説明

駆動回路および該駆動回路を備える携帯機器

【課題】 D級増幅器を用いた駆動回路における電力の消費を抑制する。
【解決手段】 駆動回路(101)は、パルス変調された信号を増幅して出力するD級増幅器(12)と、該D級増幅器に接続され且つ該D級増幅器から出力される信号からパルス変調に係る搬送波成分を除去するローパスフィルタ(20)と、容量成分を有し且つ前記ローパスフィルタから出力される信号に基づき動作する圧電スピーカ(19)と、該圧電スピーカおよび前記ローパスフィルタ間に接続されたダンピング抵抗(30)とを備える。D級増幅器から出力された信号は、直接的にローパスフィルタへ供給され、その搬送波成分がローパスフィルタにて除去された後、ダンピング抵抗を介して圧電スピーカへ供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量成分を有する圧電スピーカの駆動回路に関し、特に、D級増幅器を用いた駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力効率が比較的高いことで知られるD級増幅器の用途として、例えば、スピーカを負荷とした駆動回路がある。D級増幅器を用いたスピーカ駆動回路の一例に、後述の特許文献1に記載のものがある。特許文献1の手法は、3チャネルのオーディオアンプの各チャネルにパルス幅変調(以下、「PWM」:Pulse Width Modulationと称する。)方式のD級アンプユニットを採用し、これらの各チャネルへの入力信号をチャネル間で位相シフトさせることにより、各チャネル間の駆動電流の相互干渉を防止するというものである。
【0003】
ところで、上述のようなスピーカの駆動回路においては、一般的に、D級増幅器からの出力をアナログ信号に変換してスピーカに供給するために、増幅器とスピーカとの間にコイル及びコンデンサから成るローパスフィルタが設けられる。上記特許文献1の手法におけるスピーカのような、いわゆるダイナミックスピーカの場合、このスピーカが容量成分を持たないことから、スピーカとローパスフィルタのコイルとによる共振は発生しないが、スピーカとして、容量成分を持つ圧電スピーカを駆動する場合、その容量成分とフィルタのコイルとにより共振が起こり、信号波形に特定周波数でのピークが現われることがある。このピークは、スピーカにおける音響ノイズの要因となることから、ピークを平坦化させるために、従来、駆動回路の伝送路中にダンピング抵抗なる抵抗素子を挿入し、伝送路のインピーダンスを調整するという方法が採られる。
【0004】
図4に、ダンピング抵抗が挿入された従来の駆動回路の構成例を示す。図示の駆動回路10は、符号が相反する2つの信号を上述の圧電スピーカ9に供給する、いわゆるBTL(Bridged Transless)接続形式の回路であり、ダンピング抵抗3aである各抵抗素子3および4は同一の値を持ち、また、ローパスフィルタ5aを構成する各コイル5および6、並びに各コンデンサ7および8も、それぞれ同じ値を持つ。
【0005】
駆動回路10において、図5の(a)に示すような波形1Aを持つアナログ信号が入力端子1に入力されると、この信号が、入力信号処理部2−0にて、符号が反転する2つの信号に変換された後、PWM変調器2−1により例えば数100KHzの周波数にてPWMを施される。変調された信号は、ドライバ2−2及び2−3により必要な電力が得られるよう増幅されたうえで、出力端子aおよびbから出力される。これにより、図5の(b)及び(c)に示す矩形波2Aおよび2Bのような、入力信号の振幅に応じてパルス幅が変化した2値信号を得る。D級増幅器2からの出力信号は、ダンピング抵抗3aを経た後、ローパスフィルタ5aにてPWM変調時の搬送波が除去されることにより、図5の(b)及び(c)に示す波形2A−1及び2B−1を持つアナログ信号となって圧電スピーカ9に印加される。
【0006】
なお、ダンピング抵抗3aの値が適正でない場合、既述したように、コイル5及び6と圧電スピーカ9の容量成分とにより直列共振回路が形成され、その結果、図6に示す周波数特性曲線3Aのように、周波数の高域でピーク3A−1を生じる。例えば、コイル5及び6の値をそれぞれ47μH、圧電スピーカ9の等価容量を2μFとすると、ピークは約12KHzになる。そこで、このピークを平坦化すべくダンピング抵抗3aの値を設定することにより、同図6に示す比較的緩やかな曲線3Bを得ることができる。上述のようなダンピング抵抗が挿入された回路は、例えば、後述の非特許文献1に記載されており、ここでは、ダンピング抵抗の値として4.7Ωが設定されている。
