説明

駐車場における非常時送電制御システム

【課題】災害発生時等の非常時に、駐車場に駐車された電気自動車の蓄電池から放電された電力を外部に送電することを可能とする、駐車場における非常時送電制御システムを提供すること。
【解決手段】駐車場に駐車されている自動車の蓄電池から放電された電力を、非常時に所定施設に送電するための、駐車場における非常時送電制御システム50であって、所定施設への送電が必要になる非常時が到来したか否かを判定し、非常時が到来したと判定された場合に、駐車場に駐車されている自動車の蓄電池から放電された電力を、所定施設に送電するための制御を行う充放電制御部55bを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害発生時等の非常時に、駐車場に駐車された電気自動車の蓄電池から放電された電力を外部に送電する、駐車場における非常時送電制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電気自動車の普及化に伴い、駐車場で充放電を行うための各種の技術が提案されている。例えば、特許文献1には、電気自動車用駐車場システムが開示されている。この電気自動車用駐車場システムは、電気自動車を駐車する駐車場及びPOS端末を備えて構成されており、駐車場には電気自動車に接続可能な接続端子と充電装置が設けられ、この接続端子を介して充電装置から電気自動車の蓄電池を充電することができると共に、POS端末を介して電気自動車のコンピュータに広告情報や交通情報を送信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−086058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、大規模地震の如き各種の災害が発生した時に、この災害に対応するための防災拠点施設を整備することが進んでいる。このような防災拠点施設に求められる機能の一つとして、電力送電機能がある。すなわち、防災拠点施設に大容量蓄電設備を設けておき、電力会社の送電網における送電能力が何らかの理由で低下した場合に、この大容量蓄電設備に蓄電されている電力を、電力会社の送電網に逆潮流させることで、防災拠点施設から外部に対して補助的に電力供給を行う機能が求められている。
【0005】
ここで、本願発明者は、駐車場に多数の電気自動車が駐車されている場合においては、これら各電気自動車の蓄電池に充電されている電力を活用することで、大容量蓄電設備と同等の送電能力を確保できる可能性に着目した。しかしながら、上記従来のシステムは、電気自動車の蓄電池に対する充電を行うことを目的として構成されており、蓄電池に充電された電力を放電させることができなかったため、電気自動車の蓄電池に充電されている電力を外部に送電することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、災害発生時等の非常時に、駐車場に駐車された電気自動車の蓄電池から放電された電力を外部に送電することを可能とする、駐車場における非常時送電制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の駐車場における非常時送電制御システムは、駐車場に駐車されている電気自動車の蓄電池から放電された電力を、非常時に所定施設に送電するための、駐車場における非常時送電制御システムであって、前記所定施設への送電が必要になる非常時が到来したか否かを判定する非常時判定手段と、前記非常時判定手段によって非常時が到来したと判定された場合に、前記駐車場に駐車されている前記電気自動車の蓄電池から放電された電力を、前記所定施設に送電するための制御を行う送電制御手段とを備える。
【0008】
また、請求項2に記載の駐車場における非常時送電制御システムは、請求項1に記載の駐車場における非常時送電制御システムにおいて、前記駐車場に駐車されている複数の前記電気自動車の蓄電池から放電された電力を前記所定施設に送電する際における、前記複数の電気自動車の各々の蓄電池から放電させる放電量を、所定方法で決定する非常時放電量決定手段を備える。
【0009】
また、請求項3に記載の駐車場における非常時送電制御システムは、請求項2に記載の駐車場における非常時送電制御システムにおいて、前記非常時放電量決定手段は、前記駐車場に駐車されている前記複数の電気自動車の各々の蓄電池から放電させる放電量を、各電気自動車の蓄電池の現在の放電量から、各電気自動車を用いて運転者が避難するために必要とする放電量を差し引いた放電量として決定する。
【0010】
また、請求項4に記載の駐車場における非常時送電制御システムは、請求項1から3のいずれか一項に記載の駐車場における非常時送電制御システムにおいて前記非常時判定手段によって非常時が到来したと判定された場合に、前記駐車場の外部に存在する前記電気自動車の運転者に対して、当該駐車場に駐車して放電を行うことを呼びかけるための案内を行う案内手段を備える。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の駐車場における非常時送電制御システムによれば、非常時が到来したと判定された場合に、駐車場に駐車されている電気自動車の蓄電池から放電された電力を、所定施設に送電するための制御が行われるので、駐車場に駐車された電気自動車の蓄電池に充電されている電力を活用するが可能となり、大容量蓄電設備と同等の送電能力を確保することが可能になりので、駐車場を防災拠点施設として活用することが可能になる。
【0012】
また、請求項2に記載の駐車場における非常時送電制御システムによれば、複数の電気自動車の各々の蓄電池から放電させる放電量が所定方法で決定されるので、各運転者の要望や事情に合致した放電量だけ放電を行うことができ、各運転者の利益を行うことなく、電気自動車の蓄電池に充電されている電力を活用することができる。
【0013】
また、請求項3に記載の駐車場における非常時送電制御システムによれば、複数の電気自動車の各々の蓄電池から放電させる放電量が、各電気自動車の蓄電池の現在の放電量から、各電気自動車を用いて運転者が避難するために必要とする放電量を差し引いた放電量として決定されるので、放電を行った場合であっても、各電気自動車を用いて運転者が避難することが可能になり、各運転者の利益を行うことなく、電気自動車の蓄電池に充電されている電力を活用することができる。
