説明

駆動装置

【課題】 本発明は、搬送ラインから被搬送物を払い出す払い出し装置の駆動装置として好適に採用可能な駆動装置の提供を目的とする。
【解決手段】 駆動装置1は、本体側ローラ2の側方に側方側ローラ3,5を配した構成とされている。本体側ローラ2は、筒体10の内部にモータ11と本体側遊星歯車機構12,13とを内蔵している。一方、側方側ローラ3,5は、ぞれぞれ筒体71の内部に側方側遊星歯車機構70を内蔵している。本体側遊星歯車機構12,13は、偏心部材74が回動可能であることを条件としてプラネタリ型の遊星歯車機構となり、偏心部材74が回動不能であることを条件としてスター型の遊星歯車機構となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラの内部にモータを内蔵した駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術より、ローラコンベア等の搬送装置において一定方向に被搬送物を搬送する搬送ラインからその側方に配された搬送ラインに被搬送物を分岐させたいという要望に応えるべく、下記特許文献1〜3に示すような払い出し装置等が提供されている。
【特許文献1】特開2003−285925号公報
【特許文献2】特開2003−261219号公報
【特許文献3】特開2003−81421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されている搬送設備において採用されている移載手段は、被搬送物を所定の搬送方向に搬送するために設けられたローラの間にベルト駆動体を配置しておき、このベルト駆動体を必要に応じてシリンダのような昇降装置を用いて昇降させる構成とされていた。そのため、特許文献2に開示されている移載手段は、ベルト駆動体を駆動させる動力源と、昇降装置を動作させる動力源とを別々に用意する必要があり、その分だけ装置構成が大がかりなものとなってしまうという問題があった。
【0004】
また、上記特許文献2に開示されている払い出し装置や特許文献3に開示されている搬送方向変換装置は、いずれも単一のモータで物品の払い出し方向を変換可能な構成とされているが、物品搬送用のチェーンと、このチェーンを支持する平行レールを昇降させる円板カムとを同時に回転させる構成とされている。そのため、前記した払い出し装置や搬送方向変換装置では、円板カムが一回転するまでの間にチェーンによる被搬送物の払い出しを完了しておく必要があり、チェーンの稼働時間やチェーンによって被搬送物の払い出し可能な距離が規制されてしまうという問題があった。
【0005】
上記したように、従来技術では、被搬送物を払い出す搬送動作と、チェーンやベルトで構成される搬送面を昇降する昇降動作とを単一の動力源で行えるものであって、所望の時間や距離に渡って搬送面を動作させることができるような駆動装置が存在せず、一連の払い出し動作に何らかの制約が加わってしまうという問題があった。
【0006】
上記した問題に鑑み、本発明は、搬送ラインから被搬送物を払い出す払い出し装置の駆動装置として好適に採用可能な駆動装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、上記した課題を解決すべく提供される請求項1に記載の発明は、支軸と、当該支軸に対して相対回転可能に支持された本体部と、支軸に対して相対回転不能に支持された側方部とを有し、前記本体部が、ローラの内部にモータと、本体側遊星歯車機構と、動力伝達部材とを内蔵したものであり、前記側方部が、内部に側方側遊星歯車機構と回動部材とを備えたものであり、前記本体側遊星歯車機構が、本体側太陽歯車と、本体側遊星歯車と、本体側内歯歯車とを具備したものであり、前記本体側内歯歯車が、本体部のローラの内部に配され、ローラに対して相対回転不能に装着されたものであり、前記本体側太陽歯車が、モータにおいて発生するトルクを受けて支軸の軸心回りに回転するものであり、前記本体側遊星歯車が、前記本体側太陽歯車および本体側内歯歯車に噛み合うものであり、前記動力伝達部材が、支軸に沿う方向に延伸した接続軸により本体側遊星歯車に対して相対回転可能に接続されたものであり、前記側方側遊星歯車機構が、側方側太陽歯車と、側方側遊星歯車と、側方側内歯歯車とを具備したものであり、側方側太陽歯車が、動力伝達部材に接続され、動力伝達部材に連動して回転するものであり、側方側内歯歯車が、側方部の内部に配され、側方部に対して相対回転不能に装着されたものであり、側方側遊星歯車が、支軸に沿う方向に延伸した回転軸により回動部材に対して相対回転可能に接続されたものであることを特徴とする駆動装置である。
【0008】
本発明の駆動装置は、側方部に設けられた回動部材を回動させるのに要する負荷が本体部のローラを回転させるのに要する負荷よりも小さい場合に本体側遊星歯車機構がプラネタリ型となり、モータの動力が回動部材に伝達され、回動部材が回動する。一方、回動部材を回動させるのに要する負荷が本体部のローラを回転させるのに要する負荷よりも大きい場合は、本体側遊星歯車の腕が固定された状態となり、本体側遊星歯車機構がスター型となる。そのため、この場合はモータの動力が本体側遊星歯車を介して本体側内歯歯車に伝わり、本体部のローラが回転する。従って、本発明の駆動装置は、回動部材に作用する負荷の大小に応じてモータにおいて発生する動力の伝達系統をスムーズに切り替え、側方部の回動部材あるいは本体部のローラに伝達することができる。
【0009】
本発明の駆動装置は、回動部材に作用する負荷の大小に応じて動力伝達系統が切り替わるものであるため、所望の時間にわたって本体部のローラを回転させることができる。
【0010】
上記したように、本発明の駆動装置は、ローラ内に収容されているモータのみで回動部材を回転させたり、ローラを回転させたりすることができる。従って、本発明の駆動装置は、本体部のローラの動力を利用して被搬送物を搬送する等の動作を行えると共に、回動部材の動力を利用して例えば駆動装置によって構成される搬送面を昇降させるといったような別の動作を行うことができる。
【0011】
本発明の駆動装置は、本体部のローラと側方部の回動部材とをローラに内蔵されているモータのみで動作させることができる。そのため、本発明によればローラを回動させる動力源と回動部材を回動させる動力源とを別々に設ける必要がない。従って、本発明によれば、駆動装置を採用した装置や機器の装置構成をコンパクト化でき、これらの装置類の製造コストを抑制できる。
【0012】
また同様の課題を解決すべく提供される請求項2に記載の発明は、支軸と、当該支軸に対して相対回転可能に支持された本体部と、支軸に対して相対回転不能に支持された側方部とを有し、前記本体部が、ローラの内部にモータと、本体側遊星歯車機構と、動力伝達部材とを内蔵したものであり、前記側方部が、内部に側方側遊星歯車機構と回動部材とを内蔵したものであり、前記側方側遊星歯車機構がプラネタリ型の遊星歯車機構を構成しており、回動部材が支軸に対して軸心回りに回動可能である場合は、本体側遊星歯車機構がプラネタリ型の遊星歯車機構を構成し、モータのトルクが回動部材に伝達され、回動部材が支軸に対して回動するものであり、当該回動部材が支軸に対して軸心回りに回動不可能である場合は、本体側遊星歯車機構がスター型の遊星歯車機構を構成し、モータのトルクが本体側内歯歯車に伝達され本体部が支軸の軸心回りに回転することを特徴とする駆動装置である。
