説明

駆動伝達装置、シート搬送装置及び画像形成装置

【課題】装置の大型化及び複雑化を抑制しつつ、駆動源から入力される一定方向の回転駆動を、駆動対象に対して正逆いずれの方向の回転駆動としても伝達することができ、さらに、駆動源から回転駆動が入力している状態で駆動対象への駆動の伝達を停止することができる駆動伝達装置、並びに、これを備えた駆動装置、及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】第一モータ101からの回転駆動を遊星ギヤ26に伝達する第一排紙ギヤ列80と、第一モータ101からの回転駆動を第一排紙ギヤ列80とは逆方向の回転駆動として遊星ギヤ26に伝達する第二排紙ギヤ列90と、を備え、遊星ギヤ26が回転駆動することで排紙ローラ13が回転する排紙駆動伝達装置500で、遊星ギヤ26の位置を、第一ギヤ列下流ギヤ25と第二ギヤ列下流ギヤ22ととの何れのギヤとも噛み合わない非駆動伝達位置で係止する係止部材32等からなる位置可変ギヤ係止手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源から駆動対象まで回転駆動を伝達するギヤ列を備える駆動伝達装置、並びにこの駆動伝達装置を備えたシート搬送装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、装置本体内の所定の搬送路内に搬送されてきたシート材に対して、それまでの搬送方向とは逆方向に搬送力を付与し、シート材の搬送方向を切り替えてスイッチバックさせるシート材搬送装置が知られている(特許文献1〜3等)。
これらのシート材搬送装置では、第一の回転方向に回転駆動することで所定の搬送路内に搬送されてきたときと同方向の搬送力を付与し、所定のタイミングで、第一の回転方向とは逆方向の第二の回転方向に回転駆動することでシート材をスイッチバックさせる正逆両方向に回転駆動可能なローラ部材を備えている。
【0003】
特許文献1には、駆動源である駆動モータの回転方向を切り替えることによって駆動対象としてのローラ部材に対して、正逆両方向の回転駆動を伝達可能な駆動伝達装置が記載されている。
特許文献2には、駆動モータからローラ部材まで回転駆動を伝達するギヤ列として、互いに逆方向の回転駆動を伝達する二つのギヤ列を備え、それぞれのギヤ列に駆動伝達の接続または切断を切り替えるクラッチ機構を備えた駆動伝達装置が記載されている。
【0004】
特許文献3には、次のような駆動伝達装置が記載されている。
すなわち、駆動源からローラ部材まで回転駆動を伝達するギヤ列からなり、ギヤ列における駆動伝達の最上流のギヤである駆動入力ギヤを備える。また、奇数個のギヤからなり、駆動入力ギヤの回転駆動を伝達する一つ目の経路を形成する第一駆動伝達ギヤ列と、偶数個のギヤからなり、第一駆動伝達ギヤ列とは独立した経路で駆動入力ギヤの回転駆動を伝達する二つ目の経路を形成する第二駆動伝達ギヤ列とを備える。さらに、第一駆動伝達ギヤ列における駆動伝達の最下流のギヤに噛み合う第一駆動伝達位置と、第二駆動伝達ギヤ列における駆動伝達の最下流のギヤに噛み合う第二駆動伝達位置との間を移動可能で、第一駆動伝達位置または第二駆動伝達位置に位置することで、ローラ部材に駆動を入力するギヤに駆動を伝達する位置可変ギヤ(特許文献3では「揺動ギヤ」)を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の駆動伝達装置では、駆動モータがローラ部材以外の他の回転体の駆動源としての機能も備えている場合、当該他の回転体に正転方向の回転駆動を入力する必要があるタイミングでは、ローラ部材に逆転方向の回転駆動を入力することや、ローラ部材の回転を停止することが出来ず、ローラ部材の回転駆動の制御の自由度が狭まるという問題が生じる。
【0006】
特許文献2の駆動伝達装置では、駆動伝達を接続するクラッチ機構を切り替えることで、駆動モータから入力される一定方向の回転駆動を、ローラ部材に対して正逆いずれの方向の回転駆動としても伝達することができる。このため、駆動モータが他の回転体の駆動源としての機能も備えている場合であって、他の回転体に正転方向の回転駆動を入力する必要があるタイミングであっても、駆動伝達を接続するクラッチ機構を切り替えることでローラ部材に逆転方向の回転駆動を入力することが出来る。さらに、二つのクラッチ機構を、駆動伝達を切断する状態とすることで、他の回転体に正転方向の回転駆動を入力する必要があるタイミングであっても、ローラ部材の回転駆動を停止することが出来る。このように、特許文献2に記載の駆動伝達装置では、駆動モータが他の回転体の駆動源としての機能も備えている場合に、ローラ部材の回転駆動の制御の自由度を広げることができる。
【0007】
しかしながら、クラッチ機構は、少なくとも一つのギヤが駆動を接続する位置と切断する位置との間で移動することで、駆動伝達の接続または切断の切り替えを行うものである。このため、二つのクラッチ機構を備える特許文献2の駆動伝達装置では、少なくとも二つのギヤについて駆動を接続する位置と切断する位置との間で移動可能となっており、装置の大型化、複雑化につながる。
【0008】
特許文献3の駆動伝達装置では、位置可変ギヤの位置を第一駆動伝達位置と第二駆動伝達位置との間で切り替えることで、位置可変ギヤに回転駆動を伝達するギヤ列を切り替えることができる。また、第一駆動伝達ギヤ列はギヤの数が奇数個で、第二駆動伝達ギヤ列はギヤの数が偶数個であるため、第一駆動伝達ギヤ列と第二駆動伝達ギヤ列とでは、位置可変ギヤに伝達する回転駆動の回転方向が異なる。よって、位置可変ギヤに回転駆動を伝達するギヤ列を切り替えることで、駆動モータから入力される一定方向の回転駆動を、ローラ部材に対して正逆いずれの方向の回転駆動としても伝達することができる。このため、駆動モータが他の回転体の駆動源としての機能も備えている場合であって、他の回転体に正転方向の回転駆動を入力する必要があるタイミングであっても、位置可変ギヤの位置を第一駆動伝達位置と第二駆動伝達位置との間で切り替えることで、ローラ部材に逆転方向の回転駆動を入力することが出来る。
また、この駆動伝達装置では、ローラ部材の回転方向を切り替えるために移動させるギヤは位置可変ギヤのみであるため、二つのギヤを移動させる特許文献2に記載の駆動伝達装置に比べて、装置の大型化及び複雑化を抑制することができる。
【0009】
しかしながら、特許文献3に記載の駆動伝達装置では、位置可変ギヤの位置は、第一駆動伝達位置と第二駆動伝達位置との何れか一方の位置となり、駆動モータが駆動している状態では、正逆何れか一方の回転駆動がローラ部材に入力される。このため、駆動源を共有する他の回転体に正転方向の回転駆動を入力する必要があるタイミングでは、ローラ部材の回転駆動を停止することが出来ず、ローラ部材の回転駆動の制御の自由度が狭まるという問題が生じる。
このような問題は、駆動対象がローラ部材である駆動伝達装置に限るものではなく、駆動源から入力される回転駆動を、ギヤ列を介して駆動対象まで伝達するものであれば生じ得る問題である。
