説明

駆動力伝達装置およびこれを備えた画像形成装置

【課題】軸間距離の精度を高めることができ、重量、製造コストおよび配置スペースの増加を抑制でき、高い精度で駆動力を伝達することができる駆動力伝達装置を提供する。
【解決手段】モールドギヤ軸42Yと、モールドギヤ軸42Yの周りを回転自在かつ移動自在になるよう設けられた現像アイドラギヤ44Yと、現像アイドラギヤ44Yを駆動する現像駆動モータ52とを備え、モールドギヤ軸42Yが、軸線方向の移動を規制するフランジ部62と、組立体112に接触するようフランジ部62に設けられた突出部63と、駆動面板41に装着される装着部64とを有し、モールドギヤ軸42Yが回転する際の回転方向に応じて、突出部63が組立体112を押し付けるスラスト力F、または、モールドギヤ軸42Yが駆動面板41を押し付けるスラスト力Fのいずれかが作用するよう構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤにより駆動力を伝達する駆動力伝達装置およびこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のギヤにより駆動力を伝達する駆動力伝達装置は、複写機やプリンタなどの画像形成装置に多用されている。
近年、この種の画像形成装置においては、デジタルカメラなどのイメージング機器の普及に伴い、出力の高速化だけでなく、画像のカラー化および高画質化のニーズが高まっている。
このような要求を満たすため、カラーの画像形成装置では、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色毎に画像形成ユニットを持つタンデム型が提案されている。このタンデム型のカラー画像形成装置においては、一度の画像形成工程で各色画像を順次、転写材もしくは中間転写体上に多重転写することができ、カラー画像の形成を高速、高画質で行うことができる。
しかし、このようなタンデム型のカラー画像形成装置は、複数の感光体ドラムを有しているので、カラー画像の作像時間を短くできるものの、駆動部品の点数が多くなるため、製造コストや重量が増加してしまう。
【0003】
特に最近では装置の小型化に伴い各感光体ドラムの間隔を短くすることが求められている。この場合には、ギヤ列の平面的な配置スペースも限られてくることから、駆動力伝達装置は奥行き方向に大きくならざるを得ず、それに伴いギヤの駆動軸が長くなるため、更なる製造コストや重量の悪化を招いていた。
【0004】
そこで、駆動軸を従来の金属から合成樹脂製に変更する軽量化対策が考えられるが、その際に金属軸のように駆動軸を装置の側板にかしめて固定することができない。そのため、駆動軸と支持部との間の隙間により、駆動軸がぶれたりずれたりしてしまうという問題がある。
【0005】
特に駆動力を伝達するギヤのモジュールが小さくなる程、ギヤ同士の軸間距離の誤差が噛み合い状態に大きく影響を与えることになる。その結果、駆動軸に生ずるずれが、異常振動や、歯底当たりや、歯飛びにつながるので、軸間距離には高い精度が求められる。
従来、このような駆動軸のずれを規制する手段として、駆動軸を駆動力伝達部材の回転中心に向けて圧力を加えて押さえ付ける押さえ付け規制手段と、駆動軸の回転軸方向への移動を規制する軸方向移動規制手段とを備える駆動力伝達装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この駆動力伝達装置においては、製造コストの増加を抑制するとともに、駆動力を伝達する駆動力伝達部材の回転軸方向のずれを抑え、回転速度の変動を確実に抑制しつつ駆動力の伝達を行うようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の駆動力伝達装置では、駆動力伝達部材とは別に押さえ付け規制手段が必要であり、依然として重量および製造コストの増加につながってしまうことになる。また、押さえ付け規制手段を設けるスペースも必要であり、配置スペースの問題は解決されていない。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、軸間距離の精度を高めることができ、重量、製造コストおよび配置スペースの増加を抑制することができるとともに、高い精度で駆動力を伝達することができる駆動力伝達装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る駆動力伝達装置は、上記課題を解決するため、中心軸と、前記中心軸の周りを回転自在かつ前記中心軸の軸線方向に移動自在になるよう前記中心軸に設けられた回転体と、前記回転体を駆動する駆動源とを備え、前記回転体を介して駆動力を伝達する駆動力伝達装置において、前記中心軸が、前記回転体の軸線方向の移動を規制する移動規制部と、第1の静止部材に接触するよう前記移動規制部から前記軸線方向に突出して設けられた突出部と、前記第1の静止部材と前記軸線方向で反対側に位置する第2の静止部材に装着される装着部とを有し、前記回転体が所定の方向に回転する際に、前記回転体が前記移動規制部を押し付けることにより前記突出部が前記第1の静止部材を押し付ける第1のスラスト力が前記中心軸に作用するよう構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、軸間距離の精度を高めることができ、重量、製造コストおよび配置スペースの増加を抑制することができるとともに、高い精度で駆動力を伝達することができる駆動力伝達装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る駆動力伝達装置を搭載したカラー画像形成装置を示す概略の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るカラー画像形成装置の筐体部の斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るカラー画像形成装置の筐体部の側面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るカラー画像形成装置に搭載された駆動力伝達装置の表面側