【0013】
本発明の駆動装置は、側方部に設けられた回動部材が回動可能であることを条件として本体側遊星歯車機構がプラネタリ型となり、モータの動力を回動部材に伝達可能な状態となる。一方、本発明の駆動装置は、側方部の回動部材が回動不可能であることを条件として本体側遊星歯車機構がスター型となる。従って、本発明の駆動装置は、回動部材が回動可能であるか否かによってモータの動力を伝達する動力伝達系統が切り替わり、側方部の回動部材あるいは本体部のローラを回動させることができる。従って、本発明によれば、モータにおいて発生する動力の伝達系統をスムーズに切り替えることができ、側方部の回動部材あるいは本体部のローラに伝達可能な駆動装置を提供できる。また、本発明によれば、所望の時間にわたって本体部のローラを回転させることが可能な駆動装置を提供できる。
【0014】
上記したように、本発明の駆動装置は、ローラ内に収容されているモータのみで回動部材の回転と、ローラの回転の双方を賄うことができる。従って、本発明の駆動装置は、例えば回動部材が昇降手段にリンクされた状態とした場合、本体部のローラの動力を利用して被搬送物を搬送する等の動作を行うと共に、回動部材の動力を利用して駆動装置を昇降させるといったような別の動作を行うことができる。
【0015】
本発明の駆動装置によれば、ローラを回動させる動力源と回動部材を回動させる動力源とを別々に設けなくても本体部のローラと側方部の回動部材とを別々に動作させることができる。従って、本発明によれば、駆動装置を採用した装置や機器の装置構成のコンパクト化や製造コストの抑制に寄与することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、回動部材が支軸に対して偏心回転可能に支持されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動装置である。
【0017】
かかる構成によれば、回動部材を何らかの台座等に支持された状態とし、回動部材を回動させることにより駆動装置を台座等に対して昇降させることができる。
【0018】
上記請求項1乃至3のいずれかに記載の駆動装置は、側方部が本体部のローラの両端に隣接する位置に配された構成であってもよい。(請求項4)
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、回動部材が側方部材の内部に収容されており、側方部材が、回動部材に相当する位置に開口を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の駆動装置である。
【0020】
かかる構成によれば、回動部材を側方部材の内部に収容しつつ、開口を介して回動部材の回動により発生する動力を取り出すことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、本体部に収容されているモータのみで本体部のローラと側方部の回動部材とを動作させることが可能な駆動装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
続いて、本発明の一実施形態である駆動装置について図面を参照しながら詳細に説明する。図1において、1は本実施形態のモータ内蔵ローラである。駆動装置1は、本体側ローラ2(本体部)と、その両側方に配される側方側ローラ3,5(側方部)とに大別される。本体側ローラ2は、筒体10(ローラ)の内部にモータ11と本体側遊星歯車機構12,13とを内蔵したものである。筒体10は、金属製で両端が開口した円筒型の部材であり、両端が樹脂や金属で作製された閉塞部材15,16によって閉塞されている。本体側ローラ2は、筒体10の軸心位置に支軸17が挿通されている。本体側ローラ2は、支軸17が閉塞部材15,16を貫通しており、筒体10が支軸17に対して回転自在に支持された構成とされている。支軸17は、筒体10を横断し、両端部において断面形状が六角形となるように面取りされた軸体であり、モータ11に繋がる電気配線等を挿通可能な構成とされている。支軸17は、図示しないフレーム等に対して相対回転不能に支持される。
【0023】
モータ11は、支軸17の延伸方向略中央部に固定子20を装着し、その外周側に回転子21を配した、いわゆるアウターロータ型のブラシレスモータである。固定子20は、鉄心に導線が巻き付けられたコイルである。回転子21に繋がる電気配線は、支軸17に設けられた開口17aを介して支軸17の内部に挿通されており、支軸17の一端側(図1では右方)の開口部分から導出されている。一方、回転子21は、円筒型のケース部材22の内壁面に固定されており、固定子20に対して所定の間隔を開けて配されている。
【0024】
モータ11は、回転子21の磁極位置を検知可能な位置検出子23を備えている。本実施形態では、位置検出子23としてホール素子とパワースイッチング回路の全部あるいは一部を一体化したホールICを採用している。位置検出子23に繋がる配線は、開口17aから支軸17内に挿通され、支軸17の一端側(図1では右方)の開口部分から導出されている。
【0025】
ケース部材22は、両端部が閉塞部材25,25によって閉塞されている。閉塞部材25,25は、中心に貫通孔26,26を有する。貫通孔26,26には、円筒形で、支軸17を挿通可能な回転軸27,27がケース部材22の外側から装着されている。閉塞部材25,25には、軸受28,28が装着されており、この軸受28,28を介して支軸17が回転自在に支持されている。
【0026】
回転軸27,27は、閉塞部材25,25と共にモータ11の回転子21に連動して回転するものである。回転軸27,27は、ケース部材22の外側に突出する円筒形の軸部30,30を有する。回転軸27,27は、モータ11の動力を出力する出力軸として機能するものである。また、回転軸27,27は、軸部30,30の外周面に歯部31が形成されてたものであり、外歯歯車としての機能も有する。回転軸27,27は、支軸17と軸心が一致しており、本体側遊星歯車機構12,13の太陽歯車として機能する。
【0027】
本体側遊星歯車機構12,13は、筒体10の両端部に配されている。本体側遊星歯車機構12,13は、太陽歯車として機能する回転軸27,27の軸部30,30の外周部に遊星歯車40(本体側遊星歯車)と内歯歯車41(本体側内歯歯車)とを配して構成されるものである。内歯歯車41は、閉塞部材15,16に隣接する位置に配されており、筒体10の内周壁に固定されている。遊星歯車40は、内歯歯車41と回転軸27との双方に噛み合う歯車である。遊星歯車40は、内歯歯車41の内周に沿って回転軸27の周囲を回動(公転)可能とされている。また、遊星歯車40は、軸心部に設けられた貫通孔43に挿通されたピン45を中心として回動(自転)可能とされている。
【0028】
遊星歯車40は、ピン45を介して動力伝達部材50に接続されている。さらに具体的には、動力伝達部材50は、一端側にキャリア(腕)として機能する本体側接続部51が一体化されており、本体側接続部51に設けられた貫通孔52に挿通されたピン45を介して遊星歯車40に連結されている。そのため、遊星歯車40および動力伝達部材50は、支軸17の軸心回りに一体的に回動(公転)することができる。また、遊星歯車40は、ピン45を中心として動力伝達部材50に対して独立的に回動(自転)することができる。