【0010】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、装置の大型化及び複雑化を抑制しつつ、駆動源から入力される一定方向の回転駆動を、駆動対象に対して正逆いずれの方向の回転駆動としても伝達することができ、さらに、駆動源から回転駆動が入力している状態で駆動対象への駆動の伝達を停止することができる駆動伝達装置、並びに、これを備えた駆動装置、及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、駆動源から入力される回転駆動を駆動対象まで伝達する一つ目の伝達経路を形成する第一ギヤ列と、該駆動源から入力される回転駆動を該第一ギヤ列に対して逆回転の回転駆動として該駆動対象まで伝達する二つ目の伝達経路を形成する第二ギヤ列と、該第一ギヤ列の一部を構成する位置となる第一駆動伝達位置、及び、該第二ギヤ列の一部を構成する位置となる第二駆動伝達位置、の間を移動可能な位置可変ギヤと、を備え、該第一ギヤ列は、該位置可変ギヤが該第一駆動伝達位置にある場合に該駆動対象に回転駆動を伝達し、該第二ギヤ列は、該位置可変ギヤが該第二駆動伝達位置にある場合に該駆動対象に回転駆動を伝達する駆動伝達装置において、上記位置可変ギヤの位置を、上記第一駆動伝達位置と上記第二駆動伝達位置との何れの位置でもない非駆動伝達位置で係止する位置可変ギヤ係止手段を備えることを特徴とするものである。
【0012】
本発明においては、位置可変ギヤの位置を第一駆動伝達位置と第二駆動伝達位置との間で切り替えることで、駆動源から入力される一定方向の回転駆動を、駆動対象に対して正逆いずれの方向の回転駆動としても伝達することができる。また、本発明においては、位置可変ギヤ係止手段が位置可変ギヤの位置を非駆動伝達位置で係止することで、第一ギヤ列及び第二ギヤ列はともに駆動対象に回転駆動を伝達しなくなり、駆動源から回転駆動が入力している状態で駆動対象への駆動の伝達を停止することができる。さらに、本発明においては、駆動対象の回転方向を切り替えるために移動させるギヤは位置可変ギヤのみであるため、上記特許文献3に記載の駆動伝達装置と同様に、装置の大型化及び複雑化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装置の大型化及び複雑化を抑制しつつ、駆動源から入力される一定方向の回転駆動を、駆動対象に対して正逆いずれの方向の回転駆動としても伝達することができ、さらに、駆動源から回転駆動が入力している状態で駆動対象への駆動の伝達を停止することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】排紙駆動伝達装置を構成するギヤ列の説明図で、第一ソレノイドをONにしたときの説明図。
【図2】実施形態に係るプリンタの概略構成図。
【図3】用紙搬送装置の各駆動ローラに対する駆動源と駆動伝達経路との関係を示すブロック図。
【図4】排紙駆動伝達装置を構成するギヤ列の説明図で、第一ソレノイドをOFFにしたときの説明図。
【図5】用紙を排紙ニップに案内する場合における分岐爪近傍の拡大説明図。
【図6】用紙を反転ニップに案内する場合における分岐爪近傍の拡大説明図。
【図7】用紙が反転ニップに進入した状態の分岐爪近傍の拡大説明図。
【図8】図7に示す状態から第一ソレノイド及び第二ソレノイドをOFFした状態の分岐爪近傍の拡大説明図。
【図9】第一駆動伝達位置及び第二駆動伝達位置よりも下流側のギヤ列のパターン1の状態における説明図。
【図10】第一駆動伝達位置及び第二駆動伝達位置よりも下流側のギヤ列のパターン2の状態における説明図。
【図11】第一駆動伝達位置及び第二駆動伝達位置よりも下流側のギヤ列のパターン3の状態における説明図。
【図12】遊星ギヤ近傍のパターン4の状態における説明図。
【図13】係止部材のリンク部材との接触部を円弧形状とした構成のパターン4の状態の説明図。
【図14】係止部材とリンク部材との接触部がくさび形で係合する構成のパターン4の状態の説明図。
【図15】両面搬送経路の各ローラ対間の距離を示す説明図。
【図16】各ローラ部材の回転または停止の制御タイミングと、二つのソレノイドのON/OFFのタイミングとを示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を画像形成装置としてのプリンタ(以下、プリンタ100という)に適用した実施形態について説明する。
図2は、プリンタ100の概略構成図である。なお、本発明の駆動伝達装置は、図2に示すタイプの画像形成装置、及び図2に示すタイプの用紙搬送装置には限定されず、駆動対象に回転駆動を伝達する駆動伝達装置であれば、他の種々のタイプの装置に適用可能である。
プリンタ100は、シート材である用紙P1に画像を形成する画像形成部200と、画像形成部200の下方に設置され、画像形成部200に向けて用紙P1を給紙する給紙部110とを備える。
【0016】
画像形成部200は、イエロー用感光体6、マゼンタ用感光体7、シアン用感光体8及び黒用感光体9の四つの感光体を備え、四つの感光体の上方に潜像形成手段である露光装置3を備える。また、画像形成部200は、四つの感光体の下方に中間転写ベルト4aを備える。四つの感光体の周囲には、図示は省略した帯電装置、現像装置、一次転写装置、クリーニング装置及び除電装置等を備える。画像形成部200は、中間転写ベルト4aの図2中の右側に二次転写ローラ5を備える。また、中間転写ベルト4aを介して二次転写ローラ5に対向する二次転写対向ローラ4bと二次転写ローラ5とによって、中間転写ベルト4a上のトナー像を用紙P1に転写する二次転写ニップが形成されている。また、二次転写ニップの図2中の下方には、レジスト駆動ローラ2aとレジスト従動ローラ2bとからなるレジストローラ対2が配置されている。
【0017】
以下、プリンタ100における画像形成について説明する。
給紙部110にある給紙ローラ1が回転駆動することにより、積載用紙束Pの最上部の一枚である用紙P1が搬送される。給紙ローラ1によって搬送された用紙P1の先端がレジストローラ対2で形成されるレジストニップに到達したあと、給紙ローラ1がさらに回転を続けることで、先端がレジストニップに到達した用紙P1のスキュー補正がなされる。スキュー補正がなされたタイミングで給紙ローラ1の回転は停止する。
【0018】
一方、画像形成部200では、不図示の帯電装置が各感光体(6〜9)を一様帯電する。次に、露光装置3が、パーソナルコンピューターやスキャナ等の外部装置から入力される画像情報に基づいて、一様帯電された各感光体(6〜9)のそれぞれに、各色の画像情報に基づいたレーザー光を照射し、各感光体(6〜9)の表面上に静電潜像を形成する。静電潜像が形成された各感光体(6〜9)は、各色トナーを収容する不図示の現像装置によって静電潜像の現像がなされ、その表面上にトナー像が形成される。その後、それぞれの感光体(6〜9)上に形成されたトナー像を中間転写ベルト4aに順に重ね合わせるように転写し、中間転写ベルト4a上にカラートナー像を形成する。
【0019】
中間転写ベルト4a上のトナー像が二次転写ニップに到達するタイミングに併せてレジストローラ対2の回転を開始する。これにより、二次転写ニップに向けて搬送された用紙P1は、二次転写ニップを通過する際に画像が転写される。画像が転写された用紙P1は、定着装置300が備える定着ローラ10と加圧ローラ11とによって形成される定着ニップを通過する際に、熱と圧力とによって画像の加熱定着がなされる。画像が定着された用紙P1は、排紙ローラ13と排紙従動ローラ12とによって形成される排紙ニップを通過して、排紙スタック部14に排出される。
【0020】
