説明

駐車支援装置

【課題】 駐車区画周辺の障害物を精度良く検出し、障害物に接触することなく駐車可能な駐車空間を検出して、良好に運転操作を支援する駐車支援装置を提供する。
【解決手段】 車両の周辺に存在する駐車車両を検出して車両の駐車を支援する駐車支援装置であって、以下の構成を備える。駐車車両の表面形状情報を検出する表面形状検出手段1と、表面形状情報に基づいて駐車車両の輪郭形状を認識する形状認識手段2と、車両の移動状態を検出する移動状態検出手段6と、表面形状情報と輪郭形状と移動状態とに基づいて、車両と駐車車両との相対的な配置関係を演算する相対配置演算手段3と、配置関係に基づいて車両が駐車可能な駐車空間を検出する駐車空間検出手段4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の周辺に存在する障害物を検出して自車両の駐車を支援する、特に他の車両も駐車される場所において、駐車車両などの静止物体を検出して駐車を支援する駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を駐車させる場合の運転操作を支援する駐車支援装置は、様々なものが提案されている。下記に示す特許文献1には、一般にクリアランスソナーと称されるシステムの発明が記載されている。これは、従来の広指向性を有する車載用の小型超音波ソナーでは、車両に対する障害物の存在方向を特定することが困難であったことを解決しようとする発明である。これによると、特に後退時の後方障害物への接触防止を図る目的で、複数のソナーを車両の後部に設置している。そして、それぞれのソナーからの反射信号に基づいて、障害物の存在方向を特定しようとするものである。
【0003】
下記に示す特許文献2には、車体の4つのコーナー部に設けられたソナーを用いて、障害物までの距離を検出し、車両周辺の地図に障害物候補を重畳した障害物地図を作成する発明が記載されている。各コーナーに備えられたソナーの検出範囲は、平面視扇形や平面視細長楕円形となる。障害物は障害物候補として、ソナーの検出範囲内において、ソナーから一定の距離にあると検出できるが、正確な存在位置の検出は困難である。ソナーによる検出は、所定時間周期で繰り返されるため、繰り返し検出される障害物候補を特に抽出して障害物地図に反映する。
【0004】
下記に示す特許文献3には、車両の目標駐車区画を設定する発明が記載されている。これは、駐車区画の白線が明瞭に識別可能な場合にはこの白線に基づいて、明瞭に識別できない場合には障害物に基づいて画像処理を行い、車両の目標駐車区画を設定するものである。特に障害物としての駐車車両を検出する方法は以下のようなものである。複眼カメラを用いて、障害物(駐車車両)を観測し、2つの画像の対応点を照合する。そして、その相関関係に基づいて三角測量法により障害物の三次元データを生成する。つまり、平行ステレオ法を用いて障害物の境界点座標を抽出する。そして、得られた三次元データを自車両が移動する平面であるXY座標平面に投影し、投影された二次元データから直線を抽出する。駐車車両に対応して互いに直交する2つの直線を検出し、これらの直線により形成される矩形を障害物として検出する。
【0005】
【特許文献1】特開2003−63335号公報(第5〜11段落、第2図)
【特許文献2】特開2001−334897号公報(第25−29段落、第3−4図)
【特許文献3】特開2004−34946号公報(第3−12段落、第35−38段落、第10図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に記載の発明では、ソナーの検出範囲内に障害物が存在する場合に、その障害物までのおおよその距離を知ることはできる。しかし、検出範囲内のどの位置に障害物が存在するのかまでは検出しない。また、障害物の形状の特定をしておらず、例えば、車両が障害物に接触するか否かの判定精度に限界がある。
【0007】
特許文献3に記載の発明では、障害物の存在位置や概略形状を比較的詳細に分析している。しかし、障害物としての駐車車両を最終的に矩形として表現しているため、実際には曲面である駐車車両のコーナー部分は、余分に角張って検出されていることとなる。従って、矩形に基づいて駐車目標を設定すると、マージンを余分に設けることとなる。これは障害物との接触の可能性を低下させる上では良好なことである。しかし、駐車支援への期待がより高まる狭い場所において高精度に駐車支援する場合には、このマージンを減らす必要がある。
【0008】
本願発明は上記課題に鑑みてなされたもので、駐車区画周辺の障害物を精度良く検出し、障害物に接触することなく駐車可能な駐車空間を検出して、良好に運転操作を支援する駐車支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目定を達成するため、本発明に係る車両の周辺に存在する駐車車両を検出して前記車両の駐車を支援する駐車支援装置は下記の特徴構成を備える。
即ち、前記駐車車両の表面形状情報を検出する表面形状検出手段と、前記表面形状情報に基づいて前記駐車車両の輪郭形状を認識する形状認識手段と、前記車両の移動状態を検出する移動状態検出手段と、前記表面形状情報と前記輪郭形状と前記移動状態とに基づいて、前記車両と前記駐車車両との相対的な配置関係を演算する相対配置演算手段と、前記配置関係に基づいて前記車両が駐車可能な駐車空間を検出する駐車空間検出手段と、を備える。
【0010】
この特徴構成によれば、表面形状検出手段が物体の表面形状情報を検出し、この表面形状情報に基づいて、形状認識手段が駐車車両の輪郭形状を認識する。ここで、表面形状情報とは、本発明の駐車支援装置が搭載される車両(以下、適宜「自車両」と称する。)から見た駐車車両の表面の形状を示す情報である。表面形状情報の検出には、電波や超音波等を用いた反射型のセンサや、可視光や赤外光等を利用して画像データを得るイメージセンサ、カメラ(動画、静止画を問わず)を用いることができる。
【0011】
形状認識手段は、得られた表面形状情報に基づいて駐車車両の輪郭形状を認識する。また、表面形状情報を得る際に、表面形状情報と駐車車両との距離も情報として取得できている。そして、表面形状情報より駐車車両の輪郭形状が認識されているので、輪郭形状と自車両との距離も把握できる。表面形状情報の取得の際に自車両が動いていた場合、この移動状態は移動状態検出手段により検出されている。従って、表面形状情報、輪郭形状、移動状態により、自車両と駐車車両との相対的な配置関係を相対配置演算手段によって演算することができる。自車両の外形形状は既知であるから、駐車車両の近傍に自車両が駐車可能な空間があるか否かを駐車空間検出手段により検出することができる。例えば、駐車車両が複数あり、それら駐車車両と駐車車両とに挟まれた空間に自車両が駐車可能な空間が存在するか否かを検出することができる。
【0012】
