説明

駆動装置、画像形成装置

【課題】特別な構成を用いずに、電磁クラッチの回り止めと回転規制部材の衝突音を低減する。
【解決手段】電磁クラッチ1の回転止め2は第1の回転止めスラスト規制部材9と第2の回転止めスラスト規制部材10によって挟み込み、位置を規制する。第1の回転止めスラスト規制部材9は回転規制部材3に取り付ける。第2の回転止めスラスト規制部材10はギヤホルダ6に取り付ける。動力伝達時には、電磁クラッチ1自体が回転しようとするが、回り止め2が第1の回転止めスラスト規制部材9と第2の回転止めスラスト規制部材10によって挟み込まれているために回転せず、回転規制部材3に衝突しない。よって追加の部品を用いずに、電磁クラッチ1の動作時に発生する回転規制部材3と回転止め2の衝突音を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁クラッチを備えた駆動装置と、これを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの2つ以上の機能を有する複合機等の画像形成装置の一例の全体構造を概念的に示す断面図である。本例の画像形成装置は、主な構成として、原稿を読み取る読み取りユニット111、画像を形成する画像形成部112、自動原稿搬送装置(ADF)113、ADF113から送り出される原稿をスタックする原稿排紙トレイ114、給紙カセット115ないし118を備える給紙部119、記録用紙をスタックする排紙部(排紙トレイ120)を備えている。
【0003】
この装置では、ADF113の原稿台121上に原稿Dをセットして図示せぬ操作部での操作、例えばプリントキーの押下操作をすると、最上位の原稿Dがピックアップローラ122の回転により矢印B1方向へ送り出され、原稿搬送ベルト123の回転により、画像読み取りユニット111に固定されたコンタクトガラス124上へ給送され、そこで停止する。コンタクトガラス124上に載置された原稿Dの画像は、画像形成部112とコンタクトガラス124の間に位置する読み取り装置125によって読み取る。読み取り装置125は、コンタクトガラス124上の原稿Dを照明する光源126、原稿画像を結像する光学系127、原稿画像を結像させるCCD等からなる光電変換素子128等を有している。画像読み取り終了後、原稿Dを原稿搬送ベルト123の回転により矢印B2方向へ搬送して原稿排紙トレイ114上へ排出する。このように、原稿Dを1枚ずつコンタクトガラス124上へ給送して原稿画像を画像読み取りユニット111によって読み取る。
【0004】
一方、画像形成部112の内部には、像担持体である感光体130が配置してある。感光体130は、図において時計方向に回転駆動し、帯電装置131によって表面を所定の電位に帯電させる。また、書込ユニット132からは、読み取り装置125によって読み取った画像情報に応じて光変調したレーザ光Lを照射し、帯電させた感光体130の表面をこのレーザ光Lで露光し、これによって感光体130の表面に静電潜像を形成する。この静電潜像は、現像装置133を通るとき、対向する転写装置134によって感光体130と転写装置134の間に給送された記録材Pに転写する。トナー像転写後の感光体130の表面は、クリーニング装置135によって清掃する。
【0005】
画像形成部112の下部に配置した複数の給紙カセット115ないし118には、紙等の記録材Pを収容してあり、いずれかの給紙カセット115ないし118から記録材Pを矢印B3方向へ送り出し、その記録材Pの表面に、上述のように感光体130の表面に形成したトナー像を転写する。次に、記録材Pを矢印B4で示すように画像形成部112内の定着装置140を通し、熱と圧力の作用によって記録材Pの表面に転写されたトナー像を定着させる。136を通った記録材Pを排出ローラ対137によって搬送し、矢印B5で示すように排紙トレイ120へ排出し、スタックする。
【0006】
このような画像形成装置では、種々の構成部品の駆動に電磁クラッチを備えた駆動装置を用いているが、そのような駆動装置では、電磁クラッチの回り止めと、取り付けられる側の回転規制部材との衝突音を低減する方法として、規制部材と回り止めの間に弾性部材を構成し、衝突音を低減する技術が知られている。
【0007】
特許文献1には、電磁クラッチの動作時に発生する衝突騒音を低減する目的で、弾性部材を用いてスラスト方向の移動規制を行う方法が開示されている。
【0008】
図1は、電磁クラッチの動作時にクラッチ回転止めと回転規制部材との衝突音が発生する構成について説明するための図である。図1の例では、入力ギヤ軸8に保持された入力ギヤ7によってギヤホルダ6に保持された電磁クラッチ1に動力が伝達され、電磁クラッチ1が動作しているとき、クラッチ出力軸5に動力が伝達される。伝達時に、電磁クラッチ1自体が回転しようとするが、回転規制部材3と電磁クラッチ1に構成されている回り止め2が接触することにより、電磁クラッチ1の回転が規制される。このとき、回転規制部材3と回り止め2との衝突音が発生する。
【0009】
図2は、回転規制部材と回りとめの衝突音低減に係る従来の構成について説明するための図である。図2の例では、回転規制部材3と回り止め2の間に弾性部材8を構成し、回転規制部材3と回り止め2の衝突音を低減している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、弾性部材を用いた技術では、装置構成が複雑になり、コストが増加するという問題がある。
【0011】
そこで本発明は、特別な構成を用いずに、電磁クラッチの回り止めと回転規制部材の衝突音を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る駆動装置は、電磁クラッチと、前記電磁クラッチに取り付けた回転止めと、前記電磁クラッチの回転を規制する回転規制部材と、前記回転止めのスラスト方向の動きを前記電磁クラッチへの取り付け面側から規制する第1のスラスト規制部材と、前記回転止めのスラスト方向の動きを前記電磁クラッチへの取り付け面と反対側から規制する第2のスラスト規制部材とを備え、前記第1、第2のスラスト規制部材で前記回転止めを挟んで保持可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特別な構成を用いずに、電磁クラッチの回り止めと回転規制部材の衝突音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】電磁クラッチ動作時にクラッチ回転止めと回転規制部材との衝突音が発生する構成を示す図
