説明

駆動伝達機構及びそれを備えた画像形成装置

【課題】ギアの倒れ、取り付け位置のバラツキを防止すると共に、組立作業性に優れた駆動伝達機構及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】駆動伝達機構30は、中間転写ベルト8の駆動ローラ11の回転軸11aに挿入される平行ピン23と、第2駆動用ギア31と、第2ストップリング25とを有している。第2駆動用ギア31には、第3傾斜部33cを有し回転軸11aに嵌め込まれる第2貫通孔33と、平行ピン2の周面と当接する第1傾斜部35a及び長手方向両端部と当接する第2傾斜部35bを有する第2溝部35と、が形成されており、第2駆動用ギア31を第2ストップリング37で固定すると、第2溝部35の第1傾斜部35aと側面部35cとで、及び第2傾斜部35bで平行ピン23を嵌合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法を用いた画像形成装置に関し、特に回転駆動部材の駆動を伝達するための駆動伝達機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いた画像形成装置、特にカラー画像形成装置における転写方式は、転写ドラム方式、直接タンデム方式、中間転写方式などが知られているが、各種メディア対応や環境安定性などの点から中間転写方式が多く用いられている。中間転写方式においては、帯電、露光、現像の各工程により各色トナー像を感光体(像担持体)上に現像した後、一次転写部にてトナー像を感光体から中間転写ベルトへ多重転写し、二次転写部にて中間転写ベルトから用紙へ転写し、定着工程で永久像とすることによりカラー画像を形成することができる。
【0003】
このような画像形成装置では、中間転写ベルトは駆動ローラ及び従動ローラ等により張架されており、駆動ローラの回転軸には駆動用ギア(歯車)が連結され、駆動用ギアは、駆動モータからの回転駆動力を伝達する駆動伝達用ギアと連結されている。そして、駆動モータからの回転駆動力が、駆動用ギアに伝達されることにより、駆動ローラが回転し、中間転写ベルトが回動するようになっている。
【0004】
しかし、駆動用ギアとしては、歯の噛合い率を大きくするために、はすば歯車が用いられる場合が多いため、駆動モータからの回転駆動力が、駆動伝達用ギアから駆動用ギアに伝達される際、駆動用ギアは軸方向(スラスト方向)に力を受け易い。その結果、駆動用ギアが回転軸に対して傾斜し(倒れ)、駆動用ギアの回転が不安定になって筋画像等の画像不具合が生じるおそれがある。
【0005】
そこで、歯車の回転を安定させる方法が提案されている。例えば、特許文献1には、駆動軸(回転軸)と結合され、駆動力伝達に用いられる樹脂製はすばギア(歯車)のフランジの少なくとも片方に面に、少なくとも1枚の補強部材を3箇所以上の結合点で結合して密着させると共に、該補強部材を上記結合点を頂点とする多角形を基本とした形状とすることにより、フランジを補強して歯車の変形を防止すると共に慣性力の増加を抑制して、歯車の回転特性の変化を防止する方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、用紙搬送機構中の排出ロールを、用紙を排紙方向に搬送するときは第1の駆動源で正転方向に駆動し、用紙を反転方向に搬送するときは第2の駆動源で逆転方向に駆動し、排出ロールから第1の駆動源までの第1の歯車列と、第2の駆動源までの第2の歯車列とを常に噛合い状態にすることにより、騒音や消費電力を低減すると共に、歯車の噛合い精度を維持し、バンディング(筋)画像の発生を抑える方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−040399号公報
【特許文献2】特開2002−154727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1では、歯車自体の変形を防止する方法は開示されているが、回転軸に対する歯車の倒れを防止する方法は、開示も示唆もされていない。また、特許文献2では、筋画像の発生を防止する方法が開示されているものの、その方法は、回転軸に対する歯車の倒れを防止する方法ではない。
【0009】
図8は、従来の駆動ローラの回転軸と第1駆動用ギアとの嵌合状態を示す斜視図であり、図9は、図8をA方向から見た平面図であり、図10は、従来の第1駆動用ギアが駆動ローラの回転軸に対して傾斜した状態示す図8のA方向から見た平面図であって、図10(a)は、その一例を示す図であり、図10(b)は、他の一例を示す図である。
