説明

駐車支援装置

【課題】車両の車輪が車止めに当接する前に、早いタイミングで車止めの形状に応じて車止めの乗り越え防止を図ることができる駐車支援装置を提供する。
【解決手段】本発明は、車両の後退中に、車両後方の路面上の車止めの高さを検出する車止め検出手段1と、車両が車止めを乗り越えないように、ドライバへの報知及び車両制御の少なくとも一方による支援を行う支援手段2とを備え、支援手段2は、車止めの高さが基準高さ以上であるときに、車止めの高さが基準高さ未満であるときよりも、支援手段2の作動条件の範囲を狭くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は駐車支援装置に係り、より詳細には、車止めの乗越え防止を図ることができる駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な車両用の駐車支援技術が開発されている。例えば、下記の特許文献1には、車止めに衝突した車輪の前後方向に作用する力を検出して、車輪が車止めを乗り越えようとすることを検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−96191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の特許文献1に開示の技術においては、車輪が車止めに衝突した後で、車輪が車止めを乗り越えようとすることが検出されている。このため、車輪が車止めに衝突する前の早いタイミングで、車輪が車止めを乗り越える危険性を判断することは困難であった。さらに、車止めではない段差であっても車止めを乗り越える危険性を判断してしまうおそれがあった。
【0005】
また、車止めには、直方体のブロック、断面形状が長方形の金属パイプ、或いは勾配を付けた樹脂部材など、種々の材料、種々の形状のものが使用されている。そして、本発明の発明者は、車止めの形状によって、車輪が車止めを乗り越え易い場合と、乗り越えにくい場合があることに着目した。
【0006】
そこで、本発明は、車両の車輪が車止めに当接する前に、早いタイミングで車止めの形状に応じて車止めの乗り越え防止を図ることができる駐車支援装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の駐車支援装置は、車両の後退中に、車両後方の路面上の車止めの高さを検出する車止め検出手段と、車両が車止めを乗り越えないように、ドライバへの報知及び車両制御の少なくとも一方を行う支援手段とを備え、前記支援手段は、前記車止めの高さが基準高さ以上であるときに、前記車止めの高さが前記基準高さ未満であるときよりも、当該支援手段の作動条件の範囲を狭くすることを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明の駐車支援装置によれば、車止めの高さが基準高さ以上であるときに、車止めの高さが前記基準高さ未満であるときよりも、支援手段の作動条件の範囲が狭く設定される。これにより、車止めの高さが高い場合には、支援装置がより狭い作動条件でしか作動しない。これにより、車両の車輪が車止めに当接する前に、早いタイミングで車止めの形状に応じて車止めの乗り越え防止を図ることができる。
【0009】
また、本発明において好ましくは、前記車止め検出手段は、車両の後輪が当接する前記車止めの当接面の鉛直線に対する傾斜角度を検出し、前記支援手段は、前記当接面の傾斜角度が基準角度未満であるときに、前記当接面の傾斜角度が前記基準角度以上であるときよりも、前記所定条件を緩和する。
【0010】
これにより、車輪が車止めを乗り越え易い、車止めの当接面の勾配が緩やかな場合に、支援装置が作動する所定条件が緩和される。これにより、車両の車輪が車止めに当接する前に、早いタイミングで車止めの形状に応じて車止めの乗り越えのより的確な防止を図ることができる。
【0011】
また、本発明において好ましくは、前記作動条件は、車両の車速及びアクセル開度の少なくとも一つが基準値以上である場合を含む。
一般に、車両の車速が大きいほど、車両の慣性力が大きくなって、車輪が車止めを乗り越えやすくなる。また、アクセル開度が高いほど、エンジントルクが高くなって、車輪が車止めを乗り越えやすくなる。このため、これらの車速及びアクセル開度に着目して、駐車支援を行うことにより、的確に車輪の車止めの乗り越え防止を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の駐車支援装置によれば、車両の車輪が車止めに当接する前に、早いタイミングで車止めの形状に応じて車止めの乗り越え防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態による駐車支援装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態による駐車支援装置の動作例を説明するフローチャートである。
【図3】(a)〜(c)は、車止めの斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態による駐車支援装置の動作例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して、本発明の駐車支援装置の実施形態を説明する。