【0014】
また、請求項4に記載の駐車場における非常時送電制御システムによれば、非常時が到来したと判定された場合に、運転者に対して、当該駐車場に駐車して放電を行うことを呼びかけるための案内が行われるので、より多くの運転者に対して放電への協力を呼びかけることで、より多くの電力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1に係る駐車場及び併設建物の平面図である。
【図2】非常時放電制御システムを機能概念的に示すブロック図である。
【図3】運転者情報の構成例を示す図である。
【図4】自動車情報の構成例を示す図である。
【図5】非常時情報の構成例を示す図である。
【図6】進入制御処理のフローチャートである。
【図7】充放電制御処理のフローチャートである。
【図8】案内処理のフローチャートである。
【図9】非常時放電量決定処理のフローチャートである。
【図10】退出制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る駐車場における非常時送電制御システムの実施の形態を詳細に説明する。ただし、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。この実施の形態に係る駐車場における非常時送電制御システムは、駐車場に駐車されている自動車の蓄電池から放電された電力を、非常時に所定施設に送電するためのシステムである。
【0017】
ここで、駐車場の構造や規模は任意であり、例えば、構造的には、平面駐車場と立体駐車場を含み、規模的には、不特定多数の運転者の電気自動車が駐車可能な大規模駐車場と特定少数の運転者の電気自動車のみが駐車可能な専用駐車場を含む。以下では、駐車場が、不特定多数の運転者が利用する平面駐車場である場合について説明する。また、各実施の形態においては、駐車場に併設建物が併設されている場合について説明している。この併設建物の目的や規模は任意であり、例えば、ショッピングセンターや映画館の如き商業施設や、マンションの如き住宅施設を含む。以下では、併設建物が、ショッピングセンターである場合について説明する。ただし、併設建物に関する構成や処理は省略してもよい。
【0018】
また、電気自動車とは、蓄電池に蓄えた電力を用いて走行を行うことができる自動車を意味し、電力のみでモータ走行する電気自動車のみならず、電力によるモータ走行とガソリンによるエンジン走行とを切り替えて走行が可能なハイブリッド自動車を含む。また、以下では、電気自動車の蓄電池に充電を行った場合には、自動車の運転者に対して充電料金を請求し、電気自動車の蓄電池から放電を行った場合には、運転者に対して放電料金を支払うことを想定している。このような電気自動車の蓄電池に対する充電又は放電の具体的な構造は任意であり、例えば、コンセントプラグを用いたプラグイン式の充放電構造の他、電界や磁界を用いた非接触式の充放電構造であってもよい。以下では、電気自動車が、プラグイン式の充放電が可能な電気自動車である場合について説明するものとし、電気自動車を単に「自動車」と称する。
【0019】
また、各実施の形態で使用する用語を、以下のように定義する。
地震や火山噴火の如き自然災害や、事故や紛争の如き人災のために、電力会社等の電力供給者から、重要保安施設・商用施設・住宅等の電力消費者への、電力供給が停止している時(停電時)を「非常時」と称する。また、「非常時」には、このような電力供給の停止が実際に発生している場合のみならず、電力供給の停止が近い将来に発生することが予測されている場合(停電警戒警報発令時等)を含めてもよい。なお、非常時以外の場合を、非常時と区別するために「通常時」と称する。
非常時に電力を供給すべき所定施設は任意であるが、例えば、重要保安施設、商用施設、住宅、他の防災拠点施設、電力会社、あるいは駐車場の併設建物を含む。
通常時に駐車場で自動車の蓄電池に対する充電を行った際に運転者に請求する単価(単価の単位は、例えば円/1kwh。以下同じ)を「通常時自動車充電単価」、非常時に駐車場で自動車の蓄電池に対する充電を行った際に運転者に請求する単価(単価の単位は、例えば円/1kwh。以下同じ)を「非常時自動車充電単価」、通常時に駐車場で自動車の蓄電池から放電を行った際に運転者に支払う放電料金の単価を「通常時自動車放電単価」、非常時に駐車場で自動車の蓄電池から放電を行った際に運転者に支払う放電料金の単価を「非常時自動車放電単価」と称する。なお、特に区別する必要がない場合には、通常時自動車充電単価と非常時自動車充電単価を「充電単価」と総称し、通常時自動車放電単価と非常時自動車放電単価を「放電単価」と総称する。
【0020】
(構成)
最初に、本実施の形態に係る駐車場の構成について説明する。図1は、実施の形態1に係る駐車場及び併設建物の平面図である。駐車場1は、平面駐車場として構成されており、複数台の自動車を駐車させることが可能な複数の駐車スペース2、駐車スペース2の周囲において自動車が走行可能な車路3、駐車スペース2に自動車が進入する進入路4、及び駐車スペース2から自動車が退出する退出路5を備える。各駐車スペース2には、当該各駐車スペース2に駐車された自動車に対して充電又は放電を行うための充放電端末6が配置されている。進入路4と車路3の境界近傍には、自動車に駐車券を発券する発券機7と、自動車の進入を規制する進入ゲート8が設置されており、退出路5と車路3の境界近傍には、自動車の駐車料金を駐車券に基づいて精算する精算機9と、自動車の退出を規制する退出ゲート10が設置されている。
【0021】
また、駐車場1には、管理室11と電気室12が併設されている。このうち、管理室11には、非常時放電制御システム50が配置されている。この非常時放電制御システム50の詳細については後述する。また、電気室12には、蓄電設備13と電力監視装置14が配置されている。蓄電設備13は、図示しない大容量蓄電池と充放電コントローラとを備えるもので、電力会社の送電網から送電された電力と自動車から充放電端末6を介して放電された電力とを蓄電可能であり、また、電力会社に対して図示しない送電網を介して電力を逆潮流させることや、自動車に対して充放電端末6を介した充電を行うことが可能である。また、電力監視装置14は、駐車場1における充放電端末6からの情報や、駐車場1の各部に設けられた図示しない負荷や電力メータからの情報に基づいて、駐車場1における電力使用量の算定を行う。
