説明

駐車場進入/脱出検出装置及びその検出方法

【目的】駐車場進入/脱出を正確に判定できる「駐車場進入/脱出検出装置及びその検出方法」を提供することである。
【構成】 所定のタイミングで平面及び高さ方向の移動距離を計算し、上記移動距離を用いて勾配を計算し、勾配の絶対値が設定値より大きくなったとき、駐車場に進入したと判定する。前記駐車場進入が検出されたときの車両の相対高度を範囲内に含む所定の高度範囲を設定し、自車位置が前記高度範囲内に存在する場合は、脱出判定に使用する設定距離を小さくし、前記高度範囲外に存在する場合は前記設定距離を大きくし、道路と併走する併走距離を算出し、該併走距離が前記設定距離以上になったとき駐車場から脱出したと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は駐車場進入/脱出検出装置及びその検出方法に係り、特に、車両が立体あるいは地下の駐車場に進入したこと、あるいは該駐車場から脱出したことを検出する駐車場進入/脱出検出装置及びその検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の経路案内を行うナビゲーションシステムは、車両が駐車場に進入してから脱出するまでの間を駐車場内走行中と判断する。そして、駐車場内走行中は、ユーザーの誤認識を防ぐために経路案内を停止し、また、マップマッチング処理を停止して自車位置を道路リンクへ引付ないようにしている。一方、車両が駐車場から脱出したときには、経路案内処理及びマップマッチング処理を再開する。
以上から、車両が駐車場に進入し、また駐車場から脱出したことを確実に速やかに判定する必要がある。従来の駐車場への進入/脱出判定技術として、路面状況の変化により道路の段差や側溝を検出して駐車場への進入、脱出を検出するものがある(特許文献1参照)。しかし、この第1従来技術は、駐車場の入口、出口に段差や側溝が存在する特殊な駐車場に適用できるものであり、段差や側溝が存在しない駐車場の進入/脱出判定に適用できない。
又、別の従来技術として、捕捉されているGPS衛星の個数が設定数以下の時、車両が立体あるいは地下の駐車場に進入したと判定するものがある(特許文献2)。しかし、この第2従来技術では、トンネル、屋上駐車場等で誤動作する問題がある。
【0003】
又、別の進入/脱出判定技術が提案されている。この第3の従来技術では、「車両の右左折直後の自車位置と周辺道路リンクとの水平距離が閾値以上になったとき、駐車場へ進入した」と判定し、「(1)自車位置と周辺道路リンクとの水平距離が閾値以下で、一定距離以上併走したとき、あるいは、(2)走行速度が閾値以上になったとき、駐車場を脱出した」と判定するものである。
しかし、かかる第3従来技術では、以下のケースで駐車場進入/脱出を誤判定する。図15は進入誤判定の説明図であり、駐車場PKの入口と道路RD1の水平距離が近く、かつ道路RD1との併走距離が長い場合である。かかる状況では、マップマッチング処理が継続し、実際に道路から離れて走行している場合でも車両マークが道路にひきつけられて点線で示すように誤って表示され、しかも、全く進入判定できない、あるいは駐車場進入の判定が遅れる等の問題が生じる。
図16は脱出誤判定の説明図であり、駐車場PK内を反時計方向に走行中、周辺道路RD2との水平距離の近くを所定距離以上走行すると、脱出と誤判定してマップマッチング処理を開始し、点線で示すように周辺道路RD2にマップマッチングしてしまう。
上記課題に共通することは、自車位置と周辺道路リンクとの水平距離が近いときに、駐車場進入/脱出が正確に判定できなくなることであり、これにより、経路案内の開始/停止タイミング、マップマッチング処理の開始タイミングを間違え、ユーザーに不安を与えてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−184089号公報