さらに、両面印刷を行う場合は、詳細は後述する第二ソレノイド60に対する通電により、分岐爪15が図2に示す状態から分岐爪軸15aを中心に時計回りに回転して用紙P1が排紙ニップに向かう搬送路をふさぐ状態となる。定着ニップから搬送されてきた用紙P1は、分岐爪15によって排紙ローラ13と反転従動ローラ16とによって形成される反転ニップに送られる。用紙P1の後端が反転ニップに到達する直前のタイミングで、排紙ローラ13の回転方向を逆転し、両面入口搬送ローラ対17及び両面出口搬送ローラ対18が配置された両面搬送経路70へと用紙P1を搬入する。両面搬送経路70を抜けた用紙P1は、再度、レジストニップ、二次転写ニップ及び定着ニップを経て、図2に示す状態に戻った分岐爪15によって排紙ニップに向かう搬送路に案内され、排紙ニップを通過して、排紙スタック部14に排出されることで印刷が終了する。両面入口搬送ローラ対17では、両面入口駆動ローラ17aと両面入口従動ローラ17bとによって両面入口ニップを形成し、両面出口搬送ローラ対18では、両面出口駆動ローラ18aと両面出口従動ローラ18bとによって両面出口ニップを形成する。
【0021】
プリンタ100は、給紙ローラ1、レジストローラ対2、二次転写対向ローラ4b、二次転写ローラ5、定着ローラ10、加圧ローラ11、排紙ローラ13、排紙従動ローラ12、反転従動ローラ16、両面入口搬送ローラ対17、及び、両面出口搬送ローラ対18等により、用紙搬送装置400を構成している。
【0022】
図3は、プリンタ100が備える用紙搬送装置400の各駆動ローラに対する駆動源と駆動伝達経路との関係を示すブロック図である。
第一モータ101は、定着ローラ10及び排紙ローラ13の駆動源である。定着ローラ10の回転軸に固定された定着駆動ギヤ20(図4参照)と、排紙ローラ13の回転軸に固定された排紙駆動ギヤ30(図4参照)とは、詳細は後述するギヤ列で接続されている。このため、第一モータ101が、定着駆動ギヤ20に回転駆動を入力することにより、定着ローラ10及び排紙ローラ13が回転駆動する。
【0023】
第二モータ102は、レジスト駆動ローラ2a、給紙ローラ1、両面出口駆動ローラ18a及び両面入口駆動ローラ17aの駆動源である。レジスト駆動ローラ2aはレジストクラッチ、給紙ローラ1は給紙クラッチ、両面出口駆動ローラ18a及び両面入口駆動ローラ17aは両面クラッチを介して第二モータ102から回転駆動が伝達される構成となっている。このため、第二モータ102を回転駆動させたままの状態で、各クラッチの接続及び切断の制御を行うことで、各駆動ローラを回転させるタイミングを制御することが出来る。
【0024】
第三モータ103は、二次転写対向ローラ4bの駆動源であり、第三モータ103の駆動または停止のタイミングを制御することにより、二次転写対向ローラ4bを回転させるタイミングを制御することが出来る。なお、二次転写対向ローラ4bは、中間転写ベルト4aを張架する複数の張架ローラの一つであり、回転することによって中間転写ベルト4aを回転させるベルト駆動ローラである。このため、第三モータ103の駆動または停止のタイミングを制御することにより、中間転写ベルト4aを回転させるタイミング、及び中間転写ベルト4aを介して二次転写対向ローラ4bとの間で二次転写ニップを形成する二次転写ローラ5を回転させるタイミングを制御することが出来る。
【0025】
次に、第一モータ101から排紙ローラ13に回転駆動を伝達する駆動伝達装置について説明する。
図1は、排紙ローラ13に回転駆動を伝達する排紙駆動伝達装置500を構成するギヤ列の説明図であって、第一ソレノイド50を通電(ON)状態にしたときの説明図である。また、図4は、第一ソレノイド50を非通電(OFF)状態にしたときの説明図である。
第一モータ101から定着駆動ギヤ20までは、不図示のギヤ列により接続されており、第一モータ101は通電されている間は常に一定方向に回転する回転駆動を発生させるため、第一モータ101に通電されている間は、定着駆動ギヤ20は一定方向に回転する。
【0026】
図1及び図4に示すように、排紙駆動伝達装置500を構成するギヤ列における駆動伝達の最上流のギヤは定着駆動ギヤ20である。排紙駆動伝達装置500は、奇数個のギヤからなり、定着駆動ギヤ20の回転駆動を伝達する一つ目の経路を形成する第一排紙ギヤ列80と、偶数個のギヤからなり、第一排紙ギヤ列80とは独立した経路で定着駆動ギヤ20の回転駆動を伝達する二つ目の経路を形成する第二排紙ギヤ列90とを備える。第一排紙ギヤ列80は、第一ギヤ列上流ギヤ23と、第一ギヤ列中央ギヤ24と、第一ギヤ列下流ギヤ25との三つギヤで構成され、第二排紙ギヤ列90は、第二ギヤ列上流ギヤ21と、第二ギヤ列下流ギヤ22との二つギヤで構成される。また、排紙駆動伝達装置500は、排紙駆動ギヤ30に常に接続されるギヤ列として、第一伝達ギヤ27、第二伝達ギヤ28及び第三伝達ギヤ29からなる排紙伝達ギヤ列95を備える。
【0027】
さらに、排紙駆動伝達装置500は、第一ギヤ列下流ギヤ25に噛み合う第一駆動伝達位置と、第二ギヤ列下流ギヤ22に噛み合う第二駆動伝達位置との間を移動可能な遊星ギヤ26を備える。遊星ギヤ26は、第一駆動伝達位置または第二駆動伝達位置に位置することで、排紙ローラ13に駆動を入力するギヤ列である排紙伝達ギヤ列95に駆動を伝達する。
遊星ギヤ26は、第一伝達ギヤ27の回転軸である第一伝達ローラ軸27aを回動中心として回動可能に装置本体に対して支持されたリンク部材31に回転可能に支持されており、リンク部材31が揺動することで、第一駆動伝達位置と第二駆動伝達位置との間を移動する構成となっている。
【0028】
リンク部材31には、リンク押圧バネ51及び第一ソレノイド50が接続されている。図1に示すように、第一ソレノイド50が非通電状態では、リンク押圧バネ51がリンク部材31を図1中の矢印A方向に押圧し、リンク部材31に対して図1中の矢印B方向に示す回動方向の力が作用し、遊星ギヤ26が第一ギヤ列下流ギヤ25に噛み合う状態でリンク部材31が第一ソレノイド50に突き当たる。これにより、遊星ギヤ26を第一駆動伝達位置で固定させることができる。
【0029】
図4に示すように、第一ソレノイド50が通電(ON)状態では、リンク押圧バネ51の押圧力に抗して第一ソレノイド50がリンク部材31を図4中の矢印C方向に押圧し、リンク部材31に対して図4中の矢印D方向に示す回動方向の力が作用する。そして、遊星ギヤ26が第二ギヤ列下流ギヤ22に噛み合う状態で第一ソレノイド50の押圧部材(プランジャ)が伸びきった状態となり、遊星ギヤ26を第二駆動伝達位置で固定させることができる。
このように、第一ソレノイド50のON/OFF制御によってリンク部材31が回動する。そして、第一ソレノイド50が非通電(OFF)状態では、遊星ギヤ26は第一ギヤ列下流ギヤ25と噛み合って連結し、第一ソレノイド50が通電(ON)状態では、遊星ギヤ26は第二ギヤ列下流ギヤ22と噛み合って連結する。
【0030】
排紙駆動伝達装置500では、定着駆動ギヤ20が図1及び図4中の時計回り方向に回転したときに、第一ギヤ列下流ギヤ25は反時計周り方向に回転し、第二ギヤ列下流ギヤ22は時計周り方向に回転する。
図1に示す状態では、遊星ギヤ26は、第一ギヤ列下流ギヤ25と噛み合っている。この状態で、第一ギヤ列下流ギヤ25からの回転駆動を排紙伝達ギヤ列95に伝達し、排紙伝達ギヤ列95の第三伝達ギヤ29と噛み合う排紙駆動ギヤ30に駆動を伝達する。これにより、排紙駆動ギヤ30に対して回転軸を介して一体的に固定された排紙ローラ13を図1中の時計回り(CW)に回転させる。また、図4に示す状態では、遊星ギヤ26は、第二ギヤ列下流ギヤ22と噛み合っている。この状態で、第二ギヤ列下流ギヤ22からの回転駆動を排紙伝達ギヤ列95に伝達し、排紙駆動ギヤ30に駆動を伝達する。これにより、排紙ローラ13を図4中の反時計回り(CCW)に回転させる。
【0031】
上述のような構成により、排紙ローラ13は、第一ソレノイド50が非通電(OFF)状態のときには図1(a)で示すように図中時計回り方向に回転し、第一ソレノイド50が通電(ON)のときには図4で示すように図中反時計回り方向に回転する。
