駐車支援装置
【課題】駐車時の後退開始位置を乗員が簡単に設定可能な駐車支援装置を提供する。
【解決手段】車両1の前方の情景を撮影し、撮影画像に基づく画面を表示部に表示する。所定の停止位置S1から車両1よりも前方に位置し、駐車目標位置S4への駐車のために車両1が後退を開始する後退開始位置S2を示すマーカを画面に重畳表示させる重畳部を備える。マーカの画面上の位置は、乗員がステアリングを操作することによって調整される。
【解決手段】車両1の前方の情景を撮影し、撮影画像に基づく画面を表示部に表示する。所定の停止位置S1から車両1よりも前方に位置し、駐車目標位置S4への駐車のために車両1が後退を開始する後退開始位置S2を示すマーカを画面に重畳表示させる重畳部を備える。マーカの画面上の位置は、乗員がステアリングを操作することによって調整される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駐車時の運転操作を支援する駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような駐車支援装置として、下記に出典を示す特許文献1に記載された車両の自動操舵装置がある。この自動操舵装置により、車両は、スタート位置から前進し、折り返し位置を経て後進して、目標位置まで案内される。自動操舵装置は、車両が停止状態で目標位置を設定されると、その停車位置をスタート位置と設定する。これにより、スタート位置と目標位置とが定まるので、自動操舵装置は折り返し位置を設定して、前進移動経路、後進移動経路を算出する。車両の現在位置や、駐車目標位置、折り返し位置、スタート位置から駐車位置までの移動経路などは、液晶モニターに表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−1177号公報(第35〜42段落、図2等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記自動操舵装置は、スタート位置を定めれば、乗員は車両をクリープ走行させるだけで円滑に車両を駐車させることができる。しかし、折り返し位置も、自動操舵装置に任せられているため、前進移動経路上に障害物が存在したり、狭い駐車場で前進移動経路が確保できなかったりする場合には、自動操舵を利用することができない。このような自動操舵装置を含む駐車支援装置は、特に駐車運転が得意ではない乗員に必要なものである。そのような乗員にとっては、狭い駐車場などでこそ、駐車支援装置を利用したいという要望が強い。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みて創案されたもので、駐車のために後退を開始する位置を車両の乗員が簡単に設定可能な駐車支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る駐車支援装置は、
車両前方の情景を撮影する撮影部と、
撮影された撮影画像に基づく画面を表示する表示部と、
所定の停止位置から前記車両よりも前方に位置し、駐車目標位置への駐車のために前記車両が後退を開始する後退開始位置を示すマーカを前記画面に重畳表示させる重畳部と、を備え、
前記マーカの前記画面上の位置は、乗員がステアリングを操作することによって調整されることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、乗員は、後退開始位置を示すマーカが重畳表示された撮影画像に基づく画面により後退開始位置を設定することができる。従って、乗員や障害物や、駐車場の広さなどを考慮して簡単に後退開始位置を設定することができるので、利便性を損なうことなく、簡単に設定ができる。
【0008】
また、本発明に係る駐車支援装置は、さらに、前記乗員がステアリングを操作することによって前記マーカの色が変更される。
【0009】
この構成によれば、乗員が、自身の操作により後退開始位置の設定が適切に行われたことを認識しやすくすることができる。したがって、利便性の良い駐車支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】車両の一部を切り欠いて運転席を見た斜視図
【図2】車両前部の斜視図
【図3】運転席前方の説明図
【図4】車両の各部の構成を模式的に示す平面図
【図5】本発明の駐車支援装置の構成を模式的に示すブロック図
【図6】車両を駐車位置に誘導する進路とガイド情報の位置を示す図
【図7】モニタ画面の表示例を示す図
【図8】モニタ画面の表示例を示す図
【図9】モニタ画面の表示例を示す図
【図10】停止位置、後退開始位置、駐車目標位置の基準を示す図
【図11】自車両の位置を検出するための計算方法を説明する図
【図12】モニタ画面の表示例を示す図
【図13】モニタ画面の表示例を示す図
【図14】モニタ画面の表示例を示す図
【図15】モニタ画面の表示例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図4に車両1の基本構成を示す。
運転席3のステアリング4は回転操作力を前車輪2fに伝えて駆動操向を行うパワーステアリングユニットPSと連動している。車体前部にはエンジンEと、このエンジンEからの動力を変速して前車輪2fに伝えるにトルクコンバータやCVT等で成る変速機構Tとが配置されている。運転席3の近傍には走行速度を制御するアクセル操作部材としてのアクセルペダル7と、前車輪2f及び後車輪2rのブレーキ装置BKを操作して前車輪2f及び後車輪2rに制動力を作用させるブレーキペダル8とが並列配置されている。
【0012】
運転席3の近傍のコンソールの上部位置には表示面にタッチパネル10Tを形成したモニタ10(表示部)が備えられている。このモニタ10には、スピーカ11が備えられている。尚、スピーカ11はパネル5や、ドアの内側に備えられても良い。車両1の前端にはフロントカメラ12(撮影部)が備えられ、車両1の後端にはリヤカメラ13が備えられている。モニタ10は、バックライトを備えた液晶式のものである。もちろん、プラズマ表示型のものやCRT型のものであっても良い。また、タッチパネル10Tは、感圧式のものや静電式のものが使用され、指等の接触位置をロケーションデータとして出力する。尚、モニタ10はナビゲーションシステムの表示装置として用いるものを兼用しても良い。
【0013】
