説明

駆動装置、および撮像装置

【課題】部材間の摩擦による劣化を抑制して、駆動装置の耐久性を向上させる技術を提供する。
【解決手段】駆動装置であって、所定の駆動手段の動作に連動して運動を行う所定の部材と、所定の部材に摩擦力で係合するとともに、所定の駆動手段の動作により所定の部材に対して相対的な移動が可能な可動部と、可動部が所定の部材に対し第1の移動範囲において相対的に移動する第1の移動モードと、可動部が所定の部材に対し第1の移動範囲とは異なる第2の移動範囲において相対的に移動する第2の移動モードとを含む複数の移動モード間で、駆動装置の移動モードを所定のタイミングで変更するモード変更手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動技術に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子等の電気機械変換素子を用いた種々のタイプの駆動装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
例えば図9(a)〜(c)に模式的に示した素子固定タイプの駆動装置では、電機機械変換素子である圧電素子92の伸縮方向の一端が固定部材91に固定され、他端に駆動摩擦部材94が固定されている。駆動摩擦部材94は、圧電素子92の伸縮に伴なって、操出方向と戻り方向とに移動するようになっている。駆動摩擦部材94には、移動体93が摩擦力によって係合している。
【0004】
圧電素子92に電圧を印加し、圧電素子92を伸長時と収縮時との速度を異ならせて伸縮させることにより、移動体93を駆動する。図9(a)〜(c)は、図10に示した操出波形の電圧を印加したときのPa、Pb、Pcにおける各状態を、それぞれ示している。
【0005】
図10の区間Pa−Pbにおいて電圧波形が緩やかに上昇するとき、圧電素子92は相対的にゆっくり伸び、図9(a)の状態から図9(b)の状態へと変化する。このとき、移動体93は、駆動摩擦部材94に対して滑ることなく、あるいはほとんど滑ることなく、実質的には駆動摩擦部材94とともに一体的に移動する。
【0006】
次に、区間Pb−Pcにおいて電圧波形が急に下降するとき、圧電素子92は相対的に急に縮み、駆動摩擦部材94は急に初期位置に戻る。このとき、駆動摩擦部材94と移動体93との間に滑りが生じ、移動体93は実質的に移動せず、駆動摩擦部材94だけが初期位置に戻る。その結果、移動体93は、図9(c)に示すように、図9(a)の初期位置に対して操出方向に移動することとなる。
【0007】
このサイクルの繰り返しにより、移動体93は駆動摩擦部材94に沿って移動する。
【0008】
なお、急な上昇と緩やかな下降とで構成された戻り波形の電圧を圧電素子に印加すれば、移動体93は戻り方向に移動する。
【0009】
【特許文献1】特開2004−80964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1などで提案されている駆動装置では、移動体93と駆動摩擦部材94とが摩擦によって係合されているために、駆動の際に、移動体93と駆動摩擦部材94とが接触する部分において摩耗が発生する。一般的に、摩擦によって係合する部分に潤滑油などを塗布することで潤滑作用による摩耗の低減を図る技術が知られているが、摩耗が徐々に進行し、摩耗によって生じる微小な削り粉によって潤滑作用が低下する。そして、更に摩耗が進行すると、最終的には移動体93と駆動摩擦部材94との相対的な駆動が不可能となり、駆動装置が寿命を迎えてしまう。
【0011】
このような摩耗の問題以外にも、摩擦によって係合されている部分で長時間の連続駆動が行われると、摩擦に起因した発熱で移動体93と駆動摩擦部材94とが部分的に分子間結合をする所謂「焼き付き」と言われる現象が発生する場合もある。この場合にも、移動対93と駆動摩擦部材94との相対的な駆動が不可能となる。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、部材間の摩擦による劣化を抑制して、駆動装置の耐久性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、駆動装置であって、所定の駆動手段の動作に連動して運動を行う所定の部材と、前記所定の部材に摩擦力で係合するとともに、前記所定の駆動手段の動作により前記所定の部材に対して相対的な移動が可能な可動部と、前記可動部が前記所定の部材に対し第1の移動範囲において相対的に移動する第1の移動モードと、前記可動部が前記所定の部材に対し前記第1の移動範囲とは異なる第2の移動範囲において相対的に移動する第2の移動モードとを含む複数の移動モード間で、前記駆動装置の移動モードを所定のタイミングで変更するモード変更手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の駆動装置であって、前記複数の移動モードにおける前記所定の部材に対する前記可動部の初期位置が異なることを特徴とする。
【0015】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の駆動装置であって、前記所定の部材の長さが、前記第1および第2の移動範囲の長さを合計した長さ以上であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項4の発明は、請求項1または請求項2に記載の駆動装置であって、前記複数の移動範囲の長さが略同一であり、前記所定の部材の長さが、各前記移動範囲の長さの2倍以上であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項5の発明は、請求項3または請求項4に記載の駆動装置であって、前記複数の移動範囲が、相互に重複しないことを特徴とする。
【0018】