【0010】
駆動ローラ11の回転軸11aは、画像形成装置本体(図示せず)に回転可能に支持されている。また、回転軸11aの軸方向一端部には、第1駆動用ギア41が嵌め込まれ、該回転軸11aと連結されている。第1駆動用ギア41は、駆動モータ27と連結された駆動伝達用ギア29と噛合い、駆動モータ27からの回転駆動力を回転軸11aに伝達するようになっている。
【0011】
回転軸11aにおける第1駆動用ギア41の軸方向外側には、Eリング等から成る第1ストップリング25が嵌め込まれており、第1ストップリング25は、第1駆動用ギア41に対して軸方向外側から当接し、第1駆動用ギア41が回転軸11aから外れることを防止している。
【0012】
また、図8及び図9に示すように、回転軸11aにおける第1駆動用ギア41側の端部には、円柱状の平行ピン23が回転軸11aを貫通し該回転軸から垂直方向に突出している。第1駆動用ギア41には、回転軸11aが貫通する第1貫通孔43と、該第1貫通孔43と連通し、平行ピン23が嵌合する断面略矩形状の第1溝部45が形成されている。かかる第1駆動用ギア41の第1貫通孔43に回転軸11aが挿入され、第1溝部45に平行ピン23が嵌合することにより、回転軸11aに第1駆動用ギア41が連結される。
【0013】
上記した様に、第1駆動用ギア41としてはすば歯車を用いる場合、駆動モータ27からの回転駆動力が、駆動伝達用ギア29から第1駆動用ギア41に伝達される際、第1駆動用ギア41は、軸方向(図9の左右方向)に力を受ける。また、平行ピン23及び第1溝部45の寸法精度により、第1溝部41において平行ピン23のガタツキが大きい場合がある。そして、かかるガタツキが第1駆動用ギア41の倒れの要因の一つと考えられる。
【0014】
例えば、平行ピン23の径方向にガタツキが大きい場合、図10(a)に示すように平行ピン23が、回転軸11aと、第1駆動用ギア41及び駆動伝達用ギア29の噛合い位置Bと、を略含む平面(図の紙面)に対して略垂直(図の紙面とは垂直)となる位置に回転したとき、駆動伝達ギア29から例えば軸方向内側(図10(a)の白抜き矢印方向)の力を受けた第1駆動用ギア41は、平行ピン23の長手方向を支軸として図の時計回りに回転し、同方向に傾斜する(倒れる)おそれがある。
【0015】
また、例えば図10(b)に示すように、平行ピン23の長手方向にガタツキが大きい場合は、平行ピン23が回転軸11aと噛み合い位置Bとを略含む平面(図10(b)の紙面)と略平行(図10(b)の上下方向)となる位置に回転したとき、上記同様に軸方向内側(図10(b)の白抜き矢印方向)の力を受けた第1駆動用ギア41は、回転軸11aとは垂直方向、且つ平行ピン23の長手方向とは垂直方向を支軸として図の時計回りに回転し、同方向に倒れるおそれがある。このような第1駆動用ギア41の倒れが発生すると、画像上に駆動ローラ11の半周ピッチで横筋等の筋画像が発生し、画像不具合が生じるおそれがある。
【0016】
かかる歯車の倒れを防止する方法として、例えば回転軸にカットワッシャを取り付け、該カットワッシャを壁として歯車の倒れを防止する方法が考えられる。しかし、かかる方法では、カットワッシャの変形や磨耗等により歯車の倒れが発生するおそれがある。また、カットワッシャの取り付け位置のバラツキにより、歯車の取り付け位置も変化し、その噛合いが不安定になるおそれもある。さらに、カットワッシャが取り付け時に落下したり紛失する等、組立作業性が低下するおそれもある。
【0017】
本発明は、上記問題点に鑑み、回転駆動部材の回転軸に連結される歯車の倒れや、取り付け位置のバラツキを防止すると共に、組立作業性に優れた駆動伝達機構及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために本発明は、回転駆動部材の回転軸を貫通し該回転軸の軸方向とは垂直方向に突出する平行ピンと、前記回転軸が貫通する孔部と、該孔部の第1の端部と連通し前記平行ピンに嵌合する溝部と、が形成された歯車と、を有し、駆動手段からの回転駆動力を、前記歯車を介して前記回転駆動部材に伝達する駆動伝達機構であって、前記溝部には、前記平行ピンと嵌合する嵌合部と、前記平行ピンを前記嵌合部に案内する傾斜部と、が形成されていることを特徴としている。
【0019】
また本発明は、上記構成の駆動伝達機構において、前記傾斜部は、前記溝部における前記歯車の回転方向上流側若しくは下流側の側面部の少なくとも一方に形成され、前記平行ピンの周面と当接可能な第1の傾斜部であることを特徴としている。
【0020】
また本発明は、上記構成の駆動伝達機構において、前記第1の傾斜部は、前記溝部における前記平行ピンを挟み且つ前記回転軸を挟んで互いに反対側に配置された側面部に形成されたことを特徴としている。
【0021】
また本発明は、上記構成の駆動伝達機構において、前記傾斜部は、前記溝部の長手方向両端の側面部に形成され、前記平行ピンの長手方向両端部と当接可能な第2の傾斜部であることを特徴としている。
【0022】
また本発明は、上記構成の駆動伝達機構において、前記孔部には、前記第1の端部から該第1の端部とは反対側の第2の端部に向かって幅が狭くなるテーパ状から成る第3の傾斜部が形成されたことを特徴としている。
【0023】
また本発明は、上記構成の駆動伝達機構において、前記歯車は、はすば歯車から成ることを特徴としている。
【0024】
また本発明は、上記構成の駆動伝達機構において、前記回転駆動部材は、中間転写ベルトを回動させるための駆動ローラであることを特徴としている。
【0025】
また本発明は、上記構成の駆動伝達機構を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の第1の構成によれば、溝部に、平行ピンと嵌合する嵌合部と、平行ピンを嵌合部に案内する傾斜部と、を形成することにより、溝部における平行ピンのガタツキを防止することができるため、歯車の回転軸に対する倒れを防止することができる。また、溝部の平行ピンへの嵌合という簡単な作業で、歯車の位置決めをすることができ、歯車を平行ピンに取り付けることもできるため、組立作業性に優れる。
【0027】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の駆動伝達機構において、傾斜部を、溝部における歯車の回転方向上流側若しくは下流側の側面部の少なくとも一方に形成され、平行ピンの周面と当接可能な第1の傾斜部とすることにより、特に、平行ピンの径方向のガタツキを防止し、軸方向とは垂直方向、且つ平行ピンの長手方向を支軸として回転するような、歯車の倒れを防止できるため、効果的である。
【0028】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第2の構成の駆動伝達機構において、第1の傾斜部を、溝部における平行ピンを挟み且つ回転軸を挟んで互いに反対側に配置された側面部に形成することにより、より確実に平行ピンのガタツキを防止できるため、効果的である。
【0029】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第1〜第3のいずれかの構成の駆動伝達機構において、傾斜部を、溝部の長手方向両端の側面部に形成され、平行ピンの長手方向両端部と当接可能な第2の傾斜部とすることにより、特に、平行ピンの長手方向のガタツキを防止し、軸方向とは垂直方向、且つ平行ピンの長手方向とは垂直方向を支軸として回転するような、歯車の倒れを防止できるため、効果的である。
【0030】
また、本発明の第5の構成によれば、上記第1〜第4のいずれかの構成の駆動伝達機構において、孔部に、第1の端部から該第1の端部とは反対側の第2の端部に向かって幅が狭くなるテーパ状から成る第3の傾斜部を形成することにより、孔部における回転軸のガタツキを防止できるため、歯車の倒れを、より効果的に防止できる。
【0031】
また、本発明の第6の構成によれば、上記第1〜第5のいずれかの構成の駆動伝達機構において、歯車を、はすば歯車から構成することにより、回転駆動力の伝達時に軸方向の力を受け、倒れ易い構成であっても歯車の倒れを防止できるため、より効果的である。
【0032】
また、本発明の第7の構成によれば、上記第1〜第6のいずれかの構成の駆動伝達機構において、回転駆動部材を、中間転写ベルトを回動させるための駆動ローラとすることにより、精度の高い安定な回転が要求される中間転写ベルトの駆動ローラであっても、その回転を安定させ、中間転写ベルトの回動を安定にすることができるため、より効果的である。
【0033】
また、本発明の第8の構成によれば、上記第1〜第7のいずれかの構成の駆動伝達機構を備えた画像形成装置とすることにより、筋画像等の画像不具合の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る駆動伝達機構を備えた画像形成装置の全体構成を示す概略図
【図2】本実施形態の駆動伝達機構周辺を図1の上方から見た平面図
【図3】本実施形態の駆動伝達機構に用いられる回転軸及び平行ピンを示す部分平面図
