説明

駐車補助装置

【課題】路面上に後方障害物が存在するしないにかかわらず、車両後端部と路面上に設定された目標との距離を適正間隔に保った状態で駐車することを可能とする駐車補助装置を提供する。
【解決手段】車両後端部に配置された車両用灯具から照射された光により前記車両後端部に正対した仮想鉛直スクリーン上に形成される第1配光パターンの下方を通過し、前記車両後端部から後方に所定距離離れた路面上に第2配光パターンを形成する光を照射するように構成された光学系を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車補助装置に係り、特に車両後端部と路面上に設定された目標との距離を適正に保った状態で駐車することを可能とする駐車補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両後端部と後方障害物との距離を適正に保った状態で駐車することを可能とする後退灯が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図11、図12(a)、図12(b)に示すように、特許文献1に記載の後退灯200は、光源210、反射鏡220、レンズ230、光源210からの光の一部を集光して斜め外側後方(車両前後方向に延びる基準軸Mに対し角度θ)へスポット光Sとして照射するようにレンズ230に形成されたレンズカット231を含んでいる。
【0004】
特許文献1に記載の後退灯200においては、後方障害物(立壁等の構造物)が車両Vに対し相対的に図11中のP1に位置している場合には、サイドミラーを通して運転席からスポット光Sを視認できるが、車両Vが後退し後方障害物が車両Vに対し相対的に図11中のP2に位置した場合には、スポット光Sを視認できなくなる。このスポット光Sをサイドミラーを通して運転席から視認できなくなった時点で車両Vを停車させることで、車両後端部と後方障害物(立壁等の構造物)との距離を適正に保った状態で駐車することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63−114734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記構成の後退灯200においては、スポット光Sが照射される後方障害物(立壁等の構造物)が路面上に存在する場合には車両後端部と当該後方障害物との距離を適正に保つことが可能であるものの、スポット光Sが照射される後方障害物(立壁等の構造物)が路面上に存在しない場合(例えば、路面上に白線の駐車枠のみが描かれている場合)には有効に機能しないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、路面上に後方障害物が存在するしないにかかわらず、車両後端部と路面上に設定された目標との距離を適正に保った状態で駐車することを可能とする駐車補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、車両後端部に配置された車両用灯具から照射された光により前記車両後端部に正対した仮想鉛直スクリーン上に形成される第1配光パターンの下方を通過し、前記車両後端部から後方に所定距離離れた路面上に第2配光パターンを形成する光を照射するように構成された光学系を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、車両後端部から後方に所定距離離れた路面上に形成される第2配光パターンを、路面上に設定された目標(例えば、路面上に描かれた白線の駐車枠、二本のポール間を結んだ仮想直線(運転者が主観的に定めた目標))に一致させることで、車両後端部と路面上に設定された目標との距離を適正に保った状態で駐車することが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第2配光パターンは、車幅方向に延びるカットオフラインを含んでいることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、車両後端部から後方に所定距離離れた路面上に形成される第2配光パターンのカットオフラインを、路面上に設定された目標(例えば、路面上に描かれた白線の駐車枠、二本のポール間を結んだ仮想直線(運転者が主観的に定めた目標))に一致させることで、車両後端部と路面上に設定された目標との距離を適正に保った状態で駐車することが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記車両用灯具は、後退灯、尾灯、及び、制動灯のうち少なくとも一つであり、前記光学系は、前記車両用灯具を構成する光源から放射された光の一部が透過するレンズカットを含んでおり、前記レンズカットは、前記車両用灯具を構成する