フロントカメラ12及びリヤカメラ13はCCD(charge coupled device)やCIS(CMOS image sensor)などの撮像素子を内蔵するとともに、撮影した情報を動画情報として出力するデジタルカメラである。フロントカメラ12は車両1の前方に向けてやや俯角を有して設置され、リヤカメラ13は車両1の後方に向けてやや俯角を有して設置されている。尚、夫々のカメラは、リアルタイムで動画を出力する性能を有するものである。
【0014】
ステアリング4の操作系にはステアリングセンサ14が備えられ、ステアリング操作方向と操作量とが計測される。シフトレバー6の操作系にはシフト位置センサ15が備えられ、シフト位置が判別される。アクセルペダル7の操作系にはアクセルセンサ16が備えられ、操作量が計測される。ブレーキペダル8の操作系にはブレーキセンサ17が備えられ、操作の有無などを検出する。
【0015】
移動距離センサとして、前車輪2f及び後車輪2rの少なくとも一方の回転量を計測する回転センサ18が備えられている。もちろん、変速機構Tにおいて、駆動系の回転量から車両1の移動量を計測してもよい。また、車両1には駐車支援を含む走行制御を行うECU(electronic control unit)20が配置されている。
【0016】
図5は、本発明の駐車支援装置の構成を模式的に示すブロック図である。本発明の駐車支援装置は、ECU20を中核として構成される。ECU20は、情報の入出力を行う入出力インタフェース21を備えると共に、この入出力インタフェース21からの情報を処理するマイクロプロセッサを備えている。もちろん、入出力インタフェース21の一部又は全てがマイクロプロセッサに含まれていてもよい。ECU20は、マイクロプロセッサを中核部品とする電子回路により構成されている。
【0017】
図に示すように、タッチパネル10T、フロントカメラ12、リヤカメラ13、ステアリングセンサ14、シフト位置センサ15、アクセルセンサ16、ブレーキセンサ17、回転センサ18などからの情報が入力される入力系が形成される。また、モニタ10、スピーカ11、パワーステアリングユニットPS、変速機構T、ブレーキ装置BKに制御信号を出力する出力系が形成される。
尚、フロントカメラ12は、車両1の前方の情景を撮影する撮影部に相当する。また、モニタ10は、撮影された撮影画像を表示する表示部に相当する。
【0018】
ECU20は、入出力インタフェース21と接続された各機能部を有している。この接続は、例えば、マイクロプロセッサ内のデータバス、アドレスバス、コントロールバス、メモリなどを介して行われるが、説明を容易にするため、詳細な図示及び説明は省略する。
図に示すように、ECU20は、駐車目標位置設定部22と、後退開始位置設定部23と、前進経路演算部24と、後退経路演算部25と、重畳部26と、移動状態検出部27と、誘導部28とを有している。本実施形態においては、これら各機能部は、マイクロプロセッサとプログラムとの協働によって実現される場合を例示している。しかし、論理回路などを用いたハードウェアで構成することも可能である。
以下、車両1を駐車位置に誘導する進路とガイド情報の位置を示す図6も参照して、各機能部の概略を説明する。
【0019】
駐車目標位置設定部22は、フロントカメラ12の撮影画像に基づき、所定の停止位置S1において車両1の駐車目標位置S4を設定する。
後退経路演算部25は、所定の停止位置S1から車両1よりも前方に位置し、駐車のために車両1が後退を開始する後退開始位置S2から駐車目標位置S4までの後退誘導経路C2を演算する。
後退開始位置設定部23は、フロントカメラ12の撮影画像に基づき、後退開始位置S2を車両1の乗員の指示により所定の設定範囲内において設定する。この「所定の設定範囲」については後述する。
前進経路演算部24は、所定の停止位置S1から後退開始位置S2までの前進誘導経路C1を演算する。
移動状態検出部27は、車両1の移動状態を検出する。「移動状態」については後述する。
誘導部28は、前進誘導経路C1と移動状態とに基づいて所定の停止位置S1から後退開始位置S2まで車両1を誘導する。また、誘導部28は、後退誘導経路C2と移動状態とに基づいて後退開始位置S2から駐車目標位置S4まで車両1を誘導する。
重畳部26は、後退開始位置を示すマーカを含む種々のメッセージやガイド用のマーカをフロントカメラ12の撮影画像に重畳させる重畳工程を実施する。これらのメッセージやガイド用マーカについては、その用途を含めて後述する。例えば、後退開始位置設定部23は、後退開始位置を示すマーカに基づいた車両1の乗員の指示により後退開始位置S2を設定する。
【0020】
以下、図6に示すように車両1を駐車位置Pに駐車する場合を例として、本発明の駐車支援装置の手順を説明する。
【0021】
〔駐車目標位置設定工程〕
図7は、図6に示す位置S0にいる車両1のフロントカメラ12による撮影画像、及び重畳部26により生成されたメッセージやマーカが表示されたモニタ10の画面を示している。ここでは、既に駐車支援装置が起動されている状態を示している。また、駐車支援には、大別して車庫入れ駐車(garage parking)タイプと、縦列駐車(parallel parking)タイプとがあるが、本実施形態では既に車庫入れタイプの駐車支援が選択されているものとする。この時点では、左右何れの方向への駐車を行うかは選択されていない。
【0022】
図7において、前方のマーカM2は後退開始位置S2を示す後退開始位置マーカである。この状態では、後退開始位置マーカM2は、画面中央の初期位置に重畳表示されている。左右のマーカM1は駐車目標位置を設定するための駐車目標位置マーカである。図7では、左右何れの方向への駐車を行うかは選択されていない。従って、タッチパッド10Tを備えるモニタ10の画面には、「左車庫入れ」及び「右車庫入れ」のメッセージボタン41及び42が示されている。乗員が何れかのメッセージボタン41、42にタッチすることで、車庫入れの方向が決定される。あるいは、後述するようにステアリング4の操舵方向によって、「左車庫入れ」と「右車庫入れ」とを切り替えるようにしてもよい。尚、駐車支援を中止する場合には、「中止」のメッセージボタン43にタッチすることによって駐車支援を終了することができる。「中止」のメッセージボタン43については以下同様である。
【0023】