また、請求項6の発明は、所定の光学部材および所定の撮像素子を有し、請求項1から請求項5のいずれかに記載の駆動装置によって前記所定の光学部材および/または前記所定の撮像素子を撮像装置本体に対して相対的に移動させる撮像装置であって、前記モード変更手段による前記駆動装置の移動モードの変更が、撮影時には禁止されていることを特徴とする。
【0019】
また、請求項7の発明は、請求項6に記載の撮像装置であって、前記撮像装置を動画撮影を行う動画撮影モードに設定するモード設定手段を更に備え、前記モード変更手段が、前記撮像装置が前記動画撮影モードに設定されている場合、前記駆動装置の移動モードを予め設定されたタイミングで変更することを特徴とする。
【0020】
また、請求項8の発明は、請求項6または請求項7に記載の撮像装置であって、前記撮像素子によって得られる複数の画素信号には画素信号毎にアドレスが付与され、前記モード変更手段による前記駆動装置の移動モードの変更に応じて、前記撮像素子によって得られた複数の画素信号のうちの撮影画像データ用の画素信号の読み取り開始アドレスを変更するアドレス変更手段を更に備えることを特徴とする。
【0021】
また、請求項9の発明は、請求項6または請求項7に記載の撮像装置であって、前記撮像素子によって得られる画像データから当該画像データに係る画像領域に対して所定の位置関係を有する所定の一部画像領域に係る一部画像データを選択的に採用することで、撮影画像データを取得する撮影画像取得手段と、前記モード変更手段による前記駆動装置の移動モードの変更に応じて、前記所定の位置関係を変更する位置関係変更手段とを更に備えることを特徴とする。
【0022】
また、請求項10の発明は、請求項6から請求項9のいずれかに記載の撮像装置であって、前記撮像装置が当該撮像装置に対して電源の供給がされている電源入り状態、または当該撮像装置に対して電源の供給がなされていない電源切り状態に設定されるように指示する指示手段を更に備え、前記モード変更手段が、前記指示手段によって前記撮像装置が前記電源切り状態に設定されるように指示されたことに応答して、前記駆動装置の移動モードを変更することを特徴とする。
【0023】
また、請求項11の発明は、請求項6から請求項9のいずれかに記載の撮像装置であって、前記撮像素子を用いた撮影回数を記憶する記憶手段と、前記モード変更手段が、前記記憶手段に記憶された撮影回数に応じて、所定の撮影回数毎に、前記駆動装置の移動モードを変更することを特徴とする。
【0024】
また、請求項12の発明は、請求項6から請求項9のいずれかに記載の撮像装置であって、前記撮像素子を用いた動画撮影の撮影期間を記憶する記憶手段と、前記モード変更手段が、前記記憶手段に記憶された撮影期間に応じて、所定の撮影期間毎に、前記駆動装置の移動モードを変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
請求項1から請求項12のいずれに記載の発明であっても、可動部が所定の部材に対して相対的に移動する範囲を所定のタイミングで変更することで、所定の部材の各部において可動部と擦れる頻度が低減されるため、部材間の摩擦による劣化が抑制され、駆動装置の耐久性が向上する。
【0026】
請求項2に記載の発明によれば、所定の部材に対する可動部の初期位置も所定のタイミングで変更するため、例えば、移動範囲の所定位置から可動部の移動を開始させるような用途に適用できる。すなわち、駆動装置の用途が広がる。
【0027】
請求項3および請求項4のいずれに記載の発明によっても、変更前後における移動範囲を十分異ならせることができるため、部材間の摩擦による劣化がより抑制される。
【0028】
請求項5に記載の発明によれば、移動範囲の変更前後において移動範囲が重複しないため、所定の部材の各部において可動部と擦れる頻度が更に低減され、部材間の摩擦による劣化が更に抑制される。
【0029】
請求項6に記載の発明によれば、光学部材や撮像素子などを所定の部材に対して相対的に移動させる範囲が撮影時には変更されないため、撮影範囲が唐突に変更して撮影画像がずれてしまう不具合が防止される。
【0030】
請求項7に記載の発明によれば、部材間における摩擦頻度が高まる動画撮影モード時に、所定の部材の各部において可動部と擦れる頻度が低減されるため、部材間の摩擦による劣化が抑制され、駆動装置の耐久性が向上する。
【0031】
請求項8に記載の発明によれば、可動部が所定の部材に対して相対的に移動する範囲の変更に応じて、画素信号の読み出し開始アドレスが変更されるため、移動範囲の変更に伴う撮影範囲が変わってしまう不具合が防止される。
【0032】
請求項9に記載の発明によれば、可動部が所定の部材に対して相対的に移動する範囲の変更に応じて、画像データのトリミング範囲が変更されるため、移動範囲の変更に伴う撮影範囲が変わってしまう不具合が防止される。
【0033】
請求項10に記載の発明によれば、撮像装置の電源が切れる際に、可動部が所定の部材に対して相対的に移動する範囲を変更するため、ユーザーが撮像装置を使用する際、移動範囲の変更時間を待つことなく撮像装置を使用できる。
【0034】
請求項11および請求項12のいずれに記載の発明によっても、所定の部材の各部において可動部と擦れる頻度がより平均的に低減されるため、部材間の摩擦による劣化がより確実に抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0036】
<駆動装置の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る駆動装置1の要部構成を示す図である。ここで、図1(a)は、駆動装置1に関する分解斜視図であり、図1(b)は、駆動装置1に関する組立斜視図である。
【0037】