【0029】
動力伝達部材50は、軸心位置に支軸17を挿通可能な軸挿通孔53を有する。動力伝達部材50は、軸挿通孔53に支軸17が挿通され、本体側接続部51とは反対側の端部(側方側接続部54側)が筒体10の端部から外部に突出している。動力伝達部材50は、閉塞部材15,16の軸心位置に設けられた貫通孔55,56に設けられた軸受57,58を介して筒体10に対して相対回転可能なように装着されている。
【0030】
動力伝達部材50は、筒体10の外部に向けて突出した部分(側方側接続部54)の外周面に歯部60が形成された外歯歯車状の形状とされている。動力伝達部材50は、支軸17と軸心が一致しており、側方側ローラ3,5内に内蔵されている側方側遊星歯車機構70の太陽歯車として機能するものである。
【0031】
筒体10の両端部の外周面には、リング状のベルト懸架部材65,66が固定されている。ベルト懸架部材65は、図1に示すように断面形状が凹型であり、中央の凹部66にベルト(図示せず)を懸架可能な構成とされている。
【0032】
側方側ローラ3,5は、図1に示すように本体側ローラ2の筒体10よりも開口径の大きな筒体71に対して閉塞部材72,73を装着して形成される空間内に、側方側遊星歯車機構70と偏心部材74とを内蔵した構成とされている。閉塞部材72は、筒体71の本体側ローラ2側の開口部分を閉塞する部材であり、中央部に動力伝達部材50を挿通可能な挿通孔75を有する。また、閉塞部材73は、筒体71の他端側の開口部分を閉塞する部材であり、中心に開口形状が六角形の挿通孔76が設けられている。挿通孔76の開口形状は、六角形であり、支軸17の端部の断面形状に合致している。支軸17は、図1に示すように筒体71を横断しており、両端部が挿通孔76から筒体71の外側に向けて突出している。これにより、支軸17は、側方側ローラ3,5に対して相対回転不能に支持されている。
【0033】
閉塞部材73には、筒体71に対して装着することによって側方側ローラ3,5の内側に向かって突出する突き当て部73aが設けられている。突き当て部73aは、後述する偏心部材74が支軸17に対して回動し、偏心部材74の外周部が開口88に最も近づいた際に突き当て部90が突き当たる部位である。閉塞部材73は、図1のように後述する開口88を下方に向くように配した際に突き当て部73aが支軸17よりも下方側に来るように装着される。
【0034】
側方側遊星歯車機構70は、太陽歯車として閉塞部材72の挿通孔75から挿通された動力伝達部材50を採用し、その外周部に遊星歯車77(側方側遊星歯車)と内歯歯車78(側方側内歯歯車)とを配して構成されるものである。内歯歯車78は、筒体71の内周面であって、閉塞部材72側に偏在した部位に固定されている。遊星歯車77は、内歯歯車78と挿通孔75の外周に設けられた歯部60との双方に噛み合う歯車である。遊星歯車77は、内歯歯車78の内周に沿って動力伝達部材50(太陽歯車)の外周を回動(公転)可能とされている。また、遊星歯車77は、軸心部分に設けられた貫通孔80に挿通されたピン81によって偏心部材74に対して回転(自転)自在に接続されている。
【0035】
偏心部材74は、図1に示すように偏心部82と、遊星歯車77が接続される歯車接続部83とを有する。偏心部82は、円盤状の形状を有するものであり、軸心位置から距離dだけ外れた位置に支軸17を挿通可能な軸挿通孔85の軸心位置が存在している。偏心部材74は、軸挿通孔85に挿通された支軸17に対して相対回転可能な状態で支持されている。偏心部82の外周には、軸受84が装着されている。
【0036】
偏心部材74は、図1に示すように歯車接続部83が閉塞部材72側、すなわち側方側遊星歯車機構70側を向くように配されている。歯車接続部83は、偏心部82に対して軸挿通孔85の偏心方向に突出した部位であり、遊星歯車77のキャリア(腕)として機能する。歯車接続部83は、ピン81を装着可能なピン装着穴87が設けられており、このピン装着穴87に差し込まれたピン81を介して遊星歯車77が回動自在(自転自在)に装着されている。偏心部82のうち、軸挿通孔85から最も離れた頂部74a側の部位には、歯車接続部83とは逆方向に突出した突き当て部90が設けられている。突き当て部90は、支軸17を中心として偏心部材74を回転させ、偏心部材74の外周およびこれに装着された軸受84が筒体71の開口88に最も近づいた状態となった際に閉塞部材73の突き当て部73aに突き当たる位置に設けられている。偏心部材74は、突き当て部90が閉塞部材73側の突き当て部73aに突き当たると支軸17の軸心回りに回転不可能となる。
【0037】
筒体71の外周部には、筒体71の周方向に延伸する開口88が設けられている。開口88は、側方側ローラ3,5の内部に組み込まれた偏心部材74の偏心部82の設置位置に相当する位置に設けられた開口である。
【0038】
続いて、本実施形態の駆動装置1の動作について説明する。駆動装置1は、偏心部材74が支軸17に対して自由に回動可能である場合に側方側遊星歯車機構70がプラネタリ型となり、偏心部材74が回動不可能である場合に内歯歯車78に加えて太陽歯車として機能する動力伝達部材50や遊星歯車77が回転固定状態となる。さらに具体的に説明すると、図2のように偏心部材74の頂部74a側、すなわち突き当て部90側が開口88から離れた位置に存在する場合は、偏心部材74が支軸17に対して回動することができる。
【0039】
偏心部材74が支軸17の周囲を自由に回動可能な状態において本体側ローラ2に対して筒体10の回動を阻止するような外力が作用すると、図4に破線で示すように本体側ローラ2側に設けられた本体側遊星歯車機構12,13の内歯歯車41が固定された状態となる。この状態において、本体側遊星歯車機構12,13の太陽歯車を構成する回転軸27や遊星歯車40は自由に回動可能な状態にある。従って、偏心部材74が自由に回動可能な状態では、図4に実線で示すように本体側遊星歯車機構12,13がプラネタリ型の遊星歯車機構を構成する。
【0040】
図2のように突き当て部90が閉塞部材73の突き当て部73aから離れた位置にある状態においてモータ11に通電され、モータ11の出力軸たる回転軸27が図2に矢印Aで示すように正回転すると、回転軸27の歯部31に噛み合っている遊星歯車40に動力が伝達される。ここで、上記したように内歯歯車41は固定された状態にあるため、遊星歯車40は、ピン45を中心として回転(自転)しながら回転軸27の外周部を回転(公転)する。これにより、ピン45によって遊星歯車40に接続された動力伝達部材50が支軸17を中心として回転し始める。
【0041】
ここで、上記したように側方側ローラ3,5は、共に支軸17に対して相対回転不能とされている。そのため、支軸17を図示しないフレーム等に相対回転不能に装着したり、開口88に対して何らかの支持部材を差し込む等して、側方側ローラ3,5の筒体71を回転不能な状態にしている場合は、側方側遊星歯車機構70はプラネタリ型の遊星歯車機構を構成している。従って、動力伝達部材50が回転し始めると、動力伝達部材50の側方側接続部54の歯部60に噛み合っている遊星歯車77が、ピン81を中心として回転(自転)しながら動力伝達部材50の周囲を回転(公転)し始める。これにより、遊星歯車77に接続された偏心部材74は、図2に矢印Bで示すように支軸17に対して正方向への偏心回転を開始する。
