駆動伝達装置及びこれを備えた画像形成装置
【課題】遊星歯車機構の各歯車をはすば歯車にして噛合い率の向上、歯噛合い周期の速度変動の低減および歯噛合い騒音の低減を図り、かつ、経時に亘り動力損失および発熱磨耗を抑えることができる駆動伝達装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】各キャリア16、19の太陽歯車と対向する側面の回転中心部に円筒形状の凹部16a,19aを設け、各太陽歯車12,17回転中心に、先端球面形状の突起部12a,17aを設ける。各突起部12a,17aのスラスト方向の長さは、凹部16a,19aの深さをよりも長くなっており、各突起部12a,17aの一部が、凹部16a,19aの内部に位置にしている。そして、各凹部16a,19aと、各突起部12a,17aとの隙間にグリースを充填し、突起部12a,17aの周囲にグリース保持部H1,H2を形成した。
【解決手段】各キャリア16、19の太陽歯車と対向する側面の回転中心部に円筒形状の凹部16a,19aを設け、各太陽歯車12,17回転中心に、先端球面形状の突起部12a,17aを設ける。各突起部12a,17aのスラスト方向の長さは、凹部16a,19aの深さをよりも長くなっており、各突起部12a,17aの一部が、凹部16a,19aの内部に位置にしている。そして、各凹部16a,19aと、各突起部12a,17aとの隙間にグリースを充填し、突起部12a,17aの周囲にグリース保持部H1,H2を形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動伝達装置及びこれを備えたプリンタ、ファクシミリ、複写機などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感光体等の像担持体を備えた画像形成装置にあっては、像担持体の回転に従って、像担持体に対して帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程等を施すことにより画像形成を行うようになっている。かかる画像形成装置においては、像担持体を回転駆動するためのモータ等の駆動源が設けられているが、駆動源の回転数は一般に、像担持体の回転に求められる回転数よりも大きい。そこで、遊星歯車減速機構を用いて駆動源の回転速度を減速して像担持体に伝達する駆動伝達装置が用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
遊星歯車減速機構は、駆動源の回転駆動力を受けて回転する太陽歯車と、太陽歯車と同軸上で配設され、装置に回転不能に固定された固定内歯歯車と、固定内歯歯車内に円周方向で等間隔に配設され太陽歯車と固定内歯歯車とに噛み合う複数の遊星歯車と、遊星歯車を回転可能に支持するとともに太陽歯車及び固定内歯歯車と同軸上で回転可能なキャリアとを備え、キャリアから、減速された回転駆動力が出力される。
【0004】
また、噛合い率の向上、歯噛合い周期の速度変動の低減、歯噛合い騒音の低減が図れるため、固定内歯歯車と、太陽歯車と、これらに噛み合う遊星歯車とに、はすば歯車が用いられている。
【0005】
はすば歯車を用いた遊星歯車減速機構は、はすば歯車の歯筋が回転軸に対して傾斜しているので、太陽歯車の回転に伴って、太陽歯車と遊星歯車との間、固定内歯歯車と遊星歯車との間にそれぞれ回転軸方向(スラスト方向)に荷重(スラスト荷重)が発生する。遊星歯車は、太陽歯車との噛み合いによるスラスト荷重の方向と、固定内歯歯車との噛み合いによるスラスト荷重の方向とが、逆となるため、互いに打ち消し合い、スラスト方向へ変位することはない。固定内歯歯車は、回転していないので、遊星歯車との噛み合いによるスラスト荷重によりスラスト方向へ移動して、スラスト方向に隣り合う部材と当接しても、回転磨耗などが発生せず、動力損失、発熱磨耗の不具合が生じることはない。
【0006】
しかし、太陽歯車が、遊星歯車との噛み合いによりスラスト方向へ変位して、太陽歯車とスラスト方向に対向する当接部材としての相手部材に太陽歯車が当接した場合、太陽歯車は、回転しているため、相手部材と回転しながら当接することになる。その結果、太陽歯車と相手部材との当接部では回転摩擦による動力損失、発熱磨耗などの不具合が発生する。
【0007】
特許文献2には、太陽歯車を、軸受を介して固定部材に支持することにより、太陽歯車をスラスト方向に変位しないようにした遊星歯車減速機構が記載されている。また、特許文献3には、太陽歯車の相手部材との当接箇所を、球面状にした遊星歯車減速機構が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載の遊星歯車減速機構においては、太陽歯車の相手部材との当接を防止することができるが、太陽歯車を介して軸受にスラスト荷重が加わった場合でも、動力損失しないような軸受を用いる必要があり、コスト高に繋がるというおそれがあった。
【0009】
また、特許文献3に記載の遊星歯車減速機構においては、相手部材との接触面積を減らすことができ、相手部材との当接時における動力損失、発熱磨耗を抑えることができるが、経時使用で太陽歯車の球面状の部分が磨耗していき、経時にわたり動力損失、発熱磨耗を抑えることができなかった。
【0010】
そこで、本発明者らは、太陽歯車の球面状の部分にグリースを塗布して実験を行なったが、太陽歯車の回転による遠心力でグリースが飛散して、グリースによる摩擦低減効果を十分に得られなかった。
【0011】
本発明は以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、遊星歯車機構の各歯車をはすば歯車にして噛合い率の向上、歯噛合い周期の速度変動の低減および歯噛合い騒音の低減を図り、かつ、経時に亘り動力損失および発熱磨耗を抑えることができる駆動伝達装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、固定内歯歯車と、前記固定内歯歯車と同軸上で配設され駆動源からの回転駆動力を受けて回転する太陽歯車と、前記固定内歯歯車内に円周方向で配設され前記太陽歯車と前記固定内歯歯車と噛み合う複数の遊星歯車と、前記遊星歯車を回転自在に支持するとともに前記太陽歯車や前記内歯歯車と同軸上で回転自在なキャリアとを備え前記固定内歯歯車、前記太陽歯車および前記遊星歯車が、はすば歯車からなる遊星歯車機構を備えた駆動伝達装置において、前記太陽歯車が前記遊星歯車との噛み合いでスラスト方向に変位したときに前記太陽歯車が当接する当接部材と前記太陽歯車との当接箇所に隣接して、グリースを保持するグリース保持部を形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、グリースが保持されたグリース保持部を当接部材と太陽歯車との当接箇所に隣接して設けることで、当接箇所にグリース保持部からグリースを供給することができ、経時にわたり当接部材と太陽歯車との当接箇所の摩擦抵抗を低減させることができる。よって、経時にわたり太陽歯車の磨耗を抑制することができ、当接部材と太陽歯車との当接時における動力損失、発熱磨耗を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係るプリンタの一例における画像形成部全体の概略構成図。
【図2】感光体ドラム駆動する遊星歯車減速機構の説明図。
【図3】1段目の遊星歯車機構の横断面図。
【図4】2段目の遊星歯車機構の横断面図。
【図5】プロセスカートリッジ内の感光体ドラムを支持する機構について説明する図。
【図6】各歯車の噛み合いによるスラスト荷重の方向について説明する図。
【図7】従来の遊星歯車減速機構の説明図。
【図8】実施例1の構成を示す要部構成図。
【図9】実施例1の変形例を示す要部構成図。
【図10】実施例2の構成を示す要部構成図。
【図11】図10の点線で囲んだL部分の拡大構成図。
【図12】実施例2の第1変形例を示す要部構成図。
【図13】実施例2の第2変形例を示す要部構成図。
【図14】実施例3における第二太陽歯車、第一キャリア、第一遊星歯車からなる移動体の斜視図。
【図15】同移動体を、第一太陽歯車から見た正面図。
【図16】同移動体の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、画像形成装置である電子写真方式のカラー複写機(以下、「複写機」という。)に適用した一実施形態について説明する。なお、本実施形態における複写機は、いわゆるタンデム式の画像形成装置であって、乾式二成分現像剤を用いた乾式二成分現像方式を採用したものである。
【0016】
図1は、本実施形態に係る複写機における画像形成部全体の概略構成図である。
この複写機は、図示しない画像読取部から画像情報である画像データを受け取って画像形成処理を行う。この複写機には、図に示すように、イエロー(以下、「Y」と省略する。)、マゼンタ(以下、「M」と省略する。)、シアン(以下、「C」と省略する。)、ブラック(以下、「Bk」と省略する。)の各色用の4個の回転体としての潜像担持体である感光体ドラム1Y,1M,1C,1Bkが並設されている。これら感光体ドラム1Y,1M,1C,1Bkは、駆動ローラを含む回転可能な複数のローラに支持された無端ベルト状の中間転写ベルト5に接触するように、そのベルト移動方向に沿って並んで配置されている。また、感光体ドラム1Y,1M,1C,1Bkの周りには、それぞれ、帯電器2Y,2M,2C,2Bk、各色対応の現像装置9Y,9M,9C,9Bk、クリーニング装置4Y,4M,4C,4Bk、除電ランプ3Y,3M,3C,3Bk等の電子写真プロセス用部材がプロセス順に配設されている。また、感光体ドラム1、帯電器2、除電ランプ3、クリーニング装置4及び現像装置9は、プリンタ本体に対して着脱可能なプロセスカートリッジとして一体形成されている。
【0017】
本実施形態に係る複写機でフルカラー画像を形成する場合、まず、図1に示すように、後述する感光体駆動装置により、感光体ドラム1Yを図中矢印の方向に回転駆動しながら帯電器2Yで一様帯電した後、図示しない光書込装置からの光ビームLYを照射して感光体ドラム1Y上にY静電潜像を形成する。このY静電潜像は、現像装置9Yにより、現像剤中のYトナーにより現像される。現像時には、現像ローラと感光体ドラム1Yとの間に所定の現像バイアスが印加され、現像ローラ上のYトナーは、感光体ドラム1Y上のY静電潜像部分に静電吸着する。
【0018】
このように現像されて形成されたYトナー像は、感光体ドラム1Yの回転に伴い、感光体ドラム1Yと中間転写ベルト5とが接触する1次転写位置に搬送される。この1次転写位置において、中間転写ベルト5の裏面には、1次転写ローラ6Yにより所定のバイアス電圧が印加される。そして、このバイアス印加によって発生した1次転写電界により、感光体ドラム1Y上のYトナー像を中間転写ベルト5側に引き寄せ、中間転写ベルト5上に1次転写する。以下、同様にして、Mトナー像、Cトナー像、Bkトナー像も、中間転写ベルト5上のYトナー像に順次重ね合うように1次転写される。
【0019】
このように、中間転写ベルト5上に4色重なり合ったトナー像は、中間転写ベルト5の回転に伴い、2次転写ローラ7と対向する2次転写位置に搬送される。また、この2次転写位置には、図示しないレジストローラにより所定のタイミングで転写紙が搬送される。そして、この2次転写位置において、2次転写ローラ7により転写紙の裏面に所定のバイアス電圧が印加され、そのバイアス印加により発生した2次転写電界及び2次転写位置での当接圧により、中間転写ベルト5上のトナー像が転写紙上に一括して2次転写される。その後、トナー像が2次転写された転写紙は、定着ローラ対8により定着処理がなされた後に装置外に排出される。
【0020】
図2は、感光体ドラム1に駆動源であるモータ60からの回転駆動力を伝達する駆動伝達装置の説明図であり、図3は、1段目の遊星歯車機構の横断面図、図4は、2段目の遊星歯車機構の横断面図である。
図2に示す駆動伝達装置に用いられる遊星歯車減速機構は、2KH型2段構成の遊星歯車機構が用いられている。また、中間転写ベルト5の駆動ローラ、定着ローラ等の駆動伝達装置にも遊星歯車減速機構を用いることができる。
【0021】
高精度に一定速度で回転するべき感光体ドラム1や中間転写ベルト5に速度変動が生じると出力された画像にジッタや濃度ムラが生じる。ある周波数で速度変動が継続すると画像全体に周期濃度ムラが生じ、縞模様のバンディングとして目視される。感光体ドラム1の速度変動は書き込み系の露光ラインの副走査位置ずれを発生させる。同時に、中間転写ベルト5への1次転写時の副走査位置ずれを発生させる。中間転写ベルト5の速度変動は、1次転写時と2次転写時の副走査位置ずれを発生させる。この速度変動に起因したバンディングにより画像品質が著しく低下してしまう。
【0022】
このような高精度駆動が要求される感光体ドラム1や中間転写ベルト5の駆動伝達部には、溶融樹脂を射出することに成形されたプラスチックギヤが利用されている。プラスチックギヤは金属ギヤに比べて、自己潤滑性があり、使用時の騒音が低く、軽量化を図ることができ、耐腐食性が高く、量産性が高い点で優れている。一方、耐久性(耐磨耗性)、高剛性、高精度といった点が劣っている。そこで、本実施形態においては、プラスチックギヤを用いた駆動伝達部の耐久性、剛性を高くするために、遊星歯車減速機構を用いた。すなわち、遊星歯車機構は、出力軸の回転負荷を複数の遊星歯車が分散して伝達するため、駆動伝達部の耐久性、剛性を高くすることができる。また、駆動伝達装置として、遊星歯車機構を採用することにより、歯車輪列の歯車装置よりも歯車の小型化が実現できる。
【0023】
また、画像形成装置において、一般的な直径30〜100mmの感光体ドラムの駆動伝達装置として、遊星歯車を採用する場合、減速比が1/20程度が要求される。このような大きな減速比を得ることができるため、本実施形態の駆動伝達装置として2KH型2段構成の遊星歯車機を用いた。
【0024】
モータ60の回転軸M1に設けられている第一太陽歯車12を備え、この第一太陽歯車12及び内歯歯車固定フランジ24に固定された内歯歯車14に噛み合う1段目の遊星歯車である第一遊星歯車15が1段目のキャリアである第一キャリア16により支持されて第一太陽歯車12の外周を公転するようになっている。第一遊星歯車15は、回転バランスとトルク分担のために同心状に3箇所またはそれ以上の複数個が配置される。本実施形態では、図3に示すように、周方向で3等分された位置にそれぞれ第一遊星歯車15が配置されている。
【0025】
第一遊星歯車15は、第一太陽歯車12と内歯歯車14との噛み合いにより、自転及び公転回転し、第一遊星歯車15を支持する第一キャリア16は、第一太陽歯車12の回転に対し減速回転し、1段目の減速比が獲得される。
【0026】
