説明

駆動リングの製造方法、可変ノズル構造及び可変容量型ターボチャージャ

【課題】駆動リングの製造に関する手間及びコストを抑制できる、駆動リングの製造方法、可変ノズル構造及び可変容量型ターボチャージャを提供する。
【解決手段】本発明は、可変ノズル構造に設けられ連結部材を介して複数の翼部材を同期して回転駆動させる駆動リング72の製造方法であって、帯状に形成された帯板部材72cに該帯板部材72cの一部を取り除くことで連結部材の一端部が嵌合する凹部72aを形成する凹部形成工程と、凹部72aが形成された帯板部材72cを湾曲させて略リング状に形成する曲げ工程と、略リング状に形成された帯板部材72cの両端部72d、72eを互いに接続する接続工程とを有するという方法を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動リングの製造方法、可変ノズル構造及び可変容量型ターボチャージャに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関から導かれる排気ガス(流体)の流動によりタービンインペラ(回転翼)を回転させ、タービンインペラの回転により圧縮機を作動させて外部から導入される空気を圧縮し、圧縮された空気を内燃機関に過給することで、内燃機関の性能を向上させるターボチャージャが用いられている。
また、タービンインペラに導入される排気ガスの流量や流速を調整する可変ノズル構造を備え、低回転域から高回転域までの広い範囲に亘って、内燃機関の性能を向上させる可変容量型のターボチャージャも使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
可変ノズル構造は、タービンインペラに導入される排気ガスの流量や流速を調整する可変ノズルと、該可変ノズルの開度を調整するノズル駆動部とを有している。
可変ノズルは、略円環状に形成された一対の円板部材と、該一対の円板部材の間に回動自在に設けられる複数のノズルベーン(翼部材)とを有している。ノズル駆動部は、連結部材を介して複数のノズルベーンと連結される駆動リングを有している。
駆動リングの回転により、複数のノズルベーンが同期して回動し、可変ノズルの開度が変化する。可変ノズルの開度が変化することで、タービンインペラに導入される排気ガスの流量や流速が調整され、結果として、低回転域から高回転域に亘り内燃機関の性能を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−125588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような課題が存在する。
駆動リングは、板状かつ円環状に形成された部材である。また、この駆動リングには、連結部材が嵌合する凹部が周方向に間隔を空けて複数設けられている。
このような複雑な形状を有する駆動リングの製造には、打ち抜き加工が用いられており、金属等の板材から内側及び外側の部分を打ち抜くことで、駆動リングが製造されていた。しかし、打ち抜かれた内側及び外側の板材は無駄になっており、駆動リング製造コストの上昇要因となっていた。また、打ち抜き用の金型を駆動リングの種類毎に準備する必要があり、この点でもコスト上昇の要因となり、また、金型管理の手間等が生じていた。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、駆動リングの製造に関する手間及びコストを抑制できる、駆動リングの製造方法、可変ノズル構造及び可変容量型ターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明における駆動リングの製造方法は、可変ノズル構造に設けられ連結部材を介して複数の翼部材を同期して回転駆動させる駆動リングの製造方法であって、帯状に形成された帯板部材に該帯板部材の一部を取り除くことで連結部材の一端部が嵌合する凹部を形成する凹部形成工程と、凹部が形成された帯板部材を湾曲させて略リング状に形成する曲げ工程と、略リング状に形成された帯板部材の両端部を互いに接続する接続工程とを有するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、凹部形成工程で帯板部材に凹部が形成され、曲げ工程で帯板部材が略リング状に形成され、接続工程で帯板部材の両端部が互いに接続される。
【0008】
また、本発明における駆動リングの製造方法は、凹部形成工程では、帯板部材の両端部に、互いに接続される接続用凸部及び接続用凹部をそれぞれ形成し、接続工程では、接続用凹部に接続用凸部を嵌合して、両端部を互いに接続するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、凹部形成工程で接続用凸部及び接続用凹部が形成され、接続工程で接続用凹部に接続用凸部が嵌合されて帯板部材の両端部が互いに接続される。
