説明

駐車場

【課題】緑化部でありながらその部分の下に車両を駐車することができ、平面的には同一スペースを緑化と駐車の両方に使用できる緑化部を設けた駐車場を提供する。
【解決手段】地面9を掘り下げて形成されたピット8と、ピット8の底面8bから立設する支柱11と、支柱11に沿って昇降自在に構成され車両2を搭載する少なくとも一段のパレット13を有する昇降部17とを備えた駐車場1において、昇降部17はピット8内にパレット13を収めたとき地面9と同一平面となる天井部16を設けると共に、天井部16の屋根16aに緑化部3を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車場に関し、特に昇降式駐車設備の上面に緑化部を設けた駐車場に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、緑化部を設けた駐車場は、駐車装置部と緑化部とは平面的に同一部分に計画せず分離されている。そのため地上が緑化部であるときは、その地下や別の場所に駐車場を計画している(特許文献1)。また駐車場等の施設を緑化する場合には、全く利用されていない屋根を緑化することが敷地の有効利用の観点から好ましく、これを考慮して上下に自動車を複数台駐車できるようにした自走式の駐車場を地下に設置し、その最上階の上面に緑化部を構成したものが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−252963号公報
【特許文献2】特開2005−139662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に示されるように、地上を緑化部として地下に駐車場を計画する場合は、大規模な土地と地下のスペースが必要であり、コストも問題であった。また特許文献2に示されるような地下に設置した自走式の駐車場は、一階部から二階部にかけてスロープが設けられており、自動車が一階部と二階部との間の移動時にこのスロープを走行するもので、走行車路とスロープを設けるためのスペースが必要であり、コスト的にも問題がある。また機械式駐車場を地上に設置する場合、美観もよくない問題があった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、緑化部でありながらその部分の下に車両を駐車することができ、平面的には同一スペースを緑化と駐車の両方に使用できる緑化部を設けた駐車場を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明の駐車場は、地面を掘り下げて形成されたピットと、該ピットの底面から立設する支柱と、該支柱に沿って昇降自在に構成され車両を搭載するパレットを有する昇降部とを備えた駐車場において、前記昇降部に、前記ピット内に前記パレットを収めたとき地面と同一平面となる天井部を設けると共に、該天井部の屋根に緑化部を設けたことを特徴とする。
【0007】
また前記昇降部は、前記パレットと、該パレットの四隅又はその近傍に配したパレット支柱とを有し、該パレット支柱の上端部に前記緑化部を設けるのが好ましい。
【0008】
また前記パレットが前記パレット支柱に連結され、該パレット支柱が前記支柱に対して昇降可能に支持されるのが好ましい。
【0009】
また前記昇降部が前記パレットを上下方向に複数段有し、該パレットがそれぞれ前記パレット支柱に連結されるのが好ましい。
【0010】
また前記緑化部は、植物を植設した人工土壌又は植物を植設した植栽用マットを前記天井部の屋根上面に敷設してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、緑化部でありながらその部分の下に車両を駐車することができ、平面的には同一スペースを緑化と駐車の両方に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る駐車場の正面断面図である。
【図2】図2は、図1の実施形態に係る駐車場の上段パレットを地面と同じ位置まで上昇した状態を示す正面断面図である。
【図3】図3は、図1の実施形態に係る駐車場の下段パレットを地面と同じ位置まで上昇した状態を示す正面断面図である。
【図4】図4は、図1の実施形態に係る駐車場を示す図であり、(a)は緑化部の正面断面図で、(b)は車両を収容した状態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1に示すように緑化部3を設けた駐車場1は、地面9を掘り下げて形成されたピット8内に、単純な昇降式駐車装置10がすべて収まるように構成したピット型のものである。昇降式駐車装置10は、ピット8の底面8bから垂直に地面9と略一致する高さまで設けられた複数本の支柱11と、車両2を搭載するパレットを有し支柱11に沿って上下方向へ昇降自在に構成された昇降部17と、この昇降部17を昇降させる昇降装置18とを備えている。
【0015】
この昇降部17には、最上部に設けられ、外側上部に屋根16aを有する天井部16と、この天井部16の下方に所定の高さ方向の間隔を有してそれぞれ上下に設けられた車両2搭載用の上段パレット13及び下段パレット14と、これらの四隅に設けた複数本のパレット支柱12とを有し、上段パレット13及び下段パレット14が連結片15を介して上下方向に間隔を隔ててパレット支柱12に結合されている。上段パレット13及び下段パレット14は矩形状をなしている。パレット支柱12の上端部に天井部16が取り付けられている。天井部16の屋根16aは、上段パレット13及び下段パレット14がピット8内に収められたとき、地面と同一平面となってピット8の開口部8aを覆うようになっている。