上記特徴構成によれば、形状認識手段により輪郭形状を認識しているので、駐車区画周辺の障害物、即ち駐車車両を精度良く検出できる。そして、駐車空間検出手段は、駐車車両に接触することなく駐車可能な駐車空間を検出することができる。その結果、運転者に対して良好に運転操作を支援することのできる駐車支援装置を提供することができる。
【0013】
ここで、前記表面形状検出手段が、前記車両の移動に伴って前記表面形状情報を検出するものであり、前記形状認識手段が、前記表面形状情報と前記移動状態とに基づいて前記輪郭形状を認識すると好適である。
【0014】
表面形状検出手段が、自車両の移動に伴って前記表面形状情報を検出するものであると、表面形状検出手段には広範囲を走査する機能が不要となる。即ち、シングルビームセンサやポイントセンサなどの、ほぼ一点を検出対象とする距離センサを用いて、表面形状を検出できる。そして、本発明に係る駐車支援装置は、移動状態検出手段を備えているので、表面形状情報と移動状態とに基づいて、駐車車両の表面形状情報の分布を正確に知ることができる。その結果、形状認識手段は、良好に輪郭形状を認識することができる。
【0015】
さらに、本発明に係る駐車支援装置が、前記駐車空間を方形状にすると共に、前記車両(自車両)を前記駐車空間の範囲内に駐車させるための駐車基準を設定する駐車基準設定手段を下記に示す如く備えると好適である。
ここで、前記駐車基準設定手段は、前記駐車空間に前記車両(自車両)が進入を開始する進入口側の一辺に平行して前記駐車空間の前記進入口側に設けられた第一基準線と、この第一基準線に直交して所定位置に設けられた第二基準線と、を前記駐車基準として設定するものである。
そして、これら第一基準線及び第二基準線は、前記車両(自車両)の長軸方向の前後何れかの端部が前記第一基準線と一致し、前記車両の長軸方向の中心線である車軸が前記第二基準線と一致した状態で駐車を完了するように設定されるものである。
【0016】
車両の駐車に際しては、大きく2つの方法がある。一つは、車両が進行方向に対して90度程度の角度をもって駐車される車庫入れ駐車(Angle Parking)である。この駐車方法の場合、自車両の横には他の車両が駐車され、それぞれ車両の側面同士を対向させて駐車状態となる。車両の前後方向は、後端部、又は前端部が駐車空間に収まっていることが他の車両や通行人への配慮の上で好ましい。そこで、上記構成のように、駐車空間に対して自車両が進入を開始する進入口側の一辺に平行して、この進入口側に第一基準線を設ける。そして、この第一基準線と自車両の前端部又は後端部が一致した状態で駐車を完了するようにする。自車両が駐車空間に対して前進進入する場合には第一基準線と後端部とが一致し、後退進入する場合には第一基準線と前端部とが一致した状態で駐車を完了するようにする。このようにすれば、少なくとも検出した駐車空間から自車両が前後方向にはみ出すことなく駐車可能な駐車基準を設定することができる。また、前記第一基準線に直交して所定位置に設けられた第二基準線と、自車両の長軸方向の中心線である車軸とが一致した状態で駐車を完了するようにする。このようにすれば、第一基準線と第二基準線とによって、検出された駐車空間において自車両を駐車する基準を明確に示すことができ、良好に駐車運転を支援することができる。
【0017】
ここで、前記第二基準線が、前記駐車空間の中央を通るように定められると好適である。
【0018】
第二基準線が検出された駐車空間の中央を通るように定められると、自車両の左右方向に同等の隙間を有して、検出された駐車空間の中央に自車両を駐車させることができる。
【0019】
また、前記車両(自車両)が前記駐車空間より入出庫する際に必要となる前記駐車車両と前記車両(自車両)との間の余裕空間を前記駐車空間内に設けてもよい。そして、この場合に、前記第二基準線が前記余裕空間を除いた前記駐車空間に対して定められると好適である。
【0020】
例えば、車庫入れ駐車(Angle Parking)の状態から、自車両を出庫させる場合には、左右何れかの方向に向かって進行する。車両が左右方向に舵を切って進行する場合、先行する車輪の軌跡に対して後方にある車輪の軌跡は、舵を切る方向の内側を通るようになる。つまり、先行する車輪と後方にある車輪との間に、いわゆる内輪差と称される軌跡の差が生じる。そこで、駐車する前に出庫する方向が決まっている場合には、この内輪差を考慮して駐車車両と自車両との間に余裕空間を設けておくとよい。そして、検出された駐車空間からこの余裕空間を除き、残った駐車空間に対して、上記第二基準線を設けると、内輪差も考慮した上で、自車両の駐車基準を明確に示すことができる。同様に入庫の際にも下車側に余裕空間を設けておきたいような場合に駐車基準を明確に示すことができる。
【0021】
上述したように車両の駐車に際しては、大きく2つの方法がある。一方は、既に説明した車庫入れ駐車(Angle Parking)であり、他方は車両の進行方向(例えば道路)に平行に駐車するいわゆる縦列駐車(Parallel Parking)である。この駐車方法の場合、自車両の前後には他の車両が駐車され、それぞれ車両の前方と後方とを対向させて駐車状態となる。車両の車幅方向は、駐車空間に収まっていることが他の車両や通行人への配慮の上で好ましい。
【0022】
このような場合、第一基準線及び第二基準線が、前記車両(自車両)の車幅方向の左右何れかの端部が前記第一基準線と一致し、前記車両(自車両)の長軸方向の前後何れかの端部が前記第二基準線と一致した状態で駐車を完了するように設定されると好適である。
すでに述べたように、好適には、本発明に係る駐車支援装置は、前記駐車空間を方形状にすると共に、前記車両(自車両)を前記駐車空間の範囲内に駐車させるための駐車基準を設定する駐車基準設定手段を備える。
そして、第一基準線は、前記駐車基準設定手段が、前記駐車空間に前記車両(自車両)が進入を開始する進入口側の一辺に平行して前記駐車空間の前記進入口側に設定するものである。第二基準線は、前記駐車基準設定手段が、この第一基準線に直交して所定位置に設定するものである。
【0023】
第一基準線と自車両の側端部が一致した状態で駐車を完了するようにする。このようにすれば、少なくとも検出した駐車空間から自車両が車幅方向にはみ出すことなく駐車可能な駐車基準を設定することができる。また、前記第一基準線に直交して所定位置に設けられた第二基準線と、自車両の長軸方向の前後何れかの端部である前端部又は後端部とが一致した状態で駐車を完了するようにする。このようにすれば、第一基準線と第二基準線とによって、検出された駐車空間において自車両を駐車する基準を明確に示すことができ、良好に駐車運転を支援することができる。
【0024】
さらに、前記車両(自車両)が前記駐車空間より入出庫する際に必要となる前記駐車車両と前記車両(自車両)との間の余裕空間が前記駐車空間内に設けられるとよい。そして、前記第二基準線が、前記余裕空間を除いた前記駐車空間に対して定められると好適である。
【0025】
