説明

骨の治癒を促進するための組成物および方法

本発明は、リジン、プロリン、アスコルビン酸、銅、ビタミンB6を含み、ヒトにおける骨の治癒を促進するのに有効な栄養組成物を提供する。前記栄養組成物は27〜34重量%のリジン、14〜16重量%のプロリンおよび42〜47重量%のアスコルビン酸を含む。前記栄養組成物はさらに、ビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、葉酸、ビタミンB12、 ビオチン、パントテン酸、カルシウム、リン、マグネシウム、亜鉛、セレニウム、マンガン、クロム、モリブデン、カリウム、シトラスフルーツピールバイオフラボノイド、アルギニン、システイン、イノシトール、カルニチン、コエンザイムQ10およびピクノジェノールを含む。本発明はまた、骨の治癒を促進するためにヒトにおいて前記栄養組成物を使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広く骨の治癒を促進するための栄養組成物およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨は動的な生体組織であり、骨基質の吸収および蓄積により継続的に補充されている。骨の安定性は基礎をなす結合組織に依存している。Oxlund H.等は、最適な構造を有するコラーゲンが骨の緊密度およびカルシウムによる飽和よりも骨強度にとって重要であることを示している(非特許文献1)。骨粗鬆症における骨では、コラーゲン鎖間の架橋の濃度は30%以下であった。Knot L.等はコラーゲン構造およびその繊維ネットワークの空間的構成がミネラルの蓄積および骨における緊密度にとって重要であり、コラーゲンの微小構造が骨強度を決定することを示している(非特許文献2)。Savvas M. 等は栄養不良により生じるコラーゲンの欠乏が骨量減少における主要な要因であることを示している(非特許文献3)。この研究における食欲不振の女性は、脊柱で18%および大腿で25%という低い骨密度を示した。骨量の減少は皮膚コラーゲンの22%の減少と関連している。
【0003】
骨折後の治癒過程はi) 血腫の形成; ii) 線維-軟骨性仮骨の形成; iii) 骨性仮骨の形成;および iv) 骨リモデリングを含む多数の相を含む規則的な過程である。治癒過程の間に、骨折した周辺の多能性細胞が骨芽細胞および軟骨細胞に分化する。骨芽細胞を源として類骨組織が形成し、それらにコラーゲン線維が定着する。軟骨細胞は、石灰化軟骨を形成するために鉱化基質を蓄積する肥大軟骨細胞を生じ、その後に緻密骨に作り変えられる。
【0004】
整形外科技術の進歩にもかかわらず骨折の治癒は長期にわたる過程であり、多くの場合に数ヶ月ではないとしても数週間を必要とする。多くの場合に患者は数週間の間、移動を大きく制限される。骨の治癒および骨折修復を促進すること(すなわち治癒時間を減少させること)は患者にとって苦痛を大きく軽減するものとなる。これは特に青年にとって望ましいことであり、それはこの年齢の個体群における医者の提言の順守が最も難しいからである。医者が青年に一定期間松葉杖を使うように勧めた場合、多くの場合に彼等は推奨よりもはるかに早く松葉杖を外してしまう。
【0005】
特許文献1には、アンジオテンシンおよびその類似体を投与することにより、骨および軟骨の修復を増強する方法が開示されている。特許文献2には、ベンゾチオフェンを用いて骨の治癒を促進する方法が開示されている。これらの薬剤の使用において安全性は確立されていない。例えば、アンジオテンシンは強力に心血管におよび腎臓に効果を発揮するので、心不全または腎不全を有する患者における使用が制限されることが知られている。
【0006】
特許文献3には、骨折治癒を促進するために共振周波数の刺激を使用する方法が開示されている。特許文献4には、骨折治療における低レベルのレーザー療法が開示されている。これらのアプローチの有効性は示されておらず、高額な外来診療および/またはコンピューター設備を必要とする。これらの方法はいずれも臨床的に実証されたものではない。
【0007】
特許文献5には、骨量の減少の治療における多量のカルシウムを含む栄養補給剤が開示されている。骨折している個体に多量のカルシウムを投与すると、骨コラーゲンの補給よりもむしろ骨組織の鉱化作用が生じる。骨の鉱化作用が増加すると骨のさらなる硬化が起こる。罹患した骨は時間をかけてさらにもろくなり、骨折が悪化し易くなり、そして圧力下で粉砕され易くなる。
【特許文献1】米国特許第6,258,778号明細書
【特許文献2】米国特許第5,502,074号明細書
【特許文献3】米国特許第6,061,597号明細書
【特許文献4】米国特許第6,290,714号明細書
【特許文献5】米国特許第5,232,709号明細書
【非特許文献1】Bone1996; 19:479-84
【非特許文献2】Bone 1998; 22:181-7
【非特許文献3】J. Obstetr. Gynecol.1989; 96:1392-4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ヒトにおける骨の治癒を促進する(すなわち骨折の治癒時間を減少させる)、安全な、便利な、入手可能なそして有効なアプローチを提供することが長い間切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明における技術的課題はこの需要を満たす手段および方法を提供することにある。この技術的課題は請求項において特徴付けられる実施態様により解決される。
【0010】
従って、本発明はリジン、プロリン、アスコルビン酸、銅およびビタミンB6を含む栄養組成物に関する。前記栄養組成物はヒトへの使用に適しており、骨の治癒の促進に有効である。前記栄養組成物はまた、動物への使用にも適している。好ましくは、前記動物は哺乳類であり、最も好ましくはイヌ、ネコまたはウマである。
【0011】
好ましくは、前記栄養組成物は27〜34重量%のリジン、14〜15重量%のプロリンおよび42〜47重量%のアスコルビン酸を含む。
【0012】
好ましくは、前記栄養組成物は経口で投与される。好ましくは、推奨量は1,010 mg〜8グラムのリジン、560 mg〜4グラムのプロリン、1,500 mg〜9グラムのアスコルビン酸、2 μg〜6 mgの銅および 0.5 mg〜10 mgのビタミンB6である。さらに好ましくは、推奨量は230 mg〜10グラムのリジン、120 mg〜5グラムのプロリン、360 mg〜15グラムのアスコルビン酸、1.5 μg〜20 mgの銅および0.2 mg〜20 mgのビタミンB6である。最も好ましくは、推奨量は1,010 mgのリジン、560 mgのプロリン、1,500 mgのアスコルビン酸、330 μgの銅および10 mgのビタミンB6である。
【0013】
好ましくは、前記栄養組成物は、1日用量(平均的な体重72 kgのヒトの対象を基準として)である3.2〜139 mg/kgのリジン、1.7〜69.4 mg/kgのプロリン、5〜208.3 mg/kgのアスコルビン酸、0.02〜278 μg/kgの銅、2.78〜279 μg/kgのビタミンB6である。
