある。チューインガムにおける香味の消失は比較的早いという欠点を補うべく、従来より香味を持続させる方法が検討されてきたが、著しい香味持続性は未だ得られていない。
【0008】
本発明は、香味の発現性と持続性に優れたチューインガムを提供することである。すなわち、本発明の香辛料抽出物を配合した口腔用組成物は、ミント自体の香気香味を阻害することなく増強し、清涼感の発現性、拡散性、持続性を向上し、かつ、製品にとって好ましくない異味異臭を感じさせることが無く、優れた口腔用組成物を提供する。本発明の口腔用組成物は強い清涼感を与えることもできるし、また、通常のミント使用量と比較して少ない量で同等の清涼感を与えることができ、結果としてミントの香味の持続性の改善効果を示すことができる。
【0009】
本発明は香気、香味についての持続性を維持したまま、その初発性を充分に発揮させようとして、チューインガムその他の食品に対し添加する香料製剤につき鋭意研究した結果、ペパーミントなどのミント類を含有する口腔用組成物中に香辛料抽出物を0.01〜2.0%程度配合することにより、ミント感を持続させることができることを見出した。香辛料抽出物の配合量が0.01%よりも少なくなると、ミント感の持続効果が無くなってしまい、香辛料抽出物の配合量が2.0%よりも多くなると、香辛料抽出物の味が目立ち過ぎてしまい、口腔用組成物の香味の質が不快なものとなってしまう。さらにメントール及び/又はクーリングエンハンサーを口腔用組成物中に含有させることで、より一層ミント感を増強、持続させることができることを見出した。さらに、香辛料抽出物の例としては、サンショウ、オランダセンニチ、ブラックペッパー、唐辛子、シナモン等が挙げられ、これらの中から一種または二種以上を適宜組み合わせて使用できることを見出した。さらに、口腔用組成物中には、ミント香料は0.05%〜2.0%、メントールは0.1%〜5%、クーリングエンハンサーは0.05%〜3.0%含有させることができることを見出した。本発明の口腔用組成物に使用されるミント香料は、天然のペパーミントやスペアミント、ハッカを収穫した後に水蒸気蒸留を行い、油分を分離したものである。更に必要に応じて、追加の水蒸気蒸留や減圧蒸留などを行い、雑味やえぐみを取り除くこともできる。
【0010】
また、本発明の口腔用組成物に使用されるメントールは、天然由来のもの、化学合成されたもののどちらを用いても良い。
【0011】
本発明の口腔用組成物に使用されるクーリングエンハンサーは、ミント香料やメントールが配合された口腔用組成物が有している清涼感を増強させる目的で配合される。このクーリングエンハンサーの例としては、L−メンチルラクテート(L−Menthyl lactate)、L−モノメンチルサクシネート(L−Monomenthyl succinate)、3−(L−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール(3−(L−Menthoxy)propane−1,2−diol)、L−メンチル−3−ヒドロキシブチレート(L−Menthyl−3−hydroxybutyrate)、2−ヒドロキシプロピル L−メンチルカーボネート(2−Hydroxypropyl L−menthyl carbonate)、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド(N−Ethyl−p−menthane−3−carboxamide)、2−イソプロピル−N,2,3−トリメチルブタンアミド(2−Isopropyl−N,2,3−trimethylbutanamide)などが挙げられる。なお、ミント香料の配合量が0.05%よりも少なくなると、口腔用組成物のミント感が非常に弱くなってしまい、ミント香料の配合量が2.0%よりも多くなると、口腔用組成物のミント感が目立ち過ぎてしまい、香味の質が非常に荒々しく不快なものとなってしまう。また、メントールの配合量が0.1%よりも少なくなると、口腔用組成物の清涼感が非常に弱くなってしまい、メントールの配合量が5%よりも多くなると、メントールの苦味が強く感じられてしまうと共に、口腔用組成物を口中に入れるのが苦痛になるほどに清涼感が強くなり過ぎてしまう。更に、クーリングエンハンサーの配合量が0.05%よりも少なくなると、クーリングエンハンサーが口腔用組成物に及ぼす清涼感の増強効果が非常に弱くなってしまい、クーリングエンハンサーの配合量が3.0%よりも多くなると、クーリングエンハンサーの有する苦味やえぐみが非常に目立つようになってしまう。
【0012】