これにより、排紙ローラ13に加圧して接触している排紙従動ローラ12及び反転従動ローラ16が回転し、排紙ニップ及び反転ニップにおける用紙の搬送が可能となっている。
【0032】
また、排紙駆動伝達装置500は、リンク部材31の一部に突き当たることで第一駆動伝達位置から離れ、第二駆動伝達位置に向けて移動する遊星ギヤ26の移動を止める係止部材32を備えている。係止部材32は、分岐爪軸15aを回動中心として回動可能に装置本体に対して支持されている。係止部材32には、係止押圧バネ61及び第二ソレノイド60が接続されている。図1(a)に示す状態では、第二ソレノイド60は非通電(OFF)状態であり、係止押圧バネ61が係止部材32を図1(a)中の矢印E方向に押圧し、係止部材32に対して図1(a)中の矢印F方向に示す回動方向の力が作用することで、係止部材32が第二ソレノイド60に突き当たり、係止部材32の位置が固定される。図4に示す状態では、第二ソレノイド60は通電(ON)状態であり、係止押圧バネ61の押圧力に抗して第二ソレノイド60が係止部材32を図4中の矢印G方向に押圧し、係止部材32に対して図4中の矢印H方向に示す回動方向の力が作用し、第二ソレノイド60の押圧部材(プランジャ)が伸びきった状態で、係止部材32の位置が固定される。
【0033】
次に、用紙搬送経路の切換と用紙反転機構について説明する。
図5は、用紙P1を排紙ニップに案内する場合における分岐爪15近傍の拡大説明図である。図5中の矢印Iで示すように、下方から搬送されてきた用紙P1は分岐爪15によって排紙ニップに案内され、排紙ニップを通過して、排紙スタック部14に排出される。このとき、第一ソレノイド50はOFFの状態であり、排紙ローラ13は図5中の時計回り方向に回転する。また、分岐爪15は、係止部材32に対して位置が固定されており、分岐爪軸15aを回動中心として、係止部材32とともに回動する構成となっている。そして、図5に示す状態では、第二ソレノイド60はOFFの状態であり、係止部材32は図1で示す状態となっている。
【0034】
次に、両面印刷を行う場合について説明する。
図6は、用紙P1を反転ニップに案内する場合における分岐爪15近傍の拡大説明図である。図1及び図5に示す状態から第二ソレノイド60をONにすることにより、係止部材32は分岐爪軸15aを中心に図4中の矢印Hで示すように時計回り方向に回転する。このとき、係止部材32に対して位置が固定されている分岐爪15も図5に示す状態から分岐爪軸15aを中心に時計回りに回転して、図6で示すように用紙P1が排紙ニップに向かう搬送路をふさぐ状態となる。これにより、図6中の矢印Jで示すように、下方から搬送されてくる用紙P1を反転ニップに案内することができる。なお、分岐爪15と分岐爪軸15aとは用紙幅方向(図中の紙面に直行する方向)全域にわたり、一体構成となっている。
【0035】
また、用紙P1を反転ニップに案内する場合には、第二ソレノイド60をONにした後で第一ソレノイド50もONとする。図7は、用紙P1が反転ニップに進入した状態の分岐爪15近傍の拡大説明図である。図1及び図5に示す状態から第一ソレノイド50をONにすることにより、図4に示すように、遊星ギヤ26が第二ギヤ列下流ギヤ22と噛み合う状態となり、排紙ローラ13は図7で示すように、反時計回り方向に回転する。これにより、図7中の矢印Kで示すように、分岐爪15に案内されてきた用紙P1に対して反転ニップを通過させる方向の搬送力を付与することができる。
【0036】
その後、用紙P1の後端が反転ニップに到達する直前のタイミングで、第一ソレノイド50及び第二ソレノイド60をOFFにする。用紙P1の後端が反転ニップに到達する直前のタイミングで、第一ソレノイド50をOFFにすることで、図8に示すように、排紙ローラ13が時計回り方向に回転し、排紙ニップに挟んだ用紙P1に対して、それまでとは逆方向の搬送力を付与することが出来る。また、用紙P1の後端が反転ニップに到達する直前のタイミングで、第二ソレノイド60をOFFにすることで、用紙P1の後端が分岐爪15によって案内される位置を通過した後に、分岐爪15を図8に示す状態とすることができる。これにより、排紙ニップに挟まれた状態でそれまでとは逆方向の搬送力を付与された用紙P1を、定着ニップに向けて搬送することなく、図8中の矢印Mで示すように両面搬送経路70へと搬入することができる。
【0037】
次に、第一ソレノイド50と第二ソレノイド60とのON/OFFの組み合わせによる遊星ギヤの位置と係止部材32の位置との組み合わせをパターン分けする。
図9は、排紙駆動伝達装置500の第一駆動伝達位置及び第二駆動伝達位置よりも下流側のギヤ列のパターン1の状態における説明図である。なお、図9では、第一ソレノイド50、リンク押圧バネ51、係止押圧バネ61及び第二ソレノイド60の図示は省略している。さらに、図9では、係止部材32における係止押圧バネ61及び第二ソレノイド60が接続される扇型の部分の図示も省略している。
【0038】
図9に示すパターン1の状態では、第一ソレノイド50及び第二ソレノイド60がともにOFFの状態である。第一ソレノイド50がOFFの状態であり、遊星ギヤ26が第一ギヤ列下流ギヤ25と噛み合っているため、排紙ローラ13は時計回り方向に回転する。また、第二ソレノイド60がOFFの状態であるため、分岐爪軸15aと一体的に構成された係止部材32は、図9に示すように、リンク部材31と接触しない位置で保持される。排紙ローラ13の回転方向および分岐爪15の位置と用紙P1との関係が、図5及び図8に示す状態のときは、パターン1の状態となる。
【0039】
図10は、排紙駆動伝達装置500の第一駆動伝達位置及び第二駆動伝達位置よりも下流側のギヤ列のパターン2の状態における説明図である。図10においても、図9と同様に、二つのバネ及び二つのソレノイドと、係止部材32の扇形の部分との図示を省略している。
パターン2の状態は、パターン1の状態から第二ソレノイド60のみをONの状態としたものであり、係止部材32がパターン1の状態から分岐爪軸15aを中心に時計回り方向に回転しているが、リンク部材31と係止部材32とは接触していない状態である。また、第一ソレノイド50がOFFの状態であり、遊星ギヤ26が第一ギヤ列下流ギヤ25と噛み合っているため、排紙ローラ13は時計回り方向に回転する。排紙ローラ13の回転方向および分岐爪15の位置と用紙P1との関係が、図6に示す状態のときは、パターン2の状態となる。
【0040】
図11は、排紙駆動伝達装置500の第一駆動伝達位置及び第二駆動伝達位置よりも下流側のギヤ列のパターン3の状態における説明図である。図11においても、図9と同様に、二つのバネ及び二つのソレノイドと、係止部材32の扇形の部分との図示を省略している。
パターン3の状態は、パターン2の状態から第二ソレノイド60をONしたままの状態(係止部材32はパターン2と同じ姿勢)で、第一ソレノイド50をONにした状態である。パターン2の状態から第一ソレノイド50をONにすることで、リンク部材31がパターン2の状態から第一伝達ローラ軸27aを中心に時計回り方向に回転しているが、リンク部材31と係止部材32とは接触していない状態である。また、第一ソレノイド50がONの状態であり、遊星ギヤ26が第二ギヤ列下流ギヤ22と噛み合っているため、排紙ローラ13は反時計回り方向に回転する。排紙ローラ13の回転方向および分岐爪15の位置と用紙P1との関係が、図7に示す状態のときは、パターン3の状態となる。
【0041】
図12は、排紙駆動伝達装置500のギヤ列における遊星ギヤ26近傍のパターン4の状態における説明図である。図12においても、図9と同様に、二つのバネ及び二つのソレノイドと、係止部材32の扇形の部分との図示を省略している。