【0014】
さらに好ましくは、前記栄養組成物は、1日用量である14〜111 mg/kgのリジン、7.8〜55.6 mg/kgのプロリン、20.8〜125 mg/kgのアスコルビン酸、0.03〜83.3 μg/kgの銅および6.94〜139 μg/kgのビタミンB6である。
【0015】
最も好ましくは、前記栄養組成物は、1日用量である14 mg/kgのリジン、7.8 mg/kgのプロリン、20.8 mg/kgのアスコルビン酸、4.6 μg/kgの銅、139 μg/kgのビタミンB6である。
【0016】
好ましくは、前記栄養組成物はさらにビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、カルシウム、リン、マグネシウム、亜鉛、セレニウム、マンガン、クロム、モリブデン、カリウム、シトラスフルーツピールバイオフラボノイド(citrus fruit peel bioflavanoids)、アルギニン、システイン、イノシトール、カルニチン、コエンザイムQ10およびピクノジェノールを含む。
【0017】
好ましくは、推奨量は67 μg〜100 mgのビタミンA、0.7 μg〜50 μgのビタミンD3、0.7 μg 〜50 μgのビタミンE、1.4 mg〜8 mgのビタミンB1、1.4 mg〜8 mgのビタミンB2、9 mg〜250 mgのナイアシン、18 μg〜500 μgの葉酸、4 μg〜100 μgのビタミンB12、 13 μg 〜400 μgのビオチン、8 mg〜100 mgのパントテン酸、7 mg〜40 mgのカルシウム、 3 mg〜300 mgのリン、40 mg〜200 mgのマグネシウム、0.5 mg〜10 mgの亜鉛、20 μg 〜300 μgのセレニウム、0.8 mg〜15 mgのマンガン、2 μg 〜200 μgのクロム、0.8 μg 〜100 μgのモリブデン、4 mg〜300 mgのカリウム、20 mg〜500 mgのシトラスフルーツピールバイオフラボノイド、10 mg〜500 mgのアルギニン、10 mg〜400 mgのシステイン、5 mg〜400 mgのイノシトール、5 mg〜400 mgのカルニチン、1.6 mg〜70 mgのコエンザイムQ10および1.6 mg〜70 mgのピクノジェノールである。
【0018】
さらに好ましくは、推奨量は166 μg〜50 mgのビタミンA、1.65 μg〜20 μgのビタミンD3、1.65 μg 〜20 μgのビタミンE、3.5 mg〜7 mgのビタミンB1、3.5 mg〜7 mgのビタミンB2、22.5 mg〜100 mgのナイアシン、45 μg〜300 μgの葉酸、10 μg〜50 μgのビタミンB12、32 μg 〜300 μgのビオチン、20 mg〜60 mgのパントテン酸、17 mg〜35 mgのカルシウム、7 mg〜100 mgのリン、50 mg〜100 mgのマグネシウム、3 mg〜8 mgの亜鉛、30 μg 〜250 μgのセレニウム、1 mg〜3.25 mgのマンガン、2 μg 〜75 μgのクロム、2 μg 〜75 μgのモリブデン、8 mg〜200 mgのカリウム、50 mg〜250 mgのシトラスフルーツピールバイオフラボノイド、100 mg〜300 mgのアルギニン、80 mg〜200 mgのシステイン、80 mg〜200 mgのイノシトール、80 mg〜200 mgのカルニチン、3 mg〜35 mgのコエンザイムQ10および3 mg〜35 mgのピクノジェノールである。
【0019】
最も好ましくは、推奨量は333 μgのビタミンA、3.3 μgのビタミンD3、3.3 μgのビタミンE、7 mgのビタミンB1、7 mgのビタミンB2、45 mgのナイアシン、90 μgの葉酸、20 μgのビタミンB12、65 μgのビオチン、40 mgのパントテン酸、35 mgのカルシウム、15 mgのリン、40 mgのマグネシウム、7 mgの亜鉛、20 μgのセレニウム、1.3 mgのマンガン、10 μgのクロム、4 μgのモリブデン、20 mgのカリウム、100 mgのシトラスフルーツピールバイオフラボノイド、40 mgのアルギニン、35 mgのシステイン、35 mgのイノシトール、35 mgのカルニチン、7 mgのコエンザイムQ10および7 mgのピクノジェノールである。
【0020】
好ましくは、前記栄養組成物は1日用量(平均的な体重72 kgのヒトの対象を基準として)である0.9〜1,390 μg/kgのビタミンA、0.01〜0.694 μg/kgのビタミンD3、0.01〜0.694 μg/kgのビタミンE、19.4〜111 μg/kgのビタミンB1、19.4〜111 μg/kgのビタミンB2、125〜3,472 μg/kgのナイアシン、0.25〜6.94 μg/kgの葉酸、0.05〜1.39 μg/kgのビタミンB12、0.181〜5.56 μg/kgのビオチン、111〜1,390 μg/kgのパントテン酸、97.2〜555 μg/kgのカルシウム、42〜4,167 μg/kgのリン、555〜2,778 μg/kgのマグネシウム、6.9〜139 μg/kgの亜鉛、0.28〜4.17 μg/kgのセレニウム、11.1〜208.3 μg/kgのマンガン、0.03〜2.78 μg/kgのクロム、0.01〜1.39 μg/kgのモリブデン、55.6〜4,167 μg/kgのカリウム、278〜6.944 μg/kgのシトラスフルーツピールバイオフラボノイド、139〜6,944 μg/kgのアルギニン、135〜5,555 μg/kgのシステイン、69〜5,555 μg/kgのイノシトール、69〜5,555 μg/kgのカルニチン、22.2〜972 μg/kgのコエンザイムQ10および22.2〜972 μg/kgのピクノジェノールを含む。
【0021】
さらに好ましくは、前記栄養組成物は1日用量(平均的な体重72 kgのヒトの対象を基準として)である2.31〜694 μg/kgのビタミンA、0.023〜0.278 μg/kgのビタミンD3、0.023〜0.278 μg/kgのビタミンE、48.6〜97.2 μg/kgのビタミンB1、48.6〜97.2 μg/kgのビタミンB2、312.5〜3,190 μg/kgのナイアシン、0.6〜4.17 μg/kgの葉酸、0.14〜0.69 μg/kgのビタミンB12、0.444〜4.17 μg/kgのビオチン、278〜833 μg/kgのパントテン酸、236〜903 μg/kgのカルシウム、97.2〜1,390 μg/kgのリン、694〜1,390 μg/kgのマグネシウム、41.7〜111 μg/kgの亜鉛、0.42〜3.47 μg/kgのセレニウム、13.9〜45.1 μg/kgのマンガン、0.07〜2.78 μg/kgのクロム、0.03〜1.04 μg/kgのモリブデン、111.1〜2,778 μg/kgのカリウム、694〜3,472 μg/kgのシトラスフルーツピールバイオフラボノイド、1,389〜4,167 μg/kgのアルギニン、1,111〜2,778 μg/kgのシステイン、1,111〜2,778 μg/kgのイノシトール、1,111〜2,778 μg/kgのカルニチン、41.7〜486 μg/kgのコエンザイムQ10および41.7〜486 μg/kgのピクノジェノールを含む。
