説明

駆動装置

【課題】本発明は前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、軸が破損した場合にも伝達機能を維持し、装置全体の破損を防止する及び破損部品の交換を待たずに装置を稼働することができる駆動装置を提供することを課題とする。
【解決手段】軸2を有する一対のフレーム3,5と、軸2周りに回転可能に嵌合支持されたギヤ6と、を備えた駆動装置1において、一方のフレーム3に、他方のフレーム5に向かって延びる軸2と同心の係合部7が形成され、ギヤ6に、軸2が破損した状態でフレーム3の係合部7と嵌合する被係合部10が形成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置等において使用される、ギヤ及び一対のフレームを用いた駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、軸及び歯車を備えた駆動装置において、軸の破損により歯車が急激に停止する際に発生する過大な負荷トルクが装置全体の破損に繋がるという問題があった。又、破損部品の交換までは装置を稼働することができないという問題があった。
【0003】
これらを防ぐ手段として例えば特許文献1及び2には、歯車に形成されたモータからの駆動軸との係合部に過トルクが掛かると、この係合部が変形し軸の破損を防ぐ駆動装置が記載されている。又、特許文献3には、同一の歯車を2つ設けることで一方の歯車の歯部が破損してから他方の歯車に交換することにより稼働できる駆動装置が記載されている。
【0004】
しかし、特許文献1及び2に記載の駆動装置では、仮に軸が破損した場合には、伝達機能が急激に失われ、過大な負荷トルクにより装置全体が破損するという問題があった。特許文献3に記載の駆動装置では、破損した歯車から他方の歯車に交換するまでは装置を稼働することができないという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平7−243511号公報
【特許文献2】特開平9−325641号公報
【特許文献3】特開平8−194348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、軸が破損した場合にも伝達機能を維持し、装置全体の破損を防止する及び破損部品の交換を待たずに装置を稼働することができる駆動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、本発明に係る駆動装置は、軸を有する一対のフレームと、前記軸周りに回転可能に嵌合支持されたギヤと、を備えた駆動装置において、一方の前記フレームに、他方の前記フレームに向かって延びる前記軸と同心の係合部が形成され、前記ギヤに、前記軸が破損した状態で前記フレームの係合部と嵌合する被係合部が形成されたものである。
【0008】
他の手段として、軸を有するギヤと、前記軸を嵌合支持する一対のフレームと、を備えた駆動装置において、前記ギヤに、一方の前記フレームに向かって延びる前記軸と同心の係合部が形成され、前記フレームに、前記軸が破損した状態で前記ギヤの係合部と嵌合する被係合部が形成されたことが好ましい。
【0009】
仮に軸が破損した場合でも、係合部と被係合部とが嵌合することで、ギヤは回転を続けることができる。この点で、軸の破損によってギヤが急激に停止する際に発生する過大な負荷トルクによる装置全体の破損を防止し又、破損部品の交換を待たずに装置を稼働することができる。
【0010】
具体的な1つの手段として、前記係合部が、前記軸よりも半径方向外方の同心円上に形成された2つ以上のリブからなることが好ましい。ただし、被係合部との間でギヤを回転軸周りに回転保持し、強度が確保できる限り、リブの形状及び数は特に限定されない。例えば、リブは円筒形であってもよく、3つ又は4つのリブから構成されてもよい。
【0011】
他の具体的な1つの手段として、前記係合部が、前記ギヤの回転中心に形成された1つの円形突起部からなることが好ましい。ただし、被係合部との間でギヤを回転軸周りに回転保持し、強度が確保できる限り、円形突起部の寸法は特に限定されない。
【0012】
又、前記被係合部が、前記係合部の半径方向外面と嵌合することが好ましい。
【0013】
更に、前記被係合部が、前記係合部の半径方向内面と嵌合することが好ましい。
【0014】
ただし、被係合部が係合部と嵌合し強度が確保される限り、被係合部の形状や寸法は特に限定されない。
【発明の効果】
【0015】
本発明の駆動装置によれば、軸が破損した場合にもギヤを回転保持し伝達機能を維持することで、軸の破損により歯車が急激に停止する際に発生する過大な負荷トルクが装置全体を破損することを防止し、破損部品の交換を待たずに装置を稼働することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0017】
図1に、本発明の1つの実施形態に係る駆動装置1aを示す。駆動装置1aは、回転軸2aを有する第1フレーム3aと、回転軸2aを嵌合支持する支持孔4が形成された第2フレーム5aと、回転軸2a周りに回転可能に嵌合されたギヤ6aとを備える。
【0018】