【特許文献1】特開2004−048333号公報
【非特許文献1】“昇圧電源内蔵圧電スピーカ駆動用D級パワーアンプ(NJU8753)”、第7頁・“応用回路例”、[online]、平成15年9月26日版、[平成16年9月6日検索]、インターネット<URL: http://www.njr.co.jp/j_frame/jf_00_sds.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、D級増幅器は、入力信号が印加されない無音時にも、パルス幅変調波をデューティ50%にて出力することから、図4に示すような従来の駆動回路においては、ローパスフィルタ5aに対し、ダンピング抵抗3aを通じて、常時、電流が供給されることとなる。よって、特に、このような駆動回路が携帯機器に設けられている場合は、電池の消耗が早められるという問題が生じる。
【0008】
なお、電池の消耗を抑制するために、図7に示すような駆動回路10´、すなわち図4の構成からコンデンサ7および8を削除した構成とすることにより、コンデンサが無い分、グランドへのコモンモード電流が少なくなり、結果、消費電流を削減することはできるが、圧電スピーカ9にはD級増幅器2からの搬送波がそのまま印加されることから、コモンモードノイズが増大し、ひいては放射ノイズが増大するという不都合が生じる。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、D級増幅器を用いた駆動回路における電力の消費を抑制し得る手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る駆動回路は、パルス変調された信号を増幅して出力するD級増幅器と、該D級増幅器に接続され且つ該D級増幅器から出力される信号からパルス変調に係る搬送波成分を除去するローパスフィルタと、容量成分を有し且つ前記ローパスフィルタから出力される信号に基づき動作する圧電スピーカと、該圧電スピーカおよび前記ローパスフィルタ間に接続されたダンピング抵抗とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、駆動回路のダンピング抵抗をローパスフィルタの後段に配置したことにより、フィルタの前段における直流抵抗成分が従来より小さくなり、結果、フィルタを流れる電流により消費される電力を削減することができる。よって、入力信号の印加の有無に関わらず信号出力するD級増幅器を用いた駆動回路の消費電力を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[第1の実施形態]
以下、本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。図1に、本発明に係る駆動回路の第1の実施形態による構成を示す。本実施形態の駆動回路101は、従来知られたBTL接続形式の回路であり、容量性負荷としての圧電スピーカ19を駆動するための回路である。駆動回路101は、図1に示すように、入力端子11に接続されたD級増幅器12と、D級増幅器12の出力端子a及びbに接続されたローパスフィルタ20と、ローパスフィルタ20及び圧電スピーカ19間に接続されたダンピング抵抗30とを備える。
【0013】
D級増幅器12は、図4に沿って説明した従来のD級増幅器と同様の構成を成し、すなわち、入力端子11からの入力信号を符号が相反する2つの信号に変換する入力信号処理部12−0と、入力信号処理部12−0にて変換された2つの信号にPWMを施すPWM変調器12−1と、PWM変調器12−1から出力される2つの信号を増幅して出力端子a及びbから出力するドライバ12−2及び12−3とを備える。ドライバ12−2及びドライバ12−3は、本発明における第1の増幅手段及び第2の増幅手段に対応する構成要素である。
【0014】
ローパスフィルタ20は、本発明における第1のフィルタを構成するコイル15及びコンデンサ17と、第2のフィルタを構成するコイル16及びコンデンサ18とを備える。コイル15は、図1に示すように、出力端子aを介してドライバ12−2に接続され、その他端にはコンデンサ17が接続されている。他方のコイル16は、出力端子bを介してドライバ12−3に接続され、その他端にはコンデンサ18が接続されている。また、コンデンサ17及びコンデンサ18は、直列に接続され且つ交点がグランドに接続されている。
【0015】