駆動装置1は、機器の固定部、例えばXY駆動テーブルのベース(不図示)に取り付けられる固定部材10と、例えば積層形の圧電素子11と、固定部材10に摺動可能に支持される駆動軸12と、被駆動部、例えばXY駆動テーブルのステージ(不図示)に結合される駆動ユニット13とを備えている。
【0038】
圧電素子11は、その伸縮方向の一方の端面が固定部材10に固着結合され、その伸縮方向の他方の端面には駆動摩擦部材(所定の部材)として機能する駆動軸12の一方の軸端面が固着結合されている。
【0039】
駆動軸12には、スライダー13a、摩擦部材13bおよび板ばね13cからなる駆動ユニット(可動部)13が、摩擦力で係合するようになっている。
【0040】
駆動装置1では、駆動回路2による電圧の印加に応じて伸縮することで駆動源として機能する圧電素子11の伸縮動作に連動して駆動軸12が軸方向に往復運動することにより、駆動軸12に対する駆動ユニット13の相対的な移動が可能となっている。
【0041】
<移動モードの変更>
図2は、駆動装置1の移動モードの変更を説明するための模式図である。
【0042】
図2(a)は、図1で示した駆動装置1の機械的な構成を模式的に示している。具体的には、固定部材10、圧電素子11、駆動軸12、および駆動ユニット13といった駆動装置1の主な機械的構成の関係が簡略化されて模式的に示されている。なお、図2(a)で示された機械的構成の駆動は、図9(a)〜(c)で示したものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0043】
図2(b)は、駆動ユニット13が駆動軸12に対して摺動しながら相対的に移動する範囲(移動範囲)および当該移動範囲の変更について示している。
【0044】
図2(b)で示すように、駆動軸12に対する駆動ユニット13の初期位置が、所定のタイミングにおいて複数(ここでは3つ)の位置の間で変更される。そして、当該初期位置の変更に伴い、駆動軸12に対し軸方向に沿って駆動ユニット13が相対的に移動する範囲(移動範囲)も複数(ここでは3つ)の移動範囲の間で変更される。当該初期位置および移動範囲の変更は、駆動回路2による電圧の印加に応じて圧電素子11が伸縮運動することで実施される。
【0045】
また、図2(b)では、駆動ユニット13が駆動軸12の軸方向に沿った略中央付近の初期位置(第1の初期位置)に設定された状態を駆動ユニット131(図中実線部)として示し、駆動ユニット13が駆動軸12のうちの圧電素子11に接近した初期位置(第2の初期位置)に設定された状態を駆動ユニット132(図中破線部)として示し、駆動ユニット13が駆動軸12のうちの圧電素子11から最も離隔した初期位置(第3の初期位置)に設定された状態を駆動ユニット133(図中破線部)として示している。
【0046】
駆動装置1は、駆動ユニット13が第1の初期位置(駆動ユニット131の状態)に設定された場合には、第1の初期位置を中心とした駆動軸12の軸方向に沿った所定の移動範囲R1内において駆動ユニット13が駆動軸12に対して相対的に移動するモード(第1の移動モード)に設定される。また、駆動ユニット13が第2の初期位置(駆動ユニット132の状態)に設定された場合には、第2の初期位置を中心とした駆動軸12の軸方向に沿った所定の移動範囲R2内において駆動ユニット13が駆動軸12に対して相対的に移動するモード(第2の移動モード)に設定される。更に、駆動ユニット13が第3の初期位置(駆動ユニット133の状態)に設定された場合には、第3の初期位置を中心とした駆動軸12の軸方向に沿った所定の移動範囲R3内において駆動ユニット13が駆動軸12に対して相対的に移動するモード(第3の移動モード)に設定される。
【0047】
駆動装置1が各移動モードに設定されると、駆動ユニット13は、各移動範囲R1〜R3の範囲内で、駆動軸12に対して軸方向に沿った相対的な往復移動を行う。
【0048】
また、ここでは、駆動軸12のうちの軸方向に沿って駆動ユニット13が摺動可能な区間の軸方向(一般的に所定方向)に沿った長さが、第1〜第3の移動範囲の軸方向に沿った長さの合計以上であるとともに、第1〜第3の移動範囲の軸方向に沿った長さは略同一であり相互に重複しないように設定されている。換言すれば、駆動軸12のうちの軸方向に沿って駆動ユニット13が摺動可能な区間(摺動可能区間)が、各第1〜第3の移動範囲の軸方向に沿った長さの3倍以上であり、第1〜第3の移動範囲は、それぞれ駆動軸12の軸方向に沿った異なる区間を占めている。すなわち、駆動軸12の軸方向に沿った長さが、第1〜第3の移動範囲の軸方向に沿った長さの合計以上であるとともに、各第1〜第3の移動範囲の軸方向に沿った長さの3倍以上である。
【0049】
ここで、例えば、駆動軸12の摺動可能区間の各部分に着目した場合、所定のタイミングで移動範囲R1〜R3の間で移動範囲が変更されると、機械的な摩耗が約1/3まで低減され、駆動装置1の寿命も約3倍まで延びる。
【0050】
<駆動装置を適用した具体例>
<撮像装置の概略構成>
図3は、本発明の実施形態に係る駆動装置1を適用した撮像装置100の概略構成を模式的に示す図である。図3では、撮像装置100がデジタルカメラである例を示して説明する。
【0051】
撮像装置100は、主に、カメラ本体部(撮像装置の本体部)20と当該カメラ本体部20の前面に設けられたレンズ部30とを備えている。
【0052】
カメラ本体部20は、主に、レンズ部30が設けられている反対側に配設された表示部3と、ユーザーによる入力操作を受け付ける操作部4と、露光により画像データを取得する撮像素子5と、カメラ本体部20の振れを検出する振れ検出部6と、各種データを格納する記憶部7と、撮像装置100の動作を統括制御する制御部50とを有している。一方、レンズ部30は、主に光軸Lに沿って移動することで撮影倍率の変更やオートフォーカス(AF)制御を実現する複数の光学レンズ31,32を有しており、レンズ駆動機構902は光学レンズ31を、カメラ本体部20に内蔵された検出装置(不図示)の距離信号に応じて、光軸Lに沿って駆動することにより焦点調節を実行する。