図1のブロック図を参照して、第1実施形態による駐車支援装置の構成を説明する。本実施形態による駐車支援装置は、車両の後退中に、車両後方の路面上の車止めの高さを検出する車止め検出手段1と、車両について所定条件が満たされた場合に、車両が車止めを乗り越えないように、ドライバへの報知及び車両制御の少なくとも一方を行う支援手段2とを備えている。本実施形態では、図1に示すように、駐車支援装置は、更に、車速センサ3,アクセル開度センサ4、スピーカ5、ディスプレイ6及びブレーキアクチュエータ7を備えている。
【0015】
車止め検出手段1は、車両後方を撮像するカメラ、ステレオカメラ、ミリ波レーダ又はレーザ照射装置といった任意好適な装置で構成することができる。また、これら装置の2つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
車止め検出手段1は、車両の後端に、車幅方向の中央付近に1つだけ配置してもよいし、車両の後端に、車幅方向に沿って2つ以上配置してもよい。例えば、車止め検出手段1を、車両後端の車幅方向の両端付近に取り付けてもよい。
なお、車止め検出手段1は、必ずしも車両の後端に配置される必要はないが、車両後方の地面上の車止めが見通せる位置に配置されることが望ましい。
【0017】
そして、車止め検出手段1は、例えばカメラの画像を画像処理することによって、車止めの高さを検出するとよい。なお、車止めまでの距離は、例えば、ミリ波レーダで求めるとよい。
【0018】
支援手段2は、車両の車速及びアクセル開度の少なくとも一方が基準値以上の場合に、車両が車止めを乗り越えないように、ドライバへの報知及び車両制御の少なくとも一方を行う。例えば、支援手段2は、スピーカ5から、音声で車止めを乗り越える危険性を警告したり、警報音を発生させたりするとよい。また、支援手段2は、ディスプレイ6により文字や記号で危険性を報知してもよい。また、支援手段2は、ブレーキアクチュエータ7を作動させて、車止めを乗り越えないように、車速を減速させたり、車両を停止させたりしてもよい。
【0019】
なお、支援手段2は、車載ECU(electric control unit:電子制御装置)4における処理機能に相当する。これらの処理機能は、コンピュータにおいて所定のプログラムを実行することによって実現してもよいし、マイクロチップによって実現してもよい。
【0020】
そして、支援手段2は、図2のフローチャートを参照して以下に説明するように、車止めの高さが基準高さ未満であるときに、車止めの高さが基準高さ以上であるときよりも、作動条件を緩和する。
【0021】
まず、車両の後退中に、車止め検出手段1が車両後方の路面上の車止めの高さを検出する(図2のS21)。
【0022】
そして、検出された車止めの高さが、所定の基準高さHs以上であって高さが十分である場合(S22で「yes」の場合)には、車両が車止めを乗り越えにくいため、支援手段2の作動条件が狭く設定される(S23)。
なお、基準高さHsは、車両の車輪の直径やエンジン出力に基づいて好適な値を設定することができる。
【0023】
一方、検出された車止めの高さが、所定の基準高さHs未満であって高さが十分でない場合(S22で「no」の場合)には、車両が車止めを乗り越え易いため、支援手段2の作動条件が広く設定される(S24)。すなわち、支援手段2が作動しやすくなる。
【0024】
例えば、通常は、車速が基準車速Vh以上の場合に、支援装置2が作動して乗り越え警報を発するところ、車止めが高い場合には、基準車速Vhがより高い値に設定される。このため、低い車止めの場合には警報が発せられる車速であっても、乗り越える危険性の低い高い車止めの場合には、警報が発せられないことになる。また、警報の代わり、ブレーキアクチュエータ7を作動させる場合も同様である。
【0025】
また、例えば、通常は、アクセル開度が基準開度Ah以上の場合に、支援装置2が作動して乗り越え警報を発するところ、車止めが高い場合には、基準開度Ahがより高い値に設定される。このため、低い車止めの場合には警報が発せられるアクセル開度であっても、乗り越える危険性が低い高い車止めの場合には、警報が発せられないことになる。また、警報の代わり、ブレーキアクチュエータ7を作動させる場合も同様である。
【0026】
また、図2のフローチャートに示した例では、車止めの高さを1つの基準高さで分けて、支援手段2の作動条件を2段階に設定したが、基準高さは1つに限定されない。車止めの高さを2つ以上の基準高さで分けて、作動条件を段階的に広くなるように設定してもよい。
【0027】
次に、本発明の駐車支援装置の第2実施形態を説明する。
第2実施形態による駐車支援装置の構成は、図1に示した第1実施形態のもの基本的に同じである。
【0028】
ところで、図3に示すように、車止めには様々な形状のものがある。図3(a)は、直方体のコンクリートブロックの車止めを示す。図3(b)は、傾斜した当接面を有するコンクリートブロックの車止めを示す。図3(c)は、緩やかな勾配の当接面を有する。
【0029】
一般に、車止めの高さが高いほど、車止めを乗り越える可能性は低くなる。一方、車止めの当接面の鉛直線に対する傾斜角度が大きいほど、即ち勾配が緩やかなほど、車止めを乗り越える可能性は高くなる。
【0030】
例えば、図3(a)の車止め8aの高さHaと、図3(b)の車止め8bの高さHbとが等しい場合、図3(b)に示した車止め8bの当接面80bが傾斜しているため、図3(b)の車止め8bの方が、図3(a)の車止め8aよりも、車止めを乗り越える危険性が高い。
【0031】