パターン4の状態はパターン1の状態から第二ソレノイド60はOFFにしたままの状態で、第一ソレノイド50のみをONにした状態である。パターン1の状態から第一ソレノイド50のみをONにすることで、リンク部材31がパターン1の状態から第一伝達ローラ軸27aを中心に時計回り方向に回転するが、遊星ギヤ26が第二ギヤ列下流ギヤ22と噛み合う第二駆動伝達位置に到達する前にリンク部材31が係止部材32に接触する。この接触によって係止部材32が第一ソレノイド50によって押圧されるリンク部材31の矢印D方向の移動に干渉し、遊星ギヤ26が、第一ギヤ列下流ギヤ25と第二ギヤ列下流ギヤ22との何れとも噛み合わない非駆動伝達位置で保持される。パターン4の状態では、遊星ギヤ26に回転駆動が伝達されないため、排紙ローラ13は回転を停止し、第一モータ101から回転駆動が入力している状態でも排紙ローラ13による用紙P1の搬送を停止することが出来る。
なお、両面搬送経路70を通過した用紙P1の先端がレジストニップで待機中のときに、パターン4の状態となる。
【0042】
両面印刷時における用紙反転タイミングと使用される二つのソレノイドのON/OFF状態を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
通常、反転動作を行う場合はパターン1〜3の動作を繰り返している。図12を用いて説明した排紙ローラ13の駆動を停止させるパターン4においては、第一ソレノイド50がONで、第二ソレノイド60がOFFであるため、表1に示すパターン1〜3のいずれのパターンとも重なることがなく、組み合わせを無駄なく使用可能となる。
【0045】
図12に示すパターン4の状態では、係止部材32とリンク部材31とは互いに面で接触しており、その面はどちらもリンク部材31の回転方向の接線(図12中の矢印N方向)に対して直行する面であり、接線方向に対して直行する平面同士で接触するような位置関係を保っている。この関係により、リンク部材31の回転に関わるベクトルは係止部材32の回動中心を通ることになり、係止部材32に対して余分な回動モーメントが掛かることが無いため位置精度を保つことができる。
【0046】
係止部材32とリンク部材31との接触位置の形状は、平面同士に限るものではない。図13は、係止部材32のリンク部材31との接触部を円弧形状とした構成の説明図である。図13に示すように、係止部材32のリンク部材31との接触部を円弧形状とすることにより、接触点が一点に限定され、位置精度はさらに向上する。また前述したように接触する位置は余分な回転モーメントが掛からない関係を保つのがより好ましい。
【0047】
図14は、係止部材32とリンク部材31との接触部がくさび形で係合する構成の説明図である。二つの部材は何れもそれぞれの回動軸を中心に回動方向に移動可能であるが、くさび形で噛み合うことにより、回動方向の移動の規制ができる。このため、位置精度が向上し、パターン4の状態において、遊星ギヤ26が他のギヤと接触する可能性を少なくできるため異音の発生やギヤの破損を防止することができる。
【0048】
また、通常レーザープリンタにおける定着ローラ10は用紙P1を搬送するタイミング以外でも余熱が下がるまで回転を続ける必要があったり、また精密な温度制御により短い時間でも途中で止めたりすることができないといった制約がある。このため、プリンタ100のように、排紙ローラ13が定着ローラ10と駆動源が共通である場合は、従来の駆動伝達装置では、駆動源と排紙ローラ13とをクラッチなどで連結させていない限り、定着ローラ10が回転している間は止めることができない。これに対して、本実施形態のプリンタ100では、パターン4の状態とすることで定着ローラ10が回転している間でも排紙ローラ13を止めることができる。
【0049】
図15は、両面搬送経路70の各ローラ対間の距離を示す説明図である。
図15に示すように、反転ニップから両面入口ニップまでの距離をL1、両面入口ニップから両面出口ニップまでの距離をL2、そして、両面出口ニップからレジストニップまでの距離をL3とする。また、用紙L1の長さをLp(不図示)とする。
【0050】
両面印刷を行う場合、L1〜L3を足した長さの両面搬送経路70を通過した用紙P1がレジストニップに到達し、用紙P1のスキューを補正する。用紙P1のスキューを補正が完了したあと、一旦、両面クラッチをOFFにしてT0[sec]の間、両面出口駆動ローラ18a及び両面入口駆動ローラ17aを停止する。そして、再びレジスト駆動ローラ2aが動き出すのと同時に両面クラッチをONにして、両面出口駆動ローラ18a及び両面入口駆動ローラ17aによる用紙P1の搬送を開始する。その後は前述した片面印刷時と同様の動きをする。
【0051】
ここで、用紙長Lpが両面経路長(L1+L2+L3)よりも大きい場合、両面搬送経路70から搬入された用紙先端がレジストニップに到達したときでも、用紙P1の後端が反転ニップからはみ出る状態となる。
この状態において、定着ローラ10は回転を止めることができないため、排紙ローラ13も回転している。前述したように、両面印刷時の用紙P1がレジストニップに到達し、スキュー補正が完了した後、両面出口駆動ローラ18a及び両面入口駆動ローラ17aは一旦、T0[sec]間停止している。このT0[sec]の間に、反転ニップを形成する排紙ローラ13及び反転従動ローラ16が回転し続けると、反転ニップと両面入口ニップとの間で用紙P1にたるみが発生する。
【0052】
このたるみ量が無視できるほど小さければ問題はない。しかし、プリンタ100が、装置として画像形成のタイミングを一旦長時間停止する、などといった動作をする場合、レジスト駆動ローラ2aと両面出口駆動ローラ18a及び両面入口駆動ローラ17aとは、その時間回転開始することができない。このため、上述したたるみ量が大きくなりすぎ、両面搬送経路70内で用紙P1が大きなダメージを受けてしまう。
よって、本発明を適用したプリンタ100では、用紙P1がレジストニップに到達しスキューを補正したあとは、反転ニップの下流側にあるニップを形成する両面入口駆動ローラ17a及び両面出口駆動ローラ18aの駆動を停止するのと同様に、排紙ローラ13への駆動伝達はパターン4の状態とすることにより、駆動伝達を遮断する。これにより、用紙P1へのダメージを回避することができる。
【0053】
図16は、レジスト駆動ローラ2a、両面入口駆動ローラ17a及び両面出口駆動ローラ18aの回転または停止の制御タイミングと、第一ソレノイド50及び第二ソレノイド60のON/OFFのタイミングとを示すタイミングチャートである。
【0054】
一般的に、ソレノイドはプランジャを引ききって動作完了するまでに時間が掛かるため、タイムラグを考慮して予め制御上盛り込んでおくことが好ましい。用紙P1の先端が両面搬送経路70からレジストニップに到達後、スキュー補正終了時に両面入口駆動ローラ17a及び両面出口駆動ローラ18aの回転停止と同時に、排紙ローラ13の停止を行う。また、定着ローラ10を回転駆動させた状態で排紙ローラ13を停止するためには、排紙ローラ13への駆動伝達をパターン4の状態とする必要がある。そして、用紙反転後搬送経路である両面搬送経路70へ搬送中のパターン1の状態からパターン4の状態にするには、第二ソレノイド60をONにした後、第一ソレノイド50もONにする必要がある。
【0055】
