説明

駅務機器監視装置

【課題】 軽微なデータエラー(1ビットエラー)が発生した状態を記憶し、将来の重度のデータエラー(2ビットエラー)発生を予測し、システムダウンを未然に防止できるようにする。
【解決手段】 データに所定の軽微なエラーが発生したときにそのエラーを訂正する訂正機能を備えたメモリを有し、そのメモリに記憶されているデータを基に所定の演算処理を行って所定の処理を行う駅務機器を監視する駅務機器監視装置において、前記メモリのデータに所定の軽微なエラーが発生したときに、そのエラーの発生に係るアドレス、データ内容及びエラー発生日時等に係る所定のエラー発生データを記憶する記憶手段と、記憶されている所定のエラー発生データを出力する出力手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動改札機や自動券売機等の駅務機器を監視する駅務機器監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の駅務機器は、CPUを中心に形成されている制御器により駆動制御されるように構成されている。すなわち、この制御器のCPUは、メモリに記憶されているシステムプログラムデータ及びワーキングデータを基に改札処理や出札処理用の演算処理を行うように構成されている。例えば、駅務機器が自動改札機の場合、その自動改札機に組込まれている制御器のCPUは、メモリに記憶されているシステムプログラムデータ、運賃データ、乗車券から読取られた読取データ等に基づいて入出場(入場又は出場を意味している。)のための所定の演算処理を行い、その演算処理の結果、入出場を許可できるときはドアを開いて(自動改札機がノーマルオープン型のときはそのまま)入出場を許可し、その演算処理の結果、入出場を許可できないときはドアを閉じるように構成されている(特許文献1参照)。
【0003】
上記自動改札機等の駅務機器に組込まれている制御器のメモリは、所定の軽微なエラーが発生しても、例えば、1ビット(bit)のエラーが発生しても組込まれている訂正回路により修復できるECC(Error Checking and Correction )メモリが用いられ、改札処理や出札処理が継続できるように構成され、可能な限りシステムダウンとならないように工夫されている。
【特許文献1】特開2003−233845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の自動改札機等の駅務機器の制御器に組込まれるメモリは、ECCメモリにより可能な限りシステムダウンとならないように工夫されているが、ECCメモリの訂正範囲を越えるエラーが発生したとき、例えば、2ビット以上のエラーが発生したときは、正常な改札処理や出札処理ができないので、保守係員による復旧作業が終了するまでシステムダウンとなる欠点があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、駅務機器の定期点検時等において、将来のメモリ異常によるシステムダウンを予測してシステムダウンを未然に回避できるようにした駅務機器監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る駅務機器監視装置は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、データに所定の軽微なエラーが発生したときにそのエラーを訂正する訂正機能を備えたメモリを有し、そのメモリに記憶されているデータを基に所定の演算処理を行って所定の処理を行う駅務機器を監視する駅務機器監視装置において、前記メモリのデータに所定の軽微なエラーが発生したときに、そのエラーの発生に係るアドレス、データ内容及びエラー発生日時等に係る所定のエラー発生データを記憶する記憶手段と、記憶されている所定のエラー発生データを出力する出力手段と、を有することを特徴としている。
本発明の請求項2に記載の駅務機器監視装置は、出力手段は、記憶されている所定のエラー発生データが所定回数に達したときに出力するものであることを特徴としている。
本発明の請求項3に記載の駅務機器監視装置は、出力手段は、所定のエラー発生データが所定の頻度以上で記憶されるようになったときに出力するものであることを特徴としている。
本発明の請求項4に記載の駅務機器監視装置は、出力手段は、駅務機器の表示画面からなることを特徴としている。