光源から放射された光の一部が屈折して前記第1配光パターンの下方を通過し、前記車両後端部から後方に所定距離離れた路面上に前記第2配光パターンを形成するように構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、第2配光パターンを形成するための専用灯具を追加することなく、既存の車両用灯具にレンズカットを追加するのみで、第2配光パターンを形成することが可能となる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記車両用灯具は、後退灯、尾灯、又は、制動灯のうち少なくとも一つであり、前記光学系は、前記車両用灯具を構成する光源から放射された光の一部が入射する反射面を含んでおり、前記反射面は、前記車両用灯具を構成する光源から放射された光の一部が反射されて前記第1配光パターンの下方を通過し、前記車両後端部から後方に所定距離離れた路面上に前記第2配光パターンを形成するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、第2配光パターンを形成するための専用灯具を追加することなく、専用灯具を追加することなく、既存の車両用灯具に反射面を追加するのみで、第2配光パターンを形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、路面上に後方障害物が存在するしないにかかわらず、車両後端部と路面上に設定された目標との距離を適正間隔に保った状態で駐車することを可能とする駐車補助装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態である駐車補助装置10が搭載された車両Vの上面図である。
【図2】(a)駐車補助装置10の断面図、(b)図2(a)中の円形範囲を拡大した図である。
【図3】本発明の一実施形態である駐車補助装置10が搭載された車両Vの側面図である。
【図4】(a)第1配光パターンP1及び第2配光パターンP2の例、(b)第1配光パターンP1及び第2配光パターンP2の例(変形例)である。
【図5】光Ray2の照射角度θ(すなわちレンズカット23aの反射角度)を説明するための側面図である。
【図6】(a)〜(d)駐車補助装置10が搭載された車両Vが駐車するまでの一連の動きを説明するための図である。
【図7】駐車補助装置10(変形例)の断面図である。
【図8】駐車補助装置10(変形例)の断面図である。
【図9】(a)駐車補助装置10(変形例)の断面図、(b)図2(a)中の円形範囲を拡大した図である。
【図10】本発明の駐車補助装置10(変形例)が搭載された車両Vの上面図である。
【図11】従来の後退灯200が搭載された車両Vの上面図である。
【図12】(a)後退灯200の水平断面図、(b)図11(a)に示したレンズ230を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態である駐車補助装置について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
本実施形態の駐車補助装置10は、図1に示すように、車両用灯具20を備えた車両Vに対し適用される。
【0020】
車両用灯具20は、後退灯、尾灯、及び、制動灯のうち少なくとも一つであり、車両後端部の左右両側に配置されている(図1参照)。
【0021】
車両用灯具20は、例えば、図2(a)に示すように、光源21、焦点が光源21近傍に設定され、光源21から放射された光Ray1を反射する放物面鏡22、放物面鏡22で反射された反射光Ray1が透過するレンズ23を含んでいる。
【0022】
光源21から放射された光Ray1は、放物面鏡22で反射されてレンズ23を透過し、車両後端部に正対した仮想鉛直スクリーンS上に法規が求める光度を満たす第1配光パターンP1形成する(図3、図4(a)参照)。
【0023】
図2(a)、図2(b)に示すように、車両後部右側に配置された車両用灯具20を構成するレンズ23には(運転席が右側の場合)、光源21から放射された光の一部Ray2が透過するレンズカット23a(本発明の光学系に相当)が形成されている。レンズカット23aは、これを透過する光源21からの光の一部Ray2が屈折して第1配光パターンP1の下方を通過し(図3参照)、車両後端部から後方に所定距離W離れた路面R上に、車幅方向(すなわち、車両前後方向に延びる基準軸Xに対し直交する方向。図1参照)に延びるカットオフラインCLを含む第2配光パターンP2(図3、図4(a)参照)を形成するように構成されている。例えば、光源21が白熱電球である場合には、そのフィラメント像が一列に密集して配置されるようにレンズカット23が光源21から放射された光の一部Ray2を配光制御することで、明暗差がシャープなカットオフラインCLを形成することが可能である。