【0022】
また、駐車場1には、併設建物15が隣接するように構築されている。この併設建物15は、ここでは上述したようにショッピングセンターであり、駐車場1と連通する出入口16を有しており、この出入口16を介して利用者が併設建物15と駐車場1に自由に出入りすることが可能となっている。
【0023】
また、併設建物15には、電気室17が併設されている。この電気室17には、蓄電設備18と電力監視装置19が配置されている。蓄電設備18は、図示しない大容量蓄電池と充放電コントローラとを備えるもので、電力会社の送電網から送電された電力と自動車から充放電装置を介して放電された電力とを蓄電可能であり、また、電力会社に対して送電網を介して電力を逆潮流させることや、自動車に対して充放電端末6を介した充電を行うことが可能である。また、電力監視装置19は、併設建物15の各部に設けられた図示しない負荷や電力メータからの情報に基づいて、併設建物15における電力使用量の算定を行う。
【0024】
なお、ここでは、駐車場1の蓄電設備13と併設建物15の蓄電設備18は、図示しない電力送電網を介して相互に電力交換が可能である。例えば、駐車場1の自動車から放電された電力を、駐車場1の蓄電設備13を介してあるいは直接的に、併設建物15の蓄電設備18に蓄電することが可能となっている。また、併設建物15の蓄電設備18に蓄電された電力を、駐車場1の蓄電設備13を介してあるいは直接的に、駐車場1の自動車の充電に使用することが可能となっている。もしくは、駐車場1の自動車から放電された電力を、蓄電設備13、18を介在させることなく併設建物15や電力会社の如き所定施設に直接送電してもよい。また、これら駐車場1の蓄電設備13と併設建物15の蓄電設備18、あるいはこれら設備に関連する周辺施設に関しては、通常時における耐候性や、地震時や水害時の如き非常時における耐久性を持たせることで、雨水、振動、火災等の熱、あるいは圧力に対する耐久性を持たせることが好ましい。例えば、これら各設備を、シェルター構造にて構成したり、基礎構造部分のレベルを周囲のグランドレベルよりも高いレベルにして浸水を防止したりすることができる。
【0025】
また、駐車場1の外周には、掲示板20、FM送信装置21、及びFMアンテナ22が配置されている。掲示板20は、駐車場1の混雑状況に関する情報に加えて、充電又は放電の条件に関する情報を文字によって掲示する出力手段である。FM送信装置21及びFMアンテナ22は、駐車場1の混雑状況に関する情報に加えて、充電又は放電の条件に関する情報をFM放送信号により出力する出力手段である。
【0026】
(構成−非常時放電制御システム)
次に、非常時放電制御システム50の構成について説明する。図2は、非常時放電制御システム50を機能概念的に示すブロック図である。この図2に示すように、非常時放電制御システム50は、駐車場1に駐車された自動車の蓄電池に対する充電又は放電のための制御を行う装置であり、入力部51、出力部52、ネットワークインタフェース(以下、ネットワークIFと略記する)53、記憶部54、及び制御部55を備えて構成されている。なお、実際には、この非常時放電制御システム50は、公知のパーソナルコンピュータやサーバを用いて構成することが可能である。
【0027】
入力部51は、非常時放電制御システム50が実行する各種処理に必要な情報を当該非常時放電制御システム50に入力する入力手段であり、ここでは、キーボード及びマウスとして構成されている。
【0028】
出力部52は、非常時放電制御システム50からの情報を外部に出力する出力手段であり、ここでは、モニタ及びスピーカとして構成されている。
【0029】
ネットワークIF53は、LAN(Local Area Network)を介して通信を行うためのインタフェースであり、例えば、所定の通信規格(例えば、イーサネット)にて通信を行うネットワークボードとして構成されている。このネットワークIF53は、駐車場1の発券機7、精算機9、充放電端末6、蓄電設備13の充放電コントローラ、電力監視装置14、掲示板20、及びFM送信装置21と、併設建物15の蓄電設備18の充放電コントローラ及び電力監視装置19とに接続されている。
【0030】
記憶部54は、非常時放電制御システム50の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記憶する記憶手段であり、例えば、外部記憶装置としてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されている。ただし、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、DVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体、あるいは、その他の任意の記録媒体を用いてもよい。
【0031】
この記憶部54には、駐車状況情報、通常時自動車充電単価、非常時自動車充電単価、通常時自動車放電単価、及び非常時自動車放電単価が記憶されていると共に、運転者情報データベース(以下、データベースをDBと表記する)54a、自動車情報DB54b、非常時情報DB54cが設けられている。ただし、記憶部54には、さらに他の情報が記憶されているが、この点については後述する。
【0032】
駐車状況情報は、駐車場1における自動車の駐車状況に関する情報であり、ここでは、駐車場1に駐車可能な自動車の総数(以下、駐車可能数)と、駐車場1に現在駐車されている自動車の総数(以下、現在駐車数)である。このうち、駐車可能数は、非常時放電制御システム50の管理者によって入力部51を介して予め入力されて記憶部54に記憶され、現在駐車数は、後述する進入制御処理や退出制御処理によって自動的に更新される。
【0033】
通常時自動車充電単価、非常時自動車充電単価、通常時自動車放電単価、及び非常時自動車放電単価は、電力会社から電力供給を受けた際に当該電力会社に支払う契約電気料金や、電力会社に逆潮流により電力供給した際に当該電力会社から支払われる契約電気料金等に基づいて、非常時放電制御システム50の管理者によって入力部51を介して予め入力されて記憶部54に記憶される。ここでは、電力は、通常時よりも非常時の方が価値が高いという前提の下、通常時自動車充電単価よりも非常時自動車充電単価が高く設定されていると共に、通常時自動車放電単価よりも非常時自動車放電単価が高く設定されているものとする。
