説明

駆動伝達装置、及び、それを備える画像形成装置

【課題】駆動源からの振動の伝搬を抑制し、騒音を低減する駆動伝達装置及びそれを備える画像形成装置を提供する。
【解決手段】駆動伝達上流側の歯車80と噛み合う駆動歯車84と、駆動伝達下流側の歯車85と噛み合う従動歯車85と、駆動歯車84と従動歯車85を同軸上において回転可能に支持する支持軸81jとを備え、駆動歯車84の駆動伝達面84d、84eと従動歯車85の被駆動伝達面85d、85eとの間に介在する制振部材90、91を有する駆動伝達装置において、駆動力の分力であって、支持軸81jの中心軸方向において駆動歯車84と従動歯車85とを離間する方向の力が、従動歯車85に働くように、駆動伝達面84d、84eと被駆動伝達面85d、85eの少なくともいずれか一方が傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動伝達装置、及び、それを備える画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、歯車列を用いて、モータ等の駆動源からの回転駆動力を伝達し、ローラ等を回転する駆動伝達装置が知られている。歯車列のうち、上流側の歯車と噛み合う第1の歯車と、下流側の歯車と噛み合う第2の歯車と、を有し、第1及び第2の歯車が同軸上で回転可能に支持されているものがある。このような駆動伝達装置は、例えば、電子プリンタ等の画像形成装置に適用されている。このような駆動伝達装置において、駆動源からの振動が歯車列に伝搬し、騒音が生じるという問題が生じていた。そこで、例えば、特許文献1に示すように、駆動源からの振動の伝搬を抑制するために、第1の歯車84の駆動伝達面84dと第2の歯車85の被駆動伝達面85dとの間に弾性部材(緩衡部材)90を設ける駆動伝達装置が知られている(図9参照)。これによって、歯車の回転方向において、第1の歯車84と第2の歯車85は、直接に接触することはなく、弾性部材90、91を介して接触することになるため、駆動源からの振動の伝搬を抑制し、騒音を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−141439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図9に示すような従来の駆動伝達装置においては、第1の歯車84と第2の歯車85が、支持軸81jの中心軸方向において、直接接触する場合があった。その場合、弾性部材90、91を介さずに第1の歯車84と第2の歯車85が接触することとなるため、駆動源からの振動が伝搬され易く、騒音低減効果が十分に得られない場合があった。また、歯車の製造誤差等により、第1の歯車84と第2の歯車85が支持軸81jの中心軸方向に移動や振動をし、回転誤差や噛み合い誤差が発生してしまい、騒音が悪化する場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、駆動源からの振動の伝搬を抑制し、騒音を低減する駆動伝達装置、及び、それを備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、駆動伝達上流側の歯車と噛み合う第1の歯車と、駆動伝達下流側の歯車と噛み合う第2の歯車と、前記第1の歯車と前記第2の歯車を同軸上において回転可能に支持する支持軸と、を有し、前記第1の歯車は、前記第2の歯車に駆動力を伝達するための駆動伝達面を有し、前記第2の歯車は、前記第1の歯車からの前記駆動力を受けるための被駆動伝達面を有し、前記駆動伝達面と前記被駆動伝達面との間に弾性部材が介在する駆動伝達装置において、前記駆動力の分力であって、前記支持軸の中心軸方向において前記第1の歯車と前記第2の歯車とを離間する方向の力が、前記第2の歯車に働くように、前記駆動伝達面と前記被駆動伝達面の少なくともいずれか一方が傾斜していることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、駆動伝達上流側の歯車と噛み合う第1の歯車と、駆動伝達下流側の歯車と噛み合う第2の歯車と、前記第1の歯車と前記第2の歯車を同軸上において回転可能