次に、この第一キャリア16の回転中心に設けられた2段目の太陽歯車である第二太陽歯車17が2段目減速機構の入力となる。なお、第一キャリア16に回転支持部はなく、浮動回転を行うようになっている。
【0027】
同様に、第二太陽歯車17には、2段目まで一体で形成された内歯歯車14に噛み合う2段目の遊星歯車である第二遊星歯車18が、2段目のキャリアである第二キャリア19により支持されて第二太陽歯車17の外周を公転するようになっている。第二遊星歯車18の個数は、本実施形態では、図4に示すように、周方向で4等分された位置にそれぞれ第二遊星歯車18が配置されている。最終段に相当する第二キャリア19には、出力部が設けられており、円筒状の出力軸である円筒軸20の内面にスプライン状の内歯が形成されている。
【0028】
一方、後述するようにプロセスカートリッジを貫通して感光体ドラムを支持するドラム軸70には、円筒軸20のスプライン状の内歯に噛み合うように、スプライン状の外歯が形成されており、出力部として用いられるスプライン部21が設けられている。
【0029】
ここで、2KH型遊星歯車機構に用いられる一つのユニットは、太陽歯車(sun gear)、遊星歯車(planetary gear)、遊星歯車の公転運動を支持する遊星キャリア(planetary carrier)、内歯歯車(outer gear)の四点の部品から構成されている。
【0030】
太陽歯車の回転、遊星歯車の公転(キャリアの回転)、内歯歯車の回転である3つの要素のうち、一つを固定、一つを入力、一つを出力に接続する。それぞれ、どれを入出力・固定に割り当てるかによって、一つのユニットで複数の減速比や回転方向の切替えが可能である。
【0031】
本実施形態において対象とする2KH型の2段構造は、複合遊星歯車機構(2個以上の2KH型)に分類され、2個以上の2KH型があり、それぞれ3つの要素のうち、1つの要素同士を結合し、残りの1つずつを固定し、残り2つを入力軸または出力軸とする機構である。
【0032】
本実施形態においては、内歯歯車を固定するタイプのプラネタリ型であり、太陽歯車を入力軸、キャリアを出力軸として、入力軸と出力軸の回転方向を同方向としている。
【0033】
具体的には、モータ60の駆動力は、モータ軸M1から第一太陽歯車12へ伝達され、第一太陽歯車12が回転駆動する。この第一太陽歯車12の回転により、第一太陽歯車12に噛み合う3個の第一遊星歯車15に駆動力が伝達され、これら第一遊星歯車15が第一太陽歯車12のまわりを公転しながら自転する。これら第一遊星歯車15の公転により、駆動力が減速されて第一キャリア16に伝達され、第一キャリア16が回転し、第一キャリア16に設けられた第二太陽歯車17に伝達され、第二太陽歯車17が回転する。そして、第二太陽歯車17と噛み合う4個の第二遊星歯車18に駆動力が伝達され、これら第二遊星歯車18が、第二太陽歯車17のまわりを公転しながら自転する。これら第二遊星歯車18の公転により、駆動力が減速されて第二キャリア19に伝達され、第二キャリアに設けられた円筒軸20、ドラム軸70を介して、駆動力が、感光体ドラムに伝達され、感光体ドラムが所定の回転数で回転する。
【0034】
減速比に関しては、太陽歯車の歯数をZa、遊星歯車の歯数をZb、内歯車の歯数をZcとした場合に、プラネタリ型の一段段構成の遊星歯車機構の減速比は、数1で表される。なお、式中の添え字1,2は1段目、2段目を意味している。
【0035】
[数1]
減速比=Za1/(Za1+Zc1)
【0036】
2段構成の遊星歯車機構の減速比は、1段目の減速比と2段目の減速比の積になる。本実施形態の遊星歯車機構は、1段目も2段目もプラネタリ型タイプであるので、減速比は、数2で表される。
【0037】
[数2]
減速比=Za1/(Za1+Zc1)×Za2/(Za2+Zc2)
【0038】
上述したモータ60の回転軸M1は、2個の軸受(不図示)を介してモータ固定フランジ13により支持されている。
【0039】
モータ60の回転軸M1を支持することでDCブラシレスモータの回転子であるアウター型ロータを支持することになる。モータ固定フランジ13には、モータ60の図示しない固定子鉄心やモータ駆動回路基板等も設置されている。
【0040】
モータ60の回転軸M1には第一太陽歯車12が歯切りで形成されており、第一太陽歯車12の軸と内歯歯車14の軸との同軸精度を確保するために、内歯歯車14とモータ固定フランジ13はインローによる嵌合で位置決めされて、さらにモータ固定フランジ13は内歯歯車固定フランジ24とインローによる嵌合で位置決めされている。
【0041】
内歯歯車14におけるモータ固定フランジ13と反対側の端部には、エンドキャップ22が固定されている。エンドキャップ22は、遊星減速機構を駆動側板127に組付ける際に、内歯歯車14内に設置されている第一遊星歯車15、第二遊星歯車18、第一キャリア16、第二キャリア19、及び、円筒軸20が内歯歯車14から脱落するのを防止するための部材として用いられている。エンドキャップ22と第二キャリア19の円筒軸20との間には十分なクリアランスがあり、エンドキャップ22は第二キャリア19を回転支持しておらず、第二キャリア19が浮動回転を行うようになっている。
【0042】
次に、装置本体に対して着脱可能に設けられたプロセスカートリッジ内の感光体ドラムを支持する機構について、図5を用いて説明する。
【0043】
なお、各感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkは、同一構成の感光体ドラム駆動装置により回転駆動されているので、以下、感光体ドラム1Yの感光体ドラム駆動装置について説明する。解説しないが、中間転写ベルト5の駆動ローラ、定着ローラ等にも適用可能である。
【0044】
図に示すように、感光ドラム1Yの軸方向の端部には、後ドラムフランジ115と前ドラムフランジ114が固定されている。その前後のドラムフランジ114,115に装置本体に設けられたドラム軸70が貫通することで、前後のドラムフランジ114,115は、ドラム軸70に支持されている。後ドラムフランジ115は、ドラム軸70とセレーションカップリング116で連結され、ドラム軸70が回転すると感光体ドラム1Yが同期して回転する。セレーションカップリング116は、ドラム軸側に雄形状、後ドラムフランジ115側に雌形状が設けられ、ドラム軸前側からテーパー形状となっている。
【0045】
感光体ドラム1Yを支持するユニットケース117内には、先の図1に示した感光体ドラム1Yと帯電器2Y、現像装置9Y、クリーニング装置4Y、図示しない除電ランプ等が収容されている。図5に示すように、ユニットケース117の後ろ側(図中右側)は、ドラム軸70にカラー124を軸方向で間に挟んで固定された2つの軸受123の内の一方の軸受123aで支持される。また、後ドラムフランジ115もその軸受123aで支持している。このように、ユニットケース117の後ろ側と、後ドラムフランジ115とを、軸受123aで支持することで、感光体ドラム1Yとユニットケース117が位置だしされる。また、前側(図中左側)は前ドラムフランジ114のボス部128がユニットケース117と嵌合し、回転自在になっている。
【0046】
ドラム軸70には、さらに本体後側板119と嵌合する部分に前記2つの軸受123の内の他方の軸受123bが設けられ、本体後側板119と位置出しされている。本体前側板110には、感光体ドラムユニットを着脱するための切り欠き孔が設けられ、そこには面板111が固定されている。この面板111にドラム軸70の前側端部が軸受112を介して回転自在に支持されている。
【0047】
プロセスカートリッジは面板111を取り外すことによって、着脱できるようになる。プロセスカートリッジが装着された時は、面板111に固定された軸受112と前ドラムフランジ114のボス部128の間に設けられた加圧バネ113によって、感光体ドラム1Yは、ドラム軸方向に加圧されて、テーパー状のセレーションカップリング116の部分で回転方向とスラスト方向が位置決めされる。プロセスカートリッジは、ユニットケース117の後ろ側に設けられた2本の位置決めピン118が本体後側板119の孔と嵌合して、回転方向の位置が決まる。
【0048】
次に、遊星歯車機構の取り付けについて説明する。
本体後側板119にはスタッド126を介して駆動側板127が取り付けられている。この駆動側板127に遊星歯車機構を支持する内歯歯車固定フランジ24を固定して組み付けられる。遊星歯車機構の位置だしは、駆動側板127に設けた孔に内歯歯車14を嵌合して行う。また、遊星歯車機構の取り付けは、駆動側板127を内歯歯車固定フランジ24を兼ねた構成で行っても良い。このように、遊星歯車機構を駆動側板127に取り付けることによって、内歯歯車14の出力側をフリーにして変形しやすく構成している。
【0049】
内歯歯車14は、内歯歯車固定フランジ24に対して、運転時トルクで回転しない様にすること、噛み合い振動やモータ振動が伝播して高次の振動が起こらない様に確実に固定されることが必要である(内歯歯車14が振動すると、バンディング現象が発生しやすいため)。また、本実施形態の遊星歯車機構においては、各歯車(内歯歯車14、各太陽歯車12、17、各遊星歯車15、18)は、はすば歯車を用いている。はすば歯車にすることで、噛み合い率が増加して分担荷重が減少するとともに、順次なめらかな移動が行われるという利点が得られる。
【0050】
しかし、各歯車(内歯歯車14、各太陽歯車12、17、各遊星歯車15、18)をはすば歯車とした場合、スラスト方向(回転軸方向)に力(スラスト荷重)が発生してしまう。
図6は、本実施形態の遊星歯車機構の各歯車に働くスラスト荷重の方向を示す図である。
図6は、各歯車の歯筋方向が、第一および第二太陽歯車12,17は右ねじれ、第一および第二遊星歯車15,18は左ねじれ、1段目および2段目に共通の内歯歯車14は右ねじれとし、入力軸(モータ)の回転方向が出力(ドラム軸)側からみてCCW(反時計回り)であった場合の各噛合いで発生するスラスト荷重の方向を示している。
【0051】
図6に示すように、第一太陽歯車12と第一遊星歯車15の噛合いによって、第一太陽歯車12には矢印Aの方向にスラスト荷重が発生し、第一遊星歯車15には矢印Bの方向にスラスト荷重が発生する。また、第一遊星歯車15と内歯歯車14との噛合いによって、第一遊星歯車15には矢印Cの方向にスラスト荷重が発生し、内歯歯車14には矢印Dの方向にスラスト荷重が発生する。2段目においても同様に、第二太陽歯車17には、矢印Eの方向にスラスト荷重が発生、第二遊星歯車18には、矢印Fと矢印G方向にスラスト荷重が発生し、内歯歯車14には、矢印H方向にスラスト荷重が発生する。
【0052】
第一太陽歯車12は、モータ軸M1に直接歯切りして形成されており、モータ60はモータ固定フランジ13に固定されていることから、第一太陽歯車12に矢印A方向にスラスト荷重が発生しても、第一太陽歯車12は、矢印A方向へ移動することはない。
【0053】
また、第一太陽歯車12との噛み合いにより第一遊星歯車15に発生するスライス荷重の方向と、内歯歯車14との噛み合いにより第一遊星歯車15に発生するスラスト荷重の方向は、逆方向である。また、第一太陽歯車12との噛み合いにより第一遊星歯車15に発生するスライス荷重の大きさと、内歯歯車14との噛み合いにより第一遊星歯車15に発生するスラスト荷重の大きさは、ほぼ同じである。よって、第一遊星歯車15に発生するスラスト荷重は、互いに打ち消し合って、第一遊星歯車15に加わるスラスト荷重により第一遊星歯車15は、スラスト方向へ移動することはない。
【0054】
第二遊星歯車18も同様に、第二太陽歯車17との噛み合いにより発生するスラスト荷重と、内歯歯車14との噛み合いにより発生するスラスト荷重とが互いに打ち消し合い、第二遊星歯車18に加わるスラスト荷重により第二遊星歯車18は、スラスト方向へ移動することはない。
【0055】
内歯歯車14には、第一、第二遊星歯車15、18との噛み合いによりそれぞれ、モータ60側へのスラスト荷重が発生する。しかし、内歯歯車14は、内歯歯車固定フランジ24に固定されているため、スラスト移動は発生しない。
【0056】
最後に、第二太陽歯車17は、第二遊星歯車18との噛み合いにより、矢印E方向へスラスト荷重が発生する。第二太陽歯車17は、第一キャリア16に固定されている。第一キャリア16には回転支持部はなく、浮動回転を行うようになっている。その結果、第二遊星歯車18との噛み合いにより第二太陽歯車17に発生したスラスト荷重により、第二太陽歯車17(実際は、第二太陽歯車17と第一キャリア16と第一遊星歯車15と備えた一体物)が、出力側へ移動し、第二太陽歯車17の端部が、第二キャリア19の側面に当接してしまう。第二キャリア19は、第二太陽歯車17により、出力側へ押される。しかし、第二キャリア19は、円筒軸20を介して接続されている筐体側板に軸方向に移動不能に固定されたドラム軸70によりスラスト方向への移動が規制されているので、第二キャリア19は、第二太陽歯車17により、出力側へ押されても出力側へは移動することはない。
【0057】
このように、各歯車をはすば歯車にした場合、回転伝達時に第二太陽歯車17が、第二キャリア19の側面に当接してしまう。第二キャリア19は、第二太陽歯車17よりも減速して回転しているため、第二キャリア19と第二太陽歯車17との間には、速度差が生じている。よって、第二太陽歯車17と第二キャリア19との当接部では回転摩擦による動力損失、発熱磨耗などの不具合が発生してしまう。
【0058】
また、クリーニング装置4としてブレードと呼ばれる板状部材を感光体ドラム1表面に圧接する方式が採用されている場合、定期的に感光体ドラム1を逆方向に回転させる処理を行う。この場合は、入力軸(モータ)の回転方向が出力(ドラム軸)側からみてCW(時計回り)となり、各歯車に発生するスラスト荷重の方向が、図6に示す場合と逆になる。その結果、この場合は、第二太陽歯車17と第一キャリア16と第一遊星歯車15と備えた一体物(以下、移動体Tという)が、モータ側(入力側)へ移動して、第一キャリア16が、第一太陽歯車12と当接してしまう。よって、このような感光体ドラム1を逆方向に回転させる処理を行う場合は、第一太陽歯車12と第一キャリア16との間で発熱磨耗が発生してしまう。
【0059】
なお、定期的に感光体ドラム1を逆方向に回転させる処理を行う理由は以下の通りである。すなわち、感光体ドラム1上のトナーを効果的に取り出すために、感光体ドラム回転方向に対してカウンタとなるようにクリーニング装置4のブレードが圧接されており、ブレードがめくれる不具合が発生する場合がある。この不具合を防止するために、定期的に感光体ドラム1を逆方向に回転させ、ブレードのめくれを解消しているのである。また、中間転写ベルト5にも同様のクリーニング装置を採用した場合は、同様に逆方向の回転動作が定期的に行われる。