香辛料抽出物としては、次のものが挙げられる。単一の素材のものとしては、アサフェティダ(ヒング)、アジョワン、アニス、オールスパイス(百味胡椒、三香子)、オニオン(玉葱)、オレガノ(花薄荷)、カホクザンショウ(華北山椒、花椒)、カルダモン(イライチ)、カレーリーフ(南洋山椒、カリ・パッタ)、キャラウェイ(姫茴香)、クミン(ジーラ、キュマン)、グリーンペッパー(緑胡椒)、クローブ(丁字、ローング)、コショウ(ペッパー、カリ・ミルチ、サフェダ・ミルチ)、コリアンダー(ダニヤ、香菜、パクチー、コエンドロ)、サフラン(ケサル、番紅花)、サンショウ(山椒)、シソ(紫蘇)、シナモン(肉桂、ダルチニ)、ショウガ(生姜、ジンジャー)、スターアニス(八角、大茴香)、セージ、タイム、ターメリック(鬱金、ハルディ)、タデ(蓼、water pepper)、タラゴン(エストラゴン)、ディル(イノンド)、唐辛子、一味唐辛子(チリ、レッドペッパー、ラル・ミルチ)、ナツメグ(肉荳蒄、メース、ジャイファル、ジャビトゥリ)、ニンニク(大蒜、ガーリック)、バニラ、ニラ、ネギ、パプリカ(甘唐辛子)、フェヌグリーク(メティ)、フェンネル(フェネル、茴香、ソーンフ)、ブラッククミン(カロジレ)、ホースラディッシュ(セイヨウワサビ)、ミント、ポピー・シード(けしの実、カスカス)、マージョラム(マヨラナ、スイートマージョラム、ハナハッカ)、マスタード(辛子、ライ、洋芥子)、ミョウガ(茗荷)、ラッキョウ、ラディッシュ(大根)、ローズマリー、ローリエ(月桂樹の葉、ベイリーフ、テジ・パッタ)、ワサビ(山葵)等があり、ブレンドしたものとしては、五香粉、ガラムマサラ、カレー粉、七味唐辛子、チリパウダー、花椒塩、柚子胡椒(柚子唐辛子)、かんずりなどがある。
【0013】
本発明において好ましく使用される香辛料抽出物としては、オランダセンニチ、唐辛子、サンショウ、シナモン、ブラックペッパー、ミョウガ、シソ、ガーリック、マスタード、オールスパイス、オニオン、カルダモン、ターメリック、およびナツメグなどが挙げられる。原料の香辛料から香辛料成分を取り出して香辛料抽出物とする方法としては、抽出溶媒を用いた固液抽出法や、水蒸気蒸留法、圧搾法などが挙げられる。固液抽出を行うための抽出溶媒としては、水または有機溶媒、有機溶媒水溶液を適宜使用することができる。使用できる有機溶媒としては、石油エーテル、n‐ヘキサン、トルエン、ジクロロエタン、クロロホルム、エーテル、酢酸エチル、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどが挙げられる。
【0014】
本発明においては、ペパーミントなどのミント類を含有する口腔用組成物中に上記香辛料抽出物を0.01〜2.0%程度配合させることが好ましい。
【0015】
本発明の香辛料抽出物配合口腔用組成物には更に食品添加物、例えば甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、苦味料、酸味料、乳化剤、強化剤、製造用剤及び香料などを添加して各種製剤として用いることもできる。
【0016】
本発明に使用される口腔用組成物のミント香料、メントール以外の香料については、例えば、オレンジ油、レモン油、グレープフルーツ油、ライム油、タンジェリン油、マンダリン油などの柑橘精油類、オールスパイス、アニスシード、バジル、ローレル、カルダモン、セロリー、クローブ、シンナモン、クミン、ディル、ガーリック、パセリ、メース、マスタード、オニオン、パプリカ、パセリ、ローズマリー、ペッパーのような公知のスパイス精油類またはオレオレジン類、リモネン、リナロール、ネロール、シトロネロール、ゲラニオール、シトラール、オイゲノール、シンナミックアルデハイド、アネトール、ペリラアルデハイド、バニリン、γ−ウンデカラクトン、カプロン酸アリル、L−カルボン、マルトールなどのような公知の単離、または合成香料、及び、これら柑橘精油類、スパイス精油類、合成香料を目的に沿った割合で混合したシトラスミックス、各種フルーツなどを表現させた調合香料が挙げられ、その他、ガム用油溶性基剤であるカロチン、クロロフィル、トコフェロールなどを含んでもよいが、本発明では、これらの例示物質に限定されるものではないことは勿論である。
【0017】