に支持する支持軸と、を有し、前記第1の歯車は、前記第2の歯車に駆動力を伝達するための駆動伝達面を有し、前記第2の歯車は、前記第1の歯車からの前記駆動力を受けるための被駆動伝達面を有し、前記駆動伝達面と前記被駆動伝達面との間に介在し、互いに当接する、前記駆動伝達面に当接する第1の弾性部材と、前記被駆動伝達面に当接する第2の弾性部材と、を有する駆動伝達装置において、前記駆動力の分力であって、前記支持軸の中心軸方向において前記第1の歯車と前記第2の歯車とを離間する方向の力が、前記第2の歯車に働くように、前記第1の弾性部材と前記第2の弾性部材との当接面が傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、駆動源からの振動の伝搬を抑制し、騒音を低減する駆動伝達装置、及び、それを備える画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1乃至4に係る画像形成装置の全体構成の概略図
【図2】実施例1乃至4に係る駆動伝達装置の外観斜視図
【図3】実施例1乃至4に係る歯車列及びレジストローラ対を示す側面図
【図4】実施例1に係る歯車の分解斜視図
【図5】実施例1における、図3に示した歯車列の略H−H断面図
【図6】実施例2における、図3に示した歯車列の略H−H断面図
【図7】実施例3における、図3に示した歯車列の略H−H断面図
【図8】実施例4に係る歯車の分解斜視図
【図9】従来の歯車を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施例1)
本発明の実施例の一例として、中間転写方式を採用する電子写真画像形成装置(以下、画像形成装置)について説明する。実施例1においては、画像形成装置に備えられる駆動伝達装置について説明するが、これに限定されず、実施例1に係る駆動伝達装置を他の装置に用いることもできる。
【0011】
まず、図1を用いて、実施例1に係る駆動伝達装置を備える画像形成装置の全体構成の概要について説明する。実施例1に係る画像形成装置は、感光ドラム1と、帯電ローラ2と、スキャナユニット3と、現像ローラ4と、転写装置5と、定着装置6とを備える。そして、実施例1に係る画像形成装置は、感光ドラム1と、帯電ローラ2と、現像ローラ4とを一体的に構成して成る4つのプロセスカートリッジを着脱可能に備えている。ただし、この限りではなく、感光ドラム1、帯電ローラ2、現像ローラ4が、画像形成装置本体に一体化して備えられるものについて、実施例1の特徴を採用することもできる。実施例1に係る画像形成装置は、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの各色の画像を形成する4つの画像形成部(7Y、7M、7C、7K)が設けられている。これらの構成及び動作は、画像の色が異なることを除いては、実質的に同じである。したがって、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために符号に与えられた添え字Y、M、C、Kは省略して説明を行うこととする。
【0012】
転写装置5は、一次転写ローラ51と、二次転写ローラ52と、中間転写ベルト53と、二次転写ローラ52に対向して設けられる対向ローラ54と、を有する。中間転写ベルト53は、駆動ローラ56と、対向ローラ54とによって、掛け渡されている。中間転写ベルト53は、全ての感光ドラム1に対向し、かつ、図1中の矢印A方向に循環移動する。
【0013】
紙等の記録媒体Sは、画像形成装置本体の下部に設置されるカセット8に収納されている。また、実施例1に係る画像形成装置は、カセット8内に収容される記録媒体Sを1枚ずつ分離して給送する給送ローラ9を備える。さらに、実施例1に係る画像形成装置は、二次転写ローラ52へと記録媒体Sを搬送する搬送ローラとしてのレジストローラ対10を備える。
【0014】
次に、実施例1に係る画像形成装置の画像形成について説明する。まず、帯電ローラ2が、感光ドラム1の表面を一様に帯電する。そして、スキャナユニット3が、画像情報に基づいてレーザ光を感光ドラム1上に照射することにより、感光ドラム1上に静電潜像を形成する。さらに、現像ローラ4が、感光ドラム1上に各色のトナーを供給することにより、静電潜像が可視化され、感光ドラム1上にトナー像が形成される。そして、一次転写ローラ51が、感光ドラム1上に形成されたトナー像を中間転写ベルト53上に一次転写する。ここで、カセット8内に収容される記録媒体Sは、給送ローラ9によって、1枚ずつ分離され、給送される。給送された記録媒体Sは、レジストローラ対10によって、二次転写ローラ52に搬送される。そして、中間転写ベルト53上に一次転写されたトナー像が、二次転写ローラ52によって記録媒体S上に二次転写される。さらに、定着装置6において加熱、加圧されて、トナー像は記録媒体Sに定着される。その後、記録媒体Sは、排出ローラ対11によって、画像形成装置の外部へと排出される。