【0034】
運転者情報DB54aは、運転者に関する情報(以下、運転者情報)を格納する運転者情報格納手段である。この運転者情報は、例えば、図3の構成例に示すように、項目「運転者ID」、項目「自動車種別」、項目「自宅住所」、項目「放電優先度」と、これら各項目に対応する情報とを、相互に関連付けて構成されている。項目「運転者ID」に対応する情報は、運転者を一意に識別するための運転者ID(運転者識別情報)であり、例えば「D0001」が格納されている。項目「自動車種別」に対応する情報は、自動車の種別を識別するための自動車種別識別情報であり、例えば自動車メーカー名、自動車名、年式を含んで構成されており、例えば「○×自動車−△△モデル−2005年型」が格納されている。項目「自宅住所」に対応する情報は、運転者の自宅の住所であり、例えば「東京都杉並区○○」が格納されている。項目「放電優先度」に対応する情報は、非常時において運転者の自動車の蓄電池から放電を行うべき優先度を特定するための情報であり、ここでは「高」と「低」のいずれかが格納されている(「高」は「低」よりも優先度が高いことを示している)。この運転者情報のうち、自動車種別、自宅住所、及び放電優先度は、運転者が駐車場1の会員登録等を行った際に、当該運転者によって申告され、駐車場1の運営者によって運転者情報DB54aに予め格納される。例えば、放電優先度は、運転者が、非常時に積極的に放電に協力することを表明した場合には、放電優先度として「高」が格納され、非常時に積極的に放電に協力しないことを表明した場合には、放電優先度として「低」が格納される。自動車IDは、運転者が駐車場1の会員登録等を行った際に、運営者によって所定方法で発行されて運転者情報DB54aに予め格納される。なお、個人情報保護等の観点から自宅住所を登録することに抵抗を感じる運転者がいることが想定されるので、運転者情報DB54aには、自宅住所が登録されていない可能性があるものとし、自宅住所が登録されていない状態を図3では「−−−」として示す。
【0035】
自動車情報DB54bは、自動車に関する情報(以下、自動車情報)を格納する自動車情報格納手段である。この自動車情報は、例えば、図4の構成例に示すように、項目「自動車種別」、項目「燃費」と、これら各項目に対応する情報とを、相互に関連付けて構成されている。項目「自動車種別」に対応する情報は、図3の運転者情報における同一項目名に対応する情報と同じである。項目「燃費」に対応する情報は、自動車の燃費(ここでは、蓄電池充電量1Kwhあたりの走行距離Km)であり、例えば「7」が格納されている。この自動車情報は、駐車場の運営者によって自動車情報DB54bに予め格納される。
【0036】
非常時情報DB54cは、非常時に関する情報(以下、非常時情報)を格納する非常時情報格納手段である。この非常時情報は、例えば、図5の構成例に示すように、項目「非常時レベル」、項目「放電優先度」、項目「放電後走行可能距離」と、これら各項目に対応する情報とを、相互に関連付けて構成されている。項目「非常時レベル」に対応する情報は、非常時のレベルを特定するための非常時レベル特定情報であり、ここでは、非常時における駐車場からの送電の必要性に応じて、「低」「中」「高」の3つのレベルのいずれかが格納されている(「中」は「低」よりも非常時レベルが高く、「高」は「中」よりも非常時レベルが高いことを示している)。この非常時情報は、駐車場の運営者によって非常時情報DB54cに予め格納される。
【0037】
図2の制御部55は、非常時放電制御システム50に関する計算処理を行う処理手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及び充放電制御プログラムを含む各種のプログラムや各種のデータを格納するための内部記憶素子を備えて構成されるコンピュータである。プログラムは、磁気的記録媒体や光学的記録媒体を含む任意のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、記憶部54にインストールされることで、制御部55の各部を実質的に構成する。
【0038】
この制御部55は、機能概念的に、進入制御部55a、充放電制御部55b、案内部55c、非常時放電量決定部55d、及び退出制御部55eを備えて構成されている。進入制御部55aは、駐車場1への自動車の進入に関する制御を行う進入制御手段である。充放電制御部55bは、駐車場1に駐車している自動車の蓄電池に対する充電又は放電を制御する充放電制御手段である。また、充放電制御部55bは、所定施設への送電が必要になる非常時が到来したか否かを判定する非常時判定手段と、非常時判定手段によって非常時が到来したと判定された場合に、駐車場1に駐車されている自動車の蓄電池から放電された電力を、所定施設に送電するための制御を行う送電制御手段を兼ねる。案内部55cは、非常時判定手段によって非常時が到来したと判定された場合に、駐車場1の外部に存在する自動車の運転者に対して、当該駐車場1に駐車して放電を行うことを呼びかけるための案内を行う案内手段である。非常時放電量決定部55dは、駐車場1に駐車されている複数の自動車の蓄電池から放電された電力を所定施設に送電する際における、複数の自動車の各々の蓄電池から放電させる放電量を、所定方法で決定する非常時放電量決定手段である。退出制御部55eは、駐車場1からの自動車の退出に関する制御を行う退出制御手段である。これら各部の中で、進入制御部55a、充放電制御部55b、及び退出制御部55eは、自動車の蓄電池に対する充電又は放電に関する制御を行う充放電制御手段として機能する。これら制御部55の各部の機能の詳細は後述する。
【0039】
(処理)
次に、このように構成された非常時放電制御システム50によって実行される処理について説明する。この処理は、進入制御部55aによって実行される進入制御処理、充放電制御部55bによって実行される充放電制御処理、及び退出制御部55eによって実行される退出制御処理に大別される。また、充放電制御処理の中では、案内部55cによって実行される案内処理と、非常時放電量決定部55dによって実行される非常時放電量決定処理が、サブルーチンとして起動される。以下、各処理について説明する。ただし、特記なき場合には、処理は制御部55によって実行されるものとする。
【0040】