本発明の請求項5に記載の駅務機器監視装置は、出力手段は、監視盤又は駅務機器制御装置等の駅務機器の上位装置の表示画面からなることを特徴としている。
本発明の請求項6に記載の駅務機器監視装置は、駅務機器は、改札機からなることを特徴としている。
本発明の請求項7に記載の駅務機器監視装置は、駅務機器は、出札機からなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1に記載の駅務機器監視装置は、メモリのデータに所定の軽微なエラーが発生したときに、そのエラーの発生に係るアドレス、データ内容及びエラー発生日時等に係る所定のエラー発生データを記憶する記憶手段と、記憶されている所定のエラー発生データを出力する出力手段とを有するので、過去の軽微なエラー発生状況の履歴から将来のシステムダウンの予測が可能となり、システムがダウンする前にメモリチップの交換等の対策を事前にとることが可能となる。したがって、メモリ故障によりシステムダウンを未然に防止することが可能となる。
本発明の請求項2に記載の駅務機器監視装置は、出力手段は、記憶されている所定のエラー発生データが所定回数に達したときに出力するので、過去の軽微なエラー発生の回数から効果的に将来のシステムダウンを予測することが可能となる。
本発明の請求項3に記載の駅務機器監視装置は、出力手段は、所定のエラー発生データが所定の頻度以上で記憶されるようになったときに出力するので、過去の軽微なエラー発生頻度から効果的に将来のシステムダウンを予測することが可能となる。
本発明の請求項4に記載の駅務機器監視装置は、出力手段は、駅務機器の表示画面からなるので、過去の軽微なエラーの発生状況を駅務機器に設けられている表示画面を用いて簡単に知ることができる。
本発明の請求項5に記載の駅務機器監視装置は、出力手段は、監視盤又は駅務機器制御装置等の駅務機器の上位装置の表示画面からなるので、過去の軽微なエラーの発生状況を駅務機器の上位装置に設けられている表示画面を用いて簡単に知ることができる。
本発明の請求項6に記載の駅務機器監視装置は、駅務機器は、改札機からなるので、改札機が、将来、メモリ異常によりシステムダウンするのを効果的に防止することができる。
本発明の請求項7に記載の駅務機器監視装置は、駅務機器は、出札機からなるので、出札器が、将来、メモリ異常によりシステムダウンするのを効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するため最良の形態を図面に基づいて説明する。図1は、駅務機器を自動改札機(本発明の改札機に相当している。)G及び自動券売機(本発明の出札機に相当している。)aとしたときの駅務機器監視装置の概略構成図である。
【0009】
自動改札機Gは、周知のECCメモリを含んで構成されるメモリ1に格納されているデータを基に入出場のための所定の演算処理を行うCPU2を有している。そして、このCPU2には、I/Oユニット3を介して改札処理ユニット4及び表示ユニット5が接続されている。上記改札処理ユニット4は、乗車券又は非接触券に記録されているデータを読取るとともに、新たなデータを書込むためのカードハンドラやリーダライタを含み、また、ドアを開閉制御するドアドライバ等を含んで構成されている。また、上記表示ユニット5は、図2に示されるような表示画面5aを含んで構成されていて、自動改札機Gの入出場処理モード時には、利用者(旅客)に対して文字により所定の内容を案内し、自動改札機Gの保守点検時には、保守要員に対して所定の内容を表示できるように構成されている。
【0010】
上記I/Oユニット3に接続されている通信制御部6は、自動改札機Gをこの自動改札機Gの上位装置に当たる改札口の係員コーナーに設置されている監視盤7に通信回線L1 を介して接続するためのものである。なお、この監視盤7には、図示しないが他の自動改札機も通信回線L1 を介して接続されている。
【0011】
上記監視盤7は、周知の監視盤と同様に、CPU(図示せず)を中心に構成されていて、表示画面を介して自動改札機G及び図示しない自動改札機の稼動状態を監視できるように構成されているとともに、必要に応じて特定の自動改札機を遠隔的にリセット処理等の所定の処理ができるように構成されている。
【0012】