【0015】
次に、図2を用いて、記録媒体Sを搬送するレジストローラ対10を駆動する駆動伝達装置について説明をする。図2は、レジストローラ対を駆動する駆動伝達装置の外観斜視図である。まず、レジストローラ対10の構成について説明する。実施例1に係る画像形成装置には、駆動源としてのモータの回転駆動力をレジストローラ対10に伝達するために、図2に示すように、歯車列が配置されている。また、レジストローラ対10は、レジストローラ10aと対向ローラ10bから構成される。レジストローラ10aは、画像形成装置の側板61、62に固定された軸受け63、64に回転可能に支持されている。同様に、対向ローラ10bは、画像形成装置の側板61、62に固定された軸受け65、66に回転可能に支持されている。また、軸受け65、66は、レジストローラ10a方向にスライド可能に取り付けられている。また、軸受け65、66は、対向ローラ10bの軸方向端部に設けられた付勢部材67、68により、レジストローラ10a方向に付勢されている。このような構成をとることで、レジストローラ10aが回転すると、レジストローラ10aに当接する対向ローラ10bは、従動回転することとなる。
【0016】
次に、レジストローラ10aと対向ローラ10bを回転駆動するための歯車列の構成について説明する。画像形成装置の側板61の内壁側に駆動源としてのモータ150が設けられている。そして、側板61の外壁側に歯車80、81、82、83が設けられている。駆動伝達上流側の歯車80が有する穴部80aにモータ150の軸150jが圧入結合されている。歯車81は、歯車81が有する穴部81aと側板61の外壁に固定される支持軸81jが嵌合することで、回転可能に支持されている。歯車81は、同軸上において回転可能に支持軸81jに支持される、第1の歯車としての駆動歯車84と、第2の歯車としての従動歯車85と、から構成される。駆動伝達下流側の歯車82は、歯車82が有する穴部82aと側板61の外壁に固定される軸82jが嵌合することで、回転可能に支持されている。また、歯車83は、歯車83が有する穴部83aとレジストローラ10aの軸10jが嵌合することで回転可能に支持されている。なお、穴部83aは、円形状の一部が直線状となる形状である。
【0017】
次に、図3を用いて、実施例1に係る駆動伝達装置の各歯車80、81、82、83の回転方向について説明する。図3は、実施例1に係る歯車列及びレジストローラ対を示す側面図である。なお、説明の便宜上のため、側板61は破線にて透過で示す。図3に示すように、モータ150の回転駆動により、歯車80は矢印B方向に回転する。それにより
、歯車80と駆動歯車84において噛み合っている歯車81は、矢印C方向に回転する。また、歯車81の従動歯車85と噛み合っている歯車82は矢印D方向に回転する。さらに、歯車82と噛み合っている歯車83は矢印E方向に回転する。すなわち、モータ150の回転駆動力は、歯車80と、歯車81と、歯車82とを介して歯車83に伝達される。その結果、歯車83の回転に伴いレジストローラ10aが矢印E方向に回転することとなる。そして、給送ローラ9によってカセット8内から分離、搬送された記録媒体Sをニップしたレジストローラ対10は、中間転写ベルト53に形成されたトナー像と記録媒体Sが二次転写ローラ52の位置で同期するように、モータ150の回転速度を選択的に変更して駆動される。
【0018】
次に、図4及び図5を用いて、歯車列のうちの実施例1の特徴的な構成を有する歯車81について説明する。図4は、実施例1に係る歯車81の分解斜視図である。図5は、図3に示した歯車列の略H−H断面を示した図である。上述のように、モータ150を回転駆動させて回転駆動力を歯車列に伝達させた場合、モータ150の振動が歯車列に伝搬し、画像形成装置が振動することにより騒音が生じることがある。そこで、実施例1においては、モータ150からの振動を歯車間で抑制するため、歯車81に弾性部材としての制振部材を用いる。
【0019】