【0016】
また、天井部16には、後述するようにその天井部16の外側上面に形成される屋根16a上面に緑化部3が設けられるもので矩形状をなしており、上段パレット13(下段パレット14)と同様なパレットを取り付けている。なお天井部16は板部材からなるものでもよい。天井部16と上段パレット13との間隔、及び上段パレット13と下段パレット14との間隔は、車両2を格納するのに十分な高さ方向の間隔を有しており、これら天井部16と上段パレット13との間、及び上段パレット13と下段パレット14との間にそれぞれ駐車スペース19が形成されている。
【0017】
このように上下二段となった上段パレット13及び下段パレット14を有する昇降部17が、支柱11と共にピット8内に横二列に並設されて昇降式駐車装置10が構成されている。なお昇降式駐車装置10は、上下二段、横二列構造に限定されることなく、上下三段以上、横三列以上の構造や、車両一台を格納する地下一段横一列の構造であってもよい。
【0018】
本実施形態では、パレット支柱12が支柱11に対して昇降自在に支持され、パレット支柱12を昇降させる昇降装置18が支柱11に取り付けられている。昇降装置18は、油圧シリンダ(図示せず)によるジャッキ式を用いている。なお昇降装置18は、チェーンによる電動巻き上げ式を用いてもよい。昇降装置18の作動を制御する操作盤6は、美観を考慮して駐車場1近傍の樹木5aに取り付ける。
【0019】
このように構成された昇降式駐車装置10は、昇降装置18を作動させることでパレット支柱12が支柱11に対して昇降し、昇降部17がピット8内から地上へ、又は地上からピット8内へ昇降することができ、図2又は図3に示すように上段パレット13又は下段パレット14をそれぞれ車両2の入出庫が可能な入出庫レベル(地上面9)まで移動させることができる。そして車両2を上段パレット13(下段パレット14)に搭載し、昇降部17を下降してピット8内に収めることで、車両2を外部から見えなくしてしまう。
【0020】
駐車場1の前面の樹木5a,5a間に保安用のチェーン7を取り付けてある。車両2が昇降式駐車装置10に入出庫する際は、チェーン7を取り外す。
【0021】
なお、本実施形態では上段パレット13と下段パレット14とを、その四隅に設けたパレット支柱12に連結片15を介して取り付けたが、パレット支柱12に上下方向に間隔を隔ててパレット係止片(図示せず)を設け、このパレット係止片に上段パレット13及び下段パレット14の四隅を載せるようにしてもよい。またパレット支柱12は四隅に設けることなく、上段パレット13及び下段パレット14の左右両側4箇所に設けてもよい。
【0022】
天井部16の屋根16a上面に設けられた緑化部3について述べる。
【0023】
緑化部3は、例えば軽量で保水性を有する化学繊維等からなる人工土壌(植栽用マット)4を屋根16a上面に敷設し、この人工土壌4にツツジなどの樹木や草花等の植物5を植栽したものである。人工土壌4は通気性及び通水性を有し、人工土壌4に植物5の根が絡んで育成される。人工土壌4には植物5を栽培するための好適な肥料などが混ぜ合わされていてもよい。また緑化部3は、屋根16a上面に合成繊維の不織布からなる多孔質の透水性耐根シート等を敷設し、その上に保水性及び通気性に優れた人工培土4を積層して緑化植物5を植栽するようにしてもよく、あるいは単に土壌4を所定の厚さ(15〜20cm程度)に敷き均して緑化植物5を植栽するようにしてもよい。ピット8の開口部8aの周囲には人工芝5bを設置する(図4(a))。
【0024】
屋根16a上面には、数%程度の水勾配が形成されており、人工土壌4内の水が図4(b)に示すように屋根16aの長手方向に向かって流れ、下方に排水されるようになっている。排水は、例えば昇降式駐車装置10の支柱11や壁部に沿わせて設けた樋等に導いて地中に捨ててもよく、あるいは所定の場所に導きながら排水してもよい。
【0025】
また上段パレット13及び下段パレット14にも、夫々数%程度の水勾配が形成されており、雨天走行した車両2が入庫して車両2に付着していた雨水が上段パレット13及び下段パレット14上に落下しても、雨水が上段パレット13及び下段パレット14上を長手方向に向かって流れ、下方に排水されるようになっている。
【0026】
このような駐車場1は、例えば庭などの駐車場となる地面9を所定の深さまで掘削し、掘削された穴の前後壁面と側壁面にプレキャストコンクリートパネル等を並設すると共に、掘削した穴の底にコンクリートを流し込んでピット8を形成する。その後、ピット8の底面8bに昇降式駐車装置10を設置し、天井部16の屋根16a上面に緑化部3を設ければよく、低コストで構築することができる。
【0027】
次に、駐車場1の動作について述べる。
【0028】
上段パレット13に対して車両2を入出庫させる場合、操作盤6の上昇ボタンを押して昇降装置(油圧シリンダ)18を作動してパレット支柱12を介して昇降部17を上昇する。これにより上段パレット13及び下段パレット14が上昇され、上段パレット13が図2に示すように地面9と略同一平面となる上昇位置(入出庫レベル)に来ると、例えば上段パレット13のスイッチ押圧片(図示せず)がリミットスイッチ(図示せず)を押圧する。これによって、油圧シリンダ18が停止して上段パレット13が上昇位置にて停止する。上段パレット13に対する車両2の入出庫はこの状態で行う。