ダンピング抵抗30は、従来と同様に、ローパスフィルタ20のコイルと圧電スピーカ19の容量成分とによる共振により発生する波形のピークを平坦化するために、伝送路のインピーダンスを調整することを目的として設けられており、その構成は、コイル15とコンデンサ17との接続点に接続された抵抗素子13と、コイル16とコンデンサ18との接続点に接続された抵抗素子14とから成る。抵抗素子13及び抵抗素子14は、上述の態様でローパスフィルタ20に接続されている一方で、それぞれの他端が圧電スピーカ19に接続されている。
【0016】
図1に示す構成において、例えば、圧電スピーカ19が2μFのとき、コイル15及びコイル16の値をそれぞれ47μH、コンデンサ17及びコンデンサ18の値をそれぞれ0.1μF、そして、抵抗素子13及び抵抗素子14の値をそれぞれ4.7Ωとすることにより、図6に示す周波数特性曲線3Bのような、ピーク3A−1が平坦化された波形の信号を圧電スピーカ19に供給することができる。
【0017】
上述の構成を成す駆動回路101の動作を説明する。入力端子11に、図5の(a)の波形1Aを持つアナログ信号が入力されると、従来と同様にしてD級増幅器12の出力端子a及びbから、同図(b)及び(c)に示す矩形波2A及び2Bの信号が出力される。D級増幅器12から出力された各信号中の搬送波成分は、次段のローパスフィルタ20により除去される。搬送波成分を除去された後、上述の矩形波は、同図(b)及び(c)に破線にて示す波形2A−1及び2B−1を持つアナログ信号となり、これらの2つの信号が、ダンピング抵抗30を介して圧電スピーカ19へ供給される。
【0018】
このように、駆動回路101によれば、ダンピング抵抗30をローパスフィルタ20と圧電スピーカ19との間に配置したことから、図4に沿って説明した従来の構成に比べ、ローパスフィルタ20の前段における直流抵抗成分を小さくすることができ、これにより、ローパスフィルタ20に流れる搬送波電流によって消費される電力を削減することができる。また、D級増幅器12は、圧電スピーカ19の無音時のように、入力端子11への信号入力がない時も、デューティ50%の搬送波信号を出力するが、この信号はローパスフィルタ20にて除去されることから、後段のダンピング抵抗30へ供給されることはない。よって、駆動回路101によれば、無音時における電力の消費をも抑えることができる。
【0019】
なお、ローパスフィルタ20に搬送波成分の電流が流れたとき、ドライバ12−2及び12−3のオン抵抗、コイル15及び16の直流抵抗、および、コンデンサ17及び18によるESR(Equivalent Series Resistance:等価直列抵抗)等により、実際にはエネルギーを若干消費する。しかしながら、これらの抵抗成分は、ダンピング抵抗30よりも小さな値であることから、その消費量は、D級増幅器12からの出力が直接的にダンピング抵抗へ供給される従来の構成における消費量と比べれば、極めて小さい値である。
【0020】
[第2の実施形態]
上述した第1の実施形態では、図1に示すように、ローパスフィルタ20の両出力端にダンピング抵抗30の抵抗素子13及び抵抗素子14を接続したが、これに代えて、ローパスフィルタ20のいずれか一方の出力端にダンピング抵抗としての抵抗素子を接続するという構成であってもよい。この構成を第2の実施形態とする。
【0021】
図2に、第2の実施形態の構成を示す。図示の駆動回路102では、ダンピング抵抗30´として、コイル15とコンデンサ17との接続点にのみ抵抗素子13´が接続されている。この抵抗素子13´の値は、図1における抵抗素子13及び抵抗素子14の合算値とし、例えば、抵抗素子13及び抵抗素子14がそれぞれ上述の4.7Ωであれば、図2の抵抗素子13´の値は、合算値の9.4Ωとする。
【0022】
第2の実施形態によれば、図1に示す第1の実施形態の駆動回路101と同様な効果をもたらすことができ、また、ダンピング抵抗としての抵抗素子の個数を削減したことにより、回路の小型化を図ることができる。
【0023】
[具体例]
図3に、上述した各実施形態の駆動回路を用いた具体例の構成をブロックにて概略的に示す。図示の構成は、駆動回路101(102)を、携帯電話あるいは携帯用のパーソナルコンピュータのような携帯情報端末100に搭載した例である。携帯情報端末100は、電源となる電池110と、携帯情報端末100の全体の動作を制御する制御回路111と、アンテナ113を介して外部との無線通信を行う無線通信回路112と、携帯情報端末100の圧電スピーカ19´を駆動する上述の駆動回路101(102)とを備える。図示の携帯情報端末100においては、駆動回路101(102)による上述の作用により、電池110の消耗を抑えることができる。なお、本発明に係る駆動回路を備えた携帯機器としては、図3の携帯情報端末100に限らず、例えば、携帯オーディオ機器であってもよい。