図4に示すように、駆動歯車84は、駆動歯車84の穴部84aの周辺に嵌合部としての2つの突起84b、84cを有する。この突起84b、84cの側面である駆動伝達面84d、84eが、モータ150からの回転駆動力を従動歯車85に伝達する。駆動伝達面84dと駆動伝達面84eは、支持軸81jの中心軸に対して対称に設けられている。そして、従動歯車85は、穴部85aの周辺に駆動歯車84の突起84b、84cが嵌合される嵌合穴を有する。この嵌合穴の側面であって、駆動伝達面84d、84eに対向する被駆動伝達面85d、85eが、モータ150から駆動歯車84に伝達された回転駆動力を、駆動歯車84の駆動伝達面84d、84eから受ける。ここで、駆動伝達面84dと被駆動伝達面85dとの間には制振部材90が、駆動伝達面84eと被駆動伝達面85eとの間には制振部材91が介在される。すなわち、モータ150の回転駆動力を歯車80から伝達された駆動歯車84が回転することで、面84dと面85dが制振部材90を介して当接し、面84eと面85eが制振部材91を介して当接し、従動歯車85が回転することとなる。そして、回転駆動力は歯車82に伝達される。また、制振部材90、91を介した駆動歯車84の突起84b、84cと従動歯車85の嵌合穴は回転方向でクリアランスを有している。
【0020】
上記のように、駆動歯車84と従動歯車85との間に弾性部材としての制振部材90、91を介することで、回転方向における、駆動歯車84と従動歯車85の接触を回避することができる。その結果、モータ150からの振動の伝搬による騒音の悪化を抑制することができる。しかし、支持軸81jの中心軸方向において、駆動歯車84と従動歯車85が接触する場合があり、そのような場合、モータ150からの振動の伝搬による騒音が悪化してしまう。
【0021】
そこで、実施例1においては、図5に示すように、前述した制振部材90と当接する駆動歯車84の面84dに、傾斜を設ける。さらに、面84dと当接する制振部材90の面90aも、面84bと同様の方向に傾斜を設ける。同様に、面84eと、面84eと当接する制振部材91aの面も傾斜を設ける(不図示)。このような構成をとることで、回転駆動時において、回転駆動力により、制振部材90は、駆動伝達面84dとの当接面において垂直方向(図5中の矢印方向)に力Fを受ける。その力Fにより、制振部材90の面90aにおいて、図5中の矢印G方向に力Fの分力FGが生じる。この力FGによって、従動歯車85は、駆動歯車84と離間する方向に力FGを受けることとなる。また、駆動歯車84と制振部材90、91は固定されておらず、前述の傾斜面において摺動可能とな
っている。したがって、回転駆動時において、従動歯車85は、駆動歯車84と離れる方向に移動するため、支持軸81jの中心軸方向において、駆動歯車84と従動歯車85が接触することはない。また、支持軸81jの側板61と対向する側であって支持軸81jの端部付近には、規制部材としてのE型止め輪92が、支持軸81jに設けられた溝81mに嵌合した状態で設けられている。これにより、従動歯車85の駆動歯車84と離れる方向における移動が規制され、従動歯車85は、E型止め輪92に当接する位置で回転駆動することとなる。
【0022】
以上のように、実施例1においては、モータ150からの回転駆動力を伝達する歯車列内の歯車の1つである歯車81において、駆動歯車84と従動歯車85は、弾性部材としての制振部材90、91を介して接触しており、直接は接触しない。そのため、モータ150の回転駆動により発生する振動の伝搬を抑制しつつ、回転駆動力を伝達することができる。その結果、駆動伝達装置に生じる騒音を低減することができる。
【0023】
また、駆動歯車84において、従動歯車85の嵌合穴に嵌合される2つの突起84b、84cを支持軸81jに対称に設けているため、回転駆動が作用した際に、従動歯車85が支持軸81jに対して倒れることを防止することができる。
【0024】
また、実施例1において、駆動歯車84の回転駆動力を伝達する駆動伝達面84d、84eと、制振部材90、91の面90a、91aが傾斜面である。このような構成をとることで、回転駆動力が、従動歯車85が駆動歯車84に対して支持軸81jの中心軸方向において離れるような力FGを発生させるため、回転駆動力を受けた従動歯車85は、図中矢印G方向に移動する。そのため、支持軸81jの中心軸方向において、駆動歯車84と従動歯車85が直接に接触することはない。すなわち、駆動歯車84と従動歯車85はいずれの方向においても直接に接触することはなく、必ず制振部材90、91を介して接触することとなる。その結果、モータ150で発生した振動の伝搬を抑制することができ、駆動伝達装置の騒音を低減することができる。
【0025】