【0009】
また、本発明における駆動リングの製造方法は、可変ノズル構造に設けられ連結部材を介して複数の翼部材を同期して回転駆動させる駆動リングの製造方法であって、帯状に形成された帯板部材を湾曲させて略リング状に形成する曲げ工程と、略リング状に形成された帯板部材の両端部を互いに接続する接続工程と、略リング状に形成された帯板部材に連結部材の一端部が嵌合する凹部を形成する凹部形成工程とを有するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、曲げ工程で帯板部材が略リング状に形成され、接続工程で帯板部材の両端部が互いに接続され、凹部形成工程で略リング状の帯板部材に凹部が形成される。
【0010】
また、本発明における駆動リングの製造方法は、曲げ工程の前に、両端部に、互いに接続される接続用凸部及び接続用凹部をそれぞれ形成する工程を有し、接続工程では、接続用凹部に接続用凸部を嵌合して両端部を互いに接続するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、帯板部材の両端部に接続用凸部及び接続用凹部が形成された後に曲げ工程が行われ、接続工程で接続用凹部に接続用凸部が嵌合されて上記両端部が互いに接続される。
【0011】
また、本発明における駆動リングの製造方法は、可変ノズル構造に設けられ連結部材を介して複数の翼部材を同期して回転駆動させる駆動リングの製造方法であって、棒状又は帯板状の延在部材を湾曲させて連結部材の一端部が嵌合する凹部を形成する工程と、延在部材を湾曲させて略リング状に形成する工程と、略リング状に形成された延在部材の両端部を互いに接続する工程とを有するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、凹部形成工程で延在部材に凹部が形成され、曲げ工程で延在部材が略リング状に形成され、接続工程で延在部材の両端部が互いに接続される。
【0012】
また、本発明における可変ノズル構造は、連結部材を介して複数の翼部材と連結される駆動リングを備える可変ノズル構造であって、駆動リングは、所定の方向に延在する状態から湾曲させて略リング状に形成され且つ両端部が互いに接続された接続部を備える駆動リング本体と、駆動リング本体に形成され連結部材の一端部が嵌合する凹部とを有するという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、所定の方向に延在する部材から、略リング状に形成され凹部を有する駆動リングを成形することが可能となる。
【0013】
また、本発明における可変ノズル構造は、駆動リングが、両端部にそれぞれ形成される接続用凸部及び接続用凹部を有し、接続用凹部に接続用凸部が嵌合されて、駆動リング本体の両端部が互いに接続されているという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、駆動リング本体の両端部を、溶接等を用いることなく接続することが可能となる。
【0014】
また、本発明における可変容量型ターボチャージャは、請求項6から8のいずれか一項に記載の可変ノズル構造を有するという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、所定の方向に延在する部材から、略リング状に形成され凹部を有する駆動リングを成形することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明によれば、所定の方向に延在する棒状や帯板状の部材から、略リング状に形成され凹部を有する駆動リングを製造することができるため、従来の打ち抜き加工を用いる必要がなくなり、結果として駆動リングの製造に関する手間及びコストを抑制できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ターボチャージャ100の全体構成図である。
【図2】可変ノズル構造5の概略図である。
【図3】ノズル駆動部7の背面図である。
【図4】駆動リング72の平面図である。
【図5】駆動リング72の変形例を示す概略図である。
【図6】駆動リング72の製造方法を示す概略図である。
【図7】駆動リング72の第2の製造方法を示す概略図である。
【図8】第2駆動リング78の平面図である。
【図9】第2駆動リング78の製造方法を示す概略図である。