【0053】
また、撮像装置100は、手振れ(像ぶれ)を補正する機能(「手振れ補正機能機能」とも「像ぶれ補正機能」とも称する)を実現するために、光軸Lに対して垂直な面上で撮像素子5を移動させる駆動機構901を有している。駆動機構901は、上記駆動装置1が適用されたものである。
【0054】
表示部3は、液晶ディスプレイ等によって構成され、制御部50からの画像データ等の入力に応答して当該画像データを可視的に出力する。
【0055】
操作部4は、撮像装置100に対して電源の供給がされている状態(以下「電源入り状態」と称する)と電源の供給がなされていない状態(以下「電源切り状態」と称する)とを切換設定するように指示するボタン(電源ボタン)4aと、撮影動作の開始を指示するボタン(レリーズボタン)4bと、撮像装置100を静止画撮影を行うモード(静止画撮影モード)と動画撮影を行うモード(動画撮影モード)とに選択的に設定するためのボタン(モード切換ボタン)4cとを含んでいる。
【0056】
撮像素子5は、レンズ部30を介して入射される被写体像を受光して画素毎に電荷を蓄積し、光電変換により多数の画素データからなる画像信号を取得するものである。
【0057】
振れ検出部6は、カメラ本体部20の振れ、すなわち撮像装置100の振れの方向や量を検出するものであり、例えば、ジャイロセンサなどによって構成されている。
【0058】
記憶部7は、不揮発性の記憶媒体などによって構成され、例えば、撮影画像データなどを格納する。
【0059】
制御部50は、CPU、メモリ、およびROM等を備えた部分と、駆動機構901を構成する駆動装置1A,1B(後述)の圧電素子に電圧を与える駆動回路2を備えた部分とを有している。制御部50は、ROM内などに格納された各種プログラムをCPUで読み込んで実行することで各種制御を実現する。
【0060】
例えば、制御部50は、電源ボタン4aの押下に応じた信号を操作部4から受け付ける度に撮像装置100を電源切り状態と電源入り状態とに順次設定する。また、レリーズボタン4bの押下に応じた信号を操作部4から受け付ける度に撮像素子5を用いた撮影処理動作を開始させる。更に、モード切換ボタン4cの押下に応じた信号を操作部4から受け付けることで撮像装置100を静止画撮影モードや動画撮影モードに設定する。
【0061】
なお、静止画撮影モードに設定された状態でレリーズボタン4bが押下されると、1フレーム分の画像データを取得する撮影処理動作が行われる一方、動画撮影モードに設定された状態でレリーズボタン4bが押下されると1フレームの画像データを取得する撮影処理動作が時間的に連続して行われる一連の動画撮影動作が開始され、再度レリーズボタン4bが押下されると一連の動画撮影動作が終了される。
【0062】
また、制御部50は、撮影処理動作時には、振れ検出部6で検出された撮像装置100の振れの方向や量に係るデータを受け付けて、駆動回路2から各駆動装置1A,1Bの圧電素子に印加する電圧を調節することで、撮像素子5の位置を適宜調整する手振れ補正機能を実現する。なお、図示を省略しているが、駆動機構901では駆動対象物である撮像素子5の位置を検出するセンサが設けられ、手振れ補正機能では、撮像素子5の位置がモニタされつつ調整される。
【0063】
また、制御部50は、撮影処理動作毎に撮像素子5から入力される画像信号(画像データ)を受け付けて、その一部の画像データを選択的に採用することで記憶用の撮影画像データを取得し、記憶部7に格納する。例えば、撮像素子5によって得られる画像データを構成する多数の画素信号には画素信号毎にアドレス(例えば、XYアドレス)が付与されており、当該多数の画素信号のうちの撮影画像データを構成するための画素信号のXYアドレスの範囲の設定に従って、一部の画素信号すなわち一部の画像データを選択的に採用することで、記憶用の撮影画像データを取得する態様が考えられる。
【0064】
更に、制御部50は、駆動回路2から各駆動装置1A,1Bの圧電素子に対して適宜電圧を印加させることで、駆動装置1A,1Bにおける移動範囲を変更する。
【0065】
<駆動機構の概略構成>
図4は、本発明の実施形態に係る駆動機構901の概略構成を模式的に示す図である。
【0066】
図4で示すように、駆動機構901では、略直交する関係で駆動装置1の構成が適用された2つの駆動装置1A,1Bが配置されている。そして、駆動装置1Aは、図2(a)で示した固定部材10、圧電素子11、駆動軸12、および駆動ユニット13にそれぞれ相当する固定部材10A、圧電素子11A、駆動軸12A、および移動枠13Aを備え、駆動装置1Bも同様に、固定部材10B、圧電素子11B、駆動軸12B、および移動枠13Bを備えている。
【0067】
駆動装置1Aでは、固定部材10Aがカメラ本体部20のベースに固定されており、駆動軸12Aに対して移動枠13Aが摩擦によって係合され、圧電素子11Aの伸縮動作に連動した駆動軸92Aの軸方向に沿った駆動に伴って移動枠13Aが駆動軸92Aに対して相対的に往復移動可能となっている。
【0068】
また、移動枠13Aに対して駆動装置1Bが取り付けられている。具体的には、駆動装置1Bでは、固定部材10Bが移動枠13Aに対して固設されており、駆動軸12Bに対して移動枠13Bが摩擦によって係合され、圧電素子11Bの伸縮動作に連動した駆動軸12Bの軸方向に沿った駆動に伴って移動枠13Bが駆動軸92Bに対して相対的に往復移動可能となっている。
【0069】
更に、移動枠13Bには、撮像素子5が固設されている。よって、駆動装置1A,1Bの駆動により撮像素子5が駆動軸12A,12Bの2軸方向にそれぞれ平行な上下左右方向に沿って移動可能である。このため、撮像素子5が駆動軸12A,12Bの2軸を含む平面上でカメラ本体部20に対して相対的に移動可能となっている。