【特許文献2】特開2007−178182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上から、本発明の目的は、自車位置と周辺道路リンクとの水平距離が近いときでも、駐車場進入/脱出を正確に判定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両が立体あるいは地下の駐車場に進入したこと、あるいは該駐車場から脱出したことを検出する駐車場進入/脱出検出装置及び駐車場進入/脱出検出である。
・駐車場進入/脱出検出装置
本発明の駐車場進入/脱出検出装置は、所定のタイミングで平面及び高さ方向の移動距離を計算する移動距離計算部、上記移動距離を用いて勾配の絶対値を計算する勾配計算部、勾配の絶対値が設定値より大きくなったとき、駐車場に進入したと判定する駐車場進入判定部、を備えており、前記設定値は、例えば、法令で規定される最大縦断勾配に基づいて決定する。又、本発明の駐車場進入/脱出検出装置は、峠道を走行しているか判定する峠道判定部を備え、前記駐車場進入判定部は峠道で勾配の絶対値が設定値より大きくなっても駐車場に進入したと判定しない。
本発明の駐車場進入/脱出検出装置は、更に、基準位置からの相対高度を監視する高度監視部、前記駐車場進入が検出されたときの相対高度を範囲内に含む所定の高度範囲を設定する高度範囲設定部、道路と併走する併走距離を算出する併走距離監視部、自車位置が前記高度範囲内に存在する場合は脱出判定に使用する設定距離を小さくし、前記高度範囲外に存在する場合は前記設定距離を大きくし、前記併走距離が該設定距離以上になったとき駐車場から脱出したと判定する駐車場脱出判定部を備えている。
【0007】
・駐車場進入/脱出検出方法
本発明の駐車場進入/脱出検出方法は、所定のタイミングで平面及び高さ方向の移動距離を計算するステップ、上記移動距離を用いて勾配を計算するステップ、勾配の絶対値が設定値より大きくなったとき、駐車場に進入したと判定するステップを有している。
本発明の駐車場進入/脱出検出方法は、更に、前記駐車場進入が検出されたときの車両の相対高度を範囲内に含む所定の高度範囲を設定するステップ、自車位置が前記高度範囲内に存在する場合は、脱出判定に使用する設定距離を小さくし、前記高度範囲外に存在する場合は前記設定距離を大きくするステップ、道路と併走する併走距離を算出し、該併走距離が前記設定距離以上になったとき駐車場から脱出したと判定するステップを有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所定のタイミングで平面及び高さ方向の移動距離を計算し、上記移動距離を用いて勾配を計算し、勾配の絶対値が設定値より大きくなったとき、駐車場に進入したと判定するようにしたから、勾配を考慮することにより確実に立体あるいは地下の駐車場への進入を検出することができる。
また、自車位置と周辺道路リンクとの水平距離が近いときでも、地下駐車場あるいは立体駐車場に下りながらあるいは上りながら接近するため、途中で勾配の絶対値が設定値より大きくなって駐車場進入を速やかに検出することができる。
また、本発明によれば、屋上駐車場あるいは地下駐車場で周辺道路と水平距離が近いエリアを相当距離走行しても、脱出判定と見なす併走距離を大きくしているため、脱出であると誤判定することがなくなる。従って、図16の点線で示すように脱出したと判定してミスマッチングすることがなくなる。
以上より、本発明によれば、経路案内の開始/停止タイミング、マップマッチング処理開始タイミングが正確になり、ユーザーに安心感を与えることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の車載ナビゲーションシステムの全体の構成図である。
【図2】センサーボードおよびセンサー座標系説明図である。
【図3】車両に固定した座標系と地表固定座標系(NED座標系)の説明図である。
【図4】自律航法計算部の構成図である。
【図5】駐車場進入/脱出検出部の構成図である。
【図6】勾配計算処理フローである。