(処理−進入制御処理)
最初に、進入制御処理について説明する。図6は、進入制御処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。この進入制御処理は、駐車場1への自動車の進入に関する制御を行うための処理であり、非常時放電制御システム50の電源投入以降、繰り返し起動される。
【0041】
まず、進入制御部55aは、進入路4で駐車場1への進入を待っている自動車があるか否かを判定する(SA1)。この判定は、例えば、発券機7に設けた図示しないセンサによって自動車の存在を検出することで行うことができる。そして、進入を待っている自動車がある場合(SA1、Yes)、進入制御部55aは、駐車場1の駐車スペース2が満車であるか否かを判定する(SA2)。この判定は、記憶部54に記憶されている駐車可能数と現在駐車数とに基づいて行うことができる。
【0042】
そして、駐車場1が満車である場合には(SA2、Yes)、進入制御部55aは、満車でなくなるまで待機し、駐車場1が満車でなくなった時点で(SA2、No)、進入路4で進入待ちをしている自動車に対して、発券機7に設けた図示しないモニタを介して、記憶部54に記憶されている通常時自動車充電単価、非常時自動車充電単価、通常時自動車放電単価、及び非常時自動車放電単価を表示する(SA3)。
【0043】
次いで、進入制御部55aは、発券指示の有無を監視する(SA4)。例えば、発券機7に設けた図示しない発券ボタンを点滅させることにより、進入路4で進入待ちをしている自動車のドライバに対して発券指示を促し、発券ボタンが押された場合には、発券指示があったものと判定する。そして、発券指示があった場合(SA4、Yes)、進入制御部55aは、公知の方法で取得したその時点の現在日時を記録した駐車券を発券機7を介して発券し、進入ゲート8を開放する(SA5)。そして、自動車が進入ゲート8を通過したか否かを、発券機7に設けた図示しないセンサを介して監視し(SA6)、進入ゲート8を通過した場合には(SA6、Yes)、進入ゲート8を閉鎖し、記憶部54の現在駐車数を1つ増分することにより更新する(SA7)。これにて進入制御処理が終了する。
【0044】
(処理−充放電制御処理)
次に、充放電制御処理について説明する。図7は、充放電制御処理のフローチャートである。この充放電制御処理は、駐車場1に駐車している自動車の蓄電池に対する充電又は放電を制御するための処理であり、非常時放電制御システム50の電源投入以降、繰り返し起動される。
【0045】
まず、充放電制御部55bは、駐車場1に駐車している自動車のドライバーからの充放電の要求の有無を監視する(SB1)。例えば、ドライバーが充放電端末6に設けた図示しない充電要求ボタン又は放電要求ボタンを押下した場合には、充放電の要求があったものと判定する。
【0046】
そして、充放電の要求があった場合(SB1、Yes)、充放電制御部55bは、充放電端末6への駐車券の挿入を促すメッセージを、当該充放電端末6に設けた図示しないスピーカやモニタを介して、運転者に向けて出力する(SB2)。また、この際、充放電制御部55bは、充放電端末6に自動車の蓄電池を接続することを促すメッセージを、運転者に向けて出力し、運転者は、このメッセージに応じて、充放電制御部55bは、充放電端末6に自動車の蓄電池を公知の方法で接続する。
【0047】
充放電端末6に対して駐車券が挿入された場合(SB3、Yes)、充放電制御部55bは、現在が非常時であるか否かを判定する(SB4)。この判断の具体的な方法は任意であるが、例えば非常時には、非常時であることを示す非常時案内信号が、駐車場1から所定範囲以内(例えば30Km以内)にある防災センターや消防署からネットワークを介して非常時放電制御システム50に送信されることを前提として、充放電制御部55bは、当該非常時案内信号が受信されているか否かに基づいて、非常時であるか否かを判定する。あるいは、駐車場1の管理者が、テレビやラジオによる報道等に基づいて非常時であるか否かを判定し、この判定結果を入力部51を介して非常時放電制御システム50に入力することを前提として、充放電制御部55bは、このような入力があったか否かに基づいて、非常時であるか否かを判定する。なお、このような非常時案内信号や、管理者から入力された情報には、非常時レベルを示す情報が含まれているものとする。
【0048】
ここで、現在が非常時ではないと判定した場合(SB4、No)、充放電制御部55bは、公知の方法で、SB1において運転者により充放電端末6を介して受け付けられた充電又は放電の要求に応じて、充電又は放電を充放電端末6を介して実行する(SB13)。例えば、充電は、電力会社から供給された電力を用いて行い、若しくは、駐車場1の蓄電設備13又は併設建物15の蓄電設備18に蓄電された電力を用いて行う。また、放電は、駐車場1の蓄電設備13又は併設建物15の蓄電設備18に自動車から放電された電力を蓄電することにより行う。
【0049】
その後、充放電制御部55bは、充放電端末6に挿入された駐車券に対して充放電履歴を記録し、当該駐車券を充放電端末6から排出してドライバに返却する(SB12)。この充放電履歴としては、後述する退出制御処理において充電料金又は放電料金の算定を行うために必要な情報が記録され、ここでは、充電を行った場合には充電量、放電を行った場合には放電量がそれぞれ記録されると共に、通常時の充電又は放電を行った旨が記録される。これにて充放電制御処理が終了する。
【0050】
一方、SB4で現在が非常時であると判定した場合(SB4、Yes)、充放電制御部55bは、駐車場1の外部に存在する自動車の運転者に対して、当該駐車場1に駐車して放電を行うことを呼びかけるための案内を行うため、案内処理を起動する(SB5)。図8は、案内処理のフローチャートである。
【0051】
(処理−充放電制御処理−案内処理)
この案内処理において、案内部55cは、記憶部54から非常時自動車充電単価及び非常時自動車放電単価を取得する(SC1)。また、案内部55cは、記憶部54から駐車状況情報(駐車可能数と現在駐車数)を取得する(SC2)。
【0052】