から見た斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るカラー画像形成装置に搭載された駆動力伝達装置の裏面側から見た斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るカラー画像形成装置に搭載された駆動力伝達装置の側面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る駆動力伝達装置を構成する駆動面板の斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る駆動力伝達装置を構成するモールドギヤ軸の突出部側から見た斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る駆動力伝達装置を構成するモールドギヤ軸の装着部側から見た斜視図である。
【図10】図6のA−A断面を示す断面図である。
【図11】図10の一部を拡大した拡大断面図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る駆動力伝達装置を構成するモールドギヤ軸を駆動面板に装着した状態の斜視図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る駆動力伝達装置を構成するモールドギヤ軸の他の構成例を示す模式図であり、(a)は分解図、(b)は組立図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明に係る駆動力伝達装置が適用されるカラー画像形成装置100の実施形態について説明する。
【0013】
図1ないし図3に示すように、カラー画像形成装置100は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のそれぞれの作像ステーションが中間転写ベルトの搬送方向に沿って並んだ間接転写方式のタンデム型カラー画像形成装置であり、カラープリンタとして構成されている。なお、以下の説明では4色の各作像要素にそれぞれY、M、C、Kを添えて表す。本実施形態に係るカラー画像形成装置100は、本発明に係る画像形成装置を構成している。
【0014】
このカラー画像形成装置100は、筐体部110と、給紙部120と、作像部130と、電源の操作や印刷枚数や転写紙Pのサイズなどの印刷情報を設定操作する図示しない操作部と、メイン制御部とを含んで構成されている。
【0015】
筐体部110は、給紙部120を収容する給紙部収容筐体110aと、作像部130を収容する作像部収容筐体110bとを含んで構成されている。この筐体部110は、金属板に切断、穴開け、曲げ、絞り、溶接などのいわゆる板金加工が施され成形されたシャシ111と、合成樹脂の成形がなされた成形品を組み立てた組立体112と、図示しない側板などのカバーとを含んで構成されている。本実施形態に係る筐体部110の組立体112は、本発明に係る画像形成装置の第1の静止部材を構成している。
【0016】
給紙部120は、紙収容カセット11と、給紙ローラ12と、レジストローラ対13とを含んで構成されている。この紙収容カセット11は、シート状の記録体たる転写紙Pを複数枚重ねて収納するようになっている。給紙ローラ12は、図示しない駆動手段によって回転するようになっているとともに、紙収容カセット11に収容された転写紙Pのうち一番上の転写紙Pに当接している。
【0017】
給紙ローラ12が回転すると、一番上の転写紙Pが、レジストローラ対13に向けて送り出されるようになっている。レジストローラ対13は、一対のローラで構成され、転写紙Pを挟み込んで両ローラが回転するようになっている。このレジストローラ対13は、その回転および回転の停止により、適切なタイミングで後述の2次転写ニップに向けて送り出すようになっている。
【0018】
作像部130は、露光装置21と、作像装置22と、駆動力伝達装置23と、2次転写装置24と、定着装置25と、トナー収容装置26と、中間転写ベルト27aを備えた中間転写装置27と、画像転写後に転写紙Pに転写されずに中間転写ベルト27aに残留する残留トナーを除去する図示しないベルトクリーニング装置とを含んで構成されている。
【0019】
露光装置21は、光源としての図示しないLDユニットから各色毎にレーザ光を出射し、出射された各レーザ光をポリゴンミラーおよび複数の反射ミラーを介して作像装置22に向かって照射してレーザ書き込みを行うようになっている。なお、このレーザ書き込みにおいては、書き込みデータに基づいて作成された変調信号で変調されたレーザ光が照射される。
【0020】
作像装置22は、感光体ドラム31Y、31M、31C、31Kと、現像ユニット32Y、32M、32C、32Kと、1次転写ローラ33Y、33M、33C、33Kと、各感光体ドラム31Y、31M、31C、31Kの外周に沿って配置された図示しないY、M、C、Kの各色のクリーニングユニット、帯電ユニットおよび除電ユニットとを含んで構成されている。
【0021】
各感光体ドラム31Y、31M、31C、31Kは、円筒状に形成され、駆動力伝達装置23に連結され、この駆動力伝達装置23によって回転するようになっている。各感光体ドラム31Y、31M、31C、31Kは、回転しつつ露光装置21から照射されたレーザ光により露光走査されて、その表面に静電荷が画像状に分布した状態となり、目に見えない潜像、すなわち静電潜像がその表面に形成されるようになっている。
この感光体ドラム31Yの端部の内側には、後述するスプライン内歯31sが形成されている。
【0022】
各現像ユニット32Y、32M、32C、32Kは、図示しないケーシングと、そのケーシングの開口から一部露出させるように配設された現像ロールとを有している。このケーシングには、磁性キャリアとトナーとを含む現像剤が収容されている。
【0023】
この現像剤は図示しない搬送スクリュウを介して撹拌搬送されながら摩擦帯電した後に、前述の現像ロールの表面に担持されるようになっている。そして、図示しないドクターブレードによってその層厚が規制されてから、各感光体ドラム31Y、31M、31C、31Kに対向する現像領域に搬送され、ここで各感光体ドラム31Y、31M、31C、31K上の静電潜像に各色のトナーを付着させるようになっている。この付着により、各感光体ドラム31Y、31M、31C、31K上にそれぞれトナー像が形成される。