【図7】駐車場進入判定処理フローである。
【図8】峠道を考慮した駐車場進入判定処理フローである。
【図9】峠道判定の説明図である。
【図10】峠道判定部を備えた場合の駐車場進入/脱出検出部の構成図である。
【図11】駐車場進入判定処理フローである。
【図12】駐車場入口と道路リンク間の水平距離が短く、かつ、併走距離が長い駐車場における駐車場進入、脱出説明図である。
【図13】本発明と第3従来技術の走行軌跡の比較説明図である。
【図14】立体駐車場を走行してから駐車場を脱出する場合の本発明と第3従来技術の走行軌跡の比較説明図である。
【図15】従来の進入誤判定の説明図である。
【図16】従来の脱出誤判定の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(A)ナビゲーションシステム
自律航法システムは、車両の距離センサーである車速パルスセンサーや、加速度計と角速度計(ジャイロスコープ)などの慣性センサーを備え、移動体である車両の位置、速度、及びセンサー姿勢あるいは車体姿勢の推定のために広く使用されている。自律航法は外部信号に頼らずにセンサー出力に基づいて推定位置の更新を行うことができる。しかし、センサー出力に含まれるノイズなどのエラーが時間の経過とともに積分計算に伴って蓄積するため、長時間は使用できない。そこで、衛星信号の届く範囲では有限誤差の位置推定を常時与える全地球測位システム(Global Positioning System: GPS受信機)と自律航法システムを、カルマンフィルタなどの最適確率アルゴリズムで結合することにより、両システムの性能上の問題を補間・解決する手法が実用化されている。
【0011】
図1は本発明の車載ナビゲーションシステムの全体の構成図であり、自律系の入力信号として、センサーボード10上の慣性センサーから得られる信号と、別のケーブルを通じて車体から取り込まれる車速パルスがある。慣性センサーとしては加速度計(加速度3軸)10a、ジャイロスコープ(角速度3軸)10bを採用し、車速パルスを発生するセンサーとしては車両が所定距離移動する毎に1個のパルスを発生する車速センサー11を採用する。図2(A)はセンサーボード10に固定したセンサー座標系Xs-Ys-Zsを示している。図2(B)は、センサーボード10において、加速度計10aの3軸(Acc x, Acc y, Acc z)およびジャイロスコープ10bの3軸(Gyro x, Gyro y, Gyro z)から成る、即ち6自由度の基本システムのセンサー構成を示したものである。3軸加速度計Acc x〜Acc zは、センサー座標系の三つの座標方向(x,y,z)における加速度を検出し、また3軸ジャイロスコープGyro x〜Gyro zは、センサー座標系の三つの座標軸(x,y,z)周りの角速度P,Q,Rを検出する。なお、図3(A)は、車両に固定した座標系Xb-Yb-Zbを示し、又、図3(B)は、ある緯度、経度における、地表固定座標系North-East-Down(NED座標系)を示している。
【0012】
図1に戻って、自律航法計算部12は6自由度の基本システムのアルゴリズムを用いて、車両の現在の位置、速度及び姿勢を含む車両状態量xを、所定の計算式に従って高周波数で、例えば25Hzで更新して出力する。
GPS受信機13は、複数の人工衛星から距離と距離変化率に関する信号を受信することで、車両のアンテナの位置(緯度N、経度E、高さD)と車両速度(北方向速度v、東方向速度v、上下方向速度v)の測定値を1Hzでカルマンフィルタ補正部14に入力する。
【0013】
カルマンフィルタ補正部14は車両の現在の位置、速度及び姿勢を含む車両状態量の補正を行う。例えば、カルマンフィルタ補正部14は5Hzの速度で、車速センサー11から得られる速度(走行時)あるいはジャイロ10bから出力される角速度オフセット(静止時)を観測値として用いて状態量補正処理を行って得られた補正状態量を自律航法計算部12に入力する。又、カルマンフィルタ補正部14は1Hzの速度でGPS受信機13から得られる位置・速度(N,E,D,v,v,v)を観測値として用いて状態量補正処理を行って得られた補正状態量を自律航法計算部12に入力する。