【0029】
車両2の入出庫後、操作盤6の下降ボタンを押して油圧シリンダ18の制御回路を切り替え、油圧シリンダ18により上段パレット13及び下段パレット14がパレット支柱12と共に下降され、上段パレット13が下降位置に来るのと略同時に上段パレット13のスイッチ押圧片が下のリミットスイッチ(図示せず)を押圧する。これによって、油圧シリンダ18が停止して上段パレット13が下降位置にて停止する。車両2が入庫された場合は、車両2は地下に格納されており、また車両2が出庫した場合も昇降部17が地下に格納されて、その表面は緑化部3だけとなる。
【0030】
また、下段パレット14に対して車両2を入出庫させる場合も同様に、操作盤6の上昇ボタンを押す。油圧シリンダ18が作動してパレット支柱12を介して昇降部17を上昇する。それにより上段パレット13及び下段パレット14が上昇され、下段パレット14が図3に示すように地面9と略同一平面となる上昇位置(入出庫レベル)に来ると、例えば下段パレット14のスイッチ押圧片(図示せず)がリミットスイッチ(図示せず)を押圧する。これによって、油圧シリンダ18が停止して下段パレット14が上昇位置にて停止する。下段パレット14に対する車両2の入出庫はこの状態で行う。
【0031】
同様に、車両2の入出庫後、操作盤6の下降ボタンを押して油圧シリンダ18の制御回路を切り替え、油圧シリンダ18により上段パレット13及び下段パレット14がパレット支柱12と共に下降され、下段パレット14が下降位置に来るのと略同時に下段パレット14のスイッチ押圧片が下のリミットスイッチ(図示せず)を押圧する。これによって、油圧シリンダ18が停止して下段パレット14が下降位置にて停止する。
【0032】
車両2の入出庫時は、入出庫したい上段パレット13又は下段パレット14が上昇し、それに伴い緑化部3も上昇するが、車両2格納時は緑化部3が地面9と同一レベルとなり、昇降式駐車装置10は外部から見えることなく緑化部3だけとなり、緑化面積と美観が確保できる。なお駐車場1の周囲には芝生などを植栽し、車両2が一般道路から簡単に入出庫できるようにする。
【0033】
このように昇降式駐車装置10を地下に埋設し、地面9と同一平面となる天井部16の屋根16a上面に緑化部3を施しているので、ガーデニングなど緑あふれるゆとり空間として活用できる。
【0034】
駐車場を計画するとき、敷地内の緑化面積や美観が問題になるが、本実施形態の駐車場1によれば、緑化スペースの地下に駐車スペースを確保することができ、緑化部3でありながらその部分の下に車両2を駐車することができ、平面的には同一スペースを緑化と駐車の両方に使用できる。
【0035】
以上、本発明によれば、車両2の入出庫時は、昇降部17(上段パレット13及び下段パレット14)が地下から上昇して入出庫が可能となり、終了後は昇降部17が地下に下降して表面は緑化部3だけとなり、緑化部分を駐車場スペースとして利用できるので、緑化面積を減少させることなく敷地の有効利用を図ることができ、狭い土地でも有効に活用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 駐車場
2 車両
3 緑化部
4 人工土壌
5 植物
5a 樹木
6 操作盤
7 チェーン
8 ピット
8a 開口部
8b 底面
9 地面
10 昇降式駐車装置
11 支柱
12 パレット支柱
13 上段パレット
14 下段パレット
15 連結片
16 天井部
16a 屋根
17 昇降部
18 昇降装置
19 駐車スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面を掘り下げて形成されたピットと、該ピットの底面から立設する支柱と、該支柱に沿って昇降自在に構成され車両を搭載するパレットを有する昇降部とを備えた駐車場において、
前記昇降部に、前記ピット内に前記パレットを収めたとき地面と同一平面となる天井部を設けると共に、該天井部の屋根に緑化部を設けたことを特徴とする駐車場。
【請求項2】
前記昇降部は、前記パレットと、該パレットの四隅又はその近傍に配したパレット支柱とを有し、該パレット支柱の上端部に前記緑化部を設けた請求項1記載の駐車場。
【請求項3】
前記パレットが前記パレット支柱に連結され、該パレット支柱が前記支柱に対して昇降可能に支持された請求項2に記載の駐車場。
【請求項4】
前記昇降部が前記パレットを上下方向に複数段有し、該パレットがそれぞれ前記パレット支柱に連結された請求項2又は請求項3に記載の駐車場。
【請求項5】
前記緑化部は、植物を植設した人工土壌又は植物を植設した植栽用マットを前記天井部の屋根上面に敷設してなる請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の駐車場。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−94376(P2011−94376A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248986(P2009−248986)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000198363)IHI運搬機械株式会社 (292)
【Fターム(参考)】