【0070】
2つの駆動装置1A,1Bは、振れ検出部6によって検出されるカメラ本体部20の振れの方向および量に応じた電圧を制御部50に含まれた駆動回路2から印加されることで、手振れ補正機能が実現される。
【0071】
より詳細には、振れ検出部6によりカメラ本体部20の動きすなわち振れの方向および量が検出されると、制御部50は、検出されたカメラ本体部20の振れの方向や量から、画像のぶれを打ち消す方向および量を演算し、この演算結果をもとに2つの駆動装置1A,1Bが駆動される。そして、駆動装置1A,1Bの駆動により、撮像素子5は略直交する2方向において画像のぶれを打ち消すような移動を行い、その結果として、ぶれのない画像に係る撮影画像データを得ることが可能となっている。
【0072】
そして、各駆動装置1A,1Bでは、駆動回路2を含む制御部50による圧電素子11A,11Bに付与する電圧制御により、駆動軸12Aの軸方向に沿った移動枠13A,13Bの移動範囲および初期位置が所定のタイミングで変更される。
【0073】
具体的には、駆動装置1Aでは図2(b)の移動範囲R1,R2,R3に対応する3つの移動範囲R1A,R2A,R3Aのうちの何れか1つの移動範囲が設定され、駆動装置1Bでは図2(b)の移動範囲R1,R2,R3に対応する3つの移動範囲R1B,R2B,R3Bのうちの何れか1つの移動範囲が設定される。
【0074】
このように駆動軸12A,12Bに対する移動枠13A,13Bの初期位置および移動範囲を各々3つずつ準備しておき、適宜初期位置および移動範囲を変更することで、駆動装置1A,1Bにおける摩耗の進行が遅延され、駆動機構901の寿命ひいては撮像装置100の寿命が長くなる。
【0075】
<移動範囲ならびに初期位置の変更タイミング>
上記の如く初期位置ならびに移動範囲を適宜変更することで各駆動装置1A,1Bの劣化を抑制できるが、撮影処理動作における露光期間中に移動範囲の変更が行われると、撮影範囲が変更され、撮像素子5で受光している被写体像がずれてしまう。
【0076】
図5は、移動範囲の変更に伴う撮影範囲の変更を説明するための図である。図5では、撮像素子5の位置を移動させる駆動装置1A,1Bに関して移動範囲の変更の影響が示されている。具体的には、駆動装置1Aの移動範囲が移動範囲R1Aであり且つ駆動装置1Bの移動範囲が移動範囲R1Bである場合における撮影範囲G1と、駆動装置1Aの移動範囲が移動範囲R2Aであり且つ駆動装置1Bの移動範囲が移動範囲R2Bである場合の撮影範囲G2と、駆動装置1Aの移動範囲が移動範囲R3Aであり且つ駆動装置1Bの移動範囲が移動範囲R3Bである場合の撮影範囲G3との位置関係が例示されている。
【0077】
移動範囲が変更されると、図5で示すように、被写体と撮影範囲G1〜G3との位置関係が変化して、撮像素子5で受光する被写体像がずれてしまう。
【0078】
このように、露光期間中、すなわち撮像素子5において被写体像から光電変換によって画像信号用の電荷信号を蓄積している期間(以下「電荷蓄積期間」とも称する)に駆動装置1A,1Bの移動範囲が変更されると、撮影画像では被写体がぼけてしまう。
【0079】
そこで、本実施形態に係る撮像装置100では、制御部50の制御により、露光期間を避けた所定のタイミングで駆動装置1A,1Bの移動範囲が変更される。所定のタイミングとしては、例えば、撮像装置100が電源入り状態となったタイミングが挙げられる。
【0080】
つまり、撮像素子5が固設された移動枠13A,13Bが駆動軸12A,12Bに対して相対的に移動する範囲が露光期間中には変更されないため、撮影範囲が唐突に変更されて撮影画像がぼけてしまうような不具合が防止される。
【0081】
なお、ここで言う「露光期間」は、撮影画像データに係る画像信号を得るための期間であるため、実際に撮影を行っている期間であり、撮像装置100では、撮影時には、制御部50により駆動装置1A,1Bの移動範囲の変更が禁止されていると言える。
【0082】
<撮影画像データの生成>
図5で示すように、移動範囲が変更される度に撮影範囲が変化するため、撮像装置100の姿勢を保持していても、そのまま撮影画像データを取得すると、構図も変化してしまう。特に、一般的なデジタルカメラで採用されている撮影前に撮影範囲や構図を確認するための動画的態様で出力される所謂プレビュー画像が表示されている際に、移動範囲が変更されると、撮影範囲や構図が唐突に変化し、ユーザーの混乱を招く。また、光学ファインダーで撮影範囲や構図を確認している際にも、移動範囲が変更されると撮影範囲や構図が唐突に変化し、ユーザーの混乱を招く。
【0083】
このような問題を解消するために、本発明の実施形態に係る撮像装置100では、移動範囲の変更に応答して、撮像素子5によって得られる画像データのうちの一部を選択的に採用することで、記憶用の撮影画像データを生成するようにしている。
【0084】
図6から図8は、同一の被写体を撮像装置100の姿勢を変えることなく撮影した際に、撮像素子5によって得られる画像データに係る画像領域と撮影画像データに係る画像領域との位置関係を示す図である。
【0085】
図6では、駆動装置1Aの移動範囲が移動範囲R1Aであり且つ移動範囲1Bの移動範囲が移動範囲R1Bである場合に、撮像素子5で得られる画像信号に係る画像領域(すなわち撮影範囲に対応)GR1が例示されている。図7では、駆動装置1Aの移動範囲が移動範囲R2Aであり且つ駆動装置1Bの移動範囲が移動範囲R2Bである場合に、撮像素子5で得られる画像信号に係る画像領域GR2が例示されている。図8では、駆動装置1Aの移動範囲が移動範囲R3Aであり且つ駆動装置1Bの移動範囲が移動範囲R3Bである場合に、撮像素子5で得られる画像信号に係る画像領域(すなわち撮影範囲に対応)GR3が例示されている。
【0086】