縦列駐車(Parallel Parking)の場合、自車両の前方にある駐車車両と自車両との間にある程度の隙間が無ければ、出庫の際に困難である。駐車空間において、前後方向の中央部分に自車両を駐車してもよいが、出庫の際に改めて一度後退させて、前方に隙間を空ける操作を有することになる。そこで、予め駐車の際に、自車両の前方にこの隙間に相当する余裕空間を設けるとよい。同様に入庫の際にも下車側に余裕空間を設けておきたいような場合に駐車基準を明確に示すことができる。
【0026】
また、前記形状認識手段が、下記の各部を有して構成されると好適である。即ち、前記表面形状情報を構成する標本群から任意の標本を抽出する標本抽出部と、抽出した前記標本に基づいて形状モデルを定める形状モデル設定部と、前記形状モデルに対する前記標本群の一致度を演算する一致度演算部と、この演算結果に基づいて、前記形状モデルが前記標本群に適合するか否かを判定する判定部とを有して構成されると好適である。
【0027】
形状認識手段は、表面形状検出手段より得られた標本群より、輪郭形状を認識する。ここで、標本群とは、表面形状情報を構成する個々のデータの集合体のことをいう。個々のデータとは、既に説明したように、例えば、反射型のセンサを用いた場合には、障害物の各場所で反射された信号を受信して得られた各場所に対応した情報である。画像データを利用した場合には、エッジ抽出、三次元変換等の種々の画像処理により得られたデータを用いることができる。このように、形状認識手段の種類に依らず、物体の表面形状を表すデータを標本として扱い、この標本の集合体を標本群と称する。
【0028】
標本抽出部は、この標本群より任意に(ランダムに)いくつかの標本を抽出する。そして、形状モデル設定部は、抽出した標本に基づいて形状モデルを定める。この形状モデルを定めるに際しては、抽出した標本より幾何学的に算出してもよいし、予め複数のテンプレートを用意して最適なものに当てはめる方法を用いてもよい。そして、一致度演算部は、標本群全体がこの形状モデルに対して、どの程度一致するかの一致度を演算する。判定部は、この演算結果に基づいて、具現化された形状モデルが標本群に適合するものか否かを判定する。
【0029】
このようにすると、任意に抽出した標本にノイズ性の標本が含まれていた場合には、定めた形状モデルと標本群との一致度が低くなる。従って、この形状モデルは標本群に適合しないと判定できる。ノイズ性の標本を含まずに形状モデルを定めた場合には、一致度は高くなる。従って、形状モデルは標本群に適合すると判定できる。このように、少ない演算量で、ノイズ性の標本を除去して対象となる駐車車両の輪郭形状を認識することができる。
【0030】
形状認識手段は、標本群よりも遥かに少ない標本数である、任意に抽出された標本より形状モデルを定めている。従って、標本の抽出や形状モデルを定める際に必要となる演算量は少ない。そのため、演算時間も短く、装置も大規模化しない。また、形状モデルに対する標本群の一致度は、各標本の空間上の座標を用いて、幾何学的に演算することができる。従って、この一致度の演算も少ない演算量で行うことができる。さらに、これらの演算量が少ないことより、繰り返し異なる形状モデルを定めて一致度を演算しても総演算量の増大を抑制することができる。その結果、高い精度で輪郭形状を認識することができる。
【0031】
上記目定を達成するための、本発明に係る車両の周辺に存在する静止物体を検出して前記車両の駐車を支援する駐車支援装置は下記の特徴構成を備える。
即ち、前記静止物体の表面形状情報を検出する表面形状検出手段と、前記表面形状情報に基づいて前記静止物体の輪郭形状を認識する形状認識手段と、前記車両の移動状態を検出する移動状態検出手段と、前記表面形状情報と前記輪郭形状と前記移動状態とに基づいて、前記車両と前記静止物体との相対的な配置関係を演算する相対配置演算手段と、前記配置関係に基づいて前記車両が駐車可能な駐車空間を検出する駐車空間検出手段と、を備える。
【0032】
この特徴構成によれば、表面形状検出手段が自車両から見た静止物体の表面の形状を示す情報である表面形状情報を検出する。形状認識手段は、得られた表面形状情報に基づいて静止物体の輪郭形状を認識する。また、表面形状情報を得る際に、表面形状情報と静止物体との距離も情報として取得できている。そして、表面形状情報より静止物体の輪郭形状が認識されているので、輪郭形状と自車両との距離も把握できる。表面形状情報の取得の際に自車両が動いていた場合、この移動状態は移動状態検出手段により検出されている。従って、表面形状情報、輪郭形状、移動状態により、自車両と静止物体との相対的な配置関係を相対配置演算手段によって演算することができる。自車両の外形形状は既知であるから、静止物体の近傍に自車両が駐車可能な空間があるか否かを駐車空間検出手段により検出することができる。
【0033】
上記特徴構成によれば、形状認識手段により輪郭形状を認識しているので、駐車区画周辺の障害物、即ち静止物体を精度良く検出できる。そして、駐車空間検出手段は、駐車車両に接触することなく駐車可能な駐車空間を検出することができる。例えば、静止物体が複数ある場合には、それら静止物体と静止物体とに挟まれた空間に自車両が駐車可能な空間が存在するか否かを検出することができる。その結果、運転者に対して良好に運転操作を支援することのできる駐車支援装置を提供することができる。
ここで、静止物体とは、上述した駐車車両の他、狭路に於ける壁面や、狭路上の壁面に隣接する電柱などがその一例である。
尚、この本発明に係る車両の周辺に存在する静止物体を検出して前記車両の駐車を支援する駐車支援装置は、上述した駐車車両を検出して前記車両の駐車を支援する駐車支援装置に関する作用効果、及び全ての追加的特徴とその作用効果を備えることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
〔システム構成〕
以下、車両の周辺に存在する駐車車両を障害物とする場合の、本発明の駐車支援装置の実施例を図面に基づいて説明する。但し、下記に説明する本発明の原理より明らかなように、障害物は駐車車両に限らず、狭路に於ける壁面や、狭路上の壁面に隣接する電柱など、種々の静止物体を対象とすることができる。
図1は、本発明に係る駐車支援装置の構成を模式的に示すブロック図である。距離センサ1は、本発明の表面形状検出手段に相当するものである。距離センサ1による検出結果は駐車支援ECU9に入力され、駐車支援の演算に用いられる。また、本発明の駐車支援装置が搭載された車両の移動状態を検出する移動状態検出手段6の検出結果も駐車支援ECU9に入力され、駐車支援の演算に用いられる。移動状態検出手段6は、例えば、車輪速センサ6aや舵角センサ6bである。車輪速センサ6aは、例えば回転センサなどにより構成される。前輪の左右(FL、FR)、後輪の左右(RL、RR)の4箇所に設置され、車輪の回転数や回転方向を検出する。操舵センサ6bは、ステアリングの回転角度より、車両10の舵角を検出する。尚、回転センサ6aの回転数の差により、車両10の舵角を演算してもよい。
【0035】