【図10】第2駆動リング78の第2の製造方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の駆動リングの製造方法、可変ノズル構造及び可変容量型ターボチャージャに係る実施の形態を、図1から図10を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能は大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。また、各図面における矢印Fは前方向を示している。
【0018】
〔第1実施形態〕
図1は、本実施形態に係るターボチャージャ100の全体構成図である。
ターボチャージャ100は、不図示の内燃機関から導かれる排気ガス(流体)の運動エネルギー等を利用して、外部から導入される空気を圧縮し、圧縮された空気を内燃機関に過給して、内燃機関の性能を向上させる可変容量型のターボチャージャである。ターボチャージャ100は、ロータ1と、タービンハウジング2と、軸受ハウジング3と、コンプレッサハウジング4とを有している。タービンハウジング2、軸受ハウジング3及びコンプレッサハウジング4は、前方より順次配置され一体的に設けられている。
【0019】
ロータ1は、排気ガスの流動によって回転するものであって、ロータ軸11と、タービンインペラ12と、コンプレッサインペラ13とを有している。
ロータ軸11は、前後方向で延在する回転軸であって、軸受ハウジング3に回転自在に設けられている。タービンインペラ12は、排気ガスの流動によって回転する回転翼であって、タービンハウジング2の内部に設置され、ロータ軸11の前端部に一体的に接続されている。コンプレッサインペラ13は、回転することで空気を吸引すると共に、吸引した空気を径方向外側に送り出す回転翼であって、コンプレッサハウジング4の内部に設置され、ロータ軸11の後端部に一体的に接続されている。
【0020】
タービンハウジング2は、ターボチャージャ100の外殻を構成する部材であり、かつ排気ガスの運動エネルギー等がタービンインペラ12の回転運動に変換される箇所であって、タービンスクロール流路21と、可変ノズル構造5と、タービン出口22とを有している。なお、タービンハウジング2は、複数のボルト2aを用いて軸受ハウジング3と一体的に接続されている。
タービンスクロール流路21は、内燃機関から排出された排気ガスが不図示のガス導入口を介して導入される流路であって、タービンインペラ12を囲んで略リング状に形成されている。
【0021】
可変ノズル構造5は、タービンスクロール流路21からタービンインペラ12に導入される排気ガスの流量や流速を調整するものであって、可変ノズル6と、ノズル駆動部7とを有している。
可変ノズル6は、タービンインペラ12に導入される排気ガスの流量や流速を調整するノズルであって、タービンスクロール流路21の内側に設けられ、タービンインペラ12を囲んで略リング状に形成されている。なお、可変ノズル6は、ノズル駆動部7と一体的に接続され、ノズル駆動部7によって支持されている。ノズル駆動部7は、可変ノズル6の開度を調整する駆動部であり、可変ノズル6の後側且つタービンハウジング2と軸受ハウジング3との接続部近傍に設けられている。なお、可変ノズル6及びノズル駆動部7の詳細は後述する。
【0022】
タービン出口22は、タービンハウジング2における排気ガスの吐出口であって、不図示の排ガス浄化装置に接続されている。なお、タービン出口22は、タービンインペラ12の設置箇所を介して可変ノズル構造5と連通している。
【0023】
軸受ハウジング3は、ターボチャージャ100の外殻を構成する部材であり、かつ複数のベアリング31を介してロータ軸11を回転自在に軸支するものである。
【0024】
コンプレッサハウジング4は、ターボチャージャ100の外殻を構成する部材であり、かつ外部から導入された空気が圧縮される箇所であって、コンプレッサ入口41と、ディフューザ流路42と、コンプレッサスクロール流路43とを有している。なお、コンプレッサハウジング4は、複数のボルト4aを用いて軸受ハウジング3と一体的に接続されている。
コンプレッサ入口41は、不図示のエアクリーナを介して外部から空気を導入するための導入口であって、コンプレッサハウジング4の後側に向かって開口している。
【0025】
ディフューザ流路42は、コンプレッサインペラ13によって送り出された空気が導入される流路であって、コンプレッサインペラ13を囲んで略リング状に形成されている。また、ディフューザ流路42は、コンプレッサインペラ13の設置箇所を介してコンプレッサ入口41と連通している。
コンプレッサスクロール流路43は、ディフューザ流路42と連通し、コンプレッサインペラ13を囲んで略リング状に形成されている。コンプレッサスクロール流路43には、不図示の空気吐出口が接続され、該空気吐出口は、内燃機関の吸気口に接続されている。