自動券売機aは、周知のECCメモリを含んで構成されるメモリ10に格納されているデータを基に発券のための所定の演算処理を行うCPU11を有している。そして、このCPU11には、I/Oユニット12を介して出札処理ユニット13及び表示ユニット14が接続されている。上記出札処理ユニット13は、口座釦群からなる入力部、発券される乗車券に所定の内容を印字するとともに所定の内容の磁気データを書込んで発券部及び自動券売機aに投入された金銭を検銭し、必要に応じて釣銭を排出する金銭処理部等を含んで構成されている。また、上記表示ユニット14は、自動券売機aに投入された金銭の金額等を利用者に表示するため表示画面の他に、この自動券売機aが保守点検モードに設定されたときにその保守要員に所定の内容を表示する表示画面を含んで構成されている。
【0013】
上記I/Oユニット12に接続されている通信制御部15は、自動券売機aをこの自動券売機aの上位装置に当たる駅事務室に設置されている駅務機器制御装置、いわゆる駅制20に通信回線L2 を介して接続するためのものである。
【0014】
上記駅制20は、マイクロコンピュータを中心に構成されていて、通信回線L2 を介して上記監視盤7とも接続されている。そして、この駅制20は、自動改札機Gの入出場数の集計処理及び自動改札機Gの売上(自動改札機GでSFカードが使用されたときの売上)や自動券売機aの売上等の集計処理ができるように構成されている。なお、この駅制20には、図示しない自動精算機や自動定期券発売機、あるいはカード発売機等の他の出札機も通信回線L2 を介して接続されていて、駅に設置されている機器全体の集計処理ができるように構成されている。
【0015】
以下、図3(a),(b)のフローチャートを用いて駅務機器が自動改札機Gのときの監視制御動作について説明する。
【0016】
今、列車の始発に合わせて自動改札機Gの電源が投入され、自動改札機Gが入出場処理可能な状態に設定されたとする(ステップ100肯定。以下、ステップを「S」とする。)。
【0017】
自動改札機Gが入出場処理可能な状態、すなわち、自動改札機Gが入出場処理モードに設定されている間には、乗車券(磁気券からなる乗車券又は非接触券からなる乗車券を含む)を用いた所定の入出場処理が行われる(S102)。そして、その間にメモリ1に軽微なエラー(図示の例では1ビットエラー)が発生すれば、そのアドレス、データ内容及び発生日時等の所定のエラーデータがメモリ1の所定の記憶部に記憶される(S106)。
【0018】
自動改札機Gのメモリ1に上述したような軽微なエラーが発生しても、このメモリ1はECCメモリから構成されているので、そのエラーを訂正して正常な入出場処理が行われる。このようなエラーデータの収集記憶は、自動改札機Gが稼動中継続される(S108否定)。なお、このエラーデータの記憶は、監視盤7又は駅制20のメモリに記憶しておくこともできる。また、図3(a)のフローチャートでは省略されているが、ECCメモリで訂正できない重度のエラー、例えば、2ビットエラーが発生した場合は、自動改札機Gは正常な入出場処理ができないので、稼動停止となり、自動改札機Gはシステムダウン状態に置かれ、保守要員による緊急の復旧作業が行われる。
【0019】
上述のエラーデータの収集記憶は、自動改札機Gの例であるが、他の自動改札機でも同様に行われる。また、自動券売機a及び図示しない他の出札機でも同様にエラーデータの収集記憶が行われる。
【0020】
図3(b)は、自動改札機Gの定期点検時のフローチャートである。今、自動改札機Gの定期点検時が到来すると、自動改札機Gは、係員操作部を介して保守点検モードに設定される(S200肯定、S202)。そして、その点検においてメモリ状態の点検モードに設定されると(S204肯定)、表示画面5aには、所定のソフトウェアによりメモリ1に記憶されているエラーデータに基づいた内容が表示される(S206)。すなわち、メモリ1にエラーデータが記憶されていればその内容が表示され、保守要員は、その表示内容に基づいてメモリ1の交換が必要か否かを判断し、交換が必要と判断されればメモリ交換が行われる(S208肯定、S210)。もちろん、メモリ状態の点検モード時において、メモリ1にエラーデータが記憶されていなければメモリ正常の旨が表示されるので、メモリ点検作業は終了となる(図3(b)のフローチャートでは省略)。
【0021】
メモリ1の交換を行うか否かの判定の基準は、任意に決めることが可能であるが、1回でもエラーが発生した場合にメモリ交換を行うこともできる。また、エラー回数が所定回数(例えば3回以上)に達したときにメモリ交換を行うことができ、さらに、そのエラー発生の頻度に基づいて行うことができる。いずれにしても、エラー発生を放置しておくと近い将来において重度のエラー発生が起きる可能性があり、システムダウンとなる可能性が高いことを知ることができる。つまり、重度のエラー発生で自動改札機Gのシステムダウンが起きる前には、軽微なエラー発生が起きていることが考えられるので、軽微なエラー発生から重度のエラー発生を予測してメモリ交換が行われる。