【0042】
図2に示す状態から偏心部材74が偏心回転を開始すると、偏心部材74の外周部が徐々に開口88に近接してくる。そして、偏心部材74の頂部74aが開口88に最も近づいた状態、すなわち頂部74aが開口88から見える状態となると、図1のように偏心部材74の突き当て部90が閉塞部材73の下方側(開口88側)に設けられた突き当て部73aに突き当たり、偏心部材74の回転が阻止される。
【0043】
偏心部材74の回転が不可能になると、これにピン81を介して接続されている遊星歯車77や、遊星歯車77に噛み合っている動力伝達部材50の回転が阻止される。これにより、動力伝達部材50の本体側接続部51にピン45を介して接続された本体側遊星歯車機構12,13の遊星歯車40が支軸17の軸心回りに回動(公転)できなくなる。すなわち、遊星歯車77の回動(公転)を阻止する負荷が筒体10(内歯歯車41)の回動を阻止する負荷よりも大きくなると、図5に示すように本体側遊星歯車機構12,13がプラネタリ型からスター型に切り替わる。
【0044】
本体側遊星歯車機構12,13がスター型に切り替わると、モータ11のトルクが回転軸27および遊星歯車40を介して筒体10の内周面に固定された内歯歯車41に伝達される。これにより、本体側ローラ2の筒体10が回転を開始する。
【0045】
一方、図1に示すように偏心部材74の頂部74aが開口88側に存在し、偏心部材74が正方向に回転不可能な状態では、偏心部材74を逆方向に回転させるのに要する負荷は小さい。そのため、図1に示す状態においてモータ11が逆転方向に回転を開始すると、遊星歯車77の回動(公転)を阻止する負荷が筒体10(内歯歯車41)の回動を阻止する負荷よりも小さくなる。従って、図1に矢印aで示すようにモータ11の回転軸27が逆転方向に回転する場合は、本体側遊星歯車機構12,13がプラネタリ型に切り替わる。この状態においてモータ11が逆転方向に回転すると、モータ11のトルクを受けて遊星歯車40および動力伝達部材50が支軸17の軸心回りに回動する。これにより、動力伝達部材50の歯部60に接続された遊星歯車77が支軸17の軸心回りに回動(公転)し、偏心部材74が逆転方向(図1の矢印b方向)に偏心回転し始める。
【0046】
偏心部材74が逆転方向に回動すると、頂部74aが開口88から徐々に遠ざかっていく。この時、図示しない駆動装置1の制御装置は、モータ11の位置検出子23から発信されるパルス信号に基づき、偏心部材74の回転量を検知する。駆動装置1の制御装置によって突き当て部73aに突き当て部90が接触した状態から偏心部材74が逆転方向に約180度に渡って回動したことが検知されると、偏心部材74およびこの外周に装着されている軸受84が最も開口88から遠ざかった状態となる。
【0047】
上記したように、本実施形態の駆動装置1は、単一のモータ11で偏心部材74の回動の動力源と、本体側ローラ2の回動の動力源とを賄うことができる。そのため、駆動装置1は、装置構成がコンパクトであり、製造コストが安価である。
【0048】
駆動装置1は、偏心部材74に対して作用する負荷に応じて側方側ローラ3,5の偏心部材74あるいは本体側ローラ2の内歯歯車41のいずれかにモータ11の動力を伝達することができる。すなわち、駆動装置1は、偏心部材74に作用する負荷に応じてモータ11の動力を伝達する動力伝達系統をスムーズに切り替えることができる。また、駆動装置1は、偏心部材74が所定の姿勢になると動力伝達系統が切り替わり、モータ11の動力が本体側ローラ2の回転にのみ使用される。そのため、駆動装置1は、所望の時間に渡って本体側ローラ2を動作させることができる。
【0049】
上記実施形態では、偏心部材74が側方側ローラ3,5の筒体71内に収容されたものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、偏心部材74が外部に露出した構成であってもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、側方側ローラ3,5の筒体71が円筒形であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば直方体状の箱体等によって構成されていてもよい。
【0051】
上記実施形態では、偏心部材74が支軸17に対して偏心するように取り付けられたものを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、支軸17に対して偏心していないものであってもよい。
【0052】
上記実施形態において採用されているモータ11は、支軸17に対して装着された固定子20の周りを回転子21が回動する、いわゆるアウターロータ型のモータであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、固定子の中心部分に配された回転子が回転するモータを採用してもよい。
【実施例】
【0053】
続いて、上記した駆動装置1を採用して構成される払い出し装置および搬送装置の一実施例を図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、特に断りのない限り上下の位置関係については、図示するような通常の設置状態を基準とし、左右の位置関係については、搬送装置100の主搬送経路101を流れる被搬送物の流れ方向を基準とする。
【0054】
搬送装置100は、図6に示すように、主搬送経路101と、主搬送経路101によって搬送されてきた被搬送物を主搬送経路101の側方に払い出す払い出し経路102とに大別される。搬送装置100は、払い出し経路102よりも上流側から下流側に向けて被搬送物を搬送でき、必要に応じて主搬送経路101上を流れる被搬送物を払い出し経路102に払い出すことができる。
【0055】
主搬送経路101は、モータ内蔵ローラ110やフリーローラ111を平行に配された二本のサイドフレーム112,112間に所定の間隔毎に設置して構成される。モータ内蔵ローラ110は、図7に示すように金属製の筒体113の内部にモータ115と減速機116とを内蔵したものである。筒体113は、両端の開口部分が閉塞部材117,118により閉塞されている。筒体113の両端からは、固定軸120,121が突出している。筒体113は、閉塞部材117,118の内側に装着された軸受122,123を介して固定軸120,121に対して相対回転自在に支持されている。
【0056】
モータ115および減速機116は、図7に示すようにユニット化され、駆動ユニット124として筒体113の内部に収容されている。モータ115は、内筒部材125内に電磁石からなる複数の固定子126と、磁極を有する回転子127と、位置検出子(図示せず)とを内蔵したブラシレスモータである。固定子126は、鉄心に導線が巻き付けられたコイルであり、内筒部材125に対して一体的に取り付けられている。一方、回転子127は、内筒部材125の内部に収納されており、軸心が内筒部材125の軸心と一致している。回転子127は、軸受130を介して固定軸121に対して回転自在に支持されている。また、回転子127の他端側は、軸受131を介して減速機116に接続されている。位置検出子は、ホール素子とパワースイッチング回路の全部あるいは一部を一体化したホールIC等によって構成され、回転子127の磁極位置を検出するものである。
