説明

駆動装置、移載装置、並びに、搬送システム

【課題】 モータの動力を複数の出力系統を介して出力可能な駆動装置と、当該駆動装置を備えた移載装置と、当該移載装置を備えた搬送システムの提供を目的とする。
【解決手段】 駆動装置1は、本体側ローラ2の側方に側方側ローラ3,3を配した構成とされている。本体側ローラ2は、筒体10の内部にモータ11と本体側遊星歯車機構12,12とを内蔵している。一方、側方側ローラ3,3は、ぞれぞれ筒体71の内部に側方側遊星歯車機構70を内蔵している。駆動装置1は、移載装置の駆動源として利用され、被搬送物が本体側ローラ2上に搭載されている場合は移載装置を昇降するための駆動源として機能し、側方側ローラ3,3の回転が阻止されている場合は搬送用の駆動源として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラの内部にモータを内蔵した駆動装置と、当該駆動装置を採用した移載装置および搬送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術より、下記特許文献1に開示されている搬送システム等では、所定の搬送ラインによって搬送されてきた被搬送物を高さ位置の異なる別の搬送ラインに移載可能なように両搬送ラインの中間位置に別途、ローラコンベア等によって構成される移載装置と、この移載装置を昇降するための昇降装置とを設けた構成とされている。
【0003】
また、従来より、下記特許文献2に開示されているモータ内蔵ローラのように、筒状のローラの内部にモータや減速機を内蔵したものが搬送システム等の駆動源として使用されている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−175621号公報
【特許文献2】特開平8−188219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されている搬送システム等では、搬送ライン間に配された移載装置を構成するローラを動作させるための動力源に加えて、移載装置を昇降させるために例えばラックやピニオンを組み合わせて構成されるような昇降装置を別途設ける必要があった。そのため、従来技術の搬送システム等は、装置構成が複雑で大がかりなものとなってしまうという問題があった。
【0006】
また、上記特許文献2に開示されているモータ内蔵ローラは、ローラを回転させるための動力源としてモータをローラの内部に収容しているため、その分だけ移載装置を小型化することができる。しかし、上記特許文献2に開示されているモータ内蔵ローラは、モータの動力を被搬送物の搬送用のローラの回転のみに使用するものである。そのため、上記特許文献2に開示されているモータ内蔵ローラを移載装置に採用した場合であっても、移載装置を昇降させるためには昇降装置用に別途の動力源を設ける必要があり、その分だけ搬送システムが複雑で大がかりなものとならざるを得ないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、モータの動力を複数の出力系統を介して出力可能な駆動装置と、当該駆動装置を備えた移載装置と、当該移載装置を備えた搬送システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、上記した課題を解決すべく提供される請求項1に記載の発明は、支軸と、本体部と、側方部とを有し、前記本体部は、本体側筒体の内部にモータと、本体側遊星歯車機構と、動力伝達部材とを内蔵し、本体側筒体が支軸に対して相対回転可能に支持されたものであり、前記側方部は、側方側筒体の内部に側方側遊星歯車機構と回動部材とを備え、側方側筒体が支軸に対して相対回転可能に支持されたものであり、前記本体側遊星歯車機構は、本体側太陽歯車と、本体側遊星歯車と、本体側内歯歯車とを具備したものであり、前記本体側内歯歯車は、本体部のローラの内部に配され、ローラに対して相対回転不能に装着されたものであり、前記本体側太陽歯車は、モータにおいて発生するトルクを受けて支軸の軸心回りに回転するものであり、前記本体側遊星歯車は、前記本体側太陽歯車および本体側内歯歯車に噛み合うものであり、前記動力伝達部材は、本体側遊星歯車機構のキャリアとして機能し、本体側遊星歯車機構と側方側遊星歯車機構との間において動力を伝達するものであり、前記側方側遊星歯車機構は、側方側太陽歯車と、側方側遊星歯車と、側方側内歯歯車と、側方側キャリアとを具備したものであり、側方側太陽歯車は、動力伝達部材に連動して回転するものであり、側方側内歯歯車は、側方部の内部に配され、側方部に対して相対回転不能に装着されており、側方側キャリアは、支軸に対して相対回転不能に支持されていることを特徴とする駆動装置である。
【0009】
本発明の駆動装置は、本体部の本体側筒体に対して作用する回転負荷が側方部の側方側筒体に作用する回転負荷よりも大きい場合に本体側遊星歯車機構がプラネタリ型となり、モータの動力が動力伝達部材を介して側方側遊星歯車機構に伝達され、側方側筒体が支軸に対して回転する。また逆に、本発明の駆動装置は、本体部の本体側筒体に対して作用する回転負荷が側方部の側方側筒体に作用する回転負荷よりも小さい場合に本体側遊星歯車機構がスター型に切り替わり、モータの動力が本体側内歯歯車に伝達され、本体側筒体が支軸に対して回動する。従って、本発明の駆動装置は、本体部の駆動源と側方部の駆動源の双方を本体部内に収容されたモータで賄うことができる。すなわち、本発明の駆動装置は、本体部および側方部に対して作用する回転負荷の大小に応じてモータの動力の出力系統を選択することができる。
【0010】
上記したように、本発明の駆動装置は、ローラ内に収容されているモータのみで本体側筒体と側方側筒体とを回転させることができる。従って、本発明の駆動装置は、例えば搬送ライン間を中継し、被搬送物を所定の搬送ラインから引き込んだり別の搬送ラインに送り出す搬送手段と、一方の搬送ラインから被搬送物を引き込ん搬送手段を他方の搬送ラインに向けて移動させる移動手段とを備えた移載装置のように複数の動力源を必要とする装置類の動力源として好適に使用できる。
【0011】
また同様の課題を解決すべく提供される請求項2に記載の発明は、支軸と、本体部と、側方部とを有し、前記本体部は、本体側筒体の内部にモータと、本体側遊星歯車機構と、動力伝達部材とを内蔵し、本体側筒体が支軸に対して相対回転可能に支持されたものであり、前記側方部は、側方側筒体の内部に側方側遊星歯車機構を内蔵し、側方側筒体が支軸に対して相対回転可能に支持されたものであり、前記本体側遊星歯車機構は、本体側太陽歯車と、本体側遊星歯車と、本体側内歯歯車とを具備したものであり、前記側方側遊星歯車機構は、側方側太陽歯車と、側方側遊星歯車と、側方側内歯歯車と、側方側キャリアとを具備し、スター型の遊星歯車機構を構成しており、本体側筒体の回転負荷が側方側筒体の回転負荷よりも大きい場合は、本体側遊星歯車機構がプラネタリ型の遊星歯車機構を構成し、モータのトルクが側方側内歯歯車に伝達され、側方側筒体が支軸に対して回転するものであり、本体側筒体の回転負荷が側方側筒体の回転負荷よりも小さい場合は、本体側遊星歯車機構がスター型の遊星歯車機構を構成し、モータのトルクが本体側内歯歯車に伝達され、本体側筒体が支軸に対して回転することを特徴とする駆動装置である。
【0012】
本発明の駆動装置は、側方側筒体を回転させるのに要する回転負荷が本体側筒体を回転させるのに要する回転負荷よりも小さいことを条件として本体側遊星歯車機構がプラネタリ型となり、モータの動力によって側方側筒体が回転する。一方、本発明の駆動装置は、側方側筒体を回転させるのに要する回転負荷が本体側筒体を回転させるのに要する回転負荷よりも大きいことを条件として本体側遊星歯車機構がスター型となり、モータの動力によって本体側筒体が回転する。従って、本発明の駆動装置は、本体側筒体および側方側筒体に対して作用する回転負荷の大小に応じてモータの動力を伝達する動力伝達系統が切り替わり、側方側筒体あるいは本体側筒体のいずれかを回動させることができる。
【0013】
上記したように、本発明の駆動装置は、本体側筒体内に収容されているモータのみで本体側筒体および側方側筒体の回転に要する動力源を賄うことができる。従って、本発明の駆動装置は、例えば側方側筒体が昇降手段に動力的にリンクされた状態とされた場合、本体部のローラの動力を利用して被搬送物を搬送する等の動作を行うと共に、側方部に伝達された動力を利用して駆動装置や他の装置を昇降させるといったような別の動作を行うことができる。
【0014】
本発明の駆動装置によれば、本体側筒体を回動させる動力源と側方側筒体を回動させる動力源とを別々に設けなくてもそれぞれを別々に動作させることができる。従って、本発明によれば、駆動装置を採用した装置や機器の装置構成のコンパクト化や製造コストの抑制に寄与することができる。
【0015】
上記請求項1又は2に記載の駆動装置において、側方部は、本体部のローラの両端に隣接する位置に配されていてもよい。(請求項3)