【図4】本実施形態の駆動伝達機構に用いられる第2駆動用ギアが回転軸及び平行ピンに嵌め込まれた状態を模式的に軸方向内側から見た平面図
【図5】図4のFF’断面図
【図6】図5のGG’断面図
【図7】図6のHH’断面図
【図8】従来の駆動ローラの回転軸と第1駆動用ギアとの嵌合状態を示す斜視図
【図9】図8をA方向から見た平面図
【図10】従来の第1駆動用ギアが駆動ローラの回転軸に対して傾斜した状態を図8のA方向から見た平面図であって、図10(a)はその一例を示す図であり、図10(b)は、他の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の中間転写ベルトを備えた画像形成装置の構成を示す概略図である。画像形成装置(カラープリンタ)100本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、Pc及びPdが、搬送方向上流側(図1では右側)から順に配設されている。これらの画像形成部Pa〜Pdは、異なる4色(マゼンタ、シアン、イエロー及びブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像及び転写の各工程によりマゼンタ、シアン、イエロー及びブラックの画像を順次形成する。
【0036】
この画像形成部Pa〜Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム1a、1b、1c及び1dが配設されており、これらの感光体ドラム1a〜1d上に形成されたトナー像が、駆動手段(図示せず)により図1において時計回りに回転しながら各画像形成部に隣接して移動する中間転写ベルト8上に順次転写(一次転写)された後、二次転写ローラ9において用紙S上に一度に転写(二次転写)され、さらに、定着部7において用紙S上に定着された後、装置本体より排出される構成となっている。感光体ドラム1a〜1dを図1において反時計回りに回転させながら、各感光体ドラム1a〜1dに対する画像形成プロセスが実行される。
【0037】
トナー像が転写される用紙Sは、装置下部の用紙カセット16内に収容されており、給紙ローラ12a及びレジストローラ対12bを介して二次転写ローラ9へと搬送される。中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、その両端部を互いに重ね合わせて接合しエンドレス形状にしたベルトや、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが用いられる。また、二次転写ローラ9の下流側には中間転写ベルト8表面に残存するトナーを除去するためのクリーニングブレード19が配置されている。
【0038】
次に、画像形成部Pa〜Pdについて説明する。回転自在に配設された感光体ドラム1a〜1dの周囲及び下方には、感光体ドラム1a〜1dを帯電させる帯電器2a、2b、2c及び2dと、各感光体ドラム1a〜1dに画像情報を露光する露光装置4と、感光体ドラム1a〜1d上にトナー像を形成する現像装置3a、3b、3c及び3dと、感光体ドラム1a〜1d上に残留した現像剤(トナー)を除去するクリーニング部5a、5b、5c及び5dが設けられている。
【0039】
ユーザにより画像形成開始が入力されると、先ず、帯電器2a〜2dによって感光体ドラム1a〜1dの表面を一様に帯電させ、次いで露光装置4によって光照射し、各感光体ドラム1a〜1d上に画像信号に応じた静電潜像を形成する。現像装置3a〜3dは、感光体ドラム1a〜1dに対向配置された現像ローラ(現像剤担持体)を備え、それぞれマゼンタ、シアン、イエロー及びブラックの各色のトナーが補給装置(図示せず)によって所定量充填されている。このトナーは、現像装置3a〜3dの現像ローラにより感光体ドラム1a〜1d上に供給され、静電的に付着することにより、露光装置4からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0040】
そして、中間転写ベルト8に所定の転写電圧で電界が付与された後、一次転写ローラ6a〜6dにより感光体ドラム1a〜1d上のマゼンタ、シアン、イエロー、及びブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、感光体ドラム1a〜1dの表面に残留したトナーがクリーニング部5a〜5dにより除去される。
【0041】