【図2】回転規制部材と回り止めの衝突音を低減させる従来の構成を示す図
【図3】本発明の実施形態1の構成を示す図
【図4】本発明の実施形態2の構成を示す図
【図5】本発明の実施形態3の構成を示す図
【図6】本発明の実施形態4の構成を示す図
【図7】本発明の実施形態5の構成を示す図
【図8】画像形成装置の一例の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る駆動装置では、電磁クラッチ動作時に、動力伝達部以外に、電磁クラッチの本体が回転しようとする。電磁クラッチに構成された回り止めをスラスト方向で挟み込み、回り止めの回転を規制する。これにより、電磁クラッチの回り止めと回転規制部材との衝突を削減する。このことから、電磁クラッチの回り止めが回転規制部材に衝突する際の衝突音を低減するので、特別な構成を用いずに、電磁クラッチの回り止めと回転規制部材の衝突音が低減する。
【0016】
すなわち本発明の実施形態では、電磁クラッチ動作時に、動力伝達部以外に、電磁クラッチの本体が回転しようとするので、電磁クラッチに設けた回り止めを前記第1、第2のスラスト規制部材によりスラスト方向で挟み込み、回り止めの回転を規制する。これにより、電磁クラッチの回り止めと回転規制部材との衝突を削減する。
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0018】
<実施形態1>
図3は、本発明の一実施形態に係る回転規制部材と回り止めの衝突音低減の構成について説明するための図である。図3では、電磁クラッチ1の回転止め2は第1の回転止めスラスト規制部材9と第2の回転止めスラスト規制部材10によって挟み込み、位置を規制する。第1の回転止めスラスト規制部材9は回転規制部材3に取り付けて構成してある。また第2の回転止めスラスト規制部材10はギヤホルダ6に取り付けて構成してある。
【0019】
入力ギヤ軸8に保持させた入力ギヤ7によってギヤホルダ6に保持させた電磁クラッチ1に動力が伝達され、電磁クラッチ1が動作しているとき、クラッチ出力軸4に動力が伝達される。
【0020】
動力伝達時には、電磁クラッチ1自体が回転しようとするが、回り止め2が第1の回転止めスラスト規制部材9と第2の回転止めスラスト規制部材10によって挟み込まれているために回転せず、回転規制部材3に衝突しない。このことで、追加の部品を用いずに、電磁クラッチ1の動作時に発生する回転規制部材3と回転止め2の衝突音を低減する。
【0021】
<実施形態2>
図4に示すように、第1の回転止めスラスト規制部材9と第2の回転止めスラスト規制部材10をネジ11で固定してもよい。これにより、確実に回り止め2をスラスト方向で規制することができる。
【0022】
<実施形態3>
また図5に示すように、第2の回転止めスラスト規制部材10を外装材として構成してもよい。これにより、設計レイアウトの自由度を増加させることができる。
【0023】
<実施形態4>
また図6に示すように、第2の回転止めスラスト規制部材10が第1の回転止めスラスト規制部材9よりも回転止め2の外側(径方向:図の左右方向)で規制する構成となっている。これにより、スラスト規制部材9、10の精度を緩和することができる。
【0024】
<実施形態5>
さらに図7に示すように、第1の回転止めスラスト規制部材9と第2の回転止めスラスト規制部材10をばね性を持たせた形状である構成として、回転止めを規制する部材の精度を緩和することができる。図示の例では、規制部材9、10の回転止め2と接する先端部を、回転止め2と接する側が先細りとなる断面形状として弾性を発揮する形状としてある。
【0025】
本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0026】
1:電磁クラッチ
3:回転規制部材
4:クラッチ出力軸
6:ギヤホルダ
7:入力ギヤ
8:入力ギヤ軸
9、10:スラスト規制部材
11:ネジ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開2001−336547号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁クラッチと、
前記電磁クラッチに取り付けた回転止めと、
前記電磁クラッチの回転を規制する回転規制部材と、
前記回転止めのスラスト方向の動きを前記電磁クラッチへの取り付け面側から規制する第1のスラスト規制部材と、
前記回転止めのスラスト方向の動きを前記電磁クラッチへの取り付け面と反対側から規制する第2のスラスト規制部材とを備え、
前記第1、第2のスラスト規制部材で前記回転止めを挟んで保持可能としたことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記回転止めが弾性部材からなることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記第1、第2のスラスト規制部材が弾性部材からなることを特徴とする請求項1または2に記載の駆動装置
【請求項4】
前記第1、第2のスラスト規制部材がギヤホルダであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項5】
前記第1、第2のスラスト規制部材をネジで固定してあることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項6】
前記第1、第2のスラスト規制部材が電磁クラッチの外装材であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項7】
前記第1、第2のスラスト規制部材が、前記第1のスラスト規制部材よりも前記回転止めの外側で前記電磁クラッチの回転を規制することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項8】
前記第1、第2のスラスト規制部材が、ばね性を有する形状の部材であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の駆動装置を用いるとともに、少なくとも画像形成部を備えたことを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−83307(P2013−83307A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223542(P2011−223542)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】