図6から図8で示すように、移動範囲の変更により、同一の被写体であっても、各画像領域GR1,GR2,GR3に占める被写体をとらえた画像領域(被写体画像領域)が変わってしまう。
【0087】
そこで、撮像装置100では、図6から図8で示すように、移動範囲の変更に応じて、各画像領域GR1,GR2,GR3のうち、被写体画像領域が占める位置が略同一となるような画像領域TR1,TR2,TR3を選択的に採用する。より詳細には、画像領域GR1から画像領域TR1を選択的に採用し、画像領域GR2から画像領域TR2を選択的に採用し、画像領域GR3から画像領域TR3を選択的に採用する。
【0088】
このような構成を実現する手法としては、例えば、移動範囲の変更に応じて、撮像素子5によって得られた画像信号を構成する複数の画素信号のうちの読み取り開始アドレスを変更することで、撮影画像データを構成する画素信号を選択的に採用するような手法が挙げられる。より詳細には、撮像素子5から制御部50のメモリに複数の画素信号が入力され、当該メモリから画素信号を読み出す際に、読み取り開始アドレス、すなわち撮影画像データを構成する画素信号を読み出すアドレスの範囲を適宜変更する手法が挙げられる。
【0089】
このような構成により、移動枠13A,13Bの初期位置や移動範囲が変更されても、最終的に得られる撮影画像データに係る構図は略同一となる。したがって、移動範囲の変更に伴う撮影範囲の変化による不具合を防止できる。
【0090】
また、いわゆるトリミング処理を利用して、画像の一部を切り出すことによっても、移動範囲の変更に拘わらず、撮影範囲および構図を略一定に保つことができる。例えば、移動範囲毎に、撮像素子5によって得られる画像データに係る画像領域に対して所定の位置関係を有する所定の一部画像領域を設定しておく。そして、制御部50の制御下で、移動範囲の変更に応じて、所定の位置関係すなわち所定の一部画像領域を変更し、撮像素子5によって得られた画像データに係る画像領域のうちの所定の一部画像領域を選択的に採用することで、記憶用の撮影画像データが得られる。なお、上記所定の位置関係に係る情報は、例えば、記憶部7に記憶しておけば良い。
【0091】
以上のように、本発明の実施形態に係る駆動装置1では、駆動ユニット13が駆動軸12に対して相対的に移動する範囲が所定のタイミングで変更される。このため、駆動軸12の各部において駆動ユニット13と擦れる頻度が低減される。その結果、部材間の摩擦による摩耗や焼き付きなどといった劣化が抑制され、駆動装置1の耐久性が向上する。
【0092】
また、駆動軸12に対する駆動ユニット13の初期位置も移動範囲とともに所定のタイミングで変更される。このため、例えば、移動範囲の所定位置から駆動ユニット13の移動を開始させるべき用途などに適用することも可能となり、駆動装置1の用途が広がる。
【0093】
<変形例>
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。
【0094】
◎例えば、上記実施形態では、移動範囲を変更する際に、併せて初期位置を変更したが、これに限られず、例えば、2以上の移動範囲の一部が相互に重複する場合には、初期位置を変更することなく、移動範囲を変更することも可能である。
【0095】
◎また、上記実施形態では、移動範囲が3つ設定され、当該3つの移動範囲の間において移動範囲を適宜変更していたが、これに限られず、2以上の移動範囲が準備され、当該2以上の移動範囲の間で移動範囲を適宜変更するものであれば、上記実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0096】
したがって、上記実施形態では、駆動軸12のうちの軸方向に沿って駆動ユニット13Cが摺動可能な区間(摺動可能区間)の軸方向に沿った長さが、第1〜第3の移動範囲の軸方向に沿った長さの合計以上であったが、これに限られない。例えば、摺動可能区間の軸方向に沿った長さが少なくとも2つの移動範囲の軸方向に沿った長さの合計以上であっても良い。また、各移動範囲の軸方向に沿った長さが略同一である場合には、摺動可能区間の軸方向に沿った長さが各移動範囲の軸方向に沿った長さの2倍以上であっても良い。
【0097】
より一般的には、N個(Nは2以上の自然数)の移動範囲のうちの何れか1つの移動範囲が選択的に設定される場合には、摺動可能区間の軸方向に沿った長さをN個の移動範囲の軸方向に沿った長さの合計以上としても良い。また、各移動範囲の軸方向に沿った長さが略同一である場合には、摺動可能区間の軸方向に沿った長さを各移動範囲の長さのN倍以上としても良い。すなわち、駆動軸12の軸方向に沿った長さが、N個の移動範囲の軸方向に沿った長さの合計以上であるとともに、各移動範囲の軸方向に沿った長さのN倍以上としても良い。
【0098】
このような構成を採用することで、変更前後における移動範囲を十分異ならせることができ、部材間の摩擦による劣化がより抑制される。
【0099】
◎また、上記実施形態では、駆動軸12のうちの軸方向に沿って駆動ユニット13Cが摺動可能な区間(摺動可能区間)が、各第1〜第3の移動範囲の長さの3倍以上であり、異なる移動範囲どうしが重複していなかったが、これに限られない。
【0100】
例えば、各移動範囲においては、初期位置が移動範囲の中央部付近であり、移動範囲の中央部近傍における駆動ユニット13Cの往復運動の頻度の方が移動範囲の端部近傍における駆動ユニット13Cの往復運動の頻度よりも明らかに大きな場合がある。このような場合には、各移動範囲においては、中央部付近に近づくにつれて駆動軸12の摩耗度合いが激しくなる傾向にある。当該傾向を示すケースでは、複数の移動範囲が、互いの中央部付近が重複しなければ適宜両端近傍が相互に重複しても、駆動軸12の摩耗や焼き付きのリスクが分散される。このため、部材間の摩擦による劣化が抑制され、駆動装置1の耐久性が向上する。
【0101】