【0057】
減速機116は、3連の遊星歯車列によって構成されるものであり、モータ115の回転子127の回転速度を所定の減速比で減速して出力軸132に出力するものである。なお、本実施例においては、減速機116は、上記したような構成を有するものであったが、これに限定されず、モータ115の回転動力を減速できる機構を有するものであればいかなるものであってもよい。
【0058】
減速機116の出力軸132は、連結部材133を介して閉塞部材117に連結されている。よって、モータ115のトルクは、減速機116において減速され、連結部材133を介して閉塞部材117に伝播される。閉塞部材117は、筒体113と一体化されているため、筒体113は、閉塞部材117に伝播されたトルクを受けて固定軸120,121を中心として回動する。
【0059】
フリーローラ111は、上記したモータ内蔵ローラ110からモータ115および減速機116からなる駆動ユニット124を取り除いた構成とされている。すなわち、フリーローラ111は、中空の筒体113の両端の開口部を軸受122,123を介して固定軸120,121を装着した閉塞部材117,118で閉塞した動力源を内蔵していないローラであり、固定軸120,121に対して筒体113が自由に回動可能なものである。
【0060】
主搬送経路101は、図6に示すようにモータ内蔵ローラ110と1又は複数のフリーローラ111に渡ってベルト135を架け、ベルト135を介してモータ内蔵ローラ110の回転力をフリーローラ111側に伝播する構成とされている。主搬送経路101の搬送経路の中途には、主搬送経路101上を流れる被搬送物を隣接する払い出し経路102に払い出すための分岐部141が設けられている。
【0061】
図6に示すように、主搬送経路101を構成するサイドフレーム112,112は、被搬送物の搬送方向の中途において払い出し経路102によって分断されている。払い出し経路102は、主搬送経路101のサイドフレーム112,112に対して略直交する方向に延伸するフレーム140に対して上記実施形態に示した駆動装置1を備えた払い出し装置160を組み付けたものである。払い出し経路102は、主搬送経路101との交差部分に形成される分岐部141と、主搬送経路101を流れる被搬送物の流れ方向に対して右方側に物品を払い出す右方払出部142と、左方側に物品を払い出す左方払出部143とに大別される。
【0062】
フレーム140は、図10に示すようにサイドフレーム145(以下、必要に応じてサイドフレーム145a,145bと称す)を所定の間隔で配して構成され、サイドフレーム145の長手方向中央部に形成される中央部146と、この左右に形成される右方部147、左方部148とに大別される。フレーム140には、中央部146、右方部147および左方部148に相当する位置に被搬送物の有無を検知する在荷センサ149a〜149cが設置されている。
【0063】
中央部146は、モータ内蔵ローラ110やフリーローラ111がサイドフレーム145の延伸方向に略平行となるように装着され、分岐部141を構成する部位である。中央部146と右方部147あるいは左方部148との境界部分には、モータ内蔵ローラ110やフリーローラ111を装着するためのローラ固定具150が取り付けられている。
【0064】
ローラ固定具150は、金属製の部材であり、図10に示すようにサイドフレーム145a,145b間を横切る固定部150aと、ローラ固定具150をサイドフレーム145a,145bに対して固定するための固定しろ150bとを有する。固定部150aは、矩形状の切り欠き150c,150cが幅方向に2箇所設けられ、切り欠き150c,150cに隣接する位置に軸固定部150d,150e,150fが設けられた構成とされている。サイドフレーム145a,145bに対してローラ固定具150を固定すると、図10のように軸固定部150dは、サイドフレーム145a,145b間の略中央に相当する位置に存在し、軸固定部150e,150fは、サイドフレーム145a,145bに隣接する位置に存在する。軸固定部150dには、ローラ固定具150の幅方向に所定の間隔を開けて2つの軸挿通孔150gが設けられている。また、軸固定部150e,150fには、それぞれ軸挿通孔150gが一つずつ設けられている。軸挿通孔150gは、モータ内蔵ローラ110やフリーローラ111の固定軸120,121が差し込まれる孔である。
【0065】
図6や図8に示すように、ローラ固定具150,150は、サイドフレーム145aおよびサイドフレーム145bに対して所定の間隔を開けて装着される。このローラ固定具150,150の軸固定部150e,150e間および軸固定部150f,150fには、それぞれフリーローラ111が1本ずつ取り付けられる。また、サイドフレーム145a,145b間の略中央部に位置する軸固定部150d,150d間には、モータ内蔵ローラ110とフリーローラ111とが取り付けられる。フレーム140の分岐部141に取り付けられているモータ内蔵ローラ110およびフリーローラ111は、いずれも筒体113の延伸方向がサイドフレーム145および主搬送経路101に装着されているモータ内蔵ローラ110およびフリーローラ111と略平行である。そのため、分岐部141は、分岐部141よりも上流側の主搬送経路101を流れる被搬送物を下流側の主搬送経路101に受け渡す中継路として機能することができる。
【0066】
右方部147および左方部148には、ローラ固定具150,150に対して隣接する位置に支持台152,153が取り付けられている。支持台152,153は、上記した駆動装置1を下方から支持するものであり、固定面152aと、これに対して略垂直な座面152bと、座面152bに対して略垂直に突出した支持片152cとから構成されている。支持台152は、サイドフレーム145の側面に固定面152aを固定することにより支持片152cが上方に向くように片持ち状に支持されている。支持片152cは、直方体状で座面152bから上方に向けて突出した部位である。支持片152cは、駆動装置1の開口88に嵌る程度の大きさとされている。
【0067】
支持台153は、上記した支持台152と同様に固定面153aと、座面153bと、支持片153cとから構成される部材である。支持台153は、固定面153aおよび支持片153cの大きさや形状が上記した支持台152の固定面152aおよび支持片152cと同一であり、座面153bの長さが座面152bよりも長く、固定面153a側から支持片153c側に至る距離が、固定面152a側から支持片152c側に至る距離よりも長い点のみが異なる。支持台153は、支持台152が取り付けられているサイドフレーム145に対向する他方側のサイドフレーム145に取り付けられており、支持台152,153が互いに対向する位置関係にある。
【0068】