中間転写ベルト8は、従動ローラ10、駆動ローラ11及びテンションローラ20に掛け渡されている。駆動モータ27(図2参照)からの回転駆動力が駆動伝達機構30により駆動ローラ11に伝達されて該ローラが回転し、かかる回転に伴い中間転写ベルト8が時計回りに回転を開始すると、用紙Sがレジストローラ12bから所定のタイミングで中間転写ベルト8に隣接して設けられた二次転写ローラ9へ搬送され、中間転写ベルト8とのニップ部(二次転写ニップ部)において用紙S上にフルカラー画像が二次転写される。トナー像が転写された用紙Sは定着部7へと搬送される。駆動伝達機構30の詳細については後述する。
【0042】
定着部7に搬送された用紙Sは、定着ローラ対13のニップ部(定着ニップ部)を通過する際に加熱及び加圧されてトナー像が用紙Sの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された用紙Sは、複数方向に分岐した分岐部14によって搬送方向が振り分けられる。用紙Sの片面のみに画像を形成する場合は、そのまま排出ローラ対15によって排出トレイ17に排出される。
【0043】
一方、用紙Sの両面に画像を形成する場合は、定着部7を通過した用紙Sの一部を一旦排出ローラ対15から装置外部にまで突出させる。その後、用紙Sは排出ローラ対15を逆回転させることにより分岐部14で用紙搬送路18に振り分けられ、画像面を反転させた状態で二次転写ローラ9に再搬送される。そして、中間転写ベルト8上に形成された次の画像が二次転写ローラ9により用紙Sの画像が形成されていない面に転写され、定着部7に搬送されてトナー像が定着された後、排出トレイ17に排出される。
【0044】
図2は、本実施形態の駆動伝達機構周辺を図1の上方から見た平面図であり、図3は、本実施形態の駆動伝達機構に用いられる回転軸及び平行ピンを示す部分平面図である。また、図4は、本実施形態の駆動伝達機構に用いられる第2駆動用ギアが回転軸及び平行ピンに嵌め込まれた状態を模式的に軸方向内側から見た平面図であり、図5は、図4のFF’断面図であり、図6は、図4のGG’断面図であり、図7は、図4のHH’断面図である。図8〜図10と共通する部分には共通する符号を付して説明を省略する。
【0045】
図2に示すように、駆動伝達機構30は、駆動ローラ11の回転軸11aを貫通し該回転軸11aとは垂直方向に突出する円柱状の平行ピン23と、第2駆動用ギア(歯車)31と、第2ストップリング37と、を有している。中間転写ベルト8を回動させる駆動ローラ11の回転軸11aには、第2駆動用ギア31が嵌め込まれて該回転軸11aと連結しており、該第2駆動用ギア31は、駆動伝達用ギア29と噛合っている。また、第2駆動用ギア31及び駆動伝達ギア29は、樹脂製のはすば歯車から形成されている。
【0046】
第2駆動用ギア31には、回転軸11aの軸方向外側に取り付けられた第2ストップリング37が当接しており、第2駆動用ギア31の回転軸11aから軸方向外側(図2の下側)への移動を規制している。第2ストップリング37は、回転軸11aにおいて予め設定された位置に形成された固定溝39(図3参照)に固定され、後述するように、第2駆動用ギア31を、第1及び第2傾斜部35a、35bが平行ピン23を押圧可能な位置で支持することができる。
【0047】
また、図3に示すように。平行ピン23の外径はR1、平行ピン23の長手方向長さはW、回転軸11aの外径はR2、に設定されている。そして、図4に示すように、第2駆動用ギア31には、回転軸11aが挿入される第2貫通孔(孔部)33と、平行ピン23が嵌合する第2溝部(溝部)35と、が形成されている。第2溝部35は、第2貫通孔33における軸方向内側端部(第1の端部)33aと連通しており(図7参照)、図4の紙面方向に見た断面が横長の略矩形状から形成されている。
【0048】
第2溝部35における第2駆動用ギア31の回転方向(図4の反時計回り)上流側の側面部には、第1傾斜部(第1の傾斜部)35aが形成されている。すなわち、第2溝部35における回転軸11aに対して図4の右側、且つ下側の側面部は、軸方向内側(図5の右側)から外側(図5の左側)に向かって回転軸11a側(図5の上側)に傾斜している。また、回転軸11aに対して図4の左側、且つ上側の側面部は、軸方向内側(図6の左側)から外側(図6の右側)に向かって回転軸11a側(図6の下側)に傾斜している。
【0049】
図5及び図6に示すように、第2溝部35の底面部35dにおける図の上下方向の高さL1は、平行ピン23の外径R1よりも小さく形成されている。これにより、第1傾斜部35aは、平行ピン23の周面と当接することができるようになっており、平行ピン23を第2溝部35に挿入すると、平行ピン23の周面は、第1傾斜部35aと、該第1傾斜部35aと対向する側面部35cとに当接する。