車両1が図6に示す所定の停止位置S1に達すると、図8に示すように駐車枠のラインL1と、右側の駐車目標位置マーカM1とが重なって表示される。乗員は、この位置で車両1を停止させる。車両1の停止位置S1によってはラインL1と駐車目標位置マーカM1とがずれる場合があるが、このずれはカーソル45を操作することによって調整することが可能である。既に車庫入れの方向が決定されている場合には、「決定」のメッセージボタン46が表示されている。このメッセージボタン46をタッチすることによって駐車目標位置S4が設定される。この時、左側の駐車目標位置マーカM1は、淡く表示される、あるいは消去されていてもよい。
【0024】
〔後退開始位置設定工程〕
駐車目標位置S4が設定されると、車両1が停車した状態で後退開始位置S2が設定される。後退開始位置マーカM2の画面上の位置は、乗員がステアリング4を操作することによって調整される。本実施形態の場合には、進行方向に向かって右側に駐車するので、左前方に後退開始位置S2を設定するべく、ステアリング4が反時計周りに操作される。図9に示すように、モニタ10の画面上において車両1の正面位置に重畳されていた後退開始位置マーカーM2は、ステアリング4の操作に伴って左方向に移動する。
【0025】
このように、車庫入れの方向によって後退開始位置S2の設定のためのステアリング4の操舵方向が定まる。従って、上述したように「左車庫入れ」及び「右車庫入れ」のメッセージボタン41及び42を用いず、操舵方向によって、車庫入れの方向を切り替えてもよい。
【0026】
後退開始位置マーカM2は、現在の停止位置S1からの前進誘導経路C1が成立し得る位置に描画される。前進誘導経路C1は、前進経路演算部24により演算される
また、後退経路演算部25は、後退開始位置マーカM2によって指定される位置を仮の後退開始位置S2として駐車目標位置S4までの後退誘導経路C2を演算する。この仮の後退開始位置S2が、後退誘導経路C2が成立し得ない位置に指定されている場合は、当該後退開始位置マーカM2の位置では設定できないことが報知される。
【0027】
例えば、重畳部26により、図8に示す「決定」のメッセージボタン46が淡い表示として重畳される。また、この状態でメッセージボタン46をタッチしても受け付けられなくなる。あるいは、スピーカ11を介して音声で報知してもよい。
また、後退開始位置マーカM2自体によって報知することもできる。例えば、図8において駐車目標位置マーカM1を決定すると、後退開始位置マーカM2が赤く表示される。図9に示すようにステアリング4の操作により後退開始位置マーカM2が移動し、後退誘導経路C2が成立し得る位置に達すると、後退開始位置マーカM2が緑色に表示される。
このようにして設定可能な位置に調整された状態で、乗員が「決定」のメッセージボタン46をタッチすることによって、後退開始位置マーカM2が設定される。
【0028】
乗員は、このようにして後退開始位置S2を所定の設定範囲内において任意に設定することができる。上記説明より明らかなように、「所定の設定範囲」とは、停止位置S1から前進誘導経路C1が成立可能且つ、設定される後退開始位置S2から駐車目標位置S4までの後退誘導経路C2が成立可能な範囲である。
【0029】
尚、本実施形態では、後退開始位置マーカM2の初期位置を画面中央としたが(図7〜9参照)、他の位置であってもよい。例えば、図9に実線で示すような左前方を初期位置としてもよい。乗員がこの初期位置で問題ないと判断した場合は、後退開始位置S2を調整する必要なく、決定のメッセージボタンをタッチするだけで後退開始位置S2を設定することができる。また、調整が必要な場合でも、僅かな操作で適切な位置に後退開始位置S2を調整することができる。
また、このように駐車位置に応じた斜め位置を後退開始位置S2の調整時の所期位置とする場合には、パワーステアリングユニットPSを介してステアリング4を連動回転させると好ましい。
【0030】
〔誘導経路演算工程(前進経路演算工程/後退経路演算工程)〕
上記において説明したように、停止位置S1を基準として、後退開始位置S2、駐車目標位置S4が設定される。これらは、図10に示すように、それぞれの位置における車両1の同一の点において定義される。そして、これら定義された点に基づいて誘導経路C(前進誘導経路C1及び後退誘導経路C2)が演算される。
停止位置S1における車両1の点Vは、開始点Vとして定義される。後退開始位置S2における車両1の同一の点Fは、後退開始点Fとして定義される。駐車目標位置S4における車両1の同一の点Bは、駐車目標点Bとして定義される。誘導経路Cは、これらの3点を基準として演算される。
上述したように、後退開始位置設定工程において適宜この誘導経路演算工程が、前進経路演算部24及び後退経路演算部25により実施される。
【0031】
〔移動状態検出工程〕
車両1が停止位置S1から後退開始位置S2へと移動する過程、後退開始位置S2から駐車目標位置S4へと移動する過程においては、開始点Vが移動するものとして演算が実施される。
【0032】
移動する過程における車両1の位置情報(移動状態)は、移動状態検出部27によって検出される。移動状態検出部27は、図5に示すステアリングセンサ14や回転センサ18、アクセルセンサ16、シフト位置センサ15、ブレーキセンサ17などからの入力に基づいて、車両1の移動状態を検出する。従って、これらのセンサを含めて移動状態検出部27を構成してもよい。また、移動状態検出部27への入力として上記の他、ヨーレートセンサ(不図示)を用いてもよい。
【0033】
図11は、ステアリングセンサ14や回転センサ18からの入力に基づいて車両1の位置変化(移動状態)を検出する例を示している。図11は、旋回半径Rで旋回する車両1の後退移動を示している。図中の破線は、旋回半径R旋回する車両1の軌跡、つまり、直径φが2Rの円弧を示している。図11(b)は図11(a)の部分拡大図である。移動状態検出部27は、車両1の旋回半径Rから演算される微小時間の車両1の位置変化(微小移動距離)を積分することによって移動状態を検出する。
【0034】
図11及び下記式(1)〜(3)に示すdsは微小移動距離である。この微小移動距離は例えば回転センサ18からの入力に基づいて演算される。また、車両1の旋回半径はステアリングセンサ14からの入力に基づいて演算される。式(1)〜(3)における積分範囲αは累積移動距離を示している。
【0035】
【数1】
【0036】
〔前進誘導工程(誘導工程)〕
上述したように後退開始位置S2及び駐車目標位置S4が設定されると、誘導部28は、車両1を停止位置S1から後退開始位置S2へと誘導する。この誘導は、前進経路演算工程で演算される前進誘導経路、及び移動状態検出工程で演算される移動状態に基づいて実施される。
【0037】