また本発明の口腔用組成物に使用される甘味料(糖類を含む)の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、糖アルコール類、高甘味度甘味料を挙げることができる。具体的には、アラビノース、ガラクトース、キシロース、グルコース、フコース、ソルボース、フルクトース、ラムノース、リボース、異性化液糖、N−アセチルグルコサミン等の単糖類;イソトレハロース、スクロース、トレハルロース、トレハロース、ネオトレハロース、パラチノース、マルトース、メリビオース、ラクチュロース、ラクトース等の二糖類;α−サイクロデキストリン、β−サイクロデキストリン、イソマルトオリゴ糖(イソマルトース、イソマルトトリオース、パノース等)、オリゴ−N−アセチルグルコサミン、ガラクトシルスクロース、ガラクトシルラクトース、ガラクトピラノシル (β1−3) ガラクトピラノシル (β1−4) グルコピラノース、ガラクトピラノシル (β1−3) グルコピラノース、ガラクトピラノシル (β1−6) ガラクトピラノシル (β1−4) グルコピラノース、ガラクトピラノシル (β1−6) グルコピラノース、キシロオリゴ糖(キシロトリオース、キシロビオース等)、ゲンチオオリゴ糖(ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース等)、スタキオース、テアンデオリゴ、ニゲロオリゴ糖(ニゲロース等)、パラチノースオリゴ糖、パラチノースシロップ、フラクトオリゴ糖(ケストース、ニストース等)、フラクトフラノシルニストース、ポリデキストロース、マルトシル−β−サイクロデキストリン、マルトオリゴ糖(マルトトリオース、テトラオース、ペンタオース、ヘキサオース、ヘプタオース等)、ラフィノース、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)、大豆オリゴ糖、転化糖、水飴等のオリゴ糖類;イソマルチトール、エリスリトール、キシリトール、グリセロール、ソルビトール、パラチニット、マルチトール、マルトテトライトール、マルトトリイトール、マンニトール、ラクチトール、還元イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、還元麦芽糖水飴、還元水飴等の糖アルコール;α−グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、アリテーム、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、グリチルリチン酸三アンモニウム、グリチルリチン酸三カリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、クルクリン、サッカリン、サッカリンナトリウム、シクラメート、スクラロース、ステビア抽出物、ステビア末、ズルチン、タウマチン(ソーマチン)、テンリョウチャ抽出物、ナイゼリアベリー抽出物、ネオテーム、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、フラクトシルトランスフェラーゼ処理ステビア、ブラジルカンゾウ抽出物、ミラクルフルーツ抽出物、ラカンカ抽出物、酵素処理カンゾウ、酵素分解カンゾウ等の高甘味度甘味料;その他蜂蜜、果汁、果汁濃縮物等を例示することができる。これらの甘味料は1種単独で使用されても2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0018】
また、本発明の口腔用組成物に使用される着色料(色素)には、天然色素として、紫サツマイモ色素、赤キャベツ色素、エルダーベリー色素、ブドウ果汁色素、ブドウ果皮色素、ムラサキトウモロコシ色素、アカダイコン色素、シソ色素、赤米色素、カウベリー色素、グースベリー色素、クランベリー色素、サーモンベリー色素、スィムブルーベリー色素、ストロベリー色素、ダークスィートチェリー色素、チェリー色素、ハイビスカス色素、ハクルベリー色素、ブラックカーラント色素、ブラックベリー色素、ブルーベリー色素、プラム色素、ホワートルベリー色素、ボイセンベリー色素、マルベリー色素、ムラサキヤマイモ色素、ラズベリー色素、レッドカーラント色素、及びローガンベリー色素等のアントシアニン系色素;コチニール色素、シコン色素、アカネ色素、及びラック色素等のキノン系色素;カカオ色素、クーロー色素、コウリャン色素、シタン色素、タマネギ色素、タマリンド色素、カキ色素、カロブ色素、カンゾウ色素、スオウ色素、ピーナッツ色素、ペカンナッツ色素、ベニバナ赤色素及びベニバナ黄色素等のフラボノイド系色素;ベニコウジ色素、ベニコウジ赤色素等のアザフィロン色素;及びその他の色素として、ベニコウジ黄色素、カラメル、ウコン色素、クサギ色素、クチナシ青色素、クチナシ黄色素、クチナシ赤色素、クロロフィリン、クロロフィル、スピルリナ青色素等が、また合成系のタール系色素として食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色40号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用青色1号、食用青色2号、及び食用緑色3号等が、天然色素誘導体として、ノルビキシンナトリウム、ノルビキシンカリウム、銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム及び鉄クロロフィリンナトリウム等が、合成天然色素としてβ−カロテン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、リボフラビン、リボフラビン酪酸エステル及びリボフラビン5’−リン酸エステルナトリウム等が含まれる。このうち、好ましくはβ−カロテン、カロチノイド色素、パプリカ色素、アナト−色素、アカネ色素、オレンジ色素、クチナシ色素、クロロフィル、シコン色素、エリスロシン、タートラジン、タマネギ色素、トマト色素、マリーゴールド色素、ルテイン等を例示することができる。これらの色素は1種単独で使用することも2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0019】
本発明の香辛料抽出物配合口腔用組成物を使用する飲食物としては、パン、乳製品、ハム、ソーセージ等の畜肉製品類、カマボコ、チクワ等の魚肉製品、惣菜類、プリンミックス、ホットケーキミックス、スープ、ジャム、チューインガム、キャンディ、錠菓、グミゼリー、チョコレート、ビスケット、スナック、せんベい、あられ、まんじゅう、羊羹、ゼリー等の菓子、アイスクリーム、シャーベット、氷菓等の冷菓、ジュース、炭酸飲料、牛乳等の飲料、珍味等の各種がある。中でも嗜好品として微妙な風味が要求される菓子、飲料等は、本発明の香辛料抽出物配合口腔用組成物を使用すると効果的である。特に、たとえばチューインガムに本発明の香辛料抽出物配合口腔用組成物を使用すると、そのチューインガムの咀嚼中には機能性素材に起因する苦味渋味等の好ましくない香味を感じることなく、しかも、チューインガムの一般的な咀嚼時間である3分程度の間に機能性素材の90%以上が口中に溶出することにより、唾液の嚥下により体内に十分吸収される。すなわち、当該機能性素材の持つ健康維持、増進、疾病予防等の機能をチューインガムに十分発現させることができる。
【0020】
本発明の香辛料抽出物配合口腔用組成物は、歯磨剤、歯用ゲル、口内洗浄剤、口内スプレー、口腔用ムース、義歯ケア製品、トローチ剤、チュアブル錠、及び歯に直接付着させるストリップ等にも適用できる。
【実施例】
【0021】
以下、本願発明を具体的実施例により詳細に説明するが、これらにより本願発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
(香辛料抽出物の調製)
香辛料抽出物である、オランダセンニチ、唐辛子、サンショウ、シナモン、ブラックペッパーの各抽出物は、以下のものを使用した。オランダセンニチ抽出物はエタノールによる固液抽出を行ったものであり、唐辛子抽出物はn−ヘキサンなどによる固液抽出ののち、減圧蒸留にて溶媒を取り除いたものである。サンショウ抽出物はジエチルエーテルによる固液抽出を行ったものであり、シナモン抽出物は水蒸気蒸留により抽出を行ったもの、ブラックペッパー抽出物はn−ヘキサンなどによる固液抽出ののち、減圧蒸留にて溶媒を取り除いたものである。
【0023】
(コントロールガムの作製)
コントロール品として、以下の配合を有するミントガムを常法により作製した。
【0024】
【表1】

【0025】
(実施例2)
(香辛料抽出物単独含有ガムの作製)
上記のコントロール品としてのミントガムの基本配合に、香辛料抽出物5種類(オランダセンニチ抽出物、唐辛子抽出物、サンショウ抽出物、シナモン抽出物、ブラックペッパー抽出物)を1種類ずつ、それぞれ0.005重量%、0.04重量%、0.20重量%配合して、香辛料抽出物含有ミントガムを作製した。
【0026】
(実施例3)
(香味持続性の検討)
充分に訓練された専門パネラー4名(パネラーA、B、C、D)にて、香味持続性に関する香辛料抽出物含有ガムとコントロール品との比較、並びに知覚される香味についての評価を行った。
【0027】
その結果、コントロール品は、メントールとクーリングエンハンサーがやや多量に配合されており、噛み始めから20〜25分程度清涼感やミントの味感、爽やかさが持続した。
【0028】