駐車場進入/脱出検出部15は自律航法計算部12により計算されたNED座標系の緯度N,経度E、高さDを用いて後述する駐車場進入判別処理、駐車場脱出判別処理を実行する。
【0014】
(B)自律航法計算部
図4は自律航法計算部12の構成図であり、状態量更新部21は6自由度の基本システムのアルゴリズムに従って、25Hz周期で車両の現在位置、速度及び姿勢を含む車両の状態量
【数1】


を計算して出力すると共に、所定周期でカルマンフィルタ補正部14から入力する状態量補正データにより状態量を補正する。なお、状態量のうちvxs、vys、vzsはセンサー座標系の各軸速度、N,E,DはNED座標系の各軸位置、c00,c10,c20,c21はセンサー座標系からNED座標系に変換する姿勢パラメータ、・・・であり、本願発明に関係する状態量はNED座標系の各軸位置N,E,Dである。
【0015】
計数部22は状態量計算周期(25Hz)の間に車速センサー11から入力する車速パルスの数Npを計数し、移動距離計算部23は車速パルス数Npに車速1パルス当たりの移動距離Lを乗算して移動距離Np×Lを移動ベクトル算出部24に入力する。移動ベクトル算出部24は次式
【数2】

により車両固定座標系における車両の移動距離ベクトルsbを計算して状態量更新部21に入力する。
状態量更新部21は自律航法計算アルゴリズムにしたがって各軸速度、各軸位置、センサー姿勢等の状態量xを計算する。この自律航法計算アルゴリズムでは、NED座標系における各軸位置N,E,Dを以下の位置方程式
【数3】

により計算する。但し、(3)式において
【数4】

であり、Tnbは車両固定座標系からNED座標系に変換する変換マトリックス、(4)式は位置ベクトルである。
状態量更新部21は上記計算したNED座標系の各軸位置N,E,Dを駐車場進入/脱出検出部15に入力する。
【0016】
(C)駐車場進入/脱出検出部
図5は駐車場進入/脱出検出部15の構成図である。
NED位置変化量計算部31は、車両が5m走行する毎に自律航法計算部12から入力するNED座標系の各軸位置N,E,Dを用いて、5m区間における各軸位置N,E,Dの変化量ΔN、ΔE、ΔDを計算し、勾配計算部32はΔN、ΔE、ΔDを用いて次式
【数5】

により勾配θを計算する。車両が5m走行したか否かは車速パスをカウントして判別する。
【0017】
相対高度計算部33はナビゲーション起動時(Accオン時)の地点の高度に対する相対高度(ナビゲーション起動地点の高度を0としたときの車両高度)Dnowを次式
Dnow=Dnow+ΔD (6)
により計算する。相対高度履歴部34は、最新の設定数の相対高度を保存する。駐車場進入判定部35は、計算した勾配θの絶対値が連続して設定値θsを超えたとき、立体あるいは地下駐車場に進入したものとして駐車場進入信号を出力する。なお、設定値θsは、法令で規定される最大縦断勾配に基づいて決定するものとする。日本の場合、最大縦断勾配は12%と法令により規定されているから、θs=12とする。
【0018】
最大高度/最小高度抽出部36は車両が駐車場に進入したと判定されたとき、直前の所定走行距離(例えば100m)内の相対高度のなかから最大高度Dmaxと最小高度Dminを抽出し、高度範囲設定部37はこれら最大高度Dmaxと最小高度Dminを用いて、駐車場脱出判定に使用する高度範囲Dmax+5 (m)〜Dmin−5 (m)を設定して駐車場脱出判定部38に入力する。なお、この高度範囲には車両が駐車場に進入したと判定されたときの相対高度Dnowが含まれる範囲である。
【0019】
駐車場脱出判定部38は、車両が駐車場に進入したと判定されたときから、(1) 高度範囲Dmax+5〜Dmin−5、(2) 相対高度Dnow、(3) 車両から最も近い道路リンクまでの距離L、(4) 前記道路リンクと並行して走行した距離(併走距離)Rを用いて、車両が駐車場を脱出したかの判断を開始する。具体的な駐車場の脱出判定は後述する。