【0060】
そこで、従来においては、図7に示すように、第二太陽歯車17の回転中心部を歯車端部に対して1mm程度突出させ、その先端部を球面形状とする突起部17aを設けて、第二キャリア19側面部との接触面積を小さくし、回転抵抗を下げることで、接触回転摩擦による動力損失を低減している。また、同様に第一太陽歯車12においても突出部12aを設けて、逆回転時の第一キャリア16側面部との接触面積を小さくし、接触回転摩擦による動力損失を低減している。しかし、動力伝達で回転しながらスラスト力で接触するため、突出部12a,17aの先端部分は磨耗が発生しやすい。その結果、経時使用により突出部12a,17a先端部分のキャリアとの接触面積が、徐々に大きくなり、経時にわたり回転抵抗を良好に下げることができなかった。そこで、磨耗抑制として突出部12a,17aの先端部分にグリース塗布を行ったが、太陽歯車およびキャリアの回転による遠心力によってグリースが飛散しやすく当接部のグリース枯渇が発生し、十分な効果を得ることができなかった。
【0061】
そこで、本実施形態においては、太陽歯車と太陽歯車が当接する当接部材としてのキャリアとの当接部に隣接してグリースを保持するグリース保持部を設け、当接部のグリース枯渇を抑制するようにした。以下、実施例を用いて、具体的に説明する。
【0062】
[実施例1]
図8は、実施例1の構成を示す要部構成図である。
図8に示すように、実施例1においては、第一キャリア16の第一太陽歯車12と対向する側面の回転中心部に円筒形状の第一凹部16aを設け、第一太陽歯車12回転中心に、先端球面形状の第一突起部12aを設けている。第一突起部12aのスラスト方向の長さは、第一凹部16aの深さをよりも長くなっており、第一突起部12aの一部が、第一凹部16aの内部に位置にしている。そして、第一凹部16aと、第一突起部12aとの隙間にグリースが充填されて、第一突起部12aの周囲に第一グリース保持部H1が形成される。
【0063】
また、第二キャリア19の第二太陽歯車17と対向する側面の回転中心部にも円筒形状の第二凹部19aが形成されており、第二太陽歯車17回転中心に、先端球面形状の第二突起部17aが形成されている。第二突起部17aのスラスト方向の長さは、第二凹部19aの深さをよりも長くなっており、第二突起部17aの一部が、第二凹部19aの内部に位置にしている。そして、第二凹部19aと、第二突起部17aとの隙間にグリースが充填されて、第二突起部17aの周囲に第二グリース保持部H2が形成される。
【0064】
モータ軸M1が正回転して、第二遊星歯車18と第二太陽歯車17との噛み合いにより第二太陽歯車17に発生した出力軸方向へのスラスト荷重により、移動体Tが、出力側へ移動し、第二太陽歯車17の第二突起部17aの先端が、第二キャリア19の第二凹部19aの回転中心部に当接する。このとき、第二キャリア19と第二太陽歯車17との当接箇所Q2の周囲には、第二グリース保持部H2が形成されており、第二キャリア19と第二太陽歯車17との当接箇所Q2の周囲は、グリースで満たされている。よって、第二キャリア19と第二太陽歯車17との当接箇所Q2のグリースが枯渇することがなく、第二キャリア19と第二太陽歯車17との当接箇所Q2の摩擦抵抗を経時にわたり抑制することができる。これにより、経時にわたり、接触回転摩擦による動力損失を低減することができる。
【0065】
また、モータ軸M1が逆回転して、第二遊星歯車18と第二太陽歯車17との噛み合いにより第二太陽歯車17に発生した入力軸方向へのスラスト荷重により、移動体Tが、入力軸側へ移動し、第一太陽歯車12の第一突起部12aの先端が、第一キャリア16凹部16aの回転中心部に当接する。このときも、第一キャリア16と第一太陽歯車12との当接箇所Q1の周囲は、第一グリース保持部H1で保持されたグリースで満たされているので、第一キャリア16と第一太陽歯車12との当接箇所Q1のグリースが枯渇することがない。第一キャリア16と第一太陽歯車12との当接箇所Q1の摩擦抵抗を経時にわたり抑制することができる。これにより、経時にわたり、接触回転摩擦による動力損失を低減することができる。
【0066】
各グリース保持部H1,H2の保持されるグリースは、粘性が高いため、グリース保持部から漏れ出すことはほとんどない。逆にグリース保持部を開放しておくことで、キャリアと太陽歯車との当接箇所の摩擦による発熱を逃がすことができる。また、図9に示すように、シール部材16bを設けて、第一グリース保持部H1を密封してもよい。かかる構成とすることで、第一グリース保持部H1に充填されたグリースが、第一グリース保持部H1から飛散することを防止することができ、第一グリース保持部H1のグリース減少による第一キャリア16と第一太陽歯車12との当接箇所のグリース枯渇を経時にわたり良好に抑制することができる。図示してないが、第二グリース保持部H2においても、シール部材で密封してもよい。
【0067】
また、上述では、第二太陽歯車17にスラスト荷重が発生すると、移動体Tが動いて、太陽歯車の突起部がキャリアの凹部に当接する構成となっているが、始めから太陽歯車の突起部をキャリアの凹部に当接する構成でもよい。
【0068】
また、この実施例1では、キャリアに凹部を設け、太陽歯車の回転中心部に突起部を設けているが、太陽歯車の回転中心部に凹部を設け、キャリアの回転中心部に突起部を設けた構成でも同様な効果を得ることができる。キャリアに凹部を設けるか、太陽歯車に凹部を設けるかは、製造や加工のしやすさなどにより適宜決めればよい。
【0069】
[実施例2]
図10は、実施例2の構成を示す要部構成図で、図11は、図10の点線で囲んだL部分の拡大構成図である。
図10、図11に示すように、実施例2においては、第一太陽歯車12回転中心に設けられた第一突起部12aに円筒形状の凹部121を設け、この凹部121にグリースを充填し、第一グリース保持部H1を形成した。同様に、第二太陽歯車17の回転中心に設けられた第二突起部17aに円筒形状の凹部171を設け、この凹部171にグリースを充填し、第二グリース保持部H2を構成した。
【0070】
また、図11に示すように、第一突起部12aの凹部121の内周面を、縁部に向かって、内径が拡径するテーパ形状にしている。図示してないが、第二突起部17aの凹部171の内周面も縁部に向かって、内径が拡径するテーパ形状にしている。また、各凹部121,171の縁部の形状を、曲面形状などにして、縁部がキャリアと当接したとき、キャリアと線接触となるように、構成するのが好ましい。これにより、キャリアとの接触面積を減らして回転摩擦の低減を図ることができる。
【0071】
図11に示すように、モータ軸M1が逆回転すると、第一突起部12aの凹部121の縁部が、第一キャリア16の第一太陽歯車側側面に当接する。よって、この実施例2においては、第一太陽歯車12と第一キャリア16との当接箇所Q1が、グリース保持部H1よりも第一太陽歯車12の回転中心に対して外側となる。第一グリース保持部H1内のグリースは、第一太陽歯車12の回転や第一キャリア16の回転による遠心力の影響を受け、回転中心よりも外側へ移動しやすい。このため、第一太陽歯車12と第一キャリア16との当接箇所Q1が、第一グリース保持部H1よりも第一太陽歯車12の回転中心に対して外側とすることで、回転時の遠心力により、第一グリース保持部H1のグリースが、第一太陽歯車12と第一キャリア16との当接箇所Q1に集めることができる。よって、第一グリース保持部H1を満たすほど、グリースを充填しておかなくても、第一太陽歯車12と第一キャリア16との当接箇所Q1のグリース枯渇を抑制することができる。
【0072】
また、第一突起部12aの凹部121の内周面を、縁部に向かって、内径が拡径するテーパ形状にしているので、遠心力により第一グリース保持部H1内のグリースが矢印Gに示すように、遠心力により第一太陽歯車12と第一キャリア16との当接箇所Q1に向かって移動する。よって、第一太陽歯車12と第一キャリア16との当接箇所Q1のグリース枯渇をより一層抑制することができる。
【0073】
また、第一グリース保持部H1は、第一太陽歯車12と第一キャリア16との当接により密封されているので、第一グリース保持部H1からグリースが飛散することはない。
【0074】
また、モータ軸M1が正回転して、第二突起部17aの凹部171の縁部が、第二キャリア19の第二太陽歯車側側面に当接した場合においても、第二第太陽歯車17と第二キャリア19との当接箇所Q2よりも回転中心内側に第二グリース保持部H2が隣接しているので、第二第太陽歯車17と第二キャリア19との当接箇所Q2に遠心力でグリースが供給され、第二第太陽歯車17と第二キャリア19との当接箇所Q2のグリースが枯渇することない。よって、モータ軸M1の正回転時においても、経時にわたり接触回転摩擦による動力損失を低減することができる。
【0075】
また、図12に示すように、各キャリアの回転中心に凹部を設け、各太陽歯車の回転中心に先端球面形状の突起部を形成した構成にしてもよい。かかる構成でも、各キャリアに設けた凹部の縁部に各太陽歯車の突起部の球面形状の先端が当接し、太陽歯車とキャリアとの当接箇所を、回転中心に対してグリース保持部よりも外側にすることができる。
【0076】
また、図示してないが、先の図10の構成とは逆の構成でもよい。すなわち、各キャリアの回転中心に突起部を設け、その突起部の先端に円筒形状の凹部を形成した構成である。また、先の図12の構成とは逆の構成でもよい。すなわち、各太陽歯車の回転中心に円筒形状の凹部を形成し、各キャリアの回転中心に先端球面形状の突起部を設けた構成である。どの構成にするかは、製造や加工のしやすさなどにより適宜決めればよいが、図13に示すように、第一キャリア16と第二太陽歯車17とに凹部を形成するのが好ましい。
【0077】
これは、駆動伝達方向最上流の一段目入力軸である第一太陽歯車12は、高い減速比を実現するために小径歯車としている。このような小径の第一太陽歯車12の回転中心部に凹部を形成すると、第一太陽歯車の強度が低下してしまうという新たな問題が生じてしまう。また、本実施形態においては、第一太陽歯車12は、金属のモータ軸M1に直接切削加工して歯部を形成するか、モータ軸M1に金属歯車を圧入して形成している。このような金属のモータ軸の回転中心部に凹部の形成加工はコストがかかってしまう。よって、第一太陽歯車12と第一キャリア16との当接においては、第一キャリア側に凹部を形成して、第一キャリア側に第一グリース保持部H1を形成するのが好ましい。
【0078】
一方、駆動伝達方向最下流側の第二太陽歯車17は、出力側のため減速比よりも耐久性が重視されるため大径歯車を採用しているため、第一太陽歯車12にくらべ大きく、回転中心部に凹部を形成しても強度問題は生じにくい。さらに、本実施形態では、第二太陽歯車17と第一キャリア16は樹脂の一体成形品を採用しており、凹部を金型で実現することができ低コストで成形できる。このように、第一キャリア16と第二太陽歯車17とに凹部を形成することで強度問題が生じることなく、低コストにすることができる。
【0079】
[実施例3]
図14は、実施例3における第二太陽歯車17、第一キャリア、第一遊星歯車からなる移動体Tの斜視図である。図15は、実施例3における移動体Tを、第一太陽歯車12から見た正面図であり、図16は、実施例3における移動体Tの概略断面図である。
【0080】
この実施例3は、第二太陽歯車17、第一キャリア16、第一遊星歯車15からなる移動体Tの回転中心に、移動体Tを貫通する貫通孔31を設け、この貫通孔31にグリースを充填してグリース保持部H1,H2を形成したものである。
貫通孔31の第一太陽歯車側先端は、第一キャリア16の第一太陽歯車側側面から約1mm程度突出しており、貫通孔31の第二キャリア側先端は、第二太陽歯車17から約1mm程度突出している。
【0081】
よって、この実施例3は、モータ軸M1が正回転したときは、貫通孔31の第二キャリア側縁部が第二キャリア19と当接する。よって、この実施例3も、第二グリース保持部H2が、第二太陽歯車17(貫通孔31の第二キャリア側縁部)と第二キャリア19との当接箇所に対して回転中心側に隣接する形態となる。よって、この場合も遠心力でグリース保持部のグリースが、第二太陽歯車17(貫通孔31の第二キャリア側縁部)と第二キャリア19との当接箇所に移動させることができ、第二太陽歯車17(貫通孔31の第二キャリア側縁部)と第二キャリア19との当接箇所のグリース枯渇を良好に抑制することができる。
【0082】
また、モータ軸M1が逆回転したときは、貫通孔31の第一太陽歯車側縁部が第一太陽歯車12と当接する。よって、この実施例3も、第一グリース保持部H1が、第一太陽歯車12と第一キャリア16(貫通孔31の第一太陽歯車側縁部)との当接箇所に対して回転中心側に隣接する形態となる。よって、この場合も遠心力で第一グリース保持部H1のグリースが、第一太陽歯車12と第一キャリア16との当接箇所に移動させることができ、第一太陽歯車12と第一キャリア16との当接箇所のグリース枯渇を良好に抑制することができる。
【0083】
また、貫通孔31の縁部は、図16に示すように、断面半円形状となっており、貫通孔31の縁部が、当接部材(第二キャリア19または第一太陽歯車12)と線接触となり、回転摩擦の低減を図ることができる。
【0084】
また、この実施例3においても、貫通孔31の両端部付近は、内径が縁部向かって拡径するようなテーパ形状にし、遠心力でグリースを当接箇所へ移動させることができ、当接箇所のグリース枯渇を防止することができる。
【0085】
第二太陽歯車17と第一キャリア16と貫通孔31は樹脂の一体成形品であり、射出成形などにより成形されるものである。第一キャリア16は、2枚の側板部と、この2枚の側板部を繋ぐ円周方向等間隔で配置された3本の支柱部とで構成されている。この支柱部の間に遊星歯車が配置され、第一遊星歯車15を支持するキャリアピン15aの両端部は、上記2枚の側板で支持される。第一遊星歯車15の第一キャリア16への組付けは、支柱部の間に遊星歯車を配置した後、キャリアピン15aを、一方の側板部に設けられたキャリアピンを支持する断面形状支持穴から挿入して、第一遊星歯車を通して、キャリアピンの先端を、他方の側板部に設けれた支持穴で支持させることにより、組付けられる。また、第一キャリア16への第一遊星歯車15への組付容易性を考慮して、第一キャリアを、第二太陽歯車が設けられた側板部と、第一太陽歯車側の側板部とが分割可能な2部品構成としてもよい。この場合は、第一遊星歯車15と一体のキャリアピン15aの一端を、一方の側板部の支持穴に嵌めこんだ後、キャリアピン15aの他端を、他方の側板部の支持穴に嵌めこみなが、他方の側板部を一方の側板部と支柱を介して連結することで、第一遊星歯車15が、第一キャリア16に組みつけられる。