駐車支援ECU(Electronic Control Unit)9は、本発明の駐車支援装置の中核をなすものである。例えば、マイクロコンピュータやDSP(Digital Signal Processor)などの電子回路によって構成されている。駐車支援ECU9は、形状認識手段2、相対配置演算手段3、駐車空間検出手段4、駐車基準設定手段5など、本発明の駐車支援装置を構成する各機能を分担する手段を有している。形状認識手段2は、また、標本記憶部2a、標本抽出部2b、形状モデル設定部2c、一致度演算部2d、判定部2eなど、駐車車両の表面形状を良好に認識するための機能を分担する処理部を有している。尚、上記各手段、各処理部は、必ずしも物理的に異なる電子回路を示すものではなく、機能としての分担を示すものである。例えば、異なるプログラムを同一のCPUによって実行することにより、異なる機能を得るような場合も含むものである。
【0036】
図1に示すように、駐車支援装置は、演算した支援情報を運転者に報知するための報知手段7として、モニタ装置7aやブザー(スピーカ)7bなどを備えている。モニタ装置7aは、例えば車載カメラ(不図示)により撮影された画像に支援情報を重畳して、運転者に報知する。モニタ装置7aの画面は、タッチパネルになっている。この画面には、駐車支援ECU9又は他のECUに備えられたGUI(Graphic User Interface)制御手段(不図示)を介して種々のスイッチが表示される。運転者は、これらのスイッチを操作することにより、指示を駐車支援ECU9に入力することができる。例えば、運転者は、駐車支援モードの開始や、駐車形態の種類などをタッチパネルを使って入力することができる。
【0037】
駐車支援に際しては、距離センサ1を用いて車両の周辺に存在する駐車車両の表面形状情報を検出し(表面形状検出工程)、形状認識手段2を中心として駐車車両の輪郭形状を認識する(形状認識工程)、いわゆる前処理が行われる。そして、この前処理の結果を受けて相対配置演算手段3、駐車空間検出手段4、駐車基準設定手段5などにより、相対配置演算工程、駐車空間検出工程、駐車基準設定工程が実施され、好適な駐車支援が実現される。以下、理解を容易にするためそれぞれの工程に対応させて、その実施形態を説明する。
【0038】
〔表面形状検出工程〕
初めに、表面形状検出工程について説明する。表面形状検出手段としての距離センサ1は、例えばポイントセンサ、即ち、シングルビームセンサや超音波を利用したソナー等である。図2に示すように、本発明の駐車支援装置を搭載した車両10は、車両の側方に向けて備えられた距離センサ1を用いて駐車中の他の車両20(以下、駐車車両と称す。)と、自車両との距離を測定する。つまり、車両10は、駐車車両20のそばを図示u方向へ通過する際に、距離センサ1によって駐車車両20までの距離を計測する。尚、図2には、簡略のため、車両10の左側方にのみ距離センサ1を設けているが、当然両側方に設けていてもよい。
【0039】
距離センサ1は、車両10の移動に応じて駐車車両20との距離を計測する。このようにして得られた駐車車両20の表面形状情報は、図3に示すように、車両10の移動距離に応じた離散的なデータである。詳細は後述するが、こうして得られた離散的なデータの集合を標本群Sと称する。尚、車両10の「移動距離に応じて」には、「所定時間間隔に応じて」の意味も含むものである。例えば、車両10が等速で移動する場合には、所定時間間隔に応じて計測すれば、移動距離に応じて測定することになる。車両10の速度が変動する場合には、移動状態検出手段6より、車両10の速度情報を入手すればよい。車両10の移動速度、移動距離、移動時間は、線形的に定まる。また、車両10が舵を切られている場合にも同様に舵角センサ6bにより検出された操舵角を入手すれば、舵角による誤差を補正できる。このように、結果として概ね均等に表面形状情報を得ることができる方法であれば、どのような方法を用いて表面形状情報を取得してもよい。
【0040】
尚、距離センサ1が移動時間を計測するタイマ、移動距離を計測するエンコーダ、移動速度を計測する回転センサ等の付随するセンサを移動状態検出手段6などとは別に備えていてもよい。また、車両10の移動に伴って表面形状情報を取得するものではなく、例えば、水平方向に一定の角度を走査することにより、表面形状情報を検出するものであってもよい。
【0041】
検出される駐車車両20の表面形状情報は、図2及び図3に示した例のように駐車車両の前面に限らず、勿論後面でもよい。また、図4及び図5に示す例のように車両の側面が検出されるものでもよい。つまり、車両10が進行方向に対して90度程度の角度をもって駐車される車庫入れ駐車(Angle Parking)であるか、進行方向に対して平行に駐車される縦列駐車(Parallel Parking)であるかの駐車形態の違いによって、駐車車両20の必要な場所が検出される。尚、図5に示すように、車両10の側面ではなく、ドアミラーの端部が検出されるような場合もある。しかし、車両10の全長に対してドアミラーの端部は充分に少ない。従って、例えドアミラーの端部が検出されたとしても、車両10の側面の表面形状情報の取得に関してほとんど影響はない。また、ドアミラーよりも低い位置において車両10の側面の表面形状情報を検出した場合には、もちろんドアミラーの端部は検出されない。
【0042】
図3に示した例において、表面形状情報Sは駐車車両20のバンパー部の外形形状に沿った形で離散的に得られた計測データである。ここで、これら離散的に得られたデータの一群を標本群S(ラージエス)と称する。標本群Sは、輪郭形状の認識対象となるデータセットである。また、データセットを構成する一点一点のデータを標本s(スモールエス)と称する。
【0043】
距離センサ1によって測定された表面形状情報は、形状認識手段2に入力される(図1参照)。入力された表面形状情報(標本群S)は、図2(及び図4)に示すu方向及びv方向を軸とする二次元平面上で検出される。そして、図6に示すようにuvの二次元直交座標にマッピングされて、標本記憶部2aに記憶される。尚、説明を容易にするため、図中には全ての標本sを示していない。図6に示した標本中、黒点で示す標本sをインライア、白抜き点で示す標本sをアウトライアと称する。図中、標本s1、s13等はインライアであり、標本s2、s7、s10はアウトライアである。詳細は後述するが、インライアは駐車車両20の輪郭形状を構成する標本である。アウトライアは駐車車両20の輪郭形状から外れたいわゆるノイズ性の標本である。
【0044】
標本記憶部2aは、メモリで構成されている。本実施形態においては、マイクロコンピュータで構成された駐車支援ECU9に内蔵する形態を示している。勿論、マイクロコンピュータとは別体のメモリを用いて、いわゆる外付けの形態としてもよい。また、内蔵、外付けを問わず、レジスタ、ハードディスク等、他の記憶媒体を用いてもよい。いずれにせよ、標本記憶部2aに記憶された表面形状情報を用いて、以下に説明するように駐車車両20の表面形状が認識される。
【0045】
〔形状認識工程(1)〕
以下、図1のブロック図に加え、図9に示すフローチャートも利用して、得られた標本群Sより、駐車車両20の輪郭形状を認識する手順(形状認識工程)について説明する。