【0020】
マップマッチング部39は、地図データと現在位置を用いて周知のマップマッチング処理により、道路リンクから外れた車両現在位置を道路リンク上に修正する。また、マップマッチング処理部39は、車両から最も近い道路リンクがどれかを識別し、該道路リンクまでの水平距離Lを計算して駐車場脱出判定部38に入力すると共に、該距離Lが設定距離例えば30m以下になったとき併走中信号を出力する。なお、L=0の場合(車両が道路上に存在している場合)も併走中信号を出力する。併走距離算出部40は、併走中信号がオンになっている間の車両の走行距離を、車速パルスをカウントして計算し、該距離を併走距離Rとして駐車場脱出判定部38に入力する。
【0021】
(a)勾配計算処理
図6は勾配計算処理フローである。
NED位置変化量計算部31は、車両が5m走行したか監視し(ステップ101)、車両が5m走行する毎に自律航法計算部12から入力するNED座標系の各軸位置N,E,Dを用いて、5m区間における各軸位置N,E,Dの変化量ΔN、ΔE、ΔDを計算して勾配計算部32に入力する。勾配計算部32はΔN、ΔE、ΔDを用いて(5)式により勾配θを計算し(ステップ102)、相対高度計算部33はナビゲーション起動時地点の高度を0としたときの車両の相対高度Dnowを(6)式により計算し、相対高度履歴部34に保存する(ステップ104)。
【0022】
(b)駐車場進入判定処理
図7は駐車場進入判定処理フローである。
駐車場進入判定部35は、5m走行して勾配θが計算される毎に、該勾配の絶対値が設定値(=12%)を越えたか調べ(ステップ201)、今回と前回の勾配絶対値が連続して設定値を越えた場合には、駐車場進入と判定する(ステップ202)。以上では、2回連続して、勾配絶対値が設定値を越えた場合に駐車場進入と判定したが、1回越えた場合に駐車場進入と判定することもできる。
駐車場進入と判定されると、最大高度/最小高度抽出部36は、直前の所定走行距離(例えば100m)内の相対高度のなかから最大高度Dmaxと最小高度Dminを抽出し、高度範囲設定部37はこれら最大高度Dmaxと最小高度Dminを用いて、駐車場脱出判定に使用する高度範囲Dmax+5〜Dmin−5を設定して駐車場脱出判定部38に入力する(ステップ203)。以後、図11の処理フローにしたがって駐車場脱出判定が行われる。
ところで、峠道では勾配絶対値が設定値(=12%)を越える場合があり、正確な駐車場進入判定をするためには、峠道を判別して峠道での駐車場進入判定結果を除外する必要がある。図8はかかる峠道を考慮した駐車場進入判定処理フローであり、図7と同一ステップには同一ステップ番号を付している。異なる点は、勾配絶対値が連続して設定値を越えたとき(ステップ201で「YES」)、現在走行している道路が峠道であるか判断し(ステップ210)、峠道の場合には駐車場進入判定を行わない点である。
図9は峠道判定の説明図であり、過去の自車走行軌跡を使用する場合である。すなわち、前回の変曲点の自車位置から、自車方位が一定角度(例えば30度)以上変化した位置を次の変曲点とし、走行距離600m以内で変曲点数が16個以上となったとき、道路は峠道であると判定し、それ以外は峠道でないと判定する。
図10は峠道判定部51を備えた場合の駐車場進入/脱出検出部の構成図である。
【0023】
(c)駐車場脱出判定処理
図11は駐車場進入判定処理フローであり、駐車場進入が検出された後に処理が開始する。すなわち、駐車場脱出判定部38は、自車位置に最も近い道路リンクAまでの水平距離Lが30m以下になったか監視し(ステップ301)、なっていなければ30m以下になるのを待つ。
水平距離Lが30m以下になれば、駐車場脱出中の可能性が高いので、現在の相対高度Dnowが高度範囲Dmax+5〜Dmin−5の範囲内に存在するかチェックする(ステップ302)。すなわち、