このため、第二ソレノイド60をONにした後、第一ソレノイド50をONにしたときの動作完了に要する所要時間t1だけ上述の両面入口駆動ローラ17a及び両面出口駆動ローラ18aよりも早く第二ソレノイド60にON信号を送信しておくことで、排紙ローラ13の回転を高精度に下流側のローラの回転に同期させることができる。また二つのソレノイドをOFF時の動作完了時間をt2とした場合も同様に予め早めにOFF信号を出すことにより用紙P1の余分なたるみを防止することができる。
【0056】
本実施形態では、位置可変ギヤである遊星ギヤ26が第一駆動伝達位置にあるときに駆動対象に駆動を伝達する第一ギヤ列は、定着駆動ギヤ20と、第一排紙ギヤ列80と、遊星ギヤ26と、排紙伝達ギヤ列95とによって構成される。また、遊星ギヤ26が第二駆動伝達位置にあるときに駆動対象に駆動を伝達する第二ギヤ列は、定着駆動ギヤ20と、第二排紙ギヤ列90と、遊星ギヤ26と、排紙伝達ギヤ列95とによって構成される。このように、本実施形態では、位置可変ギヤよりも駆動対象側のギヤ列を排紙伝達ギヤ列95として、第一ギヤ列と第二ギヤ列とで共有する構成であるが、位置可変ギヤよりも駆動対象側のギヤ列を第一ギヤ列と第二ギヤ列とで独立して設けてもよい。
【0057】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
〔態様A〕
第一モータ101等の駆動源から入力される回転駆動を排紙ローラ13等の駆動対象まで伝達する一つ目の伝達経路を形成する第一ギヤ列と、駆動源から入力される回転駆動を第一ギヤ列に対して逆回転の回転駆動として駆動対象まで伝達する二つ目の伝達経路を形成する第二ギヤ列と、第一ギヤ列の一部を構成する位置となる第一駆動伝達位置、及び、第二ギヤ列の一部を構成する位置となる第二駆動伝達位置、の間を移動可能な遊星ギヤ26等の位置可変ギヤと、を備え、第一ギヤ列は、位置可変ギヤが第一駆動伝達位置にある場合に駆動対象に回転駆動を伝達し、第二ギヤ列は、位置可変ギヤが第二駆動伝達位置にある場合に駆動対象に回転駆動を伝達する排紙駆動伝達装置500等の駆動伝達装置において、遊星ギヤ26等の位置可変ギヤの位置を、第一駆動伝達位置と第二駆動伝達位置との何れの位置でもない非駆動伝達位置で係止する位置可変ギヤ係止手段を備える。これによれば、上記実施形態について説明したように、位置可変ギヤの位置を第一駆動伝達位置と第二駆動伝達位置との間で切り替えることで、駆動源から入力される一定方向の回転駆動を、駆動対象に対して正逆いずれの方向の回転駆動としても伝達することができる。また、位置可変ギヤ係止手段が位置可変ギヤの位置を非駆動伝達位置で係止することで、第一ギヤ列及び第二ギヤ列はともに駆動対象に回転駆動を伝達しなくなり、駆動源から回転駆動が入力している状態で駆動対象への駆動の伝達を停止することができる。さらに、駆動対象の回転方向を切り替えるために移動させるギヤは位置可変ギヤのみであるため、装置の大型化及び複雑化を抑制することができる。よって、装置の大型化及び複雑化を抑制しつつ、駆動源から入力される一定方向の回転駆動を、駆動対象に対して正逆いずれの方向の回転駆動としても伝達することができ、さらに、駆動源から回転駆動が入力している状態で駆動対象への駆動の伝達を停止することができる。
〔態様B〕
態様Aにおいて、第一モータ101等の駆動源から入力される回転駆動を排紙ローラ13等の駆動対象まで伝達するギヤ列における駆動伝達の最上流のギヤである定着駆動ギヤ20等の駆動入力ギヤと、駆動入力ギヤの回転駆動を遊星ギヤ26等の位置可変ギヤまで伝達する一つ目の経路を形成する第一排紙ギヤ列80等の第一駆動伝達ギヤ列と、第一駆動伝達ギヤ列とは独立した経路で駆動入力ギヤの回転駆動を位置可変ギヤに伝達する二つ目の経路を形成し、第一駆動伝達ギヤ列が奇数個のギヤから構成される場合は偶数個のギヤから構成され、第一駆動伝達ギヤ列が偶数個のギヤから構成される場合は奇数個のギヤから構成される第二排紙ギヤ列90等の第二駆動伝達ギヤ列と、位置可変ギヤを回転可能に支持するリンク部材31等の位置可変ギヤ支持部材と、ON/OFF制御され、位置可変ギヤが第一駆動伝達位置に位置するOFFの状態から、ONの状態となることで、位置可変ギヤ支持部材を移動させ、位置可変ギヤを第二駆動伝達位置まで移動させる第一ソレノイド50等の位置可変ギヤ移動機構と、位置可変ギヤの回転駆動を駆動対象まで伝達する排紙伝達ギヤ列95等の下流側ギヤ列と、を備え、第一ギヤ列は、駆動入力ギヤと、第一駆動伝達ギヤ列と、位置可変ギヤと、下流側ギヤ列とによって構成され、第二ギヤ列は、駆動入力ギヤと、第二駆動伝達ギヤ列と、位置可変ギヤと、下流側ギヤ列とによって構成され、位置可変ギヤが第一駆動伝達位置にあるときには、位置可変ギヤは第一駆動伝達ギヤ列における駆動伝達の最下流のギヤである第一ギヤ列下流ギヤ25等の第一出力ギヤに噛み合い、位置可変ギヤが第二駆動伝達位置にあるときには、位置可変ギヤは第二駆動伝達ギヤ列における駆動伝達の最下流のギヤである第二ギヤ列下流ギヤ22等の第二出力ギヤに噛み合う構成であって、位置可変ギヤ係止手段が、位置可変ギヤ支持部材の一部に突き当たることで第一駆動伝達位置から離れ、第二駆動伝達位置に向けて移動する位置可変ギヤの移動を非駆動伝達位置で止める係止部材32等の突き当て部材と、ON/OFF制御されることで突き当て部材の位置を制御し、ONまたはOFFの一方の状態で、突き当て部材が位置可変ギヤ支持部材の一部である被突き当て部に突き当たる突き当て位置(例えば、図12に示す状態)とし、ONまたはOFFの他方の状態で、突き当て部材が位置可変ギヤ支持部材の一部に突き当たらない退避位置(例えば、図11に示す状態)とする、第二ソレノイド60等の突き当て部材移動機構と、から構成される。これによれば、上記実施形態について説明したように、第一ソレノイド50等の位置可変ギヤ移動機構のON/OFFを切り替えることで、遊星ギヤ26等の位置可変ギヤの位置を第一駆動伝達位置と第二駆動伝達位置との間で切り替えることが出来る。よって、位置可変ギヤ移動機構のON/OFFを切り替えることで、第一モータ101等の駆動源から入力される一定方向の回転駆動を、排紙ローラ13等の駆動対象に対して正逆いずれの方向の回転駆動としても伝達することができる。また、第二ソレノイド60等の突き当て部材移動機構が係止部材32等の突き当て部材を突き当て位置とした状態(例えば、図10に示す状態)で第一ソレノイド50等の位置可変ギヤ移動機構をONからOFFに切り替えることで、第一駆動伝達位置から第二駆動伝達位置に向けて移動しようとする位置可変ギヤを支持するリンク部材31等の位置可変ギヤ支持部材の被突き当て部に突き当て部材が突き当たる(例えば、図12に示す状態となる)。突き当て部材が被突き当て部に突き当たることで、第一駆動伝達位置から離れ、第二駆動伝達位置に向けて移動する位置可変ギヤの移動が止まるため、位置可変ギヤは第一駆動伝達位置及び第二駆動伝達位置の何れでもない非駆動伝達位置で停止することになる。非駆動伝達位置では、位置可変ギヤは第一ギヤ列下流ギヤ25等の第一出力ギヤ及び第二ギヤ列下流ギヤ22等の第二出力ギヤの何れのギヤとも噛み合わないため、定着駆動ギヤ20等の駆動入力ギヤに回転駆動が入力されても、位置可変ギヤには回転駆動が入力されず、駆動源から回転駆動が入力している状態で駆動対象への駆動の伝達を停止することができる。
〔態様C〕
態様Bにおいて、リンク部材31の一部等の被突き当て部は、第一駆動伝達位置から第二駆動伝達位置に向けて移動する遊星ギヤ26等の位置可変ギヤの移動方向に直行する面で構成される。これによれば、上記実施形態について図12を用いて説明したように、パターン4等の駆動停止時に行う遊星ギヤ26等の位置可変ギヤと他のギヤとの離間について、部品間距離の精度を向上させることができる。
〔態様D〕