【0024】
上記各実施形態のD級増幅器12は、入力信号にPWMを施すPWM変調器12−1を備えるものであったが、これに限らず、例えば、PWMに代えてPDM(Pulse Density Modulation:パルス密度変調)を施すものであってもよい。また、D級増幅器12に変調手段を設けることに代えて、予め変調された信号をD級増幅器へ外部入力する構成であってもよい。
【0025】
上記各実施形態の駆動回路101(102)は、接続形式がBTL接続であったが、これに限らず、本発明は、例えば、D級増幅器の入力信号変換手段が削除され、且つ、変調器の入出力端子、ドライバ、ローパスフィルタおよびダンピング抵抗の片方が削除された回路に接続した1つのスピーカに対し単一の信号が入力される形式にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による第1の実施形態の構成を示す回路図である。
【図2】本発明による第2の実施形態の構成を示す回路図である。
【図3】各実施形態の具体例の構成を示すブロック図である。
【図4】従来の駆動回路の構成を示す回路図である。
【図5】駆動回路に係る信号波形を説明するための説明図である。
【図6】駆動回路に係る周波数特性を説明するための説明図である。
【図7】従来の駆動回路の他の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0027】
101 駆動回路
11 入力端子
12 D級増幅器
12−0:入力信号処理部、12−1:PWM変調器、12−2:ドライバ、12−3:ドライバ
20 ローパスフィルタ
15、16 コイル
17、18 コンデンサ
30 ダンピング抵抗
13、14 抵抗素子
19 圧電スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス変調された信号を増幅して出力するD級増幅器と、該D級増幅器に接続され且つ該D級増幅器から出力される信号からパルス変調に係る搬送波成分を除去するローパスフィルタと、容量成分を有し且つ前記ローパスフィルタから出力される信号に基づき動作する圧電スピーカと、該圧電スピーカおよび前記ローパスフィルタ間に接続されたダンピング抵抗とを備えることを特徴とする駆動回路。
【請求項2】
前記D級増幅器は、入力信号を符号が相反する2つの信号に変換する入力信号変換手段と、該手段から出力される2つの信号にパルス変調を施すパルス変調手段と、該手段から出力される2つの信号を増幅する第1の増幅手段および第2の増幅手段とを有し、
前記ローパスフィルタは、前記第1の増幅手段の出力端に接続されたコイルと該コイルの他端に接続されたコンデンサとを有する第1のフィルタと、前記第2の増幅手段の出力端に接続されたコイルと該コイルの他端に接続されたコンデンサとを有する第2のフィルタとを有し、
前記ダンピング抵抗は、前記第1のフィルタのコイルの他端と該フィルタのコンデンサとの接続点に接続された抵抗素子を有することを特徴とする請求項1記載の駆動回路。
【請求項3】
前記ダンピング抵抗は、さらに、前記第2のフィルタの他端とコイルに対し該フィルタのコンデンサとの接続点に接続された抵抗素子を有し、
前記両抵抗素子が互いに同一の抵抗値を有することを特徴とする請求項2記載の駆動回路。
【請求項4】
前記D級増幅器のパルス変調手段は、パルス幅変調を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動回路。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の駆動回路と、該駆動回路に電源電圧を供給する電池とを備えることを特徴とする携帯機器。
【請求項6】
無線通信回路を有する携帯情報端末であることを特徴とする請求項5記載の携帯機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−94158(P2006−94158A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277350(P2004−277350)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】