香辛料抽出物含有ガムに関する香味持続性については、以下の表2〜表6に示すような結果が得られた。なお表6は、コントロール品と比べて、香辛料抽出物含有ミントガムそれぞれの香味持続時間がどの程度長くなったか、について、パネラー4名の平均をとったものを示している。
【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
【表4】

【0032】
【表5】

【0033】
【表6】

【0034】
表2〜6の結果から、以下の結論が得られた。
オランダセンニチ抽出物に関しては、0.04重量%配合すると、チリチリ・ピリピリした香味が目立ち、清涼感が強くなり、持続性も増した。0.20重量%配合すると、更に清涼感が強くなり、持続性も更に増した。
唐辛子抽出物に関しては、0.04重量%配合すると、鼻抜けの良い清涼感が知覚されるが、香味質がやや重くなった。0.20重量%配合すると、唐辛子の香味が目立ち舌がピリピリするものの、清涼感は長く持続した。
サンショウ抽出物に関しては、0.04重量%配合すると、サンショウのピリピリした刺激と清涼感の相性が良く、清涼感の持続性も大きく増した。0.20重量%配合すると、サンショウのピリピリした刺激が更に強くなり、清涼感の持続性も更に増した。
シナモン抽出物に関しては、0.04重量%配合すると、シナモンの香味が目立つものの、清涼感の持続性が多少増した。0.20重量%配合すると、シナモンの香味が非常に目立つようになるものの、香味の持続時間は更に増した。
ブラックペッパー抽出物に関しては、0.04重量%配合すると、ブラックペッパーのピリピリした香味で清涼感の強さ・持続性が増した。0.20重量%配合すると、更にブラックペッパーの刺激が増し、清涼感の強さ・持続性も更に増した。なお、いずれの抽出物を使用した場合も、配合量が0.005重量%であった場合は、香味の持続時間に変化は見られなかった。
【0035】
(実施例4)
(香辛料抽出物併用含有ガムの作製)
香辛料抽出物として、サンショウ抽出物とオランダセンニチ抽出物との重量比で3:1の併用混合物を配合させたミントガムを以下の表7、表8の配合で作製した。
【0036】
【表7】

【0037】
【表8】

【0038】
充分に訓練された専門パネラーにて、香辛料抽出物含有ガムの香味持続性、並びに知覚される香味についての評価を行った。
表7の配合のミントガムにおいて、上記の香辛料抽出物の組み合わせ(サンショウとオランダセンニチ)を使用した場合には、噛み始めから50〜70分程度、香味が持続した。なお、表7の配合のミントガムにおいて、上記の組み合わせ香辛料抽出物を、当量(0.1重量%)の単独の香辛料抽出物と置換した場合(他のガム組成は同じ)、各々香味持続時間は以下のようになった。
ブラックペッパー抽出物(と置換): 30〜40分
唐辛子抽出物: 25〜35分
サンショウ抽出物: 35〜45分
オランダセンニチ抽出物: 35〜45分
【0039】
このように、ガム中、香辛料抽出物を0.01〜2.0重量%程度含有させた場合に、大きな香味持続効果が見込めることが判明した。
さらに、香辛料抽出物の単独使用の場合の香味持続時間は、25〜45分程度であるのに対して、香辛料抽出物の2成分組合せ組成物の場合は、香味持続時間は、50〜70分程度であることが判明した。
【0040】
(実施例5)
上記実施例2〜4で使用した香辛料抽出物以外の香辛料抽出物である、ミョウガ、シソ、ガーリック、マスタード、オールスパイス、オニオン、カルダモン、ターメリック、ナツメグの各抽出物を使用した場合にも、同様な顕著な香味持続効果を確認した。
【0041】
次に、本発明の香辛料抽出物を含有する歯磨剤、歯用ゲル、口内洗浄剤、口内スプレー、口腔用ムース、義歯ケア製品、トローチ剤、チュアブル錠、及び歯に直接付着させるストリップを常法にて製造した。以下にそれらの処方を示した。なお、これらによって本発明品の範囲を制限するものではない。
【0042】
(実施例6)
下記処方に従って、歯磨剤を製造した。
炭酸カルシウム 50.0重量%
グリセリン 19.0
ミョウガ抽出物 2.0
カルボキシメチルセルロース 2.0
ラウリル硫酸ナトリウム 2.0
ミント香料 0.5
メントール 0.5
サッカリン 0.1
クロルヘキシジン 0.01
水 残
100.0
【0043】
(実施例7)
下記処方に従って、歯用ゲルを製造した。
グリセリン 40.0重量%
ミント香料 0.5
シソ抽出物 0.2
カルボキシメチルセルロース 0.2
水 残
100.0
【0044】
(実施例8)