【0024】
なお、第2配光パターンP2は、その視認性を考慮すると、第1配光パターンP1と同等以上の光度であることが望ましい。また、第2配光パターンP2は、第1配光パターンP1と同一色度であってもよいし、異なる色度であってもよい。
【0025】
例えば、車両用灯具20の取り付け高さが0.35〜1.5mである場合には、車両後端部からW(例えば、W=0.3m)の位置に配置された仮想鉛直スクリーンS上の水平線下50〜80°以下にカットオフラインCLが形成されるような光Ray2の照射角度θ(すなわちレンズカット23aの反射角度)が選定される(図5参照)。
【0026】
上記構成の駐車補助装置10においては、光源21から放射された光の一部Ray2は、放物面鏡22で反射されてレンズカット23aを屈折透過して第1配光パターンP1の下方を通過し(図3参照)、車両後端部から後方に所定距離W離れた路面R上に、車幅方向に延びるカットオフラインCLを含む第2配光パターンP2を形成する(図1、図3、図4(a)参照)。
【0027】
図6(a)〜図6(d)に示すように、第2配光パターンP2は、車両Vの後退時、常に車両後端部から後方に所定距離W離れた路面R上に形成される。
【0028】
したがって、車両Vの後退時、第2配光パターンP2(又はそのカットオフラインCL)を路面R上の目標A(例えば、路面R上に描かれた白線の駐車枠、二本のポール間を結んだ仮想直線(運転者が主観的に定めた目標)、路面と壁面との境界線)に一致させることで、車両後端部と目標Aとの間に適正距離(例えば、0.3m)を保った状態(図5、図6(d)参照)で停止することが可能となる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態によれば、車両後端部から後方に所定距離W離れた路面R上に、第1配光パターンP1とは別に、カットオフラインCLを含む第2配光パターンP2(図1等参照)を形成することが可能となる。
【0030】
また、本実施形態によれば、車両後退時に、車両後端部から後方に所定距離W離れた路面上に形成される第2配光パターンP2(又はそのカットオフラインCL)を、路面R上に設定された目標A(例えば、路面R上に描かれた白線の駐車枠、二本のポール間を結んだ仮想直線(運転者が主観的に定めた目標)、路面と壁面との境界線)に一致させることで(図5、図6(d)参照)、車両後端部と路面R上に設定された目標Aとの距離を適正間隔に保った状態で駐車することが可能となる。
【0031】
また、本実施形態によれば、第2配光パターンP2を形成するための専用灯具を追加することなく、既存の車両用灯具20にレンズカット23aを追加するのみで、第2配光パターンP2を形成することが可能となる。
【0032】
また、本実施形態によれば、車両用灯具20の作用により、後退時に必要な視認範囲への照射を維持し、適切な視界を確保することが可能となる。
【0033】
また、本実施形態によれば、運転席側から見える路面Rを照射し、運転者が主観的に定めた目標Aと第2配光パターンP2(又はそのカットオフラインCL)とを一致させる構成であるため、個人の深視力能力によらず目標Aに対する接近距離を把握することが可能となる(特に車両Vが大型車両である場合に有効である)。
【0034】
次に、変形例について説明する。
【0035】
図7に示すように、レンズカット23aに代えて、車両後部右側に配置された車両用灯具20を構成する放物面鏡22の一部に形成された反射面22aを用いて第2配光パターンP2を形成してもよい。反射面22aは、これに入射する車両用灯具20からの光の一部Ray2が反射されて第1配光パターンP1の下方を通過し、車両後端部から後方に所定距離W離れた路面R上に第2配光パターンP2を形成するように構成されている。
【0036】
本変形例によれば、第2配光パターンP2を形成するための専用灯具を追加することなく、既存の車両用灯具20に反射面22aを追加するのみで、第2配光パターンP2を形成することが可能となる。
【0037】
また、図8に示すように、レンズカット23aに代えて、車両後部右側に配置された車両用灯具20の放物面鏡22とレンズ23とで構成される灯室24内に配置された反射面25を用いて第2配光パターンP2を形成してもよい。反射面25は、これに入射する光の一部Ray2が反射されて第1配光パターンP1の下方を通過し、車両後端部から後方に所定距離W離れた路面R上に第2配光パターンP2を形成するように構成されている。
【0038】
本変形例によれば、第2配光パターンP2を形成するための専用灯具を追加することなく、既存の車両用灯具20に反射面25を追加するのみで、第2配光パターンP2を形成することが可能となる。
【0039】