第1フレーム3aには、回転軸2aと同心円上に2つのリブ(係合部)7aが、回転軸2aに関して対向するように形成されている。リブ7aは、第1フレーム3aから第2フレーム5aに向かって水平に延び、回転軸2aに直交する断面は扇形である。回転軸2aとリブ7aは、図2(a)に示すように樹脂成形により第1フレーム3aと一体に形成されている。
【0019】
ギヤ6aは、中心に第1フレーム3aの回転軸2aと嵌合する中心孔8を有する筒状部9と、第1フレーム3aと対向する面に筒状部9から半径方向外方に形成された環状突起(被係合部)10aと、ギヤ6aの周縁端部に形成された歯部12とを備える。環状突起10aは、前記第1フレーム3aのリブ7aの外接円よりも大きな内径を有し、リブ7aとの間に約0.1mmから0.3mmの間隔が形成されるように、第1フレーム3aに向かって延びている。ギヤ6aは、金属、樹脂又は筒状部9のみを金属とした複合材料で形成されてもよい。ギヤ6aには動力を受ける図示しない駆動ギヤ又は動力を伝達する中間ギヤ等が噛み合っている。
【0020】
第2フレーム5aは、金属又は樹脂製であってもよい。第2フレーム5aは、第1フレーム3aにねじ等の適宜の固着手段により取り付けられ、第1フレーム3aと一定間隔が設けられている。
【0021】
次に、図2を参照して本発明に係るギヤ6aの回転動作について説明する。
【0022】
ギヤ6aの筒状部9の中心孔8が第1フレーム3aの回転軸2aと嵌合することで、ギヤ6aは図示しない駆動ギヤから動力を受けて回転軸2a周りに回転し、図示しない中間ギヤに動力を伝達する。このとき環状突起10aが、リブ7aの半径方向外側に間隔を隔てて位置しているため、リブ7aと環状突起10aとは嵌合しない(図2(a))。
【0023】
過負荷又は耐久寿命により回転軸2aが破損した場合にはギヤ6aが傾き、リブ7aと、リブ7aと間隔を隔てて配置された環状突起10aとが嵌合するため、ギヤ6aは略回転軸2a周りに回転保持される(図2(b))。従って、回転軸2aの破損によってギヤ6aと他のギヤとの噛み合いが外れ、装置1aの機能停止、部品の破損を防止し又、破損部品の交換を待たずに装置1aを稼働することができる。ただし、環状突起10aとリブ7aとが常時は嵌合せず、回転軸2aが破損した場合に嵌合しギヤ6aが略回転軸2a周りに回転保持される限り、環状突起10aとリブ7aとの間の間隔は特に限定されない。又、リブ7aは、環状突起10aとの嵌合時の負荷を軽減するために回転軸2aから半径方向外方に離れた位置に形成されることが好ましい。
【0024】
以下に、本発明の他の実施形態である駆動装置1bから1dを示すが、図2の第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0025】
図3の駆動装置1bでは、第1フレーム3aのリブ7aの半径方向内側に、リブ7aと約0.1mmから0.3mmの間隔を隔てて配置され第1フレーム3aに向かう環状突起10aがギヤ6aに形成されている。この第2実施形態において、回転軸2aが破損した場合には、第1実施形態と同様に、リブ7aと環状突起10aが嵌合し、ギヤ6aを回転保持することができる。
【0026】
図4の本発明の第3実施形態である駆動装置1cは、第1フレーム3aのリブ7aとギヤ6aの環状突起10aとが嵌合することで、ギヤ6aが回転軸2a周りに回転する。一方、回転軸(係合部)2aと筒状部(被係合部)9とが間隔を隔てて配置されているため、回転軸2aと筒状部9とは嵌合しない。リブ7aが破損した場合にはギヤ6aが傾き、回転軸2aと筒状部9とが嵌合するため、ギヤ6aは略回転軸2a周りに回転保持される。
【0027】
図5の本発明の第4実施形態の駆動装置1dは、回転軸2bを有するギヤ6bと、回転軸2bを嵌合支持する第1支持孔14が形成された第1フレーム3bと、第1フレーム3bと対向する側で回転軸2bを嵌合支持する第2支持孔15が形成された第2フレーム5bと、を備える。
【0028】
ギヤ6bには、回転軸2bと同心円上に2つのリブ7b(係合部)が、回転軸2bに関して対向するように形成されている。リブ7bは、第1フレーム3bに向かって水平に延び、回転軸2bに直交する断面は扇形である。
【0029】
第1フレーム3bには、ギヤ6bと対向する面に第1支持孔14と同心円上であって半径方向外方に形成された環状突起(被係合部)10bが形成されている。環状突起10bは、円形でギヤ6bに向かって延びている。環状突起10bは、リブ7bと約0.1mmから0.3mmの間隔を隔ててリブ7bの半径方向外側に配置されている。従って、回転軸2bが破損した場合には、リブ7bと環状突起10bが嵌合し、ギヤ6bを回転保持する。
【0030】
以上の各実施形態では、第1フレーム3は扇形断面であるリブ7を2つ備えたが、回転軸2が折れた状態で環状突起10と嵌合しギヤ6を略回転軸2周りに回転保持する限り、リブ7の形状や数は特に限定されない。例えば図6に示すようにリブ7aは、円筒形であって、3つから構成されてもよい。リブ7を円筒形にすることで、環状突起10との摩擦面が小さくなり、摩擦による抵抗を減少することができる。又、3つのリブ7を備えることで強度が増し、ギヤ6との嵌合時に突発的な外力が作用した場合にもリブ7の損傷を軽減することができる。
【0031】
本発明の駆動装置1はあらゆる駆動系に適応できる。例えば画像形成装置では、軸が折れても画像形成に影響しない箇所である定着装置51の圧接離間駆動機構52での使用が特に効果的である。定着装置51の圧接離間駆動機構52に、本発明に係る駆動装置1を使用した例を図7に示す。