また、例えば、図3(b)に示した車止め8bの当接面80bの傾斜角度θbと図3(c)の車止め8cの当接面80cの傾斜角度θcとが等しい場合、図3(c)に示した車止め8cの高さHcが、図3(b)の車止め8bの高さHbより低いため、図3(c)の車止め8cの方が、図3(b)の車止め8bよりも、車止めを乗り越える危険性が高い。
【0032】
そこで、第2実施形態では、以下に説明するように、車止めの高さと当接面の傾斜角度の両方に基づいて、車止めの乗り越えの防止を図る。
【0033】
図4のフローチャートを参照して、第2実施形態による駐車支援装置の動作を説明する。先ず、上述の第1実施形態と同様に、車止め検出手段1が、車両の後退中に、車両後方の路面上の車止めの高さを検出する。本実施形態では、車止め検出手段1は、更に、車両の後輪が当接する車止めの当接面の鉛直線に対する傾斜角度も検出する(S41)。車止めの当接面の傾斜角度も、車止めの高さの検出と同様に、カメラで撮像した画像の画像処理や、レーダの検出結果から検出するとよい。
【0034】
次に、検出した車止めの高さ及び当接面の傾斜角度に基づいて、車両が車止めを乗り越える危険性を判定する(S42)。ここでは、データベース(図示せず)に車止めの高さと傾斜角度をパラメータとして危険度を数値化したマトリクスを記憶しておき、このマトリクスを参照して、検出した車止めの高さ及び傾斜角度の組合せに対応する危険度を読み出して判定するとよい。
【0035】
そして、乗越え危険性が大きい場合(S43で「yes」の場合)、例えば、マトリクスの該当する危険度の数値が所定の基準値以上である場合、ドライバに危険性を報知する(S44)。この報知は、例えば、スピーカ5により音声で報知してもよいし、ディスプレイ6により文字や映像で報知してもよい。また、この報知は、車両の車速やアクセル開度に関係なく行うとよい。
【0036】
次に、検出した車止めの高さ及び当接面の傾斜角度に基づいて、支援手段2の作動条件の範囲を設定する(S45)。具体的には、車両の車速の基準速度及びアクセル開度の基準開度の少なくとも一方を設定する。ここでは、データベース(図示せず)に車止めの高さと傾斜角度をパラメータとして基準速度及び基準開度を設定したマトリクスを記憶しておくとよい。
【0037】
すなわち、このマトリクスでは、車止めの高さを複数の基準高さで分けて、車止めの高さが低いほど作動条件を段階的に広くなるように、基準速度及び基準開度が設定され、かつ、車止めの当接面の傾斜角度を複数の基準角度で分けて、傾斜角度が大きいほど(勾配が緩やかなほど)作動条件を段階的に広くなるように基準速度及び基準開度が設定されている。
【0038】
そして、このマトリクスから、検出した車止めの高さ及び傾斜角度の組合せに対応する基準速度及び基準開度が読み出されて設定される。
【0039】
一般に、車止めの高さが低いほど、また、車止めの当接面の傾斜角度が大きいほど(勾配が緩やかなほど)、車止めを乗り越える危険性が高い。このため、基準速度及び基準開度は、車止めの高さが低いほど低い値に設定され、かつ、車止めの当接面の傾斜角度が大きいほど(勾配が緩やかなほど)低い値に設定される。
【0040】
そして、上述の第1実施形態と同様に、後退中の車両の車速が基準速度以上の場合、又は、アクセル開度が基準開度以上の場合(S46で「yes」の場合)に、支援手段2が作動する(S47)。これにより、車両の車輪が車止めに当接する前に、早いタイミングで車止めの形状に応じて車止めの乗り越え防止を図ることができる。
【0041】
上述の実施形態においては、本発明を特定の条件で構成した例について説明したが、本発明は種々の変更及び組み合わせを行うことができ、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0042】
1 車止め検出手段
2 支援手段
3 車速センサ
4 アクセル開度センサ
5 スピーカ
6 ディスプレイ
7 ブレーキアクチュエータ
8a、8b、8c 車止め

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後退中に、車両後方の路面上の車止めの高さを検出する車止め検出手段と、
車両が車止めを乗り越えないように、ドライバへの報知及び車両制御の少なくとも一方による支援を行う支援手段と、を備え、
前記支援手段は、前記車止めの高さが基準高さ以上であるときに、前記車止めの高さが前記基準高さ未満であるときよりも、当該支援手段の作動条件の範囲を狭くする
ことを特徴とする駐車支援装置。
【請求項2】
前記車止め検出手段は、車両の後輪が当接する前記車止めの当接面の鉛直線に対する傾斜角度を検出し、
前記支援手段は、前記当接面の傾斜角度が基準角度以上であるときに、前記当接面の傾斜角度が前記基準角度未満であるときよりも、当該支援手段の作動条件の範囲を広くする前記作動条件を緩和する
ことを特徴とする請求項1記載の駐車支援装置。
【請求項3】
前記作動条件は、車両の車速及びアクセル開度の少なくとも一つが基準値以上である場合を含む
ことを特徴とする請求項1又は2記載の駐車支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−75621(P2013−75621A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217096(P2011−217096)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)