誘導部28により車両1が自動運転されて、停止位置S1から後退開始位置S2へ至る場合の例を下記に説明する。乗員は、図9の画面において後退開始位置S2に対する「決定」のメッセージボタン46をタッチした後、ブレーキペダル8を緩めて車両1を発進させる。誘導部28は、前進経路演算部24が演算した前進誘導経路C1をたどるように、パワーステアリングユニットPSや変速機構Tなどを制御する。この時の初期舵角は、上述した後退開始位置設定工程において、後退開始位置S2を設定するために操作したステアリング角である。従って車両1の発進時には既に初期舵角が設定された状態となっており、車両1は、時間差なく前進誘導経路C1をたどることができる。
【0038】
図12に示すように、後退開始位置マーカM2の前方には前進誘導ガイドG1が重畳表示されている。車両1から所定距離の前方位置には、誘導マーカM3も重畳表示されている。図13に示すように、前進誘導ガイドG1と誘導マーカM3とが重なると、車両1が後退開始位置S2に収まったことになる。このような画面表示以外に、音声によって状況をアナウンスしてもよい。
【0039】
乗員は、前進誘導ガイドG1と誘導マーカM3とが重なったことを確認すると、ブレーキペダル8を踏んで車両1を停止させる。もちろん、誘導部28が、ブレーキ装置BKを制御して、自動的に停止させてもよい。
【0040】
また、このような自動運転ではなく、手動運転により車両1を後退開始位置S2まで移動させてもよい。この場合、誘導部28は、モニタ10に上記と同様の表示を行うと共に、表示や音声によって操舵の指示を行う。例えば、移動開始時には、後退開始位置S2の設定時のステアリング角を保つように指示し、移動に伴って中立位置へ戻すように指示する。また、前進誘導経路C1の経路設定にもよるが、移動開始時から後退開始位置S2への到達まで当該ステアリング角を保つように指示し、到達後に車両1が停止状態で中立位置へ戻すように指示してもよい。
【0041】
〔後退誘導工程(誘導工程)〕
車両1が後退開始位置S2に誘導されると、モニタ10に表示される情景がフロントカメラ12による撮影画像からリヤカメラ13による撮影画像へと変更される。図14は、後退開始位置S2においてカメラが切り替わった際のモニタ10への表示の一例を示している。車両1から所定距離の後方位置には、誘導マーカM3と同様に誘導マーカM4が重畳表示されている。また、後退中間位置ガイドG2も表示されている。後退中間位置ガイドG2は、車両1を図6に示す後退中間位置S3に誘導するためのガイドである。図6に示すように、後退開始位置S2から後退中間位置S3まで、車両1は旋回を伴って後退する。後退中間位置S3から駐車目標位置S4までは、車両1は旋回を伴わず、まっすぐに後退する。
【0042】
乗員は、モニタ10の画面がリヤカメラ13からの映像に切り替わったことを確認すると、ブレーキペダル8を緩めて車両1を発進させる。自動運転の場合、誘導部28は、後退経路演算部25が演算した後退誘導経路C2をたどるように、パワーステアリングユニットPSや変速機構Tなどを制御する。
【0043】
図15に示すように、後退中間位置ガイドG2と誘導マーカM4とが重なると、車両1が後退中間位置S3に収まったことになる。画面表示以外に、音声によって状況をアナウンスしてもよい点は前進時と同様である。
乗員は、後退中間位置ガイドG2と誘導マーカM4とが重なったことを確認すると、ブレーキペダル8を踏んで車両1を停止させる。もちろん、誘導部28が、ブレーキ装置BKを制御して、自動的に停止させてもよい。
【0044】
前進時と同様に、自動運転ではなく手動運転により車両1を後退中間位置S3まで移動させてもよい。この場合、誘導部28は、モニタ10に上記と同様の表示を行うと共に、表示や音声によって操舵の指示を行う。例えば、移動開始時に、後退時のステアリング角を指示し、後退中間位置S3まで移動した後、車両1が停止状態で中立位置へ戻すように指示する。もちろん、後退誘導経路C2に沿って細かくステアリング角を指示してもよい。
【0045】
後退中間位置ガイドG2と誘導マーカM4とが重なり、車両1が停止すると、図15に示すように駐車目標位置S4に対する駐車位置ガイドG3が表示される。もちろん、図14の画面において駐車位置ガイドG3を表示していてもよい。乗員は、画面及び音声の一方又は双方の報知により、ブレーキペダル8を緩めて車両1を発進させる。自動運転の場合、誘導部28は、後退誘導経路C2をたどるように、パワーステアリングユニットPSや変速機構Tなどを制御する。この場合の後退誘導経路C2は、後方への直進であるので、パワーステリングユニットPSは、直進を維持するように制御される。
【0046】
駐車位置ガイドG3と誘導マーカM4とが重なると、車両1が駐車目標位置S4に収まったことになる。画面表示以外に、音声によって状況をアナウンスしてもよい点は上記と同様である。
乗員は、駐車位置ガイドG3と誘導マーカM4とが重なったことを確認すると、ブレーキペダル8を踏んで車両1を停止させる。もちろん、誘導部28が、ブレーキ装置BKを制御して自動的に停止させてもよい。また、上記と同様に手動運転してもよい。
【0047】
以上説明したように、本発明によれば、駐車のために後退を開始する位置を車両の乗員が簡単に設定可能な駐車支援装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0048】
1:車両
4:ステアリング
10:モニタ(表示部)
12:フロントカメラ(撮影部)
22:駐車目標位置設定部
23:後退開始位置設定部
24:前進経路演算部
25:後退経路演算部
26:重畳部
27:移動状態検出部
28:誘導部
S1:車両の位置(所定の停止位置)
S2:車両の位置(後退開始位置)