【0032】
定着装置51は、加圧ローラ51aと加熱カローラ51bからなっている。圧接離間駆動機構52は、モータ53と連結するウォームギヤ53aと、軸54a、54b、54c周りに回転しウォームギヤ53aの駆動力を伝達するギヤ56a、56b、56cとギヤ56a、56b、56cを嵌合支持する第1フレーム57及び第2フレーム(図示せず)を有する駆動装置59と、駆動装置59のギヤ56cと一体に形成されたギヤ56dと噛合するギヤ(図示せず)により回動する伝達軸60と、伝達軸60のギヤ60a、60bと噛み合って軸63a周りに回動する扇形ギヤ63と、扇形ギヤ63と連結された押圧装置61とを備える。押圧装置61は加圧ローラ51aの両端を回転可能に支持するフレーム61aと、このフレーム61aを矢印A方向に付勢するスプリング61bとからなっている。
【0033】
次に、圧接離間駆動機構52の動作を説明する。扇形ギヤ63がロッド63bを介してフレーム61aを押圧して、加圧ローラ51aが加熱ローラ51bから離間している状態から、駆動装置59の駆動により、ギヤ60a、60bが時計方向に回転すると、扇形ギヤ63は軸63a周りに反時計方向に回動し、扇形ギヤ63のロッド63bがフレーム61aを引き戻す。これにより、押圧装置61はスプリング61bの付勢力により加圧ローラ51aを矢印A方向に付勢し、加圧ローラ51aが加熱ローラ51bと圧接する。加圧ローラ51aと加熱ローラ51bとが圧接し、その間を記録媒体が通過することで、トナー画像が記録媒体に定着する。加圧ローラ51aを加熱ローラ51bから離間するには、駆動装置59を逆に駆動することにより、扇形ギヤ63を時計方向に回動する。
【0034】
ウォームギヤ53aから扇形ギヤ63に至る駆動装置59には、特にスプリング61bの付勢力に抗して扇形ギヤ63を回動させる時に高トルクが掛かるため、本発明に係る駆動装置59を使用することで、突発的な異常トルクが発生し軸54a、54b、54cのいずれかが破損した場合にも、ギヤ56の回転を維持することで装置全体の破損を防止し、破損部品の交換を待たずに定着装置51を稼働し、画像形成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(a)本発明の第1実施形態に係る駆動装置を第2フレーム側から示す斜視図(b)本発明の第1実施形態に係る駆動装置を第1フレーム側から示す斜視図。
【図2】(a)本発明の第1実施形態に係る駆動装置が正常に作動している状態を示す断面図(b)本発明の第1実施形態に係る駆動装置の回転軸が破損したまま作動している状態を示す断面図。
【図3】本発明の第2実施形態に係る駆動装置の断面図。
【図4】本発明の第3実施形態に係る駆動装置の断面図。
【図5】本発明の第4実施形態に係る駆動装置の断面図。
【図6】本発明の第5実施形態に係る駆動装置の第1フレームの斜視図。
【図7】本発明に係る駆動装置の使用例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0036】
1,1a,1b,1c,1d 駆動装置
2,2a,2b 回転軸
3,3a,3b 第1フレーム
5,5a,5b 第2フレーム
6,6a,6b ギヤ
7,7a,7b リブ
9 筒状部
10,10a,10b 環状突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸を有する一対のフレームと、前記軸周りに回転可能に嵌合支持されたギヤと、を備えた駆動装置において、
一方の前記フレームに、他方の前記フレームに向かって延びる前記軸と同心の係合部が形成され、
前記ギヤに、前記軸が破損した状態で前記フレームの係合部と嵌合する被係合部が形成されたことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
軸を有するギヤと、前記軸を嵌合支持する一対のフレームと、を備えた駆動装置において、
前記ギヤに、一方の前記フレームに向かって延びる前記軸と同心の係合部が形成され、
前記フレームに、前記軸が破損した状態で前記ギヤの係合部と嵌合する被係合部が形成されたことを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
前記係合部が、前記軸よりも半径方向外方の同心円上に形成された2つ以上のリブからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記係合部が、前記ギヤの回転中心に形成された1つの円形突起部からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記被係合部が、前記係合部の半径方向外面と嵌合することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項6】
前記被係合部が、前記係合部の半径方向内面と嵌合することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−97565(P2009−97565A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267797(P2007−267797)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】