【0050】
また、図4に示すように、第2溝部35の長手方向(図4の左右方向)両端の側面部35bは、軸方向内側(図7の下側)から外側(図7の上側)に向かって回転軸11a側に傾斜しており、第2傾斜部(第2の傾斜部)35bを構成している。第2溝部35の底面部35dの長手方向(図7の左右方向)長さL2は、平行ピン23の長さWよりも小さく形成されている。
【0051】
これにより、第2傾斜部35bは、平行ピン23の長手方向両端部と当接するようになっており(図7参照)、平行ピン23を第2溝部35に挿入すると、平行ピン23の長手方向両端部は、第2傾斜部35bと当接する。
【0052】
一方、回転軸11aは、装置本体に設けられたベアリング等から成る軸受(不図示)に支持され、所定の位置に位置決めされると、平行ピン23も所定の位置に位置決めされるようになっている。また、回転軸11aにおける第2ストップリング37の固定位置も予め設定されている。
【0053】
そして、第2駆動用ギア31を軸方向外側から内側に手指等で押圧すると、第2駆動用ギア31における第2溝部35は平行ピン23を軸方向内側に押圧することができ(図5、図6参照)、第1傾斜部35aは平行ピン23の周面を案内し、第2溝部35の嵌合位置(嵌合部)へと圧入する。また、第2溝部35の第2傾斜部35bは、平行ピン23の長手方向両端部を軸方向外側から内側に向けて案内することができる(図7参照)ため、後述するように、平行ピン23は、第2傾斜部35bに沿って圧入される。すなわち、第2溝部35を、平行ピン23に圧嵌めすることができる。なお、第1傾斜部33a、第2傾斜部33bの傾斜角度は、平行ピン23を圧嵌め可能であれば特に限定されない。
【0054】
また、ストップリング37は、第2溝部35を平行ピン23に嵌合したとき、第2駆動用ギア31の軸方向の移動を規制するような位置で固定されるようになっており、第2駆動用ギア31の外側から回転軸11aの固定溝39(図3参照)に第2ストップリング37を嵌め込んで固定すると、第2駆動用ギア31の軸方向の移動が規制される。また、第2ストップリング37は、例えばEリング等とすることができるが、第2駆動用ギア31の軸方向外側への移動を規制することが可能であれば、特に限定されるものではない。
【0055】
図4に示すように、回転軸11aが挿入される第2貫通孔33は、図4の紙面方向に見た断面が略円形状から成り、周面における第2溝部35と連通する位置にはそれぞれ、図7に示すように内側端部33aから内側端部33aとは反対側の外側端部(第2の端部)33bに向かって幅が狭くなるテーパ状の第3傾斜部(第3の傾斜部)33cが形成されている。また、図7に示すように、外側端部33bにおける第3傾斜部33cの間隔L3は、回転軸11aの外径R2と略同じ大きさに形成されている。
【0056】
これにより、回転軸11aに対して第2駆動用ギア31の第2貫通孔33を挿入すると、第2駆動用ギア31が倒れようとしても外側端部33bが回転軸11aの周面と当接し、かかる倒れを規制することができる。なお、第3傾斜部33cの傾斜角度や、間隔L3は、第2駆動用ギア31の倒れを防止可能であれば特に限定されない。
【0057】
次に、回転軸11a及び平行ピン23に、第2駆動用ギア31を嵌め込む動作について説明する。
【0058】
先ず、第2駆動用ギア31の第2貫通孔33を、回転軸11aの駆動モータ27側の端部に嵌め込み、駆動ローラ11の回転軸11aを、装置本体の上記軸受(不図示)に固定する。次に、第2駆動用ギア31を、軸方向内側に移動させると、第2溝部35に平行ピン23が挿入される。さらに第2駆動用ギア31を軸方向内側に移動させると、第1傾斜部35aの軸方向内側への押圧力により、平行ピン23は、第1傾斜部35aに案内されて、第2溝部35の嵌合位置(図5、図6参照)へ圧入される。
【0059】
同様に、図7に示すように、第2溝部35の第2傾斜部35bは、平行ピン23の長手方向両端部を軸方向外側から内側に押圧することができる(図7参照)ため、平行ピン23は、第2傾斜部35bに案内されて第2溝部35bの嵌合位置(図7参照)に圧入される。また、回転軸11aの固定溝39(図11参照)に第2ストップリング37を固定すると、第2ストップリング37が第2駆動用ギア31の軸方向外側への移動を規制する。
【0060】