Dmax+5> Dnow >Dmin−5 (7)
であるかチェックする。なお、(7)式の替わりに
Dnow ≧ Dmax+5あるいはDnow ≦ Dmin−5 (8)
であるかチェックしても良い。
【0024】
(7)式が成立する場合には、すなわち、車両が駐車場に進入したときの相対高度を含む高度範囲に存在する場合には、該高度範囲まで立体駐車場を上の駐車位置から降りてきた可能性あるいは地下駐車場の駐車位置から上ってきた可能性が高いので、駐車場脱出判定部38は、併走距離Rが比較的に短距離である第1の設定距離(=30m)を越えたかチェックする(ステップ303)。併走距離Rが30mを越えなかった場合には、駐車場を脱出してないと見なしてステップ301に戻り、以降の処理を繰り返す。一方、併走距離Rが30mを越えた場合には、駐車場脱出判定部38は、駐車場を脱出したと判定し(ステップ304)、駐車場脱出判定処理を終了する。
【0025】
ステップ302において、(7)式が成立しない場合は、駐車場進入時の相対高度より相当上の屋上駐車場などの駐車場内、あるいは駐車場進入時の相対高度より相当下の地下駐車場内を道路と並行して走行している可能性が高いので、併走距離Rが比較的に長距離である第2の設定距離(=60m)を越えたかチェックする(ステップ305)。併走距離Rが60mを越えない場合には、駐車場内を道路と並行して走行していると見なして駐車場を脱出したと判定せず、以後、ステップ301以降の処理を繰り返す。一方、併走距離Rが60mを越えた場合には、駐車場を脱出したと判定し(ステップ304)、駐車場脱出判定処理を終了する。ステップ305で「YES」となるのは特殊の駐車場で、入口と出口との間に相当の高度差が存在する駐車場の場合である。例えば、高速道路から階上の駐車場に進入し、該駐車場内を下って階下の出口から駐車場を脱出して一般道路へ出てゆく場合である。
以上では、最大高度Dmax、最小高度Dminを用いて、高度範囲をDmax+5〜Dmin−5と設定した場合について説明したが、一般的に駐車場進入が検出されたときの相対高度Dnowを含む所定の高度範囲、例えばDnow−α〜Dnow+βの範囲を高度範囲として設定することもできる。
【0026】
(C)本発明の効果
図12は駐車場入口と道路リンク間の水平距離が短く、かつ、併走距離が長い駐車場における駐車場進入、脱出説明図である。道路RDに沿って細長の地下駐車場UPKが存在し、該道路RDと併走して駐車場UPKの入口に向かって下ってゆき(S1)、地下駐車場に到達し(S2)、しかる後、地下駐車場内を反時計方向に周回し(S3)、ついで、駐車場の出口から道路RDと併走して上って行き(S4)、該道路に入って走行した場合である。
図13は本発明と第3従来技術の走行軌跡の比較説明図であり、(A)は本発明の走行軌跡、(B)は縦軸に相対高度、横軸に走行距離を目盛った車両相対高度の変遷図、(C)は従来技術の走行軌跡であり、実際に図12で説明したように走行した場合である。
【0027】
本発明によればポイントP1において勾配が−12%以下となって駐車場進入と判定され、ポイントP2において勾配が12%以上となって駐車場脱出と判定される。この結果、ポイントP1まではマップマッチング処理により走行軌跡(車両位置)は道路RDに引き付けられるが、ポイントP1通過後はポイントP2に到るまで自律航法計算部12が計算した位置を車両位置とし、走行軌跡は点線で示すようになる。また、駐車場脱出判定がなされたポイントP2通過後はマップマッチング処理が再開して走行規制は道路RD上に引き付けられる。本発明によれば、駐車場入口と道路リンク間の水平距離が短く、かつ、併走距離が長い地下駐車場であっても、正しく、かつ早めに駐車場進入、脱出を検出できる。
一方、第3従来技術によれば、駐車場進入を検出できず、走行軌跡は道路RDに引き付けられてしまう。
【0028】