そして、案内部55cは、SC1で取得した非常時自動車充電単価及び非常時自動車放電単価と、SC2で取得した駐車状況情報とを含んだ信号を、所定の制御コマンドと共に、掲示板20とFM送信装置21に対してネットワークIF53を介して送信する(SC3)。このことにより、掲示板20には、非常時自動車充電単価及び非常時自動車放電単価と、最新の駐車状況情報とが表示され、FM送信装置21からはFMアンテナ22を介して、非常時自動車充電単価及び非常時自動車放電単価と、最新の駐車状況情報とが放送されるので、運転者(ここでは、掲示板20の周囲を走行している自動車の運転者や、FM放送をカーラジオで受信して視聴している自動車の運転者)は、これらの情報により、現在が非常時であるために駐車場1へ駐車を行うことが呼びかけられている事実や、通常時よりも高く設定された非常時自動車充電単価及び非常時自動車放電単価を把握することができ、駐車場1を利用するか否かを判断することができる。なお、FM放送としては、例えば、駐車場1を含むエリアに向けて放送されるミニFM放送として行うことができる。また、掲示板20やFM送信装置21を介して運転者に提供する情報は、上記情報に限定されない。例えば、駐車場1や併設建物15が防災拠点として構築されており、これら駐車場1や併設建物15に水や非常用食料が備蓄されている場合には、このような備蓄に関する情報を運転者に提供することで、駐車場1への来場を促してもよい。これにて案内処理が終了する。
【0053】
(処理−充放電制御処理)
次いで、図7に戻り、充放電制御部55bは、充放電端末6への運転者IDの入力を促すメッセージを、当該充放電端末6に設けた図示しないスピーカやモニタを介して、運転者に向けて出力する(SB6)。そして、充放電端末6に設けた入力部を介して運転者によって自己の運転者IDが入力された場合(SB7、Yes)、充放電制御部55bは、当該入力された運転者IDに対応する放電優先度を運転者情報DB54aから取得すると共に、SB4において取得した非常時レベルを示す情報に基づいて非常時レベルを特定し、当該特定した非常時レベルに対応する放電優先度を非常時情報DB54cから取得する(SB8)。
【0054】
そして、充放電制御部55bは、運転者IDに対応する放電優先度と、非常時レベルに対応する放電優先度が、相互に一致するか否かを判定する(SB9)。この結果、相互に一致しない場合(SB9、No)、運転者が現在の非常時レベルにおける放電への協力を希望しないものとし、充放電制御部55bは、SB1において運転者により充放電端末6を介して受け付けられた充電又は放電の要求に応じて、充電又は放電を充放電端末6を介して実行し(SB13)、充放電端末6に挿入された駐車券に対して充放電履歴を記録し、当該駐車券を充放電端末6から排出してドライバに返却する(SB12)。ここでは、充電を行った場合には充電量、放電を行った場合には放電量がそれぞれ記録されると共に、非常時の充電又は放電を行った旨が記録される。これにて充放電制御処理が終了する。
【0055】
一方、運転者IDに対応する放電優先度と、非常時レベルに対応する放電優先度が、相互に一致する場合(SB9、Yes)、運転者が現在の非常時レベルにおける放電への協力を希望するものとし、充放電制御部55bは、非常時放電量決定処理を起動する。図9は、非常時放電量決定処理のフローチャートである。
【0056】
(処理−充放電制御処理−非常時放電量決定処理)
この非常時放電量決定処理において、非常時放電量決定部55dは、図7の充放電制御処理のSB7で運転者によって入力された運転者IDに基づいて、当該運転者IDに対応する自動車種別と自宅住所を運転者情報DB54aから取得する(SD1)。次いで、充放電制御部55bは、当該取得した自動車種別に対応する燃費を自動車情報DB54bから取得する(SD2)。また、充放電制御部55bは、充放電端末6に接続された自動車の蓄電池の現在の充電量を、充放電端末6を介して公知の方法で取得する(SD3)。なお、このような自動車の蓄電池の現在の充電量は、他のタイミングで取得してもよい。例えば、進入制御処理において自動車が駐車場1に進入する際において、自動車に搭載したETCシステムを通じて現在の充電量を無線にて取得したり、非接触式又は接触式の充電装置を介して自動車の蓄電池の充電量を検知して取得してもよい。このように取得した充電量は、図7の充放電制御処理のSB7で運転者によって入力された運転者IDに対応付けて、記憶部54に記憶させておき、SD3において記憶部54から取得してもよい。
【0057】
次いで、非常時放電量決定部55dは、SD1において運転者の自宅住所が取得できたか否かを判定する(SD4)。すなわち、個人情報保護等の観点から自宅住所を登録することに抵抗を感じる運転者がいることが想定されるので、運転者情報DB54aには、自宅住所が登録されていない可能性がある。そこで、自宅住所が運転者情報DB54aから取得できたか否かを判定し、この判定結果に応じて異なる処理を行う。
【0058】
SD4において自宅住所が取得できた場合(SD4、Yes)、非常時放電量決定部55dは、駐車場1から当該取得された自宅住所までの走行距離を算定する(SD5)。この走行距離の算定は、例えば、カーナビゲーションシステム等において使用されている公知の走行経路探索手法を用いて、駐車場1から当該取得された自宅住所までの走行経路を探索し、当該走行経路の距離を公知の方法で算定することによって行う。このため、記憶部54には、地図情報や、地図上に設定されたノードの座標情報を予め記憶させておく。そして、当該算定した走行距離と、SD2で取得した燃費に基づいて、自動車が駐車場1から自宅住所にある自宅まで走行する場合に必要な充電量を算定する(SD6)。そして、当該算定した充電量を、SD3で取得された蓄電池の現在の充電量から減算し、この減算結果を、当該蓄電池から放電することができる放電量として決定する(SD7)。これにて非常時放電量決定処理が終了する。
【0059】
一方、SD4において自宅住所が取得できなかった場合(SD4、No)、非常時放電量決定部55dは、図7の充放電制御処理のSB4において取得した非常時レベルを示す情報に基づいて非常時レベルを特定し、当該特定した非常時レベルに対応する放電後走行可能距離を取得する(SD8)。このことにより、非常時レベルに応じて、駐車場1において放電を行った後に自動車が走行できる距離(例えば、運転者が自動車で避難するために必要な走行距離)を特定することができる。そして、当該取得した放電後走行可能距離と、SD2で取得した燃費に基づいて、自動車が放電後走行可能距を走行する場合に必要な充電量を算定する(SD9)。そして、当該算定した充電量を、SD3で取得された蓄電池の現在の充電量から減算し、この減算結果を、当該蓄電池から放電することができる放電量として決定する(SD10)。これにて非常時放電量決定処理が終了する。