【0046】
標本抽出部2bは、標本群S(標本s1〜s13)より任意の標本si(iは標本番号)を数点抽出する(標本抽出工程、図9#1)。どの標本sを抽出するかについてはランダムに定める。好適には乱数を用いる。例えば、駐車支援ECU9に乱数発生器(不図示)を設け、乱数を生成する。あるいは、駐車支援ECU9が実行する乱数発生プログラムによって標本番号を定めてもよい。そして、生成した乱数を標本番号とする標本siを抽出する。
【0047】
抽出する標本の最小数は、認識したい対象形状によって異なる。例えば直線の認識をする場合には2点であり、二次曲線であれば5点である。本実施形態においては、図3に示すように駐車車両20のバンパー形状を二次曲線に近似するため、5点を抽出する。このようにして抽出された個々のデータ、標本sの集合は、データセットに対応する概念としてのサブセットである。
【0048】
続いて、このサブセット(ランダムに抽出した標本sの集合体)に基づいて形状モデル設定部2cが形状モデルを定める(形状モデル設定工程、図9#2)。
図7は、図6の散布図に示す標本群Sから任意に抽出した標本siより定めた形状モデルL(第一の形状モデルL1)と標本群Sとの一致度を演算する説明図である。この第一の形状モデルL1は、標本s1、s5、s8、s11、s13の5つの標本sに基づいて定められたものである。この形状モデルLは、演算負荷の軽い線形計算により容易に求めることができる。または、予め数種類のテンプレート形状を用意しておき、これらテンプレート形状の中より最適なものを選択するようにして定めてもよい。
【0049】
また、図7に示すように、形状モデルLの接線に対して直交する両方向に所定距離離れた点を形状モデルLに沿って結び、点線B1及びB2を定める。この点線B1及びB2に挟まれた部分が有効範囲Wとなる。そして、一致度演算部2dにおいて、定めた形状モデルLと、標本群Sとの一致度を演算する。具体的には、上記のように定めた有効範囲Wの中に、標本群Sを構成する各標本siが、どの程度含まれるかによって一致度を算出する(一致度演算工程、図9#3)。
【0050】
図7に示した第一の曲線モデルL1に対する有効範囲Wの中には、標本s2、s7、s10のアウトライアを除く全ての標本sが含まれている。従って、第一の形状モデルL1の標本群Sに対する一致度は、77%(10/13)となる。つまり、第一の形状モデルL1は、標本群Sを構成する各標本sにより、高い支持率(77%)で合意(コンセンサス)を得たということができる。
【0051】
次に、判定部2eにおいて、この一致度が所定のしきい値を超えているか否かを判定する(判定工程、図9#4)。つまり、形状モデルが標本群Sに適合するか否かを判定する。そして、適合している場合には抽出したサブセットより定めた形状モデル(第一の形状モデルL1)を認識結果として認定する(認定工程、図9#5)。即ち、第一の形状モデルL1を輪郭形状とする。例えば、しきい値が、75%と設定されているような場合には、第一の形状モデルL1を輪郭形状とする。しきい値を超えていない場合には、図9のフローチャートの処理#1に戻り、再度、別の標本sを抽出して新たなサブセットを構成し、同様の処理を行う。複数回処理#1〜#4を繰り返してもしきい値を超えないような場合には、駐車車両20が無い、と判断する。この回数は、予め規定しておけばよい。
【0052】
尚、本実施形態においては、理解を容易にするために標本群Sを構成する標本sの総数を13ケとしている。しきい値の値(75%)も、本実施形態の説明を容易にするための値である。従って、標本数、一致度の判定しきい値共に、本発明を限定する値ではない。例えば、標本数が多ければ、アウトライアに対するインライアの数は相対的に多くなり、上記の例よりも高いしきい値を設定することもできる。また、図9の#4では不等号で判定式を示したが、もちろん等号付きの不等号でもよい。ここでは、形状モデルが標本群Sに適合するか否かを判定できれば充分である。
【0053】
図8に示した形状モデルL(第二の形状モデルL2)では、サブセットとして標本s2、s4、s7、s10、s13が抽出されている。上述したように標本s2、s7、s10は、駐車車両20の輪郭形状から外れたいわゆるノイズ性の標本である。従って、駐車車両20の輪郭形状から見た場合には、アウトライアとなるべき、標本である。そのため、図8に示すように、第二の形状モデルL2に対する有効範囲Wから外れる標本sが多数存在する。つまり、第二の形状モデルL2は、アウトライアである標本s2、s7、s10を含むサブセットに基づいて定められているため、標本群Sに対する適合性が低くなる。第一の形状モデルL1と同様の方法により一致度を演算すると、その一致度は38%(5/13)となる。つまり、第二の形状モデルL2は、標本群Sを構成する各標本sにより、高い支持率で合意(コンセンサス)を得られていないということになる。
【0054】
上記2つの形状モデルL1及びL2が抽出されるような場合、認識結果となる輪郭形状は第一の形状モデルL1となる。第一の形状モデルL1を定めるに際しては、ノイズ性の標本sである標本s2、s7、s10は、未使用である。これらノイズ性の標本は、アウトライアとして扱われ、除去されたこととなる。即ち、上記説明したような少ない演算量で、非検出対象のデータ(アウトライア)が混在してもこれを除去し、安定して物体の形状を認識することができる。
【0055】
〔従来の形状認識方法との比較〕
このような方法を用いず、標本Sより輪郭形状を算出する方法は従来、種々提案されている。その一つは、最小自乗法である。最小自乗法では、データセットの全ての標本sを用いて、夫々の標本sが同一の重みとなって形状が計算される。その結果、上述したアウトライア(標本s2等)の影響を受けて、本来とは異なった輪郭形状を認識する。輪郭形状を認識した後に、データセット全体との一致度を再確認することも可能ではある。しかし、最小自乗法自体の演算負荷が比較的重い上、この再確認の結果により繰り返し最小自乗法による形状認識を行うとさらに演算負荷を重くすることになる。
【0056】
また別の方法として、特に直線の認識に好適なハフ(Hough)変換を利用する方法もある。ハフ変換はよく知られているように、直交座標(例えばuv平面)上に存在する直線は、極座標(ρ−θ空間)上では1点で交差する、という性質を利用したものである。その変換式は、
ρ=u・cosθ + v・sinθ
である。上記式より、理解できるように極座標空間でρやθの範囲を広げたり、細かい分解能を得たりしようとすると、それだけ演算量が増大する。つまり、一次記憶手段としての、メモリは大容量が要求され、計算回数も多くなる。
【0057】
これら従来の演算に比べ、本発明の「表面形状情報を構成する標本群Sから任意に抽出した標本sに基づいて定めた形状モデルLに対する標本群Sの一致度を演算する」方法は、演算量が少なく、必要となるメモリ容量も少ない。
【0058】