【0086】
第二太陽歯車17と第一キャリア16とを樹脂の一体成形することで、第一キャリア回転中心と第二太陽歯車の回転中心が一致する同軸精度を確保することができ、かつ、伝達剛性向上を図ることができる。
【0087】
また、図16に示すように、貫通孔31は、リブ32によって第二太陽歯車17と連結し、貫通孔31が、第二太陽歯車内でスラスト方向へ移動しないようにしている。これは、スラスト移動による当接および、回転によって発生する振動が第二太陽歯車の歯噛合いに影響が伝播しないようにする上で重要な構造となる。また、貫通孔31と第二太陽歯車とは、リブ32で連結される構成とすることで、貫通孔31の縁部が当接部材(第一太陽歯車12または第二キャリア19)との回転摩擦による発熱による熱伝播で貫通孔31が熱膨張しても、その影響が第二太陽歯車へ及ぶのを抑制することができる。
【0088】
このように実施例3においては、移動体Tを貫通する貫通孔31を設け、この貫通孔31にグリースを充填してグリース保持部H1,H2を形成することで、グリース充填工程が1回で済み、製造工程を簡略化することができ製造コストが低減できる。また、貫通孔31の一方の端部(縁部)が、当接部材(第二キャリア19または第一太陽歯車12)に当接しているとき、他方の端部は、当接部材から離間している。よって、当接箇所の回転摩擦によって発熱した熱を、他方の端部から逃がすことができ、貫通孔31の極端な温度上昇を防ぐことができる。
【0089】
上述では、2段構成の遊星歯車機構について説明したが、2段以上のプラネタリ型の遊星歯車機構においても、本発明を適用することができる。また、太陽歯車が、スラスト方向に変位可能な1段構成のプラネタリ型の遊星歯車機構においても、本発明を適用することができる。
【0090】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の(1)〜(13)態様毎に特有の効果を奏する。
(1)
固定内歯歯車と、固定内歯歯車14と同軸上で配設されモータ60などの駆動源からの回転駆動力を受けて回転する太陽歯車と、固定内歯歯車内に円周方向で配設され太陽歯車と前記固定内歯歯車と噛み合う複数の遊星歯車と、遊星歯車を回転自在に支持するとともに太陽歯車や内歯歯車と同軸上で回転自在なキャリアとを備え、固定内歯歯車、太陽歯車および遊星歯車が、はすば歯車からなる遊星歯車機構を備えた駆動伝達装置において、太陽歯車が遊星歯車との噛み合いでスラスト方向に変位したときに太陽歯車が当接するキャリアなどの当接部材と太陽歯車との当接箇所に隣接して、グリースを保持するグリース保持部を形成した。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、太陽歯車と当接部材との当接箇所にグリース保持部からグリースを供給することができ、経時にわたり当接部材と太陽歯車との当接箇所の摩擦抵抗を低減させることができる。よって、経時にわたり太陽歯車の磨耗を抑制することができ、当接部材と太陽歯車との当接時における動力損失、発熱磨耗を抑えることができる。
【0091】
(2)
また、上記(1)に記載の態様の駆動伝達装置において、当接部材と太陽歯車との当接箇所の周囲にグリース保持部を形成した。
かかる構成を備えることで、当接部材と太陽歯車との当接箇所の周囲からグリースを供給することができ、当接部材と太陽歯車との当接箇所のグリース枯渇をより一層抑制することができる。
【0092】
(3)
また、上記(2)に記載の態様の駆動伝達装置において、太陽歯車および当接部材の一方に円筒形状の凹部を設け、他方に凹部の中心と当接する突起部を設け、突起部と凹部との隙間にグリースを保持させてグリース保持部を形成した。
かかる構成とすることで、当接部材と太陽歯車との当接箇所の周囲にグリース保持部を形成することができる。
【0093】
(4)
また、上記(3)に記載の態様の駆動伝達装置において、グリース保持部を密封する密封部材を設けた。これにより、グリース保持部内のグリースが、グリース保持部から飛散するのを抑制することができる。
【0094】
(5)
また、上記(1)に記載の態様の駆動伝達装置において、太陽歯車と当接部材との当接箇所が、グリース保持部よりも太陽歯車の回転中心に対して外側となるように構成した。
かかる構成を備えることで、実施例2で説明したように、グリース保持部内のグリースを、遠心力により当接箇所へ供給することができ、グリースの枯渇をより一層抑制することができる。
【0095】
(6)
また、上記(5)に記載の態様の駆動伝達装置において、太陽歯車に円筒形状の凹部を設け、凹部にグリースを保持させてグリース保持部とし、凹部の縁部を、相手部材に当接させた。
かかる構成とすることで、太陽歯車と当接部材との当接箇所を、グリース保持部よりも太陽歯車の回転中心に対して外側にすることができる。
【0096】
(7)
また、上記(5)に記載の態様の駆動伝達装置において、当接部材に円筒形状の凹部を設け、凹部にグリースを保持させてグリース保持部とし、太陽歯車を、凹部の縁部に当接させた。
かかる構成とすることでも、太陽歯車と当接部材との当接箇所を、グリース保持部よりも太陽歯車の回転中心に対して外側にすることができる。
【0097】
(8)
また、上記(6)または(7)に記載の態様の駆動伝達装置において、凹部の内周面を、縁部に向かって、内径が拡径するテーパ形状にした。
かかる構成とすることで、グリース保持部内のグリースが、遠心力により太陽歯車と当接部材との当接箇所へ移動しやすくなり、より一層グリースの枯渇をより一層抑制することができる。
【0098】
(9)
また、上記(1)乃至(8)いずれかに記載の態様の駆動伝達装置において、遊星歯車機構を複数個軸方向に直列に複数配置し、第一太陽歯車12などの駆動伝達方向最上流に配置された遊星歯車機構の太陽歯車をモータ60などの駆動源に接続し、第一キャリアなどの駆動伝達方向最下流に配置された遊星歯車機構以外の遊星歯車機構のキャリアと第二太陽歯車などのこの遊星歯車機構に対して駆動伝達方向下流側に隣接する遊星歯車機構の太陽歯車とを一体に構成し、第二キャリア19などの駆動伝達方向最下流側に配置された遊星歯車機構のキャリアを、感光体ドラム1などの回転体へ駆動力を出力するためのドラム軸70などの部材に接続したものであり、キャリアと一体に構成された太陽歯車が遊星歯車との噛み合いでスラスト方向に変位したときにこの太陽歯車が当接する当接部材としてのキャリアとの当接箇所に隣接してグリース保持部を形成した。
遊星歯車機構を複数個軸方向に直列に複数配置した多段構成においては、駆動伝達方向最下流に配置された遊星歯車機構以外の遊星歯車機構のキャリアとこの遊星歯車機構に対して駆動伝達方向下流側に隣接する遊星歯車機構の太陽歯車とが一体となった一体物(本実施形態においては移動体T)は、機構内に浮動支持されている。よって、遊星歯車との噛み合いにより一体物を構成する太陽歯車にスラスト荷重が発生し、一体物がスラスト方向へ移動して、太陽歯車が当接部材に当接しても、その当接箇所には隣接してスリーブ保持部が形成されているので、当接箇所にグリース保持部からグリースが供給される。よって、複数段の遊星歯車における動力損失、摩擦発熱を経時にわたり抑制することができる。
【0099】
(10)
また、上記(9)に記載の態様の駆動伝達装置において、駆動伝達方向最下流に配置された遊星歯車機構以外の遊星歯車機構のキャリアとこの遊星歯車機構に対して駆動伝達方向下流側に隣接する遊星歯車機構の太陽歯車とをプラスチック成型で一体成型した。
かかる構成とすることで、実施例3で説明したように、キャリア回転中心と太陽歯車の回転中心の同軸精度を確保することができ、かつ、伝達剛性向上を図ることができる。
【0100】
(11)
また、上記(10)に記載の態様の駆動伝達装置において、キャリアと太陽歯車との一体成型品の回転中心部に貫通孔を設け、貫通孔にグリースを保持させて、グリース保持部とした。
かかる構成とすることで、実施例3で説明したように、貫通孔の縁部が当接部材と当接して、当接箇所が形成され、グリース保持部が、当接箇所よりも回転中心内側に配置することができる。これにより、遠心力によりグリース保持部内のグリースを当接箇所へ供給することができる。また、当接箇所の摩擦による発熱を、貫通孔から逃がすことができ、グリース保持部の温度上昇を抑えることができる。
【0101】
(12)
また、上記(11)に記載の態様に駆動伝達装置において、貫通孔31は、リブ32により太陽歯車に連結させた。
かかる構成とすることで、実施例3で説明したように、貫通孔31の縁部と当接部材との回転摩擦による発熱による熱伝播で貫通孔31が熱膨張しても、その影響が第二太陽歯車へ及ぶのを抑制することができ、駆動伝達性能に影響を及ぼすのを抑制することができる。
【0102】
(13)
また、感光体ドラム1、中間転写ベルト5の駆動ローラ、定着ローラなどの回転体を備えた画像形成装置において、回転体を駆動するモータ60などの駆動源と、駆動源の回転駆動力を回転体へ伝達する駆動伝達装置とを備え、駆動伝達装置として、上記(1)乃至(12)いずれかに記載の態様の駆動伝達装置を用いた。
かかる構成を備えることにより、回転体を一定速度で回転させることがバンディングなどの異常画像を抑制することができる。
【符号の説明】
【0103】
1:感光体ドラム
5:中間転写ベルト
8:定着ローラ対
12:第一太陽歯車
12a:第一突起部
13:モータ固定フランジ
14:内歯歯車
15:第一遊星歯車
16:第一キャリア
16a:第一凹部
16b:シール部材
17:第二太陽歯車
17a:第2突起部17a
18:第二遊星歯車
19:第二キャリア
19a:第二凹部
20:円筒軸
21:スプライン部
22:エンドキャップ
24:内歯歯車固定フランジ
31:貫通孔
32:リブ
60:モータ
70:ドラム軸
110:本体前側板
111:面板
121,171:凹部
H1:第一グリース保持部
H2:第二グリース保持部
M1:モータ軸
Q1,Q2:当接箇所
T:移動体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0104】
【特許文献1】特許第4268807号公報
【特許文献2】特許第4590299号公報
【特許文献3】特開2006−307909号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動伝達装置及びこれを備えたプリンタ、ファクシミリ、複写機などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感光体等の像担持体を備えた画像形成装置にあっては、像担持体の回転に従って、像担持体に対して帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程等を施すことにより画像形成を行うようになっている。かかる画像形成装置においては、像担持体を回転駆動するためのモータ等の駆動源が設けられているが、駆動源の回転数は一般に、像担持体の回転に求められる回転数よりも大きい。そこで、遊星歯車減速機構を用いて駆動源の回転速度を減速して像担持体に伝達する駆動伝達装置が用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
遊星歯車減速機構は、駆動源の回転駆動力を受けて回転する太陽歯車と、太陽歯車と同軸上で配設され、装置に回転不能に固定された固定内歯歯車と、固定内歯歯車内に円周方向で等間隔に配設され太陽歯車と固定内歯歯車とに噛み合う複数の遊星歯車と、遊星歯車を回転可能に支持するとともに太陽歯車及び固定内歯歯車と同軸上で回転可能なキャリアとを備え、キャリアから、減速された回転駆動力が出力される。
【0004】
また、噛合い率の向上、歯噛合い周期の速度変動の低減、歯噛合い騒音の低減が図れるため、固定内歯歯車と、太陽歯車と、これらに噛み合う遊星歯車とに、はすば歯車が用いられている。
【0005】
はすば歯車を用いた遊星歯車減速機構は、はすば歯車の歯筋が回転軸に対して傾斜しているので、太陽歯車の回転に伴って、太陽歯車と遊星歯車との間、固定内歯歯車と遊星歯車との間にそれぞれ回転軸方向(スラスト方向)に荷重(スラスト荷重)が発生する。遊星歯車は、太陽歯車との噛み合いによるスラスト荷重の方向と、固定内歯歯車との噛み合いによるスラスト荷重の方向とが、逆となるため、互いに打ち消し合い、スラスト方向へ変位することはない。固定内歯歯車は、回転していないので、遊星歯車との噛み合いによるスラスト荷重によりスラスト方向へ移動して、スラスト方向に隣り合う部材と当接しても、回転磨耗などが発生せず、動力損失、発熱磨耗の不具合が生じることはない。
【0006】
しかし、太陽歯車が、遊星歯車との噛み合いによりスラスト方向へ変位して、太陽歯車とスラスト方向に対向する当接部材としての相手部材に太陽歯車が当接した場合、太陽歯車は、回転しているため、相手部材と回転しながら当接することになる。その結果、太陽歯車と相手部材との当接部では回転摩擦による動力損失、発熱磨耗などの不具合が発生する。
【0007】
特許文献2には、太陽歯車を、軸受を介して固定部材に支持することにより、太陽歯車をスラスト方向に変位しないようにした遊星歯車減速機構が記載されている。また、特許文献3には、太陽歯車の相手部材との当接箇所を、球面状にした遊星歯車減速機構が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載の遊星歯車減速機構においては、太陽歯車の相手部材との当接を防止することができるが、太陽歯車を介して軸受にスラスト荷重が加わった場合でも、動力損失しないような軸受を用いる必要があり、コスト高に繋がるというおそれがあった。
【0009】
また、特許文献3に記載の遊星歯車減速機構においては、相手部材との接触面積を減らすことができ、相手部材との当接時における動力損失、発熱磨耗を抑えることができるが、経時使用で太陽歯車の球面状の部分が磨耗していき、経時にわたり動力損失、発熱磨耗を抑えることができなかった。
【0010】
そこで、本発明者らは、太陽歯車の球面状の部分にグリースを塗布して実験を行なったが、太陽歯車の回転による遠心力でグリースが飛散して、グリースによる摩擦低減効果を十分に得られなかった。
【0011】
本発明は以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、遊星歯車機構の各歯車をはすば歯車にして噛合い率の向上、歯噛合い周期の速度変動の低減および歯噛合い騒音の低減を図り、かつ、経時に亘り動力損失および発熱磨耗を抑えることができる駆動伝達装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、固定内歯歯車と、前記固定内歯歯車と同軸上で配設され駆動源からの回転駆動力を受けて回転する太陽歯車と、前記固定内歯歯車内に円周方向で配設され前記太陽歯車と前記固定内歯歯車と噛み合う複数の遊星歯車と、前記遊星歯車を回転自在に支持するとともに前記太陽歯車や前記内歯歯車と同軸上で回転自在なキャリアとを備え前記固定内歯歯車、前記太陽歯車および前記遊星歯車が、はすば歯車からなる遊星歯車機構を備えた駆動伝達装置において、前記太陽歯車が前記遊星歯車との噛み合いでスラスト方向に変位したときに前記太陽歯車が当接する当接部材と前記太陽歯車との当接箇所に隣接して、グリースを保持するグリース保持部を形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、グリースが保持されたグリース保持部を当接部材と太陽歯車との当接箇所に隣接して設けることで、当接箇所にグリース保持部からグリースを供給することができ、経時にわたり当接部材と太陽歯車との当接箇所の摩擦抵抗を低減させることができる。よって、経時にわたり太陽歯車の磨耗を抑制することができ、当接部材と太陽歯車との当接時における動力損失、発熱磨耗を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係るプリンタの一例における画像形成部全体の概略構成図。
【図2】感光体ドラム駆動する遊星歯車減速機構の説明図。
【図3】1段目の遊星歯車機構の横断面図。
【図4】2段目の遊星歯車機構の横断面図。
【図5】プロセスカートリッジ内の感光体ドラムを支持する機構について説明する図。
【図6】各歯車の噛み合いによるスラスト荷重の方向について説明する図。
【図7】従来の遊星歯車減速機構の説明図。
【図8】実施例1の構成を示す要部構成図。
【図9】実施例1の変形例を示す要部構成図。
【図10】実施例2の構成を示す要部構成図。
【図11】図10の点線で囲んだL部分の拡大構成図。
【図12】実施例2の第1変形例を示す要部構成図。
【図13】実施例2の第2変形例を示す要部構成図。
【図14】実施例3における第二太陽歯車、第一キャリア、第一遊星歯車からなる移動体の斜視図。
【図15】同移動体を、第一太陽歯車から見た正面図。
【図16】同移動体の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、画像形成装置である電子写真方式のカラー複写機(以下、「複写機」という。)に適用した一実施形態について説明する。なお、本実施形態における複写機は、いわゆるタンデム式の画像形成装置であって、乾式二成分現像剤を用いた乾式二成分現像方式を採用したものである。
【0016】
図1は、本実施形態に係る複写機における画像形成部全体の概略構成図である。
この複写機は、図示しない画像読取部から画像情報である画像データを受け取って画像形成処理を行う。この複写機には、図に示すように、イエロー(以下、「Y」と省略する。)、マゼンタ(以下、「M」と省略する。)、シアン(以下、「C」と省略する。)、ブラック(以下、「Bk」と省略する。)の各色用の4個の回転体としての潜像担持体である感光体ドラム1Y,1M,1C,1Bkが並設されている。これら感光体ドラム1Y,1M,1C,1Bkは、駆動ローラを含む回転可能な複数のローラに支持された無端ベルト状の中間転写ベルト5に接触するように、そのベルト移動方向に沿って並んで配置されている。また、感光体ドラム1Y,1M,1C,1Bkの周りには、それぞれ、帯電器2Y,2M,2C,2Bk、各色対応の現像装置9Y,9M,9C,9Bk、クリーニング装置4Y,4M,4C,4Bk、除電ランプ3Y,3M,3C,3Bk等の電子写真プロセス用部材がプロセス順に配設されている。また、感光体ドラム1、帯電器2、除電ランプ3、クリーニング装置4及び現像装置9は、プリンタ本体に対して着脱可能なプロセスカートリッジとして一体形成されている。
【0017】
本実施形態に係る複写機でフルカラー画像を形成する場合、まず、図1に示すように、後述する感光体駆動装置により、感光体ドラム1Yを図中矢印の方向に回転駆動しながら帯電器2Yで一様帯電した後、図示しない光書込装置からの光ビームLYを照射して感光体ドラム1Y上にY静電潜像を形成する。このY静電潜像は、現像装置9Yにより、現像剤中のYトナーにより現像される。現像時には、現像ローラと感光体ドラム1Yとの間に所定の現像バイアスが印加され、現像ローラ上のYトナーは、感光体ドラム1Y上のY静電潜像部分に静電吸着する。
【0018】
このように現像されて形成されたYトナー像は、感光体ドラム1Yの回転に伴い、感光体ドラム1Yと中間転写ベルト5とが接触する1次転写位置に搬送される。この1次転写位置において、中間転写ベルト5の裏面には、1次転写ローラ6Yにより所定のバイアス電圧が印加される。そして、このバイアス印加によって発生した1次転写電界により、感光体ドラム1Y上のYトナー像を中間転写ベルト5側に引き寄せ、中間転写ベルト5上に1次転写する。以下、同様にして、Mトナー像、Cトナー像、Bkトナー像も、中間転写ベルト5上のYトナー像に順次重ね合うように1次転写される。
【0019】
このように、中間転写ベルト5上に4色重なり合ったトナー像は、中間転写ベルト5の回転に伴い、2次転写ローラ7と対向する2次転写位置に搬送される。また、この2次転写位置には、図示しないレジストローラにより所定のタイミングで転写紙が搬送される。そして、この2次転写位置において、2次転写ローラ7により転写紙の裏面に所定のバイアス電圧が印加され、そのバイアス印加により発生した2次転写電界及び2次転写位置での当接圧により、中間転写ベルト5上のトナー像が転写紙上に一括して2次転写される。その後、トナー像が2次転写された転写紙は、定着ローラ対8により定着処理がなされた後に装置外に排出される。
【0020】
図2は、感光体ドラム1に駆動源であるモータ60からの回転駆動力を伝達する駆動伝達装置の説明図であり、図3は、1段目の遊星歯車機構の横断面図、図4は、2段目の遊星歯車機構の横断面図である。
図2に示す駆動伝達装置に用いられる遊星歯車減速機構は、2KH型2段構成の遊星歯車機構が用いられている。また、中間転写ベルト5の駆動ローラ、定着ローラ等の駆動伝達装置にも遊星歯車減速機構を用いることができる。
【0021】
高精度に一定速度で回転するべき感光体ドラム1や中間転写ベルト5に速度変動が生じると出力された画像にジッタや濃度ムラが生じる。ある周波数で速度変動が継続すると画像全体に周期濃度ムラが生じ、縞模様のバンディングとして目視される。感光体ドラム1の速度変動は書き込み系の露光ラインの副走査位置ずれを発生させる。同時に、中間転写ベルト5への1次転写時の副走査位置ずれを発生させる。中間転写ベルト5の速度変動は、1次転写時と2次転写時の副走査位置ずれを発生させる。この速度変動に起因したバンディングにより画像品質が著しく低下してしまう。
【0022】
このような高精度駆動が要求される感光体ドラム1や中間転写ベルト5の駆動伝達部には、溶融樹脂を射出することに成形されたプラスチックギヤが利用されている。プラスチックギヤは金属ギヤに比べて、自己潤滑性があり、使用時の騒音が低く、軽量化を図ることができ、耐腐食性が高く、量産性が高い点で優れている。一方、耐久性(耐磨耗性)、高剛性、高精度といった点が劣っている。そこで、本実施形態においては、プラスチックギヤを用いた駆動伝達部の耐久性、剛性を高くするために、遊星歯車減速機構を用いた。すなわち、遊星歯車機構は、出力軸の回転負荷を複数の遊星歯車が分散して伝達するため、駆動伝達部の耐久性、剛性を高くすることができる。また、駆動伝達装置として、遊星歯車機構を採用することにより、歯車輪列の歯車装置よりも歯車の小型化が実現できる。
【0023】
また、画像形成装置において、一般的な直径30〜100mmの感光体ドラムの駆動伝達装置として、遊星歯車を採用する場合、減速比が1/20程度が要求される。このような大きな減速比を得ることができるため、本実施形態の駆動伝達装置として2KH型2段構成の遊星歯車機を用いた。
【0024】
モータ60の回転軸M1に設けられている第一太陽歯車12を備え、この第一太陽歯車12及び内歯歯車固定フランジ24に固定された内歯歯車14に噛み合う1段目の遊星歯車である第一遊星歯車15が1段目のキャリアである第一キャリア16により支持されて第一太陽歯車12の外周を公転するようになっている。第一遊星歯車15は、回転バランスとトルク分担のために同心状に3箇所またはそれ以上の複数個が配置される。本実施形態では、図3に示すように、周方向で3等分された位置にそれぞれ第一遊星歯車15が配置されている。
【0025】
第一遊星歯車15は、第一太陽歯車12と内歯歯車14との噛み合いにより、自転及び公転回転し、第一遊星歯車15を支持する第一キャリア16は、第一太陽歯車12の回転に対し減速回転し、1段目の減速比が獲得される。
【0026】
次に、この第一キャリア16の回転中心に設けられた2段目の太陽歯車である第二太陽歯車17が2段目減速機構の入力となる。なお、第一キャリア16に回転支持部はなく、浮動回転を行うようになっている。
【0027】
同様に、第二太陽歯車17には、2段目まで一体で形成された内歯歯車14に噛み合う2段目の遊星歯車である第二遊星歯車18が、2段目のキャリアである第二キャリア19により支持されて第二太陽歯車17の外周を公転するようになっている。第二遊星歯車18の個数は、本実施形態では、図4に示すように、周方向で4等分された位置にそれぞれ第二遊星歯車18が配置されている。最終段に相当する第二キャリア19には、出力部が設けられており、円筒状の出力軸である円筒軸20の内面にスプライン状の内歯が形成されている。
【0028】
一方、後述するようにプロセスカートリッジを貫通して感光体ドラムを支持するドラム軸70には、円筒軸20のスプライン状の内歯に噛み合うように、スプライン状の外歯が形成されており、出力部として用いられるスプライン部21が設けられている。
【0029】
ここで、2KH型遊星歯車機構に用いられる一つのユニットは、太陽歯車(sun gear)、遊星歯車(planetary gear)、遊星歯車の公転運動を支持する遊星キャリア(planetary carrier)、内歯歯車(outer gear)の四点の部品から構成されている。
【0030】
太陽歯車の回転、遊星歯車の公転(キャリアの回転)、内歯歯車の回転である3つの要素のうち、一つを固定、一つを入力、一つを出力に接続する。それぞれ、どれを入出力・固定に割り当てるかによって、一つのユニットで複数の減速比や回転方向の切替えが可能である。
【0031】
本実施形態において対象とする2KH型の2段構造は、複合遊星歯車機構(2個以上の2KH型)に分類され、2個以上の2KH型があり、それぞれ3つの要素のうち、1つの要素同士を結合し、残りの1つずつを固定し、残り2つを入力軸または出力軸とする機構である。
【0032】
本実施形態においては、内歯歯車を固定するタイプのプラネタリ型であり、太陽歯車を入力軸、キャリアを出力軸として、入力軸と出力軸の回転方向を同方向としている。
【0033】
具体的には、モータ60の駆動力は、モータ軸M1から第一太陽歯車12へ伝達され、第一太陽歯車12が回転駆動する。この第一太陽歯車12の回転により、第一太陽歯車12に噛み合う3個の第一遊星歯車15に駆動力が伝達され、これら第一遊星歯車15が第一太陽歯車12のまわりを公転しながら自転する。これら第一遊星歯車15の公転により、駆動力が減速されて第一キャリア16に伝達され、第一キャリア16が回転し、第一キャリア16に設けられた第二太陽歯車17に伝達され、第二太陽歯車17が回転する。そして、第二太陽歯車17と噛み合う4個の第二遊星歯車18に駆動力が伝達され、これら第二遊星歯車18が、第二太陽歯車17のまわりを公転しながら自転する。これら第二遊星歯車18の公転により、駆動力が減速されて第二キャリア19に伝達され、第二キャリアに設けられた円筒軸20、ドラム軸70を介して、駆動力が、感光体ドラムに伝達され、感光体ドラムが所定の回転数で回転する。
【0034】
減速比に関しては、太陽歯車の歯数をZa、遊星歯車の歯数をZb、内歯車の歯数をZcとした場合に、プラネタリ型の一段段構成の遊星歯車機構の減速比は、数1で表される。なお、式中の添え字1,2は1段目、2段目を意味している。
【0035】
[数1]
減速比=Za1/(Za1+Zc1)
【0036】
2段構成の遊星歯車機構の減速比は、1段目の減速比と2段目の減速比の積になる。本実施形態の遊星歯車機構は、1段目も2段目もプラネタリ型タイプであるので、減速比は、数2で表される。
【0037】
[数2]
減速比=Za1/(Za1+Zc1)×Za2/(Za2+Zc2)
【0038】
上述したモータ60の回転軸M1は、2個の軸受(不図示)を介してモータ固定フランジ13により支持されている。
【0039】
モータ60の回転軸M1を支持することでDCブラシレスモータの回転子であるアウター型ロータを支持することになる。モータ固定フランジ13には、モータ60の図示しない固定子鉄心やモータ駆動回路基板等も設置されている。
【0040】
モータ60の回転軸M1には第一太陽歯車12が歯切りで形成されており、第一太陽歯車12の軸と内歯歯車14の軸との同軸精度を確保するために、内歯歯車14とモータ固定フランジ13はインローによる嵌合で位置決めされて、さらにモータ固定フランジ13は内歯歯車固定フランジ24とインローによる嵌合で位置決めされている。
【0041】
内歯歯車14におけるモータ固定フランジ13と反対側の端部には、エンドキャップ22が固定されている。エンドキャップ22は、遊星減速機構を駆動側板127に組付ける際に、内歯歯車14内に設置されている第一遊星歯車15、第二遊星歯車18、第一キャリア16、第二キャリア19、及び、円筒軸20が内歯歯車14から脱落するのを防止するための部材として用いられている。エンドキャップ22と第二キャリア19の円筒軸20との間には十分なクリアランスがあり、エンドキャップ22は第二キャリア19を回転支持しておらず、第二キャリア19が浮動回転を行うようになっている。
【0042】
次に、装置本体に対して着脱可能に設けられたプロセスカートリッジ内の感光体ドラムを支持する機構について、図5を用いて説明する。
【0043】
なお、各感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkは、同一構成の感光体ドラム駆動装置により回転駆動されているので、以下、感光体ドラム1Yの感光体ドラム駆動装置について説明する。解説しないが、中間転写ベルト5の駆動ローラ、定着ローラ等にも適用可能である。
【0044】