これにより、図4に示すように、第2駆動用ギア31を平行ピン23に嵌め込むことができ、図5〜図7に示すように、平行ピン23の周面及び長手方向両端部は、第2溝部35に圧入される。従って、第2溝部35における平行ピン23のガタツキを防止できる。また、図7に示すように、回転軸11aは、第2駆動用ギア31が倒れようとしても第2貫通孔31の外側端部35と当接するようになっている。
【0061】
また、第1傾斜部35aを、平行ピン23を挟み且つ回転軸11aを挟んで対向する位置に形成したため、平行ピン23に対する第1傾斜部35aの押圧力が、図4の左側では図の下方に、右側では図の上方に作用する。これにより、第2溝部35には、平行ピン23に対して図の反時計回り方向に回転モーメントが生じ、かかる回転モーメントにより、第2駆動用ギア31は、平行ピン23に対して、よりガタツキなく固定される。
【0062】
このように、第2駆動用ギア31の第2溝部35に第1及び第2傾斜部35a、35bを形成し、第1傾斜部35aによって平行ピン23を、第1傾斜部35aと側面部35cとで、及び第2傾斜部35bで形成された嵌合位置で支持することとしたため、駆動モータ27からの回転駆動力が第2駆動用ギア31に伝達される際、第2溝部35における平行ピン23のガタツキを防止して、第2駆動用ギア31の倒れを防止することができる。
【0063】
従って、かかる第2駆動用ギア31の倒れによる筋画像等の画像不具合の発生を防止することができる。また、第2溝部35を平行ピン23に嵌合するという簡単な作業で、第2駆動用ギア31の位置決めをすることができ、さらに、かかる簡単な作業で第2駆動用ギア31を取り付けることができるため、組立作業性に優れる。
【0064】
また、本実施形態では、第2溝部35に、平行ピン23の周面と当接する第1傾斜部35aを形成したため、平行ピン23の径方向のガタツキを防止することができる。これにより、回転軸11aの軸方向とは垂直方向、且つ平行ピン23の長手方向(図9及び図10(a)の紙面と垂直方向)を支軸して回転するような、第2駆動用ギア31の倒れを防止できるため、効果的である。
【0065】
また、本実施形態では、第2溝部35に、平行ピン23の長手方向両端部と当接する第2傾斜部35bを設けたため、平行ピン23の長手方向のガタツキを防止することができる。これにより、回転軸11aの軸方向とは垂直方向、且つ平行ピン23の長手方向とは垂直方向(図10(b)の上下方向)を支軸として回転するような、第2駆動用ギア31の倒れを防止できるため、効果的である。
【0066】
なお、本実施形態では、第1傾斜部35a及び第2傾斜部35bの両方を形成したため、第2溝部35における平行ピン23のガタツキを、より確実に防止することができ、一層効果的に第2駆動用ギア31の倒れを防止することができる。
【0067】
また、本実施形態では、第1傾斜部35aを、平行ピン23を挟み且つ回転軸11aを挟んで対向する位置に形成したため、回転モーメントにより第2駆動用ギア31を、平行ピン23に対して、よりガタツキなく固定することができるため、より確実に第2駆動用ギア31の倒れを防止でき、効果的である。
【0068】
また、第2溝部35の回転方向上流側の側面部に第1傾斜部35aを形成したため、第2駆動用ギア31から平行ピン23及び回転軸11aへの回転駆動力の伝達を安定にすることができる。しかし、第2溝部35の回転方向下流側の側面部にも、上流側及び下流側の両側面部にも、第1傾斜部35aと同様の傾斜部を形成することができる。
【0069】
また、本実施形態では、第2貫通孔33に、内側端部33aから外側端部33bに向かって幅が狭くなるテーパ状から成る第3傾斜部33cを形成したため、第2貫通孔33における回転軸11aのガタツキを防止できる。従って、第2駆動用ギア31の倒れを、より効果的に防止できる。
【0070】
しかし、かかる第2貫通孔33の構成は、本発明の必須構成要素ではなく、第2貫通孔33に第3傾斜部33cを形成しない構成とすることもできる。また、第3傾斜部33cは、第2貫通孔33の周面において上記第2溝部35と連通する位置以外のいずれの位置にも形成することができ、その他例えば、貫通孔33の内側端部33aから外側端部33bに向かって孔径が小さくなるようなテーパ状とすることもできる。
【0071】
また、本実施形態では、第2駆動用ギア31を、はすば歯車としたため、回転駆動力の伝達時に軸方向の力を受け、倒れ易い構成であっても第2駆動用ギア31の倒れを防止できるため、より効果的である。しかし、第2駆動用ギア31の倒れを防止可能であれば、第2駆動用ギア31を平歯等、その他の歯車から構成することもできる。
【0072】