上記説明においては、形状モデルLと標本群Sとの一致度を調べ、この一致度が所定のしきい値を超えていれば、その形状モデルLを認識結果とする。つまり、最先にしきい値を超えた形状モデルLがそのまま認識結果となる。これに限らず、単にしきい値を超えただけで直ちにその形状モデルLを認識結果とはせず、複数個の形状モデルLを評価するようにしてもよい。具体的な手順については、以下に説明する。
【0059】
〔形状認識工程(2)〕
図10は、図6の散布図に示す標本群から輪郭形状を認識する方法の他の例を説明するフローチャートである。この方法では、サブセットを複数回抽出して形状モデルLを定め、その中で最も一致度の高かった形状モデルLを認識結果とするようにしている。以下、図10に基づいて、この方法について説明する。但し、処理#1〜#4は図9に示したフローチャートと同様であるので、説明を省略する。
【0060】
図10に示す方法では、サブセットを複数回繰り返して抽出するので、繰り返し回数を一時記憶する。形状認識工程の開始に当たって、まず初めにこの一時記憶する繰り返し回数をクリアする(初期化工程、図10#0)。以下、図9に示した方法と同様に、標本抽出工程(#1)にて、標本群Sよりランダムに標本sを抽出してサブセットを作る。次に、形状モデル設定工程(#2)にて、このサブセットに基づいて形状モデルLを定める。そして、一致度演算工程(#3)にて、形状モデルLと標本群Sとの一致度を演算し、判定工程(#4)にて、一致度が所定のしきい値を超えているか否かを判定する。
【0061】
判定の結果、しきい値を超えていた場合には、先に定めた形状モデルLとこの形状モデルLに対する一致度を一時記憶部(不図示)に記憶する(記憶工程、#41)。次に、この一致度が、さらに高い値に設定した第二のしきい値を超えているか否かを判定する(第二判定工程、#44)。この第二のしきい値は、例えばほぼ満点に近いような高い一致度である。非常に高い一致度を示している場合には、サブセットを繰り返し抽出する必要がないため、この工程が設けられている。第二判定工程(#44)において、第二のしきい値を超えていると判定されると、形状モデル設定工程#2で定めた形状モデルL(=記憶工程(#41)で記憶した形状モデルL)を認識結果とする(認定工程、#5)。
【0062】
判定工程(#4)又は第二判定工程(#44)において、しきい値(第二のしきい値)を超えていないと判定されると、計数工程(#42)へ移行する。つまり、一つの形状モデルLに対する評価が完了したので、繰り返し回数をインクリメントする。
【0063】
次に、繰り返し回数が所定の回数に達したか否か(超えたか否かでもよい)を判定する(離脱判定工程、#43)。所定の回数に達していなければ、標本抽出工程(#1)に戻り、以下判定工程(#4)までを行って、新たな形状モデルLの評価を行う。所定の回数に達していた場合には、記憶されている形状モデルLの内、最も一致度の高かった形状モデルLを選択し、これを認識結果としての輪郭形状とする(認定工程、#51)。ここで、判定工程(#4)において一致度のしきい値を超えたものが一つも無かったような場合には、認定工程(#51)において該当無しと判断する。
【0064】
このように、図9に示す方法、図10に示す方法共に、サブセットに基づいて定めた形状モデルLを輪郭形状と認定している。一般に少ない標本数に基づいて定めた形状モデルLは、正確な輪郭形状を再現するものではない、とも考えられる。しかし、本発明においては、結果的に形状モデルLと標本群Sの全標本との一致度を評価していることになる。従って、形状モデルLはほぼ正確に輪郭形状を再現(認識)できていると考えてよい。このように、サブセットを構成する少ない標本数から定めた形状モデルLが輪郭形状を再現できることは、演算量の削減に大きく貢献している。
【0065】
上述したように、形状モデルLをそのまま認識結果として輪郭形状と認定することは、演算量の削減に大きく貢献する。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。駐車支援ECU9などの演算手段の能力に余裕のある場合などでは、輪郭形状を再計算してもよい。
【0066】
例えば、一致度がしきい値を超えた形状モデルLを基準とすれば、標本群Sを構成する標本sの夫々をインライア、アウトライアとして定義することができる。認定工程では、このインライア、アウトライアを認定する。そして、インライアと認定された全ての標本sを対象として最小自乗法等を用いて形状を再計算する(再計算工程)。上述したように最小自乗法ではノイズ性の標本sの影響を受けて、形状を正しく再現できない場合がある。しかし、この再計算工程においては、ノイズ性の標本sはアウトライアとして除去されているため、正確な輪郭形状の再現が可能となる。
【0067】
〔相対配置演算工程〕
図11は、図2の場合に検出される駐車車両20の表面形状情報(標本群S)をワールド座標に投影した例を示す説明図である。ここで、ワールド座標とは、XY二次元座標の基準座標である。相対配置演算手段3は、ワールド座標上において、現在位置を含む車両10の移動軌跡LCと、駐車車両20の表面形状情報である標本群Sとの相対配置関係が定義される。
【0068】
一方、上述したように、標本群Sに基づいて輪郭形状が認識されている。図12は、認識された駐車車両20の前端又は後端の輪郭形状から駐車車両20を認定する方法を示す説明図である。図12に示すように、輪郭形状Eに基づいて駐車車両20の形状が推定される。例えば、図に示すように、輪郭形状Eが駐車車両の前端、又は後端の形状として認識された場合は、以下のように駐車車両20の形状を推定する。輪郭形状Eの中央部における接線に直交する線(法線)を中心線CLとし、この中心線CLの方向を駐車車両20の方向Dとする。即ち、この場合、駐車車両20の長軸方向の中心である車軸が中心線CLであるとする。駐車車両20の全幅は、検出した輪郭形状Eより定まり、駐車車両20の全長は長軸方向に所定の全長値FLであると定義する。この全長は、正確に検出される必要はなく、一般的な車両の全長である4〜5m程度の値に設定すればよい。距離センサ1は、対面する駐車車両20の前端部や後端部の表面形状は良好に検出可能である。つまり、駐車車両20の全幅は正確に検出できる。しかし、奥行き方向である全長を正確に検出することは、困難である。従って、標準的な車両の全長を用いている。
【0069】
また、図13に示すように、輪郭形状Eが駐車車両20の側面の形状として認識された場合は、以下のように駐車車両20の形状を推定する。輪郭形状Eの中央部分における接線に直交する線(法線)を中心線CLとし、この中心線CLに直交する方向Dを駐車車両20の方向とする。駐車車両20の全長は、検出した輪郭形状Eより定まる。駐車車両20の全幅は所定の全幅値FWであると定義する。上述したように、この全幅は、正確に検出される必要はなく、一般的な車両の全幅である1.6〜1.8m程度の値に設定すればよい。
【0070】
〔駐車空間検出工程〕