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、被搬送物を搬送する搬送手段と、当該搬送手段を移動させる移動手段と、請求項1乃至3のいずれかに記載の駆動装置とを有し、当該駆動装置の本体部あるいは側方部のいずれか一方が搬送手段の駆動源として使用され、駆動装置の本体部あるいは側方部の他方が移動手段の駆動源として使用されることを特徴とする移載装置である。
【0017】
本発明の移載装置は、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の駆動装置を備えたものであり、この駆動装置によって搬送手段および移動手段の双方の動力源を賄うことができる。さらに具体的には、例えば本体部を搬送手段の駆動源として利用し、側方部を移動手段の駆動源として利用する場合を想定すると、本発明の移載装置は、搬送手段に被搬送物が搭載され本体側筒体の回転負荷が側方側筒体の回転負荷よりも大きくなることを条件として側方側筒体に動力が伝達し、移動手段が動作する。また、本発明の移載装置は、回転中の移動手段に対して本体部に作用している回転負荷よりも大きな負荷が作用すると、モータの動力の伝達系統が切り替わり、本体側筒体が回転して搬送手段が動作する。従って、本発明の移載装置は、被搬送物の搬送動作と、搬送手段の移動動作の双方を単一の駆動装置によって賄え、装置構成がコンパクトである。
【0018】
上記請求項4に記載の移載装置において、移動手段は、搬送手段を上下方向に移動させるものであってもよい。(請求項5)
【0019】
本発明によれば、高さ位置の異なる搬送ライン間を中継可能な移載装置を提供できる。従って、本発明の移載装置によれば様々な高さに存在する搬送ライン間において被搬送物を移載可能な立体的な搬送システムを構築できる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、駆動装置の本体部及び/又は側方部を構成する筒体、あるいは、当該筒体の回転に連動して回転する従動ローラを有し、前記筒体あるいは従動ローラには回転量調整機構が設けられており、当該回転量調整機構は、前記筒体あるいは従動ローラと一体的に回転する筒体側部材と、当該筒体側部材の回転量に応じて所定方向に移動する移動部材と、当該移動部材の移動経路の中途に設けられ、移動部材の移動を阻止する阻止部材とを具備していることを特徴とする請求項4又は5に記載の移載装置である。
【0021】
本発明の移載装置は、回転量調整機構を構成する阻止部材と移動部材との距離を調整することにより、駆動装置の本体部あるいは側方部を構成する筒体(本体側筒体、側方側筒体)の回転量を調整できる。従って、本発明によれば、センサ等を設けなくても搬送手段の駆動に伴う搬送距離や移動手段の駆動に伴う移動距離を所定の距離に調整できる。
【0022】
本発明の移載装置は、本体側筒体や側方側筒体が所定量回転すると移動部材の移動が阻止部材によって阻止され、本体側筒体や側方側筒体が回転できなくなり、本体側筒体や側方側筒体に大きな回転負荷が作用する。従って、本発明によれば、本体側筒体あるいは側方側筒体のいずれか一方が所定量回転した時点で駆動装置における動力の伝達系統が切り替わり、本体側筒体あるいは側方側筒体の他方側が回転を開始する構成の移載装置を提供できる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、移載装置が、駆動装置の本体部あるいは側方部のうち搬送手段の駆動源として利用されるものの回転方向、あるいは、移動手段の駆動源として利用されるものの回転方向を変換する回転方向変換手段を備えていることを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の移載装置である。
【0024】
本発明の移載装置は、本体部あるいは側方部のうち搬送手段の駆動源として機能するものの回転方向と、移動手段の駆動源として機能するものの回転方向とが異なる。従って、本発明によれば、搬送手段による被搬送物の搬送方向に対して交差する方向に移動可能な移載装置を提供できる。
【0025】
請求項8に記載の発明は、被搬送物を搬送する主搬送ラインと、従搬送ラインとを有し、主搬送ラインと従搬送ラインとの間に請求項4乃至7のいずれかに記載の移載装置が配されており、当該移載装置によって主搬送ラインと従搬送ラインとの間における被搬送物の受け渡しを行えることを特徴とする搬送システムである。
【0026】
本発明の搬送システムは、上記請求項4乃至7のいずれかに記載の移載装置によって主搬送ラインと従搬送ラインとの間を中継したものである。そのため、本発明によれば、移載装置の設置スペースが小さく、システム全体の構成がコンパクトな搬送システムを提供することができる。
【0027】
請求項9に記載の発明は、被搬送物を搬送する主搬送ラインと、従搬送ラインとを有し、主搬送ラインと従搬送ラインとの間に請求項4乃至7のいずれかに記載の移載装置が配されており、移載装置を構成する駆動装置の本体部あるいは側方部のうち移動手段の駆動源として利用されるものには、外周に複数の歯部を備えた歯部材が直接的あるいは間接的に接続されており、前記歯部材と噛み合うガイド部材が、主搬送ラインと従搬送ラインとの間に形成される経路に沿って配されていることを特徴とする搬送システムである。
【0028】
本発明の搬送システムは、駆動装置側に接続された歯部材が主搬送ラインと従搬送ラインとの間に設置されたガイド部材との噛み合って回転する構成とされているため、移載装置が水平面上を移動する構成の搬送経路が構築された場合であっても、移載装置が垂直方向に移動したり傾斜面に沿って移動する搬送経路が構築された場合であっても被搬送物の移載動作を的確に行える搬送システムを提供できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、本体部に収容されているモータのみで本体部と側方部の動力源を賄える駆動装置を提供でき、移載装置や搬送システムの装置構成をシンプル化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
続いて、本発明の一実施形態である駆動装置について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図1は、本実施形態の駆動装置の断面図であるが、ハッチングは付さずに省略している。図1において、1は本実施形態の駆動装置(モータ内蔵ローラ)である。駆動装置1は、本体側ローラ2(本体部)と、その両側方に配される側方側ローラ3,3(側方部)とに大別される。本体側ローラ2は、筒体10(ローラ)の内部にモータ11と本体側遊星歯車機構12,12とを内蔵したものである。筒体10は、金属製で両端が開口した円筒型の部材であり、両端が樹脂や金属で作製された閉塞部材15,15によって閉塞されている。本体側ローラ2は、筒体10の軸心位置に支軸17が挿通されている。本体側ローラ2は、支軸17が閉塞部材15,15を貫通しており、筒体10が支軸17に対して回転自在に支持された構成とされている。支軸17は、筒体10を横断し、両端部において断面形状が六角形となるように面取りされた軸体であり、モータ11に繋がる電気配線等を挿通可能な構成とされている。支軸17は、図示しないフレーム等に対して相対回転不能に支持される。
【0031】
モータ11は、支軸17の延伸方向略中央部に固定子20を装着し、その外周側に回転子21を配した、いわゆるアウターロータ型のブラシレスモータである。固定子20は、鉄心に導線が巻き付けられたコイルである。回転子21に繋がる電気配線は、支軸17に設けられた開口17aを介して支軸17の内部に挿通されており、支軸17の一端側(図1では右方)の開口部分から導出されている。一方、回転子21は、円筒型のケース部材22の内壁面に固定されており、固定子20に対して所定の間隔を開けて配されている。
【0032】
モータ11は、回転子21の磁極位置を検知可能な位置検出子23を備えている。本実施形態では、位置検出子23としてホール素子とパワースイッチング回路の全部あるいは一部を一体化したホールICを採用している。位置検出子23に繋がる配線は、開口17aから支軸17内に挿通され、支軸17の一端側(図1では右方)の開口部分から導出されている。
【0033】
ケース部材22は、両端部が閉塞部材25,25によって閉塞されている。閉塞部材25,25は、中心に貫通孔26,26を有する。貫通孔26,26には、円筒形で、支軸17を挿通可能な回転軸27,27がケース部材22の外側から装着されている。閉塞部材25,25には、軸受28,28が装着されており、この軸受28,28を介して支軸17が回転自在に支持されている。
【0034】
回転軸27,27は、閉塞部材25,25と共にモータ11の回転子21に連動して回転するものである。回転軸27,27は、ケース部材22の外側に突出する円筒形の軸部30,30を有する。回転軸27,27は、モータ11の動力を出力する出力軸として機能するものである。また、回転軸27,27は、軸部30,30の外周面に歯部31が形成されたものであり、外歯歯車としての機能も有する。回転軸27,27は、支軸17と軸心が一致しており、本体側遊星歯車機構12,12の太陽歯車として機能する。