【0024】
各1次転写ローラ33Y、33M、33C、33Kは、中間転写ベルト27aを各感光体ドラム31Y、31M、31C、31Kとの間に挟み込んでそれぞれに、いわゆる1次転写ニップを形成している。各1次転写ローラ33Y、33M、33C、33Kは、中間転写ベルト27aの裏面、すなわちループ内周面にプラスなどのトナーとは逆極性の転写バイアスを印加するよう構成されている。なお、各1次転写ローラ33Y、33M、33C、33Kを除く各ローラは、全て電気的に接地されている。
【0025】
各クリーニングユニットは、各感光体ドラム31Y、31M、31C、31Kから中間転写ベルト27a上に1次転写された後に、各感光体ドラム31Y、31M、31C、31Kに残留するトナーをクリーニングするようになっている。
各帯電ユニットは、駆動力伝達装置23によって回転する各感光体ドラム31Y、31M、31C、31Kの表面を一様に帯電させるようになっている。
各除電ユニットは、各感光体ドラム31Y、31M、31C、31Kから中間転写ベルト27a上に1次転写された後に、各感光体ドラム31Y、31M、31C、31Kの表面に残った電荷を徐電するようになっている。
【0026】
駆動力伝達装置23は、図4、図5、図6に示すように、駆動面板41と、各モールドギヤ軸42Y、42M、42C、42Kと、各現像ジョイントギヤ43Y、43M、43C、43Kと、各現像アイドラギヤ44Y、44M、44C、44Kと、各ドラムギヤ45Y、45M、45C、45Kと、ドラム駆動モータ51と、現像駆動モータ52と、中転駆動モータ53と、駆動面板取付ボルト54と、支持板55と、支持板取付ボルト56と、中転アイドラギヤ列57と、図示しない駆動制御ユニットとを含んで構成されている。これらの構成要素は、各モータの出力と製造コストとのバランスが最適になるようレイアウトされている。
【0027】
実施形態に係る駆動面板41は、本発明に係る駆動力伝達装置の第2の静止部材を構成し、各モールドギヤ軸42Y、42M、42C、42Kは、本発明に係る駆動力伝達装置の中心軸を構成し、各現像アイドラギヤ44Y、44M、44C、44Kは、本発明に係る駆動力伝達装置の回転体を構成し、現像駆動モータ52および中転駆動モータ53は、本発明に係る駆動力伝達装置の駆動源を構成している。
【0028】
駆動面板41は、図5および図7に示すように、平板部41aと、縁部41bとを有し、平板部41aと、縁部41bとが一体形成されている。
平板部41aには、各モールドギヤ軸42Y、42M、42C、42Kを取り付ける取付穴48が直線状に等間隔で平板部41aを貫通して形成されている。各取付穴48は、それぞれ対向して形成された円弧形状41eおよび扇形状41oで形成されている。
【0029】
また、平板部41aには、取付穴41tが複数個形成され、この取付穴41tには、駆動面板取付ボルト54がそれぞれ挿入され、駆動面板41が支持板55に取り付けられるようになっている。
縁部41bは、平板部41aの縁の全周囲に、その一方側に一様の高さで突出して形成され、駆動面板41の剛性が高められている。
【0030】
各モールドギヤ軸42Y、42M、42C、42Kは、図8、図9に示すように、それぞれ同じ形状で形成され、例えば、モールドギヤ軸42Yは、合成樹脂の成形品で構成されている。この各モールドギヤ軸42Y、42M、42C、42Kには、現像アイドラギヤ44Y、44M、44C、44Kが、それぞれ回転自在かつ軸線方向に移動自在に取り付けられるようになっている。
【0031】
この合成樹脂は、各現像アイドラギヤ44Y、44M、44C、44Kを形成する材料よりも、温度の上昇によって物体の長さや体積が膨張する割合であって、温度差1度当たりで示される熱膨張率(1/K)が、低い材料で構成されていることが好ましい。
【0032】
各モールドギヤ軸42Y、42M、42C、42Kが、熱膨張率(1/K)の低い材料で構成されていると、使用温度が上昇しても、各モールドギヤ軸42Y、42M、42C、42Kと、現像アイドラギヤ44Y、44M、44C、44Kとの間のクリアランスが狭められることが抑制される。その結果、使用温度が上昇しても、現像アイドラギヤ44Y、44M、44C、44Kは、それぞれモールドギヤ軸42Y、42M、42C、42Kに対する滑らかな回転および移動が確保される。
【0033】
このモールドギヤ軸42Yは、円筒部61と、この円筒部61の一方端側に形成されたフランジ部62と、このフランジ部62から軸線方向に突出して円筒状に形成された突出部63と、この円筒部61の他方端側に形成され、駆動面板41の取付穴48に装着する装着部64とを有している。円筒部61、フランジ部62、突出部63および装着部64は、一体形成されている。なお、これらの各構要素を適宜分離して別体のもので構成するようにしてもよい。
本実施形態に係るモールドギヤ軸42Yのフランジ部62は、本発明に係る駆動力伝達装置の移動規制部を構成する。
【0034】
円筒部61は、軸線方向に貫通した環状の貫通孔61aを有し一様な厚みで円筒状に形成されている。この貫通孔61aには、ドラムギヤ45Yの一部が挿入されるようになっている。
【0035】
フランジ部62は、円筒部61の一方端側にその軸線方向に直交する一様な厚みの円盤からなり、軸線方向に貫通する貫通孔62aを有している。また、フランジ部62は、縁から所定の厚み、幅および高さを有し軸線方向に突出して形成された突起62bと、この突起62bと、軸線を挟んで対向して形成された突起62cとを有している。
また、フランジ部62は、円盤の一部を平坦にした平坦部62dと、この平坦部62dと、軸線を挟んで対向して形成された平坦部62eとを有している。
【0036】
突出部63は、フランジ部62の円筒部61と反対側の側面から軸線方向に所定の高さで円筒状に突出するとともに、その基端から先端に向かって徐々に外径が小さくなるよう傾斜して形成された突出部テーパ面63tを有している。この突出部63は、貫通孔62aと同軸上に貫通孔62aと同じ大きさの貫通孔63aを有している。