【0026】
次に、可変ノズル構造5における、可変ノズル6及びノズル駆動部7の詳細を、図2及び図3を参照して説明する。
図2は、可変ノズル構造5の概略図である。
図3は、ノズル駆動部7の背面図である。
【0027】
図2に示すように、可変ノズル6は、シュラウドリング61と、ハブリング62と、クリアランスピン63(以下、「ピン63」と記載する)と、ノズルベーン(翼部材)64とを有している。
シュラウドリング61及びハブリング62は、共に略円環状に形成された円板部材であって、所定の間隔を空けて前後方向で対向して設けられ、それらの間の隙間は排気ガスが流動する流路となっている。なお、シュラウドリング61は前側に設けられ、ハブリング62は後側に設けられている。
【0028】
ピン63は、シュラウドリング61とハブリング62とを、互いに対向させて所定の間隔で一体的に連結する略円柱状の部材である。ピン63は、シュラウドリング61及びハブリング62のそれぞれに形成された孔部に圧入して接続されており、周方向で間隔を空けて複数(本実施形態では3本)設けられている。また、ピン63は、可変ノズル6とノズル駆動部7とを接続するためにも用いられており、ピン63を介してハブリング62と、後述する外側ガイド71及び内側ガイド73とが互いに接続されている。
【0029】
ノズルベーン64は、その回動により可変ノズル6の開度を変化させ、可変ノズル6からタービンインペラ12に導入される排気ガスの流量及び流速を調整する翼部材である。ノズルベーン64は、その翼面が前後方向と略平行する向きで、シュラウドリング61とハブリング62との間に周方向で間隔を空けて複数設けられている。
【0030】
また、ノズルベーン64は、その翼端面から前方に向けて突出する第1軸部65と、同じく後方に向けて突出する第2軸部66とを有している。シュラウドリング61及びハブリング62には、前後方向で貫通する孔部(図示せず)がそれぞれ形成されている。そして、第1軸部65及び第2軸部66は、シュラウドリング61及びハブリング62の各孔部にそれぞれ嵌合して回転自在に軸支されている。よって、ノズルベーン64は、シュラウドリング61とハブリング62との間に、前後方向で延びる所定の軸周りで回動自在に設けられている。なお、第2軸部66は、ハブリング62から後方に向けて突出しており、後述する第1リンク部材74と一体的に接続されている。
【0031】
ノズル駆動部7は、外側ガイド71と、駆動リング72と、内側ガイド73と、第1リンク部材(連結部材)74と、第2リンク部材75と、駆動軸76と、駆動レバー77とを有している。
【0032】
外側ガイド71は、可変ノズル6を支持し且つ駆動リング72を回転自在に保持するための略リング状のガイド部材である(図3参照)。外側ガイド71の外縁側は、タービンハウジング2と軸受ハウジング3とにより挟持されて保持されている。一方、外側ガイド71の内縁側は、ピン63を介して可変ノズル6のハブリング62と一体的に接続されている。すなわち、外側ガイド71は、可変ノズル6をタービンハウジング2及び軸受ハウジング3に接続して支持している。また、外側ガイド71は、駆動リング72をその径方向外側及び前方側から支持している。
【0033】
駆動リング72は、複数のノズルベーン64を同期して回動させる略リング状の板部材であって(図3参照)、外側ガイド71の径方向内側にその中心軸周りで回転自在に設けられている。また、駆動リング72の外周面及び前方に臨む面は、外側ガイド71の内周面及び後方に臨む面にそれぞれ摺動自在に当接している。駆動リング72は、第1リンク部材74の一端部及び第2リンク部材75の一端部がそれぞれ嵌合する第1凹部(凹部)72a及び第2凹部72bを有している。なお、駆動リング72の詳細は後述する。
【0034】
内側ガイド73は、駆動リング72の径方向内側に設けられ、駆動リング72を回転自在に保持するための略リング状のガイド部材である(図3参照)。内側ガイド73は、ピン63を介して可変ノズル6のハブリング62及び外側ガイド71と一体的に接続されている。内側ガイド73は、複数の爪部73aを有しており、爪部73aは、駆動リング72の後方に臨む面に摺動自在に当接している。よって、駆動リング72は、外側リング71及び内側リング73から前後方向で挟持されて保持されている。
【0035】