【0035】
本体側遊星歯車機構12,12は、図1や図2に示すように筒体10の両端部に配されている。本体側遊星歯車機構12,12は、太陽歯車として機能する回転軸27,27の軸部30,30の外周部に遊星歯車40(本体側遊星歯車)と内歯歯車41(本体側内歯歯車)とを配して構成されるものである。内歯歯車41は、閉塞部材15,15に隣接する位置に配されており、筒体10の内周壁に固定されている。遊星歯車40は、内歯歯車41と回転軸27との双方に噛み合う歯車である。遊星歯車40は、内歯歯車41の内周に沿って回転軸27の周囲を回動(公転)可能とされている。また、遊星歯車40は、軸心部に設けられた貫通孔43に挿通されたピン45を中心として回動(自転)可能とされている。
【0036】
遊星歯車40は、ピン45を介して動力伝達部材50に接続されている。さらに具体的には、動力伝達部材50は、一端側にキャリア(腕)として機能する本体側接続部51が一体化されており、本体側接続部51に設けられた貫通孔52に挿通されたピン45を介して遊星歯車40に連結されている。そのため、遊星歯車40および動力伝達部材50は、支軸17の軸心回りに一体的に回動(公転)することができる。また、遊星歯車40は、ピン45を中心として動力伝達部材50に対して独立的に回動(自転)することができる。
【0037】
動力伝達部材50は、軸心位置に支軸17を挿通可能な軸挿通孔53を有する。動力伝達部材50は、軸挿通孔53に支軸17が挿通され、本体側接続部51とは反対側の端部(側方側接続部54側)が筒体10の端部から外部に突出している。動力伝達部材50は、閉塞部材15,15の軸心位置に設けられた貫通孔55,55に取り付けられた軸受57,57を介して筒体10に対して相対回転可能なように装着されている。
【0038】
動力伝達部材50は、筒体10の外部に向けて突出した部分(側方側接続部54)の外周面に歯部60が形成された外歯歯車状の形状とされている。動力伝達部材50は、支軸17と軸心が一致しており、側方側ローラ3,3内に内蔵されている側方側遊星歯車機構70の太陽歯車として機能するものである。
【0039】
側方側ローラ3,3は、図1に示すように本体側ローラ2の筒体10よりも開口径の大きな筒体71に対して閉塞部材72,73を装着して形成される空間内に、側方側遊星歯車機構70と側方側キャリア74とを内蔵した構成とされている。閉塞部材72は、筒体71の本体側ローラ2側の開口部分を閉塞する部材であり、中央部に動力伝達部材50を挿通可能な挿通孔75を有する。また、閉塞部材73は、筒体71の他端側の開口部分を閉塞する部材であり、中心に支軸17を挿通可能な挿通孔76が設けられている。支軸17は、図1に示すように筒体71を横断し、両端部が閉塞部材73,73に装着された軸受68,68によって支持されており、挿通孔76から筒体71の外側に向けて突出している。これにより、側方側ローラ3,3は、それぞれ支軸17に対して相対回転可能なように支持されている。
【0040】
側方側遊星歯車機構70は、図1や図2に示すように太陽歯車として閉塞部材72の挿通孔75から挿通された動力伝達部材50を採用し、その外周部に遊星歯車77(側方側遊星歯車)と内歯歯車78(側方側内歯歯車)とを配して構成されるものである。内歯歯車78は、筒体71の内周面であって、閉塞部材72側に偏在した部位に固定されている。遊星歯車77は、内歯歯車78と挿通孔75の外周に設けられた歯部60との双方に噛み合う歯車である。遊星歯車77は、内歯歯車78の内周に沿って動力伝達部材50(太陽歯車)の外周を回動(公転)可能とされている。また、遊星歯車77は、貫通孔80に挿通されたピン81によって側方側キャリア74に対して回転(自転)自在に接続されている。
【0041】
側方側キャリア74は、図1に示すようにキャリア本体82と、遊星歯車77の腕として機能する腕部83とを有する。側方側キャリア74は、図1に示すように腕部83が閉塞部材72側を向くように配されている。腕部83には、ピン81を装着可能なピン装着穴87が設けられており、このピン装着穴87に差し込まれたピン81を介して遊星歯車77が回動自在(自転自在)に装着されている。
【0042】
一方、側方側キャリア74は、キャリア本体82の中心を支軸17が貫通しており、支軸17のボス部17bに差し込まれたキー84によって支軸17に対して回動不能に取り付けられている。そのため、側方側キャリア74に装着された遊星歯車77は、側方側遊星歯車機構70の太陽歯車として機能する動力伝達部材50の歯部60の外周を回動(公転)不能な状態とされている。従って、側方側遊星歯車機構70は、腕が固定されたスター型の歯車機構を構成している。
【0043】
続いて、本実施形態の駆動装置1の動作について説明する。駆動装置1は、側方側キャリア74が支軸17に対して相対回転不能に支持されているため、側方側遊星歯車機構70が常にスター型となっている。駆動装置1は、本体側ローラ2の筒体10に物品が搭載される等して筒体10を支軸17に対して回転させるのに必要な負荷(回転負荷)が側方側ローラ3,3の筒体71,71の回転負荷よりも大きくなっている場合に本体側遊星歯車機構12,12がプラネタリ型となる。
【0044】
さらに具体的には、側方側遊星歯車機構70は、側方側ローラ3の筒体71が自由に回動可能な状態であっても、図3に破線で示すように遊星歯車77の腕が固定された状態となっている。この状態において本体側ローラ2に対して筒体10の回動を阻止するような外力が作用すると、図3に破線で示すように本体側ローラ2側に設けられた本体側遊星歯車機構12,12の内歯歯車41が固定された状態となる。ここで、本体側遊星歯車機構12,12の太陽歯車を構成する回転軸27や遊星歯車40は自由に回動可能な状態にある。従って、側方側ローラ3の筒体71が自由に回動可能な状態では、図3に実線で示すように本体側遊星歯車機構12,12がプラネタリ型の遊星歯車機構を構成する。そのため、この状態でモータ11が作動すると、モータ11の出力が回転軸27から本体側遊星歯車40および動力伝達部材50を介して側方側遊星歯車機構70側に伝達される。
【0045】
すなわち、上記したように本体側ローラ2に作用する回転負荷が側方側ローラ3,3に作用する回転負荷よりも大きい場合は、側方側遊星歯車機構70の太陽歯車に相当する動力伝達部材50が回転し、遊星歯車77を介して筒体71の内周面に固定された内歯歯車78にモータ11の動力が伝達される。ここで、上記したように、側方側遊星歯車機構70は常にスター型であり、側方側ローラ3,3が回転する場合は、本体側遊星歯車機構12,12がプラネタリ型である。そのため、側方側ローラ3は、モータ11の回転軸27の回転方向とは逆方向に回転する。
【0046】
一方、本体側ローラ2の筒体10を回転させるための回転負荷が、側方側ローラ3,3の筒体71,71の回転負荷よりも小さい場合は、図4に破線で示すように本体側遊星歯車機構12,12の腕として機能する動力伝達部材50が実質的に回動不能となる。これにより、図4に実線で示すように、本体側遊星歯車機構12,12がスター型になる。これにより、モータ11のトルクが回転軸27から遊星歯車40を介して内歯歯車41に伝達され、本体側ローラ2の筒体10がモータ11の回転方向とは逆方向に回転する。
【0047】
上記したように、本実施形態の駆動装置1は、単一のモータ11で本体側ローラ2の回動の動力源と、側方側ローラ3,3の回動の動力源とを賄うことができる。そのため、駆動装置1は、装置構成がコンパクトであり、製造コストが安価である。
【0048】
駆動装置1は、本体側ローラ2および側方側ローラ3,3に対して作用する回転負荷の大小に応じてモータ11の動力を伝達する動力伝達系統をスムーズに切り替えることができる。そのため、駆動装置1は、所望の時間に渡って本体側ローラ2や側方側ローラ3,3を動作させることができる。
【0049】
上記実施形態では、本体側ローラ2および側方側ローラ3,3の軸心が支軸17の軸心位置に一致するものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、本体側ローラ2や側方側ローラ3,3が支軸17に対して偏心回転するものであってもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、本体側ローラ2や側方側ローラ3,3の筒体10,71が円筒形であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば断面形状が楕円形や多角形の筒体によって構成されていてもよい。
【0051】
上記実施形態において採用されているモータ11は、支軸17に対して装着された固定子20の周りを回転子21が回動する、いわゆるアウターロータ型のモータであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、固定子の中心部分に配された回転子が回転するモータを採用してもよい。