【0060】
(処理−充放電制御処理)
次いで、図7に戻り、充放電制御部55bは、図9の放電量決定処理のSD7又はSD10で決定された放電量の電力を、自動車の蓄電池から放電させる(SB11)。このように放電された電力は、駐車場1の蓄電設備13や併設建物15の蓄電設備18に一旦蓄電され、あるいは、蓄電されることなく直ちに、電力会社に対して送電網を介して電力を逆潮流される。この時に、送電を行う対象となる電力会社が複数ある場合には、非常時レベルに応じて予め設定された電力会社に対して送電を行う等、所定の基準により送電先とする電力会社を選択してもよい。
【0061】
その後、充放電制御部55bは、充放電端末6に挿入された駐車券に対して充放電履歴を記録し、当該駐車券を充放電端末6から排出してドライバに返却する(SB12)。ここでは、放電を行った放電量が記録されると共に、非常時の放電を行った旨が記録される。これにて充放電制御処理が終了する。
【0062】
(処理−退出制御処理)
最後に、退出制御処理について説明する。図10は、退出制御処理のフローチャートである。この進入制御処理は、駐車場1からの自動車の退出に関する制御を行うための処理であり、非常時放電制御システム50の電源投入以降、繰り返し起動される。
【0063】
まず、退出制御部55eは、退出路5で駐車場1からの退出を待っている自動車があるか否かを判定する(SE1)。この判定は、例えば、精算機9に設けた図示しないセンサによって自動車の存在を検出することで行うことができる。そして、退出を待っている自動車がある場合(SE1、Yes)、退出制御部55eは、精算機9に対して駐車券の挿入を促すメッセージを、当該精算機9に設けた図示しないスピーカやモニタを介して出力する(SE2)。
【0064】
そして、精算機9に対して駐車券が挿入された場合(SE3、Yes)、退出制御部55eは、当該挿入された駐車券に記録されている現在日時(すなわち、当該駐車券が発券機7で発券された時点の現在日時であり、図6の進入制御処理のSA5で記録された現在日時)を読み取って取得すると共に、当該挿入された駐車券に記録されている充放電履歴(すなわち、図7の充放電制御処理のSB12で記録された充電量又は放電量と、通常時の充電又は放電を行った旨、あるいは、非常時の充電又は放電を行った旨)を読み取って取得する(SE4)。
【0065】
そして、退出制御部55eは、SB4で取得した現在日時と充放電履歴とに基づいて、駐車料金、充電料金、及び放電料金を算定する(SE5)。例えば、駐車料金に関しては、当該取得した現在日時と公知の方法で取得したその時点の現在日時とから駐車時間を算定し、当該算定した駐車時間に基づいて、記憶部54に予め記憶された駐車料金テーブル(駐車時間と駐車料金とを関連付けて構成されたテーブル)を参照することで、算定する。また、充電料金、及び放電料金に関しては、SE5で取得した充放電履歴と、記憶部54に予め記憶された充電単価と放電単価を参照することで、算定する。具体的には、SE5で取得した充放電履歴に充電量が含まれている場合には、当該充電量に条件情報DB54aから取得した充電単価を乗じることによって充電料金を算定する。あるいは、SE5で取得した充放電履歴に放電量が含まれている場合には、当該放電量に条件情報DB54aから取得した放電単価を乗じることによって放電料金を算定する。ここで、充電単価及び放電単価としては、SE4において通常時の充電又は放電を行った旨が取得された場合には、通常時自動車充電単価又は通常時自動車放電単価を適用する。あるいは、SE4において非常時の充電又は放電を行った旨が取得された場合には、非常時自動車充電単価又は非常時自動車放電単価を適用する。このことにより、通常時と非常時のそれぞれの場合に応じた充電料金と放電料金が算定されることになる。
【0066】
そして、退出制御部55eは、当該算定した駐車料金と、当該算定した充電料金及び放電料金に基づいて、駐車場1から退出する自動車のドライバが最終的に精算すべき精算料金を算定する(SE6)。具体的には、SE5で算定した駐車料金に対して、SE5で算定した充電料金がある場合には当該充電料金を加算し、あるいは、SE5で算定した放電料金がある場合には当該放電料金を減算することで、精算料金を算定する。そして、退出制御部55eは、このように算定した精算料金の支払いを促すメッセージを、当該精算機9に設けた図示しないスピーカやモニタを介して出力する(同じくSE6)。
【0067】
その後、退出制御部55eは、精算の完了を監視する(SE7)。具体的には、発券機7を介して精算料金が支払われた場合には、精算が完了したものと判定する。ただし、SE6で算定された精算料金がマイナスである場合には、当該精算料金を精算機9から運転者に対して払い出し、払い出しが完了した時点で、精算が完了したものと判定する。
【0068】
そして、精算が完了した場合(SE7、Yes)、退出制御部55eは、退出ゲート10を開放し(SE8)、自動車が退出ゲート10を通過したか否かを、精算機9に設けた図示しないセンサを介して監視し(SE9)、退出ゲート10を通過した場合には(SE9、Yes)、退出ゲート10を閉鎖し、記憶部54の現在駐車数を1つ減算することにより更新する(SE10)。これにて退出制御処理が終了する。
【0069】
(実施の形態の効果)
このように本実施の形態によれば、非常時が到来したと判定された場合に、駐車場1に駐車されている自動車の蓄電池から放電された電力を、電力会社に送電するための制御が行われるので、駐車場1に駐車された電気自動車の蓄電池に充電されている電力を活用することで、大容量蓄電設備と同等の送電能力を確保することが可能になり、駐車場1を防災拠点施設として活用することが可能になる。
【0070】
また、複数の自動車の各々の蓄電池から放電させる放電量が所定方法で決定されるので、各運転者の要望や事情に合致した放電量だけ放電を行うことができ、各運転者の利益を行うことなく、自動車の蓄電池に充電されている電力を活用することができる。
【0071】
また、複数の自動車の各々の蓄電池から放電させる放電量が、各自動車の蓄電池の現在の放電量から、各自動車を用いて運転者が避難するために必要とする放電量を差し引いた放電量として決定されるので、放電を行った場合であっても、各自動車を用いて運転者が避難することが可能になり、各運転者の利益を行うことなく、自動車の蓄電池に充電されている電力を活用することができる。