第1リンク部材74は、複数のノズルベーン64と駆動リング72とをそれぞれ連結する延在部材あって、外側ガイド71の径方向に略沿って設けられている。第1リンク部材74における径方向外側の端部は、駆動リング72の第1凹部72aに摺動自在に嵌合している。一方、第1リンク部材74における径方向内側の端部は、ノズルベーン64の第2軸部66と一体的に接続されている。よって、駆動リング72が回転することで、第1リンク部材74を介して駆動リング72に接続される複数のノズルベーン64は同期して回動する。
【0036】
第2リンク部材75は、駆動リング72と駆動軸76とを連結する延在部材あって、外側ガイド71の径方向に略沿って設けられている。第2リンク部材75における径方向外側の端部は、駆動リング72の第2凹部72bに摺動自在に嵌合している。一方、第2リンク部材75における径方向内側の端部は、駆動軸76と一体的に接続されている。
【0037】
駆動軸76は、前後方向で延びる軸部材であって、軸受ハウジング3に回転自在に設けられている。駆動軸76の後端部は、駆動レバー77と一体的に接続されている。
駆動レバー77は、不図示のアクチュエータと連結されるレバー状の部材であって、アクチュエータの作動により駆動軸76を回転させるものである。よって、アクチュエータの作動により駆動軸76が回転し、駆動軸76と接続される第2リンク部材75が回動することで、駆動リング72が回転する。
【0038】
図3に示すように、第1リンク部材74は、周方向で間隔を空けて複数設けられている。なお、本実施形態ではノズルベーン64の数は11枚であるため、第1リンク部材74及び第1凹部72aの数もそれぞれ11個ずつ設けられている。
第2リンク部材75は、第1リンク部材74の間に設けられている。
【0039】
次に、駆動リング72の詳細を、図4を参照して説明する。
図4は、駆動リング72の平面図である。
駆動リング72は、上述したように略リング状の板部材であるが、所定の方向で延在する帯状の帯板部材であった駆動リング本体(帯板部材)72cを、その板面に沿う方向に湾曲させて、略リング状に形成したものである。そのため、駆動リング本体72cは、その両側の端部である両端部72d及び72eが互いに接続された接続部Xを有している。接続部Xにおける両端部72d及び72eは、溶接によって一体的に接続されている。
また、上述した第1凹部72a及び第2凹部72bは、駆動リング本体72cの内縁側に設けられている。そして、第1凹部72a及び第2凹部72bの非設置箇所においては、駆動リング本体72cの、その端面と直交する方向での幅は略同一となっている。
なお、駆動リング72の製造方法は後述する。
【0040】
また、駆動リング本体72cにおける両端部72d及び72eの形状を、図5に示すような形状としてもよい。
図5は、駆動リング72の変形例を示す概略図であって、(a)は平面図、(b)は接続部Xの拡大図である。
【0041】
駆動リング本体72cの一端部72dは接続用凸部72fを有し、他端部72eは接続用凹部72gを有している。接続用凸部72fは、一端部72dから対向する他端部72eに向かうに従い幅広となる形状となっている。接続用凹部72gは、接続用凸部72fに応じた形状、すなわち接続用凹部72gの底部から他端部72eの端面に向かうに従い幅狭となる形状となっている。
接続用凹部72gに接続用凸部72fを嵌合させると、両端部72d及び72eは周方向に関して一体的に接続されるので、溶接等の接続方法を用いることなく両端部72d及び72eを互いに接続することができる。
【0042】
次に、駆動リング72の製造の方法を、図6を参照して説明する。
図6は、駆動リング72の製造方法を示す概略図である。
【0043】
まず、図6(a)に示すように、駆動リング本体72cは、所定の方向で延在する帯状の帯板部材である。また、両端部72d及び72eの端面は、いずれも駆動リング本体72cの延在方向と略直交する平面となっている。
【0044】
次に、図6(b)に示すように、駆動リング本体72cに、第1凹部72a及び第2凹部72bを形成する(凹部形成工程)。
打ち抜き加工等により、駆動リング本体72cの一部を取り除いて、駆動リング本体72cに第1凹部72a及び第2凹部72bを形成する。この場合、全ての第1凹部72a及び第2凹部72bを一度に形成する必要はなく、凹部1つ分の打ち抜き用金型等を用いて第1凹部72a及び第2凹部72bを形成するため、大型の金型を準備する必要がない。なお、加工方法は打ち抜き加工に限られず、例えば切削加工を用いて凹部を形成してもよい。
【0045】
次に、図6(c)に示すように、駆動リング本体72cを湾曲させて、略リング状に形成する(曲げ工程)。
例えばプレス機P1、P2を用いて、第1凹部72a及び第2凹部72bが形成された駆動リング本体72cを、その板面に沿う方向に湾曲させて、略リング状に形成する。この曲げ工程が終了した状態では、両端部72d及び72eは互いに対向して設けられている。