【0052】
上記実施形態において、駆動装置1は、本体側ローラ2の両端に隣接する位置に側方側ローラ3,3が配された構成であったが、いずれか一方の端部に隣接する位置にのみ側方側ローラ3が設けられた構成としてもよい。
【実施例】
【0053】
続いて、上記した駆動装置1を採用して構成される移載装置および搬送システムの一実施例を図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、特に断りのない限り上下の位置関係については、図示するような通常の設置状態を基準とする。
【0054】
搬送システム100は、図5や図7に示すように主搬送ライン101と、主搬送ライン101よりも上方において被搬送物Wを搬送する従搬送ライン102とからなる搬送経路と、主搬送ライン101と従搬送ライン102との間において被搬送物Wを移動させる移載装置103とを有する。
【0055】
主搬送ライン101は、モータ内蔵ローラ110やフリーローラ111を平行に配された二本のサイドフレーム112,112間に所定の間隔毎に設置して構成される。モータ内蔵ローラ110は、図6に示すように金属製の筒体113の内部にモータ115と減速機116とを内蔵したものである。筒体113は、両端の開口部分が閉塞部材117,118により閉塞されている。筒体113の両端からは、固定軸120,121が突出している。筒体113は、閉塞部材117,118の内側に装着された軸受122,123を介して固定軸120,121に対して相対回転自在に支持されている。
【0056】
モータ115および減速機116は、図6に示すようにユニット化され、駆動ユニット124として筒体113の内部に収容されている。モータ115は、内筒部材125内に電磁石からなる複数の固定子126と、磁極を有する回転子127と、位置検出子(図示せず)とを内蔵したブラシレスモータである。固定子126は、鉄心に導線が巻き付けられたコイルであり、内筒部材125に対して一体的に取り付けられている。一方、回転子127は、内筒部材125の内部に収納されており、軸心が内筒部材125の軸心と一致している。回転子127は、軸受130を介して固定軸121に対して回転自在に支持されている。また、回転子127の他端側は、軸受131を介して減速機116に接続されている。位置検出子は、ホール素子とパワースイッチング回路の全部あるいは一部を一体化したホールIC等によって構成され、回転子127の磁極位置を検出するものである。
【0057】
減速機116は、3連の遊星歯車列によって構成されるものであり、モータ115の回転子127の回転速度を所定の減速比で減速して出力軸132に出力するものである。なお、本実施例においては、減速機116は、上記したような構成を有するものであったが、これに限定されず、モータ115の回転動力を減速できる機構を有するものであればいかなるものであってもよい。
【0058】
減速機116の出力軸132は、連結部材133を介して閉塞部材117に連結されている。よって、モータ115のトルクは、減速機116において減速され、連結部材133を介して閉塞部材117に伝播される。閉塞部材117は、筒体113と一体化されているため、筒体113は、閉塞部材117に伝播されたトルクを受けて固定軸120,121を中心として回動する。
【0059】
フリーローラ111は、上記したモータ内蔵ローラ110からモータ115および減速機116からなる駆動ユニット124を取り除いた構成とされている。すなわち、フリーローラ111は、中空の筒体113の両端の開口部を軸受122,123を介して固定軸120,121を装着した閉塞部材117,118で閉塞した動力源を内蔵していないローラであり、固定軸120,121に対して筒体113が自由に回動可能なものである。
【0060】
主搬送ライン101は、図5や図7に示すようにモータ内蔵ローラ110と1又は複数のフリーローラ111に渡ってベルト135を架け、ベルト135を介してモータ内蔵ローラ110の回転力をフリーローラ111側に伝播する構成とされている。主搬送ライン101は、搬送経路の中途に設けられた分岐部141によって上流側主搬送ライン101aと、下流側主搬送ライン101bとに分断されている。分岐部141は、上流側主搬送ライン101a上を流れる被搬送物Wを下流側主搬送ライン101bあるいは従搬送ライン102に分岐するための部位であり、移載装置103が配されている。
【0061】
移載装置103は、本体枠140に対して移載装置150を昇降可能に装着したものである。本体枠140は、4本の支柱142の上端側および下端側に梁143を取り付けて構成される枠組みであり、移載装置150のガイドとして機能する。
【0062】
移載装置150は、平行に配された二本のサイドフレーム151,151に対して上記した駆動装置1を2本平行に取り付けると共に、これらの間に2本のフリーローラ111を配して構成されるものである。移載装置150は、サイドフレーム151,151に駆動装置1の側方側ローラ3,3の回転を阻止可能な側方用ブレーキ(図示せず)と、本体側ローラ2の回転を阻止可能な本体用ブレーキ(図示せず)とを備えている。本体用ブレーキおよび側方用ブレーキには、例えばベルトブレーキやディスクブレーキ等のような従来公知のものを採用できる。また、側方用ブレーキは、側方側ローラ3,3の閉塞部材73,73に外側に向けて開口した開口部を設け、この開口部に対してピン等を差し込んで回転を阻止する構成や、側方側ローラ3,3の外周部にくさび状の部材を差し込み可能な構成のように側方側ローラ3,3の回転を阻止可能な構成であればいかなる構成を採用してもよい。
【0063】
移載装置150を構成する駆動装置1の側方側ローラ3,3にはベルト152,152の一端が取り付けられている。ベルト152の他端側は、本体枠140の上端側に取り付けられた梁143に対して固定されている。ベルト152は、本体枠140に対して上下方向に垂直に延伸するように固定されている。すなわち、移載装置150は、四隅に駆動装置1の側方側ローラ3が配されており、側方側ローラ3に装着されたベルト152によって本体枠140の上端側から吊り下げられた構造となっている。そのため、移載装置150は、側方側ローラ3を所定方向に回転させてベルト152を巻き上げることにより本体枠140の上端側まで上昇させることができ、逆方向に回転させることにより本体枠140の下端側まで下降させることができる。
【0064】
従搬送ライン102は、下流側主搬送経路101bの真上に下流側主搬送経路101bに対して平行となるように配されている。従搬送ライン102は、主搬送ライン101と同様に平行に配された二本のサイドフレーム112,112間にモータ内蔵ローラ110やフリーローラ111を所定の間隔毎に設置して構成されている。従搬送ライン102は、搬送面が移載装置150を本体枠140の上端側まで上昇させた際に移載装置150の搬送面と面一となる位置に配されている。
【0065】
続いて、本実施例の搬送システム100の動作について図面を参照しながら詳細に説明する。図7のように上流側主搬送ライン101a上に被搬送物Wが搭載されると、図示しない制御装置による制御に基づいて上流側主搬送ライン101aを構成するモータ内蔵ローラ110に電力が供給される。モータ内蔵ローラ110に電力が供給されると、モータ内蔵ローラ110が回転を開始する。これに連動して、モータ内蔵ローラ110の動力がベルト135を介してフリーローラ111に伝播され、フリーローラ111も回転を開始する。これにより、主搬送ライン101上に搭載された被搬送物Wが下流側に向けて搬送される。
【0066】
上記したようにして上流側主搬送ライン101a上を流れてきた被搬送物Wが分岐部141に近づくと、制御手段は、分岐部141に配された移載装置150の側方用ブレーキ(図示せず)によって駆動装置1の側方側ローラ3,3に対して制動力を付与した後に駆動装置1に対して通電を開始する。
【0067】
ここで、駆動装置1に対して側方用ブレーキが作動してる状態では、側方側ローラ3,3の筒体71の回転負荷が本体側ローラ2の筒体10の回転負荷よりも大きく、側方側ローラ3,3内の側方側遊星歯車機構70,70がロックされた状態となっている。そのため、側方側ローラ3,3に対して制動力が作用している場合は、本体側遊星歯車機構12の腕として機能する動力伝達部材50が固定された状態となり、側方側遊星歯車機構70,70がスター型となる。従って、この状態でモータ11に対して通電がなされると、モータ11の動力が内歯歯車41に伝わり、本体側ローラ2が回転を開始する。本体側ローラ2が回転を開始すると、上流側主搬送ライン101a上を流れてきた被搬送物Wが分岐部141に引き込まれる。
【0068】
制御手段は、主搬送ライン101上を流れてきた被搬送物Wが分岐部141に差し掛かる前、あるいは、被搬送物W141が分岐部141に到達した時点で、分岐部141に到来した被搬送物Wを下流側主搬送ライン101bに搬送すべきか、上方に位置する従搬送ライン102に搬送すべきかを確認する。