図に示すように、感光ドラム1Yの軸方向の端部には、後ドラムフランジ115と前ドラムフランジ114が固定されている。その前後のドラムフランジ114,115に装置本体に設けられたドラム軸70が貫通することで、前後のドラムフランジ114,115は、ドラム軸70に支持されている。後ドラムフランジ115は、ドラム軸70とセレーションカップリング116で連結され、ドラム軸70が回転すると感光体ドラム1Yが同期して回転する。セレーションカップリング116は、ドラム軸側に雄形状、後ドラムフランジ115側に雌形状が設けられ、ドラム軸前側からテーパー形状となっている。
【0045】
感光体ドラム1Yを支持するユニットケース117内には、先の図1に示した感光体ドラム1Yと帯電器2Y、現像装置9Y、クリーニング装置4Y、図示しない除電ランプ等が収容されている。図5に示すように、ユニットケース117の後ろ側(図中右側)は、ドラム軸70にカラー124を軸方向で間に挟んで固定された2つの軸受123の内の一方の軸受123aで支持される。また、後ドラムフランジ115もその軸受123aで支持している。このように、ユニットケース117の後ろ側と、後ドラムフランジ115とを、軸受123aで支持することで、感光体ドラム1Yとユニットケース117が位置だしされる。また、前側(図中左側)は前ドラムフランジ114のボス部128がユニットケース117と嵌合し、回転自在になっている。
【0046】
ドラム軸70には、さらに本体後側板119と嵌合する部分に前記2つの軸受123の内の他方の軸受123bが設けられ、本体後側板119と位置出しされている。本体前側板110には、感光体ドラムユニットを着脱するための切り欠き孔が設けられ、そこには面板111が固定されている。この面板111にドラム軸70の前側端部が軸受112を介して回転自在に支持されている。
【0047】
プロセスカートリッジは面板111を取り外すことによって、着脱できるようになる。プロセスカートリッジが装着された時は、面板111に固定された軸受112と前ドラムフランジ114のボス部128の間に設けられた加圧バネ113によって、感光体ドラム1Yは、ドラム軸方向に加圧されて、テーパー状のセレーションカップリング116の部分で回転方向とスラスト方向が位置決めされる。プロセスカートリッジは、ユニットケース117の後ろ側に設けられた2本の位置決めピン118が本体後側板119の孔と嵌合して、回転方向の位置が決まる。
【0048】
次に、遊星歯車機構の取り付けについて説明する。
本体後側板119にはスタッド126を介して駆動側板127が取り付けられている。この駆動側板127に遊星歯車機構を支持する内歯歯車固定フランジ24を固定して組み付けられる。遊星歯車機構の位置だしは、駆動側板127に設けた孔に内歯歯車14を嵌合して行う。また、遊星歯車機構の取り付けは、駆動側板127を内歯歯車固定フランジ24を兼ねた構成で行っても良い。このように、遊星歯車機構を駆動側板127に取り付けることによって、内歯歯車14の出力側をフリーにして変形しやすく構成している。
【0049】
内歯歯車14は、内歯歯車固定フランジ24に対して、運転時トルクで回転しない様にすること、噛み合い振動やモータ振動が伝播して高次の振動が起こらない様に確実に固定されることが必要である(内歯歯車14が振動すると、バンディング現象が発生しやすいため)。また、本実施形態の遊星歯車機構においては、各歯車(内歯歯車14、各太陽歯車12、17、各遊星歯車15、18)は、はすば歯車を用いている。はすば歯車にすることで、噛み合い率が増加して分担荷重が減少するとともに、順次なめらかな移動が行われるという利点が得られる。
【0050】
しかし、各歯車(内歯歯車14、各太陽歯車12、17、各遊星歯車15、18)をはすば歯車とした場合、スラスト方向(回転軸方向)に力(スラスト荷重)が発生してしまう。
図6は、本実施形態の遊星歯車機構の各歯車に働くスラスト荷重の方向を示す図である。
図6は、各歯車の歯筋方向が、第一および第二太陽歯車12,17は右ねじれ、第一および第二遊星歯車15,18は左ねじれ、1段目および2段目に共通の内歯歯車14は右ねじれとし、入力軸(モータ)の回転方向が出力(ドラム軸)側からみてCCW(反時計回り)であった場合の各噛合いで発生するスラスト荷重の方向を示している。
【0051】
図6に示すように、第一太陽歯車12と第一遊星歯車15の噛合いによって、第一太陽歯車12には矢印Aの方向にスラスト荷重が発生し、第一遊星歯車15には矢印Bの方向にスラスト荷重が発生する。また、第一遊星歯車15と内歯歯車14との噛合いによって、第一遊星歯車15には矢印Cの方向にスラスト荷重が発生し、内歯歯車14には矢印Dの方向にスラスト荷重が発生する。2段目においても同様に、第二太陽歯車17には、矢印Eの方向にスラスト荷重が発生、第二遊星歯車18には、矢印Fと矢印G方向にスラスト荷重が発生し、内歯歯車14には、矢印H方向にスラスト荷重が発生する。
【0052】
第一太陽歯車12は、モータ軸M1に直接歯切りして形成されており、モータ60はモータ固定フランジ13に固定されていることから、第一太陽歯車12に矢印A方向にスラスト荷重が発生しても、第一太陽歯車12は、矢印A方向へ移動することはない。
【0053】
また、第一太陽歯車12との噛み合いにより第一遊星歯車15に発生するスライス荷重の方向と、内歯歯車14との噛み合いにより第一遊星歯車15に発生するスラスト荷重の方向は、逆方向である。また、第一太陽歯車12との噛み合いにより第一遊星歯車15に発生するスライス荷重の大きさと、内歯歯車14との噛み合いにより第一遊星歯車15に発生するスラスト荷重の大きさは、ほぼ同じである。よって、第一遊星歯車15に発生するスラスト荷重は、互いに打ち消し合って、第一遊星歯車15に加わるスラスト荷重により第一遊星歯車15は、スラスト方向へ移動することはない。
【0054】
第二遊星歯車18も同様に、第二太陽歯車17との噛み合いにより発生するスラスト荷重と、内歯歯車14との噛み合いにより発生するスラスト荷重とが互いに打ち消し合い、第二遊星歯車18に加わるスラスト荷重により第二遊星歯車18は、スラスト方向へ移動することはない。
【0055】
内歯歯車14には、第一、第二遊星歯車15、18との噛み合いによりそれぞれ、モータ60側へのスラスト荷重が発生する。しかし、内歯歯車14は、内歯歯車固定フランジ24に固定されているため、スラスト移動は発生しない。
【0056】
最後に、第二太陽歯車17は、第二遊星歯車18との噛み合いにより、矢印E方向へスラスト荷重が発生する。第二太陽歯車17は、第一キャリア16に固定されている。第一キャリア16には回転支持部はなく、浮動回転を行うようになっている。その結果、第二遊星歯車18との噛み合いにより第二太陽歯車17に発生したスラスト荷重により、第二太陽歯車17(実際は、第二太陽歯車17と第一キャリア16と第一遊星歯車15と備えた一体物)が、出力側へ移動し、第二太陽歯車17の端部が、第二キャリア19の側面に当接してしまう。第二キャリア19は、第二太陽歯車17により、出力側へ押される。しかし、第二キャリア19は、円筒軸20を介して接続されている筐体側板に軸方向に移動不能に固定されたドラム軸70によりスラスト方向への移動が規制されているので、第二キャリア19は、第二太陽歯車17により、出力側へ押されても出力側へは移動することはない。
【0057】
このように、各歯車をはすば歯車にした場合、回転伝達時に第二太陽歯車17が、第二キャリア19の側面に当接してしまう。第二キャリア19は、第二太陽歯車17よりも減速して回転しているため、第二キャリア19と第二太陽歯車17との間には、速度差が生じている。よって、第二太陽歯車17と第二キャリア19との当接部では回転摩擦による動力損失、発熱磨耗などの不具合が発生してしまう。
【0058】
また、クリーニング装置4としてブレードと呼ばれる板状部材を感光体ドラム1表面に圧接する方式が採用されている場合、定期的に感光体ドラム1を逆方向に回転させる処理を行う。この場合は、入力軸(モータ)の回転方向が出力(ドラム軸)側からみてCW(時計回り)となり、各歯車に発生するスラスト荷重の方向が、図6に示す場合と逆になる。その結果、この場合は、第二太陽歯車17と第一キャリア16と第一遊星歯車15と備えた一体物(以下、移動体Tという)が、モータ側(入力側)へ移動して、第一キャリア16が、第一太陽歯車12と当接してしまう。よって、このような感光体ドラム1を逆方向に回転させる処理を行う場合は、第一太陽歯車12と第一キャリア16との間で発熱磨耗が発生してしまう。
【0059】
なお、定期的に感光体ドラム1を逆方向に回転させる処理を行う理由は以下の通りである。すなわち、感光体ドラム1上のトナーを効果的に取り出すために、感光体ドラム回転方向に対してカウンタとなるようにクリーニング装置4のブレードが圧接されており、ブレードがめくれる不具合が発生する場合がある。この不具合を防止するために、定期的に感光体ドラム1を逆方向に回転させ、ブレードのめくれを解消しているのである。また、中間転写ベルト5にも同様のクリーニング装置を採用した場合は、同様に逆方向の回転動作が定期的に行われる。
【0060】
そこで、従来においては、図7に示すように、第二太陽歯車17の回転中心部を歯車端部に対して1mm程度突出させ、その先端部を球面形状とする突起部17aを設けて、第二キャリア19側面部との接触面積を小さくし、回転抵抗を下げることで、接触回転摩擦による動力損失を低減している。また、同様に第一太陽歯車12においても突出部12aを設けて、逆回転時の第一キャリア16側面部との接触面積を小さくし、接触回転摩擦による動力損失を低減している。しかし、動力伝達で回転しながらスラスト力で接触するため、突出部12a,17aの先端部分は磨耗が発生しやすい。その結果、経時使用により突出部12a,17a先端部分のキャリアとの接触面積が、徐々に大きくなり、経時にわたり回転抵抗を良好に下げることができなかった。そこで、磨耗抑制として突出部12a,17aの先端部分にグリース塗布を行ったが、太陽歯車およびキャリアの回転による遠心力によってグリースが飛散しやすく当接部のグリース枯渇が発生し、十分な効果を得ることができなかった。
【0061】
そこで、本実施形態においては、太陽歯車と太陽歯車が当接する当接部材としてのキャリアとの当接部に隣接してグリースを保持するグリース保持部を設け、当接部のグリース枯渇を抑制するようにした。以下、実施例を用いて、具体的に説明する。
【0062】
[実施例1]
図8は、実施例1の構成を示す要部構成図である。
図8に示すように、実施例1においては、第一キャリア16の第一太陽歯車12と対向する側面の回転中心部に円筒形状の第一凹部16aを設け、第一太陽歯車12回転中心に、先端球面形状の第一突起部12aを設けている。第一突起部12aのスラスト方向の長さは、第一凹部16aの深さをよりも長くなっており、第一突起部12aの一部が、第一凹部16aの内部に位置にしている。そして、第一凹部16aと、第一突起部12aとの隙間にグリースが充填されて、第一突起部12aの周囲に第一グリース保持部H1が形成される。
【0063】
また、第二キャリア19の第二太陽歯車17と対向する側面の回転中心部にも円筒形状の第二凹部19aが形成されており、第二太陽歯車17回転中心に、先端球面形状の第二突起部17aが形成されている。第二突起部17aのスラスト方向の長さは、第二凹部19aの深さをよりも長くなっており、第二突起部17aの一部が、第二凹部19aの内部に位置にしている。そして、第二凹部19aと、第二突起部17aとの隙間にグリースが充填されて、第二突起部17aの周囲に第二グリース保持部H2が形成される。
【0064】
モータ軸M1が正回転して、第二遊星歯車18と第二太陽歯車17との噛み合いにより第二太陽歯車17に発生した出力軸方向へのスラスト荷重により、移動体Tが、出力側へ移動し、第二太陽歯車17の第二突起部17aの先端が、第二キャリア19の第二凹部19aの回転中心部に当接する。このとき、第二キャリア19と第二太陽歯車17との当接箇所Q2の周囲には、第二グリース保持部H2が形成されており、第二キャリア19と第二太陽歯車17との当接箇所Q2の周囲は、グリースで満たされている。よって、第二キャリア19と第二太陽歯車17との当接箇所Q2のグリースが枯渇することがなく、第二キャリア19と第二太陽歯車17との当接箇所Q2の摩擦抵抗を経時にわたり抑制することができる。これにより、経時にわたり、接触回転摩擦による動力損失を低減することができる。
【0065】
また、モータ軸M1が逆回転して、第二遊星歯車18と第二太陽歯車17との噛み合いにより第二太陽歯車17に発生した入力軸方向へのスラスト荷重により、移動体Tが、入力軸側へ移動し、第一太陽歯車12の第一突起部12aの先端が、第一キャリア16凹部16aの回転中心部に当接する。このときも、第一キャリア16と第一太陽歯車12との当接箇所Q1の周囲は、第一グリース保持部H1で保持されたグリースで満たされているので、第一キャリア16と第一太陽歯車12との当接箇所Q1のグリースが枯渇することがない。第一キャリア16と第一太陽歯車12との当接箇所Q1の摩擦抵抗を経時にわたり抑制することができる。これにより、経時にわたり、接触回転摩擦による動力損失を低減することができる。
【0066】
各グリース保持部H1,H2の保持されるグリースは、粘性が高いため、グリース保持部から漏れ出すことはほとんどない。逆にグリース保持部を開放しておくことで、キャリアと太陽歯車との当接箇所の摩擦による発熱を逃がすことができる。また、図9に示すように、シール部材16bを設けて、第一グリース保持部H1を密封してもよい。かかる構成とすることで、第一グリース保持部H1に充填されたグリースが、第一グリース保持部H1から飛散することを防止することができ、第一グリース保持部H1のグリース減少による第一キャリア16と第一太陽歯車12との当接箇所のグリース枯渇を経時にわたり良好に抑制することができる。図示してないが、第二グリース保持部H2においても、シール部材で密封してもよい。
【0067】
また、上述では、第二太陽歯車17にスラスト荷重が発生すると、移動体Tが動いて、太陽歯車の突起部がキャリアの凹部に当接する構成となっているが、始めから太陽歯車の突起部をキャリアの凹部に当接する構成でもよい。
【0068】
また、この実施例1では、キャリアに凹部を設け、太陽歯車の回転中心部に突起部を設けているが、太陽歯車の回転中心部に凹部を設け、キャリアの回転中心部に突起部を設けた構成でも同様な効果を得ることができる。キャリアに凹部を設けるか、太陽歯車に凹部を設けるかは、製造や加工のしやすさなどにより適宜決めればよい。
【0069】
[実施例2]
図10は、実施例2の構成を示す要部構成図で、図11は、図10の点線で囲んだL部分の拡大構成図である。
図10、図11に示すように、実施例2においては、第一太陽歯車12回転中心に設けられた第一突起部12aに円筒形状の凹部121を設け、この凹部121にグリースを充填し、第一グリース保持部H1を形成した。同様に、第二太陽歯車17の回転中心に設けられた第二突起部17aに円筒形状の凹部171を設け、この凹部171にグリースを充填し、第二グリース保持部H2を構成した。
