説明

駐車支援方法及びシステム

【課題】車両のタイヤとボディを識別することにより、車両のタイヤ位置や向き、ホイールベース、最小回転半径などを推定して、車両への指示方法をより正確にする。
【解決手段】被誘導者が操作する被誘導車両に対して、駐車開始位置から駐車終了位置まで誘導する。被誘導車両の外部に駐車誘導装置を備え、車両仕様として、車両全長及び車両全幅に加えて少なくともホイールベースをセンシングにより取得し、かつ、車両状態として、車両の現在の位置、向き、及び操舵角を取得する。駐車誘導装置は、取得した車両仕様及び車両状態に基づき車両理想軌道及び理想的な運転操作を算出して、被誘導者に対して音声指示をし、被誘導者は、駐車誘導装置からの音声指示に基づき車両操作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被誘導者が操作する被誘導車両に対して、駐車開始位置から駐車終了位置まで誘導する駐車支援方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、道路交通の様々な問題解決や効率化のために、エレクトロニクスや情報通信技術を活用し、インテリジェント化、ネットワーク化などをはかり、システムとしてとらえていこうというITS(Intelligent Transport Systems)に関する研究が盛んである。その中で、交通事故や渋滞などの本質的な解決に期待されるAVCSS(Advanced Vehicle Control and Safety Systems:先進車両制御安全システム)に関する自動運転や運転支援の研究も盛んに行われている。
【0003】
近年、運転能力にばらつきが大きいとされる高齢ドライバの増加に対して、安全で効率的な移動手段を確保する上で運転支援は重要であり、運転が苦手なドライバを含めた運転弱者への支援システムは今後、重要性がさらに増すものと考えられる。本発明者らは、先に、外部から車両位置や走行情報を獲得することと、駐車誘導を音声で行うことにより、車載コストやオプションの限界を解決することを目的とした駐車誘導方法及びシステムを提案した(特許文献1)。
【0004】
図4は、特許文献1に記載の車両誘導システムの概念を示す図である。この車両誘導システムは、被誘導車両の外部に駐車誘導装置を備え、該車両の状態をセンシングにより取得して、被誘導者が操作する被誘導車両に対して、駐車開始位置から駐車終了位置まで誘導する。駐車誘導装置は、取得した車両状態に基づき車両理想軌道及び理想的な運転操作を算出し、かつ、障害物を検出して、被誘導者に対して音声指示をする。被誘導者は、前記駐車誘導装置からの音声指示に基づき車両操作を行う。このように、車両誘導システムの基本部分(駐車誘導装置)は、支援される車両に車載していない。位置・状態を含む環境認識機能、通信機能、誘導機能のような駐車誘導装置に必要な基本的な機能は、車両の外部に配置し、それらからの情報を利用することで、環境認識機能の拡張、車載コストの低減などを図っている。
【0005】
図5は、図4に示した車両誘導システムの動作を説明する図である。例示の車両誘導システムにおいては、車両の状態を取得するためのレーザー面を車のホイールハウスに当てない高さに設定する必要があり、対象とする車によっては、高さの制限が大きくあった。レーザー面は、ホイールハウスよりも上で窓よりも下である必要があった。また、ホイールベースは推定困難のため、車両の操舵制御指示方法においてはフィードバック制御に準じた指示をする必要があった。
【0006】
また、これまで立体駐車場での支援システムが存在していない。立体駐車場は、支援システムを車両に搭載する車載システムでは、支援対象外であり、特に駐車が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-279899号公報
【特許文献2】特開2008-257002号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】大前,橋本,藤岡,清水,駐車場を有する構内における自動車の自動運転の運動制御に関する研究,自動車技術会論文集Vol.35-3,(2004),pp.235-240