【0037】
また、図10および図11に示すように、この突出部63は、モールドギヤ軸42Yが筐体部110に取付けられた際、突出部テーパ面63tと筐体部110に設けられた挿入穴110hとの間に軸線方向に隙間Sができるようになっている。本実施形態に係る駆動力伝達装置23の隙間Sは、本発明に係る駆動力伝達装置における第1の隙間を構成している。
【0038】
装着部64は、図9に示すように、この円筒部61の他方端側に円筒部61の外径よりも小さな外径を有し、環状に形成され軸線方向に突出した環状突起64aを有している。この環状突起64aには、円筒部61の貫通孔61aと同じ大きさの貫通孔64bが形成され、ドラムギヤ45Yの一部が挿入されるようになっている。
【0039】
この装着部64は、環状突起64aの径方向の外側に向かって突出して形成されるとともに、装着部64が、前述の駆動面板41の取付穴48に装着された際、モールドギヤ軸42Yの軸線方向の移動を規制するストッパ64cを有している。このストッパ64cと軸線を挟んで対向する側にストッパ64cと同様に形成されたストッパ64dを有している。
【0040】
このストッパ64cは、軸線方向に直交する幅W、軸線方向の幅Wおよび高さHで突出する軸線方向突起67と、円周方向の円弧の長さL、軸線方向の幅Wおよび高さHで突出する円周方向突起68とを有している。
【0041】
図12に示すように、装着部64が駆動面板41の取付穴48に装着され、その装着の際に、この円周方向突起68が取付穴48の扇形状41oの部位に挿入されるようになっている。そして、装着部64が円周方向に回されると、駆動面板41に軸線方向でロックされるようになっている。また、軸線方向突起67は、モールドギヤ軸42の回り止めとして機能するようになっている。
【0042】
図8および図9に示すように、この軸線方向突起67と、円周方向突起68と、円筒部61の縁とによりスリット69が区画されている。
このスリット69内に、取付穴48の円弧形状41eの部位が挿入されるようになっている。また、この取付穴48の円弧形状41eの部位がスリット69内に挿入された際、この円弧形状41eの部位と円周方向突起68との軸線方向に隙間Sができるようになっている。
【0043】
環状突起64aには、径方向の外側に向かい、スリット69内に突出するようにして、リブ64rが形成されている。このリブ64rは、装着部64が駆動面板41の取付穴48に装着される際、円弧形状41eの内壁面と強く接触し、モールドギヤ軸42Yが駆動面板41に対して自由に回転してしまうのを摩擦により防止する回転防止機能を有している(図11を参照)。
【0044】
本実施形態に係る駆動力伝達装置23の隙間Sは、本発明に係る駆動力伝達装置における第2の隙間を構成している。
【0045】
前述の突出部63が、モールドギヤ軸42Yが筐体部110に取り付けられた際、前述の隙間Sは、隙間Sよりも小さくなるように設定されている。
【0046】
このように隙間Sが、隙間Sよりも小さく設定されているので、モールドギヤ軸42Yが軸線方向の突出部63側に移動した際、円周方向突起68の内壁と駆動面板41とが接触する前に、突出部テーパ面63tが挿入穴110hの縁110fに先に接触することができる。そのため、モールドギヤ軸42Yが筐体部110に対して1点で、すなわち突出部テーパ面63tの周囲の軸線方向の一箇所の位置で縁110fに接触することで軸線方向の位置決めを可能とすることができる。すなわち心出しをすることができる。
【0047】
各現像ジョイントギヤ43Y、43M、43C、43Kは、図5、図8、図9に示すように、それぞれ同じ形状で形成されている。各現像ジョイントギヤ43Y、43M、43C、43Kは、合成樹脂の成形品で構成されている。また、各現像ジョイントギヤ43Y、43M、43C、43Kは、はすば歯車で形成されている。そのため、平歯車よりも比較的高い機械的強度を有し、高速で静かな回転が得られるようになっている。
【0048】
現像ジョイントギヤ43Yは、はすば歯車で形成されているので、軸方向力、すなわちスラスト力が発生し、駆動力を伝達する際、軸線方向に移動する力が作用する。
現像ジョイントギヤ43Y、43M、43Cは、現像駆動モータ52により各現像アイドラギヤ44Y、44M、44Cを介して駆動されるようになっている。現像ジョイントギヤ43Kは、はすば歯車などの他の駆動力伝達部材を介して中転駆動モータ53により駆動されるようになっている。
【0049】
各現像アイドラギヤ44Y、44M、44C、44Kは、それぞれ同じ形状で形成され、例えば、現像アイドラギヤ44Yは、図5、図10、図11に示すように、合成樹脂の成形品で構成されている。現像アイドラギヤ44Yは、現像ジョイントギヤ43Yと同様に、駆動力を伝達する際、軸線方向に移動する力が作用するはすば歯車で形成されている。
【0050】
現像アイドラギヤ44Yは、本体部71と歯部72とで構成されている。この本体部71に形成された貫通孔71aに、モールドギヤ軸42Yの円筒部61が挿入されるようになっている。また、現像アイドラギヤ44Yは、円筒部61の周りを自在に回転するとともに軸線方向に自在に移動できるようになっている。
現像アイドラギヤ44Yは、他のはすば歯車を介して現像駆動モータ52から駆動力を受けるようになっている。
【0051】
この現像アイドラギヤ44Yは、現像駆動モータ52から駆動力を受けて回転する際、例えば、現像駆動モータ52が正回転のとき、所定の方向にスラスト力が作用するはすば歯車で形成されている。この所定の方向は、現像アイドラギヤ44Yの軸線方向の端面がモールドギヤ軸42Yのフランジ部62を縁110f側に押し付ける方向であって、現像アイドラギヤ44Yがモールドギヤ軸42Yを移動させるようになっている。
この場合、現像駆動モータ52が逆回転すると、現像アイドラギヤ44Yがモールドギヤ軸42Yの装着部64の方向に移動し、駆動面板41を押し付けるスラスト力がモールドギヤ軸42Yに作用することになる。
【0052】