また、本実施形態では、ストップリング37を設けたため、第2溝部35に平行ピン23を圧入後の第2駆動用ギア31の軸方向に対する移動を規制することができるが、かかるストップリング37は、本発明の必須構成要素ではなく、第2駆動用ギア31に倒れを防止可能であれば、ストップリング37を設けない構成とすることも可能である。
【0073】
その他、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では円柱状の平行ピン23を用いたが、かかる平行ピン23の形状は特に限定されるものではなく、その他例えば、角柱状とすることもできる。
【0074】
また、上記実施形態では、中間転写ベルト8の駆動ローラ11に本発明の駆動伝達機構を適用したが、平行ピン23と第2駆動用ギア31とを用いて駆動モータ27からの回転駆動力を伝達可能であれば、例えば感光体ドラム等、その他の回転駆動部材に適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、画像形成部を複数備えたタンデム方式のカラー画像形成装置のみならず、中間転写ベルトを用いるのであればこれに限られるものではなく、モノクロ画像形成装置、或いはファクシミリ等の他の画像形成装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0076】
8 中間転写ベルト
11 駆動ローラ(回転駆動部材)
11a 回転軸
23 平行ピン
27 駆動モータ(駆動手段)
29 駆動伝達ギア
30 駆動伝達機構
31 第2駆動用ギア(歯車)
33 第2貫通孔(孔部)
33a 内側端部(第1の端部)
33b 外側端部(第2の端部)
33c 第3傾斜部(第3の傾斜部)
35 第2溝部(溝部)
35a 第1傾斜部(第1の傾斜部)
35b 第2傾斜部(第2の傾斜部)
37 第2ストップリング
39 固定溝
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動部材の回転軸を貫通し該回転軸の軸方向とは垂直方向に突出する平行ピンと、
前記回転軸が貫通する孔部と、該孔部の第1の端部と連通し前記平行ピンに嵌合する溝部と、が形成された歯車と、
を有し、駆動手段からの回転駆動力を、前記歯車を介して前記回転駆動部材に伝達する駆動伝達機構であって、
前記溝部には、前記平行ピンと嵌合する嵌合部と、前記平行ピンを前記嵌合部に案内する傾斜部と、が形成されていることを特徴とする駆動伝達機構。
【請求項2】
前記傾斜部は、前記溝部における前記歯車の回転方向上流側若しくは下流側の側面部の少なくとも一方に形成され、前記平行ピンの周面と当接可能な第1の傾斜部であることを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達機構。
【請求項3】
前記第1の傾斜部は、前記溝部における前記平行ピンを挟み且つ前記回転軸を挟んで互いに反対側に配置された側面部に形成されたことを特徴とする請求項2に記載の駆動伝達装置。
【請求項4】
前記傾斜部は、前記溝部の長手方向両端の側面部に形成され、前記平行ピンの長手方向両端部と当接可能な第2の傾斜部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の駆動伝達機構。
【請求項5】
前記孔部には、前記第1の端部から該第1の端部とは反対側の第2の端部に向かって幅が狭くなるテーパ状から成る第3の傾斜部が形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の駆動伝達機構。
【請求項6】
前記歯車は、はすば歯車から成ることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の駆動伝達装置。
【請求項7】
前記回転駆動部材は、中間転写ベルトを回動させるための駆動ローラであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の駆動伝達機構。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の駆動伝達機構を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−53242(P2011−53242A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199277(P2009−199277)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】