支持台152,153は、それぞれ右方部147および左方部148に一つずつ設けられている。支持台152,153は、互いに対向するようにサイドフレーム145,145に対して接合されている。さらに具体的には、右方部147では、サイドフレーム145a側に支持台152が固定されており、サイドフレーム145b側に支持台153が固定されている。また、左方部148では、サイドフレーム145a側に支持台153が固定されており、サイドフレーム145b側に支持台152が固定されている。そのため、右方部147側に固定されている支持台152,153の支持片152c,153cは、左方部148側に固定されている支持台152,153の支持片152c,153cよりもサイドフレーム145b側に偏在している。
【0069】
フレーム140は、サイドフレーム145,145間に渡って取り付けられた補強板154によって補強されている。また、サイドフレーム145,145の長手方向両端部であって、サイドフレーム145,145の天面側には断面形状が略「L」字形の停止板155が固定されている。停止板155は、分岐部141から右方払出部142あるいは左方払出部143に払い出される被搬送物の逸走を防止するために設けられたものである。また、サイドフレーム145,145の両端部分の側面には、後述する払い出し装置160の軸体168を装着するための軸挿通孔156が設けられている。
【0070】
図6や図8に示すように、フレーム140には2基の払い出し装置160が組み込まれている。すなわち、フレーム140には、被搬送物を払い出し経路102のうち右方払出部142側に払い出すための払い出し装置160(以下、必要に応じて払い出し装置160Rと称す)と、左方払出部143側に払い出すための払い出し装置(以下、必要に応じて払い出し装置160Lと称す)が設けられている。払い出し装置160R,160Lは、それぞれ右方払出部142および左方払出部143のいずれか一方側から分岐部141に跨るように設置されている。
【0071】
払い出し装置160は、上記した駆動装置1を動力源として動作するものである。払い出し装置160は、駆動装置1の本体側ローラ2を後述する払い出しコンベア165(搬送手段)の動力源とすると共に、側方側ローラ3,5に収容されている偏心部材74,74を払い出しコンベア165を昇降するための昇降手段として採用したものである。
【0072】
払い出し装置160は、図11に示すように2本の支持腕161(以下、必要に応じて支持腕161a,161bと称す)を対向配置し、支持腕161a,161bの一端側に駆動装置1を装着した構成とされている。支持腕161は、図11に示すように長尺状の腕部162に対して複数(本実施例では6つ)のプーリ163と、駆動装置1とを装着した構成とされている。腕部162は、平板状の腕板162aと、これに対して垂直上方に立ち上がる6つのプーリ支持片162bと、ローラ支持片162cとを有する。腕部162の末端側に存在するプーリ支持片162bには、スリーブ166によってプーリ163が回動自在に装着されている。支持腕161a,161bは、腕板162aの末端部分に設けられたプーリ163を支持しているスリーブ166に挿通された軸体168に対して回動自在に支持されている。また、他の5つのプーリ支持片162bは、ピン167によってプーリ163が回動自在に装着されている。プーリ支持片162bに装着された6つのプーリ163は、腕板162aの延伸方向に一列に並んだ状態とされている。
【0073】
ローラ支持片162cは、駆動装置1の支軸17を挿通可能な軸挿通孔162dを有する。ローラ支持片162cは、上記した駆動装置1の閉塞部材72に取って代わって取り付けられ、筒体71の端部を閉塞するものである。駆動装置1は、図15(a)や図16(a)のようにローラ支持片162cの軸挿通孔162dに支軸17を挿通することにより、支持腕161a,161aに対して相対回転不能に支持されている。また、この状態において、駆動装置1は、腕板162aの下方から観察した状態で側方側ローラ3,5の開口88が腕板162aに隠れず露出しており、本体側ローラ2のベルト懸架部材65あるいはベルト懸架部材66がプーリ支持片162bに支持された他のプーリ163に対して一列に並んでいる。腕板162aに沿って並んだ6つのプーリ163とベルト懸架部材65あるいはベルト懸架部材66には、図11に二点鎖線で示すようにベルト170が懸架されており、払い出しコンベア165(搬送手段)が形成されている。
【0074】
払い出し装置160は、図6や図8、図9に示すようにフレーム140の右方部147および左方部148の双方に組み付けられている。払い出し装置160は、軸体168がフレーム140の右方部147あるいは左方部148の一方側のサイドフレーム145a,145bに形成された軸挿通孔156,156に差し込まれ、他方側に固定されている支持台152,153上に駆動装置1が設置された状態でフレーム140に組み付けられている。そのため、払い出し装置160R,Lは、図6のように支持腕161およびベルト170がフレーム140の右方部147あるいは左方部148の一方側から中央部146を横断しており、払い出し装置160Rの駆動装置1(1R)が左方部148側に存在し、払い出し装置160Lの駆動装置1(1L)が右方部147側に存在した状態とされている。
【0075】
駆動装置1は、図6等に示すように支持台152側に側方側ローラ5が向き、支持台153側に側方側ローラ3が向く姿勢で取り付けられている。駆動装置1は、図12に示すように、側方側ローラ3,5の開口88,88に支持台152,153の支持片152c,153cが嵌め込まれた状態とされている。また、この状態において、払い出し装置160の支持腕161a,161bは、図6のようにそれぞれローラ固定具150,150の軸固定部150d,150e間および軸固定部150d,150f間に形成された切り欠き部150c,150cに収まり、分岐部141を横断している。
【0076】
搬送装置100は、主搬送経路101の動力源として機能するモータ内蔵ローラ110および払い出し装置160の動力源として機能する駆動装置1の動作を制御する制御装置(図示せず)を有する。
【0077】
続いて、本実施例の搬送装置100の動作について図面を参照しながら詳細に説明する。主搬送経路101上に被搬送物が搭載されると、図示しない制御装置による制御に基づいてモータ内蔵ローラ110に電力が供給される。モータ内蔵ローラ110に電力が供給されると、モータ内蔵ローラ110が回転を開始する。これに連動して、モータ内蔵ローラ110の動力がベルト135を介してフリーローラ111に伝播され、フリーローラ111も回転を開始する。これにより、主搬送経路101上に搭載された被搬送物が図6に矢印で示すように下流側に向けて搬送される。
【0078】
主搬送経路101上を流れてきた被搬送物が分岐部141に差し掛かる前に、図示しない制御装置は、被搬送物を分岐部141よりも下流側に搬送すべきか、払い出し経路102を動作させて右方払出部142あるいは左方払出部143に払い出すべきかを確認する。ここで、被搬送物を分岐部141よりも下流側に搬送する場合、制御手段は、分岐部141およびこれよりも下流側の主搬送経路101に設置されたモータ内蔵ローラ110を順次動作させ、被搬送物を分岐部141に引き込み、さらに下流側の主搬送経路101へと送り出す。