S4:車両の位置(駐車目標位置)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駐車時の運転操作を支援する駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような駐車支援装置として、下記に出典を示す特許文献1に記載された車両の自動操舵装置がある。この自動操舵装置により、車両は、スタート位置から前進し、折り返し位置を経て後進して、目標位置まで案内される。自動操舵装置は、車両が停止状態で目標位置を設定されると、その停車位置をスタート位置と設定する。これにより、スタート位置と目標位置とが定まるので、自動操舵装置は折り返し位置を設定して、前進移動経路、後進移動経路を算出する。車両の現在位置や、駐車目標位置、折り返し位置、スタート位置から駐車位置までの移動経路などは、液晶モニターに表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−1177号公報(第35〜42段落、図2等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記自動操舵装置は、スタート位置を定めれば、乗員は車両をクリープ走行させるだけで円滑に車両を駐車させることができる。しかし、折り返し位置も、自動操舵装置に任せられているため、前進移動経路上に障害物が存在したり、狭い駐車場で前進移動経路が確保できなかったりする場合には、自動操舵を利用することができない。このような自動操舵装置を含む駐車支援装置は、特に駐車運転が得意ではない乗員に必要なものである。そのような乗員にとっては、狭い駐車場などでこそ、駐車支援装置を利用したいという要望が強い。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みて創案されたもので、駐車のために後退を開始する位置を車両の乗員が簡単に設定可能な駐車支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る駐車支援装置は、
車両前方の情景を撮影する撮影部と、
撮影された撮影画像に基づく画面を表示する表示部と、
所定の停止位置から前記車両よりも前方に位置し、駐車目標位置への駐車のために前記車両が後退を開始する後退開始位置を示すマーカを前記画面に重畳表示させる重畳部と、を備え、
前記マーカの前記画面上の位置は、乗員がステアリングを操作することによって調整されることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、乗員は、後退開始位置を示すマーカが重畳表示された撮影画像に基づく画面により後退開始位置を設定することができる。従って、乗員や障害物や、駐車場の広さなどを考慮して簡単に後退開始位置を設定することができるので、利便性を損なうことなく、簡単に設定ができる。
【0008】
また、本発明に係る駐車支援装置は、さらに、前記乗員がステアリングを操作することによって前記マーカの色が変更される。
【0009】
この構成によれば、乗員が、自身の操作により後退開始位置の設定が適切に行われたことを認識しやすくすることができる。したがって、利便性の良い駐車支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】車両の一部を切り欠いて運転席を見た斜視図
【図2】車両前部の斜視図
【図3】運転席前方の説明図
【図4】車両の各部の構成を模式的に示す平面図
【図5】本発明の駐車支援装置の構成を模式的に示すブロック図
【図6】車両を駐車位置に誘導する進路とガイド情報の位置を示す図
【図7】モニタ画面の表示例を示す図
【図8】モニタ画面の表示例を示す図
【図9】モニタ画面の表示例を示す図
【図10】停止位置、後退開始位置、駐車目標位置の基準を示す図
【図11】自車両の位置を検出するための計算方法を説明する図
【図12】モニタ画面の表示例を示す図
【図13】モニタ画面の表示例を示す図
【図14】モニタ画面の表示例を示す図
【図15】モニタ画面の表示例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図4に車両1の基本構成を示す。
運転席3のステアリング4は回転操作力を前車輪2fに伝えて駆動操向を行うパワーステアリングユニットPSと連動している。車体前部にはエンジンEと、このエンジンEからの動力を変速して前車輪2fに伝えるにトルクコンバータやCVT等で成る変速機構Tとが配置されている。運転席3の近傍には走行速度を制御するアクセル操作部材としてのアクセルペダル7と、前車輪2f及び後車輪2rのブレーキ装置BKを操作して前車輪2f及び後車輪2rに制動力を作用させるブレーキペダル8とが並列配置されている。
【0012】
運転席3の近傍のコンソールの上部位置には表示面にタッチパネル10Tを形成したモニタ10(表示部)が備えられている。このモニタ10には、スピーカ11が備えられている。尚、スピーカ11はパネル5や、ドアの内側に備えられても良い。車両1の前端にはフロントカメラ12(撮影部)が備えられ、車両1の後端にはリヤカメラ13が備えられている。モニタ10は、バックライトを備えた液晶式のものである。もちろん、プラズマ表示型のものやCRT型のものであっても良い。また、タッチパネル10Tは、感圧式のものや静電式のものが使用され、指等の接触位置をロケーションデータとして出力する。尚、モニタ10はナビゲーションシステムの表示装置として用いるものを兼用しても良い。
【0013】
フロントカメラ12及びリヤカメラ13はCCD(charge coupled device)やCIS(CMOS image sensor)などの撮像素子を内蔵するとともに、撮影した情報を動画情報として出力するデジタルカメラである。フロントカメラ12は車両1の前方に向けてやや俯角を有して設置され、リヤカメラ13は車両1の後方に向けてやや俯角を有して設置されている。尚、夫々のカメラは、リアルタイムで動画を出力する性能を有するものである。
【0014】
ステアリング4の操作系にはステアリングセンサ14が備えられ、ステアリング操作方向と操作量とが計測される。シフトレバー6の操作系にはシフト位置センサ15が備えられ、シフト位置が判別される。アクセルペダル7の操作系にはアクセルセンサ16が備えられ、操作量が計測される。ブレーキペダル8の操作系にはブレーキセンサ17が備えられ、操作の有無などを検出する。
【0015】
移動距離センサとして、前車輪2f及び後車輪2rの少なくとも一方の回転量を計測する回転センサ18が備えられている。もちろん、変速機構Tにおいて、駆動系の回転量から車両1の移動量を計測してもよい。また、車両1には駐車支援を含む走行制御を行うECU(electronic control unit)20が配置されている。
【0016】
図5は、本発明の駐車支援装置の構成を模式的に示すブロック図である。本発明の駐車支援装置は、ECU20を中核として構成される。ECU20は、情報の入出力を行う入出力インタフェース21を備えると共に、この入出力インタフェース21からの情報を処理するマイクロプロセッサを備えている。もちろん、入出力インタフェース21の一部又は全てがマイクロプロセッサに含まれていてもよい。ECU20は、マイクロプロセッサを中核部品とする電子回路により構成されている。