現像アイドラギヤ44Yは、機械稼働時、すなわち現像駆動モータ52が正回転のとき、モールドギヤ軸42Yの回り止めのロック方向と現像アイドラギヤ44Yの回転とが等しい方向になるように構成されている。この構成により、ロックが外れることがなくなる。したがって、ロックが外れることにより生ずる現像アイドラギヤ44Yの回転時に軸が連れ回って軸の姿勢が乱れる現象や、ギヤの回転精度が悪くなる現象が起きることはない。
【0053】
なお、現像駆動モータ52が正回転のとき、現像アイドラギヤ44Yがモールドギヤ軸42Yの装着部64の方向に移動し、駆動面板41を押し付けるスラスト力が現像アイドラギヤ44Yに作用するはすば歯車で形成してもよい。この場合、現像駆動モータ52が逆転すると、現像アイドラギヤ44Yがモールドギヤ軸42Yのフランジ部62を縁110f側に押し付ける方向に移動するスラスト力が作用することになる。
【0054】
各ドラムギヤ45Y、45M、45C、45Kは、図5、図10、図11に示すように、それぞれ同じ形状で形成され、例えば、ドラムギヤ45Yは、合成樹脂の成形品で構成されている。
【0055】
ドラムギヤ45Yは、図11に示すように、本体部81と歯部82とで構成されている。
本体部81は、ボス81aと、シャフト81bと、ボス81aの内部に形成されたリブ81cとを有している。ボス81aは、モールドギヤ軸42Yの円筒部61の貫通孔61aに非接触で挿入されている。
シャフト81bには、スプライン外歯81sが形成されている。このスプライン外歯81sと感光体ドラム31Yの内側に形成されたスプライン内歯31sと嵌め合わされるようになっている。
ドラムギヤ45Y、45M、45Cは、ドラム駆動モータ51により他のギヤを介して駆動されるようになっている。他方、ドラムギヤ45Kは、中転駆動モータ53により駆動されるようになっている。
【0056】
ドラム駆動モータ51は、駆動力伝達装置23に加わる負荷トルクと電動機の発生トルクとのバランスを取ることができ、高品質の画像を提供できる電動機からなり、例えば、ステッピングモータや超音波モータなどの電動機で構成されている。このドラム駆動モータ51は、駆動制御ユニットにより制御され、前述のようにドラムギヤ45Y、45M、45Cを駆動するようになっている。
【0057】
現像駆動モータ52は、ドラム駆動モータ51と同様にステッピングモータや超音波モータなどの電動機で構成されている。この現像駆動モータ52は、駆動制御ユニットにより制御され、前述のように現像ジョイントギヤ43Y、43M、43Cを現像アイドラギヤ44Y、44M、44Cを介して駆動するようになっている。
【0058】
中転駆動モータ53は、2次転写装置24の駆動ローラ24aを回転駆動させるとともに、駆動ローラ24aを介して中間転写ベルト27aを回転駆動するようになっている。また、中転駆動モータ53は、前述のように現像アイドラギヤ44Kを介して現像ジョイントギヤ43Kを回転駆動するとともに、ドラムギヤ45Kを回転駆動するようになっている。
【0059】
支持板55は、図4、図5および図6に示すように、平板部55aと、縁部55bと、取付部55cとを有している。この平板部55a、縁部55bおよび取付部55cは一体形成されている。
【0060】
平板部55aには、ドラム駆動モータ51、現像駆動モータ52および中転駆動モータ53が固定されるようになっている。
縁部55bには、平板部55aの縁の全周囲に、その一方側に一様の高さで突出して形成され、支持板55の剛性が高められている。
取付部55cは、縁部55bに複数個設けられ、この取付部55cを介して支持板55が筐体部110の作像部収容筐体110bに装着されるようになっている。
【0061】
中転アイドラギヤ列57は、図5に示すように、複数個のはすば歯車で構成されている。この中転アイドラギヤ列57は、中転駆動モータ53からの駆動力で回転駆動されるよう、中間転写ベルト27aの駆動ローラ24aと感光体ドラム31Kとを連結している。
【0062】
駆動制御ユニットは、CPU(Central Processing Unit)や、ROM(Read Only Memory)、データを記憶する不揮発性RAM(Random Access Memory)などのデバイスを具備している。この駆動制御ユニットは、ROMに記憶しているプログラムに基づいて、前述のドラム駆動モータ51、現像駆動モータ52および中転駆動モータ53の駆動を制御するようになっている。
【0063】
2次転写装置24は、中間転写ベルト27aのループ内周面側に配置された駆動ローラ24aと、中間転写ベルト27aを挟んで中間転写装置27のループ外周面側に駆動ローラ24aと対向して配置された2次転写対向ローラ24bとを含んで構成されている。
この駆動ローラ24aと2次転写対向ローラ24bとにより、いわゆる2次転写ニップを形成している。
【0064】
この2次転写ニップにおいては、駆動ローラ24aに2次転写対向ローラ24bが押し当てられて転写電界が印加され、中間転写ベルト27a上に転写されている1次転写画像が転写紙Pに転写されるようになっている。
【0065】
定着装置25は、定着ローラ25aと、加圧ローラ25bと、排紙ローラ対25cとを含んで構成されている。この定着ローラ25aと加圧ローラ25bとにより、いわゆる定着ニップを形成している。
定着ローラ25aは、円筒状に形成され、内部にハロゲンランプなどの発熱源を有している。加圧ローラ25bは、定着ローラ25aに所定の圧力で接触しながら回転するようになっている。
【0066】
この定着ニップに挟み込まれた転写紙Pは、その未定着トナー像担持面が定着ローラ25aに密着するよう搬送され、加熱や加圧の作用によってトナー像中のトナーが軟化し、フルカラーの画像が転写紙P上に定着するようになっている。この定着ニップにより定着した転写紙Pは、排紙ローラ対25cによってさらに搬送されるようになっている。
【0067】
トナー収容装置26は、トナー容器26Y、26M、26C、26Kからなり、筐体部110内における露光装置21の上側に着脱可能に収納されている。各トナー容器26Y、26M、26C、26K内の各トナーは、図示しないトナー搬送ユニットにより、各現像ユニット32Y、32M、32C、32Kに搬送されるようになっている。
【0068】