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の技術は、車両の位置や向きを外部から求めるものであって、車両の回転半径に影響するホイールベースの値を推定することが困難であった。また、正確なタイヤの現在の向き(操舵角)は推定できず、操舵指示に関して制約があったボディの幅と同じに推定していた。
【0010】
本発明は、車両のタイヤとボディを識別することにより、車両のタイヤ位置や向き、ホイールベース、最小回転半径などを推定して、車両への指示方法をより正確にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
被誘導者が操作する被誘導車両に対して、駐車開始位置から駐車終了位置まで誘導する本発明の駐車支援方法は、被誘導車両の外部に駐車誘導装置を備え、車両仕様として、車両全長及び車両全幅に加えて少なくともホイールベースをセンシングにより取得し、かつ、車両状態として、車両の現在の位置、向き、及び操舵角を取得する。駐車誘導装置は、前記取得した車両仕様及び車両状態に基づき車両理想軌道及び理想的な運転操作を算出して、被誘導者に対して音声指示をし、被誘導者は、前記駐車誘導装置からの音声指示に基づき車両操作を行う。
【0012】
また、本発明の駐車支援システムは、被誘導車両の外部に、車両状態を含む環境認識機能、通信機能、及び誘導機能を有する駐車誘導装置を備える。該環境認識機能により車両仕様として、車両全長及び車両全幅に加えて、少なくともホイールベースをセンシングにより取得し、かつ、車両状態として、車両の現在の位置、向き、及び操舵角を取得する。誘導機能は、前記取得した車両仕様及び車両状態に基づき車両理想軌道及び理想的な運転操作を算出する手段を備え、通信機能は、前記誘導機能が算出しかつ検出した結果を、被誘導者に対して音声指示する手段を備える。
【0013】
前記車両仕様を計測するセンサとして、レーザーレンジファインダを用い、その発生レーザーがホイールハウスに当たる高さに設定して、反射率の違いを利用してタイヤを検出することにより、ホイールベースを推定する。前記音声指示をする手段は、車両に備えられているラジオ受信機を介して操作指示をする通信機器、或いは、音声により直接指示するスピーカである。
【発明の効果】
【0014】
前後の二つのタイヤの位置を認識することにより、その間の大きさがホイールベースとなる。駐車時のような滑りを伴わない低速な状況においての車両の回転半径は、ホイールベースと操舵角によって求められるため、駐車動作指示の遅れや運転者の操作の誤りにより、切り返しが必要になった場合などをあらかじめ推測することが可能となる。また、センサとタイヤの距離が近く、レーザーが多くタイヤにあたる場合においては、現在のタイヤの操舵角も推定することができ、その場合においては、操舵角を的確に運転者に指示することも可能となる。
【0015】
おおよそタイヤの大きさの範囲の高さの範囲内でレーザーを当てればよく、特殊車両や大型車両などを除く一般的な車両であれば、ほぼ同じ高さでの対応が可能である。これまでも、特殊車両や大型車両は対象外である。また、立体駐車場などにおいて外部から車両の支援を行うことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に基づき構成される駐車支援システムの概念を示す図である。
【図2】本発明に基づき構成される駐車支援システム構成を例示する図である。
【図3】駐車誘導システムの動作の流れを示すフロー図である。
【図4】特許文献1に記載の車両誘導システムの概念を示す図である。
【図5】図4に示した車両誘導システムの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明に基づき構成される駐車支援システムの概念を示す図である。この図にあるように、駐車支援システムは、基本部分(駐車誘導装置)を支援される車両に車載していないが、その配置はインフラとして固定されているものばかりでなく、他の車両に搭載することも考えられる。駐車誘導装置に必要な基本的な機能は、車両のホイールベースなどの車両仕様,車両位置・状態を含む環境認識機能、通信機能、誘導機能といえる。本発明では、これらの機能を車両の外部に配置し、それらからの情報を利用することで、環境認識機能の拡張、車載コストの低減などを図ろうというものである。ただし、機能の分散配置や車載されている機能の利用も考えられる。外部からの誘導であるため、主たる誘導機能が外部にあることが特徴であり、これにより車載装置における負担、コストの軽減や複数車両への統一した判断情報の提供などが期待できる。車両の状態及び基礎情報(位置、向き、速度、ヨーレート、車幅、車長、ホイールベース、操舵角)を計測するセンサとして、レーザーレンジファインダ(LRF: SICK社製)を用いることができる。レーザレンジファインダとは、水平方向にレーザを一定角度毎に照射し、その距離を算出する。