【0017】
図に示すように、タッチパネル10T、フロントカメラ12、リヤカメラ13、ステアリングセンサ14、シフト位置センサ15、アクセルセンサ16、ブレーキセンサ17、回転センサ18などからの情報が入力される入力系が形成される。また、モニタ10、スピーカ11、パワーステアリングユニットPS、変速機構T、ブレーキ装置BKに制御信号を出力する出力系が形成される。
尚、フロントカメラ12は、車両1の前方の情景を撮影する撮影部に相当する。また、モニタ10は、撮影された撮影画像を表示する表示部に相当する。
【0018】
ECU20は、入出力インタフェース21と接続された各機能部を有している。この接続は、例えば、マイクロプロセッサ内のデータバス、アドレスバス、コントロールバス、メモリなどを介して行われるが、説明を容易にするため、詳細な図示及び説明は省略する。
図に示すように、ECU20は、駐車目標位置設定部22と、後退開始位置設定部23と、前進経路演算部24と、後退経路演算部25と、重畳部26と、移動状態検出部27と、誘導部28とを有している。本実施形態においては、これら各機能部は、マイクロプロセッサとプログラムとの協働によって実現される場合を例示している。しかし、論理回路などを用いたハードウェアで構成することも可能である。
以下、車両1を駐車位置に誘導する進路とガイド情報の位置を示す図6も参照して、各機能部の概略を説明する。
【0019】
駐車目標位置設定部22は、フロントカメラ12の撮影画像に基づき、所定の停止位置S1において車両1の駐車目標位置S4を設定する。
後退経路演算部25は、所定の停止位置S1から車両1よりも前方に位置し、駐車のために車両1が後退を開始する後退開始位置S2から駐車目標位置S4までの後退誘導経路C2を演算する。
後退開始位置設定部23は、フロントカメラ12の撮影画像に基づき、後退開始位置S2を車両1の乗員の指示により所定の設定範囲内において設定する。この「所定の設定範囲」については後述する。
前進経路演算部24は、所定の停止位置S1から後退開始位置S2までの前進誘導経路C1を演算する。
移動状態検出部27は、車両1の移動状態を検出する。「移動状態」については後述する。
誘導部28は、前進誘導経路C1と移動状態とに基づいて所定の停止位置S1から後退開始位置S2まで車両1を誘導する。また、誘導部28は、後退誘導経路C2と移動状態とに基づいて後退開始位置S2から駐車目標位置S4まで車両1を誘導する。
重畳部26は、後退開始位置を示すマーカを含む種々のメッセージやガイド用のマーカをフロントカメラ12の撮影画像に重畳させる重畳工程を実施する。これらのメッセージやガイド用マーカについては、その用途を含めて後述する。例えば、後退開始位置設定部23は、後退開始位置を示すマーカに基づいた車両1の乗員の指示により後退開始位置S2を設定する。
【0020】
以下、図6に示すように車両1を駐車位置Pに駐車する場合を例として、本発明の駐車支援装置の手順を説明する。
【0021】
〔駐車目標位置設定工程〕
図7は、図6に示す位置S0にいる車両1のフロントカメラ12による撮影画像、及び重畳部26により生成されたメッセージやマーカが表示されたモニタ10の画面を示している。ここでは、既に駐車支援装置が起動されている状態を示している。また、駐車支援には、大別して車庫入れ駐車(garage parking)タイプと、縦列駐車(parallel parking)タイプとがあるが、本実施形態では既に車庫入れタイプの駐車支援が選択されているものとする。この時点では、左右何れの方向への駐車を行うかは選択されていない。
【0022】
図7において、前方のマーカM2は後退開始位置S2を示す後退開始位置マーカである。この状態では、後退開始位置マーカM2は、画面中央の初期位置に重畳表示されている。左右のマーカM1は駐車目標位置を設定するための駐車目標位置マーカである。図7では、左右何れの方向への駐車を行うかは選択されていない。従って、タッチパッド10Tを備えるモニタ10の画面には、「左車庫入れ」及び「右車庫入れ」のメッセージボタン41及び42が示されている。乗員が何れかのメッセージボタン41、42にタッチすることで、車庫入れの方向が決定される。あるいは、後述するようにステアリング4の操舵方向によって、「左車庫入れ」と「右車庫入れ」とを切り替えるようにしてもよい。尚、駐車支援を中止する場合には、「中止」のメッセージボタン43にタッチすることによって駐車支援を終了することができる。「中止」のメッセージボタン43については以下同様である。
【0023】
車両1が図6に示す所定の停止位置S1に達すると、図8に示すように駐車枠のラインL1と、右側の駐車目標位置マーカM1とが重なって表示される。乗員は、この位置で車両1を停止させる。車両1の停止位置S1によってはラインL1と駐車目標位置マーカM1とがずれる場合があるが、このずれはカーソル45を操作することによって調整することが可能である。既に車庫入れの方向が決定されている場合には、「決定」のメッセージボタン46が表示されている。このメッセージボタン46をタッチすることによって駐車目標位置S4が設定される。この時、左側の駐車目標位置マーカM1は、淡く表示される、あるいは消去されていてもよい。
【0024】
〔後退開始位置設定工程〕
駐車目標位置S4が設定されると、車両1が停車した状態で後退開始位置S2が設定される。後退開始位置マーカM2の画面上の位置は、乗員がステアリング4を操作することによって調整される。本実施形態の場合には、進行方向に向かって右側に駐車するので、左前方に後退開始位置S2を設定するべく、ステアリング4が反時計周りに操作される。図9に示すように、モニタ10の画面上において車両1の正面位置に重畳されていた後退開始位置マーカーM2は、ステアリング4の操作に伴って左方向に移動する。
【0025】
このように、車庫入れの方向によって後退開始位置S2の設定のためのステアリング4の操舵方向が定まる。従って、上述したように「左車庫入れ」及び「右車庫入れ」のメッセージボタン41及び42を用いず、操舵方向によって、車庫入れの方向を切り替えてもよい。
【0026】
後退開始位置マーカM2は、現在の停止位置S1からの前進誘導経路C1が成立し得る位置に描画される。前進誘導経路C1は、前進経路演算部24により演算される