【0069】
ここで、分岐部141に存在する被搬送物Wをそのまま下流側主搬送ライン101bに流す場合、制御手段は、移載装置150の側方用ブレーキを作動させたままにすることによって駆動装置1により被搬送物Wを移動させると共に、下流側主搬送ライン101bに配されたモータ内蔵ローラ110への通電を開始する。これにより、上流側主搬送ライン101aから流れてきた被搬送物Wが分岐部141を通過し、下流側主搬送ライン101bに払い出される。
【0070】
一方、分岐部141に差し掛かった被搬送物Wを従搬送ライン102に払い出す場合、制御装置は、移載装置150に被搬送物Wが搭載された時点で移載装置150の側方用ブレーキを解除する。側方側ローラ3,3に対して作用していた制動力が解除されると、側方側ローラ3,3を自由に回動可能な状態となり、駆動装置1内の動力伝達機構が切り替わる。さらに具体的に説明すると、この状態では側方側ローラ3,3が自由に回動可能である一方、本体側ローラ2が分岐部141に到来した被搬送物Wの重量によって回転負荷が作用している。すなわち、分岐部141に被搬送物Wが到来した状態で側方用ブレーキが解除されると、本体側ローラ2の回転負荷が、側方側ローラ3,3の回転負荷よりも大きくなる。
【0071】
ここで、上記したように、駆動装置1は、本体側ローラ2の回転負荷が側方側ローラ3,3の回転負荷よりも大きくなることを条件として本体側遊星歯車機構12がプラネタリ型となる。そのため、制御手段が移載装置150の側方用ブレーキを解除すると、モータ11の動力が側方側ローラ3,3に伝達されるようになる。
【0072】
側方側ローラ3,3に動力が伝達されると、側方側ローラ3,3の外周に取り付けられているベルト152が筒体71に巻き取られていく。これにより、移載装置150は、本体枠140に沿って上方に登っていく。
【0073】
移載装置150が本体枠140の上端に達すると、制御手段は移載装置150の側方用ブレーキを作動させる。これにより、駆動装置1の動力伝達機構が再度切り替わり、本体側ローラ2が回転を開始する。すなわち、移載装置150の側方用ブレーキが作動すると、側方側ローラ3,3の回転負荷が本体側ローラ2の回転負荷よりも大きくなって駆動装置1の本体側遊星歯車機構12がスター型に切り替わり、本体側ローラ2が回転を開始する。
【0074】
本体側ローラ2が回転を開始すると、制御手段は、従搬送ライン102のモータ内蔵ローラ110への通電も開始する。これにより、分岐部141に存在する被搬送物Wは、分岐部141から従搬送ライン102に払い出される。
【0075】
被搬送物Wの払い出しが完了すると、制御手段は移載装置150の本体用ブレーキを作動させる。本体用ブレーキが作動すると、本体側ローラ2の回転負荷が、側方側ローラ3の回転負荷よりも大きくなり、本体側遊星歯車機構12がプラネタリ型となる。
【0076】
制御手段は、本体用ブレーキを作動させるのと同時にモータ11を逆転させる。これにより、モータ11のトルクが回転軸27および遊星歯車40および内歯歯車41を介して本体側ローラ2の筒体10に伝達し、筒体10が移載装置150の上昇時の回転方向に対して逆方向に回転し始める。
【0077】
上記したようにして側方側ローラ3,3の筒体10が逆転すると、筒体10の外周に巻き付けられていたベルト152が解けていく。これにより、移載装置150は、徐々に下降していき、やがて主搬送ライン101の高さに戻る。移載装置150が主搬送ライン101の高さに戻ると、制御手段はモータ11への通電を停止し、次の被搬送物Wが分岐部141に到来するのを待つ。
【0078】
上記したように、本実施例の搬送システム100は、上記実施形態において例示した駆動装置1を用いて構成される移載装置150を採用しており、本体側ローラ2によって被搬送物Wを搬送すると共に、側方側ローラ3,3によって移載装置150を昇降させる構成とされている。すなわち、搬送システム100において、移載装置150は駆動装置1によって被搬送物Wの搬送の駆動源と、昇降用の駆動源とを賄う構成とされている。そのため、搬送システム100および移載装置150は、装置構成が極めてシンプルである。
【0079】
本実施例では、主搬送ライン101や従搬送ライン102、移載装置150がいずれも複数のモータ内蔵ローラ110や駆動装置1を駆動源とし、これらとフリーローラ111によって構成されるローラコンベアであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、モータ内蔵ローラ110や駆動装置1を駆動源とするベルトコンベア等であってもよい。
【0080】
また、上記実施例において移載装置150は、2本の駆動装置1を側方側ローラ3が四隅に来るように配し、それぞれにベルト152を装着した構成であったが、本発明はこれに限定されるものではない。さらに具体的には、例えば図8に示すように移載装置150の一端側に駆動装置1を配し、この駆動装置1の側方側ローラ3,3と移載装置150の他端側に配されたフリーローラ111とに対してベルト152を装着し、ベルト152を本体枠140の上端側に設置されたプーリ153に懸架した構成としてもよい。かかる構成によれば、移載装置150を単一の駆動装置1で動作させることができ、搬送システム100の装置構成をより一層簡略化することができる。
【0081】
上記実施例では、側方側ローラ3,3を回転させることにより、側方側ローラ3,3に対して装着されたベルト152の巻き付け量を調整し、移載装置150の高さを調整するものであったが本発明はこれに限定されるものではない。さらに具体的には、例えば図9に示すように側方側ローラ3,3の外周に外歯歯車155を取り付け、この外歯歯車155にラック156a(ガイド部材)とピニオン156b(歯部材)から構成される昇降機構156や、スプロケット157a(歯部材)とチェーン157b(ガイド部材)とから構成される昇降機構157を結合した構成としてもよい。かかる構成とした場合も、側方側ローラ3,3のトルクを利用して移載装置150をスムーズに昇降させることができる。
【0082】
また、上記したようにラック156aとピニオン156bの組み合わせや、スプロケット157aとチェーン157bの組み合わせによって構成されるガイド構造を設ける場合は、移載装置150が所定の水平面上を移動する構成の搬送経路が構築された場合であっても、図9のように移載装置150が垂直方向に移動したり傾斜面に沿って移動する搬送経路が構築された場合であっても被搬送物Wを的確に移載可能な搬送システムを提供できる。
【0083】
上記したように、搬送システム100では、駆動装置1の本体側ローラ2の制動用の本体用ブレーキと、側方側ローラ3,3の制動用の側方用ブレーキとを設けているが、本体用ブレーキおよび側方用ブレーキは機械式のブレーキや、電磁式のブレーキ等を採用することができる。
【0084】
また、上記した搬送システム100のように移載装置150を昇降する構成とする場合は、移載装置150の自重やこれに搭載されている被搬送物Wの重量の影響による下降時の加速を軽減するためカウンターバランサー等を設けた構成とすることが望ましい。かかる構成によれば、移載装置150の上下動をより一層スムーズかつ安定なものとすることができる。
【0085】
また、搬送システム100は、側方側ローラ3,3の回転を利用して移載装置150を昇降させる構成であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、本体側ローラ2の回転を利用して移載装置150を昇降させ、側方側ローラ3,3の回転を利用して被搬送物Wを搬送する構成としてもよい。
【0086】
また、上記実施例では、従搬送ライン102が下流側主搬送ライン101bの上方に平行に配された構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、従搬送ライン102は傾斜した姿勢で配されていてもよい。また、従搬送ライン102は、下流側主搬送ライン101bと同一方向に被搬送物Wを搬送する構成であったが、従搬送ライン102は、下流側主搬送ライン101bによる被搬送物Wの搬送方向に対して交差する方向に被搬送物Wを搬送する構成としてもよい。また、上記した搬送システム100を構成する主搬送ライン101や従搬送ライン102は、いずれも直線的な搬送経路を構成するものであったが、中途で屈曲する搬送経路を構成するものであってもよい。
【0087】
さらに、上記した移載装置150は、本体側ローラ2および側方側ローラ3,3の回転制動用の本体用ブレーキや側方用ブレーキを設けた構成であるため、モータ11の回転方向を調整することにより移載装置150による被搬送物Wの払い出し方向を変更できる。そのため、図9のように移載装置150の上昇位置に従搬送ライン102と、これとは逆方向に被搬送物Wを搬送する従搬送ライン158を設け、移載装置150から従搬送ライン102,158のいずれかを選択して被搬送物Wを払い出せる構成としてもよい。