下記処方に従って、口内洗浄剤を製造した。
エタノール 2.0重量%
ミント香料 1.0
サンショウ抽出物 0.10
ガーリック抽出物 0.05
サッカリン 0.05
塩化クロルヘキシジン 0.01
水 残
100.0
【0045】
(実施例9)
下記処方に従って、口内スプレーを製造した。
エタノール 10.0重量%
グリセリン 5.0
マスタード抽出物 0.1
ミント香料 0.05
着色料 0.001
水 残
100.0
【0046】
(実施例10)
下記処方に従って、口腔用ムースを製造した。
グリセリン 10.0重量%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 2.0
ミリスチン酸ジエタノールアミド 1.0
ポリビニルアルコール 1.0
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5
ミント香料 0.3
メントール 0.3
オールスパイス抽出物 0.2
唐辛子抽出物 0.2
クーリングエンハンサー 0.1
水 残
100.0
【0047】
(実施例11)
下記処方に従って、義歯ケア製品を製造した。
プロピレングリコール 70.0重量%
メタクリル酸コポリマーL 2.5
ミント香料 1.5
オニオン抽出物 0.5
サッカリン 0.3
水 残
100.0
【0048】
(実施例12)
下記処方に従って、トローチ剤を製造した。
ブドウ糖 73.8重量%
乳糖 18.0
アラビアガム 6.0
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.8
ミント香料 0.6
メントール 0.5
オランダセンニチ抽出物 0.1
カルダモン抽出物 0.1
クーリングエンハンサー 0.1
100.0
【0049】
(実施例13)
下記処方に従って、チュアブル錠を製造した。
マルチトール 60.0重量%
キシリトール 30.0
ショ糖脂肪酸エステル 6.0
メントール 2.8
ミント香料 1.0
ブラックペッパー抽出物 0.1
ターメリック抽出物 0.1
100.0
【0050】
(実施例14)
下記処方に従って、歯に直接付着させるストリップを製造した。
ポリエチレン 50.0重量%
グリセリン 10.0
カルボキシビニルポリマー 2.0
ミント香料 0.5
ピロリン酸ナトリウム 0.4
スズ酸ナトリウム 0.2
サッカリン 0.1
ナツメグ抽出物 0.1
水 残
100.0
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の香辛料抽出物含有口腔用組成物は、香味を顕著に持続させる作用を有していることから、食品のみならず種々の製品に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
香辛料抽出物を含有する口腔用組成物。
【請求項2】
前記香辛料抽出物が、少なくともオランダセンニチ、唐辛子、サンショウ、シナモン、ブラックペッパー、ミョウガ、シソ、ガーリック、マスタード、オールスパイス、オニオン、カルダモン、ターメリック、およびナツメグからなる群から選択される請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
前記香辛料抽出物が0.01%〜2.0%の割合で配合される請求項1または2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
さらに、ミント香料が0.05%〜2.0%、メントールが0.1%〜5%、クーリングエンハンサーが0.05%〜3.0%の割合で配合される請求項1乃至3に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の香辛料抽出物を含有する口腔用組成物を含有することを特徴とする飲食物。
【請求項6】
前記口腔用組成物が、歯磨剤、歯用ゲル、口内洗浄剤、口内スプレー、ムース、義歯ケア製品、トローチ剤、チュアブル錠、チューインガム、及び歯に直接付着させるストリップから選択される形態である、請求項1乃至4に記載の口腔用組成物。

【公開番号】特開2013−34460(P2013−34460A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175633(P2011−175633)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(307013857)株式会社ロッテ (101)
【Fターム(参考)】