また、後退経路演算部25は、後退開始位置マーカM2によって指定される位置を仮の後退開始位置S2として駐車目標位置S4までの後退誘導経路C2を演算する。この仮の後退開始位置S2が、後退誘導経路C2が成立し得ない位置に指定されている場合は、当該後退開始位置マーカM2の位置では設定できないことが報知される。
【0027】
例えば、重畳部26により、図8に示す「決定」のメッセージボタン46が淡い表示として重畳される。また、この状態でメッセージボタン46をタッチしても受け付けられなくなる。あるいは、スピーカ11を介して音声で報知してもよい。
また、後退開始位置マーカM2自体によって報知することもできる。例えば、図8において駐車目標位置マーカM1を決定すると、後退開始位置マーカM2が赤く表示される。図9に示すようにステアリング4の操作により後退開始位置マーカM2が移動し、後退誘導経路C2が成立し得る位置に達すると、後退開始位置マーカM2が緑色に表示される。
このようにして設定可能な位置に調整された状態で、乗員が「決定」のメッセージボタン46をタッチすることによって、後退開始位置マーカM2が設定される。
【0028】
乗員は、このようにして後退開始位置S2を所定の設定範囲内において任意に設定することができる。上記説明より明らかなように、「所定の設定範囲」とは、停止位置S1から前進誘導経路C1が成立可能且つ、設定される後退開始位置S2から駐車目標位置S4までの後退誘導経路C2が成立可能な範囲である。
【0029】
尚、本実施形態では、後退開始位置マーカM2の初期位置を画面中央としたが(図7〜9参照)、他の位置であってもよい。例えば、図9に実線で示すような左前方を初期位置としてもよい。乗員がこの初期位置で問題ないと判断した場合は、後退開始位置S2を調整する必要なく、決定のメッセージボタンをタッチするだけで後退開始位置S2を設定することができる。また、調整が必要な場合でも、僅かな操作で適切な位置に後退開始位置S2を調整することができる。
また、このように駐車位置に応じた斜め位置を後退開始位置S2の調整時の所期位置とする場合には、パワーステアリングユニットPSを介してステアリング4を連動回転させると好ましい。
【0030】
〔誘導経路演算工程(前進経路演算工程/後退経路演算工程)〕
上記において説明したように、停止位置S1を基準として、後退開始位置S2、駐車目標位置S4が設定される。これらは、図10に示すように、それぞれの位置における車両1の同一の点において定義される。そして、これら定義された点に基づいて誘導経路C(前進誘導経路C1及び後退誘導経路C2)が演算される。
停止位置S1における車両1の点Vは、開始点Vとして定義される。後退開始位置S2における車両1の同一の点Fは、後退開始点Fとして定義される。駐車目標位置S4における車両1の同一の点Bは、駐車目標点Bとして定義される。誘導経路Cは、これらの3点を基準として演算される。
上述したように、後退開始位置設定工程において適宜この誘導経路演算工程が、前進経路演算部24及び後退経路演算部25により実施される。
【0031】
〔移動状態検出工程〕
車両1が停止位置S1から後退開始位置S2へと移動する過程、後退開始位置S2から駐車目標位置S4へと移動する過程においては、開始点Vが移動するものとして演算が実施される。
【0032】
移動する過程における車両1の位置情報(移動状態)は、移動状態検出部27によって検出される。移動状態検出部27は、図5に示すステアリングセンサ14や回転センサ18、アクセルセンサ16、シフト位置センサ15、ブレーキセンサ17などからの入力に基づいて、車両1の移動状態を検出する。従って、これらのセンサを含めて移動状態検出部27を構成してもよい。また、移動状態検出部27への入力として上記の他、ヨーレートセンサ(不図示)を用いてもよい。
【0033】
図11は、ステアリングセンサ14や回転センサ18からの入力に基づいて車両1の位置変化(移動状態)を検出する例を示している。図11は、旋回半径Rで旋回する車両1の後退移動を示している。図中の破線は、旋回半径R旋回する車両1の軌跡、つまり、直径φが2Rの円弧を示している。図11(b)は図11(a)の部分拡大図である。移動状態検出部27は、車両1の旋回半径Rから演算される微小時間の車両1の位置変化(微小移動距離)を積分することによって移動状態を検出する。
【0034】
図11及び下記式(1)〜(3)に示すdsは微小移動距離である。この微小移動距離は例えば回転センサ18からの入力に基づいて演算される。また、車両1の旋回半径はステアリングセンサ14からの入力に基づいて演算される。式(1)〜(3)における積分範囲αは累積移動距離を示している。
【0035】
【数1】
【0036】
〔前進誘導工程(誘導工程)〕
上述したように後退開始位置S2及び駐車目標位置S4が設定されると、誘導部28は、車両1を停止位置S1から後退開始位置S2へと誘導する。この誘導は、前進経路演算工程で演算される前進誘導経路、及び移動状態検出工程で演算される移動状態に基づいて実施される。
【0037】
誘導部28により車両1が自動運転されて、停止位置S1から後退開始位置S2へ至る場合の例を下記に説明する。乗員は、図9の画面において後退開始位置S2に対する「決定」のメッセージボタン46をタッチした後、ブレーキペダル8を緩めて車両1を発進させる。誘導部28は、前進経路演算部24が演算した前進誘導経路C1をたどるように、パワーステアリングユニットPSや変速機構Tなどを制御する。この時の初期舵角は、上述した後退開始位置設定工程において、後退開始位置S2を設定するために操作したステアリング角である。従って車両1の発進時には既に初期舵角が設定された状態となっており、車両1は、時間差なく前進誘導経路C1をたどることができる。
【0038】
図12に示すように、後退開始位置マーカM2の前方には前進誘導ガイドG1が重畳表示されている。車両1から所定距離の前方位置には、誘導マーカM3も重畳表示されている。図13に示すように、前進誘導ガイドG1と誘導マーカM3とが重なると、車両1が後退開始位置S2に収まったことになる。このような画面表示以外に、音声によって状況をアナウンスしてもよい。
【0039】
乗員は、前進誘導ガイドG1と誘導マーカM3とが重なったことを確認すると、ブレーキペダル8を踏んで車両1を停止させる。もちろん、誘導部28が、ブレーキ装置BKを制御して、自動的に停止させてもよい。
【0040】