このようにして、ワールド座標上において、車両10と駐車車両20との相対配置関係がわかり、駐車車両20の形状が推定できる。従って、図14に示すように車両10の駐車空間PEがワールド座標上において検出される。図14に実線で示すように、ワールド座標上で正確に対応付けられているのは、自車両である車両10の形状、位置、方向と、駐車車両20a及び20bの前端部の輪郭形状Eである。しかし、図12及び図13に基づいて説明したように、駐車車両20a及び20bの概略形状は、図14に破線で示すように推定されている。駐車空間検出手段4は、駐車車両20aと20bとの間に挟まれた空間が、車両10を駐車させるために充分であるとワールド座標上で確認すると、これを駐車空間PEとして検出する。
【0071】
〔駐車基準設定工程〕
駐車空間PEが検出されると、駐車基準設定手段5が、この駐車空間PEの範囲内に車両10を良好に駐車完了させるための駐車基準Pを設定する。
図15は、図2に示したようないわゆる車庫入れ駐車(Angle Parking)の場合の駐車基準Pの一例である。駐車空間PEの進入口側の一辺とほぼ駐車空間PEの進入口側の一辺に平行して、駐車空間PEの進入口側に第一基準線P1が設けられている。そして、この第一基準線P1に直交した第二基準線P2が所定位置に設けられている。図15に示した例では、駐車空間PEの中央を通るように第二基準線P2が設けられている。
【0072】
ここで、車両10の運転者は、第二基準線P2が車両10の長軸方向の中心線である車軸Cと一致するように後退運転する。そして、運転者は、第一基準線P1を車両10の長軸方向の前端部Fと一致させて、車両10の駐駐を完了する。そうすると、運転者は、車両10を駐車空間PE内に良好に駐車することができる。つまり、駐車基準Pに従って運転操作することによって、運転者が良好に車両10を駐車させることができる駐車支援装置を得ることができる。
【0073】
尚、もちろん、駐車基準Pは、上記の例に限るものではない。車両10の全長を考慮して、適宜第一基準線P1の位置を変更してもよい。車両10の全長が短ければ、駐車空間PEの進入口から遠ざけてよい。逆に車両10の全長が長い場合には、駐車空間PEの進入口側に近づけてもよい。車両10が駐車空間PEからはみ出すことが無ければ充分であるので、方形状である駐車空間PEの進入口側の一辺と一致するものであってもよい。
【0074】
また、第二基準線P2も適宜、位置を変更してよい。例えば、出庫の方向によって内輪差を生じる側を広く空けたい場合には、第二基準線P2を駐車空間PEの中央からずらしてもよい。つまり、図16に示すように、出庫する際に必要となる駐車車両20と車両10との間の余裕空間Mを駐車空間PEの中に設ける。そして、この余裕空間Mを除いた駐車空間PEに対して、その中央に第二基準線P2を設けてもよい。また、余裕空間Mは、出庫の際に必要か否かに拘らず、運転席側を広く空けたいや、逆に助手席側を広く空けたい場合に設けてもよい。幼児や老人などの乗り降りに充分な空間を確保したい場合に有効である。また、図16に示す例において、余裕空間Mを駐車空間PEの前後方向の何れかに設けて、第一基準線P1を変更してもよい。例えば、車両10のトランクやカーゴルームから、車椅子、ベビーカーといった器具の出し入れに充分な空間を確保したい場合に有効である。
【0075】
図17は、図4に示したようないわゆる縦列駐車(Parallel Parking)の場合に設定される駐車基準Pの一例を示す図である。駐車空間PEの進入口側の一辺とほぼ駐車空間PEの進入口側の一辺に平行して、駐車空間PEの進入口側に第一基準線P1が設けられている。そして、この第一基準線P1に直交した第二基準線P2が所定位置に設けられている。図17に示した例では、車両10が駐車空間PEから出庫する際のゆとりとして、駐車車両20と車両10との間に余裕空間Mが設けられている。そして、この余裕空間Mを除いた駐車空間PEに対して、第二基準線P2を設けている。図17に示した例では、余裕空間Mを除いた駐車空間PEの一つの辺と一致するように第二基準線P2が設けられている。
【0076】
ここで、車両10の運転者は、第一基準線P1が車両10の長軸方向の側端部Tと一致するように後退運転する。そして、運転者は、第二基準線P2を車両10の長軸方向の前端部Fと一致させて、車両10の駐駐を完了する。そうすると、運転者は、車両10を駐車空間PE内に良好に駐車することができる。つまり、駐車基準Pに従って運転操作することによって、運転者が良好に車両10を駐車させることができる駐車支援装置を得ることができる。また、第一基準線P1を設定した上で、車両10の車軸Cと一致する第三基準線を設定してもよい。この場合、運転者は、上述した車庫入れ(Angle Parking)と同様に、第三基準線が車両10の長軸方向の中心線である車軸Cと一致するように後退運転することができる。基準線Pに基づいて、車両10のモニタ装置7aにガイド線を示すことができる。この際、駐車方法に拘らず、車両10の車軸Cに対応するガイド線が示されると、運転者にとって利便性の高いものとなる。尚、本例において、第三基準線は、第一基準線P1を幾何学的に移動させたものに過ぎない。従って、第三基準線を用いる本実施形態は、本発明の技術範囲に属するものである。
【0077】
〔運転者への報知〕
上述したように、モニタ装置7aに駐車基準Pに基づくガイド線を示すことができる。以下に、運転支援の結果を運転者に報知するその他の例を示す。図18は、図4に示したような縦列駐車(Parallel Parking)の場合に、検出した駐車空間PEをモニタ装置7aに表示して運転者に報知する例を示している。これは、車両10に搭載されたバックカメラ(不図示)により撮影された車両周辺画像に検出した駐車空間PEを重畳して表示する例である。運転者は、モニタ装置7aを見て、駐車可能な空間が存在することを確認することができる。また、この画面上にさらに、駐車基準Pに基づくガイド線を表示させてもよい。
【0078】
図19及び図20は、運転者によって運転される車両10の予想移動軌跡ELを算出し、駐車車両20との干渉の有無を運転者に報知する例を示すものである。車両10の予想移動軌跡ELは、車輪速センサ6aや、舵角センサ6bなどの移動状態検出手段6による検出結果に基づいて、駐車支援ECU9が演算する。図19は図2に示したような車庫入れ駐車(Angle Parking)の場合、図20は図4に示したような縦列駐車(Parallel Parking)の場合の例である。
【0079】
上述したように、駐車車両20の端部のうち、車両10に近い部分については、その輪郭形状Eが、ほぼ忠実に検出されている。従って、運転支援ECU9は、車両10と駐車車両20とが干渉する可能性について、精度良く判定することができる。判定の結果、車両10と駐車車両20とが干渉する可能性がある場合には、モニタ装置7aやブザー7bを介して、それを運転者に報知する。また、ステアリング制御部8aに伝達して舵角を変更させたり、ブレーキ制御部8bに伝達して車両10を減速させたり、停止させたりしてもよい。
【0080】