態様Bにおいて、リンク部材31の一部等の被突き当て部及び係止部材32等の突き当て部材の互いが突き当たる部分は、一方が円弧状の凸形状で構成されている。これによれば、上記実施形態について図13を用いて説明したように、パターン4等のギヤ離間時の部品間距離の精度を向上させることができる。
〔態様E〕
態様Bにおいて、リンク部材31の一部等の被突き当て部及び係止部材32等の突き当て部材の互いが突き当たる部分は、一方が楔形の凸形状で、他方が楔形の凹部で構成され、一方が他方に嵌る形状である。これによれば、上記実施形態について図14を用いて説明したように、パターン4等のギヤ離間時の部品間距離の精度を向上させることができる。
〔態様F〕
両面搬送経路70等のシート搬送路と、シート搬送路内の用紙P1等のシート材に接触し、図中の反時計回り方向等の第一の回転方向に回転することでシート材を第一の搬送方向に搬送し、一の回転方向とは逆方向の時計回り等の第二の回転方向に回転することでシート材を第一の搬送方向に搬送する排紙ローラ13等のシート逆送ローラと、駆動対象である逆送ローラに対して第一の回転方向及び第二の回転方向の回転駆動を伝達する駆動伝達手段とを備える用紙搬送装置400等のシート搬送装置において、駆動伝達手段として、態様A乃至態様Eのいずれか一つの態様の排紙駆動伝達装置500等の駆動伝達装置を用いる。これによれば、上記実施形態について説明したように、装置の大型化及び複雑化を抑制しつつ、第一モータ101等の駆動源から入力される一定方向の回転駆動によって、用紙P1等のシート材を第一の搬送方向及び第二の搬送方向のいずれの方向にも搬送することができ、さらに、駆動源から回転駆動が入力している状態でシート材の搬送を停止することができる。
〔態様G〕
少なくとも態様Bに記載の構成を備えた駆動伝達装置を用いる態様Fにおいて、上流側から搬送されてくる用紙P1等のシート材を排出ニップを含む搬送路等の第一の搬送路に案内する第一の位置と、シート材を反転ニップを含む搬送路等の第二の搬送路に案内する第二の位置との間を移動可能な分岐爪15等の分岐部材を有し、分岐部材は第二ソレノイド60等の突き当て部材移動機構がONまたはOFFの一方の状態のときに第一の位置となり、突き当て部材移動機構がONまたはOFFの他方の状態のときに第二の位置となる。これによれば、上記実施形態について説明したように、第二ソレノイド60等の突き当て部材移動機構のON/OFF制御することにより、係止部材32等の突き当て部材の位置と、分岐爪15等の分岐部材との二つの部材の位置を制御することができ、位置を制御する機構を共通化することにより、装置の小型化、低コスト化を図ることができる。
〔態様H〕
態様Gにおいて、排紙ローラ13等の逆送ローラと接触して排紙ニップ等の第一の搬送ニップを形成し、逆送ローラの回転に従って回転する排紙従動ローラ12等の一従動ローラと、逆送ローラと接触して反転ニップ等の第二の搬送ニップを形成し、逆送ローラの回転に従って回転する反転従動ローラ16等の第二従動ローラとを備え、分岐爪15等の分岐部材によって第一の搬送路に案内された用紙P1等のシート材は、排紙ニップ等の第一の搬送ニップに到達し、逆送ローラの回転によって第一の搬送ニップを通過し、分岐部材によって第二の搬送路に案内されたシート材は、反転ニップ等の第二の搬送ニップに到達し、逆送ローラの回転はシート材の後端が第二の搬送ニップを通過する前に、逆方向に回転し、シート材を逆方向に向けて搬送するものである。これによれば、上記実施形態について説明したように、回転駆動する排紙ローラ13等の逆送ローラに接触し同期回転する従動ローラが二つ配設され、合計三つのローラがなす2つのローラニップのうち一つは用紙P1等のシート材を排出し、他方はシート材をスイッチバックして両面搬送経路70等の他の搬送経路に引き込む機構を搭載するシート搬送装置を実現でき、駆動が入力される搬送ローラ(排紙ローラ13)を一つにして部品数を削減、また機構の小サイズ化が実施可能となる。
〔態様I〕
態様Gまた態様Hにおいて、第二ソレノイド60等の突き当て部材移動機構及び第一ソレノイド50等の位置可変ギヤ移動機構をON/OFF制御するタイミングは、排紙ローラ13等の逆送ローラに対して搬送方向下流側に位置する両面入口駆動ローラ17a等の逆送下流側搬送ローラの駆動と同期させるものである。これによれば、上記実施形態について説明したように、搬送中の用紙P1等のシート材がローラ間でたるみがついて詰まる、などの不具合を防止することができる。
〔態様J〕
態様Iにおいて、第二ソレノイド60等の突き当て部材移動機構及び第一ソレノイド50等の位置可変ギヤ移動機構のON/OFF制御として、両面入口駆動ローラ17a等の逆送下流側搬送ローラの動作開始または停止タイミングに対して、突き当て部材移動機構及び該位置可変ギヤ移動機構が動作開始信号を受けて動作を完了するまでの所定時間だけ早いタイミングで、突き当て部材移動機構及び該位置可変ギヤ移動機構に対してON/OFFの信号を送信する。これによれば、上記実施形態について図16を用いて説明したように、電磁部品特有の遅延時間の個体差に関わらず、搬送中の用紙P1等のシート材がローラ間でたるみがついて詰まる、などの不具合を防止することができる。
〔態様K〕
用紙P1等のシート材上に画像を形成する画像形成部200等の画像形成手段と、装置内でシート材を搬送するシート搬送手段とを有するプリンタ100等の画像形成装置において、シート搬送手段として、態様F乃至態様Jのいずれか一つの態様に係る用紙搬送装置400等のシート搬送装置を用いる。これによれば、上記実施形態について説明したように、装置の大型化及び複雑化を抑制しつつ、第一モータ101等の駆動源から入力される一定方向の回転駆動によって、用紙P1等のシート材を第一の搬送方向及び第二の搬送方向のいずれの方向にも搬送することができ、さらに、駆動源から回転駆動が入力している状態でシート材の搬送を停止することができる。よって、動作制度の高い画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0058】
2 レジストローラ対
2a レジスト駆動ローラ
2b レジスト従動ローラ
4a 中間転写ベルト
4b 二次転写対向ローラ
5 二次転写ローラ
10 定着ローラ
11 加圧ローラ
12 排紙従動ローラ
13 排紙ローラ
14 排紙スタック部
15 分岐爪
15a 分岐爪軸
16 反転従動ローラ
17 両面入口搬送ローラ対
18 両面出口搬送ローラ対
20 定着駆動ギヤ
26 遊星ギヤ
27 第一伝達ギヤ
27a 第一伝達ローラ軸
30 排紙駆動ギヤ
31 リンク部材
32 係止部材
50 第一ソレノイド
51 リンク押圧バネ
60 第二ソレノイド
61 係止押圧バネ
70 両面搬送経路
80 第一排紙ギヤ列
90 第二排紙ギヤ列
95 排紙伝達ギヤ列
100 プリンタ
101 第一モータ
400 用紙搬送装置
500 排紙駆動伝達装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】特許4165545号
【特許文献2】特開平09−124207号公報
【特許文献3】特開2008−285279号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源から入力される回転駆動を駆動対象まで伝達する一つ目の伝達経路を形成する第一ギヤ列と、
該駆動源から入力される回転駆動を該第一ギヤ列に対して逆回転の回転駆動として該駆動対象まで伝達する二つ目の伝達経路を形成する第二ギヤ列と、
該第一ギヤ列の一部を構成する位置となる第一駆動伝達位置、及び、該第二ギヤ列の一部を構成する位置となる第二駆動伝達位置、の間を移動可能な位置可変ギヤと、を備え、