また、このような自動運転ではなく、手動運転により車両1を後退開始位置S2まで移動させてもよい。この場合、誘導部28は、モニタ10に上記と同様の表示を行うと共に、表示や音声によって操舵の指示を行う。例えば、移動開始時には、後退開始位置S2の設定時のステアリング角を保つように指示し、移動に伴って中立位置へ戻すように指示する。また、前進誘導経路C1の経路設定にもよるが、移動開始時から後退開始位置S2への到達まで当該ステアリング角を保つように指示し、到達後に車両1が停止状態で中立位置へ戻すように指示してもよい。
【0041】
〔後退誘導工程(誘導工程)〕
車両1が後退開始位置S2に誘導されると、モニタ10に表示される情景がフロントカメラ12による撮影画像からリヤカメラ13による撮影画像へと変更される。図14は、後退開始位置S2においてカメラが切り替わった際のモニタ10への表示の一例を示している。車両1から所定距離の後方位置には、誘導マーカM3と同様に誘導マーカM4が重畳表示されている。また、後退中間位置ガイドG2も表示されている。後退中間位置ガイドG2は、車両1を図6に示す後退中間位置S3に誘導するためのガイドである。図6に示すように、後退開始位置S2から後退中間位置S3まで、車両1は旋回を伴って後退する。後退中間位置S3から駐車目標位置S4までは、車両1は旋回を伴わず、まっすぐに後退する。
【0042】
乗員は、モニタ10の画面がリヤカメラ13からの映像に切り替わったことを確認すると、ブレーキペダル8を緩めて車両1を発進させる。自動運転の場合、誘導部28は、後退経路演算部25が演算した後退誘導経路C2をたどるように、パワーステアリングユニットPSや変速機構Tなどを制御する。
【0043】
図15に示すように、後退中間位置ガイドG2と誘導マーカM4とが重なると、車両1が後退中間位置S3に収まったことになる。画面表示以外に、音声によって状況をアナウンスしてもよい点は前進時と同様である。
乗員は、後退中間位置ガイドG2と誘導マーカM4とが重なったことを確認すると、ブレーキペダル8を踏んで車両1を停止させる。もちろん、誘導部28が、ブレーキ装置BKを制御して、自動的に停止させてもよい。
【0044】
前進時と同様に、自動運転ではなく手動運転により車両1を後退中間位置S3まで移動させてもよい。この場合、誘導部28は、モニタ10に上記と同様の表示を行うと共に、表示や音声によって操舵の指示を行う。例えば、移動開始時に、後退時のステアリング角を指示し、後退中間位置S3まで移動した後、車両1が停止状態で中立位置へ戻すように指示する。もちろん、後退誘導経路C2に沿って細かくステアリング角を指示してもよい。
【0045】
後退中間位置ガイドG2と誘導マーカM4とが重なり、車両1が停止すると、図15に示すように駐車目標位置S4に対する駐車位置ガイドG3が表示される。もちろん、図14の画面において駐車位置ガイドG3を表示していてもよい。乗員は、画面及び音声の一方又は双方の報知により、ブレーキペダル8を緩めて車両1を発進させる。自動運転の場合、誘導部28は、後退誘導経路C2をたどるように、パワーステアリングユニットPSや変速機構Tなどを制御する。この場合の後退誘導経路C2は、後方への直進であるので、パワーステリングユニットPSは、直進を維持するように制御される。
【0046】
駐車位置ガイドG3と誘導マーカM4とが重なると、車両1が駐車目標位置S4に収まったことになる。画面表示以外に、音声によって状況をアナウンスしてもよい点は上記と同様である。
乗員は、駐車位置ガイドG3と誘導マーカM4とが重なったことを確認すると、ブレーキペダル8を踏んで車両1を停止させる。もちろん、誘導部28が、ブレーキ装置BKを制御して自動的に停止させてもよい。また、上記と同様に手動運転してもよい。
【0047】
以上説明したように、本発明によれば、駐車のために後退を開始する位置を車両の乗員が簡単に設定可能な駐車支援装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0048】
1:車両
4:ステアリング
10:モニタ(表示部)
12:フロントカメラ(撮影部)
22:駐車目標位置設定部
23:後退開始位置設定部
24:前進経路演算部
25:後退経路演算部
26:重畳部
27:移動状態検出部
28:誘導部
S1:車両の位置(所定の停止位置)
S2:車両の位置(後退開始位置)
S4:車両の位置(駐車目標位置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方の情景を撮影する撮影部と、
撮影された撮影画像に基づく画面を表示する表示部と、
所定の停止位置から前記車両よりも前方に位置し、駐車目標位置への駐車のために前記車両が後退を開始する後退開始位置を示すマーカを前記画面に重畳表示させる重畳部と、を備え、
前記マーカの前記画面上の位置は、乗員がステアリングを操作することによって調整される駐車支援装置。
【請求項2】
さらに、前記乗員がステアリングを操作することによって前記マーカの色が変更される請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項1】
車両前方の情景を撮影する撮影部と、
撮影された撮影画像に基づく画面を表示する表示部と、
所定の停止位置から前記車両よりも前方に位置し、駐車目標位置への駐車のために前記車両が後退を開始する後退開始位置を示すマーカを前記画面に重畳表示させる重畳部と、を備え、
前記マーカの前記画面上の位置は、乗員がステアリングを操作することによって調整される駐車支援装置。
【請求項2】
さらに、前記乗員がステアリングを操作することによって前記マーカの色が変更される請求項1に記載の駐車支援装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−230762(P2011−230762A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155799(P2011−155799)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【分割の表示】特願2006−301586(P2006−301586)の分割
【原出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【分割の表示】特願2006−301586(P2006−301586)の分割
【原出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
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