中間転写装置27は、前述のように中間転写ベルト27aからなり、この中間転写ベルト27aは無端状のベルトで構成されている。
この中間転写ベルト27aは、2次転写装置24の駆動ローラ24aを介して、中転駆動モータ53からの駆動力で回転駆動されるようになっている。
【0069】
この中間転写ベルト27aは、中間転写媒体として機能する像担持体であり、図示しない複数の支持ローラと加圧ローラ間に掛け回され、これらのローラによって支持され、所定の張力を与得られて回転移動するようになっている。この中間転写ベルト27aは、その無端移動に伴って各感光体ドラム31Y、31M、31C、31Kと、各1次転写ローラ33Y、33M、33C、33Kとの間に挟み込まれた1次転写ニップを順次通過して行くようになっている。
【0070】
この1次転写ニップを順次通過して行く過程で、各感光体ドラム31Y、31M、31C、31KのY、M、C、Kの各色のトナー像が重ね合わせて1次転写されるようになっている。これにより、中間転写ベルト27a上に4色重ね合わせとなったトナー像が形成されるようになっている。
【0071】
メイン制御部は、筐体部110内に配置されている。このメイン制御部は、露光装置21、作像装置22、定着装置25および中間転写装置27などの画像形成の構成要素を駆動する動作を制御するようになっている。また、このメイン制御部は、演算などの処理を実行するCPU、データを記憶するRAM、ROMなどのメモリを具備している。そして、メイン制御部は、ROMに記憶されているプログラムに基づいて、各動作を制御するようになっている。
【0072】
次いで、カラー画像形成装置100の動作について簡単に説明する。
以下、文字などの黒色を含むカラープリントを行う場合の動作について説明する。
まず、印刷枚数や転写紙Pのサイズなどの印刷情報の入力があると、メイン制御部の指令により、図1に示す露光装置21に書き込みデータが送られる。露光装置21は、書き込みデータに基づいて各感光体ドラム31Y、31M、31C、31Kにレーザ光を照射する。そして、各感光体ドラム31Y、31M、31C、31Kに露光走査により各色について光書き込みが行われ、各感光体ドラム31Y、31M、31C、31Kに静電潜像が形成される。
【0073】
次いで、各現像ユニット32Y、32M、32C、32Kにより、静電潜像が形成された各感光体ドラム31Y、31M、31C、31Kに各色のトナーの付着が行われ、各感光体ドラム31Y、31M、31C、31Kに各色のトナー像が形成される。
【0074】
各感光体ドラム31Y、31M、31C、31Kに形成されたトナー像は、1次転写ニップで、各感光体ドラム31Y、31M、31C、31Kと1次転写ローラ33Y、33M、33C、33Kとの間に挟みこまれた中間転写ベルト27a上にそれぞれ1次転写される。
そして、給紙部120の紙収容カセット11から転写紙Pが2次転写装置24の2次転写ニップに搬送される。
【0075】
この2次転写ニップにおいて、中間転写ベルト27a上の1次転写画像が転写紙Pに転写される。続いて、転写紙Pは定着装置25に搬送され、さらに転写紙P上の未定着トナー像担持面が定着ローラ25aに密着するよう搬送され加熱および加圧の作用によってトナー像が転写紙P上に定着する。そして、転写紙Pは排紙ローラ対25cにより所定のトレイに排出されカラープリントが完了する。
【0076】
この間、駆動力伝達装置23は、各感光体ドラム31Y、31M、31Cは、ドラムギヤ45Y、45M、45Cを介してドラム駆動モータ51により回転駆動される。感光体ドラム31Kは、ドラムギヤ45Kを介して中転駆動モータ53により回転駆動される。
【0077】
各現像ユニット32Y、32M、32Cの現像ジョイントギヤ43Y、43M、43Cは、現像アイドラギヤ44Y、44M、44Cを介して現像駆動モータ52により回転駆動される。現像ユニット32Kの現像ジョイントギヤ43Kは、現像アイドラギヤ44Kを介して中転駆動モータ53により回転駆動される。
【0078】
2次転写装置24の駆動ローラ24aは、中転駆動モータ53により回転駆動され、中間転写ベルト27aは、駆動ローラ24aを介して中転駆動モータ53により回転駆動される。
【0079】
現像アイドラギヤ44Y、44M、44C、44Kは、それぞれ、現像駆動モータ52から駆動力を受けて正方向に回転する際、現像アイドラギヤ44Yがモールドギヤ軸42Yのフランジ部62を押し付ける方向に移動する第1のスラスト力としてのスラスト力Fが作用する。そして、現像アイドラギヤ44Yによりフランジ部62が押し付けられると、モールドギヤ軸42Yの突出部63に形成された突出部テーパ面63tが、組立体112に形成された挿入穴110hの縁110fと接触する。このとき、モールドギヤ軸42Yが図11に示すスラスト力Fにより、組立体112に押し付けられ、モールドギヤ軸42Yの位置決めがなされる。すなわち、モールドギヤ軸42Yの軸線方向の位置が固定されるとともに、径方向の心出しがなされる。
【0080】
また、現像アイドラギヤ44Yは、モールドギヤ軸42Yの回り止めのロック方向と現像アイドラギヤ44Yの回転とが等しい方向になり、現像アイドラギヤ44Yの回転時に軸が連れ回って軸の姿勢が乱れ、ギヤの回転精度が悪くなるようなことが抑制される。
【0081】
なお、現像駆動モータ52が前述の回転とは逆方向に回転し現像アイドラギヤ44Y、44M、44C、44Kが前述とは逆の方向に回転すると、例えば、現像アイドラギヤ44Yは、モールドギヤ軸42Yの装着部64側に移動し、図11に示すように、駆動面板41を押し付ける方向に、第2のスラスト力としてのスラスト力Fが作用する。スラスト力Fによって、現像アイドラギヤ44Yは、駆動面板41で受けることになり、モールドギヤ軸42Yの軸線方向の動きに影響を及ぼすことがなく、現像アイドラギヤ44Yが逆方向に回転するときにも、モールドギヤ軸42Yの位置決めが外れることが抑制される。
【0082】
実施の形態に係るカラー画像形成装置100の駆動力伝達装置23は、前述のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0083】