また、図9(a)、図9(b)に示すように、車両後部右側に配置された車両用灯具20を構成する放物面鏡22の一部に形成された反射面22a及びレンズ23に形成されたレンズカット23aを用いて第2配光パターンP2を形成してもよい。
【0040】
本変形例によれば、第2配光パターンP2を形成するための専用灯具を追加することなく、既存の車両用灯具20に反射面22a及びレンズカット23aを追加するのみで、第2配光パターンP2を形成することが可能となる。
【0041】
なお、図4(b)、図10に示すように、車両前後方向に延びる基準軸Xに対し外側にずれた位置(例えば、運転席が右側の場合、右φ°=20°)に第2配光パターンP2を形成してもよい。例えば、レンズカット23aや反射面25を調整することで、このようにずれた位置に第2配光パターンP2を形成することが可能である。
【0042】
このようにすれば、運転者は、そのずれた位置に形成される第2配光パターンP2(又はそのカットオフラインCL)をより認識しやすくなるため、第2配光パターンP2と目標Aとを一致させやすくなる。
【0043】
また、上記実施形態及び変形例では、既存の車両用灯具20に対しレンズカット23a等を追加するように説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2配光パターンP2を形成するための専用灯具を追加してもよい。
【0044】
また、第1配光パターンP1を後退灯で形成し、第2配光パターンP2を制動灯で形成してもよい。
【0045】
このようにすれば、後退時、第1配光パターンP1で後方視界を確保することが可能となるとともに、ブレーキを踏んだときには、第2配光パターンP2(赤色光)が路面を照射する。この場合、第1配光パターンP1と第2配光パターンP2との間には、輝度差だけでなく、色差も生じるため、運転者は、第2配光パターンP2と目標Aとをより一致させやすくなる。
【0046】
また、上記実施形態では、第2配光パターンP2がカットオフラインCLを含む例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2配光パターンP2は、カットオフラインCLを含まない配光パターンであってもよい。また、第2配光パターンP2は、車幅方向に延びる直線状の配光パターンに限定されず、例えば、円形の配光パターン、点線状の配光パターン、曲線状の配光パターン、その他形状の配光パターンであってもよい。
【0047】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0048】
10…駐車補助装置、20…車両用灯具、21…光源、22…放物面鏡、22a…反射面、23…レンズ、23a…レンズカット、24…灯室、25…反射面、A…目標、CL…カットオフライン、M…基準軸、P1…第1配光パターン、P2…第2配光パターン、R…路面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後端部に配置された車両用灯具から照射された光により前記車両後端部に正対した仮想鉛直スクリーン上に形成される第1配光パターンの下方を通過し、前記車両後端部から後方に所定距離離れた路面上に第2配光パターンを形成する光を照射するように構成された光学系を備えていることを特徴とする駐車補助装置。
【請求項2】
前記第2配光パターンは、車幅方向に延びるカットオフラインを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の駐車補助装置。
【請求項3】
前記車両用灯具は、後退灯、尾灯、及び、制動灯のうち少なくとも一つであり、
前記光学系は、前記車両用灯具を構成する光源から放射された光の一部が透過するレンズカットを含んでおり、
前記レンズカットは、前記車両用灯具を構成する光源から放射された光の一部が屈折して前記第1配光パターンの下方を通過し、前記車両後端部から後方に所定距離離れた路面上に前記第2配光パターンを形成するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の駐車補助装置。
【請求項4】
前記車両用灯具は、後退灯、尾灯、又は、制動灯のうち少なくとも一つであり、
前記光学系は、前記車両用灯具を構成する光源から放射された光の一部が入射する反射面を含んでおり、
前記反射面は、前記車両用灯具を構成する光源から放射された光の一部が反射されて前記第1配光パターンの下方を通過し、前記車両後端部から後方に所定距離離れた路面上に前記第2配光パターンを形成するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の駐車補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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