【0022】
最も好ましくは、前記栄養組成物は1日用量(平均的な体重72 kgのヒトの対象を基準として)である4.6 μg/kgのビタミンA、0.046 μg/kgのビタミンD3、0.046 μg/kgのビタミンE、97.2 μg/kgのビタミンB1、97.2 μg/kgのビタミンB2、625 μg/kgのナイアシン、1.25 μg/kgの葉酸、0.27 μg/kgのビタミンB12、0.9 μg/kgのビオチン、555 μg/kgのパントテン酸、486 μg/kgのカルシウム、208 μg/kgのリン、555 μg/kgのマグネシウム、97.2 μg/kgの亜鉛、0.78 μg/kgのセレニウム、18.1 μg/kgのマンガン、0.14 μg/kgのクロム、0.06 μg/kgのモリブデン、277.8 μg/kgのカリウム、1,389 μg/kgのシトラスフルーツピールバイオフラボノイド、555 μg/kgのアルギニン、486 μg/kgのシステイン、486 μg/kgのイノシトール、486 μg/kgのカルニチン、97.2 μg/kgのコエンザイムQ10および 97.2 μg/kgのピクノジェノール、0.01〜0.694 μg/kgのビタミンD3、18.1 μg/kgのマンガン、555 μg/kgのアルギニン、486 μg/kgのシステイン、4.6 μg/kgのビタミンA、0.046 μg/kgのビタミンE、97.2 μg/kgのビタミンB1、97.2 μg/kgのビタミンB2、0.27 μg/kgのビタミンB12、625 μg/kgのナイアシン、1.25 μg/kgの葉酸、0.9 μg/kgのビオチン、555 μg/kgのパントテン酸、486 μg/kgのカルシウム、208 μg/kgのリン、555 μg/kgのマグネシウム、97.2 μg/kgの亜鉛、0.78 μg/kgのセレニウム、0.14 μg/kgのクロム、0.06 μg/kgのモリブデン、277.8 μg/kgのカリウム、1,389 μg/kgのシトラスフルーツピールバイオフラボノイド、486 μg/kgのイノシトール、486 μg/kgのカルニチン、97.2 μg/kgのコエンザイムQ10および97.2 μg/kgのピクノジェノールを含む。
【0023】
本発明は、リジン、プロリン、アスコルビン酸、銅およびビタミンB6を含む栄養組成物の有効量をそれを必要とする哺乳類に投与する段階を含む、哺乳類における骨の治癒を促進する方法を提供する。
【0024】
本発明はさらに、ビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、カルシウム、リン、マグネシウム、亜鉛、セレニウム、マンガン、クロム、モリブデン、カリウム、シトラスフルーツピールバイオフラボノイド、アルギニン、システイン、イノシトール、カルニチン、コエンザイムQ10およびピクノジェノールをさらに含む栄養組成物の有効量をそれを必要とする哺乳類に投与する段階を含む、哺乳類における骨の治癒を促進する方法を提供する。
【0025】
好ましくは前記哺乳類はヒトである。
【0026】
好ましくは、前記栄養組成物は骨折の治癒時間を減少させるのに有効である。好ましくは、前記治癒時間は約5%以上減少する。さらに好ましくは、前記治癒時間は約15%以上減少する。さらに好ましくは、前記治癒時間は約50%以上減少する。
【0027】
好ましくは、前記栄養組成物は全ての年齢のヒトに対して有効である。好ましくは、前記栄養組成物は41〜40および41〜50歳の成人における骨の治癒の促進に適している。前記栄養組成物は、治癒時間をそれぞれ37 %または40%減少させる。さらに好ましくは、前記栄養組成物は10〜20歳のヒト(すなわち青年)に対して有効であり、治癒時間を49%減少させる。
【0028】
好ましくは、前記栄養組成物は経口、静脈注射または非経口で投与することができる。
【0029】
本明細書で使用する場合に、「骨の治癒」という語句は骨折の治癒を表す。骨の治癒は骨修復の過程もまた包含し、そして事故による骨折の治癒に限定されない。骨の治癒はまた、骨置換(例えば股関節および膝関節置換)のような骨の外科的介入および骨移植(例えば歯の移植)にも関連する。骨が治癒すると、骨折部位において通常の可動性が回復し、該骨折を圧迫することによりまたは歩くことにより生じる痛みがなくなり、骨折部位における患肢の効率的で痛みのない機能性が全体的に回復する。
【0030】
「治癒時間」という語句は、骨折が生じた時間から骨折が治癒する時間までの経過時間を表す。本明細書で開示される試験において実施される実験に関しては、前記治療時間は、骨折した骨を整復した時間から該骨が治癒する時間までの経過時間を測定する。「整復」は、骨折した地点における骨折した骨(例えば脛骨)の先端を、骨折した骨の先端が一緒に融合するような位置に調節する処置を表す。「青年」は約10〜約20歳のヒトである。「有効量」は、骨折の治癒時間を減少させるのに有効な本発明栄養組成物の量を表す。「薬学的に許容される」は、製剤のその他の成分と適合し、その服用者に対して有害でないキャリアー、希釈剤および賦形剤を表す。「重量%」は、栄養組成物の全重量に対する%比率としての一定の成分の%を表し、例えば、27重量%のリジンは栄養組成物の全重量の27%がリジンである栄養組成物を表す。
【0031】
本発明の栄養組成物は哺乳類における使用に適している。好ましくは、前記哺乳類はヒトである。ヒトの異なる年齢群においては、異なる骨の治癒の速さを示す。例えば、高齢のヒトは骨折を患いやすく(骨粗鬆症による脱灰のため)、そして長期の治癒時間を要する。本発明の栄養組成物はヒトにおける骨の治癒の促進において広く有効であり;特に一定の年齢群に限定されない。
【0032】
本発明は、リジン、プロリン、アスコルビン酸、銅およびビタミンB6を含んでなる組成物の有効量を治療を必要とするヒトに投与する段階を含む、ヒト、特に青年である個体における骨の治癒を促進するための栄養組成物を提供する。好ましくは、前記栄養組成物は27〜34重量%のリジン、42〜47重量%のアスコルビン酸および14〜15重量%のプロリンを含む。
【0033】
本発明の栄養組成物はまた、リジンおよびプロリンを含む。リジンおよびプロリンは骨におけるコラーゲンおよびタンパク質の成分である。リジンおよびプロリンは、アルカリホスファターゼ、一酸化窒素、インスリン様成長因子-1およびコラーゲンI型の骨芽細胞増殖に寄与し、適当な骨形成に必須である。
【0034】
リジンにはヒドロキシリジンおよびヒドロキシリジン塩のようなリジン塩が含まれる。1日用量としては3.2〜139 mg/kgのリジンが推奨される。好ましくは14〜111 mg/kgのリジンが使用され;さらに好ましくは14 mg/kgのリジンが使用される。平均的な体重72 kgの個体に対する1日あたりのリジンの推奨用量は、230 mg〜10グラム;好ましくは1,010 mg〜 8グラム;そしてさらに好ましくは1,010 mgである。
【0035】
プロリンは非必須アミノ酸である。しかし、ヒトの体におけるその合成は一定の条件下に制限されている。骨折のストレスにより高齢のヒトの血漿における非必須アミノ酸レベルが低下することが報告されている。前記の場合に、もし準必須アミノ酸であるプロリンが欠乏すれば、このアミノ酸はコラーゲンにおいて大きな割合で存在するので、骨折の治癒に悪影響を及ぼす。
【0036】
プロリンにはヒドロキシプロリンおよびヒドロキシプロリン塩のようなプロリン塩が含まれる。1日用量としては1.7〜69.4 mg/kgのプロリンが推奨される。好ましくは7.8〜56 mg/kgが使用され;さらに好ましくは7.8 mg/kgが使用される。平均的な体重72 kgの個体に対する1日あたりのプロリンの推奨用量は、120 mg〜5グラム;好ましくは560 mg〜4グラム;そしてさらに好ましくは560 mgである。
【0037】
本発明の栄養組成物はアスコルビン酸を含む。アスコルビン酸は、骨芽細胞の表現型の前進的発達を促進し、骨の治癒を促進することができ、それはまた骨形成原細胞および軟骨形成細胞の分化および増殖に必須である。
【0038】
アスコルビン酸およびビタミンCは同義的に使用される。アスコルビン酸という語句にはアスコルビン酸およびその塩が包含される。好ましくは、本発明において使用されるアスコルビン酸は、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸マグネシウムまたはアスコルビン酸パルミテートである。1日用量としては5〜208 mg/kgのアスコルビン酸が推奨される。好ましくは20.8〜125 mg/kgが使用され;さらに好ましくは20.8 mg/kgが使用される。平均的な体重72 kgの個体に対する1日あたりのアスコルビン酸の推奨用量は、360 mg〜15グラム;好ましくは1,500 mg〜9グラム;そしてさらに好ましくは1,500 mgである。
【0039】
本発明はさらに、ミネラルおよび/または微量元素をさらに含む栄養組成物を提供する。微量元素は結合組織の構造および機能に必要な高分子の生成を触媒するのを助けることができる。本発明において好ましい微量元素は鉄、ヨウ素、銅、亜鉛、マンガン、コバルト、モリブデン、セレニウム、クロム、ニッケル、スズ、フッ素またはバナジウムである。
【0040】
リシルオキシダーゼの補因子としての銅は、コラーゲンにおける分子内および分子間架橋に必須である。銅の不足は骨の機械的強度を弱めることが示されている。
【0041】
銅とともに比較的多量のアスコルビン酸、ビタミンB6、L-リジンおよびL-プロリンは、骨コラーゲンの状態における顕著な効果、および栄養補給群(supplement group)とプラセボ群との間の骨折した骨の治癒時間を著しく相違させる機能を有する。
【0042】
銅化合物はグリシン酸銅を含むことができる。1日用量としては0.02〜278 μg/kgの銅が推奨される。好ましくは0.03〜83 μg/kgが使用され;さらに好ましくは4.6 μg/kgが使用される。平均的な体重72 kgの個体に対する1日あたりの推奨用量は、1.5 μg〜 20 mg;好ましくは2 μg〜6 mg;そしてさらに好ましくは330 μgである。
【0043】
鉱化作用のために必要な当量の減少を助けるので、ビタミンB6は骨の治癒に重要である。ビタミンB6の欠乏は、骨周囲膜(perisoteal)の骨形成および発達中の仮骨におけるグルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ活性の著しい減少を引き起こした。それはまた、骨芽細胞および軟骨細胞間の不均衡を連想させる骨の変化も引き起こした。
【0044】
ビタミンB6化合物にはピリドキシンHCl(pryridosine HCl)が含まれる。1日用量としては2.8〜279 μg/kgのビタミンB6が推奨される。好ましくは7〜139 μg/kgのビタミンB6が使用され;さらに好ましくは139 μg/kgが使用される。平均的な体重72 kgの個体に対するビタミンB6の1日あたりの推奨用量は、0.2〜20 mg;好ましくは0.5〜10 mg;そしてさらに好ましくは10 mgである。
【0045】
本発明の栄養組成物の特定の成分は高量で存在する。具体的には、リジンは27〜34 重量%(好ましくは28〜33重量%)で存在し;プロリンは14〜16重量%(好ましくは15〜16重量%)で存在し;そしてアスコルビン酸は42〜47重量%(好ましくは43〜46重量%)で存在する。
【0046】
本明細書に記載される栄養組成物が予想以上に、特に青年期のヒトにおける骨折の骨の治癒を効果的に促進する(すなわち治癒時間を減少させる)ことが本発明において見出された。有利なことに、本発明の栄養組成物の投与は単に骨の治癒を効果的に促進するだけでなく一般的な健康状態も改善し、コスト的にも効率的である。
【0047】
推奨の1日経口用量は、3.2〜139 mg/kgのリジン、1.37〜69 mg/kgのプロリン、5〜208 mg/kgのアスコルビン酸、2.78〜279 μg/kgのビタミンB6および0.02〜278 μg/kgの銅を含む。好ましくは、推奨の1日経口用量は:14〜111 mg/kgのリジン、7.8〜56 mg/kgのプロリン、20.8〜125 mg/kgのアスコルビン酸、6.9〜139 μg/kgの ビタミンB6および0.03〜83 μg/kgの銅である。さらに好ましくは、推奨の1日経口用量は:14 mg/kgのリジン、7.8 mg/kgのプロリン、20.8 mg/kgのアスコルビン酸、139 μg/kgのビタミンB6、4.6 μg/kgの銅である。好ましくは、前記栄養組成物は1日あたり3個の錠剤として投与される(すなわち、朝に1個の錠剤、午後に1個の錠剤、そして夜に1つの錠剤)。
【0048】
カルシウム、マグネシウム、亜鉛、銅、鉄、フッ化物およびビタミンD、AおよびKのようなその他のいくつかの食事性成分(dietary components)が、通常の骨代謝には必要である。骨折の外傷が肝臓における銅、マンガンおよび亜鉛レベルの減少を引き起こすことが示されており、このことは骨折後にこれらのミネラルの必要量が増加することを示唆している。
【0049】
本発明の栄養組成物はさらに、ビタミンD3、マンガン、アルギニン、システイン、ビタミンA、E、B1、B2、B12、ナイアシン、葉酸、ビオチン、パントテン酸、カルシウム、リン、マグネシウム、亜鉛、セレニウム、クロム、モリブデン、カリウム、シトラスフルーツピールバイオフラボノイド、イノシトール、カルニチン、コエンザイムQ10およびピクノジェノールを含むことができる。
【0050】
骨の治癒を促進する(すなわち治癒時間を減少させる)のに必要な本発明栄養組成物の特定用量は、病状の重篤度、投与の経路および治療される対象に依存する。本発明の栄養組成物は経口、静脈内または非経口投与を含む種々の経路により投与することができる。好ましくは、前記栄養組成物は単位剤形(unit dosage form)、例えば錠剤またはカプセル剤である。従って、本発明栄養組成物は経口用の錠剤調合物としての投与が推奨される。
【0051】
1日あたりの推奨用量(平均的な体重72 kgのヒトの対象を基準として)は、0.9〜1,390 μg/kgのビタミンA、0.01〜0.694 μg/kgのビタミンD3、0.01〜0.694 μg/kgのビタミンE、19.4〜111 μg/kgのビタミンB1、19.4〜111 μg/kgのビタミンB2、125〜3,472 μg/kgのナイアシン、0.25〜6.94 μg/kgの葉酸、0.05〜1.39 μg/kgのビタミンB12、0.181〜5.56 μg/kgのビオチン、111〜1,390 μg/kgのパントテン酸、97.2〜555 μg/kgのカルシウム、42〜4,167 μg/kgのリン、555〜2,778 μg/kgのマグネシウム、6.9〜139 μg/kgの亜鉛、0.28〜4.17 μg/kgのセレニウム、11.1〜208.3 μg/kgのマンガン、0.03〜2.78 μg/kgのクロム、0.01〜1.39 μg/kgのモリブデン、55.6〜4,167 μg/kgのカリウム、278〜6.944 μg/kgのシトラスフルーツピールバイオフラボノイド、139〜6,944 μg/kgのアルギニン、135〜5,555 μg/kgのシステイン、69〜5,555 μg/kgのイノシトール、69〜5,555 μg/kgのカルニチン、22.2〜972 μg/kgのコエンザイムQ10および22.2〜972 μg/kgのピクノジェノールをさらに含むことができる。
【0052】
好ましくは、1日あたりの推奨用量(平均的な体重72 kgのヒトの対象を基準として)は、2.31〜694 μg/kgのビタミンA、0.023〜0.278 μg/kgのビタミンD3、0.023〜0.278 μg/kgのビタミンE、48.6〜97.2 μg/kgのビタミンB1、48.6〜97.2 μg/kgのビタミンB2、312.5〜3,190 μg/kgのナイアシン、0.6〜4.17 μg/kgの葉酸、0.14〜0.69 μg/kgのビタミンB12、0.444〜4.17 μg/kgのビオチン、278〜833 μg/kgのパントテン酸、236〜903 μg/kgのカルシウム、97.2〜1,390 μg/kgのリン、694〜1,390 μg/kgのマグネシウム、41.7〜111 μg/kgの亜鉛、0.42〜3.47 μg/kgのセレニウム、13.9〜45.1 μg/kgのマンガン、0.07〜2.78 μg/kgのクロム、0.03〜1.04 μg/kgのモリブデン、111.1〜2,778 μg/kgのカリウム、694〜3,472 μg/kgのシトラスフルーツピールバイオフラボノイド、1,389〜4,167 μg/kgのアルギニン、1,111〜2,778 μg/kgのシステイン、1,111〜2,778 μg/kgのイノシトール、1,111〜2,778 μg/kgのカルニチン、41.7〜486 μg/kgのコエンザイムQ10および 41.7〜486 μg/kgのピクノジェノールをさらに含むことができる。
【0053】
さらに好ましくは、前記栄養組成物はさらに1日用量として(平均的な体重72 kgのヒトの対象を基準として)、4.6 μg/kgのビタミンA、0.046 μg/kgのビタミンD3、0.046 μg/kgのビタミンE、97.2 μg/kgのビタミンB1、97.2 μg/kgのビタミンB2、625 μg/kgのナイアシン、1.25 μg/kgの葉酸、0.27 μg/kgのビタミンB12、0.9 μg/kgのビオチン、555 μg/kgのパントテン酸、486 μg/kgのカルシウム、208 μg/kgのリン、555 μg/kgのマグネシウム、97.2 μg/kgの亜鉛、0.78 μg/kgのセレニウム、18.1 μg/kgのマンガン、0.14 μg/kgのクロム、0.06 μg/kgのモリブデン、277.8 μg/kgのカリウム、1,389 μg/kgのシトラスフルーツピールバイオフラボノイド、555 μg/kgのアルギニン、486 μg/kgのシステイン、486 μg/kgのイノシトール、486 μg/kgのカルニチン、97.2 μg/kgのコエンザイムQ10および97.2 μg/kgのピクノジェノール、0.01〜0.694 μg/kgのビタミンD3、18.1 μg/kgのマンガン、555 μg/kgのアルギニン、486 μg/kgのシステイン、4.6 μg/kgのビタミンA、0.046 μg/kgのビタミンE、97.2 μg/kgのビタミンB1、97.2 μg/kgのビタミンB2、0.27 μg/kgのビタミンB12、625 μg/kgのナイアシン、1.25 μg/kgの葉酸、0.9 μg/kgのビオチン、555 μg/kgのパントテン酸、486 μg/kgのカルシウム、208 μg/kgのリン、555 μg/kgのマグネシウム、97.2 μg/kgの亜鉛、0.78 μg/kgのセレニウム、0.14 μg/kgのクロム、0.06 μg/kgのモリブデン、277.8 μg/kgのカリウム、1,389 μg/kgのシトラスフルーツピールバイオフラボノイド、486 μg/kgのイノシトール、486 μg/kgのカルニチン、97.2 μg/kgのコエンザイムQ10および97.2 μg/kgのピクノジェノールを含むことができる。
【0054】
本発明の栄養組成物は薬学的に許容されるキャリアー、希釈剤または賦形剤を含むことができる。本発明の栄養組成物は当業者に公知の方法により製造することができる。それぞれの成分は慣用の賦形剤、希釈剤またはキャリアーと製剤化することができ、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、散剤等を形成することができる。賦形剤、希釈剤およびキャリアーの例には、i)澱粉、糖類、マンニトールおよびケイ素誘導体のような充填剤および増量剤;ii)カルボキシメチルセルロースおよびその他のセルロース誘導体、アルギン酸塩、ゼラチンおよびポリビニル-ピロリドンのような結合剤;iii)グリセロールのような保湿剤;炭酸カルシウムおよび重炭酸ナトリウムのような崩壊剤;パラフィンのような溶出を遅延させる物質(agents for retarding dissolution);iv)4級アンモニウム化合物のような吸収促進剤;v)アセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセリンのような界面活性剤;v)カオリンおよびベントナイトのような吸着性キャリアー;およびvi)タルク、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸マグネシウム、および固体のポリエチルグリコールのような潤滑剤が挙げられる。
【0055】
前記栄養組成物はまた、便利な経口投与のためのエリキシル剤または液剤として、または例えば筋肉内、皮下または静脈内経路による非経口投与に適した液剤として製剤化することができる。理想的には、前記製剤は丸剤(pill)、錠剤、カプセル剤、ロゼンジ(lozenge)、液体の形態または類似の剤形である。前記栄養組成物は徐放剤形等としての製剤化にもよく適合する。
【実施例】
【0056】
錠剤の製造
表1に記載される成分を製剤化して錠剤を製造した。前記錠剤はリジン (1,010 mg)、プロリン (560 mg)、アスコルビン酸 (1,500 mg)、銅 (330 μg)およびビタミンB6 (10 mg)を主成分として含む。
【0057】
前記錠剤はさらに、ビタミンD3、マンガン、アルギニン、システイン、ビタミンA、E、B1、B2、B12、ナイアシン、葉酸、ビオチン、パントテン酸、カルシウム、リン、マグネシウム、亜鉛、セレニウム、クロム、モリブデン、カリウム、シトラスフルーツピールバイオフラボノイド、イノシトール、カルニチン、コエンザイムQ10およびピクノジェノールを含む追加成分を含む。
【0058】
表1 − サービングサイズ− 3つの錠剤/日
【0059】
【表1】

【0060】
*体重は、平均的な体重72 kgのヒトの対象を表す。
【0061】
臨床試験
患者選定:
無作為二重盲検プラセボ比較試験を実施した。臨床試験はヘルシンキ宣言、その修正条項およびAMGの推奨に従って実施した。患者承認のための試験対象者基準は、(i)片側の脛骨乾(tibial shaft)の転位した閉鎖骨折またはグレードIの開放骨折(displaced closed or grade I open fractures);および(ii)年齢が10歳以上であった。患者承認のための除外基準は、(i)その他の大きな外傷を有する患者、(ii)心肺、リウマチ、神経または代謝疾患を有する患者、(iii)一般的機能に影響を及ぼす既往の外傷を有する患者、(iv)脛骨粗面より遠位5 cm以内か、足関節より近位5 cm以内に骨折をしている患者であった。
【0062】
承認された患者は、標準的療法およびプラセボ、またはリジン、プロリン、アスコルビン酸、銅およびビタミンB6を含む栄養補給剤での栄養補給を伴う標準療法のどちらかを受けた。試験への承認を受けた患者は、臨床的な検査を受け、患肢のX線写真を撮られ、麻酔下で骨折の整復を受け、そして大腿ギプスで固定された。
【0063】
年齢群および骨折の型は2つの群に均一に分布するようにした。患者は2001年2月から2002年12月まで試験に参加した。片側の脛骨の転位した閉鎖骨折またはグレードIの開放骨折を患っている全部で113人の患者について試験を行った。承認された患者には、インフォームド・コンセントを行った。参加者には試験から得られたデータを公表のために提出することが通知されている。こららのうち、54人の患者が栄養補給群に割り当てられ、59人の患者がプラセボ群に割り当てられた。表2に全体で131人の患者の 年齢分布をまとめる。
【0064】
表2 − 年齢群による患者の分布
【0065】
【表2】

【0066】
*カッコ内の値は指定の年齢群における合計患者の割合を表す。
【0067】
臨床プロトコール:
全ての骨折は麻酔下で整復され(徒手整復)、大腿ギプスを適用された。整復の前後に定期的に骨折した肢のX線写真を撮影した。栄養補給群の患者は表1の栄養組成物を提供され、プラセボ群の患者はプラセボ錠剤を含む瓶を提供された。与えられた目的とする補給剤により、骨折治癒に対する影響における栄養素の妥当性を保証することができるか評価するために、表1に記載される栄養組成物の試験を行った。プラセボ錠剤は、セルロース、フルクトース等のような医学的に意義のない材料を含むが、栄養錠剤と物理的には区別できないものである。全ての患者に1つの錠剤を1日に3回(朝、午後および夜)摂取してもらった。
【0068】
患者の尿サンプルをその基礎アスコルビン酸レベルを評価するために採取した。血液サンプルもまた基礎カルシウムレベルを測定するために採取した(図3)。患者はその後退院し、治療する整形外科医が骨折治癒と判断するまで4週ごとに検査のために戻ってもらうようにした。各追加検査において、脛骨骨折のX線写真を撮り、患者の臨床的検査および尿中ビタミンCおよび血中カルシウムレベルの検査を行った。放射線検査は、整復された位置に骨折の断片が残っていることおよび仮骨形成が十分に進行していることを確認するために行った。尿のアスコルビン酸含有量は分光測光により測定され、血中カルシウム含有量は市販されているキットを用いて測定した。臨床的に骨折部位において異常な可動性がないこと、および骨折を圧迫することによりまたは歩くことにより生じる痛みがないこととして治癒を定義した。X線写真による仮骨形成の確認は、治癒の補助的な証拠として使用した(X線写真の例として図1または2を参照)。いずれの外科的介入もなく20週を超える治癒期間は治癒の遅延とみなした。
【0069】
統計解析
結果を群における平均値±標準誤差として表した。種々の群の間で骨折治癒時間に関してウィルコクソン検定を実施した。統計的有意性はP < 0.05に設定した。
【0070】
結果:
栄養補給群からの29人の患者およびプラセボ群からの42人の患者が、骨折が治癒したと判断されるまで定期的な追加検査のために戻ってきた。
【0071】
概して、栄養補給を受けた患者群における尿中アスコルビン酸含有量が、プラセボ群におけるよりも高かった(図3)。検査外来(check-up visits)のうちのいずれか1回において、8人の栄養補給を受けた患者での低い尿中アスコルビン酸値(尿100 mlあたり5 mg未満)が検出され、6人のプラセボ患者での高いアスコルビン酸値(尿100 mlあたり5 mgより高い)が検出された。これらの患者は評価から除外した。従って、栄養補給群における21人の患者およびプラセボ群における36人の患者のみが試験完了まで残った。前記試験の全ての患者の血中カルシウムレベルが正常範囲内であった。
【0072】
患者の年齢分布を表2に詳しく記載した。栄養補給群における患者の年齢範囲は15〜65歳であり、平均年齢は35歳であった。プラセボ群における患者の年齢範囲は12〜75歳であり、平均年齢は32歳であった。
【0073】
患者の治癒時間を表4に詳しく記載した。栄養補給群における患者の平均治癒時間は14.0+1.1週であった。プラセボ群における患者の平均治癒時間は16.9+ 1.2週であった。これらのデータは、栄養補給群における治癒時間の全体平均がプラセボ群におけるよりも約3週間短いことを示す(すなわち17.2 %)。この差異はt=1.07、p=0.288で統計的有意性を有する。
【0074】
データのパーセンタイルによる分類により、75パーセンタイル値において栄養補給群における骨折は17週以内に治癒したのに対して、プラセボ群においては19週で治癒したことが示される(表3)。
【0075】
表3 − 骨折治癒時間における栄養補給の効果
【0076】
【表3】

【0077】
早期に骨折が治癒した患者(10週以下)の割合は、栄養補給群においては33.3%でありプラセボ群においては11.1%であるように相違した(カイ二乗解析=2.853, p=0.091)。遅延型の治癒(20週以上)を有する患者の割合は、栄養補給群で9.5%でありプラセボ群で19.4 %であった(表4)。
【0078】
表4 − 骨折治療時間による患者の分布(百分率)
【0079】
【表4】

【0080】
異なる年齢の患者における骨折の治癒時間を表6に示す。10〜20歳の患者においては、治癒時間が17.6週から9週まで減少した(49%の減少)。31〜40歳の患者においては、治癒時間が17.1週から10.7週まで減少した(37%の減少)。41〜50歳の患者においては、治癒時間が21.2週から12.7週まで減少した(40%の減少)。50歳より高齢の患者においては、治癒時間が16週から15.7週まで減少した(1.8%の減少)。全体としては、21〜30歳の群を除いて栄養補給群における治癒時間が減少した(表5)。
【0081】
表5 − 種々の年齢群における治癒時間(週)
【0082】
【表5】

【0083】
該データにより、骨折を患っている患者への一定用量の本発明栄養組成物の投与が、75%の患者において有効に少なくとも2週間治癒時間を減少させることが示唆される。また、栄養補給群における患者により、試験期間中は一般的な健康状態の感覚も向上することが報告された。青年齢群(すなわち10〜20歳)において強い効果が見られ、治癒時間は49%減少した。41〜50歳および31〜40歳の患者もまた有意に治癒時間が減少した(すなわち、それぞれ40 %および37%)。その他の年齢群における患者でも、栄養補給の用量を最適化した場合に同様の利益を受けることができると考えられる。
【0084】
栄養補給群における血中カルシウムレベルはプラセボ群と比較して有意な差はなかった。全ての患者の血中カルシウムレベルが正常範囲内であった。
【0085】
治癒時間の減少は、本試験に使用されるリジン、プロリン、アスコルビン酸、銅およびビタミンB6を含む主成分、ならびに追加成分の補給によるものだと考えられる。本データは、骨折を患っている患者において栄養補給が治癒を促進することができる(すなわち治癒時間の減少)ことを示している。本発明栄養組成物の骨折患者への投与は、早期の機能回復、健康の改善、医療コストの減少、および企業コストの減少に関してプラスの効果を有する。
【0086】
本発明は、開示される好ましい実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない限りにおいて種々の変更、修正などが可能なことは言うまでもない。本明細書において言及したすべての刊行物およびその他の引用文献は参照することによりそのまま組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は、整復直前の脛骨乾の骨折のX線写真である。
【図2】図2は、治癒の12週における脛骨乾の骨折のX線写真である。
【図3】図3は、栄養補給群(患者番号1〜29番)およびプラセボ群(患者番号30〜70番)におけるアスコルビン酸レベル(尿検査)を示す。
【図4】図4は、脛骨骨折の治癒時間による患者の分布(百分率)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リジン、プロリン、アスコルビン酸、銅およびビタミンB6を含む、哺乳類における骨の治癒を促進するのに適した栄養組成物。
【請求項2】
前記栄養組成物が27〜34重量%のリジン、14〜15重量%のプロリンおよび42〜47重量%のアスコルビン酸を含む、請求項1記載の栄養組成物。
【請求項3】
前記栄養組成物が、
a) 230 mg〜10グラムのリジン、120 mg〜5グラムのプロリン、360 mg〜15グラムのアスコルビン酸、1.5 μg〜20 mgの銅および0.2 mg〜20 mgのビタミンB6;
b) 1,010 mg〜8グラムのリジン、560 mg〜4グラムのプロリン、1,500 mg〜9グラムのアスコルビン酸、2 μg〜6 mgの銅および0.5 mg〜10 mgのビタミンB6; または
c) 1,010 mgのリジン、560 mgのプロリン、1,500 mgのアスコルビン酸、330 μgの銅および10 mgのビタミンB6
である1日用量を提供する、請求項1記載の栄養組成物。
【請求項4】
前記組成物が、
a) 3.2〜139 mg/kgのリジン、1.7〜69.4 mg/kgのプロリン、5〜208.3 mg/kgのアスコルビン酸、0.02〜278 μg/kgの銅、2.78〜279 μg/kgのビタミンB6;
b) 14〜111 mg/kgのリジン、7.8〜55.6 mg/kgのプロリン、20.8〜125 mg/kgのアスコルビン酸、0.03〜83.3 μg/kgの銅および6.94〜139 μg/kgのビタミンB6; または
c) 14 mg/kgのリジン、7.8 mg/kgのプロリン、20.8 mg/kgのアスコルビン酸、4.6 μg/kgの銅、139 μg/kgのビタミンB6
である体重あたりの1日用量を提供する、請求項1記載の栄養組成物。
【請求項5】
前記栄養組成物がビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、葉酸、ビタミンB12、 ビオチン、パントテン酸、カルシウム、リン、マグネシウム、亜鉛、セレニウム、マンガン、クロム、モリブデン、カリウム、シトラスフルーツピールバイオフラボノイド、アルギニン、システイン、イノシトール、カルニチン、コエンザイムQ10およびピクノジェノールをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1つに記載の栄養組成物。
【請求項6】
前記栄養組成物が、
a) 67 μg〜100 mgのビタミンA、0.7 μg〜50 μgのビタミンD3、0.7 μg 〜50 μgのビタミンE、1.4 mg〜8 mgのビタミンB1、1.4 mg〜8 mgのビタミンB2、9 mg〜250 mgのナイアシン、18 μg〜500 μgの葉酸、4 μg〜100 μgのビタミンB12、 13 μg 〜400 μgのビオチン、8 mg〜100 mgのパントテン酸、7 mg〜40 mgのカルシウム、 3 mg〜300 mgのリン、40 mg〜200 mgのマグネシウム、0.5 mg〜10 mgの亜鉛、20 μg 〜300 μgのセレニウム、0.8 mg〜15 mgのマンガン、2 μg 〜200 μgのクロム、0.8 μg 〜100 μgのモリブデン、4 mg〜300 mgのカリウム、20 mg〜500 mgのシトラスフルーツピールバイオフラボノイド、10 mg〜500 mgのアルギニン、10 mg〜400 mgのシステイン、5 mg〜400 mgのイノシトール、5 mg〜400 mgのカルニチン、1.6 mg〜70 mgのコエンザイムQ10および1.6 mg〜70 mgのピクノジェノール;
b) 166 μg〜50 mgのビタミンA、1.65 μg〜20 μgのビタミンD3、1.65 μg 〜20 μgのビタミンE、3.5 mg〜7 mgのビタミンB1、3.5 mg〜7 mgのビタミンB2、22.5 mg〜100 mgのナイアシン、45 μg〜300 μgの葉酸、10 μg〜50 μgのビタミンB12、32 μg 〜300 μgのビオチン、20 mg〜60 mgのパントテン酸、17 mg〜35 mgのカルシウム、7 mg〜100 mgのリン、50 mg〜100 mgのマグネシウム、3 mg〜8 mgの亜鉛、30 μg 〜250 μgのセレニウム、1 mg〜3.25 mgのマンガン、2 μg 〜75 μgのクロム、2 μg 〜75 μgのモリブデン、8 mg〜200 mgのカリウム、50 mg〜250 mgのシトラスフルーツピールバイオフラボノイド、100 mg〜300 mgのアルギニン、80 mg〜200 mgのシステイン、80 mg〜200 mgのイノシトール、80 mg〜200 mgのカルニチン、3 mg〜35 mgのコエンザイムQ10および3 mg〜35 mgのピクノジェノール; または
c) 333 μgのビタミンA、3.3 μgのビタミンD3、3.3 μgのビタミンE、7 mgのビタミンB1、7 mgのビタミンB2、45 mgのナイアシン、90 μgの葉酸、20 μgのビタミンB12、65 μgのビオチン、40 mgのパントテン酸、35 mgのカルシウム、15 mgのリン、40 mgのマグネシウム、7 mgの亜鉛、20 μgのセレニウム、1.3 mgのマンガン、10 μgのクロム、4 μgのモリブデン、20 mgのカリウム、100 mgのシトラスフルーツピールバイオフラボノイド、40 mgのアルギニン、35 mgのシステイン、35 mgのイノシトール、35 mgのカルニチン、7 mgのコエンザイムQ10および7 mgのピクノジェノール
である1日用量を提供する、請求項5記載の栄養組成物。
【請求項7】
前記組成物が
a) 0.9〜1,390 μg/kgのビタミンA、0.01〜0.694 μg/kgのビタミンD3、0.01〜0.694 μg/kgのビタミンE、19.4〜111 μg/kgのビタミンB1、19.4〜111 μg/kgのビタミンB2、125〜3,472 μg/kgのナイアシン、0.25〜6.94 μg/kgの葉酸、0.05〜1.39 μg/kgのビタミンB12、0.181〜5.56 μg/kgのビオチン、111〜1,390 μg/kgのパントテン酸、97.2〜555 μg/kgのカルシウム、42〜4,167 μg/kgのリン、555〜2,778 μg/kgのマグネシウム、6.9〜139 μg/kgの亜鉛、0.28〜4.17 μg/kgのセレニウム、11.1〜208.3 μg/kgのマンガン、0.03〜2.78 μg/kgのクロム、0.01〜1.39 μg/kgのモリブデン、55.6〜4,167 μg/kgのカリウム、278〜6.944 μg/kgのシトラスフルーツピールバイオフラボノイド、139〜6,944 μg/kgのアルギニン、135〜5,555 μg/kgのシステイン、69〜5,555 μg/kgのイノシトール、69〜5,555 μg/kgのカルニチン、22.2〜972 μg/kgのコエンザイムQ10および22.2〜972 μg/kgのピクノジェノール;
b) 2.31〜694 μg/kgのビタミンA、0.023〜0.278 μg/kgのビタミンD3、0.023〜0.278 μg/kgのビタミンE、48.6〜97.2 μg/kgのビタミンB1、48.6〜97.2 μg/kgのビタミンB2、312.5〜3,190 μg/kgのナイアシン、0.6〜4.17 μg/kgの葉酸、0.14〜0.69 μg/kgのビタミンB12、0.444〜4.17 μg/kgのビオチン、278〜833 μg/kgのパントテン酸、236〜903 μg/kgのカルシウム、97.2〜1,390 μg/kgのリン、694〜1,390 μg/kgのマグネシウム、41.7〜111 μg/kgの亜鉛、0.42〜3.47 μg/kgのセレニウム、13.9〜45.1 μg/kgのマンガン、0.07〜2.78 μg/kgのクロム、0.03〜1.04 μg/kgのモリブデン、111.1〜2,778 μg/kgのカリウム、694〜3,472 μg/kgのシトラスフルーツピールバイオフラボノイド、1,389〜4,167 μg/kgのアルギニン、1,111〜2,778 μg/kgのシステイン、1,111〜2,778 μg/kgのイノシトール、1,111〜2,778 μg/kgのカルニチン、41.7〜486 μg/kgのコエンザイムQ10および41.7〜486 μg/kgのピクノジェノール; または
c) 4.6 μg/kgのビタミンA、0.046 μg/kgのビタミンD3、0.046 μg/kgのビタミンE、97.2 μg/kgのビタミンB1、97.2 μg/kgのビタミンB2、625 μg/kgのナイアシン、1.25 μg/kgの葉酸、0.27 μg/kgのビタミンB12、0.9 μg/kgのビオチン、、555 μg/kgのパントテン酸、486 μg/kgのカルシウム、208 μg/kgのリン、555 μg/kgのマグネシウム、97.2 μg/kgの亜鉛、0.78 μg/kgのセレニウム、18.1 μg/kgのマンガン、0.14 μg/kgのクロム、0.06 μg/kgのモリブデン、277.8 μg/kgのカリウム、1,389 μg/kgのシトラスフルーツピールバイオフラボノイド、555 μg/kgのアルギニン、486 μg/kgのシステイン、486 μg/kgのイノシトール、486 μg/kgのカルニチン、97.2 μg/kgのコエンザイムQ10および97.2 μg/kgのピクノジェノール
である体重あたりの1日用量をさらに含む、請求項5記載の栄養組成物。
【請求項8】
前記哺乳類がヒトである、請求項1〜7のいずれか1つに記載の栄養組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の栄養組成物を含む医薬調合物。
【請求項10】
哺乳類において骨の治癒を促進する医薬調合物を製造するために、請求項1〜8のいずれか1つに記載の栄養組成物を使用する方法。
【請求項11】
前記哺乳類がヒトである、請求項10記載の使用方法。
【請求項12】
前記組成物が経口、静脈内または非経口で投与される、請求項10または11のいずれか1つに記載の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−504182(P2007−504182A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525052(P2006−525052)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006841
【国際公開番号】WO2005/023020
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(503454872)
【Fターム(参考)】