すなわち、駆動力伝達装置23は、モールドギヤ軸42Yと、現像アイドラギヤ44Yと、現像アイドラギヤ44Yを駆動する現像駆動モータ52とを備えている。さらに、モールドギヤ軸42Yが、現像アイドラギヤ44Yの軸線方向の移動を規制するフランジ部62と、組立体112に形成された挿入穴110hの縁110fに接触する突出部63と、駆動面板41に装着される装着部64とを有している。そして、現像アイドラギヤ44Yが回転する際の回転方向が正回転の場合には、現像アイドラギヤ44Yがフランジ部62を押し付けることにより突出部63が縁110fを押し付けるスラスト力Fが作用するよう構成されている。他方、回転方向が逆回転の場合には、現像アイドラギヤ44Yが駆動面板41を押し付けるスラスト力Fが作用するよう構成されている。
【0084】
その結果、現像アイドラギヤ44Yが正回転の場合には、スラスト力Fの作用により、モールドギヤ軸42Yが、所定の位置に位置決めされることで、別部材の追加や余分な配置スペースを使用することがなくなるという効果が得られる。また、現像アイドラギヤ44Yなどの駆動ギヤを高い精度で回転させることができるという効果が得られる。
【0085】
さらに、現像アイドラギヤ44Yが逆回転の場合には、スラスト力Fの作用により、現像アイドラギヤ44Yは、駆動面板41で受けることになり、モールドギヤ軸42Yの軸線方向の動きに影響を及ぼすことがなく、モールドギヤ軸42Yの位置決めが外れないので、軸間距離の悪化を招くことがないという効果が得られる。したがって、現像アイドラギヤ44Yが逆回転するときにも、モールドギヤ軸42Yの位置決めが外れることが抑制され、現像アイドラギヤ44Yなどの駆動ギヤを高い精度で回転させることができるという効果が得られる。
【0086】
また、縁110fと突出部63に形成された突出部テーパ面63tとの間の隙間Sが、駆動面板41と装着部64に形成された円周方向突起68の内壁との間の隙間Sよりも小さくなるよう構成されている。
さらに、突出部63が、基端から先端に向かって外径が徐々に小さくなるよう形成された突出部テーパ面63tを有し、組立体112に突出部63が挿入されるよう入口に縁110fが形成された挿入穴110hを有し、モールドギヤ軸42Yが、組立体112に向かって移動した際、突出部テーパ面63tと、挿入穴110hの縁110fとが接触するよう構成されている。
【0087】
その結果、モールドギヤ軸42Yが軸線方向の突出部63側に移動した際、スリット69の内壁と駆動面板41とが接触する前に、突出部テーパ面63tが縁110fに先に接触することになる。したがって、モールドギヤ軸42Yが筐体部110に対して1点で、すなわち突出部テーパ面63tの周囲の軸線方向の一箇所の位置で縁110fに接触することで軸線方向の位置決めが確実になされる。
【0088】
したがって、このような位置決めにより、軸ぶれがなくなり、軸間距離の精度を高めることができ、重量、製造コストおよび配置スペースの増加を抑制することができるとともに、高い精度で駆動力を伝達することができるという効果が得られる。
【0089】
また、現像アイドラギヤ44Yが、はすば歯車で構成されているので、平歯車よりも比較的高い機械的強度を有し、高速で静かな回転が得られる。そして、前述のスラスト力F、スラスト力Fが確実に作用するという効果が得られる。
【0090】
さらに、モールドギヤ軸42Yが、現像アイドラギヤ44Yが有する熱膨張率よりも低い熱膨張率の材料で形成されているので、使用温度が上昇しても、各モールドギヤ軸42Y、42M、42C、42Kと、現像アイドラギヤ44Y、44M、44C、44Kとの間のクリアランスが狭められることが抑制されるという効果が得られる。その結果、使用温度が上昇しても、現像アイドラギヤ44Y、44M、44C、44Kは、それぞれモールドギヤ軸42Y、42M、42C、42Kに対する滑らかな回転および移動が確保される。そして、両者の摩擦による熱膨張で摩擦抵抗が増加することもなく、回転を悪化させることもないという効果が得られる。すなわち、使用環境による駆動状態の悪化を抑えることができるという効果が得られる。
【0091】
また、現像アイドラギヤ44Yは、機械稼働時、すなわち現像駆動モータ52が正回転のとき、モールドギヤ軸42Yの回り止めのロック方向と現像アイドラギヤ44Yの回転とが等しい方向になるように構成されている。この構成により、現像アイドラギヤ44Yの回転時に軸が連れ回って軸の姿勢が乱れ、ギヤの回転精度が悪くなるようなことはないという効果が得られる。
【0092】
カラー画像形成装置100は、前述の駆動力伝達装置23を備えているので、駆動源が正回転の場合に、高い精度で駆動力を伝達することができるだけでなく、逆転した際にも軸間距離の精度を悪化させることはない。このカラー画像形成装置100は、軸ぶれが生ずることなく、それぞれの駆動ギヤを高い精度で回転させることができ、例え駆動源が逆回転した場合であっても、高画質の画像形成装置を提供することができるという効果が得られる。
【0093】
本実施形態に係る駆動力伝達装置23においては、モールドギヤ軸42Yの突出部63に突出部テーパ面63tが形成された構成について説明した。しかしながら、本発明に係る駆動力伝達装置においては、突出部を他の形状で形成した構成であってもよい。
【0094】
例えば、図13に示すように、先端に縁163fを有する円筒部163を備え、駆動面板143に装着されたモールドギヤ軸142Yで突出部を構成するようにしてもよい。この場合、この円筒部163が挿入される筐体部110の組立体141の挿入穴141hを、入口から奥に行くほど直径が徐々に小さくなるよう形成された挿入穴テーパ面141tを備えたもので構成するようにしてもよい。
【0095】
この構成についても、実施形態に係る駆動力伝達装置23と同様の効果が得られる。すなわち、モールドギヤ軸142Yが回転し、図11に示すスラスト力Fが作用し、モールドギヤ軸142Yが組立体141に対して1点で、すなわち縁163fの周囲の軸線方向の一箇所の位置で挿入穴テーパ面141tに接触することで軸線方向の位置決めを可能となり、軸間距離の悪化を防ぐことができるという効果が得られる。
【0096】