【0046】
最後に、図6(d)に示すように、両端部72d及び72eを互いに接続する(接続工程)。
例えば溶接により、両端部72d及び72eを互いに接続する。よって、駆動リング本体72cには、両端部72d及び72eが互いに接続された接続部Xが形成される。
以上で、駆動リング72の製造が終了する。
【0047】
なお、両端部72d及び72eを溶接を用いて接続せず、図5に示した接続用凸部72f及び接続用凹部72gを用いて、両端部72d及び72eを互いに接続してもよい。
この場合には、上記凹部形成工程において打ち抜き加工等により、両端部72d及び72eに接続用凸部72f及び接続用凹部72gをそれぞれ形成する。
そして、上記接続工程において、接続用凹部72gに接続用凸部72fを嵌合させて両端部72d及び72eを互いに接続する。
以上の方法によっても、駆動リング72を製造することができる。
【0048】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、所定の方向に延在する帯板状の部材である駆動リング本体72cから、略リング状に形成され第1凹部72a及び第2凹部72bを有する駆動リング72を製造することができるため、略リング状の駆動リング72を一度に打ち抜く従来の打ち抜き加工を用いる必要がなくなり、結果として駆動リング72の製造に関する手間及びコストを抑制できるという効果がある。
【0049】
〔第2実施形態〕
本実施形態に係るターボチャージャ100、可変ノズル構造5及び駆動リング72の構成は、第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
そこで、駆動リング72の製造の方法を、図7を参照して説明する。
図7は、駆動リング72の第2の製造方法を示す概略図である。
【0050】
まず、図7(a)に示すように、駆動リング本体72cは、所定の方向で延在する帯状の帯板部材である。また、両端部72d及び72eの端面は、いずれも駆動リング本体72cの延在方向と略直交する平面となっている。
【0051】
次に、図7(b)に示すように、駆動リング本体72cを湾曲させて、略リング状に形成する(曲げ工程)。
例えばプレス機P1、P2を用いて、駆動リング本体72cをその板面に沿う方向に湾曲させて、略リング状に形成する。この曲げ工程が終了した状態では、両端部72d及び72eは互いに対向して設けられている。
【0052】
次に、図7(c)に示すように、両端部72d及び72eを互いに接続する(接続工程)。
例えば溶接により、両端部72d及び72eを互いに接続する。よって、駆動リング本体72cには、両端部72d及び72eが互いに接続された接続部Xが形成される。
【0053】
最後に、図7(d)に示すように、略リング状に形成された駆動リング本体72cに、第1凹部72a及び第2凹部72bを形成する(凹部形成工程)。
打ち抜き加工等により、駆動リング本体72cの一部を取り除いて、略リング状に形成された駆動リング本体72cに第1凹部72a及び第2凹部72bを形成する。この場合、全ての第1凹部72a及び第2凹部72bを一度に形成する必要はなく、凹部1つ分の打ち抜き用金型等を用いて第1凹部72a及び第2凹部72bを形成するため、大型の金型を準備する必要がない。なお、加工方法は打ち抜き加工に限られず、例えば切削加工を用いて凹部を形成してもよい。
以上で、駆動リング72の製造が終了する。
【0054】
なお、両端部72d及び72eを溶接を用いて接続せず、図5に示した接続用凸部72f及び接続用凹部72gを用いて、両端部72d及び72eを互いに接続してもよい。
この場合には、上記曲げ工程を行う前に、打ち抜き加工等により両端部72d及び72eに接続用凸部72f及び接続用凹部72gをそれぞれ形成しておく。
そして、上記接続工程において、接続用凹部72gに接続用凸部72fを嵌合させて両端部72d及び72eを互いに接続する。
以上の方法によっても、駆動リング72を製造することができる。
【0055】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、所定の方向に延在する帯板状の部材である駆動リング本体72cから、略リング状に形成され第1凹部72a及び第2凹部72bを有する駆動リング72を製造することができるため、略リング状の駆動リング72を一度に打ち抜く従来の打ち抜き加工を用いる必要がなくなり、結果として駆動リング72の製造に関する手間及びコストを抑制できるという効果がある。
【0056】
〔第3実施形態〕