また、回転駆動力により駆動歯車84と従動歯車85が離れるように支持軸81jの中心軸方向の力FGが作用するため、駆動歯車84は支持軸81jの面81nと当接した位置で回転し、従動歯車85はE型止め輪92に当接した位置で回転する。すなわち、回転駆動力が作用した際の駆動歯車84、及び従動歯車85は、支持軸81jの中心軸方向でガタつきは無く、駆動歯車84、従動歯車85のガタつきによる駆動伝達装置の騒音悪化を抑制できる。
【0026】
さらに、上述したように、安定して高精度な位置で駆動伝達ができるため、他の歯車との噛合い位置、噛合い量、噛合い率も安定化でき、騒音悪化を抑制することができる。
【0027】
なお、歯車81を構成する駆動歯車84、従動歯車85の材質、サイズ、及び制振部材90、91の材質、サイズ、硬度等は、構成毎に必要とされる位置精度、伝達効率、制振効果によって選択されるものであり、限定されるものでは無い。また、歯車81のように制振部材90、91を介して駆動伝達する歯車81は歯車列のいずれの段に設けても効果を得られるものであり、限定されるものではない。しかし、本実施例のように歯車をモータ150の下流1段目に設けることで、モータ150の振動をより早く低減することで駆動伝達装置の騒音低減の効果をより発揮することができる。
【0028】
なお、実施例1においては、駆動歯車84の駆動伝達面84d、84eに傾斜を設けたが、駆動伝達面84d、84eと被駆動伝達面85d、85eの少なくとも一方に、分力FGが働くような傾斜が設けられていれば良い。例えば、駆動伝達面84d、84eに傾斜を設ける代わりに、従動歯車85の被駆動伝達面85d、85eに同様の傾斜を設けて
も良い。この場合においても、駆動歯車84と従動歯車85とが離れる方向に力FGが生じることとなる。また、この場合、従動歯車85と制振部材90,91は固定されておらず、傾斜面において摺動可能とする。このような構成においても、上記と同様の効果を得ることができる。また、例えば、駆動伝達面84d、84eに当接する第1の弾性部材としての第1の制振部材と、被駆動伝達面85d、85eに当接する第2の弾性部材としての第2の制振部材とを有し、それらが互いに傾斜面を有し、その傾斜面で当接するような構成をとっても良い。このような構成をとる場合においても、図5中の矢印G方向に駆動力の分力が生成されるためである。
【0029】
(実施例2)
次に、図6を用いて実施例2について説明する。図6は、実施例2に係る駆動伝達装置における、図3に示した歯車列の略H−H断面を示した図である。なお、実施例2に係る装置の基本構成は、実施例1と同一であるため、重複する部分についての説明は省略する。また、実施例1と同一の機能を有する部材には同一の符号を付して説明する。
【0030】
実施例1に係る駆動伝達装置においては、歯車の駆動伝達面である面84dと制振部材の面90aに傾きを設ける構成について説明をした。これに対して、実施例2に係る駆動伝達装置は、図6に示すように、従動歯車85の被駆動伝達面である面85dに駆動歯車84の駆動伝達面である面84dと同様の傾きを設ける構成を採用した。このような構成をとることに伴って、図6に示すように、制振部材90の形状を傾斜のない立方体とすることができる。その他の構成は実施例1と同様であり、実施例1に係る駆動伝達装置と同様の効果を得ることができる。それに加えて、実施例2においては、制振部材90、91の形状を簡易にすることができる。
【0031】
(実施例3)
次に、図7を用いて、実施例3について説明する。図7は、実施例3に係る駆動伝達装置における、図3に示した歯車列の略H−H断面を示した図である。なお、実施例3に係る装置の基本構成は、実施例1と同一であるため、重複する部分についての説明は省略する。また、実施例1と同一の機能を有する部材には同一の符号を付して説明する。実施例1においては、駆動歯車84の直径が、従動歯車85の直径よりも長いものを用い、駆動歯車84に入力された回転速度を従動歯車85に出力する際に、減速する構成をとった。しかしながら、駆動歯車84に入力された回転速度を従動歯車85に出力する際に、等速または増速させる構成を採用してもよい。そこで、実施例3に係る駆動伝達装置においては、図7に示すように、駆動歯車84の直径が従動歯車85の直径よりも短いものを用い、駆動歯車84に入力された回転速度を従動歯車85に出力する際に、増速させる構成を採用した。その他の構成は実施例1と同様であり、実施例1に係る駆動伝達装置と同様の効果を得ることができる。
【0032】
(実施例4)