【0088】
上記した搬送システム100は、側方側ローラ3,3を回転させることにより移載装置150を垂直方向に昇降させる立体型の搬送経路を持つものであったが、本発明はこれに限らず、傾斜面に沿って昇降するものであったり、図10に示す搬送システム170のような構成であってもよい。
【0089】
さらに具体的には、搬送システム170は、図11に示すように物品を搬送する2つの搬送ライン171,172間において水平移動し、被搬送物Wの受け渡しを行う移載装置175(移載装置)が設けられた構成を有する。搬送ライン171,172は、上記した主搬送ライン101や従搬送ライン102のようなローラコンベアや、ベルトコンベアのような従来公知の搬送装置によって構成されている。
【0090】
移載装置175は、サイドフレーム176,176間に取り付けられた駆動装置1の動力により、被搬送物を移載装置175上に引き込んだり、移載装置175上に存在する被搬送物を払い出す動作に加えて、所定の平面上に所定の間隔で平行に敷設されたレール177a,177bに沿って移動可能な構成とされている。
【0091】
さらに具体的に説明すると、移載装置175は、図11等に示すように、一端側に段状に折れ曲がって膨出した膨出部179を有し、他端側に張出部174を有するサイドフレーム176,176を平行に配し、その間に駆動装置1と従動ローラ180とが取り付けられた構成を有する。さらに具体的には、サイドフレーム176は、平行部178と、これに対して段状に折れ曲がった膨出部179と張出部174とを有する。膨出部179は、平行部178の一端側に連続し、これに対して垂直に折れ曲がった垂直膨出部181aと、垂直膨出部181aの端部から平行部178に対して略水平方向に伸びる水平膨出部181bとから構成されている。張出部174は、平行部178の他端側に連続し、これに対して垂直に折れ曲がった部位である。サイドフレーム176,176は、それぞれ平行部178,178同士および水平膨出部181a,181a同士が平行となり、張出部174および膨出部179がそれぞれ移載装置175の外側に向けて膨出するように配されている。
【0092】
図10に示すように、張出部174には移動ローラ184が取り付けられている。移動ローラ184は、車軸が張出部174に対して垂直外側に突出するように取り付けられ、自由に回転可能な車輪である。ローラ184は、図10に示すようにレール177aに嵌め込まれており、移動方向が規制されている。水平膨出部181a,181a間には、駆動装置1が装着されている。駆動装置1の側方側ローラ3,3の外周部には、傘歯車182,182が側方側ローラ3,3と一体的に回転可能なように固定されている。
【0093】
また、サイドフレーム176,176の垂直膨出部180b,180bには、回転軸183,183が駆動装置1側に向けて突出するように装着されている。回転軸183,183の先端部分、すなわち駆動装置1側には、傘歯車185,185が回転軸183,183に対して相対回転不能なように取り付けられている。傘歯車185,185は、それぞれ駆動装置1の側方側ローラ3,3に装着されている傘歯車182,182に噛み合っている。そのため、側方側ローラ3,3が回転すると、このトルクが傘歯車182,185を介して回転軸183,183に伝わる。
【0094】
回転軸183,183の垂直膨出部180,180側の部位には移動ローラ186,186が回転軸183,183に対して相対回転不能なように取り付けられている。移動ローラ186,186は、それぞれ前記したレール177bに嵌め込まれている。そのため、側方側ローラ3,3の回転に伴ってトルクが回転軸183,183に伝わると、回転軸183,183と共に移動ローラ186,186が回転し、移載装置175を横方向に平行移動させることができる。
【0095】
移動ローラ186,186の近傍には、必要に応じて移動ローラ186,186に対して制動力を付与可能な機械式あるいは電磁式のブレーキ(図示せず)が設けられている。そのため、移載装置175は、このブレーキを作用させることにより側方側ローラ3,3に回転負荷(制動力)を付与することができる。
【0096】
従動ローラ180は、図10に示すようにサイドフレーム176,176の平行部178,178間に配されている。従動ローラ180,180は、中空で筒状の筒体187の両端部に配された軸受188,188によって支持された支軸190に対して相対回転可能とされている。
【0097】
従動ローラ180は、筒体187の内部に回転量調整機構191を内蔵している。回転量調整機構191は、大別してナット192(筒体側部材)と、円筒ネジ193(移動部材)と、ストッパー195a,195b(阻止部材)とから構成されている。ナット192は、外形が筒体187の外形と略同一であり、内周面に円筒ネジ193が螺合可能なネジが形成されたものである。ナット192は、筒体187の軸方向略中央部に固定されている。
【0098】
円筒ネジ193は、中央に貫通孔193aを有し、外周部にナット192の内側に形成されたネジと螺合可能なネジが形成された部材である。円筒ネジ193は、ナット192に螺合し、貫通孔193aに支軸190を挿通した状態で装着されている。また、円筒ネジ193は、支軸190に沿って配されたニードル200によって回転が規制されている。そのため、円筒ネジ193は、筒体187が回転すると支軸188に沿って摺動する。さらに具体的には、円筒ネジ193は、図11に矢印Aで示す方向(以下、必要に応じて正方向と称す)に従動ローラ180が回転すると矢印a方向(図11では右側)に進み、矢印Bで示す方向(以下、必要に応じて逆方向と称す)に回転すると矢印b方向(図11では左側)に進む。
【0099】
筒体187は、円筒ネジ193が右方のストッパー195bに突き当たるまで進むとそれ以上矢印A方向(被搬送物Wを移載装置175側に引き込む方向)に回転できなくなる。また逆に、筒体187は、円筒ネジ193が左方のストッパー195aに突き当たるまで進むとそれ以上矢印B方向(被搬送物Wを移載装置175側から払い出す方向)に回転できなくなる。
【0100】
ストッパー195a,195bは、円筒ネジ193が支軸188の軸方向に移動するのを阻止するためのものであり、それぞれ円筒ネジ193に対して支軸188の延伸方向に隣接する位置に所定の間隔を開けて支軸188に対して相対移動不可能なように固定されている。ストッパー195a,195bは、筒体187の開口部分(図示せず)から支軸188に対する固定位置を適宜調整できる構成とされている。そのため、円筒ネジ193は、ストッパー195a,195bによって挟まれた領域内において摺動できる。従って、筒体187は、回転に伴って円筒ネジ193の端部がストッパー195a,195bのいずれかに突き当たるまで自由に摺動できるが、円筒ネジ193がストッパー195に突き当たるとその回転方向にはそれ以上摺動できなくなる。
【0101】
従動ローラ180と駆動装置1の本体側ローラ2との間には、2本のベルト196,196が懸架されている。ベルト196,196は、従動ローラ180と本体ローラ2との間において動力の伝達を行う動力伝達部材として機能すると共に、搬送ライン171,172との移載装置175との間における被搬送物Wの受け渡しを行うための搬送面を構成する。
【0102】
レール177a,177bは、それぞれ図11に示すように搬送ライン171,172による被搬送物Wの搬送方向に対してほぼ直交する方向に延伸している。レール177a,177bは、移載装置175の移動ローラ184,184および移動ローラ186,186が嵌め込まれるものであり、移載装置175を横方向、すなわち搬送ライン171,172による被搬送物Wの搬送方向に対して交差する方向に案内するものである。レール177a,177bには、ローラ止め197a,197bおよびローラ止め198a,198bが設けられている。ローラ止め197a,197bおよびローラ止め198a,198bは、図10に実線あるいは二点差線で示すように搬送ライン171,172に隣接する位置に移載装置175が到来した際に移動ローラ186が突き当たる位置に設けられている。そのため、移載装置175は、搬送ライン171の下流端に隣接する位置と、搬送ライン172の上流端に隣接する位置との間の領域を直線的に往来できる。
【0103】
搬送システム170は、図10に矢印で示すように搬送ライン171によって搬送されてきた被搬送物Wを移載装置175に引き込んだ後、移載装置175を搬送ライン172側に水平移動させ、被搬送物Wを搬送ライン172側に払い出す動作を行う。以下、搬送システム170の動作について詳細に説明する。なお、上記したように、駆動装置1は、モータ11の回転軸27の回転方向と、本体側ローラ2や側方側ローラ3の回転方向とが逆転する関係にあるが、以下の説明では説明の便宜上、側方側ローラ3に制動力を加えた際に図11等に矢印Aで示す方向に本体側ローラ2が回転し、本体側ローラ2に制動力を加えた際に矢印Bで示す方向に側方側ローラ3が回転する状態を正回転と規定し、その時のモータ11への通電状態を正方向と規定する。また逆に、側方側ローラ3に制動力を加えた際に図12に矢印Bで示す方向に本体側ローラ2が回転し、本体側ローラ2に制動力を加えた際に矢印Aで示す方向に側方側ローラ3が回転する状態を逆回転と規定し、その時のモータ11への通電状態を逆方向と規定する。