本実施形態においては、第1及び第2の実施形態で説明した駆動リング72の代わりに、第2駆動リング(駆動リング)78を使用している。また、本実施形態に係るターボチャージャ100及び可変ノズル構造5は、第1及び第2の実施形態と同様であるため、以下、第2駆動リング78の構成及びその製造方法を説明する。
【0057】
まず、第2駆動リング78の構成を、図8を参照して説明する。
図8は、第2駆動リング78の平面図である。
第2駆動リング78は、複数のノズルベーン64を同期して回動させる略リング状の部材であって、外側ガイド71の径方向内側にその中心軸周りで回転自在に設けられている。また、第2駆動リング78は、第1リンク部材74の一端部及び第2リンク部材75の一端部がそれぞれ嵌合する第3凹部(凹部)78a及び第4凹部78bを有している。
【0058】
第2駆動リング78は、略リング状に形成された部材であるが、所定の方向で延在する棒状部材であった第2駆動リング本体(延在部材)78cを、所定の面に沿う方向に湾曲させて、略リング状に形成したものである。そのため、第2駆動リング本体78cは、その両側の端部である両端部78d及び78eが互いに接続された接続部X2を有している。接続部X2における両端部78d及び78eは、溶接によって一体的に接続されている。
また、上述した第3凹部78a及び第4凹部78bは、第2駆動リング本体78cを湾曲させて形成されている。そのため、第3凹部78a及び第4凹部78bが形成された後においても、第2駆動リング本体78cの端面と直交する方向での幅は、略同一となっている。
【0059】
続いて、第2駆動リング78の製造の方法を、図9を参照して説明する。
図9は、第2駆動リング78の製造方法を示す概略図である。
まず、図9(a)に示すように、第2駆動リング本体78cは、所定の方向で延在する棒状部材である。
【0060】
次に、図9(b)に示すように、駆動リング本体78cを湾曲させて、第3凹部78a及び第4凹部78bを形成すると共に、全体を略リング状に形成する(凹部形成工程及び曲げ工程)。
例えば雄型及び雌型からなるプレス機P3、P4を用いて、第2駆動リング本体78cを所定の面に沿う方向に湾曲させて、第3凹部78a及び第4凹部78bを形成すると共に、全体を略リング状に形成する。この工程が終了した状態では、両端部78d及び78eは互いに対向して設けられている。
【0061】
次に、図9(c)に示すように、両端部78d及び78eを互いに接続する(接続工程)。
例えば溶接により、両端部78d及び78eを互いに接続する。よって、駆動リング本体78cには、両端部78d及び78eが互いに接続された接続部X2が形成される。
以上で、第2駆動リング78の製造が終了する。
【0062】
また、第2駆動リング78を、図10に示す第2の製造方法を用いて製造してもよい。
図10は、第2駆動リング78の第2の製造方法を示す概略図である。
まず、図10(a)に示すように、第2駆動リング本体78cは、所定の方向で延在する棒状部材である。
【0063】
次に、図10(b)に示すように、第2駆動リング本体78cに、第3凹部78a及び第4凹部78bを形成する(凹部形成工程)。
プレス加工等により、第2駆動リング本体78cを所定の面に沿う方向に湾曲させて、第3凹部78a及び第4凹部78bを形成する。
【0064】
次に、図10(c)に示すように、第2駆動リング本体78cを湾曲させて、略リング状に形成する(曲げ工程)。
例えばプレス機P1、P2を用いて、第3凹部78a及び第4凹部78bが形成された第2駆動リング本体78cを、上記所定の面に沿う方向に湾曲させて、略リング状に形成する。この曲げ工程が終了した状態では、両端部78d及び78eは互いに対向して設けられている。
【0065】
最後に、図10(d)に示すように、両端部78d及び78eを互いに接続する(接続工程)。
例えば溶接により、両端部78d及び78eを互いに接続する。よって、第2駆動リング本体78cには、両端部78d及び78eが互いに接続された接続部X2が形成される。
以上で、第2の製造方法を用いた、第2駆動リング78の製造が終了する。
【0066】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、所定の方向に延在する棒状の部材である第2駆動リング本体78cから、略リング状に形成され第3凹部78a及び第4凹部78bを有する第2駆動リング78を製造することができるため、略リング状の駆動リング72を一度に打ち抜く従来の打ち抜き加工を用いる必要がなくなり、結果として第2駆動リング78の製造に関する手間及びコストを抑制できるという効果がある。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0068】