【0022】
メモリ点検以外の他の点検項目の点検も終了すれば、自動改札機Gは、点検終了となって入出場処理モードに設定される(S204否定、S205。S212肯定)。なお、上述の定期点検は、自動改札機Gの例であるが、図示しない自動改札機も同様に点検が行われ、必要に応じてメモリ交換が行われる。また、自動券売機a及び図示しない他の出札機も点検が行われ、必要に応じてメモリ交換が行われる。
【0023】
また、上述の例では、エラーデータの表示は、定期点検時に自動改札機G等の駅務機器に設けられている表示画面に表示させたが、号機を特定して監視盤7又は駅制20の表示画面に表示出力させるようにしてもよい。さらに、自動券売機a及び図示しない他の出札機、又は自動券売機a及び図示しない他の出札機にデータエラーが発生したときには、号機を特定して監視盤7又は駅制20の表示画面に表示出力させて注意を喚起できるようにしてもよい。この場合の出力は、データエラーが所定回数(例えば2回以上)に達したとき、あるいは所定の発生頻度に達したときに行うようにしてもよい。しかし、一般に、上述した軽微なデータエラーの発生は極めて希な現象であるので、発生の毎に出力して注意を喚起することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態に係る駅務機器監視装置の概略構成図である。
【図2】表示画面の表示例である。
【図3】制御動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0025】
G 自動改札機(駅務機器)
a 自動券売機(駅務機器)
5a 表示画面
7 監視盤
20 駅制

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データに所定の軽微なエラーが発生したときにそのエラーを訂正する訂正機能を備えたメモリを有し、そのメモリに記憶されているデータを基に所定の演算処理を行って所定の処理を行う駅務機器を監視する駅務機器監視装置において、
前記メモリのデータに所定の軽微なエラーが発生したときに、そのエラーの発生に係るアドレス、データ内容及びエラー発生日時等に係る所定のエラー発生データを記憶する記憶手段と、
記憶されている所定のエラー発生データを出力する出力手段と、
を有することを特徴とする駅務機器監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駅務機器監視装置において、出力手段は、記憶されている所定のエラー発生データが所定回数に達したときに出力するものであることを特徴とする駅務機器監視装置。
【請求項3】
請求項1に記載の駅務機器監視装置において、出力手段は、所定のエラー発生データが所定の頻度以上で記憶されるようになったときに出力するものであることを特徴とする駅務機器監視装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の駅務機器監視装置において、出力手段は、駅務機器の表示画面からなることを特徴とする駅務機器監視装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の駅務機器監視装置において、出力手段は、監視盤又は駅務機器制御装置等の駅務機器の上位装置の表示画面からなることを特徴とする駅務機器監視装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の駅務機器監視装置において、駅務機器は、改札機からなることを特徴とする駅務機器監視装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の駅務機器監視装置において、駅務機器は、出札機からなることを特徴とする駅務機器監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−31253(P2006−31253A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207303(P2004−207303)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)