次に、図8を用いて、実施例4について説明する。なお、実施例4に係る装置の基本構成は、実施例1と同一であるため、重複する部分についての説明は省略する。また、実施例1と同一の機能を有する部材には同一の符号を付して説明する。実施例1においては、歯車81の駆動歯車84は、支持軸81jの中心軸に対して対称に2つの突起を有する構成をとった。そして、その2つの突起の駆動伝達面84d及び84eが、制振部材90及び91を介して、従動歯車85の嵌合穴の被駆動伝達面85d及び85eに回転駆動力を伝達する。これに対して、実施例4においては、駆動歯車84が有する嵌合部としての突起を1つにする構成をとる。すなわち、従動歯車85の回転駆動力を受ける面についても被駆動伝達面85dの1つとし、制振部材も制振部材90の1つとする構成をとる。そして、従動歯車85の穴部85aと支持軸81jとの嵌合範囲を支持軸81jの周方向で拡大した。このような構成をとることにより、嵌合部としての突起が一つであっても、支持
軸81jに対する従動歯車85の倒れを防止することができる。その結果、実施例4においては、実施例1と同等の効果を得ることができると共に、制振部材の数を減らすことで、より低コストで構成することができる。
【符号の説明】
【0033】
81j…支持軸 84…駆動歯車 85…従動歯車 90、91…制振部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動伝達上流側の歯車と噛み合う第1の歯車と、
駆動伝達下流側の歯車と噛み合う第2の歯車と、
前記第1の歯車と前記第2の歯車を同軸上において回転可能に支持する支持軸と、を有し、
前記第1の歯車は、前記第2の歯車に駆動力を伝達するための駆動伝達面を有し、
前記第2の歯車は、前記第1の歯車からの前記駆動力を受けるための被駆動伝達面を有し、
前記駆動伝達面と前記被駆動伝達面との間に弾性部材が介在する駆動伝達装置において、
前記駆動力の分力であって、前記支持軸の中心軸方向において前記第1の歯車と前記第2の歯車とを離間する方向の力が、前記第2の歯車に働くように、前記駆動伝達面と前記被駆動伝達面の少なくともいずれか一方が傾斜していることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
前記傾斜する面と前記弾性部材との当接面において、前記傾斜する面と前記弾性部材とは固定されておらず摺動可能であることを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項3】
駆動伝達上流側の歯車と噛み合う第1の歯車と、
駆動伝達下流側の歯車と噛み合う第2の歯車と、
前記第1の歯車と前記第2の歯車を同軸上において回転可能に支持する支持軸と、を有し、
前記第1の歯車は、前記第2の歯車に駆動力を伝達するための駆動伝達面を有し、
前記第2の歯車は、前記第1の歯車からの前記駆動力を受けるための被駆動伝達面を有し、
前記駆動伝達面と前記被駆動伝達面との間に介在し、互いに当接する、前記駆動伝達面に当接する第1の弾性部材と、前記被駆動伝達面に当接する第2の弾性部材と、を有する駆動伝達装置において、
前記駆動力の分力であって、前記支持軸の中心軸方向において前記第1の歯車と前記第2の歯車とを離間する方向の力が、前記第2の歯車に働くように、前記第1の弾性部材と前記第2の弾性部材との当接面が傾斜していることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項4】
前記中心軸方向において、前記第1の歯車と前記第2の歯車とが離間する方向へ移動することを前記支持軸の端部付近において規制する規制部材を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動伝達装置。
【請求項5】
記録媒体を搬送する搬送ローラを有し、
前記搬送ローラを駆動するために、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の駆動伝達装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−57339(P2013−57339A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194943(P2011−194943)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】