例えば、第1及び第2の実施形態では、接続用凸部72f及び接続用凹部72gは、いわゆる蟻継形状となっていたが、周方向に関して両端部72d及び72eが一体的に接続されればよいため、接続用凸部72f及び接続用凹部72gが例えば鎌継形状に形成されていてもよい。
【0069】
また、第3の実施形態では、第2駆動リング本体78cは棒状の部材であったが、これに限定されるものではなく、所定の方向で延在する帯状の帯板部材であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
5…可変ノズル構造、64…ノズルベーン(翼部材)、72…駆動リング、72a…第1凹部(凹部)、72c…駆動リング本体(帯板部材)、72d…端部、72e…端部、72f…接続用凸部、72g…接続用凹部、74…第1リンク部材(連結部材)、78…第2駆動リング(駆動リング)、78a…第3凹部(凹部)、78c…第2駆動リング本体(延在部材)、78d…端部、78e…端部、100…ターボチャージャ(可変容量型ターボチャージャ)、X…接続部、X2…接続部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変ノズル構造に設けられ、連結部材を介して複数の翼部材を同期して回転駆動させる駆動リングの製造方法であって、
帯状に形成された帯板部材に、該帯板部材の一部を取り除くことで前記連結部材の一端部が嵌合する凹部を形成する凹部形成工程と、
前記凹部が形成された前記帯板部材を湾曲させて、略リング状に形成する曲げ工程と、
略リング状に形成された前記帯板部材の両端部を互いに接続する接続工程とを有することを特徴とする駆動リングの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動リングの製造方法において、
前記凹部形成工程では、前記両端部に、互いに接続される接続用凸部及び接続用凹部をそれぞれ形成し、
前記接続工程では、前記接続用凹部に前記接続用凸部を嵌合して、前記両端部を互いに接続することを特徴とする駆動リングの製造方法。
【請求項3】
可変ノズル構造に設けられ、連結部材を介して複数の翼部材を同期して回転駆動させる駆動リングの製造方法であって、
帯状に形成された帯板部材を湾曲させて、略リング状に形成する曲げ工程と、
略リング状に形成された前記帯板部材の両端部を互いに接続する接続工程と、
略リング状に形成された前記帯板部材に、前記連結部材の一端部が嵌合する凹部を形成する凹部形成工程とを有することを特徴とする駆動リングの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の駆動リングの製造方法において、
前記曲げ工程の前に、前記両端部に、互いに接続される接続用凸部及び接続用凹部をそれぞれ形成する工程を有し、
前記接続工程では、前記接続用凹部に前記接続用凸部を嵌合して、前記両端部を互いに接続することを特徴とする駆動リングの製造方法。
【請求項5】
可変ノズル構造に設けられ、連結部材を介して複数の翼部材を同期して回転駆動させる駆動リングの製造方法であって、
棒状又は帯板状の延在部材を湾曲させて、前記連結部材の一端部が嵌合する凹部を形成する凹部形成工程と、
前記延在部材を湾曲させて、略リング状に形成する曲げ工程と、
略リング状に形成された前記延在部材の両端部を互いに接続する接続工程とを有することを特徴とする駆動リングの製造方法。
【請求項6】
連結部材を介して複数の翼部材と連結される駆動リングを備える可変ノズル構造であって、
前記駆動リングは、
所定の方向に延在する状態から湾曲させて略リング状に形成され、且つ両端部が互いに接続された接続部を備える駆動リング本体と、
前記駆動リング本体に形成され、前記連結部材の一端部が嵌合する凹部とを有することを特徴とする可変ノズル構造。
【請求項7】
請求項6に記載の可変ノズル構造において、
前記駆動リングは、前記両端部にそれぞれ形成される接続用凸部及び接続用凹部を有し、
前記接続用凹部に前記接続用凸部が嵌合されて、前記両端部が互いに接続されていることを特徴とする可変ノズル構造。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の可変ノズル構造を有することを特徴とする可変容量型ターボチャージャ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−21576(P2011−21576A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169109(P2009−169109)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】