また、本実施形態に係る駆動力伝達装置23においては、ドラムギヤ45Yのボス81aがモールドギヤ軸42Yの円筒部61に非接触で挿入された構成について説明した。しかしながら、本発明に係る駆動力伝達装置においては、ボス81aの先端面がモールドギヤ軸42Yのフランジ部62の駆動面板41側に接触可能にした構成であってもよい。
【0097】
この構成についても、実施形態に係る駆動力伝達装置23と同様の効果が得られる。すなわち、ドラムギヤ45Yが回転し、図11に示すスラスト力Fと同じ方向のスラスト力がドラムギヤ45Yに生じ、フランジ部62を駆動面板41側から組立体112側に押し付ける。これにより、モールドギヤ軸42Yが組立体112に対して1点で、すなわち縁110fの周囲の軸線方向の一箇所の位置で突出部テーパ面63tに接触することで軸線方向の位置決めを可能となり、モールドギヤ軸42Yの軸間距離の悪化を防ぐことができるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0098】
21 露光装置
22 作像装置
23 駆動力伝達装置
24 2次転写装置
24a 駆動ローラ
24b 2次転写対向ローラ
25 定着装置
26 トナー収容装置
27 中間転写装置
27a 中間転写ベルト
31Y、31M、31C、31K 感光体ドラム
32Y、32M、32C、32K 現像ユニット
33Y、33M、33C、33K 1次転写ローラ
41、143 駆動面板(第2の静止部材)
48、41t 取付穴
42、42Y、42M、42C、42K、142Y モールドギヤ軸(中心軸)
43Y、43M、43C、43K 現像ジョイントギヤ
44Y、44M、44C、44K 現像アイドラギヤ(回転体)
45Y、45M、45C、45K ドラムギヤ
51 ドラム駆動モータ
52 現像駆動モータ(駆動源)
53 中転駆動モータ(駆動源)
57 中転アイドラギヤ列
61 円筒部
62 フランジ部(移動規制部)
63 突出部
63t 突出部テーパ面
64 装着部
67 軸線方向突起
68 円周方向突起
69 スリット
100 カラー画像形成装置(画像形成装置)
110 筐体部(第1の静止部材)
110h、141h 挿入穴
110f、163f 縁
111 シャシ
112、141 組立体(第1の静止部材)
120 給紙部
130 作像部
141t 挿入穴テーパ面
第1のスラスト力
第2のスラスト力
隙間(第1の隙間)
隙間(第2の隙間)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0099】
【特許文献1】特開2010−216533号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸と、前記中心軸の周りを回転自在かつ前記中心軸の軸線方向に移動自在になるよう前記中心軸に設けられた回転体と、前記回転体を駆動する駆動源とを備え、前記回転体を介して駆動力を伝達する駆動力伝達装置において、
前記中心軸が、前記回転体の軸線方向の移動を規制する移動規制部と、第1の静止部材に接触するよう前記移動規制部から前記軸線方向に突出して設けられた突出部と、前記第1の静止部材と前記軸線方向で反対側に位置する第2の静止部材に装着される装着部とを有し、
前記回転体が所定の方向に回転する際に、前記回転体が前記移動規制部を押し付けることにより前記突出部が前記第1の静止部材を押し付ける第1のスラスト力が前記中心軸に作用するよう構成されたことを特徴とする駆動力伝達装置。
【請求項2】
前記回転体が前記所定の方向と逆方向に回転する際に、前記回転体が前記第2の静止部材を押し付ける第2のスラスト力が前記回転体に作用するよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の駆動力伝達装置。
【請求項3】
前記第1の静止部材と前記突出部との間の第1の隙間が、前記第2の静止部材と前記装着部との間の第2の隙間よりも小さくなるよう構成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の駆動力伝達装置。
【請求項4】
前記突出部が、基端から先端に向かって外径が徐々に小さくなるよう形成された突出部テーパ面を有し、前記第1の静止部材が前記突出部が挿入されるよう入口に縁が形成された挿入穴を有し、前記中心軸が、前記第1の静止部材に向かって移動した際、前記突出部テーパ面と、前記挿入穴の縁とが接触することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1の請求項に記載の駆動力伝達装置。
【請求項5】
前記突出部が、円筒状に形成され、先端に縁を有し、前記第1の静止部材が前記突出部が挿入されるよう形成された挿入穴を有するとともに、前記挿入穴が、入口から奥に行くほど直径が徐々に小さくなるよう形成された挿入穴テーパ面を有し、前記中心軸が、前記第1の静止部材に向かって移動した際、前記突出部の縁と、前記挿入穴テーパ面とが接触することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1の請求項に記載の駆動力伝達装置。
【請求項6】
前記回転体が、はすば歯車で構成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1の請求項に記載の駆動力伝達装置。
【請求項7】
前記中心軸が、前記回転体が有する熱膨張率よりも低い熱膨張率の材料で形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1の請求項に記載の駆動力伝達装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載された駆動力伝達装置を備え、前記駆動力伝達装置の動作により画像を形成することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−255989(P2012−255989A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130100(P2011−130100)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】