【0070】
また、図11に示すように、第一突起部12aの凹部121の内周面を、縁部に向かって、内径が拡径するテーパ形状にしている。図示してないが、第二突起部17aの凹部171の内周面も縁部に向かって、内径が拡径するテーパ形状にしている。また、各凹部121,171の縁部の形状を、曲面形状などにして、縁部がキャリアと当接したとき、キャリアと線接触となるように、構成するのが好ましい。これにより、キャリアとの接触面積を減らして回転摩擦の低減を図ることができる。
【0071】
図11に示すように、モータ軸M1が逆回転すると、第一突起部12aの凹部121の縁部が、第一キャリア16の第一太陽歯車側側面に当接する。よって、この実施例2においては、第一太陽歯車12と第一キャリア16との当接箇所Q1が、グリース保持部H1よりも第一太陽歯車12の回転中心に対して外側となる。第一グリース保持部H1内のグリースは、第一太陽歯車12の回転や第一キャリア16の回転による遠心力の影響を受け、回転中心よりも外側へ移動しやすい。このため、第一太陽歯車12と第一キャリア16との当接箇所Q1が、第一グリース保持部H1よりも第一太陽歯車12の回転中心に対して外側とすることで、回転時の遠心力により、第一グリース保持部H1のグリースが、第一太陽歯車12と第一キャリア16との当接箇所Q1に集めることができる。よって、第一グリース保持部H1を満たすほど、グリースを充填しておかなくても、第一太陽歯車12と第一キャリア16との当接箇所Q1のグリース枯渇を抑制することができる。
【0072】
また、第一突起部12aの凹部121の内周面を、縁部に向かって、内径が拡径するテーパ形状にしているので、遠心力により第一グリース保持部H1内のグリースが矢印Gに示すように、遠心力により第一太陽歯車12と第一キャリア16との当接箇所Q1に向かって移動する。よって、第一太陽歯車12と第一キャリア16との当接箇所Q1のグリース枯渇をより一層抑制することができる。
【0073】
また、第一グリース保持部H1は、第一太陽歯車12と第一キャリア16との当接により密封されているので、第一グリース保持部H1からグリースが飛散することはない。
【0074】
また、モータ軸M1が正回転して、第二突起部17aの凹部171の縁部が、第二キャリア19の第二太陽歯車側側面に当接した場合においても、第二第太陽歯車17と第二キャリア19との当接箇所Q2よりも回転中心内側に第二グリース保持部H2が隣接しているので、第二第太陽歯車17と第二キャリア19との当接箇所Q2に遠心力でグリースが供給され、第二第太陽歯車17と第二キャリア19との当接箇所Q2のグリースが枯渇することない。よって、モータ軸M1の正回転時においても、経時にわたり接触回転摩擦による動力損失を低減することができる。
【0075】
また、図12に示すように、各キャリアの回転中心に凹部を設け、各太陽歯車の回転中心に先端球面形状の突起部を形成した構成にしてもよい。かかる構成でも、各キャリアに設けた凹部の縁部に各太陽歯車の突起部の球面形状の先端が当接し、太陽歯車とキャリアとの当接箇所を、回転中心に対してグリース保持部よりも外側にすることができる。
【0076】
また、図示してないが、先の図10の構成とは逆の構成でもよい。すなわち、各キャリアの回転中心に突起部を設け、その突起部の先端に円筒形状の凹部を形成した構成である。また、先の図12の構成とは逆の構成でもよい。すなわち、各太陽歯車の回転中心に円筒形状の凹部を形成し、各キャリアの回転中心に先端球面形状の突起部を設けた構成である。どの構成にするかは、製造や加工のしやすさなどにより適宜決めればよいが、図13に示すように、第一キャリア16と第二太陽歯車17とに凹部を形成するのが好ましい。
【0077】
これは、駆動伝達方向最上流の一段目入力軸である第一太陽歯車12は、高い減速比を実現するために小径歯車としている。このような小径の第一太陽歯車12の回転中心部に凹部を形成すると、第一太陽歯車の強度が低下してしまうという新たな問題が生じてしまう。また、本実施形態においては、第一太陽歯車12は、金属のモータ軸M1に直接切削加工して歯部を形成するか、モータ軸M1に金属歯車を圧入して形成している。このような金属のモータ軸の回転中心部に凹部の形成加工はコストがかかってしまう。よって、第一太陽歯車12と第一キャリア16との当接においては、第一キャリア側に凹部を形成して、第一キャリア側に第一グリース保持部H1を形成するのが好ましい。
【0078】
一方、駆動伝達方向最下流側の第二太陽歯車17は、出力側のため減速比よりも耐久性が重視されるため大径歯車を採用しているため、第一太陽歯車12にくらべ大きく、回転中心部に凹部を形成しても強度問題は生じにくい。さらに、本実施形態では、第二太陽歯車17と第一キャリア16は樹脂の一体成形品を採用しており、凹部を金型で実現することができ低コストで成形できる。このように、第一キャリア16と第二太陽歯車17とに凹部を形成することで強度問題が生じることなく、低コストにすることができる。
【0079】
[実施例3]
図14は、実施例3における第二太陽歯車17、第一キャリア、第一遊星歯車からなる移動体Tの斜視図である。図15は、実施例3における移動体Tを、第一太陽歯車12から見た正面図であり、図16は、実施例3における移動体Tの概略断面図である。
【0080】
この実施例3は、第二太陽歯車17、第一キャリア16、第一遊星歯車15からなる移動体Tの回転中心に、移動体Tを貫通する貫通孔31を設け、この貫通孔31にグリースを充填してグリース保持部H1,H2を形成したものである。
貫通孔31の第一太陽歯車側先端は、第一キャリア16の第一太陽歯車側側面から約1mm程度突出しており、貫通孔31の第二キャリア側先端は、第二太陽歯車17から約1mm程度突出している。
【0081】
よって、この実施例3は、モータ軸M1が正回転したときは、貫通孔31の第二キャリア側縁部が第二キャリア19と当接する。よって、この実施例3も、第二グリース保持部H2が、第二太陽歯車17(貫通孔31の第二キャリア側縁部)と第二キャリア19との当接箇所に対して回転中心側に隣接する形態となる。よって、この場合も遠心力でグリース保持部のグリースが、第二太陽歯車17(貫通孔31の第二キャリア側縁部)と第二キャリア19との当接箇所に移動させることができ、第二太陽歯車17(貫通孔31の第二キャリア側縁部)と第二キャリア19との当接箇所のグリース枯渇を良好に抑制することができる。
【0082】
また、モータ軸M1が逆回転したときは、貫通孔31の第一太陽歯車側縁部が第一太陽歯車12と当接する。よって、この実施例3も、第一グリース保持部H1が、第一太陽歯車12と第一キャリア16(貫通孔31の第一太陽歯車側縁部)との当接箇所に対して回転中心側に隣接する形態となる。よって、この場合も遠心力で第一グリース保持部H1のグリースが、第一太陽歯車12と第一キャリア16との当接箇所に移動させることができ、第一太陽歯車12と第一キャリア16との当接箇所のグリース枯渇を良好に抑制することができる。
【0083】
また、貫通孔31の縁部は、図16に示すように、断面半円形状となっており、貫通孔31の縁部が、当接部材(第二キャリア19または第一太陽歯車12)と線接触となり、回転摩擦の低減を図ることができる。
【0084】
また、この実施例3においても、貫通孔31の両端部付近は、内径が縁部向かって拡径するようなテーパ形状にし、遠心力でグリースを当接箇所へ移動させることができ、当接箇所のグリース枯渇を防止することができる。
【0085】
第二太陽歯車17と第一キャリア16と貫通孔31は樹脂の一体成形品であり、射出成形などにより成形されるものである。第一キャリア16は、2枚の側板部と、この2枚の側板部を繋ぐ円周方向等間隔で配置された3本の支柱部とで構成されている。この支柱部の間に遊星歯車が配置され、第一遊星歯車15を支持するキャリアピン15aの両端部は、上記2枚の側板で支持される。第一遊星歯車15の第一キャリア16への組付けは、支柱部の間に遊星歯車を配置した後、キャリアピン15aを、一方の側板部に設けられたキャリアピンを支持する断面形状支持穴から挿入して、第一遊星歯車を通して、キャリアピンの先端を、他方の側板部に設けれた支持穴で支持させることにより、組付けられる。また、第一キャリア16への第一遊星歯車15への組付容易性を考慮して、第一キャリアを、第二太陽歯車が設けられた側板部と、第一太陽歯車側の側板部とが分割可能な2部品構成としてもよい。この場合は、第一遊星歯車15と一体のキャリアピン15aの一端を、一方の側板部の支持穴に嵌めこんだ後、キャリアピン15aの他端を、他方の側板部の支持穴に嵌めこみなが、他方の側板部を一方の側板部と支柱を介して連結することで、第一遊星歯車15が、第一キャリア16に組みつけられる。
【0086】
第二太陽歯車17と第一キャリア16とを樹脂の一体成形することで、第一キャリア回転中心と第二太陽歯車の回転中心が一致する同軸精度を確保することができ、かつ、伝達剛性向上を図ることができる。
【0087】
また、図16に示すように、貫通孔31は、リブ32によって第二太陽歯車17と連結し、貫通孔31が、第二太陽歯車内でスラスト方向へ移動しないようにしている。これは、スラスト移動による当接および、回転によって発生する振動が第二太陽歯車の歯噛合いに影響が伝播しないようにする上で重要な構造となる。また、貫通孔31と第二太陽歯車とは、リブ32で連結される構成とすることで、貫通孔31の縁部が当接部材(第一太陽歯車12または第二キャリア19)との回転摩擦による発熱による熱伝播で貫通孔31が熱膨張しても、その影響が第二太陽歯車へ及ぶのを抑制することができる。
【0088】
このように実施例3においては、移動体Tを貫通する貫通孔31を設け、この貫通孔31にグリースを充填してグリース保持部H1,H2を形成することで、グリース充填工程が1回で済み、製造工程を簡略化することができ製造コストが低減できる。また、貫通孔31の一方の端部(縁部)が、当接部材(第二キャリア19または第一太陽歯車12)に当接しているとき、他方の端部は、当接部材から離間している。よって、当接箇所の回転摩擦によって発熱した熱を、他方の端部から逃がすことができ、貫通孔31の極端な温度上昇を防ぐことができる。
【0089】
上述では、2段構成の遊星歯車機構について説明したが、2段以上のプラネタリ型の遊星歯車機構においても、本発明を適用することができる。また、太陽歯車が、スラスト方向に変位可能な1段構成のプラネタリ型の遊星歯車機構においても、本発明を適用することができる。
【0090】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の(1)〜(13)態様毎に特有の効果を奏する。
(1)
固定内歯歯車と、固定内歯歯車14と同軸上で配設されモータ60などの駆動源からの回転駆動力を受けて回転する太陽歯車と、固定内歯歯車内に円周方向で配設され太陽歯車と前記固定内歯歯車と噛み合う複数の遊星歯車と、遊星歯車を回転自在に支持するとともに太陽歯車や内歯歯車と同軸上で回転自在なキャリアとを備え、固定内歯歯車、太陽歯車および遊星歯車が、はすば歯車からなる遊星歯車機構を備えた駆動伝達装置において、太陽歯車が遊星歯車との噛み合いでスラスト方向に変位したときに太陽歯車が当接するキャリアなどの当接部材と太陽歯車との当接箇所に隣接して、グリースを保持するグリース保持部を形成した。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、太陽歯車と当接部材との当接箇所にグリース保持部からグリースを供給することができ、経時にわたり当接部材と太陽歯車との当接箇所の摩擦抵抗を低減させることができる。よって、経時にわたり太陽歯車の磨耗を抑制することができ、当接部材と太陽歯車との当接時における動力損失、発熱磨耗を抑えることができる。
【0091】
(2)
また、上記(1)に記載の態様の駆動伝達装置において、当接部材と太陽歯車との当接箇所の周囲にグリース保持部を形成した。
かかる構成を備えることで、当接部材と太陽歯車との当接箇所の周囲からグリースを供給することができ、当接部材と太陽歯車との当接箇所のグリース枯渇をより一層抑制することができる。
【0092】
(3)
また、上記(2)に記載の態様の駆動伝達装置において、太陽歯車および当接部材の一方に円筒形状の凹部を設け、他方に凹部の中心と当接する突起部を設け、突起部と凹部との隙間にグリースを保持させてグリース保持部を形成した。
かかる構成とすることで、当接部材と太陽歯車との当接箇所の周囲にグリース保持部を形成することができる。
【0093】
(4)
また、上記(3)に記載の態様の駆動伝達装置において、グリース保持部を密封する密封部材を設けた。これにより、グリース保持部内のグリースが、グリース保持部から飛散するのを抑制することができる。
【0094】
(5)
また、上記(1)に記載の態様の駆動伝達装置において、太陽歯車と当接部材との当接箇所が、グリース保持部よりも太陽歯車の回転中心に対して外側となるように構成した。
かかる構成を備えることで、実施例2で説明したように、グリース保持部内のグリースを、遠心力により当接箇所へ供給することができ、グリースの枯渇をより一層抑制することができる。
【0095】
(6)
また、上記(5)に記載の態様の駆動伝達装置において、太陽歯車に円筒形状の凹部を設け、凹部にグリースを保持させてグリース保持部とし、凹部の縁部を、相手部材に当接させた。
かかる構成とすることで、太陽歯車と当接部材との当接箇所を、グリース保持部よりも太陽歯車の回転中心に対して外側にすることができる。
【0096】
(7)
また、上記(5)に記載の態様の駆動伝達装置において、当接部材に円筒形状の凹部を設け、凹部にグリースを保持させてグリース保持部とし、太陽歯車を、凹部の縁部に当接させた。
かかる構成とすることでも、太陽歯車と当接部材との当接箇所を、グリース保持部よりも太陽歯車の回転中心に対して外側にすることができる。
【0097】
(8)
また、上記(6)または(7)に記載の態様の駆動伝達装置において、凹部の内周面を、縁部に向かって、内径が拡径するテーパ形状にした。
かかる構成とすることで、グリース保持部内のグリースが、遠心力により太陽歯車と当接部材との当接箇所へ移動しやすくなり、より一層グリースの枯渇をより一層抑制することができる。
【0098】
(9)
また、上記(1)乃至(8)いずれかに記載の態様の駆動伝達装置において、遊星歯車機構を複数個軸方向に直列に複数配置し、第一太陽歯車12などの駆動伝達方向最上流に配置された遊星歯車機構の太陽歯車をモータ60などの駆動源に接続し、第一キャリアなどの駆動伝達方向最下流に配置された遊星歯車機構以外の遊星歯車機構のキャリアと第二太陽歯車などのこの遊星歯車機構に対して駆動伝達方向下流側に隣接する遊星歯車機構の太陽歯車とを一体に構成し、第二キャリア19などの駆動伝達方向最下流側に配置された遊星歯車機構のキャリアを、感光体ドラム1などの回転体へ駆動力を出力するためのドラム軸70などの部材に接続したものであり、キャリアと一体に構成された太陽歯車が遊星歯車との噛み合いでスラスト方向に変位したときにこの太陽歯車が当接する当接部材としてのキャリアとの当接箇所に隣接してグリース保持部を形成した。