【0079】
一方、制御装置が主搬送経路101を流れてきた被搬送物を右方払出部142あるいは左方払出部143に払い出すべきであると判断した場合、制御手段は、分岐部141に設けられたモータ内蔵ローラ110を動作させて被搬送物を分岐部141に引き込んだ後、フレーム140に対して組み付けられた払い出し装置160R,160Lのいずれかを動作させる。
【0080】
さらに具体的に説明すると、例えば主搬送経路101によって搬送されてきた被搬送物を右方払出部142に払い出す場合、制御装置は、分岐部141に設置された在荷センサ149aによって分岐部141に被搬送物が到来したことが検知されると、分岐部141に設置されたモータ内蔵ローラ110への通電を停止し、被搬送物を分岐部141に停止させる。その後、制御手段は、払い出し装置160Rを構成する駆動装置1(以下、必要に応じて駆動装置1Rと称す)に対して電力を供給する。
【0081】
ここで、払い出し装置160Rが待機中である間は、駆動装置1Rの側方側ローラ3,5内に収容されている偏心部材74は、頂部74aが筒体71の上方側に存在しており、開口88の内側に支持台152,153の支持片152c,153cが嵌り込んだ状態となっている。そのため、払い出し装置160Rが待機中である場合は、側方側ローラ3,5内において偏心部材74が回動可能な状態にある。
【0082】
一方、分岐部141上に被搬送物が到来すると、被搬送物の重量が払い出し装置160Rの支持腕161を介して駆動装置1Rの本体側ローラ2に作用し、本体側ローラ2の回転が阻害された状態となる。そのため、被搬送物が分岐部141上に存在する状態で駆動装置1Rに対して通電がなされると、本体側ローラ2内に内蔵されている本体側遊星歯車機構12,13がプラネタリ型となる。これにより、本体側ローラ2内に収容されているモータ11の動力が回転軸27および側方側遊星歯車機構70の遊星歯車77を介して偏心部材74に伝達され、偏心部材74が支軸17に対して偏心回動し始める。
【0083】
偏心部材74が偏心回動すると、頂部74aが開口88側に徐々に近づき、偏心部82が支軸17よりも下方側に偏心してくる。これに伴い、開口88を介して筒体71内に挿入されている支持台152,153の支持片152c,153cが徐々に筒体71から抜け、駆動装置1Rが支持台152,153に対して上方に持ち上げられた状態となる。
【0084】
上記したようにして駆動装置1が持ち上がると、図16(b)に示すように、右方払出部142側に装着されている軸体168を支点として払い出し装置160Rが傾斜する。これにより、支持腕161,161に装着されているベルト170,170によって形成される払い出しコンベア165の搬送面が傾斜した状態で露出し、この搬送面上に分岐部141に存在している被搬送物がすくい上げられた状態となる。この状態において、払い出しコンベア165における被搬送物の流れ方向上流側、すなわち駆動装置1側から流れ方向下流側に向けて下降する下り勾配が形成される。
【0085】
偏心部材74の突き当て部90が閉塞部材73の下方側に設けられた突き当て部73aに突き当たるまで偏心回動すると、図16(a)のように駆動装置1がサイドフレーム145a,145bの天面よりも上方に突き出た状態となる。突き当て部73aに突き当て部90が突き当たった状態となると、側方側ローラ3,5内の偏心部材74は、これ以上回動できない。そのため、側方側ローラ3,5内に収容されている側方側遊星歯車機構70の遊星歯車77やこれに噛み合っている動力伝達部材50が回動不能な状態となり、本体側遊星歯車機構12,13側の遊星歯車40の腕が固定された状態となる。これにより、本体側遊星歯車機構12,13がスター型に切り替わり、モータ11のトルクが内歯歯車41を介して筒体10側に伝わる。従って、払い出し装置160は、図16(a)のように駆動装置1が上方に突き出た状態になると本体側ローラ2が回転を開始する。
【0086】
本体側ローラ2が回転を開始すると、これに懸架されているベルト170,170が動作し始める。これにより、分岐部141に存在する被搬送物が右方払出部142側に払い出される。
【0087】
被搬送物が右方払出部142側に到達し、右方払出部142に設置された在荷センサ149bが被搬送物を検知すると、制御手段はモータ11への通電を停止し、物品の搬送を停止する。その後、制御手段は、払い出し装置160Rを元の姿勢に戻すべくモータ11を逆回転させる。
【0088】
図16のように駆動装置1が上方に突き出た状態において、偏心部材74は、突き当て部73aが邪魔になって正方向に回転できないが、逆方向には自由に回転できる。従って、モータ11が逆回転を開始すると、モータ11のトルクが本体側遊星歯車機構12,13の遊星歯車40や動力伝達部材50、側方側遊星歯車機構70の遊星歯車77を介して偏心部材74に伝達され、偏心部材74が逆方向に回転する。これにより、頂部74aが開口88から徐々に遠ざかり、偏心部82が支軸17よりも上方側に偏心する。これに伴い、支持台152,153の支持片152c,153cが開口88を介して筒体71の内部に進入し、駆動装置1Rが下降し始める。
【0089】
駆動装置1の制御装置は、モータ11が逆回転を開始した直後から位置検出子23から発信されるパルス信号をカウントする。位置検出子23から発信されたパルス信号の総数が所定のパルス数に達し、偏心部材74およびこの外周に装着された軸受84が開口88から最も離れた位置に来ると、払い出し装置160Rは、図15に示すように水平な状態となる。この時、ベルト170,170により構成される搬送面が、分岐部141や主搬送経路101に設けられたモータ内蔵ローラ110やフリーローラ111によって構成される搬送面よりも下方に沈んだ状態となる。これにより、一連の被搬送物の払い出し動作が完了する。
【0090】
上記したように、払い出し装置160Lは、払い出し装置160Rと同一の構成を有する。そのため、搬送装置100は、払い出し装置160Lを上記した払い出し装置160Rと同様に動作させることにより被搬送物を左方払出部143側に払い出すことができる。
【0091】
本実施例の搬送装置100において採用されている払い出し装置160は、駆動装置1を採用したものであるため、装置構成がコンパクトである。また、払い出し装置160は、ベルト170,170によって構成される搬送面を昇降させる昇降動作の動力源として駆動装置1を採用しているため、昇降動作がスムーズに行われる。
【0092】
また、上記したように、駆動装置1は、偏心部材74の突き当て部90が閉塞部材73の下方側に設けられた突き当て部73aに突き当たった状態において本体側ローラ2内の本体側遊星歯車機構12,13がスター型に切り替わり、モータ11の動力が側方側ローラ3,5側に伝わらず、本体側ローラ2の回動に使用される。そのため、払い出し装置160は、駆動装置1が上昇位置にある状態で右方払出部142あるいは左方払出部143に被搬送物が払い出されるまで本体側ローラ2の回転を継続することができる。
【0093】