【0104】
搬送システム170は、図12に実線で示すように初期状態において移載装置175が搬送ライン171の下流端に隣接した位置に配されており、搬送ライン171から被搬送物Wが払い出されるのを待っている。
【0105】
ここで、移載装置175が搬送ライン171に隣接する位置で停止しており、本体側ローラ2が回転を開始する前の時点(以下、必要に応じて搭載待機状態と称す)では、図12に実線で示すように、従動ローラ180内の円筒ネジ193が左方のストッパー195aに突き当たった状態となっている。円筒ネジ193は、上記したように従動ローラ180が正方向(図12の矢印A方向)に回転すると右方側(図12の矢印a方向)に進み、逆方向(図12の矢印B方向)に回転すると左方向(図12の矢印b方向)に進む。そのため、搭載待機状態では、従動ローラ180と、これにベルト196を介して接続されている本体側ローラ2が、正方向(矢印A方向)に自由に回動できる状態となっている。
【0106】
移載装置175が移載待機状態である間に被搬送物Wが搬送ライン171の下流端に到達したことが検知されると、搬送システム170の制御手段は、駆動装置1のモータ11に対する正方向への通電を開始させる。これ同時に、制御手段は、移動ローラ186,186の近傍に設置されているブレーキを作用させて移動ローラ186,186にモータ11のトルクを超えない程度の制動力を付与する。さらに具体的には、制御手段は、駆動装置1の側方側ローラ3,3のそれぞれに付与される回転負荷Fsが本体側ローラ2に作用する回転負荷Fmよりも大きくなり、回転負荷Fsがモータ11のトルクを超えない程度にブレーキを作用させる。
【0107】
上記したようにモータ11に対して正方向に通電すると共にブレーキを作用させると、駆動装置1は、側方側遊星歯車機構70が固定された状態となると共に、本体側遊星歯車機構12がスター型となり、本体側ローラ2が回転し始める。これにより、本体側ローラ2と従動ローラ180とに渡って懸架されたベルト196が図12に矢印Y1で示す方向に動き始め、被搬送物Wが移載装置175側に移動し始める。
【0108】
ここで、ストッパー195a,195bの間隔は、被搬送物Wを移載装置175に移載するのに必要とされるベルト196の動作時間および動作距離に応じて予め調整されている。そのため、円筒ネジ193がストッパー195bに突き当たるまで駆動装置1の本体側ローラ2を正回転させると、搬送ライン171から払い出された被搬送物Wが移載装置175上に引き込まれる。
【0109】
円筒ネジ193がストッパー195bに突き当たった状態になると、従動ローラ180が正方向に回転不能となる。これにより、ベルト196を介して接続されている駆動装置1の本体側ローラ2に大きな制動力が作用し、駆動装置1の側方側ローラ3,3のそれぞれに作用する回転負荷Fsが本体側ローラ2に作用する回転負荷Fmよりも大きくなる。
【0110】
本体側ローラ2に作用する回転負荷Fmが側方側ローラ3,3に作用する回転負荷Fsよりも大きくなると、本体側遊星歯車機構12がプラネタリ型となり、側方側遊星歯車機構70がスター型となる。このため、移載装置175への被搬送物Wの移載が完了すると、本体側ローラ2が停止し、側方側ローラ3,3が回転を開始する。制御手段は、側方側ローラ3,3が回転を開始したことを検知すると、移動ローラ186用のブレーキを解除する。これに伴い、移載装置175が、図12に矢印X1で示すように搬送ライン172側(図12では左方)に向けて移動し始める。
【0111】
レール177a,177bに設置されているローラ止め197a,198aに移動ローラ184,186が突き当たるまで移載装置175が移動すると、制御手段は、駆動装置1のモータ12への正方向への通電を一旦停止すると共に、移動用ローラ186用のブレーキを作動させ、移動ローラ186,186にモータ11のトルクを超えない程度の制動力を付与する。これにより、移載装置175は、左方側の搬送ライン172に隣接する位置に停止する。
【0112】
ここで、移載装置175が搬送ライン172に隣接する位置で停止しており、本体側ローラ2が回転を開始する前の時点(以下、必要に応じて払出待機状態と称す)では、図13に示すように、従動ローラ180内の円筒ネジ193が右方のストッパー195bに突き当たった状態となっている。そのため、払出待機状態では、従動ローラ180と、これにベルト196を介して接続されている本体側ローラ2が、逆方向(図13の矢印B方向)に自由に回動できる状態となっている。
【0113】
移載装置175が払出待機状態となると、制御手段は、駆動装置1のモータ12に対して逆方向への通電を開始する。ここで、上記したように、側方側ローラ3,3には本体側ローラ2に作用する回転負荷Fmよりも大きな回転負荷Fs(Fs>Fm)が作用しているため、側方側遊星歯車70が固定状態となり、本体側遊星歯車機構12はスター型となる。これにより、本体側ローラ2と、これにベルト196を介して接続された従動側ローラ180とが逆転方向に回転を開始し、ベルト196が図12に矢印X2で示す方向に動き始め、被搬送物Wが移載装置175側に移動し始める。
【0114】
搬送ライン172への被搬送物Wの払い出しが開始されると、従動ローラ180が正方向に回転する。これにより、従動ローラ180の内部に収容されている円筒ネジ193がストッパー195a側に動き始め、被搬送物Wの払い出しが完了した頃に円筒ネジ193の左端部がストッパー195aに突き当たり、従動ローラ180が逆方向(図12の矢印B方向)に回転不能となる。これにより、駆動装置1の本体側ローラ2に大きな制動力が作用し、駆動装置1の本体側ローラ2に作用する回転負荷Fmが側方側ローラ3,3に作用する回転負荷Fsよりも大きくなる。(Fm>Fs)
【0115】
上記したように、回転負荷Fmが回転負荷Fsよりも大きくなると、駆動装置1の本体側遊星歯車機構12がプラネタリ型となり、側方側遊星歯車機構70がスター型となる。このため、搬送ライン172への被搬送物Wの払い出しが完了すると、本体側ローラ2に代わって側方側ローラ3,3が逆方向に回転し始める。制御手段は、側方側ローラ3,3の回転開始を検知すると、移動ローラ186用のブレーキを解除する。これにより、駆動装置1の動力が側方側ローラ3,3および傘歯車182,185を介して移動ローラ186に伝わり、移載装置175が図13に矢印X2で示すように搬送ライン171側(図13では右方)に向けて水平移動し始める。
【0116】
移載装置175が右方に向けて水平移動し、レール177a,177bに設置されているローラ止め197a,198aに移動ローラ184,186が突き当たると、制御手段は、モータ12への通電を停止し、移動用ローラ186用のブレーキを作動させる。これにより、移載装置175が搭載待機状態に戻り、一連の被搬送物Wの移載動作が完了する。
【0117】
上記した搬送システム170において採用されている移載装置175は、駆動装置1のみで被搬送物Wを移載するための駆動源と、移載装置175を移動させるための駆動源とを賄うことができる。従って、搬送システム170は、装置構成が極めてシンプルである。
【0118】
上記したように、移載装置175は、回転量調整機構191を構成するストッパー195a,195bと円筒ネジ193との距離、すなわちストッパー195a,195bの間隔を調整することにより、本体側ローラ2および従動ローラ180の回転限界を調整できる。従って、移載装置175は、移載装置175と搬送ライン171,172の端部との距離に応じてストッパー195a,195bの間隔を調整することにより、センサ等を設けなくても被搬送物Wを的確に移動させることができる。
【0119】
また、移載装置175は、本体側ローラ2および従動ローラ180が所定量回転し、円筒ネジ193がストッパー195aやストッパー195bに当接して移動が阻止阻止された状態となると、本体側ローラ2および従動ローラ180が回転できなくなり、本体側ローラ2の筒体10に対して大きな回転負荷が作用する構成とされている。そのため、移載装置175は、本体側ローラ2および従動ローラ180が所定量回転し、被搬送物Wの移載が完了した時点で駆動装置1内の動力伝達系統が切り替わり、移載装置175の移動が開始される。従って、本実施例の移載装置175は、被搬送物Wの払い出し動作および搬送ライン171,172間における移動の切替をスムーズに行うことができる。
【0120】
移載装置175は、側方側ローラ3,3に装着された傘歯車185と、サイドフレーム176に取り付けられた傘歯車182およい移動ローラ186によって構成される回転方向変換手段199を備えており、被搬送物Wを平行に配された搬送ライン171,172間を直線的に移動させることができる。そのため、搬送システム170は、設置スペースが小さい。