より詳細には、駆動軸12のうちの軸方向に沿って駆動ユニット13Cが摺動可能な区間(摺動可能区間)の軸方向に沿った長さを、移動範囲の軸方向に沿った長さの1.5倍よりも長くすると、相互に中央部が重複しない2つの移動範囲のうちの何れか1つの移動範囲を選択的に設定できる。
【0102】
但し、各移動範囲においては、両端部に近づくにつれて摩耗度合いが低減するものの、駆動軸12の摩耗や焼き付きのリスクを分散させる上では、極力重複し合う区間が短い方が好ましく、更に、摺動可能区間の軸方向に沿った長さを移動範囲の軸方向に沿った長さの2倍以上とする方が、少なくとも2つの移動範囲を相互に重複させることなく設定可能であるため更に好ましい。
【0103】
すなわち、移動範囲の変更前後において移動範囲どうしが重複しないような構成とする方が、駆動軸12の各部において駆動ユニット13と擦れる頻度が更に低減され、部材間の摩擦による劣化が更に抑制される。
【0104】
また、駆動装置1の大型化が許される範囲内で、摺動可能区間の軸方向に沿った長さが長くなればなるほど、より多くの移動範囲が設定可能となるため、駆動軸12の摩耗や焼き付きのリスクが分散される。
【0105】
◎また、上記実施形態では、撮像素子5の露光期間を避けつつ所定のタイミングで駆動装置1A,1Bの移動範囲を変更する目的で、撮像装置100が電源入り状態となる毎に移動範囲を変更したが、これに限られない。
【0106】
例えば、撮像装置100が動画撮影モードに設定されている場合には、手振れ補正機能を実現するために駆動装置1の駆動頻度が高まり、駆動軸12の摩耗や焼き付きが起こり易くなる。このため、撮像装置100が静止画撮影モードに設定されている場合と動画撮影モードに設定されている場合とで移動範囲の変更タイミングを切り換えても良い。
【0107】
具体的には、撮像装置100が静止画撮影モードに設定されている場合には、例えば、撮像装置100が電源入り状態となる毎に移動範囲が変更される一方、撮像装置100が動画撮影モードに設定されている場合には、例えば、一連の動画撮影の期間中において露光時間を避けつつ予め設定されたタイミングで移動範囲が変更されても良い。すなわち、この場合も制御部5の制御により露光期間では移動範囲の変更が禁止される。
【0108】
このような構成を採用すると、部材間における摩擦頻度が高まる動画撮影モードに設定されている場合に、駆動軸12の各部が駆動ユニット13と擦れる頻度が低減される。このため、部材間の摩擦による劣化が抑制され、駆動装置1の耐久性が向上する。
【0109】
ところで、一連の動画撮影の期間中において移動範囲を変更する態様としては、一連の動画撮影が開始されてから所定の時間が経過する毎に次の移動範囲へ変更される態様や、一連の動画撮影が開始されてから所定回数の露光(すなわち実際の撮影)が行われる度に、次の移動範囲へ変更される態様が考えられる。更に、一連の動画撮影が終了する度に次の移動範囲へ変更される態様や、駆動装置1の駆動時間が所定時間に達する度に次の移動範囲へ変更される態様など、種々の態様が考えられる。
【0110】
このように所定の撮影回数毎や所定の撮影期間毎に移動範囲を変更する構成を採用すると、駆動軸12の各部と駆動ユニット13とが擦れる頻度がより平均的に低減されるため、部材間の摩擦による劣化がより確実に抑制される。
【0111】
例えば、3つ以上の移動範囲が準備されている場合には、3つ以上の移動範囲を時間順次に設定していくことで、各移動範囲における駆動軸12の劣化を平均的に抑制できる。
【0112】
一方、撮像装置100が静止画撮影モードに設定されている場合にも、所定回数の露光(すなわち実際の撮影)が行われる度に、次の移動範囲へ変更しても良い。
【0113】
なお、例えば、現在の移動範囲ならびに次の変更先となる移動範囲、撮影回数、動画撮影の期間、および露光期間の積算値などといった移動範囲の変更に関する各種管理情報を記憶部7に記憶することで、変更タイミングの制御を含めた移動範囲の変更を適宜実施することができる。
【0114】
◎一般的に撮像装置では、電源入り状態となると光学レンズや撮像素子の位置が初期位置に設定されるが、例えば、撮像装置100において、電源切り状態となる際に光学レンズ31や撮像素子5の移動範囲ならびに初期位置を変更することで、次回に撮像装置100が電源入り状態となる際に、光学レンズ31や撮像素子5を初期位置まで移動させる期間を短縮できる態様も考えられる。当該態様では、ユーザーが撮像装置100を素早くを使用できるなどといった利点が考えられる。
【0115】
◎また、上記実施形態では、駆動源として圧電素子11,11A,11Bを用いたが、これに限られず、例えば、形状記憶合金(SMA)やパルスモータなど、駆動軸12,12A,12Bを往復移動させることができる駆動源であれば良い。
【0116】
◎また、上記実施形態では、撮像素子5をカメラ本体部20に対して相対的に移動させる駆動機構901に、略直交する関係で駆動装置1の構成が採用された駆動装置1A,1Bを配置したが、これに限られず、例えば、光学レンズ31を光軸Lに沿ってカメラ本体部20に対して相対的に移動させる駆動機構902に、駆動軸12の軸方向が光軸Lと平行となるように駆動装置1の構成を適用した駆動装置を配置しても良い。また、光学レンズ31を該光軸Lの垂直方向に移動させるように駆動装置1の構成を適用して、手振れ補正機能を持たせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の実施形態に係る駆動装置の要部構成を示す図である。
【図2】駆動装置の移動モードの変更を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態に係る撮像装置の概略構成を示す模式図である。
【図4】本発明の実施形態に係る駆動機構を例示する模式図である。
【図5】撮影範囲の変更を説明する図である。