【0018】
本発明は、レーザーがホイールハウスに当たる高さに設定して、反射率の違いを利用してタイヤを検出することにより、ホイールベースを検出する。このように、レーザー面をタイヤに当てて、タイヤの位置を検出することにより、車両の仕様の一つであるホイールベースを推定することが可能である。ホイールベースは、車両の最小回転半径に大きく関わる値であり、これにより、高精度に誘導することが可能となる。なお、本明細書において、「ホイールベース」とは、前輪軸(タイヤ中心)と後輪軸(タイヤ中心)との間の距離を意味し、また、「ホイールハウス」とは、タイヤ(ホイール)が車体に取り付けられた状態で転動するために確保された空間を意味する用語として用いている。
【0019】
図2は、本発明に基づき構成される駐車支援システム構成を例示する図である。図示の駐車支援システムは、駐車場に固定された駐車誘導装置と、車両に備えられているFMラジオとから構成される。駐車誘導装置は、さらに、演算機能を有する計算機(演算機器)と、車両の状態(位置・向き・操舵角)推定センサ及び障害物検出センサと、演算機器に接続された通信機器(FMトランスミッタ)とから構成される。この通信機器に代えて、スピーカを用いることもできる。本発明では、半固定式の駐車誘導装置に備えたFMトランスミッタを利用して、FMラジオ(カーステレオ)経由による音声のみでの操作指示を行う。
【0020】
車両と駐車誘導装置との間の通信機能は、あくまで、情報伝達の手段であり、必ずしも無線通信装置を指すものでなく、原始的ではあるが外部スピーカによる音での伝達も考えられる。ただし、安全性に関わる応用では、高い信頼性が要求される。誘導機能は、後述する応用によって、様々に考えられるが、誘導制御の遅延に考慮した誘導のアルゴリズムなどの構築とともに、ドライバへの情報提示の方法やロバスト性、フェールセーフなども重要である。誘導支援を受ける車両からの情報を、外部装置によって推定することで、通信手段の簡易化や適応可能車両の大幅な拡大を図ることが可能になる。
【0021】
図3は、駐車誘導システムの動作の流れを示すフロー図である。下記にシステムのフロー順を追って記述する。
1)被誘導者(ドライバ)が操作開始して、車両(運転される車)を駐車開始位置まで移動する。
2)駐車誘導装置は、誘導を開始して、ドライバに対して音声などの合図により開始の指示をする。
3)駐車誘導装置は、まず車両仕様である、ホイールベース、車両全長、車両全幅をセンシングにより取得する。また、車両状態をセンシングにより取得して、車両位置、向き、速度、ヨーレート、操舵角を取得する。速度・ヨーレートは,車両位置・向きから計算できる。
4)開始の指示を受けて、ドライバは、車両を操作する。
5)駐車誘導装置は、ホイールベース、車両の現在の位置、向き、操舵角からの車両理想軌道及び理想的な運転操作を算出し、また、障害物を検出する。そして、ドライバに対して、単純化した音声指示をする。
6)ドライバは、音声指示に基づき車両操作を行った後、車両移動を終了する。
7)ドライバは、駐車誘導装置からの駐車支援の終了指示を受けて、駐車完了を確認する。そして、駐車誘導装置は、駐車支援を終了する。
【0022】
駐車誘導装置から被誘導車両には、被誘導車両と目標駐車スペースの位置や向きの相対関係を利用して、精度良く駐車を行うための操舵変化量、駆動制動量を制御アルゴリズムから算出し、誘導情報として提供する機能が必要である。自動駐車の場合には、この情報により、アクチュエータを駆動することになるが、ヒューマンマシンインターフェース(HMI)によるドライバへの運転指示の場合は、提示情報の基として活用する。
【0023】
車両の駐車誘導制御アルゴリズムは、非特許文献1で用いられている制御手法を用いて操舵変化量の算出を行うことができる。この制御手法の特徴は、車体のホイールベース等の幾何的なパラメータやコーナリングパワーなどの力学的パラメータに依存しないという特徴があるため、実際に不特定多数の車両に対応できる。駐車スペースの位置と向きの情報は、駐車支援システムが地図データベースなどにより、取得することができる。被誘導車両の位置に関して、非特許文献1に記載されているように、重心位置を利用することができるが、簡易的には中心位置を利用することもできる。