【0121】
上記実施例では、本体側ローラ2を被搬送物Wを移動させるための駆動源として利用し、側方側ローラ3を移載装置175を移動させるための駆動源として利用した例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらの役割が逆転したものであってもよい。
【0122】
また、上記実施例では、従動ローラ180内に回転量調整機構191を内蔵した例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、回転量調整機構191を本体側ローラ2や側方側ローラ3に内蔵させた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の一実施形態である駆動装置を示す断面図である。
【図2】図1に示す駆動装置の機構図である。
【図3】図1に示す駆動装置の第一の動作状態における機構図である。
【図4】図1に示す駆動装置の第二の動作状態における機構図である。
【図5】図1に示す駆動装置を採用した移載装置および当該移載装置を備えた搬送システムを概念的に示す正面図である。
【図6】図5に示す搬送システムにおいて採用されているモータ内蔵ローラを示す断面図である。
【図7】図5に示す搬送システムを示す斜視図である。
【図8】図5に示す搬送システムに採用されている移載装置の変形例を示す正面図である。
【図9】図5に示す搬送システムの変形例を概念的に示す示す正面図である。
【図10】図5に示す搬送システムの別の変形例を概念的に示す正面図である。
【図11】(a)は図10に示す搬送システムにおいて採用されている移載装置を示す斜視図であり、(b)は(a)の正面図である。
【図12】図10に示す搬送システムの第1の動作段階を概念的に示す要部拡大正面図である。
【図13】図10に示す搬送システムの第2の動作段階を概念的に示す要部拡大正面図である。
【符号の説明】
【0124】
1 駆動装置(駆動源)
2 本体側ローラ(本体部)
3 側方側ローラ(側方部)
10 筒体(ローラ)
11 モータ
12 本体側遊星歯車機構(動力伝達機構)
27 回転軸
31 歯部(本体側太陽歯車)
40 遊星歯車(本体側遊星歯車)
41 内歯歯車(本体側内歯歯車)
50 動力伝達部材
60 歯部(側方側太陽歯車)
70 側方側遊星歯車機構(動力伝達機構)
74 側方側キャリア
77 遊星歯車(側方側遊星歯車)
78 内歯歯車(側方側内歯歯車)
100,170 搬送システム
101 主搬送ライン
102 従搬送ライン
150,175 移載装置
171,172 搬送ライン
180 従動ローラ
156,157 昇降機構
156a ラック(ガイド部材)
156b ピニオン(歯部材)
157a スプロケット(歯部材)
157b チェーン(ガイド部材)
158 従搬送ライン
170 搬送システム
171,172 搬送ライン
180 従動ローラ
182,185 傘歯車
184,186 移動ローラ
187 筒体
191 回転量調整機構
192 ナット(筒体側部材)
193 円筒ネジ(移動部材)
195 ストッパー(阻止部材)
196 ベルト
199 回転方向変換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支軸と、本体部と、側方部とを有し、
前記本体部は、本体側筒体の内部にモータと、本体側遊星歯車機構と、動力伝達部材とを内蔵し、本体側筒体が支軸に対して相対回転可能に支持されたものであり、
前記側方部は、側方側筒体の内部に側方側遊星歯車機構と回動部材とを備え、側方側筒体が支軸に対して相対回転可能に支持されたものであり、
前記本体側遊星歯車機構は、本体側太陽歯車と、本体側遊星歯車と、本体側内歯歯車とを具備したものであり、
前記本体側内歯歯車は、本体部のローラの内部に配され、ローラに対して相対回転不能に装着されたものであり、
前記本体側太陽歯車は、モータにおいて発生するトルクを受けて支軸の軸心回りに回転するものであり、
前記本体側遊星歯車は、前記本体側太陽歯車および本体側内歯歯車に噛み合うものであり、
前記動力伝達部材は、本体側遊星歯車機構のキャリアとして機能し、本体側遊星歯車機構と側方側遊星歯車機構との間において動力を伝達するものであり、
前記側方側遊星歯車機構は、側方側太陽歯車と、側方側遊星歯車と、側方側内歯歯車と、側方側キャリアとを具備したものであり、
側方側太陽歯車は、動力伝達部材に連動して回転するものであり、
側方側内歯歯車は、側方部の内部に配され、側方部に対して相対回転不能に装着されており、
側方側キャリアは、支軸に対して相対回転不能に支持されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
支軸と、本体部と、側方部とを有し、
前記本体部は、本体側筒体の内部にモータと、本体側遊星歯車機構と、動力伝達部材とを内蔵し、本体側筒体が支軸に対して相対回転可能に支持されたものであり、
前記側方部は、側方側筒体の内部に側方側遊星歯車機構を内蔵し、側方側筒体が支軸に対して相対回転可能に支持されたものであり、
前記本体側遊星歯車機構は、本体側太陽歯車と、本体側遊星歯車と、本体側内歯歯車とを具備したものであり、
前記側方側遊星歯車機構は、側方側太陽歯車と、側方側遊星歯車と、側方側内歯歯車と、側方側キャリアとを具備し、スター型の遊星歯車機構を構成しており、
本体側筒体の回転負荷が側方側筒体の回転負荷よりも大きい場合は、本体側遊星歯車機構がプラネタリ型の遊星歯車機構を構成し、モータのトルクが側方側内歯歯車に伝達され、側方側筒体が支軸に対して回転するものであり、
本体側筒体の回転負荷が側方側筒体の回転負荷よりも小さい場合は、本体側遊星歯車機構がスター型の遊星歯車機構を構成し、モータのトルクが本体側内歯歯車に伝達され、本体側筒体が支軸に対して回転することを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
側方部は、本体部のローラの両端に隣接する位置に配されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動装置。
【請求項4】
被搬送物を搬送する搬送手段と、当該搬送手段を移動させる移動手段と、請求項1乃至3のいずれかに記載の駆動装置とを有し、
当該駆動装置の本体部あるいは側方部のいずれか一方が搬送手段の駆動源として使用され、
駆動装置の本体部あるいは側方部の他方が移動手段の駆動源として使用されることを特徴とする移載装置。
【請求項5】
移動手段は、搬送手段を上下方向に移動させるものであることを特徴とする請求項4に記載の移載装置。
【請求項6】
駆動装置の本体部及び/又は側方部を構成する筒体、あるいは、当該筒体の回転に連動して回転する従動ローラを有し、前記筒体あるいは従動ローラには回転量調整機構が設けられており、
当該回転量調整機構は、前記筒体あるいは従動ローラと一体的に回転する筒体側部材と、当該筒体側部材の回転量に応じて所定方向に移動する移動部材と、当該移動部材の移動経路の中途に設けられ、移動部材の移動を阻止する阻止部材とを具備していることを特徴とする請求項4又は5に記載の移載装置。
【請求項7】
移載装置は、駆動装置の本体部あるいは側方部のうち搬送手段の駆動源として利用されるものの回転方向、あるいは、移動手段の駆動源として利用されるものの回転方向を変換する回転方向変換手段を備えていることを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の移載装置。
【請求項8】
被搬送物を搬送する主搬送ラインと、従搬送ラインとを有し、主搬送ラインと従搬送ラインとの間に請求項4乃至7のいずれかに記載の移載装置が配されており、当該移載装置によって主搬送ラインと従搬送ラインとの間における被搬送物の受け渡しを行えることを特徴とする搬送システム。
【請求項9】
被搬送物を搬送する主搬送ラインと、従搬送ラインとを有し、主搬送ラインと従搬送ラインとの間に請求項4乃至7のいずれかに記載の移載装置が配されており、
移載装置を構成する駆動装置の本体部あるいは側方部のうち移動手段の駆動源として利用されるものには、外周に複数の歯部を備えた歯部材が直接的あるいは間接的に接続されており、
前記歯部材と噛み合うガイド部材が、主搬送ラインと従搬送ラインとの間に形成される経路に沿って配されていることを特徴とする搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−96512(P2006−96512A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284554(P2004−284554)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(592026819)伊東電機株式会社 (71)
【Fターム(参考)】