該第一ギヤ列は、該位置可変ギヤが該第一駆動伝達位置にある場合に該駆動対象に回転駆動を伝達し、該第二ギヤ列は、該位置可変ギヤが該第二駆動伝達位置にある場合に該駆動対象に回転駆動を伝達する駆動伝達装置において、
上記位置可変ギヤの位置を、上記第一駆動伝達位置と上記第二駆動伝達位置との何れの位置でもない非駆動伝達位置で係止する位置可変ギヤ係止手段を備えることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
請求項1の駆動伝達装置において、
駆動源から入力される回転駆動を駆動対象まで伝達するギヤ列における駆動伝達の最上流のギヤである駆動入力ギヤと、
該駆動入力ギヤの回転駆動を上記位置可変ギヤまで伝達する一つ目の経路を形成する第一駆動伝達ギヤ列と、
該第一駆動伝達ギヤ列とは独立した経路で該駆動入力ギヤの回転駆動を該位置可変ギヤに伝達する二つ目の経路を形成し、該第一駆動伝達ギヤ列が奇数個のギヤから構成される場合は偶数個のギヤから構成され、該第一駆動伝達ギヤ列が偶数個のギヤから構成される場合は奇数個のギヤから構成される第二駆動伝達ギヤ列と、
該位置可変ギヤを回転可能に支持する位置可変ギヤ支持部材と、
ON/OFF制御され、該位置可変ギヤが該第一駆動伝達位置に位置するOFFの状態から、ONの状態となることで、該位置可変ギヤ支持部材を移動させ、該位置可変ギヤを該第二駆動伝達位置まで移動させる位置可変ギヤ移動機構と、
該位置可変ギヤの回転駆動を該駆動対象まで伝達する下流側ギヤ列と、を備え、
上記第一ギヤ列は、該駆動入力ギヤと、該第一駆動伝達ギヤ列と、該位置可変ギヤと、該下流側ギヤ列とによって構成され、
上記第二ギヤ列は、該駆動入力ギヤと、該第二駆動伝達ギヤ列と、該位置可変ギヤと、該下流側ギヤ列とによって構成され、
該位置可変ギヤが第一駆動伝達位置にあるときには、該位置可変ギヤは該第一駆動伝達ギヤ列における駆動伝達の最下流のギヤである第一出力ギヤに噛み合い、該位置可変ギヤが第二駆動伝達位置にあるときには、該位置可変ギヤは該第二駆動伝達ギヤ列における駆動伝達の最下流のギヤである第二出力ギヤに噛み合う構成であって、
上記位置可変ギヤ係止手段が、上記位置可変ギヤ支持部材の一部に突き当たることで該第一駆動伝達位置から離れ、該第二駆動伝達位置に向けて移動する該位置可変ギヤの移動を上記非駆動伝達位置で止める突き当て部材と、
ON/OFF制御されることで該突き当て部材の位置を制御し、ONまたはOFFの一方の状態で、該突き当て部材が該位置可変ギヤ支持部材の一部である被突き当て部に突き当たる突き当て位置とし、ONまたはOFFの他方の状態で、該突き当て部材が該位置可変ギヤ支持部材に突き当たらない退避位置とする、突き当て部材移動機構と、から構成されることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項3】
請求項2の駆動伝達装置において、
上記被突き当て部は、上記第一駆動伝達位置から上記第二駆動伝達位置に向けて移動する上記位置可変ギヤの移動方向に直行する面で構成されることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項4】
請求項2の駆動伝達装置において、
上記被突き当て部及び上記突き当て部材の互いが突き当たる部分は、一方が円弧状の凸形状で構成されていることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項5】
請求項2の駆動伝達装置において、
上記被突き当て部及び上記突き当て部材の互いが突き当たる部分は、一方が楔形の凸形状で、他方が楔形の凹部で構成され、一方が他方に嵌る形状であることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項6】
シート搬送路と、
該シート搬送路内のシート材に接触し、第一の回転方向に回転することで該シート材を第一の搬送方向に搬送し、該一の回転方向とは逆方向の第二の回転方向に回転することで該シート材を第一の搬送方向に搬送するシート逆送ローラと、
駆動対象である該逆送ローラに対して該第一の回転方向及び該第二の回転方向の回転駆動を伝達する駆動伝達手段とを備えるシート搬送装置において、
上記駆動伝達手段として、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の駆動伝達装置を用いることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項7】
少なくとも請求項2に記載の構成を備えた駆動伝達装置を用いる請求項6のシート搬送装置において、
上流側から搬送されてくる上記シート材を第一の搬送路に案内する第一の位置と、該シート材を第二の搬送路に案内する第二の位置との間を移動可能な分岐部材を有し、
該分岐部材は上記突き当て部材移動機構がONまたはOFFの一方の状態のときに該第一の位置となり、該突き当て部材移動機構がONまたはOFFの他方の状態のときに該第二の位置となることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項8】
請求項7のシート搬送装置において、
上記逆送ローラと接触して第一の搬送ニップを形成し、該逆送ローラの回転に従って回転する第一従動ローラと、
該逆送ローラと接触して第二の搬送ニップを形成し、該逆送ローラの回転に従って回転する第二従動ローラとを備え、
上記分岐部材によって上記第一の搬送路に案内された上記シート材は、該第一の搬送ニップに到達し、該逆送ローラの回転によって該第一の搬送ニップを通過し、
該分岐部材によって該第二の搬送路に案内された該シート材は、該第二の搬送ニップに到達し、該逆送ローラの回転は該シート材の後端が該第二の搬送ニップを通過する前に、逆方向に回転し、該シート材を逆方向に向けて搬送することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項9】
請求項7または8のシート搬送装置において、
上記突き当て部材移動機構及び上記位置可変ギヤ移動機構をON/OFF制御するタイミングは、上記逆送ローラに対して搬送方向下流側に位置する逆送下流側搬送ローラの駆動と同期させることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項10】
請求項9のシート搬送装置において、
上記突き当て部材移動機構及び上記位置可変ギヤ移動機構のON/OFF制御として、上記逆送下流側搬送ローラの動作開始または停止タイミングに対して、該突き当て部材移動機構及び該位置可変ギヤ移動機構が動作開始信号を受けて動作を完了するまでの所定時間だけ早いタイミングで、該突き当て部材移動機構及び該位置可変ギヤ移動機構に対してON/OFFの信号を送信することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項11】
シート材上に画像を形成する画像形成手段と、
装置内で該シート材を搬送するシート搬送手段とを有する画像形成装置において、
該シート搬送手段として、請求項6乃至10のいずれか1項に記載のシート搬送装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2013−96513(P2013−96513A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240311(P2011−240311)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】