図14は立体駐車場の屋上まで上ってゆき、屋上駐車場においてポイント(1)から、(2)で示すように逆8の字状に周回し、しかる後、脱出通路を旋回して地上に降りて道路と併走後(3)、該道路に入った場合であり、(A)は本発明の走行軌跡、(B)は車両相対高度の変遷図、(C)は第3従来技術の走行軌跡である。本発明によれば、走行通りの走行軌跡が得られ、しかも、駐車場脱出を早く検出できている。すなわち、本発明によれば、駐車場場内の道路リンクと水平距離が近いエリアを走行しても駐車場脱出と誤判定することなく、正確な走行軌跡を表示することができる。しかし、従来技術によれば、(2)の地点で駐車場脱出と見なされて車両位置が道路リンク上に引き付けられ、その後、走行軌跡がずれて表示されつづけ、しかも駐車場脱出の検出時期が遅れる。

【符号の説明】
【0029】
12 自律航法計算部
13 GPS受信機
14 カルマンフィルタ補正部
15 駐車場進入/脱出検出部
31 NED位置変化量計算部
32 勾配計算部
33 相対高度計算部
34 相対高度履歴部
35 駐車場進入判定部
36 最大高度/最小高度抽出部
37 高度範囲設定部
38 駐車場脱出判定部
39 マップマッチング部
40 併走距離算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が立体あるいは地下の駐車場に進入したこと、あるいは該駐車場から脱出したことを検出する駐車場進入/脱出検出装置において、
所定のタイミングで平面及び高さ方向の移動距離を計算する移動距離計算部、
上記移動距離を用いて勾配を計算する勾配計算部、
勾配の絶対値が設定値より大きくなったとき、駐車場に進入したと判定する駐車場進入判定部、
を備えたことを特徴とする駐車場進入/脱出検出装置。
【請求項2】
前記設定値は、法令で規定される最大縦断勾配に基づいて決定する、
ことを特徴とする請求項1記載の駐車場進入/脱出検出装置。
【請求項3】
峠道を走行しているか判定する峠道判定部を備え、
前記駐車場進入判定部は峠道で勾配の絶対値が設定値より大きくなっても駐車場に進入したと判定しない、
ことを特徴とする請求項1記載の駐車場進入/脱出検出装置。
【請求項4】
基準位置からの相対高度を監視する高度監視部、
前記駐車場進入が検出されたときの相対高度を範囲内に含む所定の高度範囲を設定する高度範囲設定部、
道路と併走する併走距離を算出する併走距離監視部、
自車位置が前記高度範囲内に存在する場合は脱出判定に使用する設定距離を小さくし、前記高度範囲外に存在する場合は前記設定距離を大きくし、前記併走距離が該設定距離以上になったとき駐車場から脱出したと判定する駐車場脱出判定部、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の駐車場進入/脱出検出装置。
【請求項5】
前記駐車場進入が検出されたとき、直前の所定走行距離内の相対高度のなかから最大値と最小値を抽出する高度最大値/最小値抽出部、
を備え、前記高度範囲設定部は、前記最大高度と最小高度を用いて前記高度範囲を設定する、
ことを特徴とする請求項4記載の駐車場進入/脱出検出装置。
【請求項6】
車両が立体あるいは地下の駐車場に進入したこと、あるいは該駐車場から脱出したことを検出する駐車場進入/脱出検出方法において、
所定のタイミングで平面及び高さ方向の移動距離を計算し、
上記移動距離を用いて勾配を計算し、
勾配の絶対値が設定値より大きくなったとき、駐車場に進入したと判定する、
ことを特徴とする駐車場進入/脱出検出方法。
【請求項7】
前記駐車場進入が検出されたときの車両の相対高度を範囲内に含む所定の高度範囲を設定し、
自車位置が前記高度範囲内に存在する場合は、脱出判定に使用する設定距離を小さくし、前記高度範囲外に存在する場合は前記設定距離を大きくし、
道路と併走する併走距離を算出し、該併走距離が前記設定距離以上になったとき駐車場から脱出したと判定する、
ことを特徴とする請求項6記載の駐車場進入/脱出検出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate