骨および軟骨形成の活性化
【課題】必要とされる対象の部位で、骨形成または軟骨形成活動を活性化させる治療システムを提供し、骨および軟骨の治癒を向上させる。
【解決手段】治療システム10は、硬膜22、骨膜、または骨内膜に隣接する骨または軟骨の欠損を治療する減圧装置で構成され、減圧源14と、減圧源に流体接続され、硬膜に隣接して配置されたマニホルド18とを具え、マニホルドが、硬膜に減圧をかけ、骨または軟骨を治療するよう構成されている。さらに、マニホルド送達管を具え、マニホルドがマニホルド送達管を通して組織部位へ送達される流動性材料からなる。
【解決手段】治療システム10は、硬膜22、骨膜、または骨内膜に隣接する骨または軟骨の欠損を治療する減圧装置で構成され、減圧源14と、減圧源に流体接続され、硬膜に隣接して配置されたマニホルド18とを具え、マニホルドが、硬膜に減圧をかけ、骨または軟骨を治療するよう構成されている。さらに、マニホルド送達管を具え、マニホルドがマニホルド送達管を通して組織部位へ送達される流動性材料からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に組織治療システム、特に、減圧の適用を通して、硬膜、骨膜、または骨内膜を活性化することによって新しい骨または軟骨組織の成長を促進させるシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床研究および実施は、組織部位の近くに減圧を供給することが、組織部位で新しい組織の成長を増加させ、加速させることを示してきた。この現象の適用は非常に多いが、減圧の適用は、特に創傷の治療において成功してきた。(一般的に「負圧創傷治療」、「減圧治療」、または「真空治療」として医療団体に参照される。)この治療は、肉芽組織のより早い治癒および形成の増加を含む多くの利益をもたらす。一般的に、減圧は多孔性パッドまたは他のマニホルド装置を通して組織にかけられる。この多孔性パッドは、組織および組織から出る静脈流体に減圧を分配しうるセルまたは細孔を含む。この多孔性パッドは、しばしば治療を容易にする他の要素を有する外傷用医療材料に組み込まれる。
【0003】
創傷治癒は、重なる3つの基本段階:炎症、増殖、成熟に大まかに分割できる。炎症段階は、止血および炎症によって特徴づけられている。次の段階は、主に脈管形成と、肉芽形成と、組織形成と、コラーゲン沈着と、上皮形成とを含む。最後の段階は、成熟および再造形を含む。創傷治癒プロセスの複雑さは、糖尿病、年齢、甲状腺低下、栄養失調、および肥満といった全身的要因はもちろん、虚血、水腫、および感染といった局所的要因の影響により増大される。創傷治癒の律速段階は、しかしながら、しばしば脈管形成である。
【0004】
骨および軟骨治癒において、骨膜は、骨芽細胞および軟骨芽細胞に発達する前駆細胞の一次源(primary source)である。骨髄、骨内膜、小血管、および線維性結合組織は、前駆細胞の二次源(secondary source)である。しかしながら、骨および、特に軟骨治癒は、しばしば速度が遅く不十分である。このため医療団体は、組織の修復および骨と軟骨の欠損置換の改良された方法を開発させるよう求め続けてきた。
【0005】
脳顔面頭蓋の欠損に関しては、修復または置換の成功は、自律的な硬膜の骨形成能力なしでは大きく損なわれる。残念ながら人間の硬膜はおよそ2歳になったら、その骨形成能力を急速に失い始める。今日の脳顔面頭蓋の欠損の再建技術は、大人の硬膜の骨形成不足に対抗するため、自己の、同種異形の、補てつ材料を用いる。成長因子はまた、一般的に組織再生を容易にするのに用いられる。これらの技術は、脳顔面頭蓋のいくつかの機能再建を達成できるが、これらのすべては、ドナー部位罹患率、予測できない移植片修復、不十分な自己資源、ウィルス性疾患伝染、免疫学的不適合、構造的破損、不満足な美観結果、およびコストといった要因によって本質的に制限される。さらに、成長因子によって促される骨芽細胞は、初めは硬膜の未分化間葉幹細胞由来であり、後に限定されるが、欠損を囲む頭蓋骨の細胞よりも、重なる結合組織の細胞によって増加される。サイトカインまたは他の要因は、硬膜および重なる結合組織由来の骨形成細胞を促すのに必要とされる。
【0006】
このように、骨および軟骨の治癒を向上させる方法が望まれている。本発明はこの必要性に取り組むものである。
【発明の概要】
【0007】
既存の骨および軟骨を治癒する方法により提示される問題は、本書に記載される例示的な実施例のシステムおよび方法により解決される。一実施例において、方法は、必要とされる対象部位で、骨形成または軟骨形成を活性化させるステップを含んで提供される。この方法は、対象部位で、硬膜、骨膜、または骨内膜に減圧をかけるステップを含む。
【0008】
別の実施例において、方法は、対象の骨または軟骨の欠損を治療するステップを含んで提供される。この方法は、欠損に隣接する硬膜、骨膜、または骨内膜に減圧をかけるステップを含む。
【0009】
さらに別の実施例において、硬膜、骨膜、または骨内膜に隣接する骨または軟骨の欠損を治療する減圧装置の利用が提供される。
【0010】
さらにまた別の実施例において、骨または軟骨の欠損を治療する構成が提供される。この構成は減圧装置および生体適合性スキャホールドを含む。この構成により、欠損が硬膜、骨膜、または骨内膜に隣接される。
【0011】
さらにまた別の実施例において、硬膜、骨膜、または骨内膜に隣接する骨または軟骨の欠損を治療する構成を作成するための減圧装置および生体適合性スキャホールドの利用が提供される。
【0012】
例示的な実施例の別の目的、特徴、および利点が、以下の図面および詳細な説明を参照して明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、組織スキャホールドが硬膜に接触するように頭蓋の欠損に適用される組織スキャホールドの概略図である。
【図2】図2は、ウサギの頭蓋に適用され、無傷の硬膜の骨形成の活性化を通して新骨の成長を促す本発明の実施例による骨促進システムおよび方法を示す写真である。
【図3】図3は、正常な構成の硬膜鞘を、本発明の一実施例により減圧をかけたウサギの頭蓋において新しく形成される骨と比べて示す動物検体の拡大図である。
【図4A】図4は、実験結果の拡大図である。図4Aは、新骨形成領域と新骨未形成領域との境界を示す動物検体の拡大図である。
【図4B】図4は、実験結果の拡大図である。図4Bは、中枢神経系組織および組織スキャホールドが無傷の硬膜によって隔てられていない動物検体の拡大図である。
【図4C】図4は、実験結果の拡大図である。図4Cは、新骨形成が無傷の硬膜と密接に接触している動物検体の拡大図である。
【図5】図5は、未処置で、未損傷のウサギの頭蓋骨の表面の拡大図である。
【図6】図6は、減圧をかけずに、GranuFoam(登録商標)に6日間接触させていた骨の拡大図である。
【図7】図7は、減圧をかけて、GranuFoam(登録商標)に6日間接触させていた骨の拡大図である。
【図8】図8は、減圧をかけて、GranuFoam(登録商標)に6日間接触させていた骨の別の拡大図である。
【図9】図9は、骨膜を覆っている表情筋組織を有する、無傷の骨の表面の拡大図である。点は、皮質骨と骨膜の薄い層間の区画を示す。
【図10A】図10Aは、減圧とGranuFoam(登録商標)との接触に反応する軟骨組織の誘発を示す拡大図である。
【図10B】図10Bは、減圧とGranuFoam(登録商標)との接触に反応する軟骨組織の誘発を示す拡大図である。
【図11A】図11は、GranuFoam(登録商標)(A)または未処置の反対側の対照標準(B)を通して減圧で処理された骨において、骨髄組織とインターフェイスで連結している骨内膜表面のプロシオンレッド染色を示す拡大図(10倍)である。
【図11B】図11は、GranuFoam(登録商標)(A)または未処置の反対側の対照標準(B)を通して減圧で処理された骨において、骨髄組織とインターフェイスで連結している骨内膜表面のプロシオンレッド染色を示す拡大図(10倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の例示的な実施例の詳細な説明において、その一部を形成する添付の図面を参照する。これらの実施例は、当業者が本発明を実施できるよう十分詳細に記載され、他の実施例が利用されてもよく、本発明の意図または範囲を逸脱することなく、論理的な構成の、機械的な、電気的な、および化学的な変更がなされてもよい。当業者が本書に記載された実施例を実施するのに必要ではない詳細を避けるために、記載は当業者に必然的な情報を省略できる。以下の詳細な説明は、したがって、限定的な意味にとられるものではなく、例示的な実施例の範囲は添付のクレームによってのみ定義される。
【0015】
この明細書の文脈のなかで、一般的に「減圧」という用語は、治療を受ける組織部位での雰囲気圧力より小さいものをいう。大抵の場合、この減圧は患者が置かれている場所の大気圧よりも低い。「真空」および「負圧」という用語は、組織部位にかけられる圧力を記載するのに用いられてもよいが、組織部位にかけられる実際の圧力は、一般的に完全な真空よりもはるかに大きくてもよい。この命名法と整合するように、減圧または真空圧の増加とは、絶対圧力の相対的な減少をいい、減圧または真空圧の減少とは、絶対圧力の相対的な増加をいう。組織の減圧治療を記述する様々な方法や構成は、以下の特許公報に記載されている:WO08042481A2、WO08036361A2、WO08036359A2、WO08036162A2、WO08013896A2、WO07143060A2、WO07133556A2、WO07133555A2、WO07106594A2、WO07106592A2、WO07106591A2、WO07106590A2、WO07106589A2、WO07092397A2、WO07067685A2、WO05033273A2、WO05009488A2、WO04105576A2、WO04060148A2、WO03092620A2、WO03018098A2、WO0061206A1、WO0038755A2、US20070123895、US7351250、US7346945、US7316672、US7279612、US721402、US7186244、US7108683、US7077832、US7070584、US7004915、US6994702、US6951553、US6936037、US6856821、US6814079、US6767334、US6695823、およびUS6135116。
【0016】
本出願は、硬膜、骨膜、または骨内膜に隣接する骨または軟骨への減圧の利用が、(欠損が脳顔面頭蓋の欠損である場合の)硬膜、骨膜、または骨内膜による骨または軟骨形成を誘発するという発見に基づく。骨または軟骨への泡状外傷用医薬材料の適用も、新骨や軟骨形成を促すことができるが、減圧治療の範囲内ではない。実施例を参照されたい。
【0017】
このように、いくつかの実施例において、適用例は、必要とされる対象部位で骨または軟骨形成を活性化させる方法へと導かれる。この方法は、対象部位で、硬膜、骨膜、または骨内膜に減圧をかけるステップを含む。好適には、対象は、硬膜、骨膜、または骨内膜に隣接して骨または軟骨の欠損を有する。しかしながら、この適用は、骨または軟骨の欠損に限定されない。対象は、例えば、欠損のない硬膜、骨膜、または骨内膜に関して、および身体のどこかの欠損部位に移植される結果として生じる新しい組織に関して、これらの方法を用いて治療されてもよい。
【0018】
いくつかの実施例において、減圧は硬膜にかけられる。別の実施例において、減圧は骨膜にかけられる。実施例4に示されているように、無傷の骨中に流れる骨内膜液は、骨膜へ減圧を短くかけることによって増加する。増加した骨内膜の流体の流れは、骨内膜での骨形成の増加を示すと信じられている。こうして骨内膜の骨形成活動は、減圧を骨膜にかけることにより促される。
【0019】
さらなる実施例において、減圧は骨内膜にかけられる。このような治療は、例えば、減圧を骨の間隙にかけ、間隙に配置されたスキャホールドに骨形成を促す場所において有益である。
【0020】
このような方法は、任意の特定のタイプの欠損の治療に狭く限定されない。しかしながら、これらの方法を用いて治療された対象の最も重要な欠損は、(a)創傷から、(b)腫瘍のため、(c)変性疾患(例えば、変形性関節症)、または(d)先天性のものであると認識される。いくつかの実施例において、欠損は骨の欠損である。別の実施例において、欠損は軟骨の欠損である。
【0021】
生体適合性スキャホールドが、部位に配置されることが望ましい。欠損を有する部位では、生体適合性スキャホールドは欠損に好適に挿入される。この方法は、任意の特定の生体適合性スキャホールドの利用に限定されず;多くの有用な生体適合性スキャホールドがこの技術において周知である。いくつかの実施例では、生体適合性スキャホールドは生体吸収性スキャホールドである。好適な実施例において、生体吸収性ポリマは、ポリラクチド−コグリコリド(PLAGA)ポリマ、またはポリエチレングリコール−PLAGAコポリマである。
【0022】
生体適合性スキャホールドはまた、創傷治癒を促進する成分を含んでもよい。このような成分は、サイトカイン、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)、塩基性線維細胞増殖因子(bFGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、アンギオゲン、アンギオポエチン−1、顆粒球コロニー刺激因子(G−CFS)、肝細胞増殖因子/散乱係数(HGF/SF)、インターロイキン−8(IL−8)、胎盤増殖因子、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD−ECGF)、血小板由来増殖因子−BB(PDGF−BB)、トランスホーシング増殖因子−α(TGF−α)、トランスホーシング増殖因子(TGF−β)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、血管内皮増殖因子(VEGF)、またはマトリックスメタプロテアーゼ(MMP)といった血管形成または細胞成長を促進させるものである。有用にスキャホールドに含まれうる他の要素は、抗生物質、または細胞を含み、これらは胚性肝細胞、成人造血肝細胞、骨髄間質細胞、または間葉系肝細胞といった骨芽細胞、軟骨芽細胞、または維管束組織となりうる。この細胞は、オプションで上記サイトカインの一つといった有用なプロテインを表現するよう遺伝学的に巧みに処理されてもよい。
【0023】
好適な実施例において、減圧源に接続されているマニホルドを通して減圧が欠損にかけられ、このマニホルドは多孔性であり、欠損上または欠損内に配置される。流動性材料が欠損に充填されるように、マニホルドは、マニホルド送達管を通して組織部位へと送達される流動性材料からなることもまた好適である。いくつかの実施例において、マニホルドは生体吸収性ポリマであり、生体適合性スキャホールドとして供給されてもよい。このような生体吸収性ポリマの限定しない例は、ポリラクチド−コグリコリド(PLAGA)ポリマまたはポリエチレングリコール−PLAGAコポリマを含む。
【0024】
図1は、硬膜に隣接する欠損に減圧がかけられる方法の一例を示している。同様の減圧システムが骨膜または骨内膜を用いて利用可能であることに留意されたい。
【0025】
図1を参照すると、即時の適用例の非限定的な実施例を記載しており、システム10は、硬膜22に隣接および接触して配置されているマニホルド18に流体接続される減圧源14を含んで提供される。このマニホルド18は、減圧源14によって硬膜22に供給される減圧を分配可能である任意の生体適合性材料を含んでもよい。マニホルド18は、多孔性材料から形成されてもよいし、減圧の分配をアシストする流体チャネルを含んでもよい。一実施例において、マニホルド18はスキャホールドを含んでもよいし、マニホルド全体は新しい組織の成長および完成を支持しうるスキャホールドであってもよい。このスキャホールドは、新しい組織の成長に組み込まれてもよいし、新しい組織の修復または再生に続いて適所に留まってもよい。スキャホールドは、組織再建または再生の後に身体に吸収される生体吸収性材料から形成されてもよい。
【0026】
キャニスタ30は、減圧源14とマニホルド18との間に流体接続され、組織浸出液を捕捉および保持し、減圧がかけられている間、他の流体はマニホルド18に隣接する領域から取り除かれる。フィルタは、マニホルド18と減圧源14との間に流体接続されており、組織液およびバクテリアによる減圧源14の汚染を防ぐことができる。好適には、減圧源14とマニホルド18(および他の任意の流体要素)との間の流体接続は、医療グレード導管34によって設けられる。この導管34はマニホルドアダプタ(図示せず)によって、または導管34がマニホルド18に関する孔または流体チャネルと直接連通するよう、導管34の一方端をマニホルド18に直接接触させて配置することによりマニホルド18に流体的に取り付けられてもよい。
【0027】
一実施例において、マニホルド18は生体吸収性スキャホールドであり、減圧源14は、導管34およびスキャホールドを通じて、硬膜22に減圧を供給する減圧源14である。作用のいかなる特定の構成によって拘束されることなく、硬膜22は減圧をかけると、新生児の、未成熟な硬膜に見られるのと同じような硬膜22の表現型発現を活性化させるよう硬膜22に力を与えると考えられる。減圧や力を硬膜に与えることによる硬膜自体の刺激は、新骨および支持組織を用いてスキャホールドを配置するには十分である。実施例1を参照されたい。
【0028】
この減圧治療は、適用の任意の特定の時間に狭く限定されない。実施例1は、一日(24時間)継続が、新骨の形成、欠損間隙の架橋、および有効なスキャホールドの浸透を促すのに十分であることを証明している。様々な実施例において、減圧は0.1時間乃至144時間、またはそれ以上の間、適用可能である。別の実施例において、減圧は少なくとも24時間かけられる。別の実施例において、この減圧は24時間未満、例えば12時間かけられる。さらなる実施例において、減圧は12時間乃至3日間かけられる。
【0029】
実施例2、3で証明されるように、骨膜または骨内膜での所望の骨または軟骨成長の部位において(例えば、欠損において)、単に泡沫マニホルド(好適にはGranuFoam(登録商標))を設置することは、減圧を用いるほどではないが、骨または軟骨の成長を促す。このため、骨または軟骨の成長を促す減圧なしで、生体適合性泡沫が、硬膜、骨膜、または骨内膜に隣接する欠損に好適に配置されてもよいことが考慮される。
【0030】
本発明はまた、対象における骨または軟骨の欠損を治療する方法に導かれる。この方法は、欠損に隣接する硬膜、骨膜、または骨内膜に減圧をかけるステップを含む。いくつかの実施例において、減圧は硬膜にかけられる。別の実施例において、減圧は骨膜にかけられる。さらに別の実施例において、減圧は骨内膜にかけられる。
【0031】
上述の方法と同様に、この方法での生体適合性スキャホールドは、欠損に好適に挿入される。この生体適合性スキャホールドは、好適には生体吸収性ポリマであり、より好適にはポリラクチド−コグリコリド(PLAGA)ポリマ、またはポリエチレングリコール−PLAGAコポリマである。
【0032】
好適な実施例において、減圧源に接続されているマニホルドを通して、減圧は硬膜、骨膜、または骨内膜にかけられる。ここではマニホルドは多孔性であり、かつ欠損上または欠損内に配置されている。さらに好適には、流動性材料が欠損に充填されるように、マニホルドは、マニホルド送達管を通して組織部位へと送達された流動性材料からなってもよい。さらに好適には、マニホルドは生体吸収性ポリマを含み、生体適合性スキャホールドとして提供されうる。この最適な生体吸収性ポリマは、ポリラクチド−コグリコリド(PLAGA)ポリマ、またはポリエチレングリコール−PLAGAコポリマである。
【0033】
これらの方法において、減圧は0.1時間乃至144時間、またはそれ以上のいずれかの間かけられてもよい。多くの実施例において、減圧は少なくとも24時間かけられる。
【0034】
この適用はまた、硬膜、骨膜、また骨内膜に隣接する骨または軟骨の欠損を治療する減圧装置の利用に導かれる。上述の方法と同様に、減圧装置は、好適には減圧源に接続されているマニホルドを含み、このマニホルドは多孔性であり、かつ欠損上または欠損内に配置されている。さらに好適には、流動性材料が欠損に充填されるように、マニホルドは、マニホルド送達管を通して組織部位へと送達された流動性材料からなる。
【0035】
さらなる実施例において、発明は骨または軟骨の欠損を治療する構成に導かれる。この構成は減圧装置および生体適合性スキャホールドを含み、この欠損は硬膜、骨膜、または骨内膜に隣接している。好適には、生体適合性スキャホールドは生体吸収性ポリマであり、さらに好適には、ポリラクチド−コグリコリド(PLAGA)ポリマ、またはポリエチレングリコール−PLAGAコポリマである。
【0036】
好適な構成において、減圧装置は減圧源に接続されているマニホルドを具える。これらの実施例において、このマニホルドは多孔性である。好適には、マニホルドは生体適合性スキャホールドを含む。さらに好適には、マニホルドは生体吸収性ポリマを含み、最適には、ポリラクチド−コグリコリド(PLAGA)ポリマ、またはポリエチレングリコール−PLAGAコポリマを含む。
【0037】
これらの実施例において、好適には流動性材料が欠損に充填されるように、マニホルドは、マニホルド送達管を通して組織部位へと送達された流動性材料からなる。
【0038】
この適用はさらに、硬膜、骨膜、骨内膜に隣接する骨または軟骨欠損を治療する構成を作成する減圧装置および生体適合性材料の利用へと導かれる。好適には、この生体適合性スキャホールドは、生体吸収性ポリマ、さらに好適にはポリラクチド−コグリコリド(PLAGA)ポリマ、またはポリエチレングリコール−PLAGAコポリマである。
【0039】
この利用において、好適には減圧装置は、減圧源に接続されているマニホルドを具え、このマニホルドは多孔性である。より好適には、マニホルドは生体適合性スキャホールドである。さらに好適には、ポリラクチド−コグリコリド(PLAGA)ポリマ、またはポリエチレングリコール−PLAGAコポリマである。
【0040】
好適な実施例において、流動性材料が欠損に充填されるように、マニホルドは、マニホルド送達管を通して組織部位へと送達された流動性材料からなる。
【0041】
好適な実施例が以下の例に記載されている。本クレームの範囲内で本書に記載されるような発明の明細書または実施例を考慮することにより、別の実施例が当業者に明らかになるであろう。例とともに明細書は例示的なものであり、発明の範囲と意図は、これらの実施例に続くクレームにより示される。
【0042】
実施例1.減圧を用いた硬膜での骨形成活動の刺激
図2を参照すると、スキャホールドを通して無傷の硬膜に減圧をかける影響を評価すべく頭蓋の欠損が調査された。大きな寸法の欠損が、ウサギの頭蓋に形成され、硬膜は無傷のままとされた。図1(すなわち、マニホルドおよび/またはスキャホールド18)に示されているのと同様のスキャホールドが、硬膜と接触して配置された。いくつかのテストを、減圧をかけた時間の長さを変えて行われた。硬膜と接触して配置されたスキャホールドに減圧はかけないで、対照テストを行った。以降の12週間について、頭蓋およびスキャホールドのサンプルにおける各々特定の欠損の生存中の治癒が調査された(減圧がかけられた時間を含む)。測定された値は、観察された新骨領域量と、定量的な橋梁評価のパーセンテージと、スキャホールド浸潤の全体のパーセンテージと、スキャホールドの上半分への新骨成長の浸透とを含む。これらの測定は以下の表1に示されている。
【0043】
【表1】
【0044】
「新骨」は、スキャホールドに形成された骨領域全体である。「架橋評価」は、欠損の中心を通り計測される際、欠損の一方側から他方側へ骨を用いてブリッジされた欠損のパーセントである。欠損を閉じる有効性を示すので、架橋評価は重要な臨床要因である。「スキャホールド湿潤パーセント」は、骨で満たされているスキャホールドでの使用可能な空間の全体のパーセントである。「上半分浸潤」は、スキャホールドの上半分の骨量である。
【0045】
表1に示されているように、減圧の適用は対照標準検体に関して、テストされたすべての骨形成パラメータを著しく増加させた。調査中は、組織スキャホールドの挿入前に、硬膜を維持すべくケアがなされた。統計上、減圧は各時点で対照標準より多量の新骨の沈着を発生させ、適用の一日後には境界イベントが達成されることを示している。より長期間の適用は架橋評価を高めなかったが、とりわけ硬膜からさらに取り除かれる組織のスキャホールドの上半分における骨の沈着の分布に影響を及ぼした。欠損上の軟組織は減圧にさらされなかったので、観察および定量化された差異はおそらく硬膜の活性化と関係がある。
【0046】
図3乃至4Cを参照すると、拡大図は上述のテストで得られた検体をとったものである。図3は、ウサギの頭蓋における新骨45に隣接する硬膜鞘40の正常な構成の拡大図を示している。また、硬膜鞘40と新骨45との間の骨芽細胞47も示されている。新骨形成の調査および減圧にさらされたスキャホールドへの組込みにおいて、スキャホールドへの骨形成反応における無傷の硬膜の影響が確認された。図4Aは、新骨形成領域55と新骨形成されない領域60との間のはっきりした境界を示している動物検体の拡大図である。双方の領域はスキャホールド62を含むが、無傷の硬膜の不在は新骨形成の不在と相関している。図4Aにおいて、新骨形成55は無傷の硬膜64に近接して配置されている。図4Bは検体を示しており、中枢神経系組織70および組織のスキャホールド75は、無傷の硬膜によって隔てられていない。図4Bで目立って欠けているのは、新骨の形成である。対照的に図4Cは、硬膜80との密着接触において、はっきりした硬膜80および多量の新骨形成90を示している。
【0047】
実施例2.泡沫マニホルドおよび減圧による骨膜骨形成反応の刺激
泡沫マニホルドおよび減圧は、骨膜を誘導し、新骨を合成させる能力が評価された。無傷で、損傷がないウサギの頭蓋骨膜が露出された。GranuFoam(登録商標)(KCI Licencing,Inc.,San Antonio TX)泡状外傷用医療材料が骨に適用される。いくつかの治療において、泡で覆われた骨がまた減圧にさらされた。処理後、動物は犠牲となり、治療された骨はパラフィン包埋、切開、および着色され、新骨形成の治療の影響を評価する。
【0048】
図5は、未処理で、損傷のないウサギの骨膜を示している。これは、骨膜の薄い層の配置を示している。この骨膜は薄く、かつ目立たない。対照的に図6は、骨膜に重なる肉芽組織の誘導を示しており、発泡体が減圧をかけないで6日間骨の表面に接触維持されている。肉芽組織は減圧処理なしで、発泡体に骨を晒すことによって誘導された。このことは、骨膜に重なる粒状組織の泡の誘導を証明している。図7は、発泡体および減圧(−125mmHg)を用いた骨の治療を示している。新骨の形成は、発泡体処理のみにより増強された。図8は、発泡体および減圧にさらされた骨の別の部位を示しており、新しく形成された粒状組織下での新骨の沈着を示している。この新骨の沈着は、もとの骨膜の皮質界面上に重なる。
【0049】
結論として、この実施例は発泡体のみが提供される際の新骨の誘導を示している。さらに迅速で、広範囲な骨形成は、泡を通した減圧の適用を用いて起こる。
【0050】
実施例3.軟骨組織形成の誘導
軟骨形成が、無傷の頭蓋骨膜の表面への減圧療法の適用に反応して観察された。これらの観察は、療法に反応した軟骨形成が独特であることが重要であり、組織工学の分野において大いに興味の対象となる。これらの形成は、スキャホールドが不在であり、かつ減圧の適用のみで観察されたものである。対照標準においては、軟骨形成は全く見られない。
【0051】
先天性異常または疾患および外傷によってひき起こされた軟骨変性は、大きな臨床的因果関係がある。血液供給の欠乏およびその後の創傷治癒反応のため、軟骨へのダメージは、一般的に身体による不完全な修復の結果となる。十分な厚さの関節軟骨または骨軟骨の損傷は、正常な炎症反応を可能にするが、粗悪な繊維軟骨形成という結果となる。多くの場合、外科的処置は唯一のオプションである。軟骨損傷の修復処置はしばしば満足度の低いものであり、全機能をもとに戻したり、組織を本来の正常な状態に戻したりすることはめったにない。本実施例はGranoFoam(登録商標)および減圧を用いて、骨膜から新しい軟骨を誘導することを実証する。
【0052】
発泡体マニホルドおよび減圧は骨膜を誘導し、新しい軟骨を合成する能力を評価された。無傷で、損傷のないウザギの頭蓋が露出された。GranoFoam(登録商標)(KCI Licensing.,Inc.,San Antonio TX)泡状外傷用医薬材料が骨に適用された。いくつかの治療を用いて、泡で覆われた骨はまた減圧にさらされた。治療後、動物は犠牲となり、治療された骨は、パラフィン包埋、切開、および着色され、新骨形成の処理の効果を評価する。
【0053】
図9は、未処理で、損傷のないウサギの頭蓋の骨膜を示している。点線は、皮質骨と骨膜の薄い膜との間の区画を示している。対照的に図10A、10Bは、GranoFoam(登録商標)と減圧(−125mmHg)を用いて、広範囲な軟骨組織が骨膜に重なり誘導されたことを示す。
【0054】
実施例4.骨内膜活動の誘導
骨内膜の骨形成活動の誘導に関して、減圧治療の効果が評価された。対側の羊の中手骨が用いられた。染料プロシオンレッド(0.8%)は、骨のカニューレ処理された正中動脈に10分間導入された。一つの骨はまた減圧(−125mmHg)にさらされた。対側の骨は減圧にさらされなかった。治療後、これらの骨は80%のエチルアルコールに固定され、それから緑のフィルタを通して蛍光顕微鏡に置かれる。図11は結果を示している。(プロシオンレッド染料によって測定されるように)減圧で処理された骨(図11A)は未処理の骨(図11B)よりはるかに大きな循環を示し、治療が外側の骨膜表面に行われたにもかかわらず、減圧により増加した流体の流れを示している。
【0055】
上述を考慮すると、発明のいくつかの利点が達成され、別の利点が得られたことが分かる。
【0056】
発明の範囲を逸脱することなく、上記方法および構成において様々な変更が可能であるように、上記に含まれるすべての事柄および添付の図面に示されるものは、限定の意味ではなく、説明として解釈される。
【0057】
本明細書に記載されたすべての参照は、参照により本書に組み込まれる。本書の参照の説明は、著者によってなされる主張が単に意図されるものであり、任意の参照が先行技術を構成することを容認しない。出願人は、記載された引用の正確さと妥当性に異議を申し立てる権利を保留する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に組織治療システム、特に、減圧の適用を通して、硬膜、骨膜、または骨内膜を活性化することによって新しい骨または軟骨組織の成長を促進させるシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床研究および実施は、組織部位の近くに減圧を供給することが、組織部位で新しい組織の成長を増加させ、加速させることを示してきた。この現象の適用は非常に多いが、減圧の適用は、特に創傷の治療において成功してきた。(一般的に「負圧創傷治療」、「減圧治療」、または「真空治療」として医療団体に参照される。)この治療は、肉芽組織のより早い治癒および形成の増加を含む多くの利益をもたらす。一般的に、減圧は多孔性パッドまたは他のマニホルド装置を通して組織にかけられる。この多孔性パッドは、組織および組織から出る静脈流体に減圧を分配しうるセルまたは細孔を含む。この多孔性パッドは、しばしば治療を容易にする他の要素を有する外傷用医療材料に組み込まれる。
【0003】
創傷治癒は、重なる3つの基本段階:炎症、増殖、成熟に大まかに分割できる。炎症段階は、止血および炎症によって特徴づけられている。次の段階は、主に脈管形成と、肉芽形成と、組織形成と、コラーゲン沈着と、上皮形成とを含む。最後の段階は、成熟および再造形を含む。創傷治癒プロセスの複雑さは、糖尿病、年齢、甲状腺低下、栄養失調、および肥満といった全身的要因はもちろん、虚血、水腫、および感染といった局所的要因の影響により増大される。創傷治癒の律速段階は、しかしながら、しばしば脈管形成である。
【0004】
骨および軟骨治癒において、骨膜は、骨芽細胞および軟骨芽細胞に発達する前駆細胞の一次源(primary source)である。骨髄、骨内膜、小血管、および線維性結合組織は、前駆細胞の二次源(secondary source)である。しかしながら、骨および、特に軟骨治癒は、しばしば速度が遅く不十分である。このため医療団体は、組織の修復および骨と軟骨の欠損置換の改良された方法を開発させるよう求め続けてきた。
【0005】
脳顔面頭蓋の欠損に関しては、修復または置換の成功は、自律的な硬膜の骨形成能力なしでは大きく損なわれる。残念ながら人間の硬膜はおよそ2歳になったら、その骨形成能力を急速に失い始める。今日の脳顔面頭蓋の欠損の再建技術は、大人の硬膜の骨形成不足に対抗するため、自己の、同種異形の、補てつ材料を用いる。成長因子はまた、一般的に組織再生を容易にするのに用いられる。これらの技術は、脳顔面頭蓋のいくつかの機能再建を達成できるが、これらのすべては、ドナー部位罹患率、予測できない移植片修復、不十分な自己資源、ウィルス性疾患伝染、免疫学的不適合、構造的破損、不満足な美観結果、およびコストといった要因によって本質的に制限される。さらに、成長因子によって促される骨芽細胞は、初めは硬膜の未分化間葉幹細胞由来であり、後に限定されるが、欠損を囲む頭蓋骨の細胞よりも、重なる結合組織の細胞によって増加される。サイトカインまたは他の要因は、硬膜および重なる結合組織由来の骨形成細胞を促すのに必要とされる。
【0006】
このように、骨および軟骨の治癒を向上させる方法が望まれている。本発明はこの必要性に取り組むものである。
【発明の概要】
【0007】
既存の骨および軟骨を治癒する方法により提示される問題は、本書に記載される例示的な実施例のシステムおよび方法により解決される。一実施例において、方法は、必要とされる対象部位で、骨形成または軟骨形成を活性化させるステップを含んで提供される。この方法は、対象部位で、硬膜、骨膜、または骨内膜に減圧をかけるステップを含む。
【0008】
別の実施例において、方法は、対象の骨または軟骨の欠損を治療するステップを含んで提供される。この方法は、欠損に隣接する硬膜、骨膜、または骨内膜に減圧をかけるステップを含む。
【0009】
さらに別の実施例において、硬膜、骨膜、または骨内膜に隣接する骨または軟骨の欠損を治療する減圧装置の利用が提供される。
【0010】
さらにまた別の実施例において、骨または軟骨の欠損を治療する構成が提供される。この構成は減圧装置および生体適合性スキャホールドを含む。この構成により、欠損が硬膜、骨膜、または骨内膜に隣接される。
【0011】
さらにまた別の実施例において、硬膜、骨膜、または骨内膜に隣接する骨または軟骨の欠損を治療する構成を作成するための減圧装置および生体適合性スキャホールドの利用が提供される。
【0012】
例示的な実施例の別の目的、特徴、および利点が、以下の図面および詳細な説明を参照して明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、組織スキャホールドが硬膜に接触するように頭蓋の欠損に適用される組織スキャホールドの概略図である。
【図2】図2は、ウサギの頭蓋に適用され、無傷の硬膜の骨形成の活性化を通して新骨の成長を促す本発明の実施例による骨促進システムおよび方法を示す写真である。
【図3】図3は、正常な構成の硬膜鞘を、本発明の一実施例により減圧をかけたウサギの頭蓋において新しく形成される骨と比べて示す動物検体の拡大図である。
【図4A】図4は、実験結果の拡大図である。図4Aは、新骨形成領域と新骨未形成領域との境界を示す動物検体の拡大図である。
【図4B】図4は、実験結果の拡大図である。図4Bは、中枢神経系組織および組織スキャホールドが無傷の硬膜によって隔てられていない動物検体の拡大図である。
【図4C】図4は、実験結果の拡大図である。図4Cは、新骨形成が無傷の硬膜と密接に接触している動物検体の拡大図である。
【図5】図5は、未処置で、未損傷のウサギの頭蓋骨の表面の拡大図である。
【図6】図6は、減圧をかけずに、GranuFoam(登録商標)に6日間接触させていた骨の拡大図である。
【図7】図7は、減圧をかけて、GranuFoam(登録商標)に6日間接触させていた骨の拡大図である。
【図8】図8は、減圧をかけて、GranuFoam(登録商標)に6日間接触させていた骨の別の拡大図である。
【図9】図9は、骨膜を覆っている表情筋組織を有する、無傷の骨の表面の拡大図である。点は、皮質骨と骨膜の薄い層間の区画を示す。
【図10A】図10Aは、減圧とGranuFoam(登録商標)との接触に反応する軟骨組織の誘発を示す拡大図である。
【図10B】図10Bは、減圧とGranuFoam(登録商標)との接触に反応する軟骨組織の誘発を示す拡大図である。
【図11A】図11は、GranuFoam(登録商標)(A)または未処置の反対側の対照標準(B)を通して減圧で処理された骨において、骨髄組織とインターフェイスで連結している骨内膜表面のプロシオンレッド染色を示す拡大図(10倍)である。
【図11B】図11は、GranuFoam(登録商標)(A)または未処置の反対側の対照標準(B)を通して減圧で処理された骨において、骨髄組織とインターフェイスで連結している骨内膜表面のプロシオンレッド染色を示す拡大図(10倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の例示的な実施例の詳細な説明において、その一部を形成する添付の図面を参照する。これらの実施例は、当業者が本発明を実施できるよう十分詳細に記載され、他の実施例が利用されてもよく、本発明の意図または範囲を逸脱することなく、論理的な構成の、機械的な、電気的な、および化学的な変更がなされてもよい。当業者が本書に記載された実施例を実施するのに必要ではない詳細を避けるために、記載は当業者に必然的な情報を省略できる。以下の詳細な説明は、したがって、限定的な意味にとられるものではなく、例示的な実施例の範囲は添付のクレームによってのみ定義される。
【0015】
この明細書の文脈のなかで、一般的に「減圧」という用語は、治療を受ける組織部位での雰囲気圧力より小さいものをいう。大抵の場合、この減圧は患者が置かれている場所の大気圧よりも低い。「真空」および「負圧」という用語は、組織部位にかけられる圧力を記載するのに用いられてもよいが、組織部位にかけられる実際の圧力は、一般的に完全な真空よりもはるかに大きくてもよい。この命名法と整合するように、減圧または真空圧の増加とは、絶対圧力の相対的な減少をいい、減圧または真空圧の減少とは、絶対圧力の相対的な増加をいう。組織の減圧治療を記述する様々な方法や構成は、以下の特許公報に記載されている:WO08042481A2、WO08036361A2、WO08036359A2、WO08036162A2、WO08013896A2、WO07143060A2、WO07133556A2、WO07133555A2、WO07106594A2、WO07106592A2、WO07106591A2、WO07106590A2、WO07106589A2、WO07092397A2、WO07067685A2、WO05033273A2、WO05009488A2、WO04105576A2、WO04060148A2、WO03092620A2、WO03018098A2、WO0061206A1、WO0038755A2、US20070123895、US7351250、US7346945、US7316672、US7279612、US721402、US7186244、US7108683、US7077832、US7070584、US7004915、US6994702、US6951553、US6936037、US6856821、US6814079、US6767334、US6695823、およびUS6135116。
【0016】
本出願は、硬膜、骨膜、または骨内膜に隣接する骨または軟骨への減圧の利用が、(欠損が脳顔面頭蓋の欠損である場合の)硬膜、骨膜、または骨内膜による骨または軟骨形成を誘発するという発見に基づく。骨または軟骨への泡状外傷用医薬材料の適用も、新骨や軟骨形成を促すことができるが、減圧治療の範囲内ではない。実施例を参照されたい。
【0017】
このように、いくつかの実施例において、適用例は、必要とされる対象部位で骨または軟骨形成を活性化させる方法へと導かれる。この方法は、対象部位で、硬膜、骨膜、または骨内膜に減圧をかけるステップを含む。好適には、対象は、硬膜、骨膜、または骨内膜に隣接して骨または軟骨の欠損を有する。しかしながら、この適用は、骨または軟骨の欠損に限定されない。対象は、例えば、欠損のない硬膜、骨膜、または骨内膜に関して、および身体のどこかの欠損部位に移植される結果として生じる新しい組織に関して、これらの方法を用いて治療されてもよい。
【0018】
いくつかの実施例において、減圧は硬膜にかけられる。別の実施例において、減圧は骨膜にかけられる。実施例4に示されているように、無傷の骨中に流れる骨内膜液は、骨膜へ減圧を短くかけることによって増加する。増加した骨内膜の流体の流れは、骨内膜での骨形成の増加を示すと信じられている。こうして骨内膜の骨形成活動は、減圧を骨膜にかけることにより促される。
【0019】
さらなる実施例において、減圧は骨内膜にかけられる。このような治療は、例えば、減圧を骨の間隙にかけ、間隙に配置されたスキャホールドに骨形成を促す場所において有益である。
【0020】
このような方法は、任意の特定のタイプの欠損の治療に狭く限定されない。しかしながら、これらの方法を用いて治療された対象の最も重要な欠損は、(a)創傷から、(b)腫瘍のため、(c)変性疾患(例えば、変形性関節症)、または(d)先天性のものであると認識される。いくつかの実施例において、欠損は骨の欠損である。別の実施例において、欠損は軟骨の欠損である。
【0021】
生体適合性スキャホールドが、部位に配置されることが望ましい。欠損を有する部位では、生体適合性スキャホールドは欠損に好適に挿入される。この方法は、任意の特定の生体適合性スキャホールドの利用に限定されず;多くの有用な生体適合性スキャホールドがこの技術において周知である。いくつかの実施例では、生体適合性スキャホールドは生体吸収性スキャホールドである。好適な実施例において、生体吸収性ポリマは、ポリラクチド−コグリコリド(PLAGA)ポリマ、またはポリエチレングリコール−PLAGAコポリマである。
【0022】
生体適合性スキャホールドはまた、創傷治癒を促進する成分を含んでもよい。このような成分は、サイトカイン、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)、塩基性線維細胞増殖因子(bFGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、アンギオゲン、アンギオポエチン−1、顆粒球コロニー刺激因子(G−CFS)、肝細胞増殖因子/散乱係数(HGF/SF)、インターロイキン−8(IL−8)、胎盤増殖因子、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD−ECGF)、血小板由来増殖因子−BB(PDGF−BB)、トランスホーシング増殖因子−α(TGF−α)、トランスホーシング増殖因子(TGF−β)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、血管内皮増殖因子(VEGF)、またはマトリックスメタプロテアーゼ(MMP)といった血管形成または細胞成長を促進させるものである。有用にスキャホールドに含まれうる他の要素は、抗生物質、または細胞を含み、これらは胚性肝細胞、成人造血肝細胞、骨髄間質細胞、または間葉系肝細胞といった骨芽細胞、軟骨芽細胞、または維管束組織となりうる。この細胞は、オプションで上記サイトカインの一つといった有用なプロテインを表現するよう遺伝学的に巧みに処理されてもよい。
【0023】
好適な実施例において、減圧源に接続されているマニホルドを通して減圧が欠損にかけられ、このマニホルドは多孔性であり、欠損上または欠損内に配置される。流動性材料が欠損に充填されるように、マニホルドは、マニホルド送達管を通して組織部位へと送達される流動性材料からなることもまた好適である。いくつかの実施例において、マニホルドは生体吸収性ポリマであり、生体適合性スキャホールドとして供給されてもよい。このような生体吸収性ポリマの限定しない例は、ポリラクチド−コグリコリド(PLAGA)ポリマまたはポリエチレングリコール−PLAGAコポリマを含む。
【0024】
図1は、硬膜に隣接する欠損に減圧がかけられる方法の一例を示している。同様の減圧システムが骨膜または骨内膜を用いて利用可能であることに留意されたい。
【0025】
図1を参照すると、即時の適用例の非限定的な実施例を記載しており、システム10は、硬膜22に隣接および接触して配置されているマニホルド18に流体接続される減圧源14を含んで提供される。このマニホルド18は、減圧源14によって硬膜22に供給される減圧を分配可能である任意の生体適合性材料を含んでもよい。マニホルド18は、多孔性材料から形成されてもよいし、減圧の分配をアシストする流体チャネルを含んでもよい。一実施例において、マニホルド18はスキャホールドを含んでもよいし、マニホルド全体は新しい組織の成長および完成を支持しうるスキャホールドであってもよい。このスキャホールドは、新しい組織の成長に組み込まれてもよいし、新しい組織の修復または再生に続いて適所に留まってもよい。スキャホールドは、組織再建または再生の後に身体に吸収される生体吸収性材料から形成されてもよい。
【0026】
キャニスタ30は、減圧源14とマニホルド18との間に流体接続され、組織浸出液を捕捉および保持し、減圧がかけられている間、他の流体はマニホルド18に隣接する領域から取り除かれる。フィルタは、マニホルド18と減圧源14との間に流体接続されており、組織液およびバクテリアによる減圧源14の汚染を防ぐことができる。好適には、減圧源14とマニホルド18(および他の任意の流体要素)との間の流体接続は、医療グレード導管34によって設けられる。この導管34はマニホルドアダプタ(図示せず)によって、または導管34がマニホルド18に関する孔または流体チャネルと直接連通するよう、導管34の一方端をマニホルド18に直接接触させて配置することによりマニホルド18に流体的に取り付けられてもよい。
【0027】
一実施例において、マニホルド18は生体吸収性スキャホールドであり、減圧源14は、導管34およびスキャホールドを通じて、硬膜22に減圧を供給する減圧源14である。作用のいかなる特定の構成によって拘束されることなく、硬膜22は減圧をかけると、新生児の、未成熟な硬膜に見られるのと同じような硬膜22の表現型発現を活性化させるよう硬膜22に力を与えると考えられる。減圧や力を硬膜に与えることによる硬膜自体の刺激は、新骨および支持組織を用いてスキャホールドを配置するには十分である。実施例1を参照されたい。
【0028】
この減圧治療は、適用の任意の特定の時間に狭く限定されない。実施例1は、一日(24時間)継続が、新骨の形成、欠損間隙の架橋、および有効なスキャホールドの浸透を促すのに十分であることを証明している。様々な実施例において、減圧は0.1時間乃至144時間、またはそれ以上の間、適用可能である。別の実施例において、減圧は少なくとも24時間かけられる。別の実施例において、この減圧は24時間未満、例えば12時間かけられる。さらなる実施例において、減圧は12時間乃至3日間かけられる。
【0029】
実施例2、3で証明されるように、骨膜または骨内膜での所望の骨または軟骨成長の部位において(例えば、欠損において)、単に泡沫マニホルド(好適にはGranuFoam(登録商標))を設置することは、減圧を用いるほどではないが、骨または軟骨の成長を促す。このため、骨または軟骨の成長を促す減圧なしで、生体適合性泡沫が、硬膜、骨膜、または骨内膜に隣接する欠損に好適に配置されてもよいことが考慮される。
【0030】
本発明はまた、対象における骨または軟骨の欠損を治療する方法に導かれる。この方法は、欠損に隣接する硬膜、骨膜、または骨内膜に減圧をかけるステップを含む。いくつかの実施例において、減圧は硬膜にかけられる。別の実施例において、減圧は骨膜にかけられる。さらに別の実施例において、減圧は骨内膜にかけられる。
【0031】
上述の方法と同様に、この方法での生体適合性スキャホールドは、欠損に好適に挿入される。この生体適合性スキャホールドは、好適には生体吸収性ポリマであり、より好適にはポリラクチド−コグリコリド(PLAGA)ポリマ、またはポリエチレングリコール−PLAGAコポリマである。
【0032】
好適な実施例において、減圧源に接続されているマニホルドを通して、減圧は硬膜、骨膜、または骨内膜にかけられる。ここではマニホルドは多孔性であり、かつ欠損上または欠損内に配置されている。さらに好適には、流動性材料が欠損に充填されるように、マニホルドは、マニホルド送達管を通して組織部位へと送達された流動性材料からなってもよい。さらに好適には、マニホルドは生体吸収性ポリマを含み、生体適合性スキャホールドとして提供されうる。この最適な生体吸収性ポリマは、ポリラクチド−コグリコリド(PLAGA)ポリマ、またはポリエチレングリコール−PLAGAコポリマである。
【0033】
これらの方法において、減圧は0.1時間乃至144時間、またはそれ以上のいずれかの間かけられてもよい。多くの実施例において、減圧は少なくとも24時間かけられる。
【0034】
この適用はまた、硬膜、骨膜、また骨内膜に隣接する骨または軟骨の欠損を治療する減圧装置の利用に導かれる。上述の方法と同様に、減圧装置は、好適には減圧源に接続されているマニホルドを含み、このマニホルドは多孔性であり、かつ欠損上または欠損内に配置されている。さらに好適には、流動性材料が欠損に充填されるように、マニホルドは、マニホルド送達管を通して組織部位へと送達された流動性材料からなる。
【0035】
さらなる実施例において、発明は骨または軟骨の欠損を治療する構成に導かれる。この構成は減圧装置および生体適合性スキャホールドを含み、この欠損は硬膜、骨膜、または骨内膜に隣接している。好適には、生体適合性スキャホールドは生体吸収性ポリマであり、さらに好適には、ポリラクチド−コグリコリド(PLAGA)ポリマ、またはポリエチレングリコール−PLAGAコポリマである。
【0036】
好適な構成において、減圧装置は減圧源に接続されているマニホルドを具える。これらの実施例において、このマニホルドは多孔性である。好適には、マニホルドは生体適合性スキャホールドを含む。さらに好適には、マニホルドは生体吸収性ポリマを含み、最適には、ポリラクチド−コグリコリド(PLAGA)ポリマ、またはポリエチレングリコール−PLAGAコポリマを含む。
【0037】
これらの実施例において、好適には流動性材料が欠損に充填されるように、マニホルドは、マニホルド送達管を通して組織部位へと送達された流動性材料からなる。
【0038】
この適用はさらに、硬膜、骨膜、骨内膜に隣接する骨または軟骨欠損を治療する構成を作成する減圧装置および生体適合性材料の利用へと導かれる。好適には、この生体適合性スキャホールドは、生体吸収性ポリマ、さらに好適にはポリラクチド−コグリコリド(PLAGA)ポリマ、またはポリエチレングリコール−PLAGAコポリマである。
【0039】
この利用において、好適には減圧装置は、減圧源に接続されているマニホルドを具え、このマニホルドは多孔性である。より好適には、マニホルドは生体適合性スキャホールドである。さらに好適には、ポリラクチド−コグリコリド(PLAGA)ポリマ、またはポリエチレングリコール−PLAGAコポリマである。
【0040】
好適な実施例において、流動性材料が欠損に充填されるように、マニホルドは、マニホルド送達管を通して組織部位へと送達された流動性材料からなる。
【0041】
好適な実施例が以下の例に記載されている。本クレームの範囲内で本書に記載されるような発明の明細書または実施例を考慮することにより、別の実施例が当業者に明らかになるであろう。例とともに明細書は例示的なものであり、発明の範囲と意図は、これらの実施例に続くクレームにより示される。
【0042】
実施例1.減圧を用いた硬膜での骨形成活動の刺激
図2を参照すると、スキャホールドを通して無傷の硬膜に減圧をかける影響を評価すべく頭蓋の欠損が調査された。大きな寸法の欠損が、ウサギの頭蓋に形成され、硬膜は無傷のままとされた。図1(すなわち、マニホルドおよび/またはスキャホールド18)に示されているのと同様のスキャホールドが、硬膜と接触して配置された。いくつかのテストを、減圧をかけた時間の長さを変えて行われた。硬膜と接触して配置されたスキャホールドに減圧はかけないで、対照テストを行った。以降の12週間について、頭蓋およびスキャホールドのサンプルにおける各々特定の欠損の生存中の治癒が調査された(減圧がかけられた時間を含む)。測定された値は、観察された新骨領域量と、定量的な橋梁評価のパーセンテージと、スキャホールド浸潤の全体のパーセンテージと、スキャホールドの上半分への新骨成長の浸透とを含む。これらの測定は以下の表1に示されている。
【0043】
【表1】
【0044】
「新骨」は、スキャホールドに形成された骨領域全体である。「架橋評価」は、欠損の中心を通り計測される際、欠損の一方側から他方側へ骨を用いてブリッジされた欠損のパーセントである。欠損を閉じる有効性を示すので、架橋評価は重要な臨床要因である。「スキャホールド湿潤パーセント」は、骨で満たされているスキャホールドでの使用可能な空間の全体のパーセントである。「上半分浸潤」は、スキャホールドの上半分の骨量である。
【0045】
表1に示されているように、減圧の適用は対照標準検体に関して、テストされたすべての骨形成パラメータを著しく増加させた。調査中は、組織スキャホールドの挿入前に、硬膜を維持すべくケアがなされた。統計上、減圧は各時点で対照標準より多量の新骨の沈着を発生させ、適用の一日後には境界イベントが達成されることを示している。より長期間の適用は架橋評価を高めなかったが、とりわけ硬膜からさらに取り除かれる組織のスキャホールドの上半分における骨の沈着の分布に影響を及ぼした。欠損上の軟組織は減圧にさらされなかったので、観察および定量化された差異はおそらく硬膜の活性化と関係がある。
【0046】
図3乃至4Cを参照すると、拡大図は上述のテストで得られた検体をとったものである。図3は、ウサギの頭蓋における新骨45に隣接する硬膜鞘40の正常な構成の拡大図を示している。また、硬膜鞘40と新骨45との間の骨芽細胞47も示されている。新骨形成の調査および減圧にさらされたスキャホールドへの組込みにおいて、スキャホールドへの骨形成反応における無傷の硬膜の影響が確認された。図4Aは、新骨形成領域55と新骨形成されない領域60との間のはっきりした境界を示している動物検体の拡大図である。双方の領域はスキャホールド62を含むが、無傷の硬膜の不在は新骨形成の不在と相関している。図4Aにおいて、新骨形成55は無傷の硬膜64に近接して配置されている。図4Bは検体を示しており、中枢神経系組織70および組織のスキャホールド75は、無傷の硬膜によって隔てられていない。図4Bで目立って欠けているのは、新骨の形成である。対照的に図4Cは、硬膜80との密着接触において、はっきりした硬膜80および多量の新骨形成90を示している。
【0047】
実施例2.泡沫マニホルドおよび減圧による骨膜骨形成反応の刺激
泡沫マニホルドおよび減圧は、骨膜を誘導し、新骨を合成させる能力が評価された。無傷で、損傷がないウサギの頭蓋骨膜が露出された。GranuFoam(登録商標)(KCI Licencing,Inc.,San Antonio TX)泡状外傷用医療材料が骨に適用される。いくつかの治療において、泡で覆われた骨がまた減圧にさらされた。処理後、動物は犠牲となり、治療された骨はパラフィン包埋、切開、および着色され、新骨形成の治療の影響を評価する。
【0048】
図5は、未処理で、損傷のないウサギの骨膜を示している。これは、骨膜の薄い層の配置を示している。この骨膜は薄く、かつ目立たない。対照的に図6は、骨膜に重なる肉芽組織の誘導を示しており、発泡体が減圧をかけないで6日間骨の表面に接触維持されている。肉芽組織は減圧処理なしで、発泡体に骨を晒すことによって誘導された。このことは、骨膜に重なる粒状組織の泡の誘導を証明している。図7は、発泡体および減圧(−125mmHg)を用いた骨の治療を示している。新骨の形成は、発泡体処理のみにより増強された。図8は、発泡体および減圧にさらされた骨の別の部位を示しており、新しく形成された粒状組織下での新骨の沈着を示している。この新骨の沈着は、もとの骨膜の皮質界面上に重なる。
【0049】
結論として、この実施例は発泡体のみが提供される際の新骨の誘導を示している。さらに迅速で、広範囲な骨形成は、泡を通した減圧の適用を用いて起こる。
【0050】
実施例3.軟骨組織形成の誘導
軟骨形成が、無傷の頭蓋骨膜の表面への減圧療法の適用に反応して観察された。これらの観察は、療法に反応した軟骨形成が独特であることが重要であり、組織工学の分野において大いに興味の対象となる。これらの形成は、スキャホールドが不在であり、かつ減圧の適用のみで観察されたものである。対照標準においては、軟骨形成は全く見られない。
【0051】
先天性異常または疾患および外傷によってひき起こされた軟骨変性は、大きな臨床的因果関係がある。血液供給の欠乏およびその後の創傷治癒反応のため、軟骨へのダメージは、一般的に身体による不完全な修復の結果となる。十分な厚さの関節軟骨または骨軟骨の損傷は、正常な炎症反応を可能にするが、粗悪な繊維軟骨形成という結果となる。多くの場合、外科的処置は唯一のオプションである。軟骨損傷の修復処置はしばしば満足度の低いものであり、全機能をもとに戻したり、組織を本来の正常な状態に戻したりすることはめったにない。本実施例はGranoFoam(登録商標)および減圧を用いて、骨膜から新しい軟骨を誘導することを実証する。
【0052】
発泡体マニホルドおよび減圧は骨膜を誘導し、新しい軟骨を合成する能力を評価された。無傷で、損傷のないウザギの頭蓋が露出された。GranoFoam(登録商標)(KCI Licensing.,Inc.,San Antonio TX)泡状外傷用医薬材料が骨に適用された。いくつかの治療を用いて、泡で覆われた骨はまた減圧にさらされた。治療後、動物は犠牲となり、治療された骨は、パラフィン包埋、切開、および着色され、新骨形成の処理の効果を評価する。
【0053】
図9は、未処理で、損傷のないウサギの頭蓋の骨膜を示している。点線は、皮質骨と骨膜の薄い膜との間の区画を示している。対照的に図10A、10Bは、GranoFoam(登録商標)と減圧(−125mmHg)を用いて、広範囲な軟骨組織が骨膜に重なり誘導されたことを示す。
【0054】
実施例4.骨内膜活動の誘導
骨内膜の骨形成活動の誘導に関して、減圧治療の効果が評価された。対側の羊の中手骨が用いられた。染料プロシオンレッド(0.8%)は、骨のカニューレ処理された正中動脈に10分間導入された。一つの骨はまた減圧(−125mmHg)にさらされた。対側の骨は減圧にさらされなかった。治療後、これらの骨は80%のエチルアルコールに固定され、それから緑のフィルタを通して蛍光顕微鏡に置かれる。図11は結果を示している。(プロシオンレッド染料によって測定されるように)減圧で処理された骨(図11A)は未処理の骨(図11B)よりはるかに大きな循環を示し、治療が外側の骨膜表面に行われたにもかかわらず、減圧により増加した流体の流れを示している。
【0055】
上述を考慮すると、発明のいくつかの利点が達成され、別の利点が得られたことが分かる。
【0056】
発明の範囲を逸脱することなく、上記方法および構成において様々な変更が可能であるように、上記に含まれるすべての事柄および添付の図面に示されるものは、限定の意味ではなく、説明として解釈される。
【0057】
本明細書に記載されたすべての参照は、参照により本書に組み込まれる。本書の参照の説明は、著者によってなされる主張が単に意図されるものであり、任意の参照が先行技術を構成することを容認しない。出願人は、記載された引用の正確さと妥当性に異議を申し立てる権利を保留する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の組織部位で硬膜に隣接する骨または軟骨を治療するためのシステムであって、当該システムが、
減圧源と、
前記減圧源に流体接続され、前記硬膜に隣接して配置されたマニホルドとを具え、
前記マニホルドが、硬膜に減圧をかけ、骨または軟骨を治療するよう構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムがさらに、マニホルド送達管を具え、前記マニホルドが前記マニホルド送達管を通して組織部位へ送達される流動性材料からなることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記マニホルドが生体適合性スキャホールドを含むことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムにおいて、前記生体適合性スキャホールドが生体吸収性ポリマであることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムにおいて、前記生体吸収性ポリマがポリラクチド−コグリコリド(PLAGA)ポリマ、またはポリエチレングリコール−PLAGAコポリマであることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記マニホルドが、前記骨または軟骨に隣接して配置され、前記硬膜、骨膜、骨内膜に前記減圧をかけることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載のシステムにおいて、前記マニホルドが多孔性であることを特徴とするシステム。
【請求項1】
対象の組織部位で硬膜に隣接する骨または軟骨を治療するためのシステムであって、当該システムが、
減圧源と、
前記減圧源に流体接続され、前記硬膜に隣接して配置されたマニホルドとを具え、
前記マニホルドが、硬膜に減圧をかけ、骨または軟骨を治療するよう構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムがさらに、マニホルド送達管を具え、前記マニホルドが前記マニホルド送達管を通して組織部位へ送達される流動性材料からなることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記マニホルドが生体適合性スキャホールドを含むことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムにおいて、前記生体適合性スキャホールドが生体吸収性ポリマであることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムにおいて、前記生体吸収性ポリマがポリラクチド−コグリコリド(PLAGA)ポリマ、またはポリエチレングリコール−PLAGAコポリマであることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記マニホルドが、前記骨または軟骨に隣接して配置され、前記硬膜、骨膜、骨内膜に前記減圧をかけることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載のシステムにおいて、前記マニホルドが多孔性であることを特徴とするシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【公開番号】特開2013−78628(P2013−78628A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−283915(P2012−283915)
【出願日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【分割の表示】特願2010−515135(P2010−515135)の分割
【原出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(508268713)ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【分割の表示】特願2010−515135(P2010−515135)の分割
【原出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(508268713)ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】
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