遊星歯車機構を複数個軸方向に直列に複数配置した多段構成においては、駆動伝達方向最下流に配置された遊星歯車機構以外の遊星歯車機構のキャリアとこの遊星歯車機構に対して駆動伝達方向下流側に隣接する遊星歯車機構の太陽歯車とが一体となった一体物(本実施形態においては移動体T)は、機構内に浮動支持されている。よって、遊星歯車との噛み合いにより一体物を構成する太陽歯車にスラスト荷重が発生し、一体物がスラスト方向へ移動して、太陽歯車が当接部材に当接しても、その当接箇所には隣接してスリーブ保持部が形成されているので、当接箇所にグリース保持部からグリースが供給される。よって、複数段の遊星歯車における動力損失、摩擦発熱を経時にわたり抑制することができる。
【0099】
(10)
また、上記(9)に記載の態様の駆動伝達装置において、駆動伝達方向最下流に配置された遊星歯車機構以外の遊星歯車機構のキャリアとこの遊星歯車機構に対して駆動伝達方向下流側に隣接する遊星歯車機構の太陽歯車とをプラスチック成型で一体成型した。
かかる構成とすることで、実施例3で説明したように、キャリア回転中心と太陽歯車の回転中心の同軸精度を確保することができ、かつ、伝達剛性向上を図ることができる。
【0100】
(11)
また、上記(10)に記載の態様の駆動伝達装置において、キャリアと太陽歯車との一体成型品の回転中心部に貫通孔を設け、貫通孔にグリースを保持させて、グリース保持部とした。
かかる構成とすることで、実施例3で説明したように、貫通孔の縁部が当接部材と当接して、当接箇所が形成され、グリース保持部が、当接箇所よりも回転中心内側に配置することができる。これにより、遠心力によりグリース保持部内のグリースを当接箇所へ供給することができる。また、当接箇所の摩擦による発熱を、貫通孔から逃がすことができ、グリース保持部の温度上昇を抑えることができる。
【0101】
(12)
また、上記(11)に記載の態様に駆動伝達装置において、貫通孔31は、リブ32により太陽歯車に連結させた。
かかる構成とすることで、実施例3で説明したように、貫通孔31の縁部と当接部材との回転摩擦による発熱による熱伝播で貫通孔31が熱膨張しても、その影響が第二太陽歯車へ及ぶのを抑制することができ、駆動伝達性能に影響を及ぼすのを抑制することができる。
【0102】
(13)
また、感光体ドラム1、中間転写ベルト5の駆動ローラ、定着ローラなどの回転体を備えた画像形成装置において、回転体を駆動するモータ60などの駆動源と、駆動源の回転駆動力を回転体へ伝達する駆動伝達装置とを備え、駆動伝達装置として、上記(1)乃至(12)いずれかに記載の態様の駆動伝達装置を用いた。
かかる構成を備えることにより、回転体を一定速度で回転させることがバンディングなどの異常画像を抑制することができる。
【符号の説明】
【0103】
1:感光体ドラム
5:中間転写ベルト
8:定着ローラ対
12:第一太陽歯車
12a:第一突起部
13:モータ固定フランジ
14:内歯歯車
15:第一遊星歯車
16:第一キャリア
16a:第一凹部
16b:シール部材
17:第二太陽歯車
17a:第2突起部17a
18:第二遊星歯車
19:第二キャリア
19a:第二凹部
20:円筒軸
21:スプライン部
22:エンドキャップ
24:内歯歯車固定フランジ
31:貫通孔
32:リブ
60:モータ
70:ドラム軸
110:本体前側板
111:面板
121,171:凹部
H1:第一グリース保持部
H2:第二グリース保持部
M1:モータ軸
Q1,Q2:当接箇所
T:移動体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0104】
【特許文献1】特許第4268807号公報
【特許文献2】特許第4590299号公報
【特許文献3】特開2006−307909号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定内歯歯車と、
前記固定内歯歯車と同軸上で配設され駆動源からの回転駆動力を受けて回転する太陽歯車と、
前記固定内歯歯車内に円周方向で配設され前記太陽歯車と前記固定内歯歯車と噛み合う複数の遊星歯車と、
前記遊星歯車を回転自在に支持するとともに前記太陽歯車や前記内歯歯車と同軸上で回転自在なキャリアとを備え
前記固定内歯歯車、前記太陽歯車および前記遊星歯車が、はすば歯車からなる遊星歯車機構を備えた駆動伝達装置において、
前記太陽歯車が前記遊星歯車との噛み合いでスラスト方向に変位したときに前記太陽歯車が当接する当接部材と前記太陽歯車との当接箇所に隣接して、グリースを保持するグリース保持部を形成したことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
請求項1の駆動伝達装置において、
前記当接部材と前記太陽歯車との当接箇所の周囲に前記グリース保持部を形成したことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項3】
請求項2の駆動伝達装置において、
前記太陽歯車および前記当接部材の一方に円筒形状の凹部を設け、他方に前記凹部の中心と当接する突起部を設け、
前記突起部と前記凹部との隙間にグリースを保持させてグリース保持部を形成したことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項4】
請求項3の駆動伝達装置において、
前記グリース保持部を密封する密封部材を設けたことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項5】
請求項1の駆動伝達装置において、
前記太陽歯車と前記当接部材との当接箇所が、前記グリース保持部よりも太陽歯車の回転中心に対して外側となるように構成したことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項6】
請求項5の駆動伝達装置において、
前記太陽歯車に円筒形状の凹部を設け、
該凹部にグリースを保持させてグリース保持部とし、
前記凹部の縁部を、前記当接部材に当接させたことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項7】
請求項5の駆動伝達装置において、
前記当接部材に円筒形状の凹部を設け、
該凹部にグリースを保持させてグリース保持部とし、
前記太陽歯車を、前記凹部の縁部に当接させたことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項8】
請求項6または7の駆動伝達装置において、
前記凹部の内周面を、前記縁部に向かって、内径が拡径するテーパ形状にしたことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項9】
請求項1乃至8いずれかの駆動伝達装置において、
前記遊星歯車機構を複数個軸方向に直列に複数配置し、
駆動伝達方向最上流に配置された遊星歯車機構の太陽歯車を駆動源に接続し、駆動伝達方向最下流に配置された遊星歯車機構以外の遊星歯車機構のキャリアとこの遊星歯車機構に対して駆動伝達方向下流側に隣接する遊星歯車機構の太陽歯車とを一体に構成し、駆動伝達方向最下流側に配置された遊星歯車機構のキャリアを、回転体へ駆動力を出力するための部材に接続したものであり、
前記キャリアと一体に構成された太陽歯車が前記遊星歯車との噛み合いでスラスト方向に変位したときにこの太陽歯車が当接する当接部材としてのキャリアとの当接箇所に隣接してグリース保持部を形成したことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項10】
請求項9の駆動伝達装置において、
前記駆動伝達方向最下流に配置された遊星歯車機構以外の遊星歯車機構のキャリアとこの遊星歯車機構に対して駆動伝達方向下流側に隣接する遊星歯車機構の太陽歯車とをプラスチック成型で一体成型したことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項11】
請求項10の駆動伝達装置において、
前記キャリアと前記太陽歯車との一体成型品の回転中心部に前記太陽歯車から突出する貫通孔を設け、前記貫通孔にグリースを保持させて、グリース保持部としたことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項12】
請求項11の駆動伝達装置において、
前記貫通孔は、リブにより太陽歯車に連結させたことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項13】
回転体を備えた画像形成装置において、
前記回転体を駆動する駆動源と、前記駆動源の回転駆動力を前記回転体へ伝達する駆動伝達装置とを備え、
前記駆動伝達装置として、請求項1乃至12いずれかの駆動伝達装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
固定内歯歯車と、
前記固定内歯歯車と同軸上で配設され駆動源からの回転駆動力を受けて回転する太陽歯車と、
前記固定内歯歯車内に円周方向で配設され前記太陽歯車と前記固定内歯歯車と噛み合う複数の遊星歯車と、
前記遊星歯車を回転自在に支持するとともに前記太陽歯車や前記内歯歯車と同軸上で回転自在なキャリアとを備え
前記固定内歯歯車、前記太陽歯車および前記遊星歯車が、はすば歯車からなる遊星歯車機構を備えた駆動伝達装置において、
前記太陽歯車が前記遊星歯車との噛み合いでスラスト方向に変位したときに前記太陽歯車が当接する当接部材と前記太陽歯車との当接箇所に隣接して、グリースを保持するグリース保持部を形成したことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
請求項1の駆動伝達装置において、
前記当接部材と前記太陽歯車との当接箇所の周囲に前記グリース保持部を形成したことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項3】
請求項2の駆動伝達装置において、
前記太陽歯車および前記当接部材の一方に円筒形状の凹部を設け、他方に前記凹部の中心と当接する突起部を設け、
前記突起部と前記凹部との隙間にグリースを保持させてグリース保持部を形成したことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項4】
請求項3の駆動伝達装置において、
前記グリース保持部を密封する密封部材を設けたことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項5】
請求項1の駆動伝達装置において、
前記太陽歯車と前記当接部材との当接箇所が、前記グリース保持部よりも太陽歯車の回転中心に対して外側となるように構成したことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項6】
請求項5の駆動伝達装置において、
前記太陽歯車に円筒形状の凹部を設け、
該凹部にグリースを保持させてグリース保持部とし、
前記凹部の縁部を、前記当接部材に当接させたことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項7】
請求項5の駆動伝達装置において、
前記当接部材に円筒形状の凹部を設け、
該凹部にグリースを保持させてグリース保持部とし、
前記太陽歯車を、前記凹部の縁部に当接させたことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項8】
請求項6または7の駆動伝達装置において、
前記凹部の内周面を、前記縁部に向かって、内径が拡径するテーパ形状にしたことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項9】
請求項1乃至8いずれかの駆動伝達装置において、
前記遊星歯車機構を複数個軸方向に直列に複数配置し、
駆動伝達方向最上流に配置された遊星歯車機構の太陽歯車を駆動源に接続し、駆動伝達方向最下流に配置された遊星歯車機構以外の遊星歯車機構のキャリアとこの遊星歯車機構に対して駆動伝達方向下流側に隣接する遊星歯車機構の太陽歯車とを一体に構成し、駆動伝達方向最下流側に配置された遊星歯車機構のキャリアを、回転体へ駆動力を出力するための部材に接続したものであり、
前記キャリアと一体に構成された太陽歯車が前記遊星歯車との噛み合いでスラスト方向に変位したときにこの太陽歯車が当接する当接部材としてのキャリアとの当接箇所に隣接してグリース保持部を形成したことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項10】
請求項9の駆動伝達装置において、
前記駆動伝達方向最下流に配置された遊星歯車機構以外の遊星歯車機構のキャリアとこの遊星歯車機構に対して駆動伝達方向下流側に隣接する遊星歯車機構の太陽歯車とをプラスチック成型で一体成型したことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項11】
請求項10の駆動伝達装置において、
前記キャリアと前記太陽歯車との一体成型品の回転中心部に前記太陽歯車から突出する貫通孔を設け、前記貫通孔にグリースを保持させて、グリース保持部としたことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項12】
請求項11の駆動伝達装置において、
前記貫通孔は、リブにより太陽歯車に連結させたことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項13】
回転体を備えた画像形成装置において、
前記回転体を駆動する駆動源と、前記駆動源の回転駆動力を前記回転体へ伝達する駆動伝達装置とを備え、
前記駆動伝達装置として、請求項1乃至12いずれかの駆動伝達装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−57369(P2013−57369A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196105(P2011−196105)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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