【0072】
また、非常時が到来したと判定された場合に、運転者に対して、当該駐車場1に駐車して放電を行うことを呼びかけるための案内が行われるので、より多くの運転者に対して放電への協力を呼びかけることで、より多くの電力を得ることができる。
【0073】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0074】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0075】
(分散や統合について)
また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成できる。例えば、非常時放電制御システム50の機能の一部を他の機器に持たせることもでき、非常時放電制御システム50から発券機7、充放電端末6、あるいは精算機9を介して行うものとして説明した処理の一部を、これら発券機7、充放電端末6、あるいは精算機9が単独で行うようにしてもよい。この場合には、これら発券機7、充放電端末6、あるいは精算機9の如き各種の機器と非常時放電制御システム50とにより構成される非常時放電制御システムを構築することができる。
【0076】
(充電と放電について)
上記実施の形態では、自動車に対して充電と放電の両方を行う場合について説明しているが、少なくとも非常時に放電を行うことができればよく、充電に関する構成や処理は省略してもよい。
【0077】
(送電先について)
上記実施の形態では、非常時に駐車場1から電力会社に対して送電を行うものとして説明したが、電力会社以外の他の送電先(例えば、他の防災拠点施設や一般家庭)に対して送電を行うようにしてもよい。
【0078】
(送電タイミングについて)
上記実施の形態では、非常時の放電を行うか否かを、放電優先度に基づいて決定しているが、他の任意の基準で決定することができる。例えば、運転者に非常時の放電を行うか否かを充放電端末6等を介して選択してもらうこともでき、あるいは、自動車の蓄電池に所定量以上の充電量で電力が充電されている場合には、運転者の意思に関わらず、一定量の電力を放電してもらってもよい。
【0079】
(放電量について)
上記実施の形態では、非常時の放電量を決定する際、運転者が自宅まで避難できる充電量を残すことを前提としているが、このような充電量を考慮することなく、一律に放電量を決定したり、自動車種類に応じて放電量を決定したり、運転者に放電量を充放電端末6等を介して決定してもらってもよい。また、自宅まで避難できる充電量を考慮する場合においても、運転者の自宅住所を予め登録してもらうのではなく、非常時の放電量を決定する必要が生じた際に、自宅住所を充放電端末6等を介して入力してもらったり、自宅までの大凡の距離を充放電端末6等を介して入力してもらってもよい。
【0080】
(放送手段について)
自動車充電条件又は自動車放電条件を放送する放送手段としては、上述の掲示やFM放送のための手段以外にも、例えば、デジタルTV網、インターネット(Wi−FiやWiMaxの如き無線通信網を含む)、携帯電話等の電話網、GPSを用いたカーナビ位置情報システム、電子カード(ETCカード、RFID、ICカード)を用いた情報通信システムを適用してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 駐車場
2 駐車スペース
3 車路
4 進入路
5 退出路
6 充放電端末
7 発券機
8 進入ゲート
9 精算機
10 退出ゲート
11 管理室
12、17 電気室
13、18 蓄電設備
14、19 電力監視装置
15 併設建物
16 出入口
20 掲示板
21 FM送信装置
22 FMアンテナ
50、60 非常時放電制御システム
51 入力部
52 出力部
53 ネットワークIF
54 記憶部
54a 運転者情報DB
54b 自動車情報DB
54c 非常時情報DB
55 制御部
55a 進入制御部
55b 充放電制御部
55c 案内部
55d 非常時放電量決定部
55e 退出制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車場に駐車されている電気自動車の蓄電池から放電された電力を、非常時に所定施設に送電するための、駐車場における非常時送電制御システムであって、
前記所定施設への送電が必要になる非常時が到来したか否かを判定する非常時判定手段と、
前記非常時判定手段によって非常時が到来したと判定された場合に、前記駐車場に駐車されている前記電気自動車の蓄電池から放電された電力を、前記所定施設に送電するための制御を行う送電制御手段と、
を備える駐車場における非常時送電制御システム。
【請求項2】
前記駐車場に駐車されている複数の前記電気自動車の蓄電池から放電された電力を前記所定施設に送電する際における、前記複数の電気自動車の各々の蓄電池から放電させる放電量を、所定方法で決定する非常時放電量決定手段を備える、
請求項1に記載の駐車場における非常時送電制御システム。
【請求項3】
前記非常時放電量決定手段は、前記駐車場に駐車されている前記複数の電気自動車の各々の蓄電池から放電させる放電量を、各電気自動車の蓄電池の現在の放電量から、各電気自動車を用いて運転者が避難するために必要とする放電量を差し引いた放電量として決定する、
請求項2に記載の駐車場における非常時送電制御システム。
【請求項4】
前記非常時判定手段によって非常時が到来したと判定された場合に、前記駐車場の外部に存在する前記電気自動車の運転者に対して、当該駐車場に駐車して放電を行うことを呼びかけるための案内を行う案内手段を備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の駐車場における非常時送電制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−135153(P2012−135153A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286368(P2010−286368)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】