【図6】撮影画像に対応する画像領域を例示する図である。
【図7】撮影画像に対応する画像領域を例示する図である。
【図8】撮影画像に対応する画像領域を例示する図である。
【図9】本発明の従来技術に係る駆動装置を説明するための図である。
【図10】本発明の従来技術に係る駆動装置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0118】
1,1A,1B 駆動装置
2 駆動回路
5 撮像素子
7 記憶部
11,11A,11B 圧電素子
12,12A,12B 駆動軸
13 駆動ユニット
13A,13B 移動枠
31 光学レンズ
100 撮像装置
901 駆動機構
902 レンズ駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置であって、
所定の駆動手段の動作に連動して運動を行う所定の部材と、
前記所定の部材に摩擦力で係合するとともに、前記所定の駆動手段の動作により前記所定の部材に対して相対的な移動が可能な可動部と、
前記可動部が前記所定の部材に対し第1の移動範囲において相対的に移動する第1の移動モードと、前記可動部が前記所定の部材に対し前記第1の移動範囲とは異なる第2の移動範囲において相対的に移動する第2の移動モードとを含む複数の移動モード間で、前記駆動装置の移動モードを所定のタイミングで変更するモード変更手段と、
を備えることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置であって、
前記複数の移動モードにおける前記所定の部材に対する前記可動部の初期位置が異なることを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の駆動装置であって、
前記所定の部材の長さが、前記第1および第2の移動範囲の長さを合計した長さ以上であることを特徴とする駆動装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の駆動装置であって、
前記複数の移動範囲の長さが略同一であり、
前記所定の部材の長さが、各前記移動範囲の長さの2倍以上であることを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の駆動装置であって、
前記複数の移動範囲が、相互に重複しないことを特徴とする駆動装置。
【請求項6】
所定の光学部材および所定の撮像素子を有し、請求項1から請求項5のいずれかに記載の駆動装置によって前記所定の光学部材および/または前記所定の撮像素子を撮像装置本体に対して相対的に移動させる撮像装置であって、
前記モード変更手段による前記駆動装置の移動モードの変更が、撮影時には禁止されていることを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
請求項6に記載の撮像装置であって、
前記撮像装置を動画撮影を行う動画撮影モードに設定するモード設定手段、
を更に備え、
前記モード変更手段が、
前記撮像装置が前記動画撮影モードに設定されている場合、前記駆動装置の移動モードを予め設定されたタイミングで変更することを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の撮像装置であって、
前記撮像素子によって得られる複数の画素信号には画素信号毎にアドレスが付与され、
前記モード変更手段による前記駆動装置の移動モードの変更に応じて、前記撮像素子によって得られた複数の画素信号のうちの撮影画像データ用の画素信号の読み取り開始アドレスを変更するアドレス変更手段、
を更に備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
請求項6または請求項7に記載の撮像装置であって、
前記撮像素子によって得られる画像データから当該画像データに係る画像領域に対して所定の位置関係を有する所定の一部画像領域に係る一部画像データを選択的に採用することで、撮影画像データを取得する撮影画像取得手段と、
前記モード変更手段による前記駆動装置の移動モードの変更に応じて、前記所定の位置関係を変更する位置関係変更手段と、
を更に備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項6から請求項9のいずれかに記載の撮像装置であって、
前記撮像装置が当該撮像装置に対して電源の供給がされている電源入り状態、または当該撮像装置に対して電源の供給がなされていない電源切り状態に設定されるように指示する指示手段、
を更に備え、
前記モード変更手段が、
前記指示手段によって前記撮像装置が前記電源切り状態に設定されるように指示されたことに応答して、前記駆動装置の移動モードを変更することを特徴とする撮像装置。
【請求項11】
請求項6から請求項9のいずれかに記載の撮像装置であって、
前記撮像素子を用いた撮影回数を記憶する記憶手段と、
前記モード変更手段が、
前記記憶手段に記憶された撮影回数に応じて、所定の撮影回数毎に、前記駆動装置の移動モードを変更することを特徴とする撮像装置。
【請求項12】
請求項6から請求項9のいずれかに記載の撮像装置であって、
前記撮像素子を用いた動画撮影の撮影期間を記憶する記憶手段と、
前記モード変更手段が、
前記記憶手段に記憶された撮影期間に応じて、所定の撮影期間毎に、前記駆動装置の移動モードを変更することを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−160956(P2008−160956A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345868(P2006−345868)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】