上記実施例では、偏心部材74を支軸17に対して偏心回転させることにより駆動装置1を支持台152,153に対して昇降させる構成を例示したが、搬送装置100はこの構造に限定されるものではない。さらに具体的には、昇降装置160は、例えば駆動装置1の偏心部材74に代わって支軸17に対して軸心が一致した回動部材を設け、この回動部材を介して動力を側方側ローラ3,5の外部に取り出して払い出し装置160を昇降させる構成としてもよい。
【0094】
また、上記した払い出し装置160は、支持腕161の一端側のみにモータ内蔵ローラ101を設け、モータ内蔵ローラ101を昇降させて右方払出部42あるいは左方払出部43側に向けて傾斜した搬送面を形成するものであるため、被搬送物を持ち上げたり、右方払出部42側や左方払出部43側に被搬送物を払い出すのに要するエネルギーが小さい。
【0095】
また、上記実施例において、払い出し装置160は、支持腕161の一端側のみに駆動装置1を設け、駆動装置1を昇降させて右方払出部142あるいは左方払出部143側に向けて傾斜した搬送面を形成するものであったが、支持腕161の両端に駆動装置1を設け、搬送面を水平に保ったまま昇降させる構成としてもよい。
【0096】
上記したように、駆動装置1は、偏心部材74に作用する負荷に応じてモータ11の動力を伝達する動力伝達系統をスムーズに切り替え、所望の時間に渡って本体側ローラ2を動作させることができる。従って、本実施例の払い出し装置160は、主搬送経路1を流れる被搬送物を必要に応じて確実に払い出し経路2に払い出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施形態であるモータ内蔵ローラの第一の動作状態を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態であるモータ内蔵ローラの第二の動作状態を示す断面図である。
【図3】図1および図2に示すモータ内蔵ローラの機構図である。
【図4】図1および図2に示すモータ内蔵ローラの第二の動作状態における機構図である。
【図5】図1および図2に示すモータ内蔵ローラの第一の動作状態における機構図である。
【図6】本発明の一実施形態であるモータ内蔵ローラを採用した払い出し装置を備えた搬送装置を示す平面図である。
【図7】図6に示す搬送装置において採用されているモータ内蔵ローラを示す断面図である。
【図8】図6に示す搬送装置を示す要部拡大斜視図である。
【図9】(a)は図6に示す搬送装置を構成する払い出し経路を示す平面図であり、(b)は(a)のD−D断面図である。
【図10】図6に示す払い出し経路を構成するフレームの斜視図である。
【図11】図6に示す払い出し経路において採用されている払い出し装置を示す斜視図である。
【図12】図9(a)のB−B矢視図である。
【図13】図9(a)のA−A矢視図である。
【図14】図9(a)のC−C矢視図である。
【図15】(a)は図6に示す払い出し装置の第一の状態におけるモータ内蔵ローラの側方側ローラ近傍の構造を示す要部拡大図であり、(b)はこの時の払い出し装置の状態を模式的に示す概念図である。
【図16】(a)は図6に示す払い出し装置の第二の状態におけるモータ内蔵ローラの側方側ローラ近傍の構造を示す要部拡大図であり、(b)はこの時の払い出し装置の状態を模式的に示す概念図である。
【符号の説明】
【0098】
1 駆動装置(駆動源)
2 本体側ローラ(本体部)
3,5 側方側ローラ(側方部)
10 筒体(ローラ)
11 モータ
12,13 本体側遊星歯車機構(動力伝達機構)
27 回転軸
31 歯部(本体側太陽歯車)
40 遊星歯車(本体側遊星歯車)
41 内歯歯車(本体側内歯歯車)
50 動力伝達部材
60 歯部(側方側太陽歯車)
70 側方側遊星歯車機構(動力伝達機構)
74 偏心部材(回動部材・昇降手段)
77 遊星歯車(側方側遊星歯車)
78 内歯歯車(側方側内歯歯車)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支軸と、当該支軸に対して相対回転可能に支持された本体部と、支軸に対して相対回転不能に支持された側方部とを有し、
前記本体部は、ローラの内部にモータと、本体側遊星歯車機構と、動力伝達部材とを内蔵したものであり、
前記側方部は、内部に側方側遊星歯車機構と回動部材とを備えたものであり、
前記本体側遊星歯車機構は、本体側太陽歯車と、本体側遊星歯車と、本体側内歯歯車とを具備したものであり、
前記本体側内歯歯車は、本体部のローラの内部に配され、ローラに対して相対回転不能に装着されたものであり、
前記本体側太陽歯車は、モータにおいて発生するトルクを受けて支軸の軸心回りに回転するものであり、
前記本体側遊星歯車は、前記本体側太陽歯車および本体側内歯歯車に噛み合うものであり、
前記動力伝達部材は、支軸に沿う方向に延伸した接続軸により本体側遊星歯車に対して相対回転可能に接続されたものであり、
前記側方側遊星歯車機構は、側方側太陽歯車と、側方側遊星歯車と、側方側内歯歯車とを具備したものであり、
側方側太陽歯車は、動力伝達部材に接続され、動力伝達部材に連動して回転するものであり、
側方側内歯歯車は、側方部の内部に配され、側方部に対して相対回転不能に装着されたものであり、
側方側遊星歯車は、支軸に沿う方向に延伸した回転軸により回動部材に対して相対回転可能に接続されたものであることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
支軸と、当該支軸に対して相対回転可能に支持された本体部と、支軸に対して相対回転不能に支持された側方部とを有し、
前記本体部は、ローラの内部にモータと、本体側遊星歯車機構と、動力伝達部材とを内蔵したものであり、
前記側方部は、内部に側方側遊星歯車機構と回動部材とを内蔵したものであり、
前記側方側遊星歯車機構はプラネタリ型の遊星歯車機構を構成しており、
回動部材が支軸に対して軸心回りに回動可能である場合は、本体側遊星歯車機構がプラネタリ型の遊星歯車機構を構成し、モータのトルクが回動部材に伝達され、回動部材が支軸に対して回動するものであり、
当該回動部材が支軸に対して軸心回りに回動不可能である場合は、本体側遊星歯車機構がスター型の遊星歯車機構を構成し、モータのトルクが本体側内歯歯車に伝達され本体部が支軸の軸心回りに回転することを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
回動部材は、支軸に対して偏心回転可能に支持されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動装置。
【請求項4】
側方部は、本体部のローラの両端に隣接する位置に配されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項5】
回動部材が側方部材の内部に収容されており、側方部材が、回動部材に相当する位置に開口を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−44817(P2006−44817A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224412(P2004−224412)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(592026819)伊東電機株式会社 (71)
【Fターム(参考)】