【0024】
情報指示方法として、外部誘導装置が算出した目標操舵角と現在の操舵角・及び車両仕様に応じて音声を用いた操舵指示を行う。音声での細かい指示(少し右、大きく右などの数種類の指示)は、運転者にとって混乱を招くことになることや外部からの支援のため、単純な音声による指示手法を用いる。
【0025】
車両のタイヤは確実に地面に設置しており、車両(RVや軽自動車)には、様々なタイヤの大きさがあるが、おおよそのタイヤ中心の高さに地面と水平にセンサを設置することで、ほとんどの車両の推定及びレーザーの反射率からタイヤの検出は可能である。
【実施例】
【0026】
実際に、普通車両を用いて、タイヤ、ホイールを認識し、車両のホイールベースも認識することができた。距離センサに加えて、物体との反射率を利用することにより、それらを推定することが可能となる。
【0027】
このため、まず、レーザーセンサから得られる値から、おおよその車両の位置を特定する。おおよその車両の位置から、ホイールハウス部分の候補を検出、及びそのホイールハウス候補部分において、特にレーザーの反射率が低い個所を検出することで、ホイールハウスの中にあるタイヤを検出する。この際、反射率は距離に影響されるため、反射率に距離の係数をかけたもので比較を行う。検出されたタイヤの距離を推定することにより、ホイールベースの長さが計算される。また、検出されたタイヤの前タイヤの角度と車両の角度の差を計算することにより、タイヤの向き、すなわち操舵角が計算される。これまでの誘導方法では、ホイールベースや現在の操舵角を利用しない制御誘導アルゴリズムを利用したが、本発明は、ホイールベースと操舵角を推定する手法を利用することにより、より高精度な制御アルゴリズムを適用することになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被誘導者が操作する被誘導車両に対して、駐車開始位置から駐車終了位置まで誘導する駐車支援方法において、
被誘導車両の外部に駐車誘導装置を備え、車両仕様として、車両全長及び車両全幅に加えて少なくともホイールベースをセンシングにより取得し、かつ、車両状態として、車両の現在の位置、向き、及び操舵角を取得し、
前記駐車誘導装置は、前記取得した車両仕様及び車両状態に基づき車両理想軌道及び理想的な運転操作を算出して、被誘導者に対して音声指示をし、
被誘導者は、前記駐車誘導装置からの音声指示に基づき車両操作を行うことから成る駐車支援方法。
【請求項2】
前記車両仕様を計測するセンサとして、レーザーレンジファインダを用い、その発生レーザーがホイールハウスに当たる高さに設定して、反射率の違いを利用してタイヤを検出することにより、ホイールベースを推定する請求項1に記載の駐車支援方法。
【請求項3】
被誘導者が操作する被誘導車両に対して、駐車開始位置から駐車終了位置まで誘導する駐車支援システムにおいて、
被誘導車両の外部に、車両状態を含む環境認識機能、通信機能、及び誘導機能を有する駐車誘導装置を備え、
該環境認識機能により車両仕様として、車両全長及び車両全幅に加えて、少なくともホイールベースをセンシングにより取得し、かつ、車両状態として、車両の現在の位置、向き、及び操舵角を取得し、
前記誘導機能は、前記取得した車両仕様及び車両状態に基づき車両理想軌道及び理想的な運転操作を算出する手段を備え、
前記通信機能は、前記誘導機能が算出しかつ検出した結果を、被誘導者に対して音声指示する手段を備える、
ことから成る駐車支援システム。
【請求項4】
前記車両仕様を計測するセンサとして、レーザーレンジファインダを用い、その発生レーザーがホイールハウスに当たる高さに設定して、反射率の違いを利用してタイヤを検出することにより、ホイールベースを推定する請求項4に記載の駐車支援システム。
【請求項5】
前記音声指示をする手段は、車両に備えられているラジオ受信機を介して操作指示をする通信機器、或いは、音声により直接指示するスピーカである請求項4に記載の駐車支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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