以上、説明したように本発明によって、駐車区画周辺の障害物を精度良く検出し、障害物に接触することなく駐車可能な駐車空間を検出して、良好に運転操作を支援する駐車支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係る駐車支援装置の構成を模式的に示すブロック図
【図2】本発明の駐車支援装置を搭載した車両が駐車車両の表面形状情報を検出する例を示す説明図
【図3】図2の場合に検出される駐車車両の表面形状情報の例を示す説明図
【図4】本発明の駐車支援装置を搭載した車両が駐車車両の表面形状情報を検出する別の例を示す説明図
【図5】図4の場合に検出される駐車車両の表面形状情報の例を示す説明図
【図6】表面形状情報の測定結果を二次元直交座標上にマッピングした散布図
【図7】図6の散布図に示す標本群から任意に抽出した標本より定めた第一の形状モデルと標本群との一致度を演算する説明図
【図8】図6の散布図に示す標本群から任意に抽出した標本より定めた第二の形状モデルと標本群との一致度を演算する説明図
【図9】図6の散布図に示す標本群から輪郭形状を認識する方法の一例を説明するフローチャート
【図10】図6の散布図に示す標本群から輪郭形状を認識する方法の他の例を説明するフローチャート
【図11】図2の場合に検出される駐車車両の表面形状情報をワールド座標に投影した例を示す説明図
【図12】認識された駐車車両の前端又は後端の輪郭形状から駐車車両を認定する方法を示す説明図
【図13】認識された駐車車両の側面の輪郭形状から駐車車両を認定する方法を示す説明図
【図14】ワールド座標において駐車空間を検出する例を示す説明図
【図15】駐車空間において駐車基準を設定する例を示す説明図
【図16】図15に示す例の変形例を示す説明図
【図17】駐車空間において駐車基準を設定する別の例を示す説明図
【図18】図16に示す駐車空間をモニタ装置に表示する一例を示す説明図
【図19】自車両の予想移動軌跡と駐車車両とが干渉する場合の例を示す説明図
【図20】自車両の予想移動軌跡と駐車車両とが干渉する場合の他の例を示す説明図
【符号の説明】
【0082】
1 距離センサ(表面形状検出手段)
2 形状認識手段
(2a:標本記憶部、2b:標本抽出部、2c:形状モデル設定部、2d:一致度演算部、2e:判定部)
3 相対配置演算手段
4 駐車空間検出手段
5 駐車基準設定手段
6 移動状態検出手段
9 駐車支援ECU
10 車両
20 駐車車両
PE 駐車空間
P 駐車基準(P1:第一基準線、P2:第二基準線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺に存在する駐車車両を検出して前記車両の駐車を支援する駐車支援装置において、
前記駐車車両の表面形状情報を検出する表面形状検出手段と、
前記表面形状情報に基づいて前記駐車車両の輪郭形状を認識する形状認識手段と、
前記車両の移動状態を検出する移動状態検出手段と、
前記表面形状情報と前記輪郭形状と前記移動状態とに基づいて、前記車両と前記駐車車両との相対的な配置関係を演算する相対配置演算手段と、
前記配置関係に基づいて前記車両が駐車可能な駐車空間を検出する駐車空間検出手段と、を備える駐車支援装置。
【請求項2】
前記表面形状検出手段は、前記車両の移動に伴って前記表面形状情報を検出するものであり、前記形状認識手段は、前記表面形状情報と前記移動状態とに基づいて前記輪郭形状を認識する請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項3】
前記駐車空間を方形状にすると共に、前記車両を前記駐車空間の範囲内に駐車させるための駐車基準を設定する駐車基準設定手段が備えられ、
前記駐車基準設定手段は、前記駐車空間に前記車両が進入を開始する進入口側の一辺に平行して前記駐車空間の前記進入口側に設けられた第一基準線と、この第一基準線に直交して所定位置に設けられた第二基準線と、を前記駐車基準として設定するものであり、
これら第一基準線及び第二基準線は、前記車両の長軸方向の前後何れかの端部が前記第一基準線と一致し、前記車両の長軸方向の中心線である車軸が前記第二基準線と一致した状態で駐車を完了するように設定される請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項4】
前記駐車空間を方形状にすると共に、前記車両を前記駐車空間の範囲内に駐車させるための駐車基準を設定する駐車基準設定手段が備えられ、
前記駐車基準設定手段は、前記駐車空間に前記車両が進入を開始する進入口側の一辺に平行して前記駐車空間の前記進入口側に設けられた第一基準線と、この第一基準線に直交して所定位置に設けられた第二基準線と、を前記駐車基準として設定するものであり、
これら第一基準線及び第二基準線は、前記車両の車幅方向の左右何れかの端部が前記第一基準線と一致し、前記車両の長軸方向の前後何れかの端部が前記第二基準線と一致した状態で駐車を完了するように設定される請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項5】
前記第二基準線は、前記駐車空間の中央を通るように定められる請求項4に記載の駐車支援装置。
【請求項6】
前記車両が前記駐車空間より入出庫する際に必要となる前記駐車車両と前記車両との間の余裕空間が前記駐車空間内に設けられ、前記第二基準線は、前記余裕空間を除いた前記駐車空間に対して定められる請求項3〜5に記載の駐車支援装置。
【請求項7】
前記形状認識手段は、
前記表面形状情報を構成する標本群から任意の標本を抽出する標本抽出部と、
抽出した前記標本に基づいて形状モデルを定める形状モデル設定部と、
前記形状モデルに対する前記標本群の一致度を演算する一致度演算部と、
この演算結果に基づいて、前記形状モデルが前記標本群に適合するか否かを判定する判定部と、を有する請求項1〜5の何れか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項8】
車両の周辺に存在する静止物体を検出して前記車両の駐車を支援する駐車支援装置において、
前記静止物体の表面形状情報を検出する表面形状検出手段と、
前記表面形状情報に基づいて前記静止物体の輪郭形状を認識する形状認識手段と、
前記車両の移動状態を検出する移動状態検出手段と、
前記表面形状情報と前記輪郭形状と前記移動状態とに基づいて、前記車両と前記静止物体との相対的な配置関係を演算する相対配置演算手段と、
前記配置関係に基づいて前記車両が駐車可能な駐車空間を検出する駐車空間検出手段と、を備える駐車支援装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